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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】循環型の下水汚泥資源化システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/00 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
C02F11/00 B
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2024118329
(22)【出願日】2024-07-24
【審査請求日】2024-07-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524032541
【氏名又は名称】株式会社杜と水技研
(74)【代理人】
【識別番号】100074734
【弁理士】
【氏名又は名称】中里 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100086265
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100076451
【弁理士】
【氏名又は名称】三嶋 景治
(72)【発明者】
【氏名】田巻 成友
(72)【発明者】
【氏名】大山 光俊
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-127110(JP,A)
【文献】特開2021-186741(JP,A)
【文献】特開2020-146614(JP,A)
【文献】特開2006-151782(JP,A)
【文献】特開2002-045829(JP,A)
【文献】特開平03-170389(JP,A)
【文献】特開2002-180059(JP,A)
【文献】特開2013-146666(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101143758(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0202892(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00 - 11/20
C02F 3/12
B09B 1/00 - 5/00
B09C 1/00 - 1/10
C05B 1/00 - 21/00
C05C 1/00 - 13/00
C05D 1/00 - 11/00
C05F 1/00 - 17/993
C05G 1/00 - 5/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物である下水汚泥を有用物への資源化を行う循環型の下水汚泥資源化システムであって、この循環型の下水汚泥資源化システムは、
下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料を形成する脱水手段、
横型円筒形状で中心軸の周りに回転する発酵処理容器を有し、この発酵処理容器を中心軸周りに回転させつつ、原料を前記発酵処理容器内の入口端側から排出端側に向け、所定日数かけて徐々に移動させ、好気性微生物により、前記原料を発酵処理して、第1設定含水率値以下の一次発酵物を製造する一次発酵処理手段、
前記発酵処理容器の入口端側に設けられ、前記脱水手段からの原料を受け、この原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、
前記発酵処理容器の排出端側に設けられ、前記一次発酵物を、前記発酵処理容器外に排出するための一次発酵物排出手段、
前記一次発酵処理手段からの前記一次発酵物を受け、該一次発酵物を追発酵して、前記一次発酵物より含水率の低い第2設定含水率値以下の二次発酵物を製造する二次発酵処理手段、
前記二次発酵処理手段からの二次発酵物を受け、これを炭化処理して炭化物を製造する炭化手段、
前記二次発酵処理手段からの二次発酵物と前記炭化手段からの炭化物を受け、これらを混合して混合物を作製する混合手段、および
前記一次発酵物排出手段から排出される前記一次発酵物の含水率を測定する含水率測定手段を備え、
前記一次発酵処理手段には、第1配分供給手段が接続されており、この第1配分供給手段は、前記第1発酵物を、前記含水率測定手段で測定した前記一次発酵物の含水率値が前記第1設定含水率値以下の正常時には、前記一次発酵物の第1所定量を前記二次発酵処理手段に、残量を第1形態の第1有用物に加工する第1有用資源加工手段にそれぞれ配分し、前記含水率値が前記第1設定含水率値を超える非常時には、前記一次発酵物の全量を前記二次発酵処理手段に供給するようになっており、
前記二次発酵処理手段には、第2配分供給手段が接続されており、この第2配分供給手段は、前記二次発酵物の少なくとも一部を、前記炭化手段および前記混合手段にそれぞれ配分供給するようになっており、
前記混合手段には、第3配分供給手段が接続されており、この第3配分供給手段は、前記混合物の少なくとも一部を、前記原料供給手段、および/または第3形態の第3有用物に加工する第3有用資源加工手段にそれぞれ配分供給するようになっている
ことを特徴とする循環型の下水汚泥資源化システム。
【請求項2】
前記二次発酵処理手段が、堆肥舎を用いた堆積式、ロータリー・スクープ撹拌を用いた開放式、およびコンポを用いた密閉型撹拌方式の何れかである請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項3】
前記好気性微生物が、グラム陽性の好気性好熱菌であって、前記二次発酵処理手段が、前記堆積式の発酵処理手段であって、前記第1配分供給手段から供給されてきた前記一次発酵物を堆積させ、この堆積された前記一次発酵物を、前記グラム陽性の好気性好熱菌により、前記一次発酵物の前記第1設定含水率値より低い値の第2設定含水率値の二次発酵物を製造する製造部、およびこの製造部で製造された前記二次発酵物を貯蔵する貯蔵部、並びにこの貯蔵部から前記二次発酵物を所定量排出する二次発酵物排出手段を備えている請求項2の下水汚泥資源化システム。
【請求項4】
前記第3配分供給手段は、前記非常時に、前記混合物を前記原料供給手段に配分供給する請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項5】
前記第3配分供給手段は、前記混合物の所定量を、微生物活性化手段を介して、前記混合物中の二次発酵物中の好気性微生物を活性化した状態で、下水処理設備の生物処理部に供給するようになっている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項6】
前記二次発酵処理手段は、前記第1配分供給手段から供給されてきた前記一次発酵物を前記製造部に供給する供給コンベアを備えている請求項3の下水汚泥資源化システム。
【請求項7】
前記二次発酵処理手段は、前記製造部で製造した前記二次発酵物を、該製造部から前記貯蔵部に向けて移送する移送手段を備えている請求項3の下水汚泥資源化システム。
【請求項8】
前記二次発酵処理手段の製造部は、製造した二次発酵物の含水率値を測定する第2含水率測定手段、この製造部内部の前記一次発酵物の受け入れ側から前記二次発酵物の排出側まで全長に渡って設けられ、前記一次発酵物の上流側から下流側への搬送を行う搬送状態と前記二次発酵物の下流側から上流側への戻しを行う戻し状態で切り換えが可能な搬送兼戻し手段、および前記第2含水率測定手段により測定された前記二次発酵物の含水率値に応じて、前記搬送兼戻し手段の搬送状態・戻し状態の切り換えの制御を行う作動制御手段を備えている請求項3の下水汚泥資源化システム。
【請求項9】
前記作動制御手段は、前記第2含水率測定手段により測定された前記二次発酵物の含水率値が前記第2設定含水率値を超えているとき、前記搬送兼戻し手段を戻し状態に切り換える制御を行う請求項8の下水汚泥資源化システム。
【請求項10】
前記第1設定含水率値が、35%以下の値であり、そして前記第2設定含水率値が、前記第1設定含水率値より2~15%低く設定されている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項11】
第3有用資源加工手段で加工された混合物は、土壌改良材兼堆肥・肥料である請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項12】
前記発酵処理容器に、内部の原料を撹拌するための撹拌手段を設けた請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項13】
前記撹拌手段が、前記発酵処理容器を回転させるための回転作動手段である請求項12の下水汚泥資源化システム。
【請求項14】
前記原料供給手段は、前記脱水手段からの原料を一時的に貯蔵する原料ホッパーを有し、この原料ホッパーの周囲を、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態でジャケットにより包囲して、前記原料ホッパー内の原料を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間を形成し、そして
前記発酵処理容器の排出端から前記加温ガス用空間に延び、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温ガス用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路
を備えている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項15】
前記好気性微生物が、フィルミクテス門のグラム陽性のバシラス綱に属するもの、および/または放線菌門のグラム陽性のアクチノバクテリア綱に属するもの、および/またはクロロフレクサス門のグラム陽性菌を含む請求項1の下水汚泥資源化システム。
【請求項16】
前記炭化手段が、前記二次発酵物を原料として活性炭を製造する炭化手段である請求項1~15のいずれかの下水汚泥資源化システム。
【請求項17】
前記第2配分供給手段は、前記二次発酵物の少なくとも一部を、前記原料供給手段および/または第2形態の第2有用物に加工する第2有用資源加工手段にもそれぞれ配分供給することができるようになっている請求項1の下水汚泥資源化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環型の下水汚泥資源化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
国土交通省は、令和5年3月17日の国水下企第99号において、各都道府県下水道担当部局長および各政令都市下水道担当部局長宛に次のような通知をなしている。
『 発生汚泥等の処理に関する基本的考え方について
下水道法第 21 条の 2 第 2 項において、「発生汚泥等の処理に当たつては、脱水、焼却等により その減量に努めるとともに、発生汚泥等が燃料又は肥料として再生利用されるよう努めなければな らない」と規定しているところ、我が国における 2050 年カーボンニュートラルの実現、さらに は、食料安全保障の強化に向けた生産資材の国内代替転換等が重要課題となっている中で、下水汚 泥のエネルギー・肥料としての利用に対する必要性が一層高まっているところである。
特に、肥料としての利用については、「食料安全保障強化政策大綱」(令和4年 12 月 27 日 食 料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)において、2030 年までに、下水汚泥資源・堆肥の肥料 利用量を倍増し、肥料の使用量(リンベース)に占める国内資源の利用割合を 40%まで拡大する旨 が示された。
このような背景を踏まえ、下水道事業を通じた循環型社会の実現への貢献を更に拡大するべく、 今後の発生汚泥等の処理に関する基本的考え方を下記の通り定めたところ、本方針を十分に御了知 の上、下水道事業の実施に努めていただくようお願いする。
各都道府県におかれては、貴管内市町村(政令指定都市を除く。)にもこの旨周知されたい。
本通知は、地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 245 条の4第1項の規定に基づく技術的助言 であることを申し添える。』
【0003】
下水汚泥のような有機性廃棄物を資源化装置としては、横型円筒形状で、好気性超好熱菌(以下、超高温菌と称することがある)により、原料である有機性廃棄物を発酵処理する発酵処理容器、この発酵処理容器の一端に設けられ、原料である有機性廃棄物を一時的に貯蔵する原料ホッパーを有し、この原料ホッパーに一時的に貯蔵された原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、および前記発酵処理容器の他端に設けられ、発酵処理された処理済み原料を、前記発酵処理容器外に排出するための排出手段を備え、前記発酵処理容器を中心軸周りに回転させることにより、所定日数かけて原料を前記発酵処理容器内の一端側から他端側に向けて徐々に移動させつつ発酵処理を行い、有機性廃棄物の資源化、すなわち堆肥化・肥料化を行う下水汚泥資源化システム、すなわち密閉型下水汚泥資源化システム(以下、密閉型堆肥化装置という)が知られている。
【0004】
また、特開2005-320182号公報では、有機性廃棄物から堆肥を生成し、その堆肥を循環させて新たな液肥や堆肥を生成するとともに、エネルギー効率に優れ、環境保全にも寄与する技術を提供することを目的とし、この目的を達成するため、その請求項1では、『固体ゴミと液体ゴミの有機性廃棄物を堆肥および液肥として生成するための有機性廃棄物堆肥化処理システムに係る。すなわち、前記固体ゴミを破砕する破砕機構および破砕または破砕段階の固体ゴミに対し、微生物を抽入して混合する微生物抽入機構を備えた破砕混合装置と、前記破砕混合装置によって破砕混合された固体ゴミを、微生物の活動によって分解発酵する分解発酵機構に送入し、固体ゴミから完熟堆肥へと生成する分解発酵装置と、分解発酵装置によって生成された完熟堆肥の一部と、前記液体ゴミとを原料として液肥を生成する液肥製造装置と、を備えた有機性廃棄物堆肥化処理システム』を提供し、また請求項2では、請求項1記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムを限定したものであり、前記破砕混合装置は、破砕された固体ゴミに対し、前記完熟堆肥を抽入して混合させる循環機構を備えたことを特徴とする有機性廃棄物堆肥化処理システムを提案している。
【0005】
上記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、破砕混合装置の循環機構が完熟堆肥の一部を装置内に取り入れる。破砕混合装置は、固体ゴミおよび完熟堆肥を混合させる。したがって、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができる。このため、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与する。
【0006】
前記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、破砕混合装置の循環機構が完熟堆肥の一部を装置内に取り入れる。破砕混合装置は、固体ゴミおよび完熟堆肥を混合させる。したがって、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができる。このため、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-320182号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、前記請求項2記載の有機性廃棄物堆肥化処理システムによれば、循環機構による完熟堆肥の戻しが行われるので、培養材などの微生物抽入機構を必要としないでも分解発酵を促進させることができ、微生物抽入機構で使用する微生物の使用率を減少させることができ、コスト低減に寄与するという効果が見込まれるが、当該明細書にも記載があるとおり、用いる完熟堆肥となるまでに、30日から90日かかってしまう。
【0009】
これに対して、最初に述べた密閉型堆肥化装置においては、20日前後で完熟堆肥を製造することができるが、原料の状態等によっては、未熟のまま該装置から排出されてしまうことがある。
【0010】
そこで本発明は、前記密閉型堆肥化装置の構造を土台として、その利点を生かしつつ、上記特開2005-320182号公報の有機性廃棄物堆肥化処理システムの利点を取り入れ、更に改良して、該密閉型堆肥化装置の上記したような問題点を解消した下水汚泥資源化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、下記(1)~(17)の構成の下水汚泥資源化システムにより解決される。
(1)
有機性廃棄物である下水汚泥を有用物への資源化を行う循環型の下水汚泥資源化システムであって、この循環型の下水汚泥資源化システムは、
下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料を形成する脱水手段、
横型円筒形状で中心軸の周りに回転する発酵処理容器を有し、この発酵処理容器を中心軸周りに回転させつつ、所定日数かけて原料を前記発酵処理容器内の入口端側から排出端側に向けて徐々に移動させ、好気性微生物により、前記原料を発酵処理して、第1設定含水率値以下の一次発酵物を製造する一次発酵処理手段、
前記発酵処理容器の入口端側に設けられ、前記脱水手段からの原料を受け、この原料を前記発酵処理容器内に供給する原料供給手段、
前記発酵処理容器の排出端側に設けられ、前記一次発酵物を、前記発酵処理容器外に排出するための一次発酵物排出手段、
前記一次発酵処理手段からの前記一次発酵物を受け、該一次発酵物を追発酵して、前記一次発酵物より含水率の低い第2設定含水率値以下の二次発酵物を製造する二次発酵処理手段、
前記二次発酵処理手段からの二次発酵物を受け、これを炭化処理して炭化物を製造する炭化手段、
前記二次発酵処理手段からの二次発酵物と前記炭化手段からの炭化物を受け、これらを混合して混合物を作製する混合手段、および
前記一次発酵物排出手段から排出される前記一次発酵物の含水率を測定する含水率測定手段を備え、
前記一次発酵処理手段には、第1配分供給手段が接続されており、この第1配分供給手段は、前記第1発酵物を、前記含水率測定手段で測定した前記一次発酵物の含水率値が前記第1設定含水率値以下の正常時には、前記一次発酵物の第1所定量を前記二次発酵処理手段に、残量を第1形態の第1有用物に加工する第1有用資源加工手段にそれぞれ配分し、前記含水率値が前記第1設定含水率値を超える非常時には、前記一次発酵物の全量を前記二次発酵処理手段に供給するようになっており、
前記二次発酵処理手段には、第2配分供給手段が接続されており、この第2配分供給手段は、前記二次発酵物の少なくとも一部を、前記炭化手段および前記混合手段にそれぞれ配分供給するようになっており、
前記混合手段には、第3配分供給手段が接続されており、この第3配分供給手段は、前記混合物の少なくとも一部を、前記原料供給手段、および/または第3形態の第3有用物に加工する第3有用資源加工手段にそれぞれ配分供給するようになっている
ことを特徴とする循環型の下水汚泥資源化システム。
(2)
前記二次発酵処理手段が、堆肥舎を用いた堆積式、ロータリー・スクープ撹拌を用いた開放式、およびコンポを用いた密閉型撹拌方式の何れかである前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(3)
前記好気性微生物が、グラム陽性の好気性好熱菌であって、前記二次発酵処理手段が、前記堆積式の発酵処理手段であって、前記第1配分供給手段から供給されてきた前記一次発酵物を堆積させ、この堆積された前記一次発酵物を、前記グラム陽性の好気性好熱菌により、前記一次発酵物の前記第1設定含水率値より低い値の第2設定含水率値の二次発酵物を製造する製造部、およびこの製造部で製造された前記二次発酵物を貯蔵する貯蔵部、並びにこの貯蔵部から前記二次発酵物を所定量排出する二次発酵物排出手段を備えている前記(2)の下水汚泥資源化システム。
(4)
前記第3配分供給手段は、前記非常時に、前記混合物を前記原料供給手段に配分供給する前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(5)
前記第3配分供給手段は、前記混合物の所定量を、微生物活性化手段を介して、前記混合物中の二次発酵物中の好気性微生物を活性化した状態で、下水処理設備の生物処理部に供給するようになっている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(6)
前記二次発酵処理手段は、前記第1配分供給手段から供給されてきた前記一次発酵物を前記製造部に供給する供給コンベアを備えている前記(3)の下水汚泥資源化システム。
(7)
前記二次発酵処理手段は、前記製造部で製造した前記二次発酵物を、該製造部から前記貯蔵部に向けて移送する移送手段を備えている前記(3)の下水汚泥資源化システム。
(8)
前記二次発酵処理手段の製造部は、製造した二次発酵物の含水率値を測定する第2含水率測定手段、この製造部内部のほぼ全長に渡って設けられ、前記一次発酵物の上流側から下流側への搬送を行う搬送状態と前記二次発酵物の下流側から上流側への戻しを行う戻し状態で切り換えが可能な搬送兼戻し手段、および前記第2含水率測定手段により測定された前記二次発酵物の含水率値に応じて、前記搬送兼戻し手段の搬送状態・戻し状態の切り換えの制御を行う作動制御手段を備えている前記(3)の下水汚泥資源化システム。
(9)
前記作動制御手段は、前記第2含水率測定手段により測定された前記二次発酵物の含水率値が前記第2設定含水率値を超えているとき、前記搬送兼戻し手段を戻し状態に切り換える制御を行う前記(8)の下水汚泥資源化システム。
(10)
前記第1設定含水率値が、35%以下の値であり、そして前記第2設定含水率値が、前記第1設定含水率値より2~15%低く設定されている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(11)
第3有用資源加工手段で加工された混合物は、土壌改良材兼堆肥・肥料である前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(12)
前記発酵処理容器に、内部の原料を撹拌するための撹拌手段を設けた前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(13)
前記撹拌手段が、前記発酵処理容器を回転させるための回転作動手段である前記(12)の下水汚泥資源化システム。
(14)
前記原料供給手段は、前記脱水手段からの原料を一時的に貯蔵する原料ホッパーを有し、この原料ホッパーの周囲を、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態でジャケットにより包囲して、前記原料ホッパー内の原料を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間を形成し、そして
前記発酵処理容器の排出端から前記加温ガス用空間に延び、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温ガス用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路
を備えている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(15)
前記好気性微生物が、フィルミクテス門のグラム陽性のバシラス綱に属するもの、および/または放線菌門のグラム陽性のアクチノバクテリア綱に属するもの、および/またはクロロフレクサス門のグラム陽性菌を含む前記(1)の下水汚泥資源化システム。
(16)
前記炭化手段が、前記二次発酵物を原料として活性炭を製造する炭化手段である前記(1)~(15)のいずれかの下水汚泥資源化システム。
(17)
前記第2配分供給手段は、前記二次発酵物の少なくとも一部を、前記原料供給手段および/または第2形態の第2有用物に加工する第2有用資源加工手段ににもそれぞれ配分供給することができるようになっている前記(1)の下水汚泥資源化システム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の下水汚泥資源化システムは、一次発酵処理手段により製造された一次発酵物(通常、含水率35%以下)を、更に発酵させて含水率がそれ以下の二次発酵物を製造し、更にこの二次発酵物を炭化して炭化物特に活性炭を製造する。そして、この炭化物は、脱水汚泥の発酵を正常化する含水率調整剤や、下水処理設備における生物処理槽に投入してのBOD,CODの顕著な低減を図ることができる。これに加えて、本発明においては、炭化物と二次発酵物の混合物を作製するので、二次発酵物内の微生物も下水処理に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施例による循環型の下水汚泥資源化システムを概念的に示すダイヤグラム図である。
図2図1に示した下水汚泥資源化システムの一次発酵処理装置等の詳細を示した詳細図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施の形態による循環型の下水汚泥資源化システムを説明する。
【0015】
下水汚泥資源化システム10は、横型円筒形状で、好気性微生物、特に好気性好熱菌により、原料である下水汚泥すなわち有機性廃棄物を発酵処理する発酵処理容器12を備えた一次発酵処理装置11、この発酵処理容器の入口端12aに設けられた原料供給手段20、および前記発酵処理容器12の排出端12bに設けられ、原料mを発酵処理してできた一次発酵物を、前記発酵処理容器外に排出するための排出ゲートである排出手段30を備えている。これら原料供給手段20と排出手段30は、作動同期手段140により、それらの作動が同期するように制御されるようになっている。
【0016】
前記原料供給手段20は、有機性廃棄物である下水汚泥の含水率を予め設定された所定の原料含水率値まで脱水して原料mを形成する脱水手段15からの原料mを一時的に貯蔵する原料ホッパー22を有し、この原料ホッパー22には、その内部に一時的に貯蔵された原料を前記発酵処理容器12内に供給するためのコンベア24が設けられている。
【0017】
図2に示したように、前記原料ホッパー22には、垂直に該原料ホッパー内に延びる回転軸26aと、この回転軸26aに取り付けられ水平に延びる撹拌羽根等の撹拌部材26bが設けられた回転型の撹拌手段26が設けられており、原料の舞い上がりや臭気の拡散が起こらない程度の周速(例えば、0.1~0.5m/s程度)で回転して、原料の撹拌を行うようになっている。この原料の撹拌により、原料に含水率の分布の均一化が図れる。
【0018】
前記発酵処理容器12は、図2に示したように固定の一対の端板14および16と、これらの間に中心軸の周りに回転可能に取り付けられた円筒形の発酵処理ドラム18を有している。この発酵処理ドラム18の内壁には、推進羽根(図示せず)が設けられていてもよい。この発酵処理ドラム18は、回転駆動装置(図示せず)によって回転駆動され、その入口端12aに投入された原料を推進羽根により、所定日数(例えば、21日程度)かけて排出端12b側に向けて徐々に移動させつつ発酵処理を行い、下水汚泥の資源化、すなわち堆肥化・肥料化を行うものである。なお、上記した原料の発酵処理容器12内の移動は、前記コンベア24の原料の押し出しによるものであってもよい。
【0019】
また、上記発酵は、好気性微生物、特に好気性好熱菌によって行われる。好熱菌とは、株式会社東京化学同人発行の「生化学辞典(第4版)によれば、通常55℃以上で生育できる菌を指し、75℃以上でも生育できる好熱菌を高度好熱菌、90℃以上で生育できる菌を超好熱菌というとしている。本発明においては、高度好熱菌以上の菌(微生物)を用いることが望ましい。この好気性高度好熱菌としては、例えば、サーマス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)等を用いることができる。このような、好気性高度好熱菌を用いて有機性廃棄物の発酵を行うことにより、例えば、資源化が堆肥化・肥料化である場合、植物の育成に害となる原料中の植物種子や病原菌等を分解死滅させることができる
【0020】
下水汚泥資源化システム10は、前記一次発酵処理装置11からの一次発酵物を受けて、これを更に発酵(乾燥を伴う)させて、前記一次発酵物より含水率値が低い二次発酵物を製造する二次発酵処理設備80を備えている。この二次発酵物は、主目的は原料の含水率値を調整するための原料含水率調整用資材の一部として機能するよう用いられるものであるが、その二次目的は、上記とは異なった形態(態様)の堆肥または肥料用とすることである。前記二次発酵処理設備80は、一次発酵物受け入れ側に配置され、受け入れた一次発酵物を処理して二次発酵物を製造する製造部82と、この製造部82で製造された二次発酵物を貯蔵する貯蔵部84を備えている。構造の詳細は後述する。
【0021】
前記排出ゲート30には、一次発酵物のための排出通路32が接続されており、この排出通路32の下流端には、第1配分供給装置34が設けられている。この配分供給装置34は、3方弁36とその制御を行うための作動制御手段38を備えている。そして、前記3方弁36の一つの排出口は、前記一次発酵物を前記二次発酵物に加工する前記二次発酵処理設備80に前記一次発酵物を第1設定量供給する第1供給通路40に接続されており、他方の排出口は、前記一次発酵物を第1有用物に加工する第1有用資源加工手段(図示せず)に前記一次発酵物を第2設定量供給する第2供給通路42に接続されている。なお、前記二次発酵処理設備80は、供給コンベアを備えていて、前記第1供給通路4からの一次発酵物は、この供給コンベアにより二次発酵処理設備80の製造部82に供給される。

【0022】
前記作動制御手段38には、操作者が操作をして、該作動制御手段38に指令を出す操作パネル70が接続されている。操作者は、この操作パネル70を操作して、前記作動制御手段38をして、前記一次発酵処理装置11が正常に機能しているときの3方弁36によって配分される一次発酵物の配分率(配分量)を調整する。この配分率(配分量)は、例えば、前記第1供給通路40側に1/5,前記第2供給通路42側に4/5と設定する。
【0023】
前記一次発酵処理装置11の一次発酵物排出部分、例えば、図1に示したように、発酵処理容器12の排出ゲート30が設けられた排出端12bには、含水率センサ44が配置されており、この含水率センサ44は、発酵処理容器12から排出される一次発酵物の含水率を測定して、その値を示す信号S1を前記作動制御手段38に出力する。
【0024】
前記作動制御手段38は、受信した、一次発酵物の含水率値を示す前記信号S1を所定の含水率値(例えば、所定の肥料完熟度を示す35%)に照らして、それ以下(正常時)か、それを越える(非常時)かを判断し、正常時には、前記3方弁36をして一次発酵物を上記の比率で配分するよう制御し、他方、非常時には、前記3方弁36の前記第2供給通路42側を閉鎖し、一次発酵物の全量を前記第1供給通路40側に供給するようにする。これにより、一次発酵物を、それが第1有用資源として望ましい状態で無い場合には、第1有用資源加工手段に供給しない。したがって、本実施の形態の下水汚泥資源化システムによれば、不良品の有用資源が外部に出回ることがない。
【0025】
前記二次発酵処理設備80の製造部82は、二次発酵処理手段となっており、この発酵処理手段は、従来から堆肥の製造に用いられている堆肥舎を用いた堆積式、ロータリー・スクープ撹拌を用いた開放式、およびコンポを用いた密閉型撹拌方式の何れであってもよい。
【0026】
前記二次発酵処理設備は、前記堆積式の発酵処理手段であることが好ましく、好気性微生物、特にグラム陽性の好気性好熱菌を用いて、前記製造部82に堆積された一次発酵物を、温度を60℃~110℃に保った状態で、切り返しを行いつつ、高温好気性発酵させ、前記一次発酵物の前記第1設定含水率値より低い値の第2設定含水率値の二次発酵物を製造する。この高温好気性発酵により、グラム陰性の嫌気性および通性嫌気性微生物を分解死滅させるが、発酵に用いた好気性微生物は芽胞となって生存し続ける。
前記好気性微生物は、フィルミクテス門のグラム陽性のバシラス綱に属するもの、および/または放線菌門のグラム陽性のアクチノバクテリア綱に属するもの、および/またはクロロフレクサス門のグラム陽性菌を含むことが好ましい。
【0027】
なお、前記製造部82は、次のように構成することもできる。
すなわち、前記製造部82の一次発酵物受け入れ側に、該製造部82に堆積される一次発酵物に酸素(空気)の送風を行うための送風ファンを設けるとともに、製造部82内部のほぼ全長(一次発酵物の受け入れ側から二次発酵物の排出側まで)に渡って、コンベア等で構成された搬送兼戻し手段を設けて、二次発酵処理設備80に供給された一次発酵物は、前記搬送兼戻し手段により搬送されつつ発酵されて、所定の第2設定含水率値(一次発酵物の含水率より低い所定の含水率以下の含水率、前記第1設定含水率値より2~15%、特に5%低く設定され、したがって、具体的には、第1設定含水率値が35%のとき、この第2設定含水率値は30%が好ましい)の二次発酵物とされる。
前記搬送兼戻し手段には、その搬送・戻しの切り換えや、搬送速度の設定等の制御を行うため、作動制御手段が設けられていることが好ましい。
【0028】
前記二次発酵処理設備80は、その製造部82の排出側に、製造された二次発酵物を製造部82から貯蔵部84に移送するための移送手段(図示せず)が設けられており、この移送手段は、作動制御手段により、その作動が制御されるようになっている。
【0029】
二次発酵処理設備80の製造部82の貯蔵部84に隣接した部分(下流端)には、含水率センサが設けられている。この含水率センサは、製造部82の下流端に発酵されつつ搬送されて来た一次発酵物が目的の二次発酵物としての所定の含水率になっているかを監視するためのものであり、前記製造部82の下流端における一次発酵物(二次発酵物)の含水率を測定して、その含水率値を示す信号S2を作動制御手段に送信する。
【0030】
信号S2を受信した作動制御手段は、この信号が示す含水率値が前記二次発酵物としての所定の含水率値(30%)以下かを判定し、その判定がYESのとき、搬送兼戻し手段をそのまま搬送状態で保つ。一方、前記判定がNOのとき、その作動を戻し状態に切り換えて一次発酵物を上流側に戻し、発酵を更に行なうようにする。以上は一次発酵物の含水率が二次発酵物としての前記所定の含水率を下回るまで繰り返えされる。
【0031】
一方、前記信号S2を受信した作動制御手段は、この信号S2が示す含水率値が前記二次発酵物としての所定の含水率値(30%)以下かを判定し、その判定がYESのとき、移送手段を作動して、製造された二次発酵物を貯蔵部84に移送する。一方、前記判定がNOのときには、前記移送手段の作動は行わず、したがって、二次発酵物としての不完全な製品の貯蔵部84への移送は行われない。
【0032】
前記貯蔵部84の排出端側には、第2配分供給装置90が接続されており、この第2配分供給装置90は、弁として五方弁として機能する弁機構を用いている他は前記第1配分供給装置34とほぼ同様の構成を有していてよいので、構造等の詳細な説明は省略する。この第2配分供給装置90は、前記二次発酵物の少なくとも一部を、前記原料供給手段20、後述する炭化設備100、後述する混合手段110、および第2形態の第2有用物に加工する第2有用資源加工手段(図示せず)にそれぞれ配分供給するようになっている。
【0033】
前記第2配分供給装置90は、前記非常時に、含水率が30%以下と低い前記二次発酵物を前記原料供給手段20に供給してもよい。このとき、前記二次発酵物は、主に、原料の含水率値を調整するための原料含水率調整用資材として機能するよう用いられるものであるが、その固体分に担持され、発酵処理のために機能する好気性好熱菌を原料に添加する作用をもなすものである。
上記の二次発酵物の搬送のため、本下水汚泥資源化システム10は、前記二次発酵処理設備80から第2配分供給装置90を介して前記前記原料供給手段20に前記二次発酵物(原料調整用資材)を搬送するための原料調整用資材搬送経路91が設けられている。
【0034】
前記第2配分供給装置90には、上記したように炭化設備100に二次発酵物を搬送するための炭化原料搬送経路92が接続されており、炭化設備100は、搬送されてきた二次発酵物を炭化、好ましく活性炭化して、炭化物、好ましくは活性炭を製造する。炭化設備自体は従来の構造、構成のものを用いることができるので、詳細な説明は省略する。
前記炭化設備100で製造された炭化物、好ましくは活性炭は、その含水率が10%程度と低いため(また、空孔率の高さから)、前記二次発酵物自体と同様にそれ自体で原料の含水率調整剤としても用いることができるが、ここでは、二次発酵物との混合物を形成するための原料として説明する。
【0035】
前記混合手段110には、前記第2配分供給装置90との間に、二次発酵物を搬送するための第1混合原料搬送経路93が、前記炭化設備100との間に、炭化物を搬送するための第2混合原料搬送経路94が、それぞれ接続されている。
前記混合手段110は、回転する撹拌羽根等を用いて、送られて来た二次発酵物と炭化物を良く混合して混合物を形成する。このとき、一次発酵物の含水率等によって二次発酵物と炭化物の割合を変えることが好ましく、この割合は、前記第2配分供給装置90からの二次発酵物の量を調節したり、炭化設備100に供給量制御手段を設けて、炭化物の量を調節することによって行われる。
この混合中に、炭化物の細孔中に、二次発酵物自体あるいは二次発酵物中の微生物(あるいはその芽胞)が吸着され、炭化物は、少なくとも微生物(あるいはその芽胞)の担持体となる。
なお、前記第2配分供給装置90には、前記した第2有用資源加工手段(図示せず)に二次発酵物を供給する第2有用物原料供給経路95が接続されている。
【0036】
前記混合手段110には、前記第2配分供給装置90と同様に4方弁としての弁機構を備えた第3配分供給装置120が接続されている。
この第3配分供給装置120は、前記混合物の少なくとも一部を、前記原料供給手段20、後述する微生物活性化装置130、および第3形態の第3有用物に加工する第3有用資源加工手段(図示せず)にそれぞれ配分供給するようになっている。
以上のため、前記第3配分供給装置120には、前記原料供給手段20との間に第1混合物搬送経路96が、前記微生物活性化装置130との間に第2混合物搬送経路97が、そして前記第3有用資源加工手段との間に第3混合物搬送経路98がそれぞれ接続されている。
ここで、前記原料供給手段20には、前記二次発酵物と混合物の両者が供給されるようになっているが、これらの切り換えや混合状態の制御は、前記含水率センサ44による一次発酵物の含水率の測定値による一次発酵物の状態に基づき制御することができる。
【0037】
前記微生物活性化装置130は、前記混合手段110からの混合物を受け、かつ酸素供給手段(図示せず)からの酸素、および水給送手段(図示せず)からの水の供給を受けると共に、この水の温度を10℃~40℃に、酸素濃度を1~10mg/Lに維持して、前記混合物中の前記芽胞を発芽させて、活性化させ、活性化微生物含有混合物を生成する。この微生物活性化装置130は、下水処理設備200の生物処理槽210に、活性化微生物含有混合物搬送経路220を介して接続され、この経路220を介して活性化微生物含有混合物の供給を受ける。この微生物が活性化された混合物は、生物処理槽210において、活性化された微生物が下水の生物処理を行うと共に、炭化物(特に、活性炭)が下水のBOD,CODの顕著な低減を図る。
なお、前記脱水機15は、例えば、下水処理設備のこの生物処理槽210に接続された最終沈殿池212からの返送汚泥を受けこれを脱水する。このため、前記脱水機15とこの最終沈殿池212の間には、返送汚泥搬送経路230が接続されている。
【0038】
ここで、前記第2有用物とは、原料となる二次発酵物の含水率が一次発酵物のそれより低く設定されていることから、より乾燥した粉体状の肥料(堆肥)等を指すものである。
また、第3有用物とは、二次発酵物と炭化物の混合体であることから、二次発酵物の上記した肥料(堆肥)の作用と、炭化物の炭素固定の機能等から土壌改良材としての作用・機能をも果たすものである。
【0039】
ここで、前記した通常時(信号S1が示す含水率が所定値以下)と、非常時(信号S1が示す含水率が所定値を越える場合)における前記第2および第3配分供給装置90および120の作動について説明する。まず、前記第2配分供給装置90の作動を代表して説明する。
【0040】
先ず、前提として、脱水機15から含水率85%の脱水汚泥(原料)mを1時間当たり200kg、1日当たり5時間排出するものとする。したがって、原料供給手段20には、1日当たり1000kgの原料が供給される。
【0041】
通常時
上記原料(脱水汚泥)100質量部に対して、5質量部の混合物(原料調整用資材(二次発酵物:炭化物=1:1,従って含水率20%))を原料供給手段20に供給するとすると、前記配分供給装置102から原料供給手段20に供給される混合物は、1時間当たり10kg、そして、脱水機15と同期して、1日当たり5時間供給されるので、1日当たり50kgとなる。
したがって、混合手段110からの混合物の排出量は、1時間当たり10kg以上、そして、脱水機15と同期して、1日当たり5時間供給されるので、1日当たり50kg以上が必要である。すなわち、混合手段110からの混合物の排出のトータル量は、原料調整用資材としての必要分と余剰分を加算した量となる。
前記余剰分は、供給通路98を経て、前記混合物を第有用資源である第3有用物に加工する第3有用資源加工手段(図示せず)に供給される。
【0042】
前記必要分および余剰分に基づいてのトータル量の設定、ならびに上記同期のためのこのトータル量の時間当たりの排出量の設定、および4方弁の配分量を決定するための3つの排出口の開度の指示は、操作パネルによって行われる。
【0043】
したがって、操作パネルにより作動制御手段に前記トータル量の時間当たりの排出量が指示されると、この作動制御手段は、前記混合手段の排出手段をして、混合物を上記時間当たりの排出量で排出させる。
一方、4方弁の作動を制御する作動制御手段は、操作パネルにより、前記配分量(配分比率)が指示されると、前記排出手段から上記時間当たりの排出量で供給されてくる混合物を、上記の分量で配分して、原料供給手段20と第3有用資源加工手段に供給する。
【0044】
上記を具体的数値をもって以下説明する。以下の説明では、二次発酵物を、原料供給手段20に1時間当たり10kg、第2有用資源加工手段に1時間当たり5kg供給するものとする。すなわち、4方弁104の原料供給手段20への供給量:第2有用資源加工手段への供給量は、2:1である。
【0045】
すると、通常時においては、混合手段の排出手段から1時間当たり15kgの混合物が排出され、これが4方弁で上記の2:1に配分され、「2」が原料供給手段20に、「1」が第2有用資源加工手段に供給される。
【0046】
非常時
この非常時(一次発酵物の含水率が所定値(35%)を超えた状態)には、原料供給手段20への混合物の供給量を前記の通常時より増大するが、ここでは、1時間当たりの供給量を5倍である50kgとする場合を考える。この非常時には、第3有用資源加工手段への混合物の供給量を0とすると、前記4方弁の第3有用資源加工手段側への排出口側は閉ざされ、原料供給手段20への供給量を100%とする。したがって、原料供給手段20へは、混合物が1時間当たり50kg、1日当たり5時間の作動であるから、トータルで1日当たり250kg供給される。
その結果、この非常時においては、1日当たり原料mが1000kg、二次発酵物(原料調整用資材)が250kgとなり、コンベア24で供給される原料の含水率は、74%と通常の場合の8%減となるとともに、固形分が2.3倍強となるため、発酵に寄与する微生物量も増大する(微生物は固形分中の二次発酵物に担持されており、固形分量にほぼ比例するため)。
非常時においては、このように、混合物(原料調整用資材)の原料供給手段20への供給量を、通常時より増大することにより、一次発酵処理装置11に供給される原料の含水率を下げる一方で、発酵に寄与する微生物の量を増大させることにより、通常時より、発酵を促進させ、一次発酵処理装置11から排出される一次発酵物の発酵状態(含水率値で示される)を徐々に正常(正規:35%以下)に戻す。
混合物(原料調整用資材)の原料供給手段20への供給量の増大は、通常時を1とすると、2倍から10倍とすることが好ましい。この増大の上限は、通常時における一次発酵処理装置11の発酵処理容器12の余裕分(原料の発酵処理容器12内への投入量は、70~80%であるので、30~20%の空間がある)を考慮して決定される。
【0047】
前記貯蔵部84には、そこに貯蔵された二次発酵物の量(上面高さで判定する)が適正であるかを監視するため、上限センサおよび下限センサが設けられている。
前記上限センサは、排出手段の作動制御手段および3方弁の作動制御手段に接続されており、貯蔵部84に貯蔵された二次発酵物の量が所定上限量を超えたとき(貯蔵二次発酵物の上面が上限レベルを超えたとき)、信号S3を前記作動制御手段および作動制御手段に送信する。
【0048】
前記作動制御手段は、前記信号S3を受信すると、排出手段を作動して、前記貯蔵部84から貯蔵二次発酵物を排出する。そして、前記作動制御手段は、前記信号Sを受信すると、4方弁を、二次発酵物が供給通路側にのみ配分されるように設定して、このときは、第2有用資源加工手段のみに二次発酵物を供給する。

【0049】
前記下限センサは、方弁の作動制御手段に接続されており、貯蔵部84に貯蔵された二次発酵物の量が所定下限量を下回ったとき(貯蔵二次発酵物の上面が下限レベルより下がったとき)、信号S4を前記作動制御手段に送信する。前記作動制御手段は、前記信号S4を受信すると、前記方弁を、第1供給通路40側へ供給される一次発酵物の量が増大するように設定し、これにより、前記貯蔵部84に貯蔵される二次発酵物の量が増大するように設計されている。
【0050】
以上では、前記原料供給手段20における原料の主として含水率の調整用の資材である原料調整用資材を、二次発酵物と炭化物の混合物で説明したが、本発明においては、この原料調整用資材としては、前記二次発酵物のみを用いてもよい。
【0051】
なお、上記のように、原料調整用資材として混合物を使用するときは、必要に応じて、二次発酵物のみを二次発酵物として使用し、微生物量の調整を図ることも重要である。このことは、混合物を下水処理の生物処理槽に用いた場合も同様である。
【0052】
上記した発酵の促進のためには、一次発酵処理装置11に供給される原料の加温も有効である。その例を、図2を参照して、以下説明する。なお、この図2に示した下水汚泥資源化システムにおいては、上記の加温についての機構を重点的に説明する。したがって、この図2においては、二次発酵処理設備およびそれのみに関連する部材部品については図示せず、また明細書におけるその文章も省略する。
【0053】
前記原料ホッパー22の周囲には、該原料ホッパーの外壁との間に間隔を持った状態で、該原料ホッパーを包囲するようにジャケット150が配置されており、該原料ホッパー内の原料である有機性廃棄物を加温するための加温ガスを通す加温ガス用空間152が形成されている。
【0054】
前記発酵処理容器12の排出端12bから前記加温ガス用空間152に延びるように、前記発酵処理容器内での発酵に伴って発生した排出ガスを該発酵処理容器から前記加温空気用空間に加温ガスとして供給する加温ガス通路160が設けられている。この加温ガス通路160の前記発酵処理容器12の他端12b側には、発酵処理容器12内に発酵に伴って発生する排出ガスを装置外に排出するための排気ファン162が設けられている。
【0055】
前記加温ガス通路160には、内部を通る排出ガスを加温するための加温手段170が設けられている。上記したように、本発明の下水汚泥資源化システムにおいては、有機性廃棄物の発酵に超好熱菌を用いるので、原料である脱水汚泥の発酵促進のために加温するためと、脱水汚泥の含水率を更に低減にする目的で、加温ガスを加温するために、この加温手段170が設けられている。
【0056】
この加温手段170の作動を制御するため、加温手段制御手段172が設けられている。また、この加温手段制御手段172により前記加温手段170を目的に沿って制御するため、前記加温ガス通路160には、排出ガス温度監視手段174が設けられて、その中を流れる加温ガスの温度を検出・監視している。また、前記原料ホッパー22内には、原料温度監視手段176が設けられて、該原料ホッパー内の原料の温度を検出・監視している。
【0057】
前記発酵処理容器12内に設けられた含水率センサ44は、前記加温手段制御手段172にも接続されており、一次発酵物の含水率が所定値(35%)を越えた非常時に発せられる信号S1は、前記加温手段制御手段172にも送信される。
信号S1を受信した加温手段制御手段172は、加温手段170を作動して、加温ガス通路160を流れる排出ガス(加温ガス)を40℃以上に加温し、前記加温ガス用空間152に供給する。
以上により、非常時には、脱水汚泥である原料は、増量された原料調整用資材(二次発酵物)の供給を受けて、その含水率が低下されるとともに、発酵に用いられる微生物の量が増大し、さらには、上記の加温を受けて、前記微生物の活性が向上され、以上により、発酵が促進されることから、更に高速で、一次発酵物の発酵状態(含水率値で示される)を正常(正規:35%以下)に戻すことができる。
【0058】
前記加温ガス用空間152には、該加温ガス用空間152から排出される加温ガスを前記発酵処理容器12の上部空間に導入するための加温ガス導入管路154が接続されていることが好ましい。この加温ガス導入管路154により、加温ガスを前記発酵処理容器12の上部空間に導入し、加温して発酵の促進を図ることができる。
【0059】
前記原料ホッパー22内には、供給されてきた原料の温度を監視する温度センサ156を設けてもよい。この温度センサ156は、一次発酵物の含水率とは関連なく、原料温度が所定値以下のとき作動制御手段172に信号を送って、加温手段170を作動して、加温ガスの温度を上昇させて、原料の温度を上昇させるものである。この加温によれば、冬場などに、脱水汚泥の温度が極端に下がり、原料の発酵が完全でなく、遅れ、一次発酵物が上記した非常状態になることの防止の一助となることができる。
【0060】
本発明の下水汚泥資源化システム10においては、上記の構成により、非常時には、脱水汚泥である原料は、増量された原料調整用資材(混合物:二次発酵物+炭化物)の供給を受けて、その含水率が低下されるとともに、発酵に用いられる微生物の量が増大し、発酵が促進されるので、速やかに通常状態に復帰させることができる。
【符号の説明】
【0061】
10 下水汚泥資源化システム
11 一次発酵処理装置
12 発酵処理容器
15 脱水機
20 原料供給手段
22 原料ホッパー
24 コンベア
30 排出手段
34 第1配分供給手段
80 二次発酵処理設備
82 製造部
84 貯蔵部
90 第2配分供給手段
100 炭化設備
110 混合手段
120 第3配分供給手段
130 微生物活性化装置
200 下水処理設備
210 生物処理槽
212 最終沈殿池

【要約】      (修正有)
【課題】従来の密閉型堆肥化装置の問題点を解消した下水汚泥資源化システムを提供する。
【解決手段】下水汚泥を脱水して原料を形成する脱水手段と水平軸回転発酵処理容器を有し、原料を発酵処理して第1設定含水率値以下の一次発酵物を製造する一次発酵処理手段、発酵処理容器の排出端側に設けられ、一次発酵物を追発酵して、より含水率の低い第2設定含水率値以下の二次発酵物を製造する二次発酵処理手段、二次発酵物を炭化処理して炭化物を製造する炭化手段、二次発酵物と炭化手段からの炭化物を受け、これらを混合して混合物を作製する混合手段、および一次発酵物の含水率を測定する含水率測定手段を備え、混合手段には、混合物の少なくとも一部を、原料供給手段、および/または第3有用物に加工する加工手段に配分供給する手段が接続されている、下水汚泥資源化システムとする。
【選択図】図1
図1
図2