(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】実装装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/603 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01L21/603 C
(21)【出願番号】P 2024124175
(22)【出願日】2024-07-31
【審査請求日】2024-07-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000149011
【氏名又は名称】株式会社大橋製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】柏谷 尚克
(72)【発明者】
【氏名】冨田 明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 剛志
(72)【発明者】
【氏名】中村 誠
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎二
【審査官】豊島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-121146(JP,A)
【文献】特許第7320886(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/447-21/449
H01L21/60 -21/607
H05K 3/30
H05K13/00 -13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、
実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、
前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、
前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、
前記加圧部が前記ワークを加圧していない状態で前記印加情報取得部により取得される前記印加情報から算出される所定時間当たりの無負荷時印加量を算出し、前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの加圧時間と前記印加情報から算出される前記加圧時間における圧着時印加量を算出し、前記加圧時間に相当する時間中の前記無負荷時印加量の値を前記圧着時印加量から減じて圧着時放出印加量を算出する印加量算出部と、
前記圧着時放出印加量が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備える実装装置。
【請求項2】
前記第一の時間は、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始した時刻であって、
前記圧着時放出印加量が前記所定の範囲を外れると前記判別部が判別した場合、前記第二の時間以降において、前記加圧部が前記ワークを加圧するタイミング及び/又は前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力を、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始してから終了するまでの前記圧着時放出印加量が予め定めた許容範囲に収まるように調整する調整部を備える、請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、
実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、
前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、
前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、
前記加圧部が前記ワークを加圧していない状態で前記印加情報取得部により取得される前記印加情報から算出される所定時間当たりの無負荷時印加量を算出し、前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの加圧時間と前記印加情報から算出される前記加圧時間における圧着時印加量を算出し、前記加圧時間に相当する時間中の前記無負荷時印加量の値を前記圧着時印加量から減じて圧着時放出印加量を算出する印加量算出部と、を備え、
前記印加情報取得部は、熱容量が既知であって前記ワークに準じた基準ワークを前記実装ヘッドで加圧及び加熱するにあたり、前記加圧部が前記基準ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する基準印加情報とを取得可能であり、
前記印加量算出部は、前記実装ヘッドで前記基準ワークを加圧及び加熱する際に前記印加情報取得部で取得された前記基準ワークを加圧するタイミングと前記基準印加情報から、前記ワークの前記圧着時放出印加量に相当する前記基準ワークの基準圧着時放出印加量を算出可能であり、
前記コントローラは更に、
前記基準ワークの温度を計測する温度情報計測部と、
前記基準ワークの前記熱容量と前記温度情報計測部で得られる前記基準ワークの温度から前記基準ワークに伝導された基準伝導熱量を算出し、前記基準伝導熱量と前記基準圧着時放出印加量とを関係づけたテーブル又は関係式を作成し、前記テーブル又は前記関係式を参照して前記圧着時放出印加量に相当する前記基準圧着時放出印加量に関係づけられた前記基準伝導熱量に基づいて前記ワークの伝導熱量を算出する伝導熱量算出部と、
前記伝導熱量が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備える実装装置。
【請求項4】
前記第一の時間は、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始した時刻であって、
前記伝導熱量が前記所定の範囲を外れると前記判別部が判別した場合、前記第二の時間以降において、前記加圧部が前記ワークを加圧するタイミング及び/又は前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力を、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始してから終了するまでの前記伝導熱量が予め定めた許容範囲に収まるように調整する調整部を備える、請求項3に記載の実装装置。
【請求項5】
第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、
実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、
前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、
前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、
前記コントローラは、
前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、
前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの前記ワークを加圧するタイミングと前記印加情報に基づく印加パターンを作成するパターン作成部と、を備え、
前記印加情報取得部は、前記ワークに準じた基準ワークを前記実装ヘッドで加圧及び加熱するにあたり、前記加圧部が前記基準ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する基準印加情報とを取得可能であり、
前記パターン作成部は、前記実装ヘッドで前記基準ワークを加圧及び加熱する際に前記印加情報取得部で取得された前記基準ワークを加圧するタイミングと前記基準印加情報に基づく基準印加パターンを作成可能であり、
前記コントローラは更に、
前記印加パターンと前記基準印加パターンとを比較して、前記基準印加パターンに対する前記印加パターンの差異が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備える実装装置。
【請求項6】
前記第一の時間は、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始した時刻であって、
前記基準印加パターンに対する前記印加パターンの差異が前記所定の範囲を外れると前記判別部が判別した場合、前記第二の時間以降において、前記加圧部が前記ワークを加圧するタイミング及び/又は前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力を、前記実装ヘッドが前記ワークの加圧を開始してから終了するまでの前記印加パターンと前記実装ヘッドが前記基準ワークの加圧を開始してから終了するまでの前記基準印加パターンとの差異が予め定めた許容範囲に収まるように調整する調整部を備える、請求項5に記載の実装装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば接合部材(ACF等)を介して基板に部品を実装する際に使用される実装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に示されているように、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含んだ異方性導電フィルム(ACF)や異方性導電ペースト(ACP)などの接合部材を介して基板に部品(例えばFPC)を実装することが行われている。このような異方性導電フィルム等を含んだワークの実装に使用される実装装置(例えば特許文献2を参照)は、装置に載置したワークに対して進退移動可能な実装ヘッドを備えていて、実装ヘッドには、このヘッドの下端に設けた実装ツールに熱を伝導させるヒータが設けられている。そしてワークに対してヒータで加熱した実装ツールを押し付けることにより、導電性粒子によって基板と部品とを電気的に接続するとともに熱硬化性樹脂を硬化させてこれらを相互に固着させている。
【0003】
このようなヒータは、ヒータ制御部に電気的に接続されていて、ヒータに供給される電力をヒータ制御部が変更することによってヒータの温度が変化する。またヒータの内部には、例えば熱電対の如き温度センサが取り付けられていて、ヒータ制御部はこの温度センサで得られる温度情報に基づいてヒータに供給する電力を変更している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-82582号公報
【文献】特開2017-118147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ヒータの温度を計測する温度センサからの温度情報を監視することによって、ワークの実装が問題なく行われたかを間接的に確認することは可能である。しかし、ワークの温度を直接監視している訳ではないため、例えば、実装ツールがワークに対して完全に接触する前に実装ツールからの熱が接合部材に伝わり、接合部材に含まれる導電性粒子が十分に押し潰されるまえに熱硬化性樹脂が先に硬化し始める現象(先硬化)によって導通不良が生じる等の不具合が生じていても、これを把握することができない。このような不具合が生じる場合には、継続して生産が行われて不良品が大量に作られてしまうことが懸念されるため、温度センサのみに頼って生産を行うことにはリスクがある。
【0006】
このような点に鑑み、本発明は、生産中にワークが熱圧着される状況をヒータが備える温度センサとは別の観点で確認することによって実装の信頼性を高めることができる実装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、前記加圧部が前記ワークを加圧していない状態で前記印加情報取得部により取得される前記印加情報から算出される所定時間当たりの無負荷時印加量を算出し、前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの加圧時間と前記印加情報から算出される前記加圧時間における圧着時印加量を算出し、前記加圧時間に相当する時間中の前記無負荷時印加量の値を前記圧着時印加量から減じて圧着時放出印加量を算出する印加量算出部と、前記圧着時放出印加量が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、前記加圧部が前記ワークを加圧していない状態で前記印加情報取得部により取得される前記印加情報から算出される所定時間当たりの無負荷時印加量を算出し、前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの加圧時間と前記印加情報から算出される前記加圧時間における圧着時印加量を算出し、前記加圧時間に相当する時間中の前記無負荷時印加量の値を前記圧着時印加量から減じて圧着時放出印加量を算出する印加量算出部と、を備え、前記印加情報取得部は、熱容量が既知であって前記ワークに準じた基準ワークを前記実装ヘッドで加圧及び加熱するにあたり、前記加圧部が前記基準ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する基準印加情報とを取得可能であり、前記印加量算出部は、前記実装ヘッドで前記基準ワークを加圧及び加熱する際に前記印加情報取得部で取得された前記基準ワークを加圧するタイミングと前記基準印加情報から、前記ワークの前記圧着時放出印加量に相当する前記基準ワークの基準圧着時放出印加量を算出可能であり、前記コントローラは更に、前記基準ワークの温度を計測する温度情報計測部と、前記基準ワークの前記熱容量と前記温度情報計測部で得られる前記基準ワークの温度から前記基準ワークに伝導された基準伝導熱量を算出し、前記基準伝導熱量と前記基準圧着時放出印加量とを関係づけたテーブル又は関係式を作成し、前記テーブル又は前記関係式を参照して前記圧着時放出印加量に相当する前記基準圧着時放出印加量に関係づけられた前記基準伝導熱量に基づいて前記ワークの伝導熱量を算出する伝導熱量算出部と、前記伝導熱量が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、第一部材と第二部材との間に接合部材を介在させたワークを熱圧着する実装装置であって、実装ツールを前記第二部材に直接的又は間接的に押し付けて前記ワークを加圧する加圧部と、前記実装ツールを加熱するヒータとを有する実装ヘッドと、前記ヒータに電力を印加して前記ヒータを発熱させるヒータ制御部と、前記実装ヘッドを制御可能であり、前記ヒータ制御部に接続されるコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記実装ヘッドで前記ワークを加圧及び加熱する際に、前記加圧部が前記実装ツールで前記ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部と、前記加圧部が前記ワークを加圧した状態で前記印加情報取得部により取得される第一の時間から第二の時間までの前記ワークを加圧するタイミングと前記印加情報に基づく印加パターンを作成するパターン作成部と、を備え、前記印加情報取得部は、前記ワークに準じた基準ワークを前記実装ヘッドで加圧及び加熱するにあたり、前記加圧部が前記基準ワークを加圧するタイミングと前記ヒータ制御部が前記ヒータに印加する電力に関する基準印加情報とを取得可能であり、前記パターン作成部は、前記実装ヘッドで前記基準ワークを加圧及び加熱する際に前記印加情報取得部で取得された前記基準ワークを加圧するタイミングと前記基準印加情報に基づく基準印加パターンを作成可能であり、前記コントローラは更に、前記印加パターンと前記基準印加パターンとを比較して、前記基準印加パターンに対する前記印加パターンの差異が所定の範囲内にあるかを判別する判別部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の実装装置は、印加情報取得部によって、ワークを加圧するタイミングとヒータに印加する電力に関する印加情報を取得する。そして印加量算出部と判別部を備える実装装置においては、この印加情報に基づいて算出した圧着時放出印加量が所定の範囲内にあるかを判別することによって、また印加量算出部、温度情報計測部、伝導熱量算出部、及び判別部を備える実装装置においては、この印加情報に基づいて算出した伝導熱量が所定の範囲内にあるかを判別することによって、またパターン作成部と判別部を備える実装装置においては、この印加情報に基づいて作成した印加パターンに関する差異が所定の範囲内にあるかを判別することによって、ワークが意図した通りに加圧及び加熱されているかを判断することができる。このように本発明の実装装置によれば、生産中にワークが熱圧着される状況をヒータが備える温度センサとは別の観点で確認することができるため、高い信頼性でもってワークの実装を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る実装装置の一実施形態を模式的に示した図である。
【
図3A】ヒータ制御部からヒータに印加される電圧に関する図である。
【
図3B】ヒータ制御部からヒータに印加される電流に関する図である。
【
図3C】ヒータ制御部からヒータに印加される電力に関する図である。
【
図4】基準伝導熱量と基準圧着時放出印加量とを関係づけたテーブルの一例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る実装装置の一実施形態(実装装置1)について、図面を参照しながら説明する。以下の説明においては
図1に示した向き(後述するワーク100が下方に位置して実装ヘッド2が上方に位置する向き)で説明するが、係る方向は一例であって、本発明における実装装置の向きを限定する意図はない。
【0013】
まず実装装置1で熱圧着を行うワーク100に関係する点について説明する。本実施形態のワーク100は、
図1に示したように、基板101とFPC等の電子部品102との間にACF103を介在させたものである。なお基板101は、本明細書等における「第一部材」に相当する。同様に、電子部品102は「第二部材」に相当し、ACF103は「接合部材」に相当する。
【0014】
実装装置1でワーク100を熱圧着するにあたり、本実施形態では、緩衝材110も使用している。緩衝材110としては、例えばシリコーンゴム製のシートや、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムを基材とするテープが用いられる。
【0015】
緩衝材110は、ワーク100を熱圧着する際に電子部品102の上面を覆うように配される。ここで、実装装置1でワーク100を熱圧着する際は、後述する実装ツール5で電子部品102を押圧する。このとき実装ツール5が電子部品102に直接接触すると、場合によっては電子部品102を傷つけてしまうことが考えられるが、緩衝材110で電子部品102の上面を覆ってこの緩衝材110を実装ツール5で押圧することにより、電子部品102の傷付きを防止することができる。また電子部品102は、種類によっては上面に凹凸形状があり、例えば電子部品102の個体差によってはこの凹凸の高さにばらつきがあることが想定される。このような場合でも緩衝材110を用いることにより、この高さのばらつきが緩衝材110で吸収されて電子部品102を均一に加圧することができる。
【0016】
本実施形態の緩衝材110には、緩衝材110の温度を計測するための緩衝材温度センサ111が取り付けられている。緩衝材温度センサ111の一例としては、緩衝材110を挟持可能なクリップに熱電対を組み込んだものが挙げられる。なお緩衝材温度センサ111を緩衝材110に取り付けるにあたっては、実装ツール5で押圧する部分に可能な限り近づけておくことが好ましい。なお緩衝材110は、熱容量が既知であるものを使用する。緩衝材110の熱容量HCB(単位はJ/K)は、使用する素材の比熱に緩衝材110の体積を乗じることにより算出することができる。
【0017】
図1に破線で示したものは、例えば実装装置1でのワーク100の量産を開始するにあたって使用するワーク100に準じた基準ワーク200である。基準ワーク200は、ワーク100と同等の大きさになるものであって、実装装置1により加熱することが可能である。基準ワーク200は、熱伝導率が高く耐熱性及び強度に優れる素材で形成することが好適であり、本実施形態では窒化アルミニウムにより形成されている。なお基準ワーク200は、熱容量が既知であるものを使用する。窒化アルミニウムの比熱は、例えば720[J/(kg・K)]であるため、この比熱と基準ワーク200の体積を乗じることにより基準ワーク200の熱容量HCS(単位はJ/K)を算出することができる。
【0018】
本実施形態の基準ワーク200には、熱電対等の基準ワーク温度センサ201が設けられていて、基準ワーク200の温度を計測することが可能である。
【0019】
次に、実装装置1の構成について説明する。本実施形態の実装装置1は、
図1に示した実装ヘッド2、ヒータ制御部6、コントローラ7を備えている。
【0020】
実装ヘッド2は、
図1に示したヘッド本体部3と不図示の加圧部を備えている。ヘッド本体部3は、実装装置1が備える不図示のベースに対して上下方向に移動可能に設けられていて、加圧部が駆動すると昇降移動し、下降した際はワーク100に対して圧力を加えることができる。加圧部は、例えばサーボモータによって送りねじを回転させてナットを進退移動させるようにしたものや、シャフトに対して可動子が非接触で進退移動するシャフトモータを用いたものや、空気等の媒体が導入されることによってロッドが進退移動するシリンダ等により構成することができる。
【0021】
更に実装ヘッド2は、ヘッド本体部3の下端部に取り付けられるヒータ4を備えている。ヒータ4は、通電させると発熱部が発熱するものである。ヒータ4を発熱させる方法としては、例えばコンスタントヒート方式やパルスヒート方式が挙げられる。本実施形態のヒータ4は、パルスヒート方式で加熱を行うパルスヒータであり、ヒータ4には、熱電対の如き温度センサが設けられている。
【0022】
また実装ヘッド2は、ヒータ4の下端部に取り付けられる実装ツール5を備えている。実装ツール5は、電子部品102におけるACF103が接する部位を押圧可能な形状で形成されている。実装ツール5は、熱伝導率が高い素材で形成することが好適である。本実施形態の実装ツール5は窒化アルミニウム製である。
【0023】
ヒータ制御部6は、ヒータ4に電力を印加してヒータ4を発熱させる機能を有する。本実施形態のヒータ制御部6は、互いに電気的に接続された温度調整器6aと電力調整器6bで構成されている。温度調整器6aは、ヒータ4における温度センサとコントローラ7に電気的に接続されていて、電力調整器6bはヒータ4における発熱部に電気的に接続されている。温度調整器6aは、コントローラ7から出力されるヒータ4の目標温度に関する電気信号と、ヒータ4の温度センサから得られるヒータ4の温度に関する電気信号に基づき、電力調整器6bに対し、電力調整器6bがヒータ4に対して出力する電力の大きさに関係する情報(以下、「パワー情報」と称する)を含んだ電気信号を出力する。電力調整器6bは、温度調整器6aからの電気信号に基づき、所定の電圧と電流になる電力(交流電力)をヒータ4に出力する。ここでパワー情報は、例えば温度調整器6aから電力調整器6bに出力される電気信号の電圧値や電流値であって、この場合に電力調整器6bは、この電気信号の電圧値等の大きさに応じた電力をヒータ4に出力する。一例としてこの電気信号の電圧値が0Vから10Vに変わると、電力調整器6bからヒータ4に出力される電力の大きさは、0%から100%に変化する。ここで、電力調整器6bからヒータ4に出力される電力の電圧値と電流値を、「電力調整器出力情報」と称する。そして上述したパワー情報と電力調整器出力情報を総称して、「印加情報」と称する。すなわち印加情報は、ヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する情報であって、例えば温度調整器6aから電力調整器6bに出力される電気信号の電圧値や電流値が含まれ、電力調整器6bからヒータ4に出力される電力の電圧値や電流値が含まれる。またパワ-情報と電力調整器出力情報との間には、一例として挙げた温度調整器6aの電気信号における電圧値と電力調整器6bの電力の大きさの関係性のように、相似的な関係がある。
【0024】
コントローラ7は、実装ヘッド2、ヒータ制御部6をはじめ実装装置1の各部に電気的に接続されている。本実施形態のコントローラ7には、上述した緩衝材温度センサ111や基準ワーク温度センサ201も電気的に接続可能である。コントローラ7は、
図2に示すように、コントローラ7に接続された各種機器からの情報が含まれる電気信号が入力され且つこれらの機器を動作させる情報を含む電気信号を出力してこれらの機器を制御する制御部8と、制御部8に接続され、制御部8を動作させるプログラムや各種の情報を記憶する記憶部9と、制御部8に接続され、実装装置1に関する情報を視覚や聴覚によって作業者に知覚させる出力部10とを備えている。制御部8は、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)や専用ボードにより構成することができる。また記憶部9は、例えば半導体メモリやHDDにより構成することができる。そして出力部10は、例えばLEDのように単純に光を発光させるものや、ディスプレイのように各種情報を具体的に表示させるものや、ブザーやスピーカのように音を発するもので構成することができる。
【0025】
本実施形態の制御部8は、コントローラ7に接続された各種機器を制御することができる他、下記の印加情報取得部11、印加量算出部12、温度情報計測部13、伝導熱量算出部14、パターン作成部15、判別部16、調整部17として機能するように構成されている。
【0026】
印加情報取得部11は、実装ヘッド2でワーク100を加圧及び加熱する際に、加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングとヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報を取得する機能を有する。
【0027】
また印加情報取得部11は、上述した基準ワーク200を実装ヘッド2で加圧及び加熱するにあたり、加圧部が基準ワーク200を加圧するタイミングとヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する情報(以下、「基準印加情報」という)とを取得する機能を有する。基準印加情報は、上述した印加情報(ワーク100を実装装置1で熱圧着するときのパワー情報と電力調整器出力情報)に対応するものであって、基準ワーク200を実装装置1で熱圧着するときのパワー情報(基準パワー情報)と電力調整器出力情報(基準電力調整器出力情報)の総称である。
【0028】
印加量算出部12は、加圧部がワーク100を加圧していない状態で印加情報取得部11により取得される印加情報から算出される所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0を算出し、また加圧部がワーク100を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間(
図3A~
図3C参照)と、印加情報から算出されるこの加圧時間における圧着時印加量E1を算出し、更にこの加圧時間に相当する時間中の無負荷時印加量E0(上述した所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0を、第一の時間T1から第二の時間T2までの時間当たりの値に換算したもの)を圧着時印加量E1から減じて圧着時放出印加量E2を算出する機能を有する。なお第一の時間T1と第二の時間T2は、印加情報取得部11で電圧値と電流値を取得する周期(サンプリング周期)に応じた任意の時間である。
図3A~
図3Cにおいて第一の時間T1は、実装ヘッド2の加圧部がヘッド本体部3を下降させるように駆動してワーク100への加圧が開始された加圧開始時間Tsと一致しているが、第一の時間T1は加圧開始時間Tsより後でもよい。そして第二の時間T2は、実装ヘッド2の加圧部がヘッド本体部3を上昇させるように駆動してワーク100への加圧が終了した加圧終了時間Tfより前であるが、第二の時間T2は加圧終了時間Tfと一致していてもよい。
【0029】
また印加量算出部12は、実装ヘッド2で基準ワーク200を加圧及び加熱する際に印加情報取得部11で取得された基準ワーク200を加圧するタイミングと上述した基準印加情報から、圧着時放出印加量E2に相当する基準ワーク200の基準圧着時放出印加量ESを算出する機能を有する。
【0030】
ここで、印加情報取得部11と印加量算出部12について、
図3A~
図3Dを参照しながら具体的に説明する。
図3Aにおける電圧に関するグラフにおいて、縦軸は、印加情報取得部11が印加情報として取得した電力調整器6bがヒータ4に印加する交流の電圧値(単位はV)であり、横軸は時間(単位は秒)である。また
図3Bにおける電流に関するグラフにおいて、縦軸は、印加情報取得部11が印加情報として取得した電力調整器6bがヒータ4に印加する交流の電流値(単位はA)であり、横軸は時間である。そして
図3Cにおける電力のグラフにおいて、縦軸は、印加情報取得部11で取得された上記の電圧値と電流値の積を電力(単位はW)として示した値であり、横軸は時間である。
図3A~
図3Cの各グラフは塗りつぶされたように描かれているが、これは印加情報取得部11で電圧値と電流値を取得する周期(サンプリング周期)が極めて短いことによる。すなわち印加情報取得部11は、電圧値、電流値、電力値をリアルタイムで取得することができる。印加情報取得部11で得られた、電圧値、電流値、電力値とこれらを取得する際の時間は、記憶部9に記憶される。なお
図3Dは、説明の都合上、
図3Cにおいて塗りつぶして示したグラフを白抜きにして概略的に示した図である。
【0031】
ヒータ制御部6がヒータ4に対して
図3C、
図3Dに示すように電力を供給する際、印加量算出部12は、加圧開始時間Tsより前の電力値と加圧終了時間Tfより後の電力値を確認する。そして、加圧開始時間Tsより前の所定時間当たりの電力値と加圧終了時間Tfより後の所定時間当たりの電力値の平均値を、上述した所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0として算出する。なお、所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0は、加圧開始時間Tsより前の所定時間当たりの電力値のみで設定してもよいし、加圧終了時間Tfより後の所定時間当たりの電力値のみで設定してもよい。
【0032】
また印加量算出部12は、加圧部がワーク100を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間と、この加圧時間における電力値を確認する。そしてこの加圧時間における電力値を、上述した圧着時印加量E1(単位はJ)として算出する。
【0033】
更に印加量算出部12は、算出した加圧時間(第二の時間T2-第一の時間T1)と所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0によって、加圧時間に相当する時間中の無負荷時印加量E0(単位はJ)として算出する。そして圧着時印加量E1から加圧時間中の無負荷時印加量E0を減じることで圧着時放出印加量E2(単位はJ)を算出する(E2=E1-E0)。
図3Dにおいて圧着時放出印加量E2は、概ね、第一の時間T1と第二の時間T2の間であって電力値P0と電力値P1の間に位置する矩形状部分の面積に相当する。
【0034】
温度情報計測部13は、上述した基準ワーク温度センサ201からの情報に基づいて基準ワーク200の温度を計測する機能を有する。
【0035】
また温度情報計測部13は、緩衝材110を用いてワーク100を熱圧着する際、緩衝材温度センサ111からの情報に基づいて緩衝材110の温度を計測する機能を有する。
【0036】
伝導熱量算出部14は、基準ワーク200の熱容量HCSと温度情報計測部13で得られる基準ワーク200の温度から基準ワーク200に伝導された基準伝導熱量QSを算出し、また基準伝導熱量QSと基準圧着時放出印加量ESとを関係づけたテーブル又は関係式を作成し、更にこのテーブル又は関係式を参照して圧着時放出印加量E2に相当する基準圧着時放出印加量ESに関係づけられた基準伝導熱量QSに基づいてワーク100の伝導熱量Qを算出する機能を有する。ここで基準伝導熱量QSと基準圧着時放出印加量ESとを関係づけたテーブルは、例えば
図4に示す如きものであり、複数の基準圧着時放出印加量ESの値と、その各々に対応する圧着時放出印加量E2の値が関係づけられている。そして基準伝導熱量QSと基準圧着時放出印加量ESとを関係づけた関係式は、例えば
図4に示した複数の基準圧着時放出印加量ESの値と圧着時放出印加量E2の値がある場合に、これら離散した数値を補間する式である。このような関係式の一例としては、複数の基準圧着時放出印加量ESの値と圧着時放出印加量E2の値に基づく最小二乗法による一次近似曲線が挙げられる。
【0037】
また伝導熱量算出部14は、緩衝材110を用いてワーク100を熱圧着する際、緩衝材110の熱容量HCBと温度情報計測部13で得られる緩衝材110の温度から緩衝材110に伝導された緩衝材伝導熱量QBを算出し、ワーク100の伝導熱量Qから緩衝材伝導熱量QBを減じてワーク100の補正伝導熱量QRを算出する機能を有する。
【0038】
パターン作成部15は、印加情報取得部11で取得された第一の時間T1から第二の時間T2までのワーク100を加圧するタイミングと印加情報に基づく印加パターンを作成する機能を有する。印加情報取得部11により取得される印加情報として、例えば電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報を用いる場合、パターン作成部15は、
図3A~
図3Cに示した第一の時間T1から第二の時間T2までの電圧に関するグラフ、電流に関するグラフ、電力に関するグラフを画像データとして作成する。またパターン作成部15は、実装ヘッド2で基準ワーク200を加圧及び加熱する際に印加情報取得部11で取得された基準ワーク200を加圧するタイミングと上述した基準印加情報に基づく基準印加パターンを作成する機能を有する。すなわちパターン作成部15は、印加情報取得部11により取得される基準印加情報として、電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する基準電力調整器出力情報を用いる場合は、基準ワーク200における
図3A~
図3Cに示した如きグラフを画像データとして作成する機能を有する。作成したワーク100のグラフに関する画像データと基準ワーク200のグラフに関する画像データは、記憶部9に記憶される。
【0039】
判別部16は、上述した圧着時放出印加量E2に関する判別、上述した伝導熱量Qに関する判別、上述した補正伝導熱量QRに関する判別、及び上述した印加パターンと基準印加パターンに関する判別を行う機能を有する。
【0040】
ここで圧着時放出印加量E2に関し、判別部16は、圧着時放出印加量E2が所定の範囲内にあるかを判別する機能を有する。圧着時放出印加量E2に関係する所定の範囲は、例えば理論的に導出できる場合はその理論値に基づいて決めてもよいし、実装装置1でワーク100の量産を実施する前に行われるワーク100のテスト生産の結果に基づいて決めてもよい。実施形態において上述した所定の範囲となる値は記憶部9に記憶されていて、判別部16は、圧着時放出印加量E2が記憶部9に記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。
【0041】
また印加量算出部12で基準ワーク200の基準圧着時放出印加量ESを算出する場合、判別部16は、圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差異を算出し、この差異が所定の範囲内にあるかを判別するものでもよい。この場合にも上述した所定の範囲となる値は記憶部9に記憶されているものとし、判別部16は、圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差を算出し、この差の値が記憶部9に記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。
【0042】
そして伝導熱量Qに関し、判別部16は、伝導熱量Qが所定の範囲内にあるかを判別する機能を有する。本実施形態において、上述した所定の範囲となる値は記憶部9に記憶されていて、判別部16は、伝導熱量Qの値が記憶部9に記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。また補正伝導熱量QRに関し、判別部16は、補正伝導熱量QRが所定の範囲内にあるかを判別する機能を有する。本実施形態において、上述した所定の範囲となる値は記憶部9に記憶されていて、判別部16は、補正伝導熱量QRの値が記憶部9に記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。
【0043】
また判別部16は、印加パターンと基準印加パターンに関し、印加パターンと基準印加パターンを比較して、基準印加パターンに対する印加パターンの差異が所定の範囲にあるかを判別する機能を有する。具体例を挙げて説明すると、例えば印加パターンが
図3C、
図3Dにおける電力に関するグラフである場合、時間T1(加圧開始時間Ts)から時間Ta×2までは略一定の割合で傾いていて、この間に電力は時間T1を基準としてPa増加し、その後電力はしばらく一定であるが、その後は減少し、加圧終了時間Tfでは加圧開始時間Tsのときと同程度の電力になる。すなわち、印加パターンにおける時間T1から時間Ta×2経過するまでの間で面積は、(1/2)×(Ta×2)×Pa=Ta×Pa増加している。ここで基準印加パターンは、図示は省略するが
図3C、
図3Dに示したグラフに対して時間T1からの傾きが急なものであるとする。具体的には基準印加パターンは、
図3C、
図3Dに示したグラフに対して、時間T1から時間Taまでは略一定の割合で傾いていて、この間に電力は時間T1を基準としてPa増加し、時間Taから時間(Ta×2)では一定の電力Paとなり、その後は印加パターンと同一であるとする。すなわち基準印加パターンにおける時間T1から時間Ta×2経過するまでの間で面積は、(1/2)×Ta×Pa+Ta×Pa=(3/2)×Ta×Pa増加している。そして判別部16は、基準印加パターンに対する印加パターンの差異として、両者の面積の差が(1/4)×Ta×Pa以内であれば所定の範囲に収まっていると設定されているとする。このように設定されている場合において、判別部16は、基準印加パターンに対する印加パターンの差異は所定の範囲を外れていると判断する。
【0044】
調整部17は、上述した判別部16での判別手法(圧着時放出印加量E2に関する判別手法、伝導熱量Qに関する判別手法、補正伝導熱量QRに関する判別手法、印加パターンと基準印加パターンに関する判別手法)に応じて、実装ヘッド2の加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を調整する機能を有する。なお調整部17による具体的な調整手法については後述する。
【0045】
次に、実装装置1によってワーク100を熱圧着する第一の方法として、制御部8が備える印加情報取得部11、印加量算出部12、及び判別部16を機能させ、圧着時放出印加量E2に関する判別手法を用いる場合の具体例について説明する。なお以下の説明における印加情報取得部11により取得される印加情報は、電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報である。
【0046】
まず、実装ヘッド2の下方にワーク100をセットし、実装ヘッド2によってワーク100への加圧及び加熱を実施する。なお本実施形態においては、緩衝材110を用いてワーク100への加圧及び加熱を行うこととする。
【0047】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報(本実施形態では、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)を取得する。
【0048】
そして印加量算出部12は、加圧部がワーク100を加圧していない状態で印加情報取得部11により取得される印加情報(上述したように、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)から算出されるワーク100の所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0を算出し、また加圧部がワーク100を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間と、上記の印加情報から算出されるこの加圧時間におけるワーク100の圧着時印加量E1を算出し、更にこの加圧時間に相当する時間におけるワーク100の無負荷時印加量E0(上述したワーク100の所定時間当たりの無負荷時印加量を、第一の時間T1から第二の時間T2までの時間当たりの値に換算したもの)を圧着時印加量E1から減じて第一の時間T1から第二の時間T2までの圧着時放出印加量E2(単位はJ)を算出する。算出した圧着時放出印加量E2は、記憶部9に記憶される。なお第一の時間T1は、実装ヘッド2の加圧部によってワーク100への加圧が開始された加圧開始時間Tsである。なお、判別部16で用いられる圧着時放出印加量E2に関係する所定の範囲は、例えば実装装置1でワーク100の量産を実施する前に行われるワーク100のテスト生産の結果に基づいて予め導かれていて、記憶部9にはこの所定の範囲が記憶されている。
【0049】
次いで判別部16は、取得した圧着時放出印加量E2が上述した所定の範囲内にあるか否かを判別する。ここで、圧着時放出印加量E2が所定の範囲内であると判別部16が判断する場合は、実装装置1は正常に動作しているとして制御部8はワーク100を熱圧着する動作を継続する。一方、圧着時放出印加量E2が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れていると判別部16が判断する場合、制御部8は、出力部10から報知を行い、必要に応じてワーク100を熱圧着する動作を停止する。これにより、ACF103の硬化不足等が発生する要因が生じたことを作業者に直ちに伝えることができ、またワーク100の不良品が大量に作られてしまう不具合を防止することができる。
【0050】
ところで、圧着時放出印加量E2が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れていると判別部16が判断する場合、上述した調整部17を機能させることにより、ワーク100を熱圧着する動作を停止させることなく実装装置1を動作させることが可能である。
【0051】
本実施形態の調整部17は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの圧着時放出印加量E2が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れていると判別部16が判断する場合、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を、実装ヘッド2がワーク100の加圧を開始してから終了するまでの圧着時放出印加量E2が予め定めた許容範囲に収まるように調整する機能を有する。
【0052】
このような調整部17によれば、例えば加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間でACF103に対して必要な熱量が加わっていないと考えられる場合も、第二の時間T2以降において不足した熱量を加えることができるため、良品のワーク100を生産し続けることができる。また、本実施形態の実装装置1によれば、生産中にワーク100が熱圧着される状況をヒータ4が備える温度センサとは別の観点で確認することができるため、高い信頼性でもってワーク100の実装を行うことができる。
【0053】
圧着時放出印加量E2に関する判別手法は、印加量算出部12で基準ワーク200の基準圧着時放出印加量ESを算出する場合においては、以下のように用いることができる。なお以下の説明における印加情報取得部11により取得される印加情報も、電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報であるとする。
【0054】
まず、基準ワーク200を用いて実装ヘッド2での加圧及び加熱を実施する。実装ヘッド2の下方に基準ワーク200がセットされた後、制御部8は、実装ヘッド2の加圧部を駆動させてヘッド本体部3を下降させ、実装ツール5で基準ワーク200を加圧する。また、ヒータ制御部6から電力を供給してヒータ4を発熱させ、実装ツール5を加熱する。
【0055】
このとき印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5で基準ワーク200を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する基準印加情報(本実施形態では、基準ワーク200を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する基準電力調整器出力情報)を取得する。
【0056】
上記のようにして印加情報取得部11で取得された基準ワーク200を加圧するタイミング、電圧値、及び電流値により、印加量算出部12は、
図3A~
図3Dを参照しながら説明した上記の圧着時放出印加量E2を算出した手順と同様の手順で基準ワーク200の基準圧着時放出印加量ESを算出する。すなわち印加量算出部12は、加圧部が基準ワーク200を加圧していない状態で印加情報取得部11により取得される基準印加情報(上述したように、基準ワーク200を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する基準電力調整器出力情報)から算出される基準ワーク200の所定時間当たりの基準無負荷時印加量を算出し、また加圧部が基準ワーク200を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間と、上記の基準印加情報から算出されるこの加圧時間における基準ワーク200の基準圧着時印加量を算出し、更にこの加圧時間に相当する時間における基準ワーク200の基準無負荷時印加量(上述した基準ワーク200の所定時間当たりの無負荷時印加量を、第一の時間T1から第二の時間T2までの時間当たりの値に換算したもの)を基準ワーク200の基準圧着時印加量から減じて、第一の時間T1から第二の時間T2までの基準圧着時放出印加量ES(単位はJ)を算出する。算出した基準圧着時放出印加量ESは、記憶部9に記憶される。なお本実施形態において第一の時間T1は、実装ヘッド2の加圧部によって基準ワーク200への加圧が開始された加圧開始時間Tsであり、第二の時間T2は、その加圧が終了した加圧終了時間Tfである。本実施形態において印加量算出部12は、基準圧着時放出印加量ESを、サンプリング周期に対応する所定の時間毎に加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまで複数算出する。
【0057】
このようにして加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまで複数の基準圧着時放出印加量ESを算出した後は、実装ヘッド2の下方にワーク100をセットし、実装ヘッド2によってワーク100への加圧及び加熱を実施する。なお本実施形態においては、緩衝材110を用いてワーク100への加圧及び加熱を行うこととする。
【0058】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報(本実施形態では、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)を取得する。
【0059】
そして印加量算出部12は、加圧部がワーク100を加圧していない状態で印加情報取得部11により取得される印加情報(上述したように、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)から算出されるワーク100の所定時間当たりの無負荷時印加量Eu0を算出し、また加圧部がワーク100を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間と、上記の印加情報から算出されるこの加圧時間におけるワーク100の圧着時印加量E1を算出し、更にこの加圧時間に相当する時間におけるワーク100の無負荷時印加量E0(上述したワーク100の所定時間当たりの無負荷時印加量を、第一の時間T1から第二の時間T2までの時間当たりの値に換算したもの)を圧着時印加量E1から減じて第一の時間T1から第二の時間T2までの圧着時放出印加量E2(単位はJ)を算出する。算出した圧着時放出印加量E2は、記憶部9に記憶される。なお第一の時間T1は、実装ヘッド2の加圧部によってワーク100への加圧が開始された加圧開始時間Tsであって、圧着時放出印加量E2は、基準圧着時放出印加量ESを算出したときと同一のタイミングで加圧開始時間Tsから第二の時間T2まで複数取得される。
【0060】
次いで判別部16は、取得した複数の圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESに関し、同じタイミングで取得された圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差を算出し、この差の値が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。なお判別部16による判別は、取得した個々の圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差に基づいて行ってもよいし、連続した所定のまとまりとなる圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差に基づいて行ってもよい。
【0061】
ここで、圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲内であると判別部16が判断する場合は、実装装置1は正常に動作しているとして制御部8はワーク100を熱圧着する動作を継続する。一方、圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、制御部8は、出力部10から報知を行い、必要に応じてワーク100を熱圧着する動作を停止する。これにより、ACF103の硬化不足等が発生する要因が生じたことを作業者に直ちに伝えることができ、またワーク100の不良品が大量に作られてしまう不具合を防止することができる。
【0062】
ところで、圧着時放出印加量E2と基準圧着時放出印加量ESとの差が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、上述した調整部17を機能させることにより、ワーク100を熱圧着する動作を停止させることなく実装装置1を動作させることが可能である。
【0063】
本実施形態の調整部17は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの圧着時放出印加量E2と加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの基準圧着時放出印加量ESとの差が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を、実装ヘッド2がワーク100の加圧を開始してから終了するまでの圧着時放出印加量E2と実装ヘッド2が基準ワーク200の加圧を開始してから終了するまでの基準圧着時放出印加量ESの差異が予め定めた許容範囲に収まるように調整する機能を有する。この点につき具体的な一例を挙げて説明すると、判別部16は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの圧着時放出印加量E2として、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間に取得した複数の圧着時放出印加量E2の合計を算出し、また加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの基準圧着時放出印加量ESとして、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間に取得した複数の基準圧着時放出印加量ESの合計を算出し、これらの合計の差が記憶部9に予め記憶されている所定の範囲内であるかを判断する。そしてこの所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、調整部17は、予め取得した加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの複数の基準圧着時放出印加量ESの合計を算出し、また現在の条件でワーク100を熱圧着した場合に予想される加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの複数の圧着時放出印加量E2の合計を算出する。そして調整部17は、これらの合計の差が記憶部9に予め記憶されている許容範囲に収まるように、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧する時間を増減させることによりワーク100を加圧するタイミングを調整し、及び/又は、ヒータ制御部6がヒータ4に印加する電圧値と電流値を増減させることにより電力を調整する。
【0064】
このような調整部17によれば、例えば加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間でACF103に対して必要な熱量が加わっていないと考えられる場合も、第二の時間T2以降において不足した熱量を加えることができるため、良品のワーク100を生産し続けることができる。
【0065】
次に、実装装置1によってワーク100を熱圧着する第二の方法として、制御部8が備える印加情報取得部11、印加量算出部12、温度情報計測部13、伝導熱量算出部14、及び判別部16を機能させ、伝導熱量Qに関する判別手法を用いる場合の具体例について説明する。本実施形態においても、印加情報取得部11により取得される印加情報は、電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報である。
【0066】
第二の方法においては、まず、基準ワーク200を用いて実装ヘッド2での加圧及び加熱を実施する。実装ヘッド2の下方に基準ワーク200がセットされた後、制御部8は、実装ヘッド2の加圧部を駆動させてヘッド本体部3を下降させ、実装ツール5で基準ワーク200を加圧する。また、ヒータ制御部6から電力を供給してヒータ4を発熱させ、実装ツール5を加熱する。
【0067】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5で基準ワーク200を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する基準印加情報(本実施形態では、基準ワーク200を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する基準電力調整器出力情報)を取得する。このとき温度情報計測部13は、印加情報取得部11が基準印加情報を取得するタイミングに合わせて、基準ワーク温度センサ201からの情報に基づいて基準ワーク200の温度を計測する。
【0068】
そして印加量算出部12は、第一の方法と同様の手順で、加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでサンプリング周期に対応する所定の時間毎に複数の基準圧着時放出印加量ES(単位はJ)を算出する。複数の基準圧着時放出印加量ESと、基準圧着時放出印加量ESを取得するタイミングで計測された基準ワーク200の温度に関する情報は、記憶部9に記憶される。
【0069】
そして伝導熱量算出部14は、実装ツール5で基準ワーク200を加圧、加熱する際に基準ワーク200に伝導された基準伝導熱量QS(単位はJ)を算出する。具体的には、基準圧着時放出印加量ESを取得するタイミングで取得された基準ワーク200の温度情報に関し、基準ワーク200への加圧が開始された加圧開始時間Tsのときでの基準ワーク200の温度を基準とする温度差ΔTS(単位はK)を算出する。そして予め算出している基準ワーク200の熱容量HCSにこの温度差ΔTSを乗じることにより、基準圧着時放出印加量ESを取得するタイミング毎での基準伝導熱量QS(QS=HCS×ΔTS)を算出する。
【0070】
また伝導熱量算出部14は、例えば
図4に示す如き、対応する基準圧着時放出印加量ESと基準伝導熱量QSを関連付けたテーブル18を作成する。なお基準圧着時放出印加量ESと基準伝導熱量QSは、実装ヘッド2が基準ワーク200を加圧するタイミングとヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を変更した複数種類が取得されていて、テーブル18では、これら複数種類の基準圧着時放出印加量ESと基準伝導熱量QSが関連付けられている。本実施形態の伝導熱量算出部14は、基準伝導熱量QSと基準圧着時放出印加量ESとを関係づけた関係式を作成する機能も有している。本実施形態における関係式は、
図4に示した複数の基準圧着時放出印加量ESの値と圧着時放出印加量E2の値に基づいて導かれる最小二乗法による一次近似曲線であって、この関係式により、離散した複数の基準圧着時放出印加量ESの値と圧着時放出印加量E2の値の間の範囲が補間される。
【0071】
その後は、実装ヘッド2の下方にワーク100をセットし、実装ヘッド2によってワーク100への加圧及び加熱を実施する。実装ヘッド2の下方にワーク100がセットされた後、制御部8は、実装ヘッド2の加圧部を駆動させてヘッド本体部3を下降させ、実装ツール5でワーク100を加圧する。また、ヒータ制御部6から電力を供給してヒータ4を発熱させ、実装ツール5を加熱する。なお本実施形態においても、緩衝材110を用いてワーク100への加圧及び加熱を行うこととする。
【0072】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報(本実施形態では、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)を取得する。また印加量算出部12は、第一の方法と同様の手順で、加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでサンプリング周期に対応する所定の時間毎に複数の圧着時放出印加量E2(単位はJ)を算出する。算出した複数の圧着時放出印加量E2は、記憶部9に記憶される。
【0073】
伝導熱量算出部14は、上述したテーブル18又は関係式を参照し、圧着時放出印加量E2に相当する基準圧着時放出印加量ESを選択する。基準圧着時放出印加量ESは基準伝導熱量QSと関係づけられているため、圧着時放出印加量E2の値に相当する基準圧着時放出印加量ESを選択することにより、ワーク100に伝導された熱量であると推定される種類の伝導熱量Qを算出することができる。
【0074】
次いで判別部16は、算出した種類の伝導熱量Qに関し、記憶部9に予め記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。なお判別部16による判別は、選択した種類の伝導熱量Qに含まれる複数の伝導熱量Q(サンプリング周期に対応する所定の時間毎の伝導熱量Q)に関し、個々の伝導熱量Qに基づいて行ってもよいし、連続した所定のまとまりとなる伝導熱量Qに基づいて行ってもよい。
【0075】
ここで、伝導熱量Qが記憶部9に記憶されている所定の範囲内であると判別部16が判断する場合は、実装装置1は正常に動作しているとして制御部8はワーク100を熱圧着する動作を継続する。一方、伝導熱量Qが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、制御部8は、出力部10から報知を行い、必要に応じてワーク100を熱圧着する動作を停止する。これにより、ACF103の硬化不足等が発生する要因が生じたことを作業者に直ちに伝えることができ、またワーク100の不良品が大量に作られてしまう不具合を防止することができる。
【0076】
伝導熱量Qが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合は、上述した調整部17を機能させることにより、ワーク100を熱圧着する動作を停止させることなく実装装置1を動作させることが可能である。
【0077】
本実施形態の調整部17は、伝導熱量Qが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を、実装ヘッド2がワーク100の加圧を開始してから終了するまでの伝導熱量Qが予め定めた許容範囲に収まるように調整する機能を有する。この機能について具体的な一例を挙げて説明すると、判別部16は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの伝導熱量Qとして、選択した種類の伝導熱量Qに含まれる加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間での複数の伝導熱量Qの合計を算出し、この合計が記憶部9に予め記憶されている値(伝導熱量に関する加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの基準となる値)の範囲内であるかを判断する。そしてこの所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、調整部17は、記憶部9に予め記憶されている許容範囲(伝導熱量に関する加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの間での基準となる許容範囲)に収まるように、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧する時間を増減させることによりワーク100を加圧するタイミングを調整し、及び/又は、ヒータ制御部6がヒータ4に印加する電圧値と電流値を増減させることにより電力を調整する。
【0078】
このような調整部17によれば、例えば加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間でACF103に対して必要な熱量が加わっていないと考えられる場合も、第二の時間T2以降において不足した熱量を加えることができるため、良品のワーク100を生産し続けることができる。また、本実施形態の実装装置1によれば、生産中にワーク100が熱圧着される状況をヒータ4が備える温度センサとは別の観点で確認することができるため、高い信頼性でもってワーク100の実装を行うことができる。
【0079】
上述した実装装置1は、緩衝材110の温度を計測する機能を備えることにより、ワーク100に伝導された熱量を更に正確に推定することができる。以下、緩衝材110の温度を計測してワーク100の補正伝導熱量QRを算出する手順について説明する。
【0080】
実装ツール5でワーク100を加圧、加熱する際、温度情報計測部13は、印加情報取得部11が基準印加情報を取得するタイミングに合わせて(すなわち圧着時放出印加量E2を取得するタイミングに合わせて)、基準ワーク温度センサ201からの情報に基づいて緩衝材110の温度を計測する。計測された緩衝材110の温度に関する情報は、記憶部9に記憶される。
【0081】
そして伝導熱量算出部14は、圧着時放出印加量E2を取得するタイミングで取得された緩衝材110の温度情報に関し、ワーク100への加圧が開始された加圧開始時間Tsのときでの緩衝材110の温度を基準とする温度差ΔTB(単位はK)を算出する。そして予め算出している緩衝材110の熱容量HCBにこの温度差ΔTBを乗じることにより、圧着時放出印加量E2を取得するタイミング毎での緩衝材伝導熱量QB(単位はJ)を算出する(QB=HCB×ΔTB)。更に伝導熱量算出部14は、テーブル18又は関係式を参照して算出した伝導熱量Qから補正伝導熱量QRを減じて、圧着時放出印加量E2を取得するタイミング毎での補正伝導熱量QR(QR=Q-QB)を算出する。
【0082】
そして判別部16は、補正伝導熱量QRが、記憶部9に予め記憶されている所定の範囲内にあるか否かを判別する。すなわち制御部8は、補正伝導熱量QRが記憶部9に記憶されている所定の範囲内であると判別部16が判断する場合は、実装装置1は正常に動作しているとしてワーク100を熱圧着する動作を継続し、補正伝導熱量QRが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合は、出力部10から報知を行い、必要に応じてワーク100を熱圧着する動作を停止する。
【0083】
緩衝材伝導熱量QBは、ヒータ4で加熱した際に緩衝材110に伝導された熱量であるといえる。すなわち、伝導熱量Qから補正伝導熱量QRを減じて算出される補正伝導熱量QRは、ワーク100に伝導された正味の熱量であるといえる。従って判別部16での判断に補正伝導熱量QRを用いることにより、ワーク100に伝導された熱量を更に正確に推定することができるため、ACF103の硬化不足等が発生する要因が生じたことを更に正確に把握することができる。
【0084】
本実施形態の実装装置1が備える調整部17は、上述した伝導熱量Qと同様に、補正伝導熱量QRが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合であっても、ワーク100を熱圧着する動作を停止させることなく実装装置1を動作させることが可能である。
【0085】
本実施形態の調整部17は、補正伝導熱量QRが記憶部9に記憶されている所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を、実装ヘッド2がワーク100の加圧を開始してから終了するまでの補正伝導熱量QRが予め定めた許容範囲に収まるように調整する機能を有する。この点について具体的な一例を挙げて説明すると、判別部16は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの補正伝導熱量QRとして、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間での複数の補正伝導熱量QRの合計を算出し、この合計が記憶部9に予め記憶されている値(補正伝導熱量に関する加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの基準となる値)の範囲内であるかを判断する。そしてこの所定の範囲を外れると判別部16が判断する場合、調整部17は、記憶部9に予め記憶されている許容範囲(補正伝導熱量に関する加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの間での基準となる許容範囲)に収まるように、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧する時間を増減させることによりワーク100を加圧するタイミングを調整し、及び/又は、ヒータ制御部6がヒータ4に印加する電圧値と電流値を増減させることにより電力を調整する。
【0086】
このような調整部17によれば、例えば加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間でACF103に対して必要な熱量が加わっていないと考えられる場合も、第二の時間T2以降において不足した熱量を加えることができるため、良品のワーク100を生産し続けることができる。また、本実施形態の実装装置1によれば、生産中にワーク100が熱圧着される状況をヒータ4が備える温度センサとは別の観点で確認することができるうえ、補正伝導熱量QRを用いることによってワーク100に伝導された正味の熱量で判断できるため、より高い信頼性でもってワーク100の実装を行うことができる。
【0087】
次に、実装装置1によってワーク100を熱圧着する第三の方法として、制御部8が備える印加情報取得部11、パターン作成部15、判別部16を機能させ、印加パターンと基準印加パターンに関する判別手法を用いる場合の具体例について説明する。本実施形態においても、印加情報取得部11により取得される印加情報は、電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報である。
【0088】
第三の方法においては、まず、基準ワーク200を用いて実装ヘッド2での加圧及び加熱を実施する。実装ヘッド2の下方に基準ワーク200がセットされた後、制御部8は、実装ヘッド2の加圧部を駆動させてヘッド本体部3を下降させ、実装ツール5で基準ワーク200を加圧する。また、ヒータ制御部6から電力を供給してヒータ4を発熱させ、実装ツール5を加熱する。
【0089】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5で基準ワーク200を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する基準印加情報(本実施形態では、基準ワーク200を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する基準電力調整器出力情報)を取得する。
【0090】
そしてパターン作成部15は、実装ヘッド2の加圧部が基準ワーク200を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの基準ワーク200を加圧するタイミングと、上記の基準印加情報から算出されるこの加圧時間における基準ワーク200の基準圧着時印加量に基づく基準印加パターンを作成する。基準印加パターンは、例えばACF103に対して必要な熱量が加わっている良品の基準となるパターンである。本実施形態において第一の時間T1は、実装ヘッド2の加圧部によって基準ワーク200への加圧が開始された加圧開始時間Tsであり、第二の時間T2は、その加圧が終了した加圧終了時間Tfである。なお基準印加パターンを作成するにあたっては、第一の時間T1より前の部分や第二の時間T2より後の部分を含んだパターンを作成してもよい。本実施形態のパターン作成部15は、
図3A~
図3Cに準じた電圧に関するグラフ、電流に関するグラフ、電力に関するグラフを画像データとして作成する。
【0091】
このようにして基準ワーク200の基準印加バターンを作成した後は、実装ヘッド2の下方にワーク100をセットし、実装ヘッド2によってワーク100への加圧及び加熱を実施する。実装ヘッド2の下方にワーク100がセットされた後、制御部8は、実装ヘッド2の加圧部を駆動させてヘッド本体部3を下降させ、実装ツール5でワーク100を加圧する。また、ヒータ制御部6から電力を供給してヒータ4を発熱させ、実装ツール5を加熱する。なお本実施形態においても、緩衝材110を用いてワーク100への加圧及び加熱を行うこととする。
【0092】
そして印加情報取得部11は、実装ヘッド2の加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングを取得し、またヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報(本実施形態では、ワーク100を加熱する際に電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報)を取得する。
【0093】
そしてパターン作成部15は、印加情報取得部11で取得された第一の時間T1から第二の時間T2までのワーク100を加圧するタイミングと、上記の印加情報に基づく印加パターンを作成する。本実施形態においてパターン作成部15は、
図3A~
図3Cに示した第一の時間T1から第二の時間T2までの電圧に関するグラフ、電流に関するグラフ、電力に関するグラフを画像データとして作成する。作成された画像データは、記憶部9に記憶される。
【0094】
次いで判別部16は、記憶部9に記憶されている印加パターンと基準印加パターンとを比較して、基準印加パターンに対する印加パターンの差異が所定の範囲内にあるかを判別する。例えば判別部16による判断が、
図3C、
図3Dを参照しながら説明した上述の具体例である場合、基準印加パターンの面積は時間T1から時間Ta×2経過するまでの間で(3/2)×Ta×Pa増加している一方、印加パターンの面積は同じ時間でTa×Pa増加しているため、両者の面積の差は(1/2)×Ta×Paとなる。ここで判別部16が、両者の面積の差が(1/4)×Ta×Pa以内であれば基準印加パターンに対する印加パターンの差異が所定の範囲に収まっていると設定されている場合、判別部16は所定の範囲を外れると判断し、制御部8は、出力部10から報知を行い、必要に応じてワーク100を熱圧着する動作を停止する。これにより、ACF103の硬化不足等が発生する要因が生じたことを作業者に直ちに伝えることができ、またワーク100の不良品が大量に作られてしまう不具合を防止することができる。
【0095】
ところで本実施形態の実装装置1は、上述した調整部17を用いることによって、ワーク100を熱圧着する動作を停止させることなく実装装置1を動作させることが可能である。
【0096】
本実施形態の調整部17は、加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの基準印加パターンと加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの印加パターンとの差異が所定の範囲を外れると判別部16が判別した場合、第二の時間T2以降において、加圧部がワーク100を加圧するタイミング及び/又はヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力を、実装ヘッド2がワーク100の加圧を開始してから終了するまでの印加パターンと実装ヘッド2が基準ワーク200の加圧を開始してから終了するまでの基準印加パターンとの差異が予め定めた許容範囲に収まるように調整する機能を有する。この点につき具体的な一例を挙げて説明すると、印加パターンは
図3C、
図3Dを参照しながら説明した上述の電力に関するグラフであって、基準印加パターンは、上述した
図3C、
図3Dに示したグラフに対して時間T1からの傾きが急になるグラフ(時間T1から時間Taまでは略一定の割合で傾いていて、この間に電力は時間T1を基準としてPa増加し、時間Taから時間(Ta×2)では一定の電力Paとなり、その後は印加パターンと同一になるグラフ)であるとする。また判別部16は、基準印加パターンと印加パターンの面積の差が(1/4)×Ta×Pa以内であれば、基準印加パターンに対する印加パターンの差異が所定の範囲に収まっていると設定されていて、調整部17は、加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの印加パターンのグラフの面積が、加圧開始時間Tsから加圧終了時間Tfまでの基準印加パターンのグラフの面積と略同じになるように、加圧部がワーク100を加圧する時間を増減させることによりワーク100を加圧するタイミングを調整し、及び/又は、ヒータ制御部6がヒータ4に印加する電圧値と電流値を増減させることにより電力を調整する。
【0097】
このような調整部17によれば、例えば加圧開始時間Tsから第二の時間T2までの間でACF103に対して必要な熱量が加わっていないと考えられる場合も、第二の時間T2以降において不足した熱量を加えることができるため、良品のワーク100を生産し続けることができる。また、本実施形態の実装装置1によれば、生産中にワーク100が熱圧着される状況をヒータ4が備える温度センサとは別の観点で確認することができるため、高い信頼性でもってワーク100の実装を行うことができる。
【0098】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0099】
たとえば上述した実施形態は、印加情報取得部11取得する印加情報として電力調整器6bからヒータ4に出力される電圧値と電流値に関する電力調整器出力情報を用いていたが、印加情報は、温度調整器6aが電力調整器6bに対して出力する電気信号に含まれるパワー情報でもよい。すなわち印加情報取得部11取得する情報は、例えば温度調整器6aから電力調整器6bに出力される電気信号の電圧値や電流値でもよい。
【符号の説明】
【0100】
1:実装装置
2:実装ヘッド
4:ヒータ
5:実装ツール
6:ヒータ制御部
7:コントローラ
10:出力部
11:印加情報取得部
12:印加量算出部
13:温度情報計測部
14:伝導熱量算出部
15:パターン作成部
16:判別部
17:調整部
18:テーブル
100:ワーク
101:基板(第一部材)
102:電子部品(第二部材)
103:ACF(接合部材)
110:緩衝材
200:基準ワーク
【要約】
【課題】生産中にワークが熱圧着される状況をヒータが備える温度センサとは別の観点で確認することにより実装の信頼性を高めることができる実装装置を提供する。
【解決手段】実装装置1のコントローラ7は、加圧部が実装ツール5でワーク100を加圧するタイミングとヒータ制御部6がヒータ4に印加する電力に関する印加情報とを取得する印加情報取得部11と、所定時間当たりの無負荷時印加量を算出し、加圧部がワーク100を加圧した状態で印加情報取得部11により取得される第一の時間T1から第二の時間T2までの加圧時間と印加情報から算出される加圧時間における圧着時印加量を算出し、加圧時間に相当する時間中の無負荷時印加量の値を圧着時印加量から減じて圧着時放出印加量を算出する印加量算出部12と、圧着時放出印加量が所定の範囲内にあるかを判別する判別部16と、を備える。
【選択図】
図1