(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】デュアル機能タンパク質およびそれを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20241023BHJP
A61K 38/095 20190101ALI20241023BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/18 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/22 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/23 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/26 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/27 20060101ALI20241023BHJP
A61K 38/28 20060101ALI20241023BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20241023BHJP
A61K 47/65 20170101ALI20241023BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20241023BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241023BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20241023BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20241023BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20241023BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241023BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241023BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241023BHJP
C07K 14/50 20060101ALI20241023BHJP
C07K 14/575 20060101ALI20241023BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20241023BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20241023BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241023BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241023BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241023BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241023BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20241023BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20241023BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
A61K38/095
A61K38/16
A61K38/18
A61K38/20
A61K38/22
A61K38/23
A61K38/26
A61K38/27
A61K38/28
A61K39/395 Y
A61K47/65
A61K47/68
A61P1/16
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/00
A61P29/00
A61P43/00 121
C07K14/50
C07K14/575
C07K16/00
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/13
C12N15/63 Z
(21)【出願番号】P 2018522147
(86)(22)【出願日】2016-10-28
(86)【国際出願番号】 KR2016012300
(87)【国際公開番号】W WO2017074123
(87)【国際公開日】2017-05-04
【審査請求日】2019-10-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-12
(31)【優先権主張番号】10-2015-0150576
(32)【優先日】2015-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500309919
【氏名又は名称】ユーハン・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】YUHAN Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジュンファン
(72)【発明者】
【氏名】イム・セヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ミンジ
(72)【発明者】
【氏名】チェ・ヒョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム・ドフン
(72)【発明者】
【氏名】チュ・ミギョン
(72)【発明者】
【氏名】パク・ジュヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム・スルギ
(72)【発明者】
【氏名】イム・サンミョウン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ジョンギュン
(72)【発明者】
【氏名】ナム・スヨン
【合議体】
【審判長】福井 悟
【審判官】小暮 道明
【審判官】北田 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-527986(JP,A)
【文献】特表2012-525847(JP,A)
【文献】特表2012-515747(JP,A)
【文献】特表2009-534424(JP,A)
【文献】Chem Rev.,2005.02.22,vol.105,no.3,pp.793-826
【文献】Biochemistry,2001.10.13,vol.40,no.44,pp.13188-13200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
REGISTRY/CAPLUS/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質;および免疫グロブリンのFc領域を含むデュアル機能タンパク質であって、
FGF21変異体タンパク質は、
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)でのアミノ酸の置換の変異、ならびに
(6)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換の変異、ならびに
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)でのアミノ酸の置換;(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)でのアミノ酸の置換;および(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換からなる群から選択される1つの置換の変異
を含み
、
生物学的に活性なタンパク質は、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4、成長ホルモン、および配列番号:43から46のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するGLP-1の変異体からなる群から選択される1つであ
り、そして
野生型FGF21タンパク質は、配列番号:1によって示されるアミノ酸配列を有する、
デュアル機能タンパク質。
【請求項2】
FGF21変異体タンパク質が、
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)でのアミノ酸の置換の変異
を含む、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項3】
変異によって導入されるFGF21変異体タンパク質のアミノ酸残基Nがグリコシル化される、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項4】
生物学的に活性なタンパク質が、GLP-1、エキセンディン-4、および配列番号:43から46のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するGLP-1の変異体から選択される1つである、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項5】
生物学的に活性なタンパク質が、配列番号:43から46のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するGLP-1の変異体である、請求項4に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項6】
FGF21変異体タンパク質が、配列番号:20から22のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項7】
デュアル機能タンパク質が、リンカーをさらに含む、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項8】
リンカーが、FGF21変異体タンパク質を免疫グロブリンのFc領域に連結する、請求項
7に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項9】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結される、請求項
8に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項10】
リンカーが、10から30のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項
8に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項11】
リンカーが、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項
10に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項12】
免疫グロブリンのFc領域が、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgDのFc領域のいずれか1つ、またはそれらの組合せを含むハイブリッドFcである、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項13】
ハイブリッドFcが、IgG4領域およびIgD領域を含む、請求項
12に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項14】
デュアル機能タンパク質が、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含む、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項15】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質間にさらに連結される、請求項
14に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項16】
リンカーが、免疫グロブリンのFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結される、請求項
15に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項17】
リンカーが、10から30のアミノ酸残基からなるペプチドである、請求項
15に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項18】
リンカーが、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有する、請求項
17に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項19】
デュアル機能タンパク質が、配列番号:65によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項20】
デュアル機能タンパク質が、配列番号:66によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項21】
デュアル機能タンパク質が、配列番号:67によって示されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のデュアル機能タンパク質。
【請求項22】
糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリック・シンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎または心臓血管疾患を処置するための、請求項1から
21のいずれかに記載のデュアル機能タンパク質を含む医薬組成物。
【請求項23】
請求項1から
21のいずれかに記載のデュアル機能タンパク質をコードする単離された核酸分子。
【請求項24】
請求項
23に記載の核酸分子を含む発現ベクター。
【請求項25】
請求項
24に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、生物学的に活性なタンパク質および線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質、およびそれを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)は、食物によって刺激されるときなどに、腸管におけるL細胞によって分泌される31アミノ酸からなるインクレチンホルモンである。その生物学的効果は、膵臓、脳などのβ-細胞のような標的組織において発現されるGタンパク質共役受容体であるGLP-1受容体を介する細胞内シグナル伝達を介して生じる。血液中に分泌されたGLP-1は、酵素ジペプチジルペプチダーゼ-4(DPP-4)によるN-末端でのアミノ酸の開裂による活性の喪失によって引き起こされる、2分未満の非常に短い半減期を有する。GLP-1が血糖レベルに基づいて膵臓のβ-細胞においてインスリンの分泌を刺激するため、低血糖を誘導することなく血糖を低下させる強い効果を有する。さらに、GLP-1の投与は、食欲抑制に対する効果による食物摂取の低下によって引き起こされることが知られている、種々の動物モデルおよびヒトにおいて体重減少をもたらす。GLP-1は、β-細胞の増殖を誘導し、膵臓のβ-細胞において発現されるGLP-1受容体を介して糖脂質毒性によって引き起こされる細胞死を阻害することによりβ-細胞の生存能力を増強する。グルカゴンの過剰分泌は血糖を増加させ、糖尿病患者において高血糖の原因の1つであることが知られている。加えて、GLP-1が、タンパク質キナーゼA(PKA)タンパク質特異的グルカゴンの分泌を阻害することによって空腹時血糖上昇を阻害するように膵臓のα-細胞に作用することが知られている。
【0003】
エキセンディン-4は、臨床的に重要なGLP-1受容体アゴニストである。エキセンディン-4は、39アミノ酸残基を有するポリペプチドであり、通常、Gila Monster lizardの唾液腺において生産される。エキセンディン-4は、GLP-1と52%のアミノ酸配列相同性を有し、哺乳動物におけるGLP-1受容体と相互作用することが知られている(Thorens et al. (1993) Diabetes 42:1678-1682)。エキセンディン-4はインビトロでインスリン生産細胞によるインスリン分泌を刺激することが示されており、インスリン生産細胞によるインスリン放出の誘導は等モル条件下でGLP-1よりも強い。エキセンディン-4はGLP-1よりも長い作用持続時間で齧歯動物およびヒトの両方において血糖レベルを減少させるようにインスリン分泌を強く刺激するが、GLP-1を欠いている哺乳動物において見慣れないエピトープを有しているため、エキセンディン-4はGLP-1を欠いている哺乳動物において抗原性を示す。
【0004】
GLP-1およびエキセンディン-4アナログ(例えば、リラグルチドおよびバイエッタ)がヒトにおいてグルコースコントロールを改善する能力は、臨床的に確認されている。GLP-1がアポトーシス阻害および増殖誘導を介してβ-細胞量を増加させることが報告されている。さらに、GLP-1が、胃酸分泌および胃内容排出を阻害し、満腹シグナルを増強し、それによって食欲を低下させる腸ホルモンとして作用することも報告されている。かかるGLP-1の効果は、GLP-1アナログが2型糖尿病を有する患者に投与されるときに観察される体重減少を説明することができる。加えて、GLP-1は、齧歯動物において虚血後の心臓保護効果を示す。
【0005】
長時間作用型GLP-1アナログを開発するための様々な試みがなされている。臨床的に確認された長時間作用型GLP-1アナログは、デュラグルチド(WO 2005/000892)およびアルビグルチド(WO 2003/059934)を含む。デュラグルチドはFc融合GLP-1アナログであり、アルビグルチドはアルブミン融合GLP-1アナログであり、それら両方が週1回の投与が可能である薬物動態学プロフィールを有する。両方の薬物は、週1回の投与で血糖を低下させ体重を低下させる優れた効果を有し、また、バイエッタおよびリラグルチドと比較したとき処置に関して大幅に改善された利便性を提供する。
【0006】
その一方で、肝臓において合成される線維芽細胞増殖因子21(FGF21)は、グルコースおよび脂質ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことが知られているホルモンである。FGF21は、FGF21特異的受容体、すなわちFGF受容体およびβ-クロトー複合体の両方が発現される、肝臓、脂肪細胞、膵臓のβ細胞、脳の視床下部および筋肉組織において薬理学的作用を示す。種々の糖尿病および代謝疾患の非ヒト霊長類およびマウスモデルにおいて、FGF21がインスリン非依存性において血糖レベルを低下させ、体重を低下させ、血中のトリグリセリドおよび低比重リポタンパク質(LDL)濃度を低下させることができることが報告されている。さらに、インスリン感受性を改善するその効果のために、FGF21は糖尿病および肥満に対する新規な治療剤としての開発のための可能性を有する(WO2003/011213参照)。
【0007】
したがって、FGF21に基づく新規な抗糖尿病薬を開発するために、いくつかのアミノ酸の置換、挿入および欠失を介して野生型FGF21配列に基づくFGF21変異体を構築することによってその生物学的活性およびインビボ安定性を改善させる試みがなされている(WO2010/065439参照)。しかしながら、FGF21が非常に短い半減期を有するため、生物学的薬剤として直接的に使用されるとき問題があることが証明されている(Kharitonenkov, A. et al. (2005) Journal of Clinical Investigation 115:1627-1635)。FGF21のインビボ半減期はマウスにおいて1から2時間およびサルにおいて2.5から3時間である。したがって、糖尿病に対する治療剤として現在の形態において使用されるFGF21について、毎日の投与が必要である。
【0008】
FGF21組換えタンパク質のインビボ半減期を増加させる試みにおいて、様々なアプローチが報告されている。かかる1つの例は、ポリエチレングリコール(PEG)、すなわちポリマー材料をFGF21に連結させ、その分子量を増加させ、それにより腎臓排出を阻害し、インビボ保持時間を増加させることである(WO2012/066075参照)。別のアプローチは、それをヒトアルブミンに結合する脂肪酸と融合させることによって半減期を改善することを試みている(WO2012/010553参照)。さらなる例は、ヒトFGF受容体単独でとまたはβ-クロトーとの複合体としてと特異的に結合するアゴニスト抗体の産生を介して、野生型FGF21と同等の薬理学的活性を維持しながら、半減期を増加させることを試みる(WO2012/170438参照)。別の例において、半減期は、IgGのFc領域がFGF21分子に結合する長時間作用型融合タンパク質を製造することによって改善された(WO2013/188181参照)。
【0009】
長時間作用型薬物を作製するために利用できる種々の技術の中で、Fc融合技術は、インビボ半減期を増加させながら免疫応答または毒性を誘導するような他のアプローチで見られる欠点が少ないため、広範に使用されている。長時間作用型治療薬としてのFc融合FGF21タンパク質の開発について、以下の条件を満たす必要がある。
【0010】
第1に、融合によって引き起こされるインビトロ活性の減少を最小限にするべきである。FGF21のN-末端およびC-末端の両方がFGF21の活性に関与する。この点において、FGF21融合タンパク質の活性は融合の位置に依存して大きく変化することが知られている。したがって、変異がFGF21に導入されているFc融合FGF21融合タンパク質の活性は、融合の存在/非存在または位置に依存して変化し得る。第2に、ヒトにおいて1週間に1回の間隔での投与を可能にする薬物動態学プロフィールは、融合によるインビボ半減期の増加によって実現されるべきである。第3に、バイオ医薬の投与後に多数の患者において免疫原性が予期され得ることを考慮して、融合リンカーまたは変異による免疫原性リスクを最小限にするべきである。第4に、融合の位置または変異の導入から生じる安定性の問題はないべきである。第5に、望ましくない免疫応答が融合免疫グロブリンのアイソタイプに依存して起こり得るため、かかる応答を防止する解決策が必要である。
【0011】
免疫グロブリンG(IgG)のFc領域をFGF21分子に連結することによって長時間作用型融合タンパク質を開発する試みが既に報告されている(WO 2013/188181参照)。Fcが野生型FGF21のN-末端に融合されている1つのFc-FGF21構造の場合、野生型FGF21と比較してインビトロ活性において明確な違いは存在しないが、半減期がタンパク質のインビボ分解によって非常に短いことが知られている。この問題に対処するために、タンパク質分解に抵抗するためにFGF21の特定の部位位置でいくつかの変異を導入することによってインビボ半減期を改善する試みがなされている。しかしながら、免疫原性リスクが複数の変異の導入で増加し得る。対照的に、FcがFGF21分子のC-末端に融合されているFGF21-Fc構造の場合、Fc-FGF21構造と比較してこの部位での融合によって引き起こされる活性の有意な減少が存在することが知られている。
【0012】
GLP-1およびFGF21の組合せ投与は、体内の作用メカニズムおよび標的組織に依存する単一投与と比較して相乗効果を有し得、顕著な抗糖尿病有効性およびさらなる利点が潜在的に期待される。GLP-1およびFGF21の組合せ投与またはGLP-1/FGF21デュアル機能タンパク質の効果は、既に調査および報告されている(WO 2010/142665およびWO 2011/020319参照)。
【0013】
GLP-1およびFGF21を含むデュアル機能タンパク質を開発するために、様々な問題を解決しなければならない。野生型GLP-1および野生型FGF21は非常に短いインビボ半減期を有するため、たとえ治療剤として開発されたとしても、それらは少なくとも1日1回投与する必要がある。したがって、患者の利便性を改善するように長時間作用型デュアル機能タンパク質を開発するために、Fc融合のような長時間作用型技術が必要である。GLP-1およびFGF21の2つの標的に対するデュアル機能薬物において、変異の導入は、各薬物の活性およびインビボ安定性を維持するために重要であり、それぞれの変異によって引き起こされる活性、構造または安定性の変化と関連する問題に対処すべきである。GLP-1およびFGF21の2つの標的に対する薬効はバランスが取れていなければならず、動物モデルにおいてインビトロ活性、薬物動態学プロフィール、薬理学的有効性ならびにヒトにおいて有効性の臨床評価を考慮する薬物設計が、この目的のために必要である。デュアル機能タンパク質は、人体には存在することができない構造を有し、単一の標的に対する融合タンパク質と比較して構造的に複雑である。加えて、変異またはリンカー操作が2つの標的とバランスをとるために必要であるため、凝集体複合体を形成する可能性が増加し得、これを防止するためのさらなるタンパク質操作が必要となり得る。さらに、起こり得る免疫原性は、新規な変異配列または複合体構造によって増加し得、対処または回避すべきである。
【0014】
本願発明者らは、GLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質の安定性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性を改善するために努力し、GLP-1変異体タンパク質が免疫グロブリンのFc領域に融合され、新規なFGF21変異体タンパク質が融合されるときに、デュアル機能タンパク質の安定性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性が改善され得ることを見いだし、それにより本願発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本願発明の目的は、改善された薬物動態パラメータ、高い安定性、凝集複合体を形成する低い可能性、および低下した起こり得る免疫原性を有する、生物学的に活性なタンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質を提供することである。
【0016】
本願発明の別の目的は、FGF21-関連障害を予防または処置するためのデュアル機能タンパク質を含む医薬組成物を提供することである。
【0017】
本願発明のさらなる目的は、デュアル機能タンパク質をコードする単離された核酸分子、該核酸分子を含む発現ベクター、および該発現ベクターを含む宿主細胞を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願発明は、FGF21変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含むデュアル機能タンパク質であって、
FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)-(7)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)でのアミノ酸の置換;
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)でのアミノ酸の置換;
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)でのアミノ酸の置換;
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(6)1つ以上の上記変異(1)から(5)と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異、
デュアル機能タンパク質を提供する。
【0019】
加えて、本願発明は、糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリック・シンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎または心臓血管疾患を処置するためのデュアル機能タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0020】
さらに、本願発明は、デュアル機能タンパク質をコードする単離された核酸分子、核酸分子を含む発現ベクター、および発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【発明の効果】
【0021】
生物学的に活性なタンパク質およびFGF変異体タンパク質を免疫グロブリンのFc領域に連結することによって製造される本願発明のデュアル機能タンパク質は、改善された薬理学的有効性、インビボ持続時間およびタンパク質安定性を有する。加えて、活性成分としてデュアル機能タンパク質を有する医薬組成物は、糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリック・シンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎または心臓血管疾患に対する治療剤として使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1Aから1Cは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用するFGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質(以下、「FGF21変異体融合タンパク質」)のインビトロ活性を示すグラフである。FGF21変異体融合タンパク質は、変異の導入による活性における有意な減少を示さなかった。
【0023】
【
図2】
図2Aおよび2Bは、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用するFGF21のN-末端をFc領域に連結する種々のリンカーを有するFGF21変異体融合タンパク質のインビトロ活性を示すグラフである。わずかな違いがリンカー配列に依存して活性において示されたが、FGF21変異体融合タンパク質は活性における有意な減少を示さなかった。
【0024】
【
図3】
図3は、ヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用するRGE(Amgen)、Fc-FGF21(Lilly)およびDFD1のインビトロ活性を示すグラフである。Fc-FGF21(Lilly)は他のタンパク質よりも2倍高いインビトロ活性を有したが、DFD1およびRGE(Amgen)は同様の活性を有した。
【0025】
【
図4】
図4は、融合タンパク質の安定性に対するFGF21のEIRP変異の効果を確認するために、DFD4の安定性およびDFD13の安定性を示す。DFD13が、DFD4と比較して初期段階および2週間以上後の時点で、高分子量凝集体(HMW%)のより低い割合と関連したことを確認し、EIRP変異の導入がFGF21変異体融合タンパク質の安定性を改善し、それによりHMW%を有意に低下させることを示した。
【0026】
【
図5】
図5は、FGF21変異体融合タンパク質の皮下投与後96時間、時間とともに血液中の各タンパク質の濃度を示す。データは、平均値および標準偏差として示される。
【0027】
【
図6】
図6は、DFD18、DFD72、DFD74またはFc-FGF21(Lilly)の単一の皮下注射後のob/obマウスモデルにおける血糖レベルを示す。DFD18、DFD72およびDFD74全ては、血糖レベルを連続的に低下させる効果を有した。データは、平均値および平均の標準誤差(S.E.M.)として示される。
【0028】
【
図7】
図7は、DFD18、DFD72、DFD74またはFc-FGF21(Lilly)の単一の皮下注射後、投与の日から14日目のob/obマウスモデルにおける体重の変化を示すグラフを示す。DFD18、DFD72およびDFD74全ては、PBS処置グループと比較して体重を低下させる効果を有した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0029】
【
図8】
図8は、DFD18、DFD72、DFD74またはFc-FGF21(Lilly)の単一の皮下注射後、投与の日(1日目)から16日目のob/obマウスモデルにおける糖化ヘモグロビンレベルの変化を示すグラフを示す。DFD18、DFD72およびDFD74全ては、投与の日の糖化ヘモグロビンレベルと比較して16日目の糖化ヘモグロビンレベルを低下させた。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0030】
【
図9】
図9は、DFD72またはDFD74の単一の皮下注射後、HFD/STZマウスモデルにおける血糖レベルを示す。DFD72およびDFD74の両方は、血糖レベルを連続的に低下させる効果を有した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0031】
【
図10】
図10は、DFD72またはDFD74の単一の皮下注射後、投与の日から14日目のHFD/STZマウスモデルにおける動物体重の変化を示す。DFD72およびDFD74の両方は、PBS処置グループと比較して、体重を低下させる効果を有した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0032】
【
図11】
図11は、DFD72またはDFD74の単一の皮下注射後、1日目および13日目にHFD/STZマウスモデルにおける糖化ヘモグロビンレベルの変化を示すグラフを示す。DFD72およびDFD74の両方は、PBS処置グループと比較して、糖化ヘモグロビンレベルの大きな低下を引き起こしたことを観察した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0033】
【
図12】
図12は、DFD18の単一の投与後、投与の日から14日目の食餌性肥満マウスモデルにおいて測定される体重の変化を示す。DFD18は、体重低下に対して有意な効果を有した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0034】
【
図13】
図13は、ヒトGLP-1受容体が過剰発現されるCHO細胞系を使用するGLP-1変異体およびGLP-1のC-末端をFc領域に連結するヒンジに依存するデュアル機能タンパク質のインビトロGLP-1活性を示すグラフである。一般的に、GLP-1(A2G)配列(DFD23)を含むデュアル機能タンパク質は、他のGLP-1変異体配列を含む他のデュアル機能タンパク質よりも2から3倍低い活性を示した。GLP-1(A2G)配列を除いて変異体配列を含むデュアル機能タンパク質間でGLP-1活性における有意な差異は見られなかった。
【0035】
【
図14】
図14は、DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114のGLP-1活性およびDFD69、DFD112およびDFD114のFGF21活性を示すグラフを示す。3つのデュアル機能タンパク質(DFD69、DFD112およびDFD114)およびFGF21を含まないFc-融合GLP-1変異体(DFD59)のインビトロGLP-1活性を、ヒトGLP-1受容体が過剰発現されるCHO細胞系を使用して測定した。3つのデュアル機能タンパク質は同様のEC
50値を示し、Fc-融合GLP-1変異体(DFD59)はデュアル機能タンパク質よりも約2倍高い活性を示した。FGF21変異体に依存するデュアル機能タンパク質のインビトロ活性をヒトβ-クロトーが過剰発現されるHEK293細胞系を使用して測定した。FGF21部分のインビトロ活性が3つのデュアル機能タンパク質と同様であったことを確認した。
【0036】
【
図15】
図15は、デュアル機能タンパク質の皮下投与後240時間の血液中のタンパク質の濃度 対 時間を示す。データは、平均値および標準偏差として示される。
【0037】
【
図16】
図16は、DFD114またはDFD59の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後のdb/dbマウスモデルにおける血糖レベルを示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質で処置されるよりも血糖レベルを低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差(S.E.M.)として示される。
【0038】
【
図17】
図17は、DFD114またはDFD59の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後、投与の日から14日目のdb/dbマウスモデルにおける体重の変化を示すグラフを示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質で処置されるよりも体重を低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差(S.E.M.)として示される。
【0039】
【
図18】
図18は、DFD114またはDFD59の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後、投与の日(1日目)および16日目にdb/dbマウスモデルにおける糖化ヘモグロビンレベルの変化を示すグラフを示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質またはそれらの組合せで処置されるよりも糖化ヘモグロビンレベルを低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【0040】
【
図19】
図19は、DFD114、DFD59、DFD74またはDFD72の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後のHFD/STZマウスモデルにおける血糖レベルを示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質で処置されるよりも血糖レベルを低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差(S.E.M.)として示される。
【0041】
【
図20】
図20は、DFD59、DFD72、DFD74またはDFD114の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後、投与の日から14日目のHFD/STZマウスモデルにおける体重の変化を示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質で処置されるよりも体重を低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差(S.E.M.)として示される。
【0042】
【
図21】
図21は、DFD59、DFD72、DFD74またはDFD114の単一の皮下注射およびDFD59およびDFD74の組合せの単一の皮下注射後、投与の日(1日目)および16日目のHFD/STZマウスモデルにおける糖化ヘモグロビンレベルの変化を示す。デュアル機能タンパク質で処置されるグループは、単一機能タンパク質またはそれらの組合せで処置されるよりも糖化ヘモグロビンレベルを低下させるより強い効果を示した。データは、平均値および平均の標準誤差として示される。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下に、本願発明をより詳細に記載する。
【0044】
1つの局面において、本願発明は、線維芽細胞増殖因子21(FGF21)変異体タンパク質;生物学的に活性なタンパク質、またはその変異体またはフラグメント;および免疫グロブリンのFc領域を含むデュアル機能タンパク質であって、FGF21変異体タンパク質は、以下の変異(1)-(7)からなる群から選択される少なくとも1つの変異を含む:
(1)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101にてEIRPのアミノ酸配列(配列番号:68)でのアミノ酸の置換(以下、「EIRP」);
(2)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEAVのアミノ酸配列(配列番号:69)でのアミノ酸の置換(以下、「TGLEAV));
(3)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174にてTGLEANのアミノ酸配列(配列番号:70)でのアミノ酸の置換(以下、「TGLEAN」);
(4)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置170にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(5)野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置174にてアミノ酸Nでのアミノ酸の置換;
(6)1つ以上の上記変異(1)から(5)と共に、野生型FGF21タンパク質のN-末端から位置180にてアミノ酸Eでのアミノ酸の置換;および
(7)野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異、
デュアル機能タンパク質を提供する。
【0045】
グルコースおよび脂質ホメオスタシスにおいて重要な役割を果たすことが知られているホルモンである野生型FGF21タンパク質は、哺乳動物、例えばヒト、マウス、ブタ、サルなど、好ましくはヒト由来のものであり得る。さらに好ましくは、野生型FGF21タンパク質は、配列番号:1によって示されるアミノ酸配列を有する野生型ヒトFGF21タンパク質であり得る。
【0046】
FGF21変異体タンパク質に含まれる変異は、好ましくは、EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ;TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびEIRPの変異の組合せ;EIRP、TGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つおよびA180Eの変異の組合せ;またはTGLEAV、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異のいずれか1つ、EIRPの変異およびA180Eの変異の組合せであり得る。さらに、FGF21変異体タンパク質は、N-末端またはC-末端での1から10のアミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている構造を有し得る。さらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含み得る。なおさらに好ましくは、FGF21変異体タンパク質は、配列番号:6から23のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を含み、N-末端またはC-末端での1から10のアミノ酸が野生型FGF21タンパク質と比較して欠失されている構造をさらに有してもよい。
【0047】
デュアル機能タンパク質において、変異によって導入されるFGF21変異体タンパク質のアミノ酸残基Nはグリコシル化され得る。
【0048】
生物学的に活性なタンパク質は、インスリン、C-ペプチド、レプチン、グルカゴン、ガストリン、胃抑制ポリペプチド(GIP)、アミリン、カルシトニン、コレシストキニン、ペプチドYY、神経ペプチドY、骨形成タンパク質-6(BMP-6)、骨形成タンパク質-9(BMP-9)、オキシントモジュリン、オキシトシン、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)、グルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)、イリシン、フィブロネクチンIII型ドメイン含有タンパク質5(FNDC5)、アペリン、アディポネクチン、C1qおよび腫瘍壊死因子関連タンパク質(CTRPファミリー)、レジスチン、ビスファチン、オメンチン、レチノール結合タンパク質-4(RBP-4)、グリセンチン、アンジオポイエチン、インターロイキン-22(IL-22)、エキセンディン-4および成長ホルモンからなる群から選択される1つであり得る。好ましくは、生物学的に活性なタンパク質は、GLP-1、その変異体およびエキセンディン-4から選択される1つであり得る。
【0049】
GLP-1タンパク質は、食物によって刺激されるなどによって、腸管におけるL細胞によって分泌される31アミノ酸からなるインクレチンホルモンである。例えば、GLP-1タンパク質は。配列番号:42のアミノ酸配列によって示され得る。
【0050】
GLP-1の変異体は、例えば、配列番号:43から46のいずれかのアミノ酸配列によって示され得る。
【0051】
本願明細書において使用される「Fc領域」、「Fcフラグメント」または「Fc」なる用語は、免疫グロブリンの重鎖定常領域1(CH1)、重鎖定常領域2(CH2)および重鎖定常領域3(CH3)を含むが、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の可変領域および軽鎖定常領域1(CL1)を含まないタンパク質を示す。さらに、本願明細書において使用される「Fc領域変異体」なる用語は、Fc領域のアミノ酸の一部を置換することによって、または様々な型のFc領域を組み合わせることによって調製されるものを示す。
【0052】
免疫グロブリンのFc領域は、抗体を構成する完全Fc領域、そのフラグメントまたはFc領域変異体であり得る。さらに、Fc領域は、単量体または多量体の形態の分子を含み、重鎖定常領域のヒンジ領域をさらに含み得る。Fc領域変異体は、ヒンジ領域での開裂を防止するように修飾され得る。さらに、Fcのヒンジ配列は、抗体依存性細胞媒介性細胞毒性(ADCC)または補体依存性細胞毒性(CDC)を低下させるためにいくつかのアミノ酸配列において置換を有し得る。加えて、Fcヒンジ配列のアミノ酸配列の一部は、Fab領域の再配列を阻害するために置換され得る。FcのC-末端でのリジン残基は除去され得る。
【0053】
好ましくは、免疫グロブリンのFc領域は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4およびIgDのFc領域のいずれか1つ;またはそれらの組合せであるハイブリッドFcであり得る。さらに、ハイブリッドFcはIgG4領域およびIgD領域を含み得る。さらに、ハイブリッドFc領域は、IgDのFcのヒンジ配列の一部およびCH2、およびIgG4のFcのCH2およびCH3配列を含み得る。
【0054】
加えて、本願発明のFcフラグメントは、野生型グリコシル化鎖、野生型よりも多いグリコシル化鎖、野生型よりも少ないグリコシル化鎖または脱グリコシル化鎖の形態においてであり得る。グリコシル化鎖の増加、減少または除去は、当分野で知られている慣用の方法、例えば化学方法、酵素方法および微生物を使用する遺伝子操作方法によって行われ得る。
【0055】
好ましくは、免疫グロブリンFc領域は、配列番号:24から26、47および48から選択されるアミノ酸配列によって示され得る。
【0056】
デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、FGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域および生物学的に活性なタンパク質を含み得る。好ましくは、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、生物学的に活性なタンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。
【0057】
さらに、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、GLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、FGF21変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびGLP-1変異体タンパク質を含み得る。好ましくは、デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、GLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域およびFGF21変異体タンパク質を含み得る。
【0058】
さらに、デュアル機能タンパク質はリンカーをさらに含み得る。
【0059】
デュアル機能タンパク質は、FGF21変異体タンパク質が免疫グロブリンFc領域のN-末端またはC-末端に直接的に連結される、またはFGF21変異体タンパク質がリンカーを介して免疫グロブリンFc領域に連結される形態であり得る。
【0060】
そのような場合、リンカーは、FcフラグメントのN-末端、C-末端または遊離基に連結され得、また、FGF21変異体タンパク質のN-末端、C-末端または遊離基に連結され得る。リンカーがペプチドリンカーであるとき、連結は任意の領域において起こり得る。例えば、リンカーは、免疫グロブリンFc領域のC-末端およびFGF21変異体タンパク質のN-末端に連結され、免疫グロブリンFc領域およびFGF21変異体タンパク質の融合タンパク質を形成し得る。
【0061】
さらに、本願発明のデュアル機能タンパク質は、生物学的に活性なタンパク質が融合タンパク質の免疫グロブリンのFc領域のN-末端に連結される形態であり得る。
【0062】
リンカーおよびFcが別々に発現され、次に連結されるとき、リンカーは当分野で知られている架橋剤であり得る。架橋剤の例は、1,1-ビス(ジアゾアセチル)-2-フェニルエタン、グルタルアルデヒド、N-ヒドロキシスクシンイミドエステル、例えば4-アジドサリチル酸およびジスクシンイミジルエステル、例えば3,3’-ジチオビス(スクシンイミジルプロピオネート)を含むイミドエステル、および二機能性マレイミド、例えばビス-N-マレイミド-1,8-オクタンを含み得るが、これらに限定されない。
【0063】
さらに、リンカーはペプチドであり得る。好ましくは、リンカーは10から30のアミノ酸残基からなるペプチドであり得る。
【0064】
さらに、アラニンが、リンカーの末端にさらに結合され得る。好ましくは、リンカーは、配列番号:2から5のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであり得る。
【0065】
デュアル機能タンパク質は、1つ以上のFGF21変異体タンパク質が互いに連結したFGF21変異体タンパク質の二量体または多量体が免疫グロブリンFc領域に連結される形態であり得る。さらに、デュアル機能タンパク質は、2つ以上の免疫グロブリンFc領域が連結される二量体または多量体の形態であって、免疫グロブリンFc領域が連結されるFGF21変異体タンパク質を有する、形態であり得る。
【0066】
さらに、デュアル機能タンパク質は、好ましくは配列番号:58から67のいずれか1つによって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであり得る。さらに好ましくは、デュアル機能タンパク質は、配列番号:65、66または67によって示されるアミノ酸配列を有するペプチドであり得る。
【0067】
FGF21変異体タンパク質は、野生型FGF21タンパク質の免疫原性を低下させるための1から10のアミノ酸の変異をさらに含み得る。免疫原性は、当分野で知られている慣用の方法により予測され得る。例えば、タンパク質の起こり得る免疫原性は、例えばiTopeTMおよびTCEDTM方法を使用することによってスクリーニングされ得る。
【0068】
さらに、免疫原性を最小限にするための変異は、当分野で知られている慣用の方法により設計され得る。例えば、免疫原性が起こり得る免疫原性を評価するためにEpiScreenTM分析を実施することによって観察されるとき、免疫原性を誘導するアミノ酸配列はT細胞エピトープマッピングを介して同定され得、最小限にされる免疫原性を有する変異体はコンピューター内予測を介して設計され得る。
【0069】
別の局面において、本願発明は、FGF21-関連障害を処置するためのデュアル機能タンパク質を含む医薬組成物を提供する。
【0070】
本願明細書において使用される「FGF21-関連障害」なる用語は、肥満、I型およびII型糖尿病、膵炎、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、インスリン抵抗性、高インスリン血症、耐糖能障害、高血糖、メタボリック・シンドローム、急性心筋梗塞、高血圧、心臓血管疾患、アテローム性動脈硬化症、末梢動脈疾患、卒中、心不全、冠動脈心臓疾患、腎臓疾患、糖尿病性合併症、ニューロパシー、胃不全まひ、インスリン受容体における重篤な不活性化変異と関連する障害、および他の代謝障害を含み得る。好ましくは、FGF21-関連障害は、糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリック・シンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎または心臓血管疾患であり得る。
【0071】
さらに、医薬組成物は医薬担体をさらに含み得る。医薬担体は、患者に抗体を送達するために適当な非毒性物質であればあらゆる担体であり得る。例えば、蒸留水、アルコール、脂肪、ワックスおよび不活性な固体が担体として含まれ得る。薬学的に許容されるアジュバント(緩衝剤、分散剤)もまた医薬組成物に含まれ得る。これらの製剤において、デュアル機能タンパク質の濃度は大きく変化し得る。
【0072】
具体的には、医薬組成物は、組成物のpH、浸透圧、粘性、透明性、色、等張性、香気、無菌性、安定性、溶解または放出速度、吸着または透過性を変更、維持または保存するための製剤物質を含み得る。適当な製剤物質の例は、アミノ酸(例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、アルギニンまたはリジン)、抗微生物剤、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウム)、緩衝剤(例えば、ホウ酸、重炭酸、Tris-HCl、クエン酸、リン酸または他の有機酸)、増量剤(例えば、マンニトールまたはグリシン)、キレート化剤(例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA))、錯化剤(例えば、カフェイン、ポリビニルピロリドン、β-シクロデキストリンまたはヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、増量剤、単糖類、二糖類および他の炭水化物(例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン)、タンパク質(例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン)、着色剤、香味剤、希釈剤、乳化剤、親水性ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン)、低分子量ポリペプチド、塩形成対イオン(例えば、ナトリウム)、防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、安息香酸、サリチル酸、チメロサール、フェネチルアルコール、メチルパラベン、プロピルパラベン、クロルヘキシジン、ソルビン酸または過酸化水素)、溶媒(例えば、グリセリン、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコール)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、懸濁剤、界面活性剤または湿潤剤(例えば、プルロニック;PEG;ソルビタンエステル;ポリソルベート、例えば、ポリソルベート20またはポリソルベート80;トリトン;トロメタミン;レシチン;コレステロールまたはチロキサポール)、安定性向上剤(例えば、スクロースまたはソルビトール)、増殖(growth)向上剤(例えば、アルキル金属ハロゲン化物、好ましくは、塩化ナトリウムまたは塩化カリウム;またはマンニトール、ソルビトール)、送達ビヒクル、希釈剤、賦形剤および/または医薬アジュバントを含み得るがこれらに限定されない。
【0073】
別の局面において、本願発明は、FGF21-関連障害を予防または処置するための方法であって、デュアル機能タンパク質をかかる予防または処置を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。この方法は、特に、有効量の本願発明のデュアル機能タンパク質をFGF21-関連障害である糖尿病、肥満、脂質異常症、メタボリック・シンドローム、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎または心臓血管疾患の症状を有する哺乳動物に投与することを含む。
【0074】
本願発明の医薬組成物は任意の経路を介して投与され得る。本願発明の組成物は、任意の適当な手段を介して直接的に(例えば、局所的に、注射、移植または局所投与により組織領域に投与することにより)または全身的に(例えば、経口または非経口投与により)動物に提供され得る。本願発明の組成物が静脈内、皮下、眼内、腹腔内、筋肉内、口腔、直腸、眼窩内、脳内、頭蓋内、髄腔内、脳室内、髄腔内、嚢内、関節包内、鼻腔内、またはエアロゾル投与を介して非経腸的に提供されるとき、組成物は、好ましくは水性であるか、または生理学的に適用できる体液懸濁液または溶液の一部を含み得る。したがって、担体またはビヒクルは、生理学的に適用可能であるため、組成物に加えられてもよく、患者に送達されてもよい。したがって、生理学的に適当な塩水は一般的に、製剤のための体液のような担体として含まれ得る。
【0075】
さらに、投与頻度は、使用される製剤におけるデュアル機能タンパク質の薬物動態パラメータに依存して変化し得る。一般的に、所望の効果をなし遂げるための投与用量に達するまで、医師は組成物を投与するであろう。したがって、組成物は、単位用量として、時間間隔で少なくとも2つの用量として(同じ量の標的デュアル機能タンパク質を含んでも、含まなくてもよい)投与され得、または移植装置またはカテーテルを介して連続的な注射により投与され得る。適当な投与用量の追加の正確さは、当業者により日常的に行われ得、当業者により日常的に行われる業の範囲に対応する。
【0076】
さらに、ヒトにおいてデュアル機能タンパク質の好ましい単位用量は、0.01μg/kgから100mg/kg体重の範囲、さらに好ましくは1μg/kgから10mg/kg体重の範囲であり得る。これは最適な量であるが、単位用量は、処置される疾患または副作用の存在/非存在に依存して変化し得る。それにもかかわらず、最適な投与用量は、慣用の実験を実施することによって決定され得る。デュアル機能タンパク質の投与は、周期的ボーラス注射、外部リザーバー(例えば静脈内バッグ)、または内部供給源(例えば生体適合インプラント)からの連続的な静脈内、皮下または腹腔内投与により行われ得る。
【0077】
加えて、本願発明のデュアル機能タンパク質は、他の生物学的に活性な分子と共に対象レシピエントに投与され得る。デュアル機能タンパク質および他の分子、投与形態、および最適な用量の最適な組合せは、当分野でよく知られている慣用の実験によって決定され得る。
【0078】
さらに別の局面において、本願発明は、デュアル機能タンパク質をコードする単離された核酸分子を提供する。
【0079】
本願明細書において使用される「単離された核酸分子」なる用語は、総核酸が供給源細胞から単離されるとき天然に見いだされる少なくとも約50%のタンパク質、脂質、炭水化物、または他の物質から単離される;天然に連結しないポリヌクレオチドに作動可能に連結される;または大型ポリヌクレオチド配列の一部であり、天然に生じない、本願発明の核酸分子を示す。好ましくは、本願発明の単離された核酸分子において、他の汚染核酸、または天然環境において見いだされ、ポリペプチドの生産、または処置、診断、予防または研究における核酸の使用を阻害する他の汚染物質は実質的に存在しない。
【0080】
そのような場合、デュアル機能タンパク質をコードする単離された核酸分子は、コドン重複のために互いに異なる配列を有し得る。さらに、単離された核酸がデュアル機能タンパク質を生産することができる限り、所望の目的によって、単離された核酸は適当に修飾され得る、またはヌクレオチドは単離された核酸のN-末端またはC-末端に加えられ得る。
【0081】
単離された核酸は、例えば配列番号:71から80のいずれか1つによって示されるヌクレオチド配列を含み得る。
【0082】
さらに別の局面において、本願発明は、単離された核酸分子を含む発現ベクターを提供する。
【0083】
本願明細書において使用される「発現ベクター」なる用語は、宿主細胞の形質転換のために適当であり、挿入される異種核酸配列の発現を指向またはコントロールする核酸配列を含むベクターを示す。発現ベクターは、直鎖核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクター、およびそれらのアナログを含む。ウイルスベクターの例は、レトロウイルス、アデノウイルスおよびアデノ随伴ウイルスを含むが、これらに限定されない。
【0084】
本願明細書において使用される「異種核酸配列の発現」または標的タンパク質の「発現」なる用語は、挿入されるDNA配列の転写、mRNA転写産物の翻訳、およびFc融合タンパク質産物、抗体または抗体フラグメントの生産を示す。
【0085】
有用な発現ベクターは、RcCMV(Invitrogen、Carlsbad)またはその変異体であり得る。有用な発現ベクターは、哺乳動物細胞において標的遺伝子の連続的な転写を促進するためのヒトサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、および転写後RNA安定性のレベルを増強するためのウシ成長ホルモンポリアデニル化シグナル配列を含み得る。本願発明の典型的な態様において、発現ベクターは、RcCMVの修飾ベクターであるpAD15である。
【0086】
さらに別の局面において、本願発明は、発現ベクターを含む宿主細胞を提供する。
【0087】
本願明細書において使用される「宿主細胞」なる用語は、組換え発現ベクターが導入され得る原核細胞または真核細胞を示す。本願明細書において使用される「形質転換」または「トランスフェクト」なる用語は、当分野で知られている種々の技術による細胞への核酸(例えばベクター)の導入を示す。
【0088】
適当な宿主細胞は、本願発明のDNA配列で形質転換またはトランスフェクトされ得、標的タンパク質の発現および/または分泌のために使用され得る。本願発明において使用され得る適当な宿主細胞の例は、不死ハイブリドーマ細胞、NS/0骨髄腫細胞、293細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、CAP細胞(ヒト羊水由来細胞)、およびCOS細胞を含む。
【0089】
以下、本願発明の典型的な態様は例を基準にして詳細に記載される。しかしながら、本願発明の例は多数の様々な形態において修飾することができ、本願発明の範囲はここに記載の例に限定されるべきでない。
【0090】
本願発明の様式
調製例1.FGF21変異体タンパク質を含む融合タンパク質の調製および精製
【0091】
調製例1-1.FGF21変異体タンパク質の発現のための発現ベクターの調製
【0092】
Fc-FGF21構造におけるFGF21の安定性、活性および薬物動態学プロフィールを改善するために、FGF21の変異試験を行った。
【0093】
具体的には、変異体タンパク質は、FGF21タンパク質の3次元構造分析に基づいてタンパク質活性に有意に作用することが予期された、LLLE領域(FGF21タンパク質のN-末端から位置98-101でのアミノ酸)およびGPSQG領域(FGF21タンパク質のN-末端から位置170-174でのアミノ酸)、およびA180部位について設計された。
【0094】
FGF21タンパク質に導入される各変異の位置、配列情報、標的および予期される効果は以下の表1に列挙される(表1において、Nはグリコシル化アスパラギン(N)を示す)。さらに、表1に記載されている変異を含むFGF21変異体タンパク質は以下の表2に列挙される。
【0095】
【0096】
【0097】
発現ベクターを、N-末端からC-末端にこの順序において3つの構成要素:融合担体、リンカーおよびFGF21変異体のアミノ酸を発現するように調製した。各FGF21変異体融合タンパク質の物質コード、FGF21に導入される変異の配列、融合担体の配列およびリンカー配列は以下の表3に列挙される(表3において、Nはグリコシル化アスパラギン(N)を示す)。
【0098】
【0099】
FGF21変異体融合タンパク質を生産するために、FGF21変異体タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、各タンパク質のアミノ酸配列に基づいてBioneer Corporation(Korea)と相談することによって合成した。NheIおよびNotI制限酵素配列をFGF21変異体タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に加え、タンパク質翻訳のための開始コドンおよび細胞の外側に発現されたタンパク質を分泌することができるリーダー配列(MDAMLRGLCCVLLLCGAVFVSPSHA)を5’末端で制限酵素配列の次に挿入した。終止コドンを、FGF21変異体融合タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の次に挿入した。FGF21変異体融合タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、NheIおよびNotIの2つの制限酵素を使用することによってpTrans-empty発現ベクターにクローニングした。CMVプロモーター、pUC-由来複製起点、SV40-由来複製起点およびアンピシリン-耐性遺伝子を含む単純な構造を有するpTrans-empty発現ベクターを、CEVEC Pharmaceuticals(Germany)から購入した。
【0100】
DFD6(大腸菌)およびRGE(Amgen)の融合タンパク質の場合において、それぞれの融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、大腸菌における発現のためのpET30a発現ベクターに挿入した。
【0101】
調製例1-2.FGF21変異体融合タンパク質の発現のためのプラスミドDNAの構築
発現のために使用される大量のプラスミドDNAを得るために、大腸菌を、調製例1-1において構築された発現ベクターのそれぞれで形質転換した。細胞壁が弱められた大腸菌細胞を熱ショックを介してそれぞれの発現ベクターで形質転換し、形質転換体をLBプレート上に置き、コロニーを得た。このように得られたコロニーをLB培地に播種し、37℃で16時間培養し、それぞれの発現ベクターを含む各大腸菌培養物を100mLの容量において得た。このように得られた大腸菌を遠心分離して培養培地を除去し、次にP1、P2、P3溶液(QIAGEN、Cat No.:12963)を加え、細胞壁を破砕し、それによりタンパク質およびDNAが分離されたDNA懸濁液を得た。Qiagen DNA精製カラムを使用することによって、このように得られたDNA懸濁液からプラスミドDNAを精製した。溶出したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動を介して同定し、濃度および純度をナノドロップ(nanodrop)装置(Thermo scientific、Nanodrop Lite)を使用することによって測定した。このように得られたDNAを発現のために使用した。
【0102】
調製例1-3.CAP-T細胞における融合タンパク質の発現
ヒト細胞系を調製例1-2において得られた各プラスミドDNA型でトランスフェクトした。PEI溶液(Polyplus、Cat. No.:101-10N)を使用することによって、各プラスミドDNA型をPEM培地(Life technologies)において培養されたCAP-T細胞(CEVEC)に形質導入した。DNAおよびPEI溶液の混合溶液をFreestyle293発現培地(Invitrogen)を使用することによって細胞懸濁液と混合し、37℃で5時間培養し、PEM培地を加えた。37℃で5-7日間培養後、培養物を遠心分離して細胞を除去し、FGF21変異体融合タンパク質を含む上清を得た。
【0103】
調製例1-4.大腸菌におけるFGF21変異体融合タンパク質の発現および精製
大腸菌株BL21(DE3)をDFD6(大腸菌)およびRGE(Amgen)融合タンパク質を発現する各プラスミドDNAで形質転換した。各融合タンパク質を発現する形質転換された大腸菌を20mlのLB培地に播種し、震盪しながら37℃で15時間培養し、次に培養培地の一部を100mlのLB培地に播種し、震盪しながら37℃で16時間培養した。培養完了したら、培養物を遠心分離して大腸菌ペレットを得て、次に細胞を高圧細胞破壊器を使用して破壊し、封入体を得た。
【0104】
得られた封入体を洗浄および溶離、次にタンパク質リフォールディング処理により精製した。具体的には、得られた封入体を0.5% Triton X-100、50mM Tris、1mM EDTAおよび0.1M NaClを含むバッファー溶液(pH8.0)で2-3回洗浄し、細菌タンパク質を取り出し、次に8M ウレア、50mM Trisおよび1mM DTTを含む8M ウレアバッファーに再懸濁した。8M ウレアバッファー中のタンパク質が完全に変性されたため、タンパク質リフォールディング処理を以下のように行った。
【0105】
まず、8M ウレアバッファーを20mM グリシンバッファー溶液(pH9.0)で徐々に希釈してウレアを除去し、2Mの濃度から、CuSO4を80μMの濃度に加え、安定なタンパク質フォールディングを誘導した。リフォールディング処理を完了したタンパク質をPBSバッファー溶液(pH7.4)に懸濁し、懸濁液を0.22μmフィルターで濾過し不純物を除去し、次にProtein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次にタンパク質を100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用して溶出し、DFD6(大腸菌)融合タンパク質を調製した。
【0106】
RGE(Amgen)融合タンパク質の場合、リフォールディング処理を完了したタンパク質を50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)に懸濁し、懸濁液を0.22μmフィルターで濾過し不純物を除去し、次に陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標) HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)に負荷した。カラムを50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)で洗浄し、次に50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って投与し、RGE(Amgen)融合タンパク質を溶出させた。陰イオン交換樹脂によって得られたRGE(Amgen)融合タンパク質を1Mの濃度に硫酸アンモニウムと混合し、次に疎水性相互作用クロマトグラフィーカラム(Phenyl sepharose FF、GE Healthcare)を使用して精製した。具体的には、カラムを1M 硫酸アンモニウムを含む50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)で洗浄し、50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って投与し、溶出された画分を10% Tris-グリシンゲル電気泳動を介して分析した。ゲルを穏やかに振盪しながらクマシーブリリアントブルーRで染色し、高純度でFGF21変異体融合タンパク質を含む画分を回収し、次に最終バッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を使用して4℃で一晩透析した。透析完了したら、4℃で30,000MWカットオフ遠心分離フィルターを使用することによって、得られたタンパク質貯蔵溶液を3,000rpmで濃縮した。FGF21変異体融合タンパク質の濃度をBCA定量分析を介して測定した。
【0107】
調製例1-5.FGF21変異体融合タンパク質の精製
Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で平衡化した。調製例1-3において得られた各FGF21変異体融合タンパク質を含む培養上清を0.2μmフィルターで濾過し、次にProtein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次にタンパク質を100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用して溶出した。アフィニティークロマトグラフィーによって得られた融合タンパク質を陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標) HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)を使用して精製した。FGF21変異体融合タンパク質がカラムから溶出される前に、陰イオン交換樹脂カラムを50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)で平衡化した。具体的には、50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)でカラムを洗浄後、50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って分配し、溶出された画分を分析した。各溶出した画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用して分析し、高純度でFGF21変異体融合タンパク質を含む画分を回収した。調製例1-4に記載されている方法にしたがって、濃度および定量分析を行った。
【0108】
実験例1.融合タンパク質のインビトロ活性
実験例1-1.タンパク質活性に対するFGF21変異の効果
調製例1において調製された融合タンパク質DFD4、DFD5、DFD6、DFD6(大腸菌)、DFD7、DFD9、DFD13、DFD18、DFD72、DFD73およびDFD74のインビトロ活性を測定した。
【0109】
具体的には、融合タンパク質のインビトロFGF21活性を、FGF21の共受容体であるヒトβ-クロトーを過剰発現するように修飾されたHEK293細胞系(Yuhan Corporation、Korea)を使用して評価した。活性の評価のために、調製例1-4および1-5において調製された融合タンパク質を含む濃縮物を3μMの濃度で3倍連続希釈に付した。血清欠乏状態において5時間培養された後に、ヒトβ-クロトーを過剰発現する細胞系を希釈された融合タンパク質で20分間処理し、次に室温で30分間60rpmで撹拌しながら細胞溶解バッファー(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)を加えることによって溶解した。細胞溶解物溶液を細胞外シグナル調節キナーゼ(ERK)およびリン酸化ERKを検出することができる抗体(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)と混合し、混合物を室温で2時間維持した。蛍光を蛍光検出器(TECAN/GENiosPro)を使用して検出した。融合タンパク質の活性を、EC50値を比較することによって測定した。
【0110】
図1Aから1Cに示されるとおり、変異配列を野生型FGF21タンパク質に導入することによって調製された融合タンパク質のインビトロ活性が阻害されず、各融合タンパク質の活性が互いに同様であることを確認した。大腸菌において発現されたDFD6(大腸菌)サンプルおよび動物細胞において発現されたDFD6サンプルを介して、N-グリコシル化変異を野生型FGF21タンパク質に導入することによって調製された融合タンパク質のインビトロ活性が阻害されなかったことも確認した。
【0111】
実験例1-2.タンパク質活性に対するリンカー配列の効果
調製例1において調製された融合タンパク質DFD1、DFD3、DFD4およびDFD13のインビトロ活性を測定した。
【0112】
具体的には、融合タンパク質のFGF21活性を、実験例1-1に記載されている方法にしたがって調製例1-5において調製された融合タンパク質を含む濃縮物を使用することによって測定した。結果は
図2Aおよび2Bに示される。
【0113】
わずかな違いが
図2Aおよび2Bに示されるとおりリンカー配列に依存して活性において示されたが、FGF21変異体融合タンパク質が活性において有意な減少を示さなかったことを確認した。
【0114】
実験例1-3.DFD1、RGE(Amgen)およびFc-FGF21(Lilly)についての実験結果
調製例1において調製された融合タンパク質DFD1およびコントロールタンパク質RGE(Amgen)およびFc-FGF21(Lilly)のインビトロ活性を測定した。
【0115】
具体的には、融合タンパク質のFGF21活性を、実験例1-1に記載されている方法にしたがって、調製例1-5において調製された融合タンパク質およびコントロールタンパク質を含む濃縮物を使用することによって測定した。結果は
図3に示される。
【0116】
図3に示されるとおり、Fc-FGF21(Lilly)は他のタンパク質よりも2倍高いインビトロ活性を有したが、DFD1およびRGE(Amgen)は同様のインビトロ活性を有したことを確認した。
【0117】
実験例2.融合タンパク質の安定性の評価
実験例2-1.安定性を評価するための実験方法
サンプル調製の初期段階でタンパク質凝集体の量を測定するために、高分子量凝集体(%HMW)を、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)方法を使用して定量した。結果は
図4に示される。
【0118】
具体的には、TosoHaasモデルTSK-GEL G3000SWXLカラムをSEC-HPLC方法のために使用した。カラムを、1mL/分の流速でバッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を流すことによって平衡化した。調製例1-5において調製されたDFD4およびDFD13タンパク質貯蔵溶液を、4℃で30,000MWカットオフ遠心分離フィルターを使用して3,000rpmで20mg/mLまたはそれ以上の標的濃度に濃縮した。BCA定量分析によるそれぞれのサンプルの濃度の測定後、サンプルを20mg/mLの最終濃度にバッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)で希釈した。DFD4およびDFD13の最初の%HMWを測定するために、20mg/mLのサンプルを1mg/mLの最終濃度にバッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)で希釈し、100μLの容量におけるそれぞれのサンプルをSEC-HPLCカラムにより分析した。
【0119】
それぞれのサンプルの安定性評価について、サンプルの%HMWを、2週間5℃、25℃および37℃で保存しながら4日目、8日目および14日目にSEC-HPLC方法を使用して測定した。
【0120】
図4に示されるとおり、DFD13がDFD4と比較して初期段階および最大2週の時点で高分子量凝集体(HMW%)のより少ない量を有したことを確認し、EIRP変異の導入がFGF21変異体融合タンパク質の安定性を改善し、それによりHMW%を有意に低下させることを示した。
【0121】
実験例2-2.安定性結果
FGF21の元の配列LLLE(98-101)に導入されたEIRP変異の安定性に対する効果を調査するために、DFD4(配列番号:29)およびDFD13(配列番号:35)の安定性を実験例2-1に記載されている方法にしたがって測定した。DFD4およびDFD13のゼロ時サンプル(初期段階;0日)および4、8および14日保存サンプルに対する分析結果は、以下の表4において要約されている(表4において、N.D.は「検出されない」を意味する)。
【0122】
【0123】
表4に示されるとおり、初期段階(0日)での%HMWの量はDFD4に対して0.91%およびDFD13に対して0.56%であった。2週間後、25℃での保存条件下で、%HMWの量はDFD4に対して8.83%に増加したが、DFD13において観察されなかった。DFD13がDFD4と比較して初期段階および2週でより小さい%HMW率を有することが示され、これはFGF21変異体融合タンパク質の%HMW率がEIRP変異の導入によって有意に減少したことを示した。
【0124】
実験例3.融合タンパク質の薬物動態学評価
実験例3-1.薬物動態学評価のための実験方法
Orient BIO(Korea)から購入された6週齢オスICRマウスを薬物処置の1日前に体重に対して同様の平均値を有するためにグループ(n=3/血液サンプリング時)に区分化し、1mg/kg(RGEに対して2mg/kg)でそれぞれのサンプルで1回皮下に投与した。次に、血液サンプルをそれぞれ、注射後1、4、8、12、24、48、72および96時に回収した。血液中の無傷な全長FGF21タンパク質の濃度を、FGF21タンパク質のN-末端およびC-末端への免疫反応を有するIntact human FGF21 ELISAキット(F1231-K01、Eagle Biosciences、USA)を使用して測定した。マウスへの各融合タンパク質の皮下注射後96時間までに回収された血液中のサンプルの濃度を測定し、それぞれのサンプルの薬物動態パラメータを計算した。
【0125】
実験例3-2.薬物動態学活性の評価
マウスにおける融合タンパク質の皮下投与後の血液中の各タンパク質の濃度 対 時間を示すグラフに基づいて(
図5)、薬物動態パラメータを計算した。データは以下の表5に示される。
【0126】
【0127】
各融合タンパク質の薬物動態学プロフィールは、薬物暴露の程度を示す曲線下面積(AUC)の値に基づいて比較および評価した。
【0128】
表5に示されるとおり、DFD4とDFD13とを、およびDFD6とDFD73とを比較すると、EIRP配列の導入がAUC値において約10から20%増加を引き起こしたことを決定した。DFD9とDFD4とを比較すると、TGLEAVの導入はAUC値において約6倍の増加を引き起こした。
【0129】
さらに、TGLEAN、G170NおよびG174Nの変異を、インビボでタンパク質分解されることが知られているFGF21のC-末端にN-グリコシル化を導入することによって半減期を延長させるように設計する。N-グリコシル化の導入によるAUCの増加を、変異体と各コントロール物質とを比較することによって確認した。N-グリコシル化の導入によるAUCにおける改善の効果を確認するために、グリコシル化を有さない大腸菌によって生産されるDFD6(大腸菌)に対するAUC値を、ヒト細胞系によって生産されるDFD6と比較した。ヒト細胞系によって生産されるDFD6は、大腸菌によって生産されるDFD6(大腸菌)と比較してAUC値において3倍またはそれ以上の増加を示し、これはグリコシル化による薬物動態学プロフィールの改善を証明した。
【0130】
A180Eは、Amgen Incによって所有されるWO 2009/149171に記載されている変異である。A180Eの変異がTGLEAVまたはG170Nのそれぞれの変異を含む変異体DFD13またはDFD73にさらに導入されたとき、得られる変異体DFD18またはDFD74のそれぞれが、AUC値において約2から3倍のさらなる増加を示した。
【0131】
要約すれば、薬物動態パラメータが、野生型FGF21融合タンパク質であるDFD9と比較して、種々の変異およびそれらの組合せの導入によって改善されたことを確認した。最も改善されたAUC値を示す融合タンパク質はEIRP、G170NおよびA180Eの変異を含むDFD74であり、これはDFD9と比較してAUC値において約45倍の改善を示した。さらに、2mg/kg体重の用量でのRGE(Amgen)を考慮して、DFD74はRGEと比較して薬物暴露のより高い程度を有し得る。変異による薬物動態学における改善の総括的な効果は、以下の表6において要約される。
【0132】
【0133】
実験例4.ob/obマウスにおける融合タンパク質の活性評価
実験例4-1.ob/obマウスにおける活性を評価するための実験方法
レプチンの遺伝的欠乏によって高血糖、インスリン抵抗性、過食、脂肪肝および肥満を示すと特徴付けられたob/obマウスは、2型糖尿病の試験のために広範に使用される。オスob/obマウス(Harlan、USA)をRaonbio(Korea)から購入した。これらのマウスは到着時に5から6週齢、および適応の3週間後に薬物処置時に8から9週齢であった。マウスを、薬物処置の1日前(0日目)に体重および尾部の血糖レベルに対して同様の平均値を有するためにグループ(n=8/グループ)に区分化し、サンプルをこれらのそれぞれの用量のそれぞれにしたがって1回皮下に投与した。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco、USA)をビヒクル処置として投与し、血中のグルコース濃度をグルコースメーターGlucoDr(All Medicus、Korea)を使用して測定した。非空腹時グルコースレベルおよび体重を、投与後14日目まで毎日測定した。糖化ヘモグロビンレベルもまた、投与前および試験後に各グループにおいて測定した。糖化ヘモグロビンレベルを、DCA 2000 HbA1cキット(Siemens、5035C)を使用して計算した。
【0134】
実験例4-2.ob/obマウスにおける活性の評価
オスob/obマウスにおける非空腹時血糖レベルおよび体重の変化を、30または100nmol/kgのDFD18およびDFD72、または10、30または100nmol/kgのDFD74の単一の皮下注射後に観察した。
【0135】
DFD18、DFD72およびDFD74の全てが用量依存的に血糖レベルを低下させる効果を有したことを確認した。100nmol/kgの高用量で3つの薬剤を比較すると、DFD72およびDFD74は、DFD18よりも血糖レベルを低下させる改善された効果を示した(
図6)。加えて、試験においてコントロール物質として使用されたFc-FGF21(Lilly)は、同じ用量レベル(30nmol/kg)でのDFD18、DFD72およびDFD74と比較して、血糖レベルを低下させることにおいてあまり有効でなかった。
【0136】
体重低下の効果について、100nmol/kgの高用量で3つの薬剤を比較すると、DFD72が、ob/obマウスにおいて最も有効であり、体重において約6%の低下を引き起こし、DFD18が、次に有効であり、DFD74が続いた(
図7)。
【0137】
試験終了後、血糖の平均値を示す糖化ヘモグロビンレベルを測定し、平均血糖の変化を各試験グループにおいて分析した。コントロールタンパク質Fc-FGF21(Lilly)で処置されたコントロールグループを除いて処置グループの全てが投与前および試験後間の違いにおいて負の値を示し、これは血糖を低下させることにおいてコントロール物質と比較して試験タンパク質の有効性を確認した(
図8)。
【0138】
実験例5.HFD/STZマウスにおいて融合タンパク質の活性評価
実験例5-1.HFD/STZマウスにおいて活性を評価するための実験方法
血糖および体重を低下させるFGF21変異体融合タンパク質の効果を、別の糖尿病モデルであるHFD/STZマウスモデルと比較し、評価した。(8週間またはそれ以上60kcal%の高脂肪食をC57BL/6マウスに与えることによって誘導される)慣用の食餌誘導性肥満マウスモデルは、インスリン抵抗性を引き起こすが、弱い高血糖性および糖尿病特徴を有する。慣用の食餌誘導性肥満マウスモデルにおける欠点を補い得るHFD/STZマウスは、膵臓において機能障害のβ細胞を生産することができ、高脂肪食(HFD)および低レベルのストレプトゾトシン(STZ)の投与の結果としてインスリン分泌を減少させ、したがって2型糖尿病の薬理学的試験のために有用である。
【0139】
具体的には、HFD/STZマウスモデルを誘導するため、C57BL/6マウス(Japan SLC)に4週間60kcal%の高脂肪食を与え、次に50mg/kgのSTZ(Sigma、85882)を3日間毎日腹腔内に投与し、膵臓のβ細胞において機能障害を誘導した。さらなる2週間高脂肪食を与えた後、200mg/dLまたはそれ以上の非空腹時血糖レベルを有するマウスを試験のために使用した。マウスを、薬物処置の1日前(0日目)に体重および尾部の血糖レベルの同様の平均値を有するためにグループ(n=6/グループ)に区分化し、サンプルをこれらのそれぞれの用量のそれぞれにしたがって1回皮下に投与した。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco、USA)をビヒクル処置として投与し、血中のグルコース濃度をグルコースメーターGlucoDr(All Medicus、Korea)を使用して測定した。非空腹時グルコースレベルおよび体重を、投与後14日目まで毎日測定した。糖化ヘモグロビンレベルもまた、投与前および試験後に各グループにおいて測定した。糖化ヘモグロビンレベルを、DCA 2000 HbA1cキット(Siemens、5035C)を使用して計算した。
【0140】
実験例5-2.HFD/STZマウスにおける活性の評価
オスHFD/STZマウスにおける非空腹時血糖レベルおよび体重の変化を、10nmol/kgのDFD72またはDFD74の単一の皮下注射後に観察した。
【0141】
非空腹時血糖レベルの変化について、DFD72およびDFD74が血糖レベルを低下させる同様の効果を有し、血糖低下効果を投与後10日目まで維持し、次に10日後に薬剤の代謝で失ったことを確認した(
図9)。DFD72は、投与の10日後の非空腹時血糖レベルの変化に関して、DFD74よりもより長期な効果を示した。
【0142】
FGF21変異体タンパク質の投与による体重低下の効果に関して、DFD72およびDFD74の両方は体重を約5%低下させる同様の効果を有し、効果は投与の10日後に消失したことを確認した(
図10)。
【0143】
試験終了後、血糖の平均値を示す糖化ヘモグロビンレベルを測定し、平均血糖の変化を各試験グループにおいて分析した。ビヒクルグループは糖化ヘモグロビンレベルにおいて0.25の増加を有したが、DFD74で処置されたグループは0.1の増加を有し、DFD72で処置されたグループは0.27の減少を有した(
図11)。
【0144】
実験例6.食餌性肥満マウスにおける融合タンパク質の活性
実験例6-1.食餌性肥満マウスにおける活性を評価するための実験方法
FGF21変異体融合タンパク質であるDFD18の体重低下効果を食餌性肥満マウスにおいて評価した。食餌性肥満モデルについて、C57BL/6JマウスはCentral Lab. Animal Inc.から購入され、60kcal%脂肪を含む高脂肪食(Research diet)を8から12週間与えた。マウスを、薬物処置の1日前(0日目)に体重の同様の平均値を有するためにグループ(n=8/グループ)に区分化し、次に30nmol/kgのサンプルを1回皮下に投与した。体重の変化をビヒクル(PBS)で処置されるグループと比較した。
【0145】
実験例6-2.食餌性肥満マウスにおけるタンパク質活性
30nmol/kgのDFD18の単一の投与後の食餌性肥満マウスモデルにおける時間とともにの体重の変化について、体重低下効果が投与後10日目まで続き、最大体重低下(約18%)が投与後11日目であり、これは14日目まで維持されたことを確認した(
図12)。
【0146】
調製例2.デュアル機能タンパク質の調製および精製
調製例2-1.デュアル機能タンパク質の発現のための発現ベクターの調製
インビトロ活性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性に対するGLP-1変異体タンパク質の配列およびそれに融合されたFcヒンジの配列の効果を同定するために、Fc-融合GLP-1変異体タンパク質についての様々な配列を設計した。GLP-1変異体タンパク質の配列は以下の表7に列挙され、Fc-融合GLP-1変異体の配列は表8に列挙される。
【0147】
【0148】
【0149】
表8において、HyFc5は配列番号:47を示し、HyFc40は配列番号:48を示す。
【0150】
インビトロ活性、薬物動態学プロフィールおよび薬理学的有効性に対するGLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質の配列、GLP-1変異体に融合されるFcヒンジの配列、FGF21変異体タンパク質およびFc間に連結されるリンカーの配列の効果を調査するために、デュアル機能タンパク質について様々な配列を設計した。GLP-1変異体タンパク質およびFGF21変異体タンパク質を含むデュアル機能タンパク質の配列は以下の表9に列挙される。各デュアル機能タンパク質は、N-末端からC-末端にこの順序において連結される、GLP-1変異体タンパク質、免疫グロブリンのFc領域、リンカーおよびFGF21変異体タンパク質を含む。
【0151】
【0152】
具体的には、デュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、各タンパク質のアミノ酸配列に基づいてBioneer Corporation(Korea)と相談した後に合成した。NheIおよびNotI制限酵素配列をデュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の5’末端および3’末端に加え、タンパク質翻訳のための開始コドンおよび細胞の外側に発現されたタンパク質を分泌することができるリーダー配列(MDAMLRGLCCVLLLCGAVFVSPSHA)を5’末端で制限酵素配列の次に挿入した。終止コドンを、デュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列の次に挿入した。デュアル機能タンパク質のそれぞれをコードするヌクレオチド配列を、NheIおよびNotIの2つの制限酵素を使用することによってpTrans-empty発現ベクターにクローニングした。CMVプロモーター、pUC-由来複製起点、SV40-由来複製起点およびアンピシリン-耐性遺伝子を含む単純な構造を有するpTrans-empty発現ベクターを、CEVEC Pharmaceuticals(Germany)から購入した。
【0153】
調製例2-2.Fc-融合GLP-1変異体およびデュアル機能タンパク質の発現のためのプラスミドDNAの構築
発現のために使用される大量のプラスミドDNAを得るために、大腸菌を、調製例2-1において構築された発現ベクターのそれぞれで形質転換した。熱ショックを介して弱められた細胞壁を有する大腸菌細胞をそれぞれの発現ベクターで形質転換し、形質転換体をLBプレート上に置き、コロニーを得た。このように得られたコロニーをLB培地に播種し、37℃で16時間培養し、それぞれの発現ベクターを含む各大腸菌培養物を100mLの容量において得た。このように得られた大腸菌を遠心分離して培養培地を除去し、次にP1、P2、P3溶液(QIAGEN、Cat No.:12963)を加え、細胞壁を破砕し、それによりタンパク質およびDNAが分離されたDNA懸濁液を得た。Qiagen DNA精製カラムを使用することによって、このように得られたDNA懸濁液からプラスミドDNAを精製した。溶出したプラスミドDNAをアガロースゲル電気泳動によって同定し、濃度および純度をナノドロップ(nanodrop)装置(Thermo Scientific、Nanodrop Lite)を使用して測定した。このように得られたDNAを発現のために使用した。
【0154】
調製例2-3.CAP-T細胞におけるFc-融合GLP-1変異体およびデュアル機能タンパク質の発現
ヒト細胞系を調製例2-2において得られた各プラスミドDNAで形質転換した。PEI溶液(Polyplus、Cat. No.:101-10N)を使用することによって、各プラスミドDNA型をPEM培地(Life technologies)において培養されたCAP-T細胞(CEVEC)に形質導入した。DNAおよびPEI溶液の混合溶液をFreestyle293発現培地(Invitrogen)を使用して細胞懸濁液と混合し、37℃で5時間培養し、PEM培地を加えた。37℃で5-7日間培養後、培養物を遠心分離して細胞を除去し、各タンパク質を含む上清を得た。
【0155】
調製例2-4.Fc-融合GLP-1変異体およびデュアル機能タンパク質の精製
Protein A アフィニティークロマトグラフィーカラム(GE Healthcare)を1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で平衡化した。調製例2-3において得られたFc-融合GLP-1変異体およびデュアル機能タンパク質のそれぞれを含む培養上清を0.2μmフィルターで濾過し、次にProtein A アフィニティークロマトグラフィーカラムに負荷した。カラムを1X PBSバッファー溶液(pH7.4)で洗浄し、次にタンパク質を100mM グリシンバッファー溶液(pH3.0)を使用して溶出した。アフィニティークロマトグラフィーによって得られたタンパク質を陰イオン交換樹脂カラム(POROS(登録商標) HQ 50μm、Thermo Fisher Scientific)を使用して精製した。アフィニティークロマトグラフィーから溶出したタンパク質が負荷される前に、陰イオン交換樹脂カラムを50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)で平衡化した。
【0156】
50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)でカラムを洗浄後、50mM Trisバッファー溶液(pH8.0)を濃度勾配に沿って分配し、溶出された画分を分析した。各溶出した画分をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を使用することによって分析し、高純度でFc-融合GLP-1変異体およびデュアル機能タンパク質を含む画分を回収し、最終バッファー溶液(1X PBS、1mM EDTA、pH7.4)を使用して4℃で一晩透析した。透析完了したら、4℃で30,000MWカットオフ遠心分離フィルターを使用して、得られたタンパク質貯蔵溶液を3,000rpmで濃縮した。各タンパク質の濃度をBCA定量分析を介して測定した。
【0157】
実験例7.デュアル機能タンパク質のインビトロ活性
実験例7-1.DFD23、DFD24、DFD25、DFD26、DFD27、DFD28およびDFD29の活性
デュアル機能タンパク質DFD23、DFD24、DFD25、DFD26、DFD27、DFD28およびDFD29のインビトロGLP-1活性を測定した。具体的には、ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系(Eurofins、HTS163C2)を購入し、デュアル機能タンパク質のGLP-1活性を評価するために使用した。活性の評価のために、融合タンパク質を含むサンプル(調製例2-4において調製されたタンパク質貯蔵溶液;以下「サンプル」)を25nMの濃度で4倍連続希釈に付した。ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系を30分間処理した後、生産された細胞内cAMPを測定した(Cisbio、62AM4PEB)。各タンパク質の活性を、EC50値を比較することによって測定した。
【0158】
図13に示されるとおり、GLP-1(A2G)配列を含むデュアル機能タンパク質は、他のGLP-1変異体配列を含むデュアル機能タンパク質よりも約2~3倍低い活性を示した。GLP-1活性において有意な差異は、GLP-1(A2G)配列を除いて変異配列を含むデュアル機能タンパク質間で観察されなかった。
【0159】
実験例7-2.DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114の活性
調製例2において調製されたデュアル機能タンパク質DFD69、DFD112およびDFD114およびDFD59(Fc-融合GLP-1変異体)のインビトロGLP-1活性を測定した。具体的には、ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系(Eurofins、HTS163C2)を購入し、デュアル機能タンパク質のGLP-1活性を評価するために使用した。活性の評価のために、融合タンパク質のそれぞれを含むサンプルを25nMの濃度で4倍連続希釈に付した。ヒトGLP-1受容体を過剰発現するCHO細胞系を30分間処理した後、生産された細胞内cAMPを測定した(Cisbio、62AM4PEB)。
【0160】
図14に示されるとおり、各タンパク質の活性を、EC
50値を比較することによって評価した。3つのデュアル機能タンパク質は同様のEC
50値を示し、(FGF21変異体を含まない)DFD59はデュアル機能タンパク質よりも約2倍高い活性を示した。
【0161】
次に、DFD69、DFD112およびDFD114におけるFGF21部分のインビトロ活性を測定した。具体的には、デュアル機能タンパク質におけるFGF21部分のインビトロ活性を、ヒトβ-クロトー(FGF21の共受容体)を過剰発現するHEK293細胞系を使用して評価した。活性の評価のために、デュアル機能タンパク質のそれぞれを含むサンプルを3μMの濃度で3倍連続希釈に付した。血清欠乏状態において5時間培養された後に、ヒトβ-クロトーを過剰発現するHEK293細胞系を20分間処理し、室温で30分間60rpmで撹拌しながら細胞溶解バッファー(Cisbio/Cat# 64ERKPEG)を加えることによって細胞を溶解した。細胞溶解物溶液をERKおよびリン酸化ERKを検出することができる抗体と混合し、混合物を室温で2時間維持した。蛍光を蛍光検出器(TECAN/GENiosPro)を使用して検出した。活性を、EC50値を比較することによって測定した。
【0162】
デュアル機能タンパク質DFD69、DFD112およびDFD114のFGF21部分のインビトロ活性が
図14に示されるとおり同様であったことを確認した。
【0163】
実験例8.デュアル機能タンパク質の薬物動態学評価
実験例8-1.薬物動態学評価のための実験方法
Orient BIO(Korea)から購入された6週齢オスICRマウスを薬物処置の1日前に体重の同様の平均値を有するためにグループ(n=3/血液サンプリング時)に区分化し、1mg/kgの容量でそれぞれのサンプルで1回皮下に投与した。血液サンプルをそれぞれ、注射後1、4、8、12、24、48、72、96、144、192および240時に回収した。血液中の各デュアル機能タンパク質の濃度を、FGF21部分およびGLP-1-Fc部分に基づいて、別々に測定した。血液中のデュアル機能タンパク質の無傷な全長FGF21部分の濃度を、FGF21タンパク質のN-末端およびC-末端への免疫反応を有するIntact human FGF21 ELISAキット(F1231-K01、Eagle Biosciences、USA)を使用して測定した。さらに、血液中のデュアル機能タンパク質の活性なGLP-1-Fc部分の濃度を、ELISA分析を介して決定されるとき、GLP-1およびFcのN-末端への免疫反応を有する抗体を使用して測定した。マウスへの各タンパク質の単一の皮下注射後240時間までに回収された血液サンプル中の各タンパク質のFGF21およびGLP-1-Fc部分の濃度を測定し、各タンパク質の薬物動態パラメータを計算した。
【0164】
実験例8-2.薬物動態学活性結果
マウスにおける各タンパク質の単回皮下投与後の時間とともにの血液中の各活性な物質の濃度に基づいて(
図15)、デュアル機能タンパク質のFGF21およびGLP-1-Fc部分に対する薬物動態パラメータを計算した。データは以下の表10に示される。
【0165】
【0166】
各デュアル機能タンパク質の薬物動態学プロフィールは、薬物暴露の程度を示す曲線下面積(AUC)の値に基づいて比較および評価した。
【0167】
表10に示されるとおり、FGF21部分の薬物動態パラメータについて、DFD114は薬物暴露(AUC)および半減期の最も高い程度を示したが、DFD112は次に高いAUC値を示し、DFD69が続いた。DFD114は、DFD69と比較してAUC値において約2倍またはそれ以上の増加を示した。GLP-1-Fc部分の薬物動態学について、同じGLP-1変異体配列を含む4つのタンパク質(DFD59、DFD69、DFD112およびDFD114)は同様のAUC値を示した。
【0168】
実験例9.db/dbマウスにおける活性評価
実験例9-1.db/dbマウスにおける活性を評価するための方法
レプチン受容体の遺伝的欠乏によって高血糖、インスリン抵抗性、過食、脂肪肝および肥満を有し、ob/obマウスよりもより深刻な高血糖および肥満を示すと特徴付けられたdb/dbマウスは、2型糖尿病の試験のために広範に使用される。オスdb/dbマウス(Harlan、USA)をRaonbio(Korea)から購入した。これらのマウスは到着時に5から6週齢、および適応の3週間後に薬物処置時に8から9週齢であった。マウスを、薬物処置の1日前(0日目)に体重および尾部の血糖レベルの同様の平均値を有するためにグループ(n=6/グループ)に区分化し、サンプルをこれらのそれぞれの用量のそれぞれにしたがって1回皮下に投与した。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco、USA)をビヒクル処置として投与し、血中のグルコース濃度をグルコースメーターGlucoDr(All Medicus、Korea)を使用して測定した。非空腹時グルコースレベルおよび体重を、投与後14日目まで毎日測定した。糖化ヘモグロビンレベルもまた、投与前および試験後に各グループにおいて測定した。糖化ヘモグロビンレベルを、DCA 2000 HbA1cキット(Siemens、5035C)を使用して計算した。
【0169】
実験例9-2.db/dbマウスにおける活性の評価
オスdb/dbマウスにおける非空腹時血糖レベルおよび体重の変化を、デュアル機能タンパク質DFD114の効果をFc-FGF21およびGLP-1-Fc単一機能タンパク質の組合せ投与と比較するために、10または30nmol/kgのデュアル機能タンパク質DFD114の単一の皮下注射、30nmol/kgの長時間作用型GLP-1-Fc単一機能タンパク質DFD59の単一の皮下注射、および30nmol/kgの(それぞれGLP-1-FcおよびFc-FGF21単一機能タンパク質である)DFD59およびDFD74の組合せ投与後に観察した。
【0170】
長時間作用型GLP-1-Fcタンパク質DFD59は投与後1日目まで血糖レベルにおける鋭い低下を引き起こしたが、血糖の低下は2日後に減少し、血糖レベルは4日後のビヒクル-処置グループと同様であった。その一方で、DFD114で処置されるグループは投与後3日目まで血糖低下について優れた効果を示し、血糖レベルを低下させる効果は30nmol/kgよりも10nmol/kgの用量での投与から4日後により迅速に消失され、血糖低下効果の期間において用量依存的差異を示した。各タンパク質の組合せ投与で処置されるグループは、他のグループと比較して血糖レベルを低下させることに対して最も持続した効果を示し、GLP-1およびFGF21の組合せが血糖レベルをコントロールすることについて優れた効果を有したことを示した(
図16)。
【0171】
体重低下の効果に関して、DFD59およびDFD74の組合せで処置されるグループは体重の低下について最も良い効果を示し、30nmol/kgのDFD114で処置されるグループはまた体重の低下について顕著な効果を示した(
図17)。
【0172】
試験終了後、血糖の平均値を示す糖化ヘモグロビンレベルを測定し、平均血糖の変化を各試験グループにおいて分析した。
図18に示されるとおり、ビヒクルで処置されるグループは投与前のグループと比較して試験終了後に糖化ヘモグロビンレベルの増加を示し、DFD59で処置されるグループは同様の増加を示した。30nmol/kgのDFD114で処置されるグループは糖化ヘモグロビンレベルにおいて最も良い減少を示し、組合せ投与を受けるグループは次に高い有効性を示し、10nmol/kgのDFD114で処置されるグループが続いた。各処置されるグループにおいて糖化ヘモグロビンレベルにおける減少に基づいて比較することによってタンパク質を評価するとき、デュアル機能タンパク質DFD114がGLP-1-FcまたはFc-FGF21単一機能タンパク質単独よりも血糖レベルを低下させることについてより強い効果を示したことを確認した。
【0173】
実験例10.HFD/STZマウスにおける融合タンパク質の活性
実験例10-1.HFD/STZマウスにおける活性を評価するための実験方法
血糖および体重を低下させることについてデュアル機能タンパク質の効果を、別の糖尿病モデルであるHFD/STZマウスモデルにおいて比較および評価した。
【0174】
(8週間またはそれ以上60kcal%の高脂肪食をC57BL/6マウスに与えることによって誘導される)慣用の食餌誘導性肥満マウスモデルは、インスリン抵抗性を引き起こすが、弱い高血糖性および糖尿病特徴を有する。慣用の食餌誘導性肥満マウスモデルの欠点を補い得るHFD/STZマウスは、膵臓の機能障害のβ細胞を生産することができ、高脂肪食(HFD)および低レベルのストレプトゾトシン(STZ)の投与の後のインスリン分泌を減少させ、2型糖尿病の薬理学的試験のために使用される。HFD/STZマウスモデルを誘導するため、C57BL/6マウスに4週間60kcal%の高脂肪食を与え、次に50mg/kgのSTZ(Sigma、85882)を3日間毎日腹腔内に投与し、膵臓のβ細胞の機能障害を誘導した。さらなる2週間高脂肪食を与えた後、200mg/dLまたはそれ以上の非空腹時血糖レベルを有するマウスを試験のために選択した。マウスを、薬物処置の1日前(0日目)に体重および尾部の血糖レベルの同様の平均値を有するためにグループ(n=6/グループ)に区分化し、サンプルをこれらのそれぞれの用量のそれぞれにしたがって1回皮下に投与した。ダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(DPBS、Gibco、USA)をビヒクル処置として投与し、血中のグルコース濃度をグルコースメーターGlucoDr(All Medicus、Korea)を使用して測定した。非空腹時グルコースレベルおよび体重を、投与後14日目まで毎日測定した。糖化ヘモグロビンレベルもまた、投与前および試験後に各グループにおいて測定した。糖化ヘモグロビンレベルを、DCA 2000 HbA1cキット(Siemens、5035C)を使用して計算した。
【0175】
実験例10-2.HFD/STZマウスにおける活性
オスHFD/STZマウスにおける時間とともにの非空腹時血糖レベルおよび体重の変化を、3nmol/kgまたは10nmol/kgのデュアル機能タンパク質DFD114、10nmol/kgのFc-融合GLP-1変異体DFD59、または10nmol/kgのFc-融合FGF21変異体DFD72およびDFD74のそれぞれの単一の皮下注射後に観察した。DFD59およびDFD74もまた、単一機能タンパク質の組合せ投与の効果をデュアル機能タンパク質と比較するために、それぞれ10nmol/kgで1回皮下に注射した。
【0176】
図19に示されるとおり、4日目までの血糖レベルの変化に関して、DFD72およびDFD74(長時間作用型FGF21単一機能タンパク質)投与は血糖のより遅い低下を引き起こしたが、DFD114(GLP-1を含む長時間作用型タンパク質)、DFD59およびDFD59およびDFD74の組合せ投与は投与の1日目から血糖のより迅速な低下を示した。db/dbマウスにおける結果と同様に、DFD59は早期に血糖における鋭い低下を示したが、血糖の低下は4日後によりゆっくり消失された。DFD114は3nmol/kgの低用量で同様のパターンを示した。10nmol/kgのDFD114、DFD72、DFD74および組合せ投与で処置されるグループにおいて、同様の非空腹時血糖プロフィールが観察された。
【0177】
体重低下の効果について、DFD59およびDFD74の組合せ投与で処置されるグループは、体重低下について最も良い効果を示し(7から8%)、10nmol/kgのDFD114で処置されるグループはまた体重の低下について顕著な効果を示した(約6%)(
図20)。DFD59で処置されるグループは投与後1日目に5%の体重低下を示したが、効果は2日後に消失し、7日後にビヒクルグループと同様となった。長時間作用型FGF21単一機能タンパク質DFD72およびDFD74のそれぞれで処置されるグループは投与後7日目まで4から5%の体重のより遅い低下を示し、効果は10日後に消失した。
【0178】
試験終了後、血糖の平均値を示す糖化ヘモグロビンレベルを測定し、平均血糖の変化を各試験グループにおいて分析した(
図21)。ビヒクルグループは投与前と比較して試験終了後に糖化ヘモグロビンレベルの増加を有し、DFD59で処置されるグループは同様の増加を示した。対照的に、DFD114で処置されるグループは用量依存的に糖化ヘモグロビンレベルにおける低下を示し、10nmol/kgのDFD114で処置されるグループは糖化ヘモグロビンレベルの低下に関して最も良い効果を有した(-0.42%)。DFD59およびDFD74の組合せ投与で処置されるグループはDFD114と同様の糖化ヘモグロビンレベルの低下を示した(-0.38%)。長時間作用型FGF21単一機能タンパク質について、DFD72がDFD74よりも優れていたことを観察した。各グループにおいて糖化ヘモグロビンの低下したレベルに基づいてタンパク質を比較して、デュアル機能タンパク質DFD114がGLP-1-FcおよびFc-FGF21単一機能タンパク質の両方よりも優れていたことを確認した。
【0179】
実験例11.免疫原性の予測および評価
実験例11-1.免疫原性に対する予測方法および結果
デュアル機能タンパク質の起こり得る免疫原性を予測するために、免疫原性のコンピューター内での分析を各タンパク質に対して行った。
【0180】
具体的に、デュアル機能タンパク質の起こり得る免疫原性をiTopeTMおよびTCEDTM方法を使用することによって迅速にスクリーニングした(Prediction of immunogenicity of therapeutic proteins: validity of computational tools, BioDrugs, 2010)。2つの方法にしたがって、T細胞エピトープはMHCクラスII結合分析のみに依存するコンピューター内での分析方法と比較してより正確に予測され得る。
【0181】
実験例11-2.免疫原性に対するエキソビボ評価方法および結果
デュアル機能タンパク質の起こり得る免疫原性を評価するために、EpiScreenTM分析(Increased brain bio-distribution and chemical stability and decreased immunogenicity of an engineered variant of GDNF, Exp Neurol, 2015)を行った。免疫原性が検出されるとき、免疫原性を誘導するアミノ酸配列がT細胞エピトープマッピングを介して同定され得、最小限にされた免疫原性を有する脱免疫化変異体が免疫原性を再評価するためにコンピューター内予測を介して設計および調製され得る。
【配列表】