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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電極埋設部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/02 20060101AFI20241023BHJP
   C04B 35/622 20060101ALI20241023BHJP
   H05B 3/74 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H05B3/02 B
C04B35/622
H05B3/74
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019077302
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020177735
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-31
【審判番号】
【審判請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】薮花 優棋
【合議体】
【審判長】鈴木 充
【審判官】村山 美保
【審判官】水野 治彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-60103(JP,A)
【文献】特開2004-362933(JP,A)
【文献】特開2004-288887(JP,A)
【文献】特開2008-130609(JP,A)
【文献】特開2015-2300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/02- 3/82
C04B 35/05-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウム製の基体の中に電極及び前記電極と電気的に接続したタングステンと窒化アルミニウムとを含む接続部材を埋設してなる電極埋設部材の製造方法において、
窒化アルミニウム成形体を脱脂して作製した窒化アルミニウム製の第1脱脂体と、
前記電極と、
化アルミニウム粉末とタングステンの粉末から作製した前記接続部材の未焼成体と、
前記接続部材の未焼成体が収容される穴部を有し、窒化アルミニウム成形体を脱脂して作製した窒化アルミニウム製の第2脱脂体と、
を順に積層して積層体を構成し、
前記積層体を加圧焼成することによって、一体化してなる電極埋設部材を製造することを特徴とする電極埋設部材の製造方法。
【請求項2】
窒化アルミニウム製の基体の中に電極及び前記電極と電気的に接続したタングステンと窒化アルミニウムとを含む接続部材を埋設してなる電極埋設部材の製造方法において、
開口を有する有底筒状型に窒化アルミニウム粉末を充填して加圧し第1圧粉体を形成する第1圧粉体形成工程と、
前記有底筒状型の中で、前記第1圧粉体の前記有底筒状型の開口側に、窒化アルミニウム粉末とタングステンの粉末から作製した前記接続部材の未焼成体と、前記電極とを配置する電極載置工程と、
前記有底筒状型の中の、前記第1圧粉体、前記電極、及び前記接続部材の未焼成体の前記開口側に前記窒化アルミニウム粉末を充填して加圧し前記第1圧粉体を含んだ第2圧粉体を形成する第2圧粉体形成工程と、
前記電極及び前記接続部材の未焼成体を埋設した前記第2圧粉体を加圧焼成する焼結工程と、
を備える電極埋設部材の製造方法。
【請求項3】
前記接続部材の未焼成体は、成形体、脱脂体、又は仮焼体である、請求項1または2に記載の電極埋設部材の製造方法。
【請求項4】
加圧焼成後の前記積層体の一方の面に機械加工より、直径が前記接続部材より小さく、かつ、前記接続部材の一部のみを露出させるような端子穴が形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電極埋設部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス製の基体の内部に電極が埋設された電極埋設部材の製造方法に関する。電極埋設部材は、例えば、半導体製造装置に組み込まれるセラミックス製ヒーターまたは静電チャックとして用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックスからなる板状の基体の内部に金属電極(内部電極)を埋設して構成された電極埋設部材が知られている。この電極埋設部材においては、セラミックス製の基体に機械加工によって穴(端子穴)を形成し、この穴に基体内部の金属電極を露出させ、当該穴に円柱状の金属端子を挿入して、金属端子の先端面を基体内部の金属電極にロウ付けしている。
【0003】
電極埋設部材は、例えば半導体製造装置(エッチング装置、CVD装置等)に組み込まれて、半導体ウェハの静電チャックや加熱のために使用されるものであり、使用環境下で高温に繰り返しさらされることがある。
【0004】
特許文献1によれば、従来の電極埋設部材に対して、室温と600℃との間での熱サイクル試験、及び600℃での長期間の保持試験を行ったところ、金属端子用の穴を画定する基体の内側面にクラックが発生することがあった。そのようなクラック発生への対策として、特許文献1では、電極埋設部材の製造時に基体に残留する応力を減少させ、基体に発生するクラックを抑える技術が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、従来のセラミックス部材(電極埋設部材)の製造方法が開示されている。図9及び図10は、この従来の製造方法を模式的に示しており、この従来方法は、窒化アルミニウム(AlN)焼結体100の上に、導体101と、タングステンと窒化アルミニウム粉末との混合物を加圧したペレットからなる接続導体102を載せ、その上に、焼成処理後に基体103を形成する窒化アルミニウムの原料粉を充填後、ホットプレスで焼結する工程と、接続導体102を露出させる穴(端子穴)104を形成する機械加工を行った後、接続導体102の露出部に外部金属端子105を、ロウ付け部106によって接続する工程とを含んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許3776499号公報
【文献】特許4374096号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献2の製造方法によってセラミックス部材(電極埋設部材)を製造する場合、ホットプレス時に、窒化アルミニウム(AlN)焼結体100と、窒化アルミニウムの原料粉(焼成処理後に基体103となる)の収縮率が異なり、その結果、接続導体102と、窒化アルミニウムの原料粉の焼成によって形成された基体103との界面(特に接続導体102の縁部)に、予期しない残留応力が働き、クラックが発生することがあった。このクラックは、窒化アルミニウムの原料粉の焼結処理により形成された基体103、焼成による一体化処理に先立って準備されていた窒化アルミニウム焼結体100、及び/または接続導体102において発生することがあった。
【0008】
そのため、ホットプレス等を用いた焼成処理時において、接続部材(接続導体)と、その周囲の窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料との収縮率の差を緩和しつつ、線膨張係数差(熱膨張係数差)の変化を緩和することによって、接続部材の縁部に集中する応力を小さくし、クラックの抑制を図る必要があった。
【0009】
特に、接続部材(接続導体)を、タングステン等の金属材料と窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料との混合物で形成する場合には、金属材料のみで形成する場合に比べて、加圧焼成時に接続部材においてクラックが発生し易いという傾向がある。この傾向(接続部材におけるクラックの発生し易さ)は、加圧焼成前の接続部材の成形体にバインダーを含ませていない場合において特に顕著である。なお、製造工程上の便宜を考慮すれば、バインダー無しの接続部材の成形体を使用したいという要請がある。すなわち、接続部材の成形体に含まれるバインダーの量によっては、N雰囲気での追加の脱脂工程が必要となり、製造工程が複雑化するという問題がある。
【0010】
また、特許文献2の製造方法の場合、接続部材(接続導体)の上に窒化アルミニウム(AlN)粉末を充填してホットプレス処理を行うものであるため、ホットプレス処理の際に、接続部材に対して比較的大きな圧力が加えられる。そして、接続部材に加えられた圧力が、接続部材の変形によって電極に伝達され、これにより電極が変形し、その平坦度が劣化するという問題があった。
【0011】
本発明は、以上の点に鑑み、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス製の基体の中に電極及びこの電極と電気的に接続した接続部材を埋設してなる電極埋設部材を製造する際に、電極埋設部材を構成する材料の内部にクラックや残留応力が発生することを抑制または防止し、或いは電極が変形することを抑制または防止することができる電極埋設部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、窒化アルミニウム製の基体の中に電極及び前記電極と電気的に接続したタングステンと窒化アルミニウムとを含む接続部材を埋設してなる電極埋設部材の製造方法において、
窒化アルミニウム成形体を脱脂して作製した窒化アルミニウム製の第1脱脂体と、
前記電極と、
化アルミニウム粉末とタングステンの粉末から作製した前記接続部材の未焼成体と、
前記接続部材の未焼成体が収容される穴部を有し、窒化アルミニウム成形体を脱脂して作製した窒化アルミニウム製の第2脱脂体と、
を順に積層して積層体を構成し、
前記積層体を加圧焼成することによって、一体化してなる電極埋設部材を製造することを特徴とする。
【0013】
上記特徴を備えた本発明の電極埋設部材の製造方法によれば、加圧焼成時に、第1脱脂体の部分と第2脱脂体の部分は同時に収縮する。そのため、加圧焼成時において、第1脱脂体と第2脱脂体の接合界面近傍での収縮率差や線膨張係数差(熱膨張係数差)に起因するクラックや残留応力の発生を抑制または防止することができる。
【0014】
また、未焼成体からなる接続部材は、電極埋設部材の基体を構成する少なくとも1種のセラミックス成分からなるセラミックス粉末と金属の粉末から作製されているため、未焼成体の接続部材の線膨張係数(熱膨張係数)は、電極の線膨張係数(熱膨張係数)とセラミックス材料の線膨張係数(熱膨張係数)の中間の値をとり、接続部材とセラミックス材料の界面の線膨張係数(熱膨張係数)の変化が緩和される。これにより、クラックや残留応力の発生を抑制または防止することができる。
【0015】
さらに、接続部材の未焼成体は、予め第2脱脂体に形成された穴部に挿入されている。これにより、加圧焼成時にセラミックス材料と同時に接続部材の未焼成体が収縮する。接続部材として従来用いられていた焼結金属からなるバルク体を埋め込む場合は加圧焼成時にバルク体の剛性がその周囲に比べて高いために圧縮応力が選択的にバルク体に作用する。その結果、接続部材にクラック(破損)が発生する原因となっていた。そこで、接続部材の未焼成体を用いることで焼成時に接続部材の焼結がその周囲のセラミックス材料と同時期に進行するようにしつつ、接続部材の未焼成体を予め第2脱脂体に形成された穴部に挿入することで接続部材が選択的に強い圧縮力を受けることを回避でき、接続部材自体の破損を抑制しつつセラミックス材料と一体化させることができる。その結果、接続部材および接続部材からセラミックス素材に進展するクラックを抑制または防止することができる。
【0016】
[2]上記目的を達成するため、本発明は、窒化アルミニウム製の基体の中に電極及び前記電極と電気的に接続したタングステンと窒化アルミニウムとを含む接続部材を埋設してなる電極埋設部材の製造方法において、
開口を有する有底筒状型に窒化アルミニウム粉末を充填して加圧し第1圧粉体を形成する第1圧粉体形成工程と、
前記有底筒状型の中で、前記第1圧粉体の前記有底筒状型の開口側に、窒化アルミニウム粉末とタングステンの粉末から作製した前記接続部材の未焼成体と、前記電極とを配置する電極載置工程と、
前記有底筒状型の中の、前記第1圧粉体、前記電極、及び前記接続部材の未焼成体の前記開口側に前記窒化アルミニウム粉末を充填して加圧し前記第1圧粉体を含んだ第2圧粉体を形成する第2圧粉体形成工程と、
前記電極及び前記接続部材の未焼成体を埋設した前記第2圧粉体を加圧焼成することによって、電極埋設部材を製造する焼結工程と、を備えることを特徴とする。
【0017】
上記特徴を備えた本発明の電極埋設部材の製造方法によっても、上述した特有の作用効果を奏することができる。
【0018】
[3]また、本発明の電極埋設部材の製造方法において、前記接続部材の未焼成体は、成形体、脱脂体、又は仮焼体である。
[4]また、本発明の電極埋設部材の製造方法において、加圧焼成後の前記電極埋設部材の一方の面に、直径が前記接続部材より小さく、かつ、前記接続部材の一部のみを露出させるような端子穴が形成されることを特徴とする。
これにより、上述した特有の作用効果を確実に奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するための模式図である。
図1B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するための模式図である。
図2A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するための他の模式図である。
図2B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するための他の模式図である。
図3A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するためのさらに他の模式図である。
図3B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施形態を説明するためのさらに他の模式図である。
図4A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための模式図である。
図4B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための模式図である。
図4C】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための模式図である。
図5A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための他の模式図である。
図5B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための他の模式図である。
図5C】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するための他の模式図である。
図6A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するためのさらに他の模式図である。
図6B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するためのさらに他の模式図である。
図7A】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するためのさらに他の模式図である。
図7B】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するためのさらに他の模式図である。
図8】本発明による電極埋設部材の製造方法の一実施例を説明するためのさらに他の模式図である。
図9A】従来の電極埋設部材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図9B】従来の電極埋設部材の製造方法の一例を説明するための模式図である。
図10A】従来の電極埋設部材の製造方法の一例を説明するための他の模式図である。
図10B】従来の電極埋設部材の製造方法の一例を説明するための他の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態としての電極埋設部材の製造方法について、図面を参照して説明する。なお、図面は、電極埋設部材の主要部、特に内部電極と外部金属端子との接続箇所を模式的(概念的)に示すものである。
【0021】
本実施形態による電極埋設部材の製造方法においては、まず初めに、図1Aおよび図1Bに示したように、セラミックス成形体を脱脂して作製したセラミックス製の第1脱脂体からなる第1部材1と、モリブデン(Mo)等の金属からなり、高周波電極、接地電極、又は静電吸着用電極として機能する電極2と、未焼成体からなる接続部材3と、セラミックス成形体を脱脂して作製したセラミックス製の第2脱脂体からなる第2部材4と、を準備する。
【0022】
より具体的には、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料からなるCIP体等から切り出して、所定の形状の第1成形体(焼成後に絶縁層となるプレート)を作製し、この第1成形体を脱脂して、第1脱脂体からなる第1部材1を作製する。
【0023】
同様に、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス材料からなるCIP体等から切り出して、所定の形状の第2成形体(焼成後に基台となるプレート)を作製し、この第2成形体を脱脂して、第2脱脂体からなる第2部材4を作製する。
【0024】
次に、第1部材(第1脱脂体)1及び第2部材(第2脱脂体)4を加工して、それらの外形を整えると共に、電極2および接続部材(未焼成体)3を収納するための空間を形成する。図1Aに示したように、第2部材(第2脱脂体)4には、接続部材(未焼成体)3を収納するための穴部5が形成されている。
【0025】
また、接続部材(未焼成体)3は、電極埋設部材の基体(第1部材1および第2部材4)を構成する少なくとも1種のセラミックス成分からなるセラミックス粉末と金属の粉末から作製した、成形体または脱脂体または仮焼体からなる。例えば、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス原料粉末と、タングステン(W)等の金属粉末を所定の体積比で混合した後、接続部材3の未焼成体(成形体等)を作製する。なお、セラミックス原料粉末に窒化アルミニウム(AlN)が含まれる場合は、必要に応じてイットリア(Y)等の焼結助剤を添加してもよい。
【0026】
次に、第1部材(第1脱脂体)1に電極2を載置し、その上に接続部材(未焼成体)3を載置する。さらに、第2部材(第2脱脂体)4をその上に載置して、図1Bに示したように積層体6を構成する。なお、積層体6の積層の順番は、図1Bで示す順番と逆にしてもよい。
【0027】
図1Bから分かるように、穴部5の中に収納された接続部材(未焼成体)3と、穴部5を画成する壁面との間には、間隙が形成されている。すなわち、接続部材(未焼成体)3と第2部材(第2脱脂体)4の壁面を形成するセラミックス材料とは接触しておらず、離間している。なお、図1Bでは両者の全体が離間した状態(接触部分がない状態)が示されているが、両者の一部が接触する形態でも良い。
【0028】
接続部材(未焼成体)3の周囲に形成される間隙の寸法は、典型的には、接続部材3の上下方向においては100μm、横方向においては300μmである。
【0029】
次に、図1Bに示した積層体6に対して、一軸加圧焼成(ホットプレス)処理を行う。このように積層体6を加圧焼成することによって、第1部材(第1脱脂体)1、第2部材(第2脱脂体)4、及び接続部材(未焼成体)3が焼結し、図2Aに示したように、これらの部材が電極2と共に一体化される。焼結後の第1部材1及び第2部材4は、両者が一体となって電極埋設部材の基体7を構成する。加圧焼成前に接続部材3の周囲に存在していた間隙は、焼結後には消失しており、接続部材3は第2部材4と一体化している。
【0030】
次に、図2Aに示した焼結後の積層体6に対して、図2Bに示したように、一方の面(図中上側の面)より機械加工を施して、端子穴8を形成する。これにより、接続部材3の一部が端子穴8の内部に露出する。ここで、端子穴8の直径は、接続部材3の代表寸法(例えば直径)より小さいことがより望ましい。
【0031】
次に、図3Aに示したように、ロウ材(ロウ付け部9)と端子(外部接続端子)10を端子穴8の中に挿入し、図3Bに示したように、端子10と接続部材3をロウ付け部9でロウ接合する。ロウ付け部9には、ロウ材の中に埋設されたタングステン(W)の中間部材9aとコバールの中間部材9bとが含まれている。ロウ材としては、Au-Ni系に代表される金ロウやAg-Cu系に代表される銀ロウが好適である。端子穴8の径は、例えば5mmである。端子10は、例えば、直径が4.8mmであり、長さが20mmである。端子10と、端子穴8を画定する基体7の内側面との間には、隙間が形成されている。隙間の幅は、例えば0.1mmである。端子10を構成する金属材料としては、典型的にはニッケルがあげられ、その他、コバール等の低熱膨張金属合金、及び/またはチタン、銅またはこれらを主成分とする合金がある。
【0032】
なお、本実施形態においては、円柱状の端子10と円板状の接続部材3とが互いに同心的に配置されて接続されているが、端子10と接続部材3とは必ずしも同心的に配置する必要はなく、同心位置からずれていても良い。また、端子10の形状は、円柱状以外の棒状の形状でも良い。また、ロウ付け部9は、その周囲に存在する基体7の材料と接触していても良い。
【0033】
上述した構成によって、端子(外部金属端子)10と、基体7の内部に埋設された電極2とが電気的に接続される。なお、接続部材3の形状は、必ずしも円板状に限定されるものではなく、電極2と端子10とを電気的に接続する上で好適な形状を適宜選択することができる。また、電極2と接続部材3との間の電気的な接続状態を確保するための形態としては、両者を直接的に接触させる形態、または導電性ペーストを使って両者を接着する形態等を採用することができる。
【0034】
なお、接続部材(未焼成体)3を構成する成形体は、バインダーを含まずともCIP成形が可能である。成形体の強度を高めるためにバインダーを含ませてもよいが、その場合は、バインダーの量によってはN雰囲気での脱脂が更に追加される。本実施形態の場合、加圧焼成前の第1部材1及び第2部材4がいずれも脱脂体なので、その間に配置される接続部材(未焼成体)3は、バインダー無しのものを使用することが好ましい。
【0035】
また、本実施形態では、電極2が1層である場合の電極埋設部材の製造方法について説明したが、複数層の電極が埋設される場合は、それに応じて複数の脱脂体および複数の接続部材を用いて同様な工程で製作することができる。これについては、本発明の実施例として後述する。
【0036】
上記構成よりなる本実施形態の電極埋設部材の製造方法によれば、加圧焼成(ホットプレス焼成)時に、第1脱脂体(第1部材1)の部分と第2脱脂体(第2部材4)の部分は同時に収縮する。そのため、加圧焼成時において、第1脱脂体と第2脱脂体の接合界面近傍での収縮率差や線膨張係数差(熱膨張係数差)に起因するクラックや残留応力の発生を抑制または防止することができる。
【0037】
また、本実施形態においては、未焼成体からなる接続部材3が、電極埋設部材の基体7(第1部材1および第2部材4)を構成する少なくとも1種のセラミックス成分からなるセラミックス粉末と金属の粉末から作製されている。このため、未焼成体の接続部材3の線膨張係数(熱膨張係数)は、電極2の線膨張係数(熱膨張係数)とセラミックス材料(AlN等)の線膨張係数(熱膨張係数)の中間の値をとり、接続部材3とセラミックス材料の界面の線膨張係数(熱膨張係数)の変化が緩和される。これにより、クラックや残留応力の発生を抑制または防止することができる。
【0038】
さらに、接続部材3の未焼成体(成形体等)は、予め第2部材(第2脱脂体)4に形成された穴部5に挿入されており、加圧焼成前において接続部材(未焼成体)3の周囲に間隙が存在する。また、接続部材3の未焼成体は、加圧焼成時にその周囲の脱脂体と同時期に焼結が進行し収縮する。これにより、加圧焼成時のセラミックス材料の収縮によって接続部材3が強い圧縮力を受けることを回避でき、接続部材3自体の破損を抑制しつつセラミックス材料と一体化させることができる。その結果、接続部材3の内部におけるクラック、および接続部材3から窒化アルミニウム(AlN)等のセラミックス素材に進展するクラックを、抑制または防止することができる。
【0039】
また、接続部材(未焼成体)3を、成形体を仮焼した仮焼体とすることにより、更に強度を高めることができ、加圧焼成工程中での接続部材3の破損をより確実に防ぐことができる。
【0040】
次に、本発明による電極埋設部材の製造方法の他の実施形態について説明する。
上述した実施形態では成形体プレス法を用いたが、本実施形態においては粉末ホットプレス法を用いる。
【0041】
すなわち、本実施形態による電極埋設部材の製造方法は、開口を有する有底筒状型にセラミックス原料粉末を充填して加圧し第1圧粉体(図1A、1Bの第1部材1に対応する)を形成する第1圧粉体形成工程を有する。また、有底筒状型の中で、第1圧粉体の有底筒状型の開口側に、基体(図2A、2Bの基体7に対応する)を構成する少なくとも1種のセラミックス成分からなるセラミックス粉末と金属の粉末から作製した接続部材(図1A、1Bの接続部材3に対応する)の未焼成体と、電極(図1A、1Bの電極2に対応する)とを配置する電極載置工程を有する。また、有底筒状型の中の、第1圧粉体、電極、及び接続部材の未焼成体の開口側にセラミックス原料粉末を充填して加圧し、第1圧粉体を含んだ第2圧粉体を形成する第2圧粉体形成工程を有する。さらに、電極及び接続部材の未焼成体を埋設した第2圧粉体を加圧焼成する焼結工程を備える。
【0042】
本実施形態においても、上述した実施形態(図1A乃至図3B)と同様の作用効果を得ることができる。
【0043】
(実施例)
以下、上記実施形態の電極埋設部材の製造方法に関する各種の実施例について説明する。以下の実施例に記載の脱脂、焼成、ロウ付けの条件は従前のセラミックス焼結体の製造方法に準拠し、適切な条件の変更を含む。
【0044】
[実施例1]
まず、実施例1として、成形体プレス法を用いて電極埋設部材を製造した例について、図4A乃至図8を参照して説明する。
【0045】
(1)まず、窒化アルミニウム粉末95質量%、酸化イットリウム粉末5質量%からなる粉末混合物をCIP成形(圧力1ton/cm)し、成形体のインゴットを得て、これを機械加工した後に脱脂を行うことにより、以下の成形体を作製した。
(i)円板状成形体(第1の脱脂体)21(焼成後絶縁層となるプレート)(図4A
直径340mm、厚み5mm
(ii)円板状成形体(第2の脱脂体)22(焼成後に中間基台となるプレート) (図4B
直径340mm、厚み10mm
円板状成形体22の一方の面に、成形体の中心を共有し、電極を収納するための直径300mm、深さ0.1mmの凹部24を設ける。
更に、端子を形成する所定の位置に、接続部材を収納するための直径8.5mm、深さ1.1mmの凹部25を設ける。
(iii)円板状成形体(第3の脱脂体)23(焼成後に基台となるプレート) (図4C
直径340mm、厚み20mm
円板状成形体23の一方の面に、成形体の中心を共有し、電極を収納するための直径300mm、深さ0.1mmの凹部26を設ける。
更に、端子を形成する所定の位置に、接続部材成形体を収納するための直径8.5mm、深さ1.1mmの凹部27を設ける。
【0046】
(2)接続部材成形体の作製
タングステン(W)粉末及び窒化アルミニウム(AlN)粉末95質量%、酸化イットリウム粉末5質量%からなる粉末混合物をWの体積比が90%、80%、70%、60%となるように配合し、これを一軸プレス成型の後、CIP成形し、φ8mm×0.8mmtの接続部材成形体3を作製した。
【0047】
(3)円板状脱脂体23に電極、接続部材成形体を内装した(図5A)。
(iv)ヒーター電極
モリブデンワイヤーによるメッシュ(線径0.1mm、平織り、メッシュサイズ#50)
これを所定の形状に裁断しヒーター電極2Aとする。最外径294mm。
(v)電極等の配置
円板上脱脂体23の直径8.5mmの凹部27に接続部材成形体3を配置する(図5A)。
その上に、300mm凹部にヒーター電極2Aを収納する(図5B)。
(vi)円板状脱脂体22の積層
円板上脱脂体23のヒーター電極2Aが埋設された側に、円板状脱脂体22を積層する(図5C)。
(vii)円板状脱脂体21の積層(図6、6B)
円板状脱脂体22の直径8.5mmの凹部25に、上述の接続部材成形体3を配置する(図6A)。
その上の300mm凹部24にヒーター電極と同様のモリブデンワイヤーによるメッシュからなり最外径が300mmとなるように裁断された高周波電極2Bを収納する(図6A)。
その上に円板状脱脂体21を積層し、積層体(脱脂体)28を完成させる(図6B)。
【0048】
(4)積層体26をホットプレス炉に載置してホットプレス焼成した(図7A)。
10MPaの圧力で、焼成温度1800℃、焼成時間2時間でホットプレス焼成を行った。
【0049】
(5)焼成後加工(図7B
その後、全面に研削、研磨加工を行い、総厚25mm、絶縁層厚さ1.0mm、表面粗さをRa0.4μmのウェハ載置面を形成した。
セラミック基体裏面側より端子位置に接続部材3に到達するまで穴径φ5.5mmの平底穴加工を行い、端子穴8を形成する。
【0050】
(6)外部金属端子接続(図8
露出した接続部材底面にロウ材(ロウ付け部9)を介して直径5mm、厚み2mmのタングステンとコバール製の緩衝部材(中間部材9a、9b)と直径5mm長さ30mmの円柱状Ni製給電端子10を設置し、真空炉により1050℃でAu-Ni系ロウ材によるロウ付けを行い、電極内蔵部材(図8)を完成させた。
【0051】
[実施例2]
次に、実施例2として、実施例1で積層した接続部材成形体の代わりに、以下の工程による接続部材脱脂体を用いて、同様に電極埋設部材を作製した例について説明する。
【0052】
W粉末及び窒化アルミニウム粉末95質量%、酸化イットリウム粉末5質量%にPVAを3質量%添加してこれを一軸プレス成型の後、CIP成形し、φ8mm×1.1mmtの接続部材成形体を作製した。
Wの体積比は60%となるように配合した。
これをN雰囲気、500℃で脱脂し、接続部材脱脂体を作製した。
【0053】
[実施例3]
次に、実施例3として、実施例1で積層した接続部材成形体の代わりに以下の工程による接続部材仮焼体を用いて同様に電極埋設部材を作製した例について説明する。
【0054】
W粉末及び窒化アルミニウム粉末95質量%、酸化イットリウム粉末5質量%からなる粉末混合物を一軸プレス成型の後、CIP成形し、φ8mm×0.8mmtの接続部材成形体を作製した。
Wの体積比は60%となるように配合した。
これを、Ar雰囲気、1500℃で仮焼し、接続部材仮焼体を作製した。
【0055】
[実施例4]
次に、実施例4として、粉末ホットプレス法を用いて電極埋設部材を製造した例について説明する。
【0056】
(1)窒化アルミニウム粉末95質量%、酸化イットリウム粉末5質量%からなる粉末混合原料粉を有底のカーボン型に充填して一軸加圧し、第1円板状圧粉体を作製する。
(i)第1円板状圧粉体(焼成後絶縁層となるプレート)
直径340mm、厚み5mm。
(ii)実施例1と同じ高周波電極を第1円形圧粉体上の所定位置に載置する。
(iii)接続部材
実施例1と同じ接続部材成形体を高周波電極上の所定の位置に配置する。
【0057】
(2)同一の粉末混合原料粉を有底のカーボン型に更に充填して一軸加圧して第2円板状圧粉体を作製する。
直径340mm、厚み10mm
(iv)ヒーター電極を第2円板状圧粉体上に載せる。
(v)接続部材
実施例1と同じ接続部材成形体をヒーター電極上の所定の位置に配置する。
【0058】
(3)同一の粉末混合原料粉を有底のカーボン型に更に充填して一軸加圧し、第3円板状圧粉体を作製する。
(vi)第3円板状圧粉体(焼成後基台となるプレート)
直径340mm、厚み20mm
【0059】
(4)ホットプレス焼成
10MPaの圧力で、焼成温度1800℃、焼成時間2時間でホットプレス焼成を行った。
【0060】
(5)焼成後加工
その後、全面に研削、研磨加工を行い、総厚25mm、絶縁層厚さ1.0mm、表面粗さをRa0.4μmのウェハ載置面を形成した。
セラミック基体裏面側より端子位置に接続部材に到達するまで穴径φ5.5mmの平底穴加工を行う。
【0061】
(6)外部金属端子接続
露出した接続部材底面にロウ材を介して直径5mm、厚み2mmのタングステンとコバール製の緩衝部材と直径5mm長さ30mmの円柱状Ni製給電端子を設置し、真空炉により1050℃でAu-Ni系ロウ材によるろう付けを行い電極内蔵部材を完成させた。
【0062】
[比較例]
実施例1において接続部材をタングステン(W)のバルク体(焼結金属)とした従来の製造方法によって電極埋設部材を作製した。
【0063】
(評価)
実施例1~4及び比較例で作製した電極埋設部材を、プロセス温度が600℃である半導体製造プロセスに使用した。
使用開始後3か月経過後に、端子部の断面をSEM観察した。
その結果、実施例1~4ともクラックは確認されなかったが、比較例は、接続部材の縁部から電極埋設部材表面に向かうクラックの進展が確認された。
また、接続部材にφ4mmのNi端子をロウ付けした後、引っ張り試験を行った。強度試験後は全て接続部材の内部で破断していた。
強度値はWの体積比が大きくなるにつれ、わずかに強度の低下傾向がみられたものの使用上問題となる程度ではなかった。
【符号の説明】
【0064】
1 第1部材(第1脱脂体)
2、2A、2B 電極(内部電極)
3 接続部材
4 第2部材(第2脱脂体)
5、25、27 穴部
6 積層体
7 基体
8 端子穴
9 ロウ付け部
10 端子
21 円板状成形体(第1の脱脂体)
22 円板状成形体(第2の脱脂体)
23 円板状成形体(第3の脱脂体)
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10A
図10B