(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】物理蒸着を用いて形成された材料層の厚さの変動を制御する装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/54 20060101AFI20241023BHJP
C23C 14/06 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C23C14/54 C
C23C14/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019169176
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-09-16
(32)【優先日】2018-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512221197
【氏名又は名称】エスピーティーエス テクノロジーズ リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トニー ウィルビー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブ バージェス
(72)【発明者】
【氏名】エイドリアン トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ロンダ ハインドマン
(72)【発明者】
【氏名】スコット ヘイモア
(72)【発明者】
【氏名】クライブ ウィディックス
(72)【発明者】
【氏名】イアン モンクリーフ
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-140071(JP,A)
【文献】特表2016-509134(JP,A)
【文献】特表2015-509138(JP,A)
【文献】特開平09-118980(JP,A)
【文献】特開昭61-291971(JP,A)
【文献】特開平01-279752(JP,A)
【文献】実開平04-131651(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/54
C23C 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルスDC物理蒸着工程の間に基板に材料層を形成するのに用いられるイオンを誘導する
、基板を支持するプラテン内の磁石アセンブリであって、
前記磁石アセンブリは、前記プラテンの窪み内に配置されるように構成され、
前記基板の近傍および下部の磁界を生成する磁界生成配置と、
前記基板に対して回転軸の周りで前記磁界生成配置を回転させる手段と、
を備え、前記磁界生成配置は、前記回転軸の周りに延在するアレイに対して構成される複数の磁石を備え、前記磁石のアレイは、前記回転軸に対する半径方向に沿って変動磁界強度を生成するように構成され、
前記アレイは、並列
形態および積層形態で配置した複数の線形的なサブアレイを備え、
カセットであって、前記複数の磁石は前記線形的なサブアレイを受け入れるのに適合した複数の窪みを備えた前記カセット内に配置され、前記窪みは前記カセットの外表面で規定され、前記基板は前記カセットの上部に配置され、前記線形的なサブアレイは前記カセットの径に平行に延在し、前記窪み内の前記磁石は積層形態で構成され、前記積層形態の磁石のアレイは、前記変動磁界強度が前記カセット内の窪みの周辺近傍が前記カセットの中心よりも強くなるように構成され、前記窪みの少なくとも一つは前記カセットの中央部のいずれかの側に第1および第2の窪み部を有し、前記窪みの少なくとも二つは周縁の一端から前記周縁の他端に延在し、全ての前記窪みは互いに平行である、カセットと、
前記窪みの少なくとも一つ内の前記磁石を離間させるための少なくとも一つの非磁性スペーサと、
を備える磁石アセンブリ。
【請求項2】
前記磁界を回転させる手段は、スピンドルと、前記スピンドルを駆動する駆動アセンブリとを備え、前記スピンドルは一端において前記カセットに、他端において前記駆動アセンブリに回転自在に結合される、請求項1に記載の磁石アセンブリ。
【請求項3】
パルスDC物理蒸着によって形成される材料層の厚さ変動を制御する装置であって、
前記材料層が形成されるターゲット及び前記材料層が形成可能な基板を収容するチャンバであって、気体を前記チャンバに導入する吸気口を有するチャンバと、
前記チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成配置と、
前記基板にRFバイアス電圧を印加する電源と、
を備え、
前記ターゲットに近接するプラズマを局在させるために前記ターゲットの近傍にプラズマを局在させる磁界を使用中に生成するように構成されたプラズマを局在させる磁界生成
配置と、
請求項
1に記載の磁石アセンブリと、
を更に備える装置。
【請求項4】
前記磁界は、前記プラズマを局在させる磁界に実質的に影響されない、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記磁界生成配置は、前記プラズマに面する基板の側の反対側である基板の側に配置される、請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記線形的なサブアレイは、前記カセットの部分によって互いに離間されている、請求項1に記載の磁石アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パルスDC物理蒸着によって形成された材料層の厚さの変動を制御する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バルク弾性波(BAW)デバイスは、特定の無線周波数の受信及び/又は送信を可能にするために携帯電話又は他の無線機器で用いられる。これらのデバイスは、電気的な入力から機械的な共振を生成するために圧電効果を利用し、逆に言うと、電気的な出力を生成するために機械的な共振を用いることができる。
【0003】
BAWデバイスは、典型的には、標準的な半導体薄膜処理技術を用いてシリコン(Si)基板に堆積するとともにパターニングされる複数の材料層を備える。物理蒸着(PVD)は、上側金属電極と下側金属電極の両方及び圧電性の誘電体層(例えば、AlN又はAlScN)を堆積するのに一般的に用いられる。
【0004】
製造されたデバイスの性能を決定する因子は、圧電材料の電気的特性、機械的特性、物理的特性及び音響特性を含む。製造環境において、工程は、膜厚及び膜応力を監視することによって通常制御される。非常に正確に制御された膜厚、優れた厚さ均一性及び優れたウェハ内応力均一性(good within wafer stress uniformity)の結果、電気的な入力に応答してデバイス内に蓄積される機械的なエネルギー又はその逆として典型的に定義されるウェハごとの高い歩留まりの機能デバイス及び優れた結合率となる。
【0005】
BAW製造の際の歩留まり損失の主な原因の一つは、周波数偏移である。BAWフィルタの動作周波数は、圧電層の厚さによって決定される。その理由は、これが共振周波数を決定するからである。一定の音速及び密度である仮定すると、圧電層の厚さ精度及び均一性の要求が0.1%のオーダーで必要となる。しかしながら、この程度のウェハ内均一性を堆積工程の間に達成することができず、その結果、局所的なエッチング工程と共にウェハのエリアを選択的にトリミングすることによって堆積後に膜厚を補正するのが業界内で一般的になっている。通常、一定のエッチング速度を生成するイオンビームは、イオンビームが各位置で正確な量の材料を除去するようにするために制御された速度内でウェハの表面に沿って走査される。
【0006】
イオンビームの半値全幅(FWHM)は、典型的には数センチメートルであり、走査パターンは、典型的には、ミリメートル範囲のライン間距離を有する。イオンビーム径は、典型的には数センチメートルに亘って生じる厚さ勾配を補正するのに十分小さい。局所的な除去速度は、ウェハ上の所定の位置にイオンビームが滞在する時間によって制御され、ウェハを横切るビームの要求される速度プロファイル又は走査速度は、堆積された膜の厚さマップから計算される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トリミング工程は、局所的な(local)短距離厚さ変動(short range thickness variations)(SRTV)が存在する場合に困難となることがある。狭ビームを用いる必要があり、必要な速度プロファイルに適合するのに要求される加速度は、トリミングを困難にすることがある。走査速度制限を、イオンビームエッチング速度を低下させることによって回避することができるが、この場合、システムのスループットに影響が及ぼされ、デバイスコストが上がる。
【0008】
磁界を、スパッタ膜応力の制御を行うために堆積の間にウェハ表面において用いることができる。そのような磁界を、堆積工程の間にウェハを支持するプラテンに組み込まれた継続的に回転する永久磁石のアレイを用いることによって生成することができる。
【0009】
AlN圧電層及びAlScN圧電層の堆積の間にウェハ内応力を制御するのに用いられる磁気アレイの一例を、
図1に示す。
図1は、ボタン磁石1の螺旋アレイを示し、それに対し、継続的に回転されるアレイのモデル化された磁界成分を、
図2に示す。磁気アレイを、標準的な技術を用いて堆積される膜に対してウェハ内の均一応力及びウェハ全体に亘る均一膜厚を提供するために示した。しかしながら、堆積された膜の全体な厚さ均一性が小さい、典型的には、<2%フルレンジ(<2% full range)であるとしても、
図2に示すように平均磁界成分の短距離リップル(short range ripple)に対応する短距離厚さ変動が存在する。
【0010】
図3を参照すると、200mmウェハの径に亘って堆積された膜の厚さ(Å)のプロットを示す。プロットは、(
図1に示す)螺旋アレイがALScNの公称10000Åの堆積厚さに対して約150Åの堆積された層の厚さの変動を生じさせることを示す。
図4は、3mmの距離に亘る膜厚の変動の拡大図を提供し、
図4を参照すると、SRTVが約75Åであることは明らかである。許容できるデバイス性能を実現するために、圧電層の厚さを、±0.1%内(すなわち、10000Åの膜に対して±10Å)に制御する必要がある。
【0011】
上述した問題の少なくとも一部に対処する磁界アセンブリ、装置及び方法を考え出した。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、第1の態様からわかるように、パルスDC物理蒸着工程の間に基板に材料層を形成するのに用いられるイオンを誘導する(steer)磁石アセンブリであって、基板の近傍の磁界を生成する磁界生成配置と、基板に対して回転軸の周りでイオンを誘導する磁界生成配置を回転させる手段と、を備え、磁界生成配置は、回転軸の周りに延在するアレイに対して構成される複数の磁石を備え、磁石のアレイは、回転軸に対する半径方向に沿って変動磁界強度を生成するように構成された磁石アセンブリを提供する。
【0013】
一実施の形態において、アレイは、回転軸に対する半径方向に沿って延在する二つの線形的なサブアレイを備え、二つのサブアレイは、略180°だけ回転軸の周りで角度的に離間されている。
【0014】
別の実施の形態において、アレイは、回転軸に対する半径方向に沿って延在する少なくとも三つの線形的なサブアレイを備え、少なくとも三つのサブアレイは、回転軸の周りで角度的に離間されている。少なくとも三つのサブアレイは、略同一の角度だけ回転軸の周りで角度的に離間されていてもよい。
【0015】
一実施の形態において、アレイは、並列形態で配置された複数の線形的なサブアレイを備える。代替的な実施の形態において、アレイは、回転軸を中心とした螺旋アレイを備える。更に別の代替において、アレイは、回転軸を中心とした複数の同中心の略円形のサブアレイを備える。
【0016】
一実施の形態において、アレイの少なくとも二つの磁石を積層形態で配置する。例えば、アレイは、磁石の第1の行と、第1の行の上に配置された磁石の第2の行と、を備える。
【0017】
一実施の形態において、複数の磁石をカセット内に配置し、カセットは、略ディスク形状であってもよく、複数の磁石を受け入れるのに適合した少なくとも一つの窪みを備える。
【0018】
一実施の形態において、窪み内の磁石は、第1のアレイ及び第2のアレイに対して構成され、第2のアレイは、第1のアレイの上に配置される。
【0019】
一実施の形態において、少なくとも一つの窪みは、回転軸に対する半径方向に沿って延在する第1の凹部及び第2の凹部を備え、二つの凹部は、略180°だけ回転軸の周りで角度的に離間されている。代替的には、カセットは、回転軸に対する半径方向に沿って延在する少なくとも三つの窪みを備え、少なくとも三つの窪みは、回転軸の周りで角度的に離間されている。一実施の形態において、少なくとも三つの窪みは、略同一の角度だけ回転軸の周りで角度的に離間されている。
【0020】
別の実施の形態において、アレイは、並列形態で配置された複数の線形的な窪みを備え、複数の線形的な窪みは、カセットの径に略平行に延在する。線形的な窪みは、カセットの周辺に延在してもよい。
【0021】
一実施の形態において、窪みは、回転軸を中心とした螺旋窪みを備える。代替的な実施の形態において、窪みは、回転軸を中心とした複数の同中心の略円形の窪みを備える。
【0022】
一実施の形態において、磁石アセンブリは、窪み内の磁石を離間させるための少なくとも一つのスペーサを更に備える。
【0023】
一実施の形態において、磁界を回転させる手段は、スピンドルと、スピンドルを駆動する駆動アセンブリと、を備え、スピンドルは、回転自在となるように一端でカセットに結合されるとともに他端で駆動アセンブリに結合される。
【0024】
一実施の形態において、アレイの磁石の南北方向軸は、互いに略平行に延在し、好適には、南北方向軸は、使用中に、基板に対して略垂直に延在する。
【0025】
一実施の形態において、基板の上に形成された材料層は、AlN又はAlScNから形成される層のような圧電層を備える。
【0026】
本発明によれば、第2の態様からわかるように、パルスDC物理蒸着によって形成される材料層の厚さ変動を制御する装置であって、材料層が形成されるターゲット及び材料層が形成可能な基板を収容するチャンバであって、気体をチャンバに導入する吸気口を有するチャンバと、チャンバ内にプラズマを生成するプラズマ生成配置と、基板にRFバイアス電圧を印加する電源と、を備え、ターゲットに近接するプラズマを局在させるためにターゲットの近傍にプラズマを局在させる磁界を使用中に生成するように構成されたプラズマを局在させる磁界生成配置と、第1の態様による磁石アセンブリと、を更に備える装置を提供する。
【0027】
一実施の形態において、磁界は、プラズマを局在させる磁界によってほとんど悪影響が及ぼされない。
【0028】
一実施の形態において、磁界生成配置は、プラズマに面する基板の側の反対側である基板の側に配置される。
【0029】
本発明によれば、第3の態様からわかるように、パルスDC物理蒸着によって形成される材料層の厚さ変動を制御する方法であって、
材料層が形成されるターゲット及び材料層が形成可能な基板を備えるチャンバを設けるステップと、
第1の態様による磁石アセンブリの上に基板を配置するステップと、
気体をチャンバに導入するステップと、
チャンバ内にプラズマを生成するステップと、
ターゲットに近接するプラズマを略局在させるためにターゲットの近傍にプラズマを局在させる磁界を付与するステップと、
基板にRFバイアス電圧を印加するステップと、
磁界が存在しないときに比べて材料層の厚さ均一性を向上させるために、プラズマから気体イオンを誘導するための基板の近傍の磁石アセンブリの磁界を、基板の上に形成された材料層の選択領域に付与するステップと、
基板に対して回転軸の周りで磁石アセンブリの磁界を回転させるステップと、
を備える方法を提供する。
【0030】
一実施の形態において、半径方向で変化する磁界強度は、基板の周辺近傍が基板の中心より大きい。
【0031】
一実施の形態において、方法は、材料層を形成する際に基板に対する磁界を回転させることを更に備える。
【0032】
一実施の形態において、方法は、例えば、磁石アセンブリを回転させることによって、基板に略垂直に延在する軸の周りで磁界を回転させることを更に備える。
【0033】
一実施の形態において、方法は、材料層を形成する複数の個別のステップを更に備え、基板を、各堆積ステップを開始する前に磁石アセンブリに対して回転させる。
【0034】
発明を上述したが、発明は、上述した又は後に説明する特徴の独創性がある組合せに及ぶ。発明の例示的な実施の形態を、添付図面を参照しながらここで詳しく悦明するが、発明がこれらの正確な実施の形態に限定されないことを理解すべきである。
【0035】
さらに、他の形態及び実施の形態が特定の形態を言及しないとしても、個別に又は実施の形態の一部として説明した特定の形態を他の個別に説明した特徴又は他の実施の形態の一部と組み合わせることができると考えられる。したがって、発明は、上述しなかった特定の組合せに及ぶ。
【0036】
発明を種々のやり方で実施してもよく、例示としてのみ、発明の実施の形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】本発明の一部を形成しないボタン磁石の螺旋アレイの略図である。
【
図2】
図1に示すアレイの回転の間に生成される磁界成分のグラフ表示である。
【
図3】「螺旋」タイプのアレイの磁石を用いることによって200mmウェハの径全体に亘って実現されるAlScN圧電層の厚さプロファイルのグラフ表示である。
【
図4】ウェハの3mm範囲に亘る
図3に示すAlScN圧電層の厚さプロファイルのグラフ表示である。
【
図5】磁石の線形的なアレイを有する本発明の一実施の形態による磁石アセンブリの略図である。
【
図6】
図5に示すアレイの回転の間に生成される磁界成分のグラフ表示である。
【
図7】線形的な行の並列なアレイとなるように構成された磁石のアレイを備える本発明の一実施の形態による磁石アセンブリの略図である。
【
図8】複数の角度的に離間した半径方向に延在する行に対して構成された磁石のアレイを備える本発明の一実施の形態による磁石アセンブリの略図である。
【
図9】磁石の積層形態を備える
図5に示す磁石アセンブリの略図である。
【
図10】
図9のアレイ内の積層磁石の第1の層の平面図である。
【
図11】
図9のアレイ内の積層磁石の第2の層の平面図である。
【
図12】
図9に示す磁石アセンブリを用いて実現されるAlScN圧電層の厚さプロファイルのグラフ表示である。
【
図13】層の20mm範囲に亘る
図12に示すAlScN圧電層の厚さプロファイルのグラフ表示である。
【
図14】
図9に示す磁石アセンブリを用いる堆積されたALScN層の応力プロファイルのグラフ表示である。
【
図15】本発明の一実施の形態による装置の略図である。
【
図16】本発明の一実施の形態による方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明を詳しく説明する。優れたウェハ内応力制御を行うために十分に強い時間平均のイオンを誘導する磁界成分(time averaged ion steering magnetic field)を提供しながら平均のイオンを誘導する磁界成分の短距離リップルの大幅な減少が本発明の実施の形態によって可能になることがわかった。
【0039】
図5を参照すると、物理蒸着(PVD)プロセス、例えば、パルスDC PVDを用いて基板230(
図15参照)の上に堆積された材料層、例えば、ALScN圧電層の厚さ変動を制御するのに用いられる本発明の一実施の形態による磁石アセンブリ100を示す。アセンブリ100は、使用中に基板230の近傍に磁界を生成する磁界生成配置110を備える。磁界生成配置110は、複数の磁石111を備え、複数の磁石111は、基板230に対してアセンブリ100の回転軸101(
図9において頁から抜けている:
図15も参照。)の回りに複数の磁石111が配置されるアレイ110に対して構成され、これによって、使用中に磁界が回転軸101と配置110の周辺103の間の半径102に沿って変動する。
【0040】
複数の磁石111は、カセット104内に配置され、カセット104は、略ディスク形状であり、アレイ110の複数の磁石111を受け入れるのに適合した少なくとも一つの窪み105を備える。第1の実施の形態において、
図5に示すように、カセット104は、カセット104の径に沿って延在する第1の凹部及び第2の凹部を有する単一の窪み105を備え、当該窪みは、カセット104の中央部のいずれかの側に配置される。第2の実施の形態において、
図7に示すように、カセット104は、カセット(
図7)の径に平行に延在する並列配置された複数の窪み105を備える。本実施の形態において、窪みは、カセットのコードに沿って延在し、各窪みは、カセット104の周辺に延在する。
【0041】
第3の実施の形態において、
図8に示すように、カセット104は、カセットの周辺で角度的に離間した複数の半径方向に延在する窪み105を備えてもよい。角度的な離間は、均一であってもよい、又は、角度的な離間は、特定の堆積工程に適合するためにイオンを誘導するように調整されてもよい。
【0042】
図5、
図7及び
図8に示す実施の形態において、磁石111は、立方体形状及び/又は棒形状を有してもよく、磁石は、窪み105の内部に移動自在に挿入可能であり、その結果、回転軸101に対する半径方向に沿って磁界強度の所望の変動を生成するために、特定の列の磁石111を窪みのそれぞれに沿って形成することができる。用いられる磁石111は、典型的には、ミリテスラ(mT)のオーダーの磁界強度を有し、カセット104の半径に沿って生成される磁界プロファイルを、磁石111を適切に配置することによって調整してもよい。例えば、互いに異なる磁界強度を有する磁石111を、適切に配置するとともに所望の場合に非磁性スペーサ106を用いて互いに離間させてもよい。
【0043】
アセンブリ100は、基板230に対して回転軸101の周りで磁界生成配置110を回転させる手段120(
図15参照)を更に備える。磁界を回転させる手段120は、回転自在となるように一端でカセット104に結合されるとともに他端で駆動アセンブリ(図示せず)に結合されたスピンドル(図示せず)を備えてもよい。
【0044】
窪み105のそれぞれに配置された磁石111は、半径方向に沿った磁界プロファイルの変動を生成するために互いに異なる磁界強度を有してもよい。しかしながら、この変動を同一の磁界強度を有するがスペーサ106を用いてカセット104の表面に対して互いに異なる高さで配置した磁石111を用いて実現してもよいと想定され、スペーサ106は、磁石111を基板230から効果的に離間させるとともに半径位置で基板によって感知される磁界強度を調整する。さらに、(カセット104の表面の上に延在することなく)二つ以上の磁石111を積層することができる深さを有してもよいと想定される。これに関して、窪み105のそれぞれが磁石111及びスペーサ106のシーケンスの二つ以上の行を備えてもよく、行が上下に配置されることが想定される。したがって、基板230の互いに異なる半径位置は、磁石が窪みの下側若しくはカセットの表面の近傍に配置された二つの積層磁石に起因する磁界を感知してもよい、又は、半径位置のスペーサ106の積層配置によって磁界をほとんど感知しなくてもよい。窪み105のそれぞれの内部に磁石111及びスペーサ106を構成する異なるオプションは、イオンを誘導する複数の示される半径方向の磁界プロファイルの生成を促進する。
【0045】
例えば、第1の実施の形態のアセンブリを示す
図9~11を参照すると、複数の磁石111は、カセット104の径に沿って延在する窪み105に配置された磁石111及びスペーサの第1の行又は層111aと、同一の窪み105の内部で第1の行の上に延在する磁石111及びスペーサ106の第2の行又は層111bと、を備えてもよい。
図9を参照すると、窪み105a,bの端部すなわちカセット104の周辺の磁界強度が各端部105a,bの二つの磁石111の堆積配置の中央よりも大きいことは明らかである。アレイ110の磁石111の南北方向軸は、使用中に基板230に略垂直となるように互いに略平行に延在してもよい。本発明の実施の形態を用いて実現される時間平均の磁界は、ウェハ内応力均一性を典型的には±50MPaに制御するために全ての点において十分な強度となる。
【0046】
窒化アルミニウム又は窒化スカンジウムアルミニウム圧電層の通常の応力プロファイルは、中央の伸長が端部よりも著しく大きい。ここで説明する発明は、膜又は材料層の圧力が最も大きい領域すなわち最も強い磁界が要求されるウェハの端部で強力なイオンを誘導する磁界を生成することによって堆積膜に非常に均一な応力プロファイルを生成する。
【0047】
時間平均の磁界が回転時に滑らかな変動を生成するために互いに隣接する磁石111の磁界の間の相互作用を最小にすることが重要である。(
図9~11に示すような)線形的なアレイに対して構成された複数の磁石を有する本発明の実施の形態によるイオンを誘導するアセンブリを用いて堆積されたAlScN膜の厚さ及び応力プロファイルを、
図12~14に示す。
図12及び
図13のグラフは、アレイの容易に変化する磁界が
図3及び
図4に示す厚さの変化より著しく少ない割合の変化を生じることを示し、
図13は、
図12の20mmの部分に亘る厚さ範囲である。
図13において、圧電層の厚さは、3mm走査によって±0.1%以内(すなわち、10000Åに対して±10Å)に制御される。SRTVは、
図4に示す結果に比べて著しく減少し、その結果、必要な場合にイオンビームトリミングにより膜厚を補正するのが非常に簡単になる。
【0048】
図14は、
図9に示すアセンブリを用いて堆積されたAlScN層を備えるウェハの中央の応力プロファイル(MPa)を示す。ウェハ内の応力変動は±50MPaであり、これは、既存の設計に匹敵する。ウェハの厚さの変化の割合は、既存の技術を用いて実現することができる厚さの変化の割合より著しく小さい。
【0049】
図15を参照すると、パルスDC物理蒸着によって形成された材料層の厚さ変動を制御する本発明の一実施の形態による装置200の略図を示す。装置200は、物理蒸着工程が行われる接地された処理チャンバ210を備える。チャンバ210は、材料層がスパッタされるアルミニウム又は窒化スカンジウムアルミニウムのようなターゲット220と、シリコンウェハのような基板230を支持するプラテン240と、を収容するように適合される。チャンバ210は、窒化膜を形成するために、気体、例えば、クリプトン、ネオン又はアルゴンのような希ガス及び窒素のような反応ガスをチャンバに導入する吸気口250を有する。
【0050】
装置200は、プラテン240の窪み241の内部に配置することができる磁石アセンブリ100を更に備える。ウェハ230をプラテン表面242の上のターゲット220に略平行に配置可能にするとともにウェハに略垂直にウェハの中心を貫くウェハ軸101がターゲット220の面に略垂直に延在するターゲット軸に略整列するように、プラテン240をチャンバ210の中に配置するとともにプラテン240の向きを決める。しかしながら、代替的な実施の形態において、プラテン240及びウェハ230をターゲット220に対して傾斜してもよいこと及びウェハ軸101をターゲット軸に合わせなくてもよいことが想定される。装置200は、チャンバ210内にプラズマを生成するプラズマ生成配置260と、プラテン240を介して基板230にRFバイアス電圧を印加する電源270と、を更に備える。典型的には、プラテン240は、従来の13.56MHzで駆動されるが、本発明はそれに限定されない。
【0051】
プラズマを、DC電源262からのパルス(直流)DC電力をターゲット220とチャンバ210内に配置されたアノードリングとの間に印加することによって生成してもよい。電源261,270の動作は、適切なグラフィカルユーザインタフェース(図示せず)を有するコントローラ280によって制御される。マグネトロン262のようなプラズマを局在させる磁界生成配置は、ターゲット220に近接するプラズマを局在させるためにターゲット220の近傍にプラズマを局在させる磁界を使用中に生成するように構成される。マグネトロン263は、基板230に面する側の反対側であるターゲット220の側でチャンバ210の外部に配置され、ターゲット220を略横断して延在する軸の回りで回転するように配置される。磁石アセンブリ100は、ターゲット220に面する側の反対側である基板の側に配置され、磁石アセンブリ100は、基板の上で数センチメートルに亘って延在する。ターゲット220に近接するマグネトロン290からの磁界と基板230の後ろの磁石アセンブリ100からの磁界との間の著しい相互作用がない。プラズマを局在させる磁界の強度は、典型的には、基板230の近傍のバックグラウンドレベルまで低減し、したがって、基板の近傍でドリフトするイオンは、単独でなければ、磁石アセンブリ100からの磁界によって大抵影響が及ぼされ始める。
【0052】
図16を参照すると、本発明の一実施の形態によるパルスDC物理蒸着によって形成された材料層の厚さ変動を制御する方法300に関連するステップの概要を示すフローチャートを示す。シリコンウェハのような基板230の上に窒化アルミニウム又は窒化スカンジウムアルミニウム層のような材料層を形成するのを所望するとき、ステップ301において、カセット104及び磁石アレイ110を備える磁石アセンブリ100をプラテン内に配置し、ステップ302において、ウェハ230をアレイ110の上のプラテンに配置する。ステップ303において、アルミニウムターゲット220をチャンバ210内に配置し、ステップ304において、窒素、アルゴン又は窒素/アルゴン混合物を含んでもよい気体(図示せず)を、吸気口250を介してチャンバ210に導入する。
【0053】
方法300は、ステップ305において、半径方向の磁界プロファイルを調整するために磁石111及びスペーサ106を操作することによって磁界を調整することを更に備える。方法は、ステップ306において、ウェハ230の表面を横切る均一でないイオン制御磁界(B)を生成するためにカセット104を回転させることを更に備える。特に、半径方向に変化する磁界は、基板の周辺の近傍が中心より強くてもよい。基板に対するイオンを誘導する磁界を回転させるステップ306は、材料層が形成されるときに実行されてもよく、基板230に略垂直に延在する軸の回りで行われる。方法300は、材料層を形成する複数の個別のステップを更に備え、基板230を、各堆積ステップを開始する前にイオン制御アセンブリ100に対して回転させる。
【0054】
磁石263は、プラズマ及び気体イオンをターゲット220の周辺に局在させるためにターゲット220の近傍に磁界を生成する。このような局在は、ターゲット220内の気体イオンの相互作用を促し、従って、アルミニウム原子の解放を促す。
【0055】
ステップ307において、RFバイアスをRF電源によってウェハ230に印加する。このような電気的なバイアスの結果、ウェハ表面に略垂直に向いた電界が生じるとともに(RF電圧波形の半サイクルの間に)ウェハ230に引き込まれ始める正の気体イオンが生じる。イオンは、ウェハ230の表面に衝突し、したがって、アルミニウム原子の堆積層が圧縮され、その結果、更に圧縮された層となる。ウェハ230に衝突するイオンの密度は、プラズマ内に生じるイオンの変動のためにウェハ230に亘って変化する。プラズマプロファイルは、マグネトロンからの磁界に依存し、大きい磁界の領域は、プラズマの集中した領域、したがって、気体イオンの集中した領域を形成する。物理蒸着工程で用いられるマグネトロンがターゲット230の周辺領域の近傍で高いイオン密度の領域を生成し、その結果、周辺領域からのターゲット材料の解放(すなわち、崩壊)が中心領域より多くなることがわかる。さらに、このように増大するイオン密度の結果、周辺領域の周辺のウェハ230の上のイオンの集中した衝撃が中心領域より大きくなる。
【0056】
しかしながら、RFバイアス電圧及びアレイ110のイオン制御磁界の相互作用は、移動する気体イオンに力すなわちローレンツ力を生成する。力は、RFバイアスによって生成される電界とアレイ110からのイオン制御磁界の外積に依存する。したがって、この力は、ウェハ230の領域に対して優先的にイオンを向けなおす又は誘導するように作用し、その結果、層のこれらの領域におけるイオン密度が増大する。
【0057】
本発明の実施の形態によって、製造のコスト及びデバイス性能を向上させる厚さプロファイルを有する圧電層の製造を可能にする。さらに、イオンビーム厚さトリミングを、広いイオンビーム、広いライン間距離及び小さい走査加速度/減速度で行うことができ、その結果、高速かつ低コストのトリミング工程となる。