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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】エレベーター用乗場扉の解錠器具
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/16 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B66B13/16 A
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020145727
(22)【出願日】2020-08-31
(65)【公開番号】P2022040825
(43)【公開日】2022-03-11
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉永 陵
【審査官】山田 拓実
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-037326(JP,A)
【文献】実開平07-030266(JP,U)
【文献】特開2018-100182(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0134521(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベーター用乗場扉の解錠器具であって、
エレベーターの乗場扉の解錠キーと、
磁性材料から成る柄と、
前記解錠キーの一方端と前記柄の一方端を回動可能に連結するヒンジとを備え、
前記ヒンジにより、前記解錠キーと前記柄が閉じて平行となる収納状態と、前記解錠キーと前記柄が所定の角度に開いた操作状態とすることが可能であり
前記解錠キーの前記一方端には第一の磁石を備え、
前記解錠キーと前記柄を前記操作状態にしたとき、前記第一の磁石が前記柄を吸着して、前記解錠キーと前記柄が前記所定の角度で保持される、
エレベーター用乗場扉の解錠器具。
【請求項2】
前記柄の他方端には作業者が解錠器具を把持するグリップが設けられ、
前記グリップは、前記解錠キーと前記柄を前記収納状態にしたとき、前記解錠キーが納まる溝を備える、
請求項1に記載のエレベーター用乗場扉の解錠器具。
【請求項3】
エレベーター用乗場扉の解錠器具であって、
磁性材料から成り、エレベーターの乗場扉の解錠キーと、
磁性材料から成る柄と、
前記解錠キーの一方端と前記柄の一方端を回動可能に連結するヒンジとを備え、
前記ヒンジにより、前記解錠キーと前記柄が閉じて平行となる収納状態と、前記解錠キーと前記柄が所定の角度に開いた操作状態とすることが可能であり、
前記柄の他方端には作業者が解錠器具を把持するグリップが設けられ、
前記グリップは、前記解錠キーと前記柄を前記収納状態にしたとき、前記解錠キーが納まる溝と、前記柄が挿入される先に第二の磁石を備え、
前記解錠キーと前記柄を前記収納状態にしたとき、前記第二の磁石が前記解錠キーを吸着して、前記解錠キーと前記柄が保持される、
レベーター用乗場扉の解錠器具。
【請求項4】
前記グリップは、前記柄に抜き差し可能で、差し込み深さを調整可能に構成される、
請求項又はに記載のエレベーター用乗場扉の解錠器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エレベーター用乗場扉を手動で解錠する際に使用する解錠器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エレベーターは、保守点検や故障時に閉じ込められた乗客を救出する場合に備えて、乗場側の扉上方に鍵孔が設けられており、解錠キーが鍵孔から挿入されると錠が外れ、乗場扉は手動で開くようになっている。エレベーターの乗場扉を解錠する際において、鍵孔の高さはエレベーターの設置場所や階によって異なっていることが多い。鍵孔の高さが高い乗場において、解錠操作をするとき、身長の低い作業者は背伸びをして解錠しているのが現状であり、周囲の状況に留意が必要な作業として知られている。
【0003】
特許文献1には、延長器具を備えたエレベーター用乗場扉の解錠器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-037326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示される解錠器具は、使用する際と収納する際に、複数の蝶ボルトを緩めたり、締めたりしなければならず、使用が容易でなく、構造も複雑であった。
【0006】
本発明の目的は、鍵孔が高所にある乗場扉の解錠操作に対して、簡単な構造で使いやすい解錠器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る解錠器具は、エレベーターの乗場扉の解錠キーと、柄と、解錠キーの一方端と柄の一方端を回動可能に連結するヒンジとを備え、ヒンジにより、解錠キーと柄が閉じて平行となる収納状態と、解錠キーと柄が所定の角度に開いた操作状態とすることを可能とする。
【0008】
本開示によれば、解錠キーと柄とヒンジから成る簡単な構成で、解錠キーと柄を閉じて平行となる収納状態にすることで、コンパクトになり、解錠キーと柄を所定の角度に開いた操作状態にすることで、乗場扉の高い位置に鍵孔がある作業においても、解錠キーを鍵孔に容易に挿入可能になる。
【0009】
本開示に係る解錠器具は、柄は磁性材料から成り、解錠キーの一方端には第一の磁石を備え、解錠キーと柄を操作状態にしたとき、第一の磁石が柄を吸着して、解錠キーと柄が所定角度で保持されることが好ましい。
【0010】
本開示によれば、操作状態で第一の磁石が柄を吸着して、解錠キーと柄が保持されるので、解錠操作が安定して行える。
【0011】
本開示に係る解錠器具は、柄の他方端には作業者が解錠器具を把持するグリップが設けられ、グリップは、解錠キーと柄を収納状態にしたとき、解錠キーが納まる溝を更に備えることが好ましい。
【0012】
本開示によれば、収納状態において、溝に解錠キーが納まるので、コンパクトになる。
【0013】
本開示に係る解錠器具は、解錠キーは磁性材料から成り、グリップの柄が挿入される先に第二の磁石を備え、解錠キーと柄を収納状態にしたとき、第二の磁石が解錠キーを吸着して、解錠キーと柄が保持されることが好ましい。
【0014】
本開示によれば、収納状態にしたとき、第二の磁石により解錠キーと柄が保持されて収納が容易になる。
【0015】
本開示に係る解錠器具は、グリップは、柄に抜き差し可能で、差し込み深さを調整可能に構成されることが好ましい。
【0016】
本開示によれば、グリップの位置が変えられるので、乗場扉の鍵孔の高さに応じた作業が可能になる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る解錠器具によれば、簡単な構造で使いやすい解錠器具ができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態の解錠器具を示す図であり、それぞれ、(a)正面図、(b)上面図、(c)右側面図、(d)AA断面図である。
図2】実施形態の施錠器具のヒンジの構成を表す拡大図である。
図3】実施形態の解錠器具の操作状態を示す図である。
図4】実施形態の解錠器具による解錠操作を説明する図である。
図5】実施形態の解錠器具の別の操作状態を示す図である。
図6】一般的なエレベーターの乗場を示す図である。
図7】エレベーターの乗場扉の施錠機構及び解錠機構の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態ついて詳細に説明する。以下の説明において、具体的な形状、材料、方向、数値等は、本開示の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等に合わせて適宜変更することができる。
【0020】
図6に一般的なエレベーターの乗場を示す。乗場100と昇降路200(図4参照)の境界に三方枠40が設けられ、三方枠40に乗場扉10が設置され、乗場100と昇降路200とを隔てている。乗場扉10の上方には手動で乗場扉10を解錠するキーを差し込む鍵孔20が設けられている。
【0021】
図7はエレベーターの乗場扉10の施錠機構及び解錠機構の一例を示す図である。施錠機構は乗場扉10の裏側に設けられた掛け金50と、乗場100の裏側の壁に設けられた固定金具60により構成される。通常時は、掛け金50と固定金具60が引っ掛かることにより乗場扉10は開かないようになっている。
【0022】
解錠機構は以下のような構成になっている。鍵孔20は、乗場扉10の表側から裏側まで貫通した孔になっており、解錠キーを表側から裏側まで差し込むことができる。乗場扉10の裏側で鍵孔20の上方には、錠外し棒30が設けられており、鍵孔20から差し込まれた解錠キーが錠外し棒30を上に押し上げることにより、掛け金50が押し上げられて、固定金具60から外れる構造となっている。
【0023】
図1に戻って、本実施形態における解錠器具1が示されている。乗場扉の解錠器具1は金属製棒状の柄3を備え、この柄3の他端には作業者が把持しやすいグリップ5が装着されている。図1の正面図(a)から明らかなように、柄3には棒状の解錠キー2が並設されており、本実施形態において、柄3と解錠キー2とはほぼ等しい長さに形成されている。そして、柄3及び解錠キー2は、それらの先端においてヒンジ4で回動可能に連結されている。従って解錠キー2は後述するように、ヒンジ4を中心として柄3から離れて回動することができる。金属製の解錠キー2は全長に亘って断面がT字形状に形成され、前述した図7の乗場扉10に設けられている鍵孔20に差し込み可能であり、さらに鍵孔20を貫通した解錠キー2は錠外し棒30を押し上げて乗場扉10を解錠することができる。
【0024】
図2にヒンジ4の構成を表す分解図を示す。解錠キー2の一方の端はヒンジ4を構成する先端部2aを有している。先端部2aはT字型断面の解錠キー2の延伸方向から柄3に向かって曲折して伸びており、先端部2aの先には軸8を備える。一方、柄3の先端は、2つの先端部3aに分かれ、両先端部3aにはヒンジ孔が設けられている。従って、解錠キー2の軸8を柄3の先端部3aのヒンジ孔に係合することで、ヒンジ4を介してT字状の解錠キー2を柄3に対して回動可能に連結することができる。
【0025】
解錠キー2の先端部2a側のT字型先端両側には、それぞれ磁石2bが固定されている。磁石2bは後述するように、本実施形態の解錠器具1を使用する際に、解錠キー2と柄3の位置を保持するために使われる。
【0026】
グリップ5は、例えば樹脂により形成され、グリップ5内の空洞6に柄3を埋め込むことができる。グリップ5を設けることにより、作業者が、解錠器具1を持ちやすくなるので、解錠操作が容易になる。図1(a)、(d)に示すように、グリップ5の空洞6の端部には磁石7が埋め込まれている。解錠キー2と柄3を収納状態にしたときグリップ5に埋め込まれた磁石7により解錠キー2を吸着することで、解錠キー2を柄3に対して収納状態で保持するようになっている。
【0027】
図1(a)は本実施形態の解錠器具1の収納状態を示しており、解錠キー2と柄3は平行の位置になっている。解錠キー2と柄3を平行の位置にすることで、解錠器具1の長さを短く、コンパクトにできるので、収納時に好適である。本実施形態では、グリップ5に、解錠キー2が納まる幅の溝2cが設けられており、この溝2cに解錠キー2が収納されてよりコンパクトになる。
【0028】
次に図3に本実施形態の解錠器具1の操作状態を示す。図1(a)の収納状態から、解錠キー2を、ヒンジ4を中心として270度反時計回りに回動させた状態にして解錠操作をおこなう。解錠キー2を操作状態に移動したとき、解錠キー2の先端部2a側のT字型先端両側に固定された磁石2bが柄3の先端部3aに吸着され保持されるようになっている。
【0029】
このように、本実施形態の解錠器具1は操作状態にすることで、グリップ5を握った位置からヒンジ4まで上昇し、更に解錠キー2が柄3から90度の方向に延びた形態となる。これにより、作業者が乗場扉10の解錠操作をする際に、解錠キー2をグリップ5より高い位置で操作できるので、低身長の作業者であっても高所にある乗場扉の解錠操作が容易になる。
【0030】
上記に説明したように、本実施形態の解錠器具1は、ヒンジ4を中心に解錠キー2と柄3を回動させることで、収納状態と操作状態にすることができ、簡単な構造で使いやすい解錠器具となる。
【0031】
図4は本実施形態の解錠器具1による、乗場扉10の解錠操作を説明する図である。乗場100と昇降路200の間に設置されている乗場扉10と乗場扉10の裏側に配置されている錠外し棒30と解錠器具1のみを示している。図4に示すように鍵孔20は、乗場扉10において、乗場100側から昇降路200側まで貫通している。
【0032】
まず図4(a)に示すように、鍵孔20に解錠キー2を差し込み、錠外し棒30の位置まで貫通させる。図から明らかなように、鍵孔20に差し込まれた解錠キー2から下方向に柄3が延伸した形態となるので、作業者は、鍵孔20の下方にて解錠作業が可能になる。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、グリップ5により柄3を下に引き下げる。こうすることで、鍵孔20の乗場100側の端を支点として、解錠キー2の先端で錠外し棒30を上に押し上げる。図7で説明したように、錠外し棒30が押し上げられることで、施錠機能を構成する掛け金50を押し上げて乗場扉10が解錠されることになる。
【0034】
本実施形態の解錠器具1は、ヒンジ4で解錠キー2と柄3を回動可能に連結しているので、図4(b)に示すように、解錠キー2を鍵孔20に差し込んだ状態でグリップ5を引き下げると、ヒンジ4を中心に解錠キー2と柄3の角度が変わる。このようにグリップ5を引き下げる動作で、解錠操作が可能になっている。また、解錠キー2の長さは、乗場扉10の厚みよりも十分に長くし、例えば、約5~6倍程度としている。この場合、解錠キー2を錠外し棒30の位置まで差し込んだ長さよりも、乗場扉10の表側に出ている長さの方が長い。こうすることで、テコの原理により、グリップ5を小さな力で引き下げるだけで、錠外し棒30を押し上げることができる。
【0035】
以上は、柄3がグリップ5の空洞6に埋め込まれた実施形態を説明したが、グリップ5を、柄3に抜き差し可能にして、その差し込み深さを調節可能に構成してもよい。このように構成することで、グリップ5を柄3に差し込む深さによって、グリップ5から解錠キー2までの長さが調整可能になる。差し込む深さを最大とするとき、グリップ5から解錠キー2までの長さが最小となり、差し込む深さを最小とするとき、グリップ5から解錠キー2までの長さが最大となる。
【0036】
乗場扉10の状況によっては、鍵孔20の設置場所が高所でなく、十分に届く位置にある場合があり、図3に示した操作状態にするとグリップ5と解錠キー2までが長すぎて、操作がし辛い場合が起こりうる。このような場合に、グリップ5の位置を調整可能とすることで、乗場扉10毎の状況に応じた解錠操作が可能となる。
【0037】
図5は本実施形態における解錠器具1の別の操作状態を示す図である。解錠キー2と柄3を平行で開いた状態としている。この操作状態は鍵孔20の設置場所が高所でない場合の解錠操作に適している。図5(a)に示す状態でグリップ5の位置と解錠キー2の先端とが離れていて操作し辛い場合には、上述したように、グリップ5の位置を調整可能に構成して、図5(b)のように短くして使用するようにしてもよい。
【0038】
この場合において、解錠キー2と柄3を平行で開いた位置で固定できることが好ましいが、この構成については限定しない。例えばヒンジ4に位置止め機構を施すことで実現可能である。
【0039】
本実施形態において、解錠キー2は断面がT字状の棒から成る例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、解錠キー2の断面が円であっても、エレベーターの乗場扉10の鍵孔20に通すことで、乗場扉10を解錠することができる解錠キー2を有する解錠器具1であれば、適用可能である。
【0040】
なお、本発明は上述した実施形態およびその変形例に限定されるものではなく、本願の特許請求の範囲に記載された事項の範囲内において種々の変更や改良が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0041】
1 解錠器具、2 解錠キー、2a 先端部、2b 磁石、3 柄、3a 先端部、4 ヒンジ、5 グリップ、6 空洞、7 磁石、8 軸、10 乗場扉、20 鍵孔、30 錠外し棒、40 三方枠、50 掛け金、60 固定金具、100 乗場、200 昇降路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7