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特許7575901シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
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  • 特許-シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20241023BHJP
   H01L 21/336 20060101ALI20241023BHJP
   H01L 29/788 20060101ALI20241023BHJP
   H01L 29/792 20060101ALI20241023BHJP
   H10B 41/23 20230101ALI20241023BHJP
   H10B 43/27 20230101ALI20241023BHJP
【FI】
H01L21/306 E
H01L29/78 371
H10B41/23
H10B43/27
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020156587
(22)【出願日】2020-09-17
(65)【公開番号】P2021072436
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2023-08-28
(31)【優先権主張番号】10-2019-0135402
(32)【優先日】2019-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】513280854
【氏名又は名称】オーシーアイ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】OCI Company Ltd.
【住所又は居所原語表記】94,Sogong-ro,Jung-gu,Seoul,100-718(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ホソン
(72)【発明者】
【氏名】キム・ミョンヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】イ・ジュンウン
(72)【発明者】
【氏名】チャン・ピョンファ
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-538692(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110157434(CN,A)
【文献】国際公開第2019/051053(WO,A1)
【文献】特表2007-513522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/306
H01L 21/336
H10B 41/23
H10B 43/27
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸水溶液;及び、
下記の化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つ;を含む、
シリコン窒化膜エッチング溶液:
【化1】
【化2】
上記化1及び上記化2において、
及びXは、それぞれ独立して酸素及び硫黄から選択され、
及びYは、それぞれ独立してアルコキシ基及びヒドロキシ基から選択され、
a及びbは、それぞれ独立して1~4である。
【請求項2】
上記化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であることを特徴とするか、又は化3で表される化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
【化3】
上記化3において、
及びaは、上記化1に定義したとおりである。
【請求項3】
上記化2で表される化合物は、下記化4で表される化合物であることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液:
【化4】
上記化4において、
及びbは、上記化2に定義したとおりである。
【請求項4】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、上記化1で表される化合物は、100~500,000ppmで含まれることを特徴とする、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項5】
前記シリコン窒化膜エッチング溶液は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つのフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項6】
前シリコン窒化膜エッチング溶液は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態を有するフッ素含有化合物をさらに含む、
請求項1に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項7】
前記有機系カチオンは、アルキルイミダゾリウム(Alkyl-imidazolium)、ジアルキルイミダゾリウム(DiAlkyl-imidazolium)、アルキルピリジニウム(Alkyl-Pyridinium)、アルキルピロリジニウム(Alkyl-pyrrolidinium)、アルキルホスホニウム(Alkyl-phosphonium)、アルキルモルホリニウム(Alkyl-morpholinium)、及びアルキルピペリジニウム(Alkyl-piperidinium)から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、
請求項6に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項8】
前記フッ素系アニオンは、フルオロホスファート(Fluorophosphate)、フルオロアルキル-フルオロホスファート(Fluoroalkyl-fluorophosphate)、フルオロホウ酸塩(Fluoroborate)、及びフルオロアルキル-フルオロホウ酸塩(Fluoroalkyl-fluoroborate)から選択される少なくとも一つであることを特徴とする、
請求項6に記載のシリコン窒化膜エッチング溶液。
【請求項9】
請求項1によるシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われるエッチング工程を含む半導体素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いた半導体素子の製造方法に関し、より詳細には、パーティクルの発生を防ぎ、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させるシリコン窒化膜エッチング溶液、及びこれを用いて行われる半導体素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコン窒化膜をエッチングする方法としては、様々があるが、乾式エッチング法と湿式エッチング法が主に使用される方法である。
【0003】
乾式エッチング法は、通常、気体を用いたエッチング法であって、湿式エッチング法より等方性に優れるという長所がある。ただし、乾式エッチング法は、エッチングのパターンに制限があり、湿式エッチング法より生産性に劣り過ぎ、高価の方式であるという点から、湿式エッチング法が広く利用されつつある。
【0004】
一般に、湿式エッチング法としては、エッチング溶液としてリン酸を用いる方法がよく知られている。このとき、シリコン窒化膜をエッチングするために、純粋なリン酸のみ用いる場合は、素子が微細化するにつれて、シリコン窒化膜のみならず、シリコン酸化膜までエッチングされることによって、各種の不良及びパターンの異常が発生する等の問題が生じ得るため、シリコン酸化膜に保護膜を形成して、シリコン酸化膜のエッチング速度をさらに下げる必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、パーティクルの発生を防ぎ、エッチング条件で、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させるシリコン窒化膜エッチング溶液を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した技術的課題を解決するために、本発明の一側面によれば、シリコン窒化膜エッチング溶液は、リン酸水溶液及び下記の化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
【0010】
上記化1及び上記化2において、
及びXは、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から選択され、
及びYは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アルコキシ基、アミン、及びヒドロキシ基から選択され、
a及びbは、それぞれ独立して1~4である。
【0011】
また、本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含むことで、低温で水又は酸との反応性が低下して、シリコン系パーティクルとしての成長を防ぐことができる。
【0013】
また、本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含むことで、高温のエッチング条件で、容易に分解されて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を増加させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を概略的に示した断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の利点及び特徴、そしてそれらを達成する方法は、後述する実施例を参照すれば明確になる。しかし、本発明は、以下に開示する実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に具現されるものである。ただし、本実施例は、本発明の開示を完全にし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は、請求項の範疇によって定義されるだけである。
【0016】
以下では、本発明によるシリコン窒化膜エッチング溶液について詳説する。
【0017】
本発明の一側面によれば、リン酸水溶液及び下記化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含む、シリコン窒化膜エッチング溶液が提供される。
【0018】
【化1】
【0019】
【化2】
【0020】
上記化1及び上記化2において、
及びXは、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から選択され、
及びYは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アルコキシ基、アミン、及びヒドロキシ基から選択され、
a及びbは、それぞれ独立して1~4である。
【0021】
本願におけるアルコキシは、-O-(アルキル)基と-O-(非置換されたシクロアルキル)基を両方とも意味するものであって、1以上のエーテル基及び1~10個の炭素原子である。具体的には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、sec-ブトキシ、n-ペントキシ、n-ヘキソキシ、1,2-ジメチルブトキシ、シクロプロピルオキシ、シクロブチルオキシ、シクロペンチルオキシ、シクロヘキシルオキシ等を含むものの、これに限定されるものではない。
【0022】
本願におけるハロゲンは、フルオロ(-F)、クロロ(-Cl)、ブロモ(-Br)又はヨード(-I)を意味する。
【0023】
通常、リン酸水溶液からシリコン基板を保護するために、シリコン窒化膜エッチング溶液にシリコン添加剤が含まれていてもよい。ただし、シリコン添加剤として主に用いられるシラン化合物は、基本的にリン酸を含むエッチング溶液に対する溶解度が低い。エッチング溶液に対するシラン化合物の溶解度を増加させるために、シリコン原子に親水性作用基が結合した形態のシラン化合物が用いられている。
【0024】
このように、親水性作用基がシリコン原子に結合した形態のシラン化合物をシリコン添加剤として用いる場合は、エッチング溶液に対するシラン化合物の適正溶解度を確保することができるが、低温で容易に分解されて、シリコン系パーティクルとして成長し得る。シリコン系パーティクルが成長する場合は、シリコン基板の不良を引き起こす最大の原因に作用するようになる。
【0025】
より具体的には、シリコン原子に親水性作用基が結合した形態のシラン化合物は、下記反応式1によって反応が行われてもよい。
【0026】
[反応式1]
【0027】
上記反応式1のように、シリコン原子に親水性作用基が結合した形態のシラン化合物は、分子内再配列(rearrangement)反応によって低温で容易に分解されて、シリコン-ヒドロキシ基(-Si-OH)を形成することができる。シリコン-ヒドロキシ基は、重合によってシリコン原子と酸素原子が交互に結合して、ランダムな鎖構造を形成したシロキサン(-Si-O-Si-)基を生成することができる。結果として、シラン化合物は、シリコン系パーティクルとして成長及び析出して、保管安全性が低下する問題が生じるようになる。
【0028】
また、シラン化合物の適正溶解度を確保し、低温で容易に分解されないように、シリコン原子にアルキル基又はヘテロアルキル基が結合した形態のシラン化合物を用いることができる。一例として、前記シラン化合物は、シリコン原子にメタン、エタン、プロパン、オクタン、イソプロピル又はt-ブチルが結合した形態であってもよい。
【0029】
しかし、前記化合物は、高温のエッチング条件でも依然として分解されず、シリコン酸化膜の保護層(passivation
layer)を十分に形成することができないし、これによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を増加させる効果が微弱である問題が生じるようになる。
【0030】
一例として、シリコン原子にオクタン(octane)基が結合した形態のシラン化合物は、高温のエッチング条件で、ケイ酸(silicic
acid)に分解されにくい。よって、シリコン酸化膜とケイ酸とが結合して保護膜を形成しにくいし、リン酸水溶液からシリコン酸化膜を保護して、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させる効果が微弱である問題が生じるようになる。
【0031】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、適正溶解度を確保し、容易に分解されないし、エッチング条件では、容易に分解されて、シリコン系パーティクルとしての成長を防ぎ、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対する選択比を増加させるために、下記化1又は化2で表される化合物のうち少なくとも一つを含む。
【0032】
【化1】
【0033】
【化2】
【0034】
上記化1及び上記化2において、
及びXは、それぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から選択され、
及びYは、それぞれ独立して水素、ハロゲン、アルコキシ基、及びヒドロキシ基から選択され、
a及びbは、それぞれ独立して1~3である。
【0035】
上記化1及び化2において、シリコン原子に結合した窒素、酸素又は硫黄を含む置換基は、極性を示す。上記化1及び化2で表される化合物は、極性である前記置換基が結合したシリコン原子を含むことで、エッチング溶液に対するシラン化合物の適正溶解度を確保することができる。
【0036】
また、上記化1及び化2で表される化合物は、シリコン-ヒドロキシ基(-Si-OH)を結合する形成が抑制され、シリコン-ヒドロキシ基の重合によって形成されるシロキサン基が繰り返して重合したシリコン系パーティクルとしての成長を抑制することができる。
【0037】
特に、上記化1及び化2で表される化合物は、エッチング条件では、容易に分解される。前記エッチング条件は、100℃以上であってもよい。前記化合物は、エッチング条件で、ケイ酸(silicic acid)に分解され、シリコン酸化膜と結合して保護膜を形成することにより、リン酸水溶液からシリコン酸化膜を保護し、シリコン窒化膜のエッチング速度を増加させて、シリコン酸化膜のエッチング速度を下げることができる。
【0038】
化1で表される化合物は、エッチング条件で再配列反応により、ケイ酸に分解されうるし、ケイ酸は、シリコン酸化膜と結合して保護膜を形成することができる。結果として、リン酸水溶液からシリコン酸化膜を保護することで、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比を増加させる効果がある。
【0039】
また、一例として、化1で表される化合物は、下記化3で表される化合物であってもよい。
【0040】
【化3】
【0041】
上記化3において、
及びaは、上記化1に定義したとおりである。
【0042】
また、一例として、化2で表される化合物は、下記化4で表される化合物であってもよい。
【0043】
【化4】
【0044】
上記化4において、
及びbは、上記化2に定義したとおりである。
【0045】
上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、100~500,000ppmで存在することが好ましい。また、上述した化1で表される化合物は、シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、1,000~150,000ppmで存在することがさらに好ましい。ここで、添加剤の含量は、シリコン窒化膜エッチング溶液中に溶解された化1で表される化合物の量であって、ppmの単位に示したものである。
【0046】
例えば、シリコン窒化膜エッチング溶液中に、化1で表される化合物が5,000ppmで存在するということは、シリコン窒化膜エッチング溶液中に溶解された化1で表される化合物が5,000ppmであることを意味する。
【0047】
シリコン窒化膜エッチング溶液中に、化1で表される化合物が100ppm未満で存在する場合、エッチング条件下で、シリコン化合物の量が足りなくて、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比の増加効果が微弱でありうる。
【0048】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液中に、化1で表される化合物が500,000ppmを超える場合、エッチング条件下で、シリコン窒化膜エッチング溶液中に、リン酸水溶液に含まれた水の割合が減少して、高温でパーティクルが発生し得るし、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下する問題が生じ得る。
【0049】
シリコン基板は、シリコン窒化膜(Si)を含むか、シリコン酸化膜(SiO)及びシリコン窒化膜(Si)を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0050】
シリコン酸化膜は、用途及び素材の種類等に応じて、SOD(Spin On Dielectric)膜、HDP(High Density
Plasma)膜、熱酸化膜(thermal oxide)、BPSG(Borophosphate
Silicate Glass)膜、PSG(Phospho Silicate Glass)膜、BSG(Boro Silicate
Glass)膜、PSZ(Polysilazane)膜、FSG(Fluorinated Silicate
Glass)膜、LP-TEOS(Low
Pressure Tetra Ethyl Ortho Silicate)膜、PETEOS(Plasma Enhanced Tetra
Ethyl Ortho Silicate)膜、HTO(High Temperature Oxide)膜、MTO(Medium
Temperature Oxide)膜、USG(Undopped Silicate Glass)膜、SOG(Spin On Glass)膜、APL(Advanced Planarization
Layer)膜、ALD(Atomic Layer
Deposition)膜、PE-酸化膜(Plasma Enhanced oxide)又はO-TEOS(O-Tetra Ethyl
Ortho Silicate)等に言及し得る。
【0051】
一実施例において、シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液は、60~90重量部で含まれることが好ましい。
【0052】
シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、りん酸水溶液の含量が60重量部未満である場合は、シリコン窒化膜のエッチング速度が低下して、シリコン窒化膜が十分にエッチングされないか、シリコン窒化膜のエッチング工程の効率性が低下するおそれがある。
【0053】
一方、シリコン窒化膜エッチング溶液100重量部に対して、リン酸水溶液の含量が90重量部を超える場合は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が低下し得るし、シリコン酸化膜のエッチングによるシリコン基板の不良を引き起こし得る。
【0054】
本発明の一実施例によるシリコン窒化膜エッチング溶液は、化1で表される化合物を含むことによって低下するシリコン窒化膜のエッチング速度を補償するとともに、全体的なエッチング工程の効率を向上させるために、フッ素含有化合物をさらに含んでいてもよい。
【0055】
本願におけるフッ素含有化合物は、フッ素イオンを解離させる任意の形態のあらゆる化合物を指す。
【0056】
一実施例において、フッ素含有化合物は、フッ化水素、フッ化アンモニウム、重フッ化アンモニウム、及びフッ化水素アンモニウムから選択される少なくとも一つである。
【0057】
また、他の実施例において、フッ素含有化合物は、有機系カチオンとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。
【0058】
例えば、フッ素含有化合物は、アルキルアンモニウムとフッ素系アニオンとがイオン結合した形態の化合物であってもよい。ここで、アルキルアンモニウムは、少なくとも一つのアルキル基を有するアンモニウムであって、最大4つのアルキル基を有し得る。アルキル基に対する定義は、前述したとおりである。
【0059】
さらに他の例において、フッ素含有化合物は、アルキルピロリウム、アルキルイミダゾリウム、アルキルピラゾリウム、アルキルオキサゾリウム、アルキルチアゾリウム、アルキルピリジニウム、アルキルピリミジニウム、アルキルピリダジニウム、アルキルピラジニウム、アルキルピロリジニウム、アルキルホスホニウム、アルキルモルホリニウム、ジアルキルイミダゾリウム、及びアルキルピペリジニウムから選択される有機系カチオンと、フルオロホスファート、フルオロアルキル-フルオロホスファート、フルオロホウ酸塩、及びフルオロアルキル-フルオロホウ酸塩から選択されるフッ素系アニオンとがイオン結合した形態のイオン性液体であってもよい。
【0060】
シリコン窒化膜エッチング溶液のうち、フッ素含有化合物として通常に用いられるフッ化水素又はフッ化アンモニウムに比べて、イオン性液体状に提供されるフッ素含有化合物は、高い沸点及び分解温度を有するところ、高温で行われるエッチング工程中に分解されることによって、エッチング溶液の組成を変化させるおそれが少ないという利点がある。
【0061】
本発明の他の側面によれば、上述したシリコン窒化膜エッチング溶液を用いて行われる半導体素子の製造方法が提供される。
【0062】
本製造方法によれば、少なくともシリコン窒化膜を含むシリコン基板上で、上述したエッチング溶液を用いて、シリコン窒化膜に対する選択的エッチング工程を行うことによって半導体素子を製造することが可能である。
【0063】
半導体素子の製造に用いられるシリコン基板は、シリコン窒化膜を含むか、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜を共に含んでいてもよい。また、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜が共に含まれたシリコン基板の場合は、シリコン酸化膜とシリコン窒化膜とが交互に積層するか、互いに異なる領域に積層した形態であってもよい。
【0064】
本発明による半導体素子の製造方法は、NAND素子の製造工程に適用することができる。より具体的には、NANDを形成するための積層構造体のうち、シリコン酸化膜に対する損失なしに、シリコン窒化膜の選択的な除去が要求される工程ステップにおいて、上述したエッチング溶液を用いることで行うことができる。
【0065】
一例として、図1は、本発明によるエッチング溶液を用いたシリコン窒化膜の除去工程を説明するための概略的な断面図である。
【0066】
図1を参照すれば、シリコン基板10上にシリコン窒化膜11とシリコン酸化膜12とが交互に積層した積層構造体20上に、マスクパターン層30を形成した後、異方性エッチング工程を通じてトレンチ50が形成される。
【0067】
また、図1を参照すれば、積層構造体20内に形成されたトレンチ50領域を介して本発明によるエッチング溶液が投入され、これによって、シリコン窒化膜11がエッチングされ、シリコン酸化膜12とマスクパターン層30のみ残るようになる。
【0068】
すなわち、本発明は、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上したエッチング溶液を用いることで、積層構造体20内シリコン酸化膜12のエッチングを最小化し、十分な時間の間にシリコン窒化膜11を完全かつ選択的に除去することができる。その後、シリコン窒化膜11の除去された領域にゲート電極を形成するステップが含まれた後続工程を通じて半導体素子を製造することができる。
【0069】
以下では、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、下記に記載の実施例は、本発明を具体的に例示するか説明するためのものに過ぎないし、これによって本発明が制限されてはならない。
【0070】
実施例
エッチング溶液の製造
実施例1では、化1で表される化合物を、実施例2では、化2で表される化合物を、リン酸水溶液に添加して、初期濃度が500ppmとなるようにエッチング溶液を製造した。
【0071】
実施例1~2によるエッチング溶液組成物は、表1のとおりである。
【0072】
【表1】
【0073】
比較例1~3によるエッチング溶液組成物は、表2のとおりである。
【0074】
【表2】
【0075】
実験例
シリコン系パーティクルの平均径の測定
常温(25℃)で時間経過につれて、実施例1~2及び比較例2~3のエッチング溶液内に存在するシリコン系パーティクルの平均径を測定した。シリコン系パーティクルの平均径は、PAS(particle size analyzer)を用いて測定した。測定済みシリコン系パーティクルの平均径は、下記表3のとおりである。
【0076】
【表3】
【0077】
上記表3に示したように、実施例1~2のエッチング溶液は、時間が経過しても、シリコン系パーティクルがほとんど存在しないことを確認することができる。
【0078】
一方、上記表3に示したように、比較例2~3のエッチング溶液は、時間経過につれて5μm以上の径を有するシリコン系パーティクルが存在することを確認することができる。
【0079】
シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜のエッチング速度の測定
上記実施例1~2及び比較例1~3によるシリコン窒化膜エッチング溶液を、175℃で500Å厚みのシリコン酸化膜(thermal oxide layer)及びシリコン窒化膜を、加熱したエッチング溶液に浸漬して10分間エッチングした。
【0080】
エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みは、エリプソメトリー(Nano-View、SE
MG-1000;Ellipsometery)を用いて測定しており、エッチング速度は、エッチングの前及びエッチング後、シリコン酸化膜及びシリコン窒化膜の厚みの差をエッチング時間(10分)で除して算出した数値である。
【0081】
測定済みエッチング速度は、下記表4のとおりである。
【0082】
【表4】
【0083】
上記表4に示したように、実施例1~2のエッチング溶液は、比較例1~3のエッチング溶液に比べて、シリコン酸化膜に対するエッチング速度を下げることができ、これによって、シリコン酸化膜に対しシリコン窒化膜に対するエッチング選択比が向上することを確認することができる。
【0084】
以上では、本発明の一実施例について説明したが、該技術分野における通常の知識を有する者であれは、特許請求の範囲に記載した本発明の思想から外れない範囲内で、構成要素の付加、変更、削除又は追加等によって本発明を多様に修正及び変更させることができ、これも本発明の権利範囲内に含まれると言える。
【符号の説明】
【0085】
10 シリコン基板
11 シリコン窒化膜
12 シリコン酸化膜
20 積層構造体
30 マスクパターン層
50 トレンチ
図1