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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】レジスタ
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20241023BHJP
   F24F 13/15 20060101ALI20241023BHJP
   F24F 13/14 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B60H1/34 611Z
F24F13/15 B
F24F13/14 G
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020185307
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074891
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寛裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 正晃
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04796518(US,A)
【文献】特開2007-076481(JP,A)
【文献】特開2013-116650(JP,A)
【文献】特開昭62-084239(JP,A)
【文献】特開2016-113140(JP,A)
【文献】実開昭59-105936(JP,U)
【文献】特開2016-016786(JP,A)
【文献】特開2019-202740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
F24F 13/08-13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に通風路を有したリテーナと、該リテーナの前部に嵌着され、空気吹出口を有したベゼルと、該空気吹出口の内側に、支軸を介して、回動可能に配設された1枚または複数の前フィンと、を備えたレジスタにおいて、
該前フィンは、板状フィン本体と、該板状フィン本体より下流先端側に厚く膨出した半円柱部とを有し、且つ長手方向に同一横断面を持って連続して形成され、該前フィンの支軸は該半円柱部の横断面の中心位置に設けられ、
該半円柱部の横断面は該支軸を中心とした円弧状に形成され、
該板状フィン本体の表面と裏面が該半円柱部の外周面に接続される部分に、傾斜面が前方に向けて両側に広がるように設けられ
上下両側の該傾斜面の、該板状フィン本体の水平中心線に対する角度が、43°~47°であることを特徴とするレジスタ。
【請求項2】
前記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、該小半円柱部から前記傾斜面までの該板状フィン本体は同一厚さの平板状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項3】
前記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、前記傾斜面の直ぐ上流側に円弧状凹面が形成され、該小半円柱部から該円弧状凹面までの該板状フィン本体は同一厚さの平板状に形成されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項4】
前記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、該板状フィン本体の厚さは、該小半円柱部から前記傾斜面に向けて徐々に厚くなるように形成されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項5】
前記前フィンの半円柱部の両側における、前記ベゼルの空気吹出口の前面両側に、半円柱状凸部が該半円柱部と平行に突設されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項6】
前記空気吹出口は長手方向と短手方向を有する薄型長方形状に形成され、前記前フィンは、その長手方向を該空気吹出口の長手方向と平行に、且つ該空気吹出口の該短手方向中央に配設されたことを特徴とする請求項1記載のレジスタ。
【請求項7】
前記前フィンの短手方向両側に、補助フィンが該前フィンと平行に軸支され、該補助フィンの下流側先端部が前記ベゼル内に隠れるように、空気吹出口が形成され、該補助フィンと該前フィンはリンクバーにより連結され、該前フィンと該補助フィンが同期して回動することを特徴とする請求項6記載のレジスタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の空調装置の吹出口に使用されるレジスタに関し、特に、空気吹出口内に前フィンを回動可能に配設した空気吹出調整用のレジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両室内の空気吹出調整用レジスタとして、通風路を形成するリテーナ内に、前可動ルーバと後可動ルーバを前後して、且つ相互に直交方向に配設し、ベゼルに設けた空気吹出口から空気を吹き出す際、前後の可動ルーバの各フィンの角度を変えて、空気の吹出し方向を上下左右に調整するクロスフィン型のレジスタが、広く使用されている。
【0003】
また、このようなレジスタとして、細長で長方形状の空気吹出口を有し、空気吹出口の内側に、少数の可動フィンを設けたレジスタが、下記特許文献1などで知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-206068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のレジスタは、通常、細長い空気吹出口の内側に、長尺で1~3枚程度の前フィンを、間隔をおいて、短手方向に回動可能に軸支している。図16に示すように、送風方向を例えば上側に向ける際、前フィン70がその支軸72を中心に、例えば設定角度αだけ上側に回動し、斜め上方への送風を行う。このとき、前フィン70の上面、下面に沿って流れる空気流は、上側に曲げられるものの、上流から水平方向に直進する空気流の押圧影響を受け、さらに前フィン70から離れた位置で空気吹出口71を直進する空気流の干渉を受ける。
【0006】
このため、図16に示すように、例えば、前フィン70を上側に設定角度αだけ振った(回した)場合、空気吹出口71からの送風は設定角度αまでは曲がらず、実際の送風角度は、設定角度αの約60~70%程度の送風角度になりやすく、送風角度が前フィン70を上に振った際の前フィン70の設定角度αより大幅に減少する不具合があった。
【0007】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、前フィンを振って送風方向を変えたとき、送風角度を前フィンの設定角度に近づけ、送風の曲り指向性を改善することができるレジスタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明のレジスタは、内部に通風路を有したリテーナと、該リテーナの前部に嵌着され、空気吹出口を有したベゼルと、該空気吹出口の内側に、支軸を介して、回動可能に配設された1枚または複数の前フィンと、を備えたレジスタにおいて、
該前フィンは、板状フィン本体と、該板状フィン本体より下流先端側に厚く膨出した半円柱部とを有し、且つ長手方向に同一横断面を持って連続して形成され、該前フィンの支軸は該半円柱部の横断面の中心位置に設けられ、
該半円柱部の横断面は該支軸を中心とした円弧状に形成され、
該板状フィン本体の表面と裏面が該半円柱部の外周面に接続される部分に、傾斜面が前方に向けて両側に広がるように設けられたことを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、前フィンの板状フィン本体の表面と裏面が半円柱部の外周面に接続される部分に、傾斜面が前方に向けて両側に広がるように設けられるので、前フィンを上下或いは左右に振った(回動させた)とき、前フィンの表面または裏面に沿って流れる送風空気流は、傾斜面で、前フィンを回動させた側に、さらに曲げられて流れる。
【0010】
このため、空気吹出口を直進しようとする空気流の押圧により、或いは前フィンを離れた直進方向の送風空気流による干渉作用によって、送風の曲り方向が直進側に戻される場合であっても、その直進方向への曲げ力を、押し戻す方向に空気流が曲げられる。このため、前フィンを回動させたとき、その設定角度(前フィンの向く角度)付近まで、送風方向を曲げることができ、前フィンを回動させたときの送風の曲り指向性を向上させることができる。
【0011】
また、前フィンの支軸が、半円柱部の横断面の中心位置に設けられるので、レジスタの略正面視において、前フィンを振った際、半円柱部を含む前フィンの外観は、略変わらず、レジスタの見栄えを良くすることができる。
【0012】
さらに、前フィンの前部に、板状フィン本体より下流先端側に厚く膨出した半円柱部が設けられるので、半円柱部の板厚は板状フィン本体より厚くなり、前フィンの長手方向の撓みに対する剛性を改善することができる。
【0013】
ここで、上記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、該小半円柱部から前記傾斜面までの該板状フィン本体を、同一厚さの平板状に形成することができる。
【0014】
また、上記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、前記傾斜面の直ぐ上流側に円弧状凹面が形成され、該小半円柱部から該円弧状凹面までの該板状フィン本体を、同一厚さの平板状に形成することができる。
【0015】
また、上記板状フィン本体の上流側端部は、該板状フィン本体の板厚を直径とする半円の小半円柱部で形成され、該板状フィン本体の厚さを、該小半円柱部から前記傾斜面に向けて徐々に厚くなるように形成することができる。
【0016】
ここで、上記前フィンの半円柱部の両側における、前記ベゼルの空気吹出口の前面両側に、半円柱状凸部を該半円柱部と平行に突設することができる。これによれば、正面視で、ベゼルの半円柱状凸部と前フィンの半円柱部が連続して見えるので、ベゼルと前フィンの正面意匠に一体的な連続性を持たせ、レジスタの正面意匠性を向上させることができる。
【0017】
またここで、上記空気吹出口は長手方向と短手方向を有する薄型長方形状に形成され、前記前フィンはその長手方向を該空気吹出口の長手方向と平行に、且つ該空気吹出口の該短手方向中央に配設された構成とすることができる。これによれば、1枚の前フィンを空気吹出口内に配置して、レジスタ正面の意匠性を向上させるとともに、前フィンを振ったときの、送風の指向性を改善することができる。
【0018】
またここで、上記レジスタにおいて、前フィンの短手方向両側に、補助フィンを該前フィンと平行に軸支し、該補助フィンの下流側先端部がべセル内に隠れるように、空気吹出口を形成し、補助フィンと前フィンをリンクバーにより連結し、前フィンと補助フィンが同期して回動する構造とすることができる。これによれば、正面視では、空気吹出口中央の前フィンのみが外観に現れるシンプルな形態としつつ、前フィンと補助フィンを上下または左右に振った際には、送風の指向性を、さらに向上させることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明のレジスタによれば、前フィンを振って送風方向を変えたとき、送風角度を前フィンの設定角度に近づけ、送風の曲り指向性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態を示すレジスタの正面図である。
図2】同レジスタの左側面図である。
図3】同レジスタの斜視図である。
図4】同レジスタの分解斜視図である。
図5図1のV-V断面図である。
図6図1のVI-VI断面図である。
図7】(a)は前フィンの正面図、(b)はその平面図、(c)はその左側面図である。
図8】(a)は前フィンの斜視図、(b)は角度を変えた方向から見た斜視図である。
図9図7(b)における、前フィンのIX-IX拡大断面図である。
図10図1のX-X断面図である。
図11図1のXl-Xl断面図を示し、前フィンを上側に振ったときの拡大断面図である。
図12】前フィンを下側に振ったときの、Xl-Xl断面図に対応した断面図である。
図13】後可動ルーバを左に振ったときの図6に対応した断面図である。
図14】後可動ルーバを閉じたときの図6に対応した断面図である。
図15】(a)は他の実施形態を示す前フィンの拡大断面図、(b)はさらに他の実施形態を示す前フィンの拡大断面図である。
図16】従来のレジスタにおける、前フィンを上側に振ったときの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。レジスタは、図1図6に示すように、細長い長方形の枠状に形成されたリテーナ1と、リテーナ1の前部に嵌着されるベゼル2を有し、ベゼル2の前面に、横方向に細長い長方形状の空気吹出口5が形成され、リテーナ1内の前部に、前可動ルーバ3が配設され、その上流側に後可動ルーバ4が配設される。ここで、上流側、下流側は、レジスタからの送風時、空気流の上流、下流側であり、レジスタの前部は下流側、後部は上流側である。
【0022】
ベゼル2正面の空気吹出口5は、長手方向に長く短手方向に短い横長の長方形に形成され、空気吹出口5のすぐ内側に、前フィン30及び補助フィン39を有する前可動ルーバ3が、長手方向(横方向)と平行に配される。前可動ルーバ3の上流側には、前可動ルーバ3と直交方向に後可動ルーバ4が、空気吹出口5の短手方向(縦方向)と平行に、複数の後フィン41を並設して配設される。
【0023】
なお、この実施形態では、レジスタの空気吹出口5は横方向に細長く長手方向を横方向として形成され、前可動ルーバ3はその長手方向と平行に配され、後可動ルーバ4は空気吹出口5の短手方向と平行にその後フィン41を配しているが、当該レジスタの正面形状を90度回転させ、空気吹出口を縦方向に細長い形状とし、前可動ルーバを空気吹出口の長尺方向(縦方向)と平行に配し、後可動ルーバを空気吹出口の短手方向(横方向)と平行に配設するように、レジスタを構成してもよい。
【0024】
図4に示すように、ベゼル2の内側(背面側)上部と下部に、複数の係止部22が突設され、リテーナ1の上部及び下部に係止部11が設けられ、それらの係止部22が係止部11に係止され、リテーナ1の前部にベゼル2が嵌着される。リテーナ1内及びベゼル2の内側には通風路6が形成される。前可動ルーバ3の前フィン30及び補助フィン39の両側部は、軸受部8,9に軸支され、両側の軸受部8,9は、リテーナ1の前部内側に、嵌め込まれる。
【0025】
前フィン30は、その両側端部に支軸34が突設され、上下の補助フィン39は、その両側端部の前端部側に支軸39aが突設される。それらの支軸34,39aが両側の軸受部8,9に嵌め込まれ、前フィン30及び補助フィン39は、上下に回動可能(傾斜可能)に軸受部8,9に軸支される。両側の軸受部8,9は、前フィン30及び補助フィン39を軸支した状態で、リテーナ1の前部内側に、嵌め込まれる。
【0026】
図5に示す如く、前可動ルーバ3は、1枚の前フィン30とその上下両側に配置された2枚の補助フィン39とからなり、それらの側部に、1本のリンクバー38が連結され、図11に示すように、前フィン30及び補助フィン39は、上下に同期して回動する。
【0027】
前フィン30には、図7に示す如く、一方の端部に連結軸35が突設され、連結軸35がリンクバー38の中央部に連結され、図5に示すように、リンクバー38の上下端部に補助フィン39の側端部に設けた連結軸39bが連結される。これにより、前フィン30と2枚の補助フィン39は同期して同じ方向に回動する。また、図5に示す如く、2枚の補助フィン39は、ニュートラル状態(水平状態)で、ベゼル2の空気吹出口5の内側に隠れ、レジスタの前面には現れない。
【0028】
図7図9に示すように、前フィン30は、板状フィン本体31と、板状フィン本体31より下流先端側に厚く膨出した半円柱部32とを有し、且つフィンの長手方向に同一横断面を持って連続して、板状に形成される。前フィン30の支軸34は半円柱部32の横断面の中心位置に設けられ、半円柱部32の横断面は支軸34を中心とした円弧状に形成される。これにより、前フィン30を回動操作したとき、或いは水平なニュートラル状態としたとき、何れの状態においても、前フィン30の前端部の半円柱部32の外観は変わらず一定であり、レジスタの見栄えが改善される。
【0029】
また、図9のように、前フィン30には、板状フィン本体31の表面と裏面が半円柱部32の外周面に接続される部分に、傾斜面33が前方に向けて両側に広がるように設けられる。この上下両側の傾斜面33の、板状フィン本体31の水平中心線Oに対する角度βは、約43°~47°が望ましく、さらに望ましくは約44°~46°とされる。
【0030】
また、板状フィン本体31の上流側端部は、板状フィン本体31の板厚を直径とする半円柱状の小半円柱部31aで形成され、小半円柱部31aから傾斜面33までの板状フィン本体31は、同一厚さの平板状となっている。つまり、板状フィン本体31の上流側端部は、板状フィン本体31の板厚を直径とする半円の小半円柱部31aで形成され、小半円柱部31aから傾斜面33までの板状フィン本体31は、同一厚さの平板状に形成される。
【0031】
ここで、図9に示すように、板状フィン本体31の板厚をT1とした場合、半円柱部32の厚さT2は、T1の1.6倍から1.9倍とするのが望ましい。また、さらに望ましくは、厚さT2は、T1の1.7倍から1.8倍とされる。
【0032】
このように、前フィン30より板厚の厚い半円柱部32が長手方向に連続するので、前フィン30の、長手方向の撓みに対する剛性を、向上させることができる。また、板状フィン本体31より下流先端側に厚く膨出した半円柱部32、及び半円柱部32から上流側に続く傾斜面33は、送風時、図11に示すように、傾斜面33で曲げられた空気流が、通風路6を直進する送風の直進押圧力を抑制するように作用する。
【0033】
これにより、従来、図16に示す如く、前フィンを設定角度αまで回動操作して送風方向を変えた場合、直進する空気流により、フィンで曲げられる空気流が押し戻され、設定角度αまでは到底達しない送風角度になりやすいが、この前フィン30により、図11に示す如く、傾斜面33で曲げられた空気流が、通風路6を直進する送風の直進押圧力を抑制し、送風角度を、設定角度α近くまで曲げることができる。
【0034】
このような前フィン30の前部の前半円柱部32は、図3に示すように、空気吹出口5の中央に、水平に位置する。さらに、ベゼル2の空気吹出口5の前面両側に、半円柱状凸部21が、前半円柱部32と平行に突設される。これにより、正面視でレジスタを見た場合、図3のように、ベゼル2の半円柱状凸部21と前フィン30の半円柱部32が連続して見えるので、ベゼル2と前フィン30の正面意匠に、一体的な連続性を持たせることができ、正面の意匠性が向上する。
【0035】
一方、前フィン30には、図7(b)に示す如く、板状フィン本体31の上流側端部に、切欠部37が所定の範囲で形成され、そこに操作ノブ7が板状フィン本体31の長手方向に摺動可能に外嵌される。
【0036】
切欠部37内とその近傍のフィン本体上には、細いリブ37aがフィンの長手方向と平行に設けられ、操作ノブ7の内側がそのリブ37a上で摺動するように接触し、摺動時の摩擦抵抗を低減する。また、図6に示すように、ノブ本体7a内には、エラストマーなどの操作荷重付与部材7dが収納され、操作荷重付与部材7dが板状フィン本体31の前部などに接触し、操作ノブ7の操作時、適度な操作荷重を付与する。
【0037】
図7に示す如く、前フィン30の左側の端部には、ガイド軸36が突設され、ガイド軸36が軸受部9に設けたガイド孔と嵌合し、前フィン30の回動範囲がガイド軸によりガイドされる。操作ノブ7は、図4に示すように、ノブ本体7aとノブカバー7bとからなり、ノブ本体7aの上流側端部に歯部7cが設けられ、歯部7cはその上流側に配設される後可動ルーバ4の歯車部46と噛合する。
【0038】
図4図5に示す如く、リテーナ1内の通風路6で前可動ルーバ3の上流側に、後可動ルーバ4が、後フィン41を前フィン30に対し直交方向に配して設けられる。後可動ルーバ4は、図4図5に示すように、7枚の後フィン41をリテーナ1内に縦に配し、且つ一定の間隔で横に並設して構成される。各後フィン41の上部と下部には支軸43が突設され、それらの支軸43は、上軸受部47と下軸受部48に回動可能に嵌め込まれ、その状態の後可動ルーバ4は、リテーナ1の内部に嵌着される。
【0039】
図6に示すように、各後フィン41の連結軸44は、1本のリンクバー45により連結され、左から3枚目の後フィン41には、歯車部46が嵌着され、歯車部46は操作ノブ7の後部の歯部7cに噛合する。これにより、操作ノブ7を前フィン30上で左右にスライドさせたとき、後可動ルーバ4の複数の後フィン41は左右に回動する。例えば、図13に示すように、操作ノブ7を左に摺動操作すると、歯部7c、歯車部46を介して、全ての後フィン41が左側に回動し、送風が左方向に振られる。また、図14に示すように、操作ノブ7を右端まで摺動操作したとき、複数の後フィン41は、左側限界まで回動し、通風路6を閉鎖可能である。
【0040】
上記構成のレジスタは、自動車の車内の、例えば天井部或いはその近傍に装着され、リテーナ1の後部には図示しない通風ダクトが接続される。通風ダクトから送られる空気は、リテーナ1内の通風路6から空気吹出口5を通して吹き出される。
【0041】
図5に示すニュートラル状態で、送風は、通風路6内の前フィン30と後フィン41の間を直進し、空気吹出口5から前方に吹き出される。このとき、前フィン30の表面近くを流れる空気流は、前フィン30の半円柱部32及び傾斜面33により、多少、前フィンの前方外側に曲げられるものの、その空気流は僅かであり、大部分の空気流は正面に向けて直進し、指向性良く送風される。
【0042】
一方、操作ノブ7を上側に操作して前可動ルーバ3を、図11に示すように、上側に振ると、前可動ルーバ3の前フィン30及び補助フィン39が上に回動する。このとき、中央の前フィン30は、その支軸34を軸に回動するが、支軸34が半円柱部32の円弧の中心に位置するため、前フィン30の正面からの外観は変わらない。このため、レジスタの正面視の見栄えを良くすることができる。
【0043】
図11のように、前フィン30を設定角度αだけ上側に回動させると、前フィン30はレジスタの水平中心線Cから斜め上方に角度αだけ傾斜し、それに応じて、空気吹出口5から送風される空気流は、上方に向けられる。このとき、通風路6内の上流側から送風される大部分の空気流は、傾斜した前フィン30により上側に曲げられるとともに、前フィン30の先端側の半円柱部32及び傾斜面33にガイドされ、前フィン30を設定角度αより上側に大きく曲げられ、前フィン30の近傍を、上流側から流れる空気流に対し、上側に押すように流れる。
【0044】
このとき、前フィン30の上側を流れ、前フィン30により上側に曲げられた空気流は、上流側から直進する空気流の前方への押圧力を受け、前フィン30の設定角度αより小さい角度に押し返される。しかるに、図11のように、前フィン30の先端側の半円柱部32及び傾斜面33にガイドされて、設定角度αより大きく外側に曲げられた空気流が、前フィン30の上側に流れる。この外側に曲げられた空気流が、前フィン30の設定角度αより小さい角度まで内側に押し戻された空気流に対し、押し戻す力を作用させる。
【0045】
これにより、前フィン30の設定角度αより小さい角度に押し返される空気流は、設定角度αに近い角度まで戻されて送風され、前フィン30を上側に回動操作したときの、曲がり方向への指向性が大きく向上する。
【0046】
一方、前フィン30を設定角度αだけ下側に回動させると、図12のように、前フィン30はレジスタの水平中心線Cから斜め下側に角度αだけ傾斜し、それに応じて、空気吹出口5から送風される空気流は、下方に向けられる。このとき、通風路6内の上流側から送風される大部分の空気流は、傾斜した前フィン30により下側に曲げられるとともに、前フィン30の先端側の半円柱部32及び傾斜面33にガイドされ、前フィン30を設定角度αより下側に大きく曲げられ、前フィン30の近傍を、上流側から流れる空気流に対し、下側に押すように流れる。
【0047】
このとき、前フィン30の下側を流れ、前フィン30により下側に曲げられた空気流は、上流側から直進する空気流の前方への押圧力を受け、前フィン30の設定角度αより小さい角度に押し返される。しかるに、図12のように、前フィン30の先端側の半円柱部32及び傾斜面33にガイドされて、設定角度αより大きく外側に曲げられた空気流が、前フィン30の下側に流れる。この外側に曲げられた空気流が、前フィン30の設定角度αより小さい角度まで内側に押し戻された空気流に対し、押し戻す力を作用させる。
【0048】
これにより、前フィン30の設定角度αより小さい角度に押し返される空気流は、設定角度αに近づいた角度まで戻されて送風され、前フィン30を下側に振ったときの、曲がり方向への指向性が大きく向上する。
【0049】
図15(a)(b)は、他の実施形態の前フィン50,60を示している。図15(a)の前フィン50は、上記と同様に、板状フィン本体51と、板状フィン本体51より下流先端側に厚く膨出した半円柱部52とを有し、且つ長手方向に同一横断面を持って連続して形成され、前フィン50の支軸54は半円柱部52の横断面の中心位置に設けられる。半円柱部52の横断面は支軸54を中心とした円弧状に形成され、板状フィン本体51の表面と裏面が半円柱部52の外周面に接続される部分に、傾斜面53が前方に向けて両側に広がるように設けられる。
【0050】
さらに、板状フィン本体51の上流側端部は、板状フィン本体51の板厚を直径とする半円の小半円柱部51aで形成され、傾斜面53の直ぐ上流側に円弧状凹面55が形成される。小半円柱部51aから円弧状凹面55までの板状フィン本体51は、同一厚さの平板状となっている。
【0051】
図15(b)の前フィン60は、板状フィン本体61と、板状フィン本体61より下流先端側に厚く膨出した半円柱部62とを有し、且つ長手方向に同一横断面を持って連続して形成され、前フィン60の支軸64は半円柱部62の横断面の中心位置に設けられる。半円柱部62の横断面は、支軸64を中心とした円弧状に形成され、板状フィン本体61の表面と裏面が半円柱部62の外周面に接続される部分に、傾斜面63が前方に向けて両側に広がるように設けられる。
【0052】
さらに、板状フィン本体61の上流側端部は、板状フィン本体61の板厚を直径とする半円の小半円柱部61aで形成され、板状フィン本体61の厚さを、小半円柱部61aから傾斜面63に向けて徐々に厚くなるように形成される。
【0053】
上記構成の前フィン50、60を、上記実施形態の前可動ルーバ3の前フィン30に代えて使用した場合、前フィン50,60の板状フィン本体51,61の表面と裏面が半円柱部52,62の外周面に接続される部分に、傾斜面53,63が前方に向けて両側に広がるように設けられるので、前フィン50,60を上下或いは左右に振った(回動させた)とき、前フィン50,60の表面または裏面に沿って流れる送風空気流は、傾斜面53,63で、前フィン50,60を回動させた側に、さらに曲げられて流れる。
【0054】
このため、空気吹出口5を直進しようとする空気流の押圧により、或いは前フィン50、60を離れた直進方向の送風空気流による干渉作用によって、送風の曲り方向が直進側に戻される場合であっても、その直進方向への曲げ力を押し戻す方向に、空気流が曲げられる。このため、前フィン50,60を回動させたとき、その設定角度(前フィンの向く角度)付近まで、送風方向を曲げることができ、前フィン50,60を回動させたときの送風の曲り指向性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0055】
1 リテーナ
2 ベゼル
3 前可動ルーバ
4 後可動ルーバ
5 空気吹出口
6 通風路
7 操作ノブ
7a ノブ本体
7b ノブカバー
7c 歯部
7d 操作荷重付与部材
8 軸受部
9 軸受部
11 係止部
21 半円柱状凸部
22 係止部
30 前フィン
31 板状フィン本体
31a 小半円柱部
32 半円柱部
33 傾斜面
34 支軸
35 連結軸
36 ガイド軸
37 切欠部
37a リブ
38 リンクバー
39 補助フィン
39a 支軸
39b 連結軸
41 後フィン
43 支軸
44 連結軸
45 リンクバー
46 歯車部
47 上軸受部
48 下軸受部
50 前フィン
51 板状フィン本体
51a 小半円柱部
52 半円柱部
53 傾斜面
54 支軸
55 円弧状凹面
60 前フィン
61 板状フィン本体
61a 小半円柱部
62 半円柱部
63 傾斜面
64 支軸

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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