(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】什器とこれに使用する転倒防止装置及びベースユニット
(51)【国際特許分類】
A47B 97/00 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A47B97/00 E
(21)【出願番号】P 2020187924
(22)【出願日】2020-11-11
【審査請求日】2023-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅典
(72)【発明者】
【氏名】川井 達樹
【審査官】神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-256992(JP,A)
【文献】特開2019-080902(JP,A)
【文献】特開平11-046909(JP,A)
【文献】米国特許第04890813(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0130342(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 91/00-97/00
H05K 5/00- 5/06
G07F 9/10
G10C 3/00
F16F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
什器の下方で床上に配置される弾性を有するプレートを備え、
前記プレートは、前記什器と連結される複数の連結部と、平面視において前記複数の連結部の間の位置で前記床と固定される固定部と、を含
み、さらに、
前記プレートは、床面に接する板状の基部を備え、
前記連結部は、前記プレートを折り曲げて形成されており、前記基部の端部から上向きに延出した起立部と、前記起立部の上端から前記基部の外側へ延出したフランジ部とを備えている、
什器用転倒防止装置。
【請求項2】
前記固定部は、上方から前記床にねじ込まれる固定用ねじの軸部を挿通可能なねじ挿通孔を備えている、
請求項1に記載の什器用転倒防止装置。
【請求項3】
前記固定部に複数の前記ねじ挿通孔が設けられている、
請求項2に記載の什器用転倒防止装置。
【請求項4】
前記連結部は
、前記フランジ部に設けた上下開口の係合穴
を備え、
前記什器の下部に上向きに取り付けられる連結用ねじの軸部を前記係合穴に挿通させることで、前記連結部と前記什器とが連結可能に構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の什器用転倒防止装置。
【請求項5】
前記連結用ねじは、前記什器の下部に設けられるねじ込み式のアジャスタ部材によって構成される、
請求項4に記載の什器用転倒防止装置。
【請求項6】
什器本体が載るベースと、前記ベースの下部に取り付く什器用転倒防止装置とを備えており、
前記什器用転倒防止装置は、前記ベースの下方で床上に配置される弾性を有するプレートを備えるとともに、前記プレートは、前記
ベースと連結される複数の連結部と、平面視において前記複数の連結部の間の位置で前記床と固定される固定部と、を含んで
おり、さらに、
前記プレートは、床面に接する板状の基部を備え、
前記連結部は、前記プレートを折り曲げて形成されており、前記基部の端部から上向きに延出した起立部と、前記起立部の上端から前記基部の外側へ延出したフランジ部とを備えている、
什器用ベースユニット。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか一項に記載の什器用転倒防止装置、又は請求項6に記載の什器用ベースユニットを備えている、
什器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、什器及びこれに使用する転倒防止装置、ベースユニットに関するものである。ここで、什器としては、キャビネットや棚(ラック)のような家具が代表例として挙げられるが、他に、複合機や冷蔵庫等の電気(電子)製品、商品等の陳列装置、美術品などの展示装置、パソコン用サーバ、分電盤など、床上に載置されるものであって地震に際して転倒するおそれがあるもの全般を広く含んでいる。
【背景技術】
【0002】
地震に際してキャビネット類の転倒を防止する手段は、多々提案されている。転倒防止手段には、キャビネット類の揺れは許容しつつその程度を緩和させる考え方と、地震があってもキャビネット類が独立して動かないようにする考え方とがある(地震時に建物は動くのでキャビネット類も地面に対しては揺れ動くが、建物に対して相対動させないという考え方である。)。
【0003】
前者の方法の例として、特許文献1に開示されているように、キャビネット類を床に対して相対動させる免震装置がある。他方、キャビネット類が独自に動くことを防止する手段としては、特許文献2に開示されているように、キャビネット類の天面をブラケット類で建物の壁に連結するものや、特許文献3に開示されているように、キャビネット類が載置固定された転倒防止板をアクセスフロアの内部に配置することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-037990号公報
【文献】特開2016-002420号公報
【文献】特許第3541362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の手段は、理論的には優れていると解されるが、構造が著しく複雑になるという問題がある。他方、特許文献2の手段は、構造は簡単であるが、キャビネットが建物の壁から離れて配置されるレイアウト(いわゆる島置き)に適用できなかったり、キャビネットの高さが高いとブラケット類の取付けが面倒になるという問題がある。また、特許文献3の手段は、転倒防止板をアクセスフロアに内蔵するという施工に多大の手間がかかる問題や、アクセスフロアでない床には適用できずに汎用性に劣るといった問題がある。
【0006】
本願発明はこのような現状を契機として成されたものであり、構造が簡単で施工も容易で実用性・汎用性に優れた什器転倒防止技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、床上載置式の什器とこれに使用する転倒防止装置及びベースユニットを含んでおり、その典型的な構成を特許請求の範囲の各請求項で特定している。
【0008】
本願発明の什器用転倒防止装置は、什器の下方で床上に配置される弾性を有するプレートを備え、前記プレートは、前記什器と連結される複数の連結部と、平面視において前記複数の連結部の間の位置で前記床と固定される固定部と、を含むものである。
【0009】
本願発明の什器用転倒防止装置によれば、什器用転倒防止装置を介して什器を床に固定することで、地震等による什器の転倒を防止できる。その上で、地震等で什器が揺動するときに転倒防止装置のプレートが弾性的に曲げ変形することで固定部にかかる力を低減でき、転倒防止装置の床からの剥離を抑制できる。また、固定部を挟んだ少なくとも2箇所で転倒防止装置と什器とを連結できるので、例えば前後2方向又は左右2方向の揺れに対して、転倒防止装置の床からの剥離を抑制しつつ、什器の転倒を防止できる。
【0010】
本願発明の什器用転倒防止装置において、前記固定部は、上方から前記床にねじ込まれる固定用ねじの軸部を挿通可能なねじ挿通孔を備えているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、上方から固定用ねじの軸部を転倒防止装置のねじ挿通孔に挿通して床にねじ込むという簡単な作業によって転倒防止装置を床に確実かつ容易に固定できる。
【0012】
さらに、前記固定部に複数の前記ねじ挿通孔が設けられているようにしてもよい。
【0013】
このような態様によれば、転倒防止装置を床上の所望の位置に配置した状態で、転倒防止装置と床とを連結する固定用ねじのねじ込み位置の選択肢が増える。例えば、所望の位置に配置した転倒防止装置の1つのねじ挿通孔の下方に固定用ねじのねじ込みが困難な部材(例えば床内部の鉄筋材)が存在する場合であっても、他のねじ挿通孔を使用して、転倒防止装置をその位置を変えることなく床に固定できる。これにより、床への固定用ねじのねじ込み位置が制限される場合であっても、転倒防止装置を所望の位置で床に固定できるので、転倒防止装置を連結した什器のレイアウトの自由度が向上する。また、複数本の固定用ねじを使用して、転倒防止装置を床に複数個所で強固に固定することも可能である。
【0014】
本願発明の什器用転倒防止装置において、前記プレートは、床面に接する板状の基部を備え、前記連結部は、前記プレートを折り曲げて形成されており、前記基部の端部から上向きに延出した起立部と、前記起立部の上端から前記基部の外側へ延出したフランジ部とを備えている。また、前記連結部は、前記フランジ部に設けた上下開口の係合穴を備え、前記什器の下部に上向きに取り付けられる連結用ねじの軸部を前記係合穴に挿通させることで、前記連結部と前記什器とが連結可能に構成されているようにしてもよい。
【0015】
このような態様によれば、什器用転倒防止装置をプレートの曲げ加工及び穴あけ加工で形成した簡単な構造で形成できる。これにより、低コストかつ什器への取り付けが容易な転倒防止装置を実現できる。
【0016】
さらに、前記連結用ねじは、前記什器の下部に設けられるねじ込み式のアジャスタ部材によって構成されるようにしてもよい。
【0017】
このような態様によれば、ねじ込み式のアジャスタ部材によって、専用の連結用ねじを使用することなく、低コストかつ簡素な構成で什器と転倒防止装置とを連結できる。
【0018】
本願発明の什器用ベースユニットは、什器本体が載るベースと、前記ベースの下部に取り付く什器用転倒防止装置とを備えており、前記什器用転倒防止装置は、前記ベースの下方で床上に配置される弾性を有するプレートを備えるとともに、前記プレートは、前記ベースと連結される複数の連結部と、平面視において前記複数の連結部の間の位置で前記床と固定される固定部と、を含んでおり、さらに、前記プレートは、床面に接する板状の基部を備え、前記連結部は、前記プレートを折り曲げて形成されており、前記基部の端部から上向きに延出した起立部と、前記起立部の上端から前記基部の外側へ延出したフランジ部とを備えているものである。
【0019】
本願発明の什器は、本願発明の什器用転倒防止装置又は本願発明の什器用ベースユニットを備えているものである。
【0020】
本願発明の什器用ベースユニット及び什器によれば、本願発明の什器用転倒防止装置の構成を備えているので、構造が簡単で施工も容易で実用性・汎用性に優れた転倒防止機能を有する什器用ベースユニット及び什器を提供できる。
【0021】
なお、本願発明では、什器が転倒防止装置の他に緩衝装置などの他の機能を有することは排除しない。転倒防止装置を補助する装置を併有させることは、什器の地震対策として好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本願発明の什器用転倒防止装置、什器用ベースユニット及び什器は、構造が簡単で施工も容易で実用性・汎用性に優れた什器用転倒防止装置、什器用ベースユニット及び什器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】一実施形態を示し、(A)は側面図、(B)は下側から見た斜視図である。
【
図2】同実施形態を上側から見た分離斜視図である。
【
図3】(A)はベース及び転倒防止装置を示す平面図、(B)は(A)のIIIB-IIIB位置断面図である。
【
図4】
図3(A)のVI-VI位置に沿ったベース及び転倒防止装置の断面図である。
【
図5】同実施形態の転倒防止装置を示す分離斜視図である。
【
図6】同実施形態の制震作用を説明するための断面図である。
【
図8】同実施形態の制震作用を説明するための断面図である。
【
図9】さらに他の実施形態のベース及び転倒防止装置を示す平面図である。
【
図10】
図9のX-X位置に沿ったベース及び転倒防止装置の断面図である。
【
図11】さらに他の実施形態のベース及び転倒防止装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
<一実施形態の概要>
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。まず、
図1~
図6に示す一実施形態を説明する。本実施形態は、平面視横長の長方形に形成されたスチール製のキャビネット1の転倒防止に適用している。
【0025】
図1及び
図2に示すように、キャビネット1は、前向きに開口したキャビネット本体2と、その開口部を開閉する水平回動自在な観音開き式の扉3と、キャビネット本体2が載るスチール板製のベース4とを備えている。キャビネット1は高さに比べて奥行きが遥かに小さいため、地震に際して手前又は奥側に転倒しやすい。そこで、転倒防止装置6が使用されている。
【0026】
図1及び
図4に示すように、転倒防止装置6は、床Fとキャビネット1との間に設置されて、キャビネット1の転倒を防止するものである。本実施形態では、キャビネット1の下方に左右一対の転倒防止装置6が設けられている。左右の転倒防止装置6は同じ形態を有しており、キャビネット1の下方で床Fの上に配置される弾性を有する金属製(鋼板製)のプレートで構成されている。
【0027】
転倒防止装置6は、床面Fに接する板状の基部7と、基部7の前後端部に設けられた前後一対の連結部8と、平面視において前後の連結部8の間の位置で基部7に設けられた固定部9とを有している。連結部8がキャビネット1のベース4にねじ込み式のアジャスタ部材23によって連結される一方、固定部9が固定用ねじ10によって床Fに固定されることで、キャビネット1が転倒防止装置6を介して床Fに固定される。
【0028】
本実施形態では、転倒防止装置6を介してキャビネット1を床Fに固定することで、地震等によるキャビネット1の転倒を防止できる。その上で、地震等でキャビネット1が揺動するときに転倒防止装置6の基部7が弾性的に曲げ変形することで固定部9にかかる力を低減でき、転倒防止装置6の床Fからの剥離を抑制できる。
【0029】
また、本実施形態は、固定部9を挟んだ前後の連結部8を使用して前後2箇所で転倒防止装置6とキャビネット1とを連結する。これにより、前後2方向(前方向及び後方向)の揺れに対して、転倒防止装置6の床Fからの剥離を抑制しつつ、キャビネット1の転倒を防止できる。
【0030】
<転倒防止装置の構成>
図3~
図5に示すように、転倒防止装置6は平面視で前後長手(縦長)の略長方形であり、転倒防止装置6の幅寸法(左右方向寸法)は、左右横長枠状のベース4の幅寸法の5分の1程度に形成されている。また、転倒防止装置6の奥行寸法(前後方向寸法)は、ベース4の奥行寸法よりも短く形成されている。なお、転倒防止装置6の平面形状及び平面サイズは本実施形態に限定されず、適宜変更可能である。
【0031】
上述のように、転倒防止装置6は、床面Fに接する板状の基部7と、基部7の前後端部に設けられた前後一対の連結部8と、平面視において前後の連結部8の間の位置で基部7に設けられた固定部9とを有している。前後の連結部8は、転倒防止装置6を構成する鋼板製のプレートの前後縁部を折り曲げて形成されたものである。
【0032】
図3~
図5に示すように、連結部8は、基部7の前後端部から上向きに延出した起立部81と、起立部81の上端から基部7の外側(平面視で基部7とは反対側)へ延出したフランジ部82と、フランジ部82に設けた上下開口の係合穴83とを備えている。本実施形態では、起立部81は水平姿勢の基部7に対して鉛直姿勢に設けられ、フランジ部82は水平姿勢に設けられている。また、係合穴83はフランジ部82の左右中央位置に設けられている。
【0033】
基部7と連結部8(起立部81及びフランジ部82)との幅寸法は同じである。また、基部7は前後長手の略長方形の形態を有する一方、起立部81及びフランジ部82は左右長手(横長)の略長方形の形態を有している。
【0034】
図3~
図5に示すように、キャビネット1のベース4の四隅寄り部位に、下方から上向きに取り付けられたねじ込み式のアジャスタ部材23が設けられている。アジャスタ部材23を回転させると、ベース4を高さ調節できる。本実施形態では、アジャスタ部材23は、ベース4と転倒防止装置6とを連結する連結用ねじを構成する。
【0035】
転倒防止装置6において、前後の係合穴83の間隔は、ベース4において前後方向に並ぶ一対のアジャスタ部材23の間隔と同じになるように構成されている。左右の転倒防止装置6は、アジャスタ部材23の軸部を連結部8の係合穴83に下方から挿通させることで、ベース4の左右縁部寄りの位置に脱離不能に連結されている。
【0036】
また、転倒防止装置6は、ベース4に取り付けた状態で、平面視でキャビネット1(ベース4)からはみ出さないように構成されている。これにより、転倒防止装置6が人目に触れて外観が悪化したり、転倒防止装置6に人が躓いたりすることを防止できる。
【0037】
図3~
図5に示すように、転倒防止装置6の固定部9は、千鳥状に配列された多数のねじ挿通孔91を備えている。各ねじ挿通孔91は、上方から床Fにねじ込まれる固定用ねじ10の軸部を挿通可能な大きさに設けられている。固定部9においてねじ挿通孔91の配列領域は、後述するベース4の補助フレーム21と平面視で重ならないように、左右に分けて設けられている。
【0038】
<ベースユニットの構成>
図1~
図5に示すように、ベース4の基本的な構造は従来と同様であり、左右のサイドフレーム16とこれを連結するフロントフレーム17及びリアフレーム18とを有している。各フレーム16,17,18は、上水平片19と、下水平片20と、下水平片20の先端に設けた起立片20aとを有する溝形に形成されている。
【0039】
下水平片20は上水平片19よりも幅狭になっている。また、フロントフレーム17の上水平片19はリアフレーム18の上水平片19よりも幅広になっているが、両者は同じ幅であってもよい。
【0040】
ベース4の左右両側寄り部位に、前後長手の補助フレーム21が配置されている。補助フレーム21は上向きに開口したコ字形の形態であり、前後両端はフロントフレーム17及びリアフレーム18に溶接等で固定されている。
【0041】
図3(B)及び
図4に明示するように、補助フレーム21の底面部22はベース4の下端よりも上に位置している。補助フレーム21の底面部22の前後両端部に、転倒防止装置6の連結部8がナット部材32を介してねじ込み式のアジャスタ部材23で脱離不能に連結されている。
【0042】
図5に示すように、転倒防止装置6をベース4に取り付ける際には、ベース4を上下反転させた状態で、アジャスタ部材23の軸部を転倒防止装置6の連結部8の係合穴83に挿通させて、上方からナット部材32にねじ込む。これにより、専用の連結用ねじを使用することなく、低コストかつ簡素な構成でベース4と転倒防止装置6とを連結できる。また、アジャスタ部材23をナット部材32にねじ込むという容易かつ短時間の作業で転倒防止装置6をベース4に連結できる。
【0043】
なお、転倒防止装置6の連結部8を、アジャスタ部材23及びナット部材32を使用せずに、別途用意した連結用ねじ等の固着具を使用して補助フレーム21に連結することも可能である。また、ベース4の他の部位(例えば下水平片20)に、転倒防止装置6をアジャスタ部材23又は専用の連結用ねじ等の固着具を使用して連結することも可能である。また、1つの連結部8を複数の固着具でベース4に連結してもよい。
【0044】
<床の構成>
図4に示すように、本実施形態では、床Fは、いわゆるOAフロアと呼ばれる二重床構造を有している。具体的には、床Fは、コンクリートスラブ等の床スラブ51上に支柱脚52によって床スラブ51との間に空間を設けた状態で支持された床基材53と、床基材53の上に敷かれたカーペット等の床仕上材54とを備えている。床基材53は、例えば金属製又はコンクリート製である。
図3及び
図4に示すように、転倒防止装置6は固定用ねじ10を使用して床Fの床基材53に固定される。
【0045】
<一実施形態のまとめ>
転倒防止装置6の施工手順の一例を説明する。まず、
図5に示すように、ベース4を上下逆向きに配置する。ベース4の下面の左右両縁部それぞれに、アジャスタ部材23を使用して転倒防止装置6を連結する。
【0046】
次いで、転倒防止装置6を下側にしたベース4を床F上の所望の位置に配置する。
図3及び
図4に示すように、固定用ねじ10の軸部を、上方から転倒防止装置6の固定部9に設けたねじ挿通孔91を挿通させて、床仕上材54を貫通して床基材53にねじ込んで固定する。
【0047】
このとき、転倒防止装置6の固定部9には多数のねじ挿通孔91が設けられているので、固定用ねじ10のねじ込み位置を適宜選択できる。例えば、所望の位置に配置したベース4及び転倒防止装置6の1つのねじ挿通孔91の下方に固定用ねじ10のねじ込みが困難な部材(床Fの支柱脚52)が存在する場合であっても、他のねじ挿通孔91を使用して、ベース4及び転倒防止装置6をその位置を変えることなく床Fに固定できる。
【0048】
本実施形態では、1つの転倒防止装置6に対して、平面視で補助フレーム21を挟んだ2箇所で転倒防止装置6を床Fに固定している。このように、複数本の固定用ねじ10を使用して、転倒防止装置6を床Fに複数個所で強固に固定できる。
【0049】
次に、キャビネット1のキャビネット本体2をベース4の上に載置し、キャビネット本体2の底部とベース4の上水平片19とをビスなどの固定具(図示省略)を使用して強固に連結する。これにより、キャビネット1が転倒防止装置6を介して床Fに固定される。
【0050】
図6に示すように、地震時に床F(建物)が揺れ動いてキャビネット1が揺動するとき、転倒防止装置6は、固定部9が固定用ねじ10によって床Fに固定されていることでキャビネット1の移動及び転倒を確実に防止できるとともに、基部7(固定部9を含む)が弾性的に曲げ変形することで固定部9にかかる力を低減できる。例えば、ねじ等の固定具でベース4を床Fに直接固定すると、繰り返しの地震でキャビネット1が揺れるときに固定具に大きな引き抜き力がかかって固定具が床Fから抜けてしまい、キャビネット1が転倒してしまう。これに対して、本実施形態では、キャビネット1が揺れるときに固定用ねじ10に掛かる引き抜き力が基部7の変形により低減される為、転倒防止装置6の床Fからの剥離を大幅に抑制することができる。したがって、地震が繰り返し発生してもキャビネット1の移動及び転倒を防止することができ、安全性を大幅に向上できる。
【0051】
また、本実施形態では、ベース4に設けられたアジャスタ部材23を使用して転倒防止装置6を簡単な作業で容易に着脱できる。そして、転倒防止装置6を固定用ねじ10によって床Fに固定した後も、ねじ込み式のアジャスタ部材23を回転させることでベース4(キャビネット1)の高さ調整が可能なので、実用性及び汎用性が高い。また、1つのベース4に対して、転倒防止装置6が左右2つに分割されていることから、転倒防止装置6のサイズをベース4に比べて小さくできるので、転倒防止装置6の運搬及び保管の利便性が向上する。なお、左右の転倒防止装置6は1枚の金属板で構成されて繋がっていてもよい。
【0052】
<他の実施形態>
図7及び
図8に示す実施形態では、床Fの構造が上記実施形態とは異なっている。本実施形態の床Fは、床スラブ51の上に置き敷き式の複数の樹脂製パネル55が敷き詰められ、樹脂製パネル55の上に床仕上材54が敷かれて構成されている。
【0053】
本実施形態では、固定用ねじ10は、転倒防止装置6の固定部9の上方からねじ挿通孔91を挿通し、床仕上材54及び樹脂製パネル55を貫通して床スラブ51にねじ込まれる。これにより、転倒防止装置6を床Fに強固に固定でき、キャビネット1の移動及び転倒を確実に防止できる。
【0054】
また、転倒防止装置6の固定部9には多数のねじ挿通孔91が設けられているので、例えば、所望の位置に配置したベース4及び転倒防止装置6の1つのねじ挿通孔91の下方に固定用ねじ10のねじ込みが困難な部材(床スラブ51内部の鉄筋材)が存在する場合であっても、他のねじ挿通孔91を使用して、ベース4及び転倒防止装置6をその位置を変えることなく所望の位置で床Fに固定できる。
【0055】
<さらに他の実施形態>
図9及び
図10に示す実施形態では、床スラブ51の上に複数の樹脂製パネル55を敷き詰めた置き敷きタイプの床Fに対して、樹脂製パネル55と床仕上材54との間に下部プレート56を配置し、下部プレート56に固定用ねじ10を固定する。図示は省略するが、下部プレート56は、接着剤や両面テープ、面ファスナー等の固定手段によって樹脂パネル55に固定されている。なお、下部プレート56は、床Fの一部分を構成する部材である。
【0056】
図9に示すように、下部プレート56は、前後長さがベース4の前後長さ(奥行寸法)よりも大きく構成され、平面視でベース4の前後にはみ出すように配設される。これにより、地震等でキャビネット1が揺動するときに、下部プレート56がつっかえとなってキャビネット1の転倒を防止する。なお、下部プレート56はカーペット等の床仕上材54で覆われるので、見栄えの悪化を防止できる。
【0057】
また、
図11に示すように、下部プレート56の上面にナット部材57を固着し、当該ナット部材57に、転倒防止装置6の固定部9の上方からねじ挿通孔91を挿通した固定用ねじ15をねじ込んで、転倒防止装置6を床Fに固定してもよい。
【0058】
これらの実施形態によれば、床スラブ51上に置き敷き式の樹脂製パネル55を敷き詰めた床Fに対して、樹脂製パネル55と床仕上材54との間に下部プレート56を配設するという簡単な構成で、床スラブ51を傷つけることなく、転倒防止装置6を強固に固定できる。
【0059】
<その他>
以上、本願発明の実施形態を図面と共に説明してきたが、本願発明は、他にも様々に具体化できる。例えば、対象になる什器はキャビネットには限らないのであり、技術分野の欄で触れたとおり、電気・電子機器、自販機、冷蔵庫、商品陳列棚なども対象になる。
【0060】
また、上記実施形態では、転倒防止装置6の基部7は平板状の形態を有しているが、例えば基部7に曲げ加工を追加したり、基部7を波板状に形成したりして、基部7に所望の剛性(変形のしにくさ)をもたせることも可能である。また、床Fは、二重床構造のものに限定されず、例えば床スラブと床仕上材との間に配線等を引き回し可能な空間がない床構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本願発明は、什器用転倒防止装置に具体化できる。したがって、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0062】
1 キャビネット
4 ベース
6 転倒防止装置
7 基部
8 連結部
9 固定部
10 固定用ねじ
15 固定用ねじ
23 アジャスタ部材
81 起立部
82 フランジ部
83 係合穴
91 ねじ挿通孔
F 床