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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電磁波吸収シート
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20241023BHJP
   H01Q 17/00 20060101ALI20241023BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H05K9/00 M
H01Q17/00
H01Q15/14 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020192239
(22)【出願日】2020-11-19
(65)【公開番号】P2022080991
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2023-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000195029
【氏名又は名称】星和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100164013
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 隆一
(72)【発明者】
【氏名】高津 浩気
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓未
(72)【発明者】
【氏名】水口 絢子
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-233642(JP,A)
【文献】国際公開第2020/111210(WO,A1)
【文献】特開2008-004951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01Q 15/00-19/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器の電子回路部から放射される電磁波による自己干渉を抑制する電磁波吸収シートであって、
あらかじめ設定された比誘電率を有するシート状誘電体基板と、
正方形状の導体が前記導体の一辺の長さの2倍よりも大きな配列ピッチで、前記シート状誘電体基板の一方の表面に一定間隔で複数配列されてなる分離導体層と、
前記シート状誘電体基板の他方の面上に連続して設けられた連続導体層とを含み、
前記シート状誘電体基板の比誘電率が3.5以上、4.5以下であり、
前記電子機器は、第5世代(5G)通信規格で設定された28GHz帯域で用いられるものであり、前記電子機器内部で放射される電磁波が28GHz帯域内にあり、放射される28GHz帯域内の前記電磁波を吸収するものであって、かつ、前記電磁波を吸収する反射減衰ピーク周波数の反射減衰量が6dB以上を有することを特徴とする電磁波吸収シート。
【請求項2】
前記導体の一辺の長さと前記配列ピッチとは、前記シート状誘電体基板の比誘電率に応じて設定することを特徴とする請求項1に記載の電磁波吸収シート。
【請求項3】
前記シート状誘電体基板の比誘電率が3.5である材料を用いた場合、前記導体の一辺の長さを2.7mm~2.9mmの範囲とし、かつ、前記配列ピッチを6.5mm~10mmの範囲とすることにより、前記配列ピッチを前記正方形状の導体の一辺の長さの2.24倍以上、3.70倍以下としたことを特徴とする請求項に記載の電磁波吸収シート。
【請求項4】
前記シート状誘電体基板の比誘電率が4.0である材料を用いた場合、前記導体の一辺の長さを2.4mm~2.6mmの範囲とし、かつ、前記配列ピッチを6.5mm~9.5mmの範囲とすることにより、前記配列ピッチを前記正方形状の導体の一辺の長さの2.50倍以上、3.96倍以下、または、辺長さを2.45mm~2.55mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さを6mm~10mmまでの範囲とすることにより、前記配列ピッチを前記正方形状の導体の一辺の長さの2.35倍以上、4.08倍以下としたことを特徴とする請求項に記載の電磁波吸収シート。
【請求項5】
前記シート状誘電体基板の比誘電率が4.5である材料を用いた場合、前記導体の一辺の長さを2.2mm~2.35mmの範囲とし、かつ、前記配列ピッチを5.5mm~9.5mmの範囲とすることにより、前記配列ピッチを前記正方形状の導体の一辺の長さの2.34倍以上、4.32倍以下としたことを特徴とする請求項に記載の電磁波吸収シート。
【請求項6】
前記分離導体層と前記シート状誘電体基板の表面を保護するために絶縁性表面保護層を設けたことを特徴とする請求項1からまでのいずれか1項に記載の電磁波吸収シート。
【請求項7】
請求項1からまでのいずれか1項に記載の電磁波吸収シートと、
電磁波を放射する電子回路を含む電子回路部と、
前記電子回路部を電磁シールドするために、前記電子回路部の前記電子回路を少なくとも覆うように設けられたシールドカバーとを含み、
前記電磁波吸収シートは、前記シールドカバーと前記電子回路部との間に配置されたことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波機器内部の部品や配線などから電磁波が放射されて生じる自己干渉、いわゆる自家中毒を防止するための電磁波吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
移動体通信や自動運転技術の進展に伴い、通信に用いる周波数の高周波化が進展している。第5世代(5G)通信は、従来の4G通信の百倍以上の超高速・大容量通信が可能であり、利用者がタイムラグを意識することなく、リアルタイムに遠隔地のロボットなどを操作・制御できるというリアルタイム性を有し、さらに、スマートフォン、パソコンをはじめ、身の回りのあらゆる機器がネットに接続されるという多数同時接続性を有している。わが国では2020年から28GHz帯の利用が開始された。また、自動運転技術においては、車載レーダーに準ミリ波帯が用いられている。このような次世代通信ネットワークや車載レーダーなどで用いられる機器においては、外部からの電磁波干渉だけでなく、機器内部の部品や配線などから放射される電磁ノイズによる自己干渉、すなわち自家中毒の防止が重要な課題である。自家中毒とは、電子デバイスの配線や基板から放射される電磁ノイズが、他の電子機器だけではなく、自らの誤作動の原因となる現象のことをいう。
【0003】
スマートフォンは移動体通信技術とコンピュータ技術が融合して進化したマルチメディア端末である。スマートフォンの機能は大幅に向上しており、そのため回路の高密度化が必須となり、アンテナ、スピーカ、マイクロホン、カメラモジュール、I/F端子などは、端末の上部と下部のサブボードに近接配置されている。これが自家中毒問題の一因となっている。電子機器においては、たとえ外部からの伝導ノイズや放射ノイズを完全にシャットアウトしても、機器内部で発生するノイズが電子機器の性能に悪影響を及ぼす。
【0004】
さらに、5G通信は28GHz帯という高周波を用いるので電磁波の直進性が強まるため、多くの基地局を必要とする。電力会社の電柱や信号機が設置されている電柱などに基地局を設置することも検討されている。膨大な基地局を効率よく設置するためには、基地局として用いる電子機器も小型、薄型化とノイズの影響を防止して安定作動することが望まれている。
【0005】
これから本格的に使われていく5G通信は28GHz帯を使用する。このような高周波帯域で使用する機器内部の回路などから、電磁波が放射されて同じ機器内の回路に入射することにより、回路特性の劣化を生じさせること、すなわち自家中毒が大きな対策課題となっている。そのために、電子機器の小型化を阻害しないような超薄型の電磁波吸収体が求められている。電磁ノイズを吸収するための手法として、メタマテリアル構造がある。電磁バンドギャップを用いる構造や、誘電体上に所定の導体パターンを形成したメタマテリアルシートの開発が行われている。
【0006】
例えば、車載レーダー用の高周波通信装置において、準ミリ波またはミリ波の信号を処理する送受信回路を搭載した送受信回路基板と、この送受信回路基板上の送受信回路を覆うように取り付けられるシールドケースとを備え、送受信回路基板と対向するシールドケースの内面に、周期的に並べられた突起と電波吸収シートとをそれぞれ配設した構成が開示されている。閉じたシールド空間内における不要共振を回避して、薄型で、所望の箇所の電力のロスを低減でき、アクティブ部品の安定動作も可能とすることで、安定した信号の送受信ができるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、テラヘルツ帯において屈折率が負となる構造のシート型メタマテリアルも開示されている。これは、シート状の誘電体基板と、その誘電体基板の一方の面上に、x-y方向にそれぞれ所定のピッチで、所定の矩形状の金属製の第1カットワイヤーと、他方の面上に、この第1カットワイヤーの配置ピッチと同じで、かつ同一の矩形状の金属製の第2カットワイヤーとが設けられ、第2カットワイヤーはy軸方向で隣接する第1カットワイヤーの間の第1カットワイヤーが形成されていない領域に重なるように、第1カットワイヤーとずれて形成された構成が開示されている。このシート型メタマテリアルは、テラヘルツ波帯において負の屈折率を呈することが示されている(例えば、特許文献2参照)。
【0008】
また、製造および使用がより簡単で、かつ、特性を損なうことなく、適合した面上で使用可能な電磁波吸収体も開示されている。この電磁波吸収体は、金属接地板と、この金属接地板上に配置されている絶縁誘電基板と、絶縁誘電基板上に配置されている1組の金属共振要素とを備えている。共振要素の電磁共振周波数は、この共振要素の寸法を適合させることによって調整され、該1組の共振要素は、寸法が異なる共振要素を含み、異なる電磁共振周波数を近接させることによって、所定の電磁吸収バンドを生成することができるようになっている。この電磁吸収体によれば、必要な電磁吸収バンドを受動的に得ることができる(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
また、5~7GHzの周波数帯域において、軽量で加工性に優れ、バラツキのない高性能な電磁波吸収性能を有する電磁波吸収体とその製造方法が開示されている。この電磁波吸収体は、誘電体層と、この誘電体層の一方の面に積層された分割導電膜層と、誘電体層の他方の面に積層された電磁波反射層とを有した構成からなる(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2012-199463号公報
【文献】特開2019-024177号公報
【文献】特表2015-534760号公報
【文献】特開2012-209515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1に記載の発明は、準ミリ波帯(24GHz、26GHz)を用いた車載レーダー用の高周波通信装置に関するものであり、シールドケースの内面に周期的に並べられた突起と電波吸収シートとをそれぞれ配設したことが特徴である。しかしながら、電波吸収シートの具体的な構造については記載がない。
【0012】
特許文献2に記載の発明は、メタマテリアルによりテラヘルツ波帯で負の屈折率を呈するシートに関するものであり、5G通信に用いる28GHz帯については開示も示唆もない。
【0013】
特許文献3に記載の発明は、寸法が異なる共振要素を含み、異なる電磁共振周波数を近接させることによって、所定の電磁吸収バンドを生成することを目的としている。しかし、5G通信に用いる28GHz帯の電磁波吸収体については開示も示唆もなく、また、この開示内容をもとにして28GHz帯用の電磁波吸収体の具体的な構造を導き出すことは難しい。
【0014】
特許文献4に記載の発明は、正方形状の分割導電層を所定ピッチで配列しているが、誘電体層がカーボンを含む材料からなることが特徴である。さらに、ETCで用いられる5~7GHzの周波数帯域についてのデータが開示されているのみであり、5G通信に用いられる28GHz帯に関しては開示も示唆もない。
【0015】
本発明は、5G通信に用いられる28GHz帯を対象として、メタマテリアル構造を用いて薄型で、かつ必要な面積に切断して用いることが可能な電磁波吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来の課題を解決するために、本発明の電磁波吸収シートは、電子機器の電子回路部から放射される電磁波による自己干渉を抑制する電磁波吸収シートであって、あらかじめ設定された比誘電率を有するシート状誘電体基板と、正方形状の導体がこの導体の一辺の長さの少なくとも2倍の配列ピッチで、シート状誘電体基板の一方の表面に一定間隔で複数配列されてなる分離導体層と、シート状誘電体基板の他方の面上に連続して設けられた連続導体層とを含むことを特徴とする。
【0017】
上記構成において、電子機器は第5世代(5G)通信規格で設定された28GHz帯域で用いられるものであり、電磁波吸収シートはその電子機器内部で放射される電磁波を吸収するものであってもよい。
さらに、電磁波を吸収する反射減衰ピーク周波数の反射減衰量が6dB以上を有するようにしてもよい。
【0018】
さらに、導体の一辺の長さと配列ピッチとは、シート状誘電体基板の比誘電率に応じて設定するようにしてもよい。この場合において、シート状誘電体基板の比誘電率が3.5である材料を用いた場合、導体の一辺の長さを2.7mm~2.9mmの範囲とし、かつ、配列ピッチを6.5mm~10mmの範囲としてもよい。また、シート状誘電体基板の比誘電率が4.0である材料を用いた場合、導体の一辺の長さを2.4mm~2.6mmの範囲とし、かつ、配列ピッチを6.5mm~9.5mmの範囲、または、一辺の長さを2.45mm~2.55mmの範囲とし、かつ、配列ピッチを6mm~10mmまでの範囲としてもよい。さらに、シート状誘電体基板の比誘電率が4.5である材料を用いた場合、導体の一辺の長さを2.2mm~2.35mmの範囲とし、かつ、配列ピッチを5.5mm~9.5mmの範囲としてもよい。
【0019】
このような電磁波吸収シートは、28GHz帯域で放射される電磁波を効率よく吸収するので、反射電磁波により自己干渉が生じることを防止できる。この結果、電子機器の誤作動を防止でき、信頼性の高い電子機器を提供することができる。なお、反射減衰量が6dB以上であれば、電磁波吸収シートにより電磁ノイズを吸収して自己干渉が生じることを抑制でき、電子機器の誤作動を防止できる。反射減衰量は大きいほど電磁波の吸収性能が大きくなって好ましいことから、反射減衰量の上限には特に制約はない。本発明により達成できる範囲であれば、例えば、35dBあるいは40dB程度であってもよい。
【0020】
また、上記構成において、分離導体層とシート状誘電体基板の表面を保護するために絶縁性表面保護層を設けてもよい。シート状誘電体基板は、例えば150mm×150mmの四角形のシート形状で提供されるが、使用される電子機器に応じて必要とする形状に切断して用いられる。このため、切断等の作業において、分離導体層の導体やシート状誘電体基板表面が損傷されるのを防ぐことが好ましい。このために絶縁性表面保護層を設けてもよい。
【0021】
なお、本発明でいう正方形状とは、シート状誘電体基板の表面に形成した導体膜をエッチング加工やレーザー加工するときに生じる加工誤差を許容するものである。例えば、正方形状の各辺の長さについて、それぞれ3%程度のエッチング誤差があってもよい
【0022】
さらに、本発明の電子機器は、上記構成の電磁波吸収シートと、電磁波を放射する電子回路を含む電子回路部と、電子回路部を電磁シールドするために、電子回路部の電磁波を放射する電子回路を少なくとも覆うように設けられたシールドカバーとを含み、電磁波吸収シートはシールドカバーと電子回路部との間に配置されたことを特徴とする。
【0023】
電磁波を放射する電子回路からは外部への電磁波の放射のみでなく、シールドカバーと電子回路部との空間部にも電磁波が放射される。放射された電磁波は、一般的にシールドカバーで反射され、電子回路部に再入射する。これにより、自己干渉が生じて電子機器の誤作動を生じる。それを防止するために、シールドカバーと電子回路部との間に電磁波吸収シートを配置することで、シールドカバーに向けて放射された電磁波を吸収して、反射する電磁波を大幅に減少させることができ、電子機器の誤作動を防止することができる。なお、電磁波吸収シートは少なくとも電磁波を放射する電子回路を覆うようにすればよいが、電子回路部全体を覆うようにしてもかまわない。また、シールドカバー無しで、電子回路部を筐体内に配置する構成の場合には、筐体の電子回路部に対向する面がシールドカバーとして機能する。したがって、このような場合には筐体もシールドカバーとしての概念に含まれる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の電磁波吸収シートは、薄いシート状誘電体基板の一方の面上に正方形状の導体を所定の配列ピッチで配列した分離導体層を設け、他方の面上には連続導体層を設けた簡単な構造からなるので、製造プロセスが簡単でありながら、第5世代通信規格の28GHz帯域の周波数帯域で十分な電磁波吸収性を有するという大きな効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施の形態に係る電磁波吸収シートの平面図である。
図2】同実施の形態に係る電磁波吸収シートの一部拡大平面図である。
図3】同実施の形態に係る電磁波吸収シートの一部拡大斜視図である。
図4】同実施の形態に係る電磁波吸収シートを電子回路ユニットに取り付ける前と取り付けた後の状態を示す模式図であり、(a)は電子回路ユニットの構造を示す断面概略図、(b)はシールドカバーの内面に電磁波吸収シートを貼付した状態を示す断面概略図である。
図5】同実施の形態において、反射減衰特性と周波数との関係についての実測値と解析値との相関を求めた結果である。
図6】同実施の形態において、比誘電率を3.5から4.6まで0.1刻みで変化させたときの反射減衰特性をFDTD法で求めた結果である。
図7図6に示す結果を基にシート状誘電体基板の比誘電率と、反射減衰ピーク周波数および減衰量との関係を求めた結果である。
図8】同実施の形態において、比誘電率を3.5、4.0および4.5として、辺長さと反射減衰ピーク周波数との関係をFDTD法により求めた結果である。
図9】同実施の形態において、比誘電率を4.0として、反射減衰ピーク周波数および減衰量とピッチ長さとの関係をFDTD法により求めた結果である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(実施の形態)
本発明の実施の形態に係る電磁波吸収シートについて、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施の形態に係る電磁波吸収シートの平面図である。図2は、同実施の形態に係る電磁波吸収シートの一部拡大平面図である。図3は、同実施の形態に係る電磁波吸収シートの一部拡大斜視図である。なお、斜視図においては、分離導体層の導体の厚み、シート状誘電体基板の厚みおよび連続導体層の厚みについては、分かりやすくするために誇張して示している。
【0027】
以下、図1図3を用いて本実施の形態に係る電磁波吸収シート1の構成を説明する。
本実施の形態に係る電磁波吸収シート1は、電子機器の電子回路部から放射される電磁波による自己干渉を抑制するものである。その電磁波吸収シート1は、あらかじめ設定された比誘電率を有するシート状誘電体基板2と、正方形状の導体3aがこの導体3aの一辺の長さ(以下、「辺長さ」という。)の少なくとも2倍の配列ピッチ(以下、「ピッチ長さ」という。)で、シート状誘電体基板2の一方の表面に一定間隔で複数配列されてなる分離導体層3と、シート状誘電体基板2の他方の面上に連続的に設けられた連続導体層4とを含む構成からなる。
【0028】
さらに、上記構成において、電子機器は第5世代(5G)通信規格で設定された28GHz帯域で用いられるものであり、電子機器内部で放射される電磁波が28GHz帯域内にあり、電磁波吸収シート1はこの放射される電磁波を吸収する特性を有する。この場合において、電磁波を吸収する反射減衰ピーク周波数の反射減衰量が6dB以上を有することが好ましい。
【0029】
なお、28GHz帯域は27.0GHz~29.5GHzの範囲をいう。反射減衰量は電磁ノイズを吸収するためには大きいほうが望ましい。しかし、6dB以上あれば、電磁ノイズを吸収して自己干渉が生じることを実用レベルで抑制できる。好ましくは10dB以上で、かつ、ピーク周波数を中心として400MHz幅領域で6dB以上あれば、実用レベルでの抑制効果をより確実に得ることができる。さらに15dB以上で、かつ、ピーク周波数を中心として400MHz幅領域で10dBを得ることができれば、さらに確実に自己干渉をなくすことができ、安定した電子機器の作動を確保することが可能となるので好ましい。
【0030】
上記構成において、導体3aの辺長さLとピッチ長さPとは、シート状誘電体基板2の比誘電率に応じて設定するようにしてもよい。後述するように、例えばシート状誘電体基板2の比誘電率が3.5である材料を用いた場合、導体3aの辺長さLを2.7mm~2.9mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さPを6.5mm~10mmの範囲とすることが好ましい。また、シート状誘電体基板2の比誘電率が4.0である材料を用いた場合、導体3aの辺長さLを2.4mm~2.6mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さPを6.5mm~9.5mmの範囲としてもよい。または、辺長さLを2.45mm~2.55mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さPを6mm~10mmまでの範囲としてもよい。さらに、シート状誘電体基板2の比誘電率が4.5である材料を用いた場合、導体3aの辺長さLを2.2mm~2.35mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さPを5.5mm~9.5mmの範囲としてもよい。
【0031】
このようにすれば、28GHz帯域において必要とする反射減衰ピーク周波数と減衰量を得るために最適な辺長さLとピッチ長さPとを設定することができ、電磁波吸収シートの特性を良好なものとすることができる。
【0032】
さらに、上記構成において、分離導体層3とシート状誘電体基板2の表面を保護するために絶縁性表面保護層を設けてもよい。この材料としては、配線基板の表面保護層の材料として用いられているレジスト材料であってもよいし、その他の樹脂材料でもよい。
【0033】
電磁波吸収シート1は、例えば、分離導体層3の材質が銅で、その厚みが35μm、シート状誘電体基板2は目標とする反射減衰ピーク周波数に応じて比誘電率を設定し、それを満たす材料を選択すればよい。その厚みは、例えば150μmである。さらに、連続導体層4は、材質が銅で、その厚みは35μmとすることができる。絶縁性表面保護層を設ける場合には、分離導体層3を十分保護するためにその厚みよりも少なくとも大きな厚みとすることが好ましい。例えば、分離導体層3の厚みが35μmの場合、絶縁性表面保護層の厚みは40μm程度とすることが望ましい。また、絶縁性表面保護層を連続導体層4の表面にも設けてもよい。その場合には、25μm程度の厚みとしてもよい。
【0034】
上記は例示であって、分離導体層3の材質としては、銅に限定されるものではなく、金、銀、銅合金、あるいは金メッキされた銅など、配線基板の材料として用いられている種々の材料を用いることができる。ただし、配線基板の材料としては銅が多く用いられているので、銅を用いることがコスト面と製造プロセス面で好ましい。また、その厚みも35μmに限定されるものではなく、導体層として機能する厚みであればよい。例えば、0.1μm程度の厚みであってもシート状誘電体基板の面上に均一に形成できれば使用可能である。しかしながら、0.1μm程度の厚みの場合には、真空蒸着等により製膜しなければならないためコスト面ではあまり好ましくはない。一方、50μm以上の厚みであっても使用可能であるが、エッチング加工により正方形状のパターンを形成する場合に、厚くなるほどエッチング加工のばらつきが大きくなるので好ましくない。銅箔の35μmの厚みは、配線基板に大量に用いられており、低コストであり、かつ、エッチング等の加工精度も確保できるので好ましい。さらに、18μmの厚みも配線基板に用いられており、エッチング加工精度を改善するためにより好ましい。
【0035】
連続導体層の材料についても、分離導体層の材料と同じである。その厚みも35μmに限定されるものではなく、連続導体層としての機能を満たす限り0.1μm以上あればよい。また、エッチング加工する必要がないので、100μm以上の厚みがあってもよいが、電磁波吸収シートが厚くなり、かつ折り曲げ加工や切断加工が困難になるので、50μm以下とすることが好ましい。
【0036】
シート状誘電体基板2は、配線基板に用いられているガラスエポキシ樹脂(比誘電率:4.5~5.2)、ガラスファイバー混合ポリイミド樹脂(比誘電率:4.84)などだけでなく、シート状に加工できる樹脂材料であれば様々なものを用いることができる。例えば、ガラスファイバー(40%)混合PPS樹脂(比誘電率:3.79)、ポリアセタール(POM)樹脂(比誘電率:3.7~3.8)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂(比誘電率:3~3.5)、ポリアミド(PA)樹脂(比誘電率:4.0~4.9(6:Type)、3.9~4.5(66:Type))、ユリア樹脂(比誘電率:3.4~6.9)、アニリン樹脂(比誘電率:3.4~3.8)、アクリルニトリル樹脂(比誘電率:3.5~4.5)、ガラス・シリコン積層板(比誘電率:3.5~4.5)、シリコン樹脂(比誘電率:3.5~5.0)、ポリメチルアクリレート樹脂(比誘電率:4.0)、フッ素樹脂(比誘電率:4.0~8.0)、エポキシ樹脂(比誘電率:2.5~6.0)、塩化ビニル樹脂(比誘電率:2.8~8.0)などを用いることができる。
【0037】
図4は、上記構成の電磁波吸収シート1を電子回路ユニット10に取り付ける前と取り付けた後の状態を示す模式図である。図4(a)は、電子回路ユニット10の構造を示す断面概略図(取り付け前)である。そして、図4(b)は、電子回路ユニット10のシールドカバー12の内面12aに本発明の電磁波吸収シート1を貼付してなる電子機器15の構造を示す断面概略図(取り付け後)である。このような電子回路部10は、例えば基地局として用いられる送受信回路を有するものである。
【0038】
電子機器15は、電磁波を放射する電子回路11aを含む電子回路部11と、この電子回路部11を電磁シールドするために電子回路部11を覆うように設けられたシールドカバー12と、電磁波吸収シート1とを含み、電磁波吸収シート1は、シールドカバー12と電子回路部11との間に配置されている。本実施の形態では、シールドカバー12の内面12aに貼付されているが、本発明はこれに限定されない。少なくとも電子回路11aを覆うように、その上面に配置すればよい。配置方法も貼付することだけでなく、電子回路11a上にのせるような形態であってもよい。
【0039】
電子回路部11は、電磁波を放射する電子回路11a、例えば送信回路と、例えば受信回路である電子回路11bとが配線基板11c上に実装された構成からなる。シールドカバー12は、電子回路部11全体を覆うように箱型の構造からなり、少なくとも表面は導体材料で形成され、配線基板12のグランド端子(図示せず)に接続されている。すなわち、シールドカバー12は、全体が金属材料からなるものであってもよいし、樹脂材料であってもよい。樹脂材料を用いる場合には、少なくとも片一方の表面に導電性材料層を設けるか、あるいは樹脂材料の内部に導電性材料層を設けた構造とすることが好ましい。また、樹脂材料自体が導電性を有するものであってもよい。
【0040】
外部からの電磁ノイズはシールドカバー12により遮蔽されるが、図4(a)に模式的に示すように送信回路である電子回路11aから放射される電磁ノイズはシールドカバー12の内面で反射され、送信回路である電子回路11aや受信回路である電子回路11bに入射し、自己干渉を起こす。この自己干渉により電子回路部11が誤作動を生じる。なお、送信回路である電子回路11aからは送信電波S1が送信され、受信回路11bは例えば基地局からの送信電波S2を受信する。
【0041】
図4(b)は、本発明の電磁波吸収シート1をシールドカバー12の内面12aに貼り付けた場合である。送信回路である電子回路11aから放射された電磁ノイズは電磁波吸収シート1で吸収される。この結果、反射する電磁ノイズを大幅に低減することができ、自己干渉を起こすことがなくなり電子回路部11の誤作動を防ぐことができる。
【0042】
なお、本実施の形態では、送信回路である電子回路11aと受信回路である電子回路11bとを合わせて電子回路部11としたが、本発明はこれに限定されない。例えば、送信回路である電子回路11aのみの場合であってもよいし、送信回路である電子回路11aと、受信回路である電子回路11b以外の電子回路とを合わせたものであってもよい。
【0043】
絶縁性保護層を設けたとしても、電磁波吸収シートの厚みは350μm以下とすることができるので、電磁波吸収シート1を電子回路部11とシールドカバー12との隙間に配置しても、電子機器15の厚みが増加することはない。このため、基地局用の電子機器やスマートフォンなどの超薄型の要望を満たしながら、自己干渉を効率的に抑制することができる。
【0044】
以下、本発明の電磁波吸収シート1について、分離導体層3の導体3aの辺長さLとピッチ長さPとを、シート状誘電体基板2の比誘電率に応じて設定する手法とそれから得られる結果について具体的に説明する。解析に用いた手法は、有限差分時間領域(Finite Difference Time Domain:FDTD)法である。FDTD法は数値電磁解析法であり、時間領域のMaxwellの方程式を直接差分化する手法であり、簡単に計算ができるという特徴を有する。また、時間領域解法であるので、広帯域の応答が一回の計算で得られ、非線形現象なども取り扱うことができ、多くの分野で広く活用されている。
【0045】
図5は、反射減衰特性と周波数との関係についての実測値と解析値との相関を求めた結果である。比誘電率(ε)が4.0のシート状誘電体基板2を用い、このシート状誘電体基板2上に、辺長さLを2.5mm、ピッチ長さPを6mmとした分離導体層3を形成し、他方の面上に連続導体層4を形成して電磁波吸収シート1を作製した。作製した電磁波吸収シート1を用いて反射減衰特性を求めた。その結果が実線で示す実測値である。
【0046】
実測に用いた手法は、一般的には、自由空間法(Sパラメータ法)というものである。具体的には、自由空間で測定可能であり、電波吸収率も測定可能であるキーコム株式会社のDPS10装置を用いた。
【0047】
一方、FDTD法による解析は、比誘電率(ε)を4.0とし、辺長さLを2.5mm、ピッチ長さPを6mmとして反射減衰特性を求めた。その結果が点線で示す解析値である。反射減衰ピーク周波数と減衰量ともに、実測値と解析値とは良い一致をしている。この結果、FDTD法により解析すればよいことがわかった。
【0048】
図6は、比誘電率を3.5から4.6まで0.1刻みで変化させたときの反射減衰特性をFDTD法で求めた結果である。辺長さLは2.5mm、ピッチ長さPは6mmとした。比誘電率が大きくなるにつれて、反射減衰ピーク周波数は低周波側に移動し、減衰量は大きくなっている。
【0049】
図7は、図6に示す結果を基にシート状誘電体基板の比誘電率と、反射減衰ピーク周波数および減衰量との関係を求めた結果である。図に示すAは28GHz帯域の上限値で、Bは下限値である。反射減衰ピーク周波数が、AとBとで示す範囲に入ることが必要であり、辺長さLが2.5mm、ピッチ長さPを6mmとしたときには、比誘電率は3.7~4.2の範囲とすることが必要であることが分かった。したがって、この範囲を満たすシート状誘電体基板を用いれば、反射減衰ピーク周波数が28GHz帯域内となり、かつ、減衰量は12.5dB以上となることが分かった。
【0050】
以上の結果を基に、目標とする反射減衰ピーク周波数に合わせて比誘電率を求め、その比誘電率を満たす樹脂材料をシート状誘電体基板とすれば、減衰量が6dB以上となる電磁波吸収シートを得ることができる。
【0051】
図8は、比誘電率を3.5、4.0および4.5として、辺長さLと反射減衰ピーク周波数との関係をFDTD法により求めた結果である。比誘電率が3.5では、28GHz帯域を満たす辺長さLは2.67mm以上とすればよいことが分かる。比誘電率が4.0の場合には、辺長さLは2.375mm~2.7mmとなり、比誘電率が4.5では2.45mm以下とすることが必要である。
【0052】
すなわち、シート状誘電体基板2として、比誘電率の小さな材料を用いる場合、辺長さLを大きくしなければならず、その場合にはピッチ長さPも大きくなってしまうため、基地局用やスマートフォンなどに要求される小型・薄型化を実現しにくくなるので好ましくない。比誘電率は3.5以上が好ましい。一方、シート状誘電体基板2として比誘電率の大きな材料を用いると、辺長さLは小さくしなければならない。分離導体層の導体の辺長さを小さくすればするほど、エッチングなどの加工ばらつきの影響が相対的に大きくなる。したがって、分離導体層3の導体3aの辺長さLの一般的なばらつきを考慮すると、比誘電率は4.6以下とすることが好ましい。
【0053】
図9は、比誘電率を4.0として、辺長さLを2.3mmから2.7mmまで0.05mm刻みでパラメータとして、反射減衰ピーク周波数・減衰量とピッチ長さPとの関係をFDTD法により求めた結果である。反射減衰ピーク周波数はピッチ長さPにより変化せず一定であるのに対して、減衰量はピッチ長さPが7.5mm~9.5mmの範囲が最も大きな値を示し、ピッチ長さPが小さくなっても、大きくなっても減衰量が小さくなる傾向を示す。図からわかるように、ピッチ長さPを6.5mm~9.5mmの範囲とすれば、辺長さが2.3mmから2.7mmの範囲で減衰量は6dB以上を確保できることが分かった。
【0054】
表1から表3は、比誘電率を3.5、4.0および4.5とした場合に、反射減衰ピーク周波数と減衰量との両方が目標値をクリアする範囲をFDTD法により調べた結果である。
【0055】
【表1】
【0056】
表1は、シート状誘電体基板の比誘電率を3.5とした場合である。表1において、網掛け部は反射減衰ピーク周波数が28GHz帯域内にあり、かつ、減衰量が6dB以上となる辺長さとピッチ長さの領域を示す。これからわかるように、比誘電率を3.5とした場合には、辺長さが2.7mm~2.9mmの範囲で、かつ、ピッチ長さが6.5mm~10mmの範囲内であれば、反射減衰ピーク周波数も減衰量も目標値を満たす。
【0057】
また、減衰量が10dB以上の範囲は、辺長さが2.8mm~2.9mmの範囲で、かつ、ピッチ長さが7mm~10mmの範囲である。さらに、減衰量が15dB以上の範囲は、辺長さを2.7mm~2.9mmの範囲で、ピッチ長さを7.5mmに設定すればよい。
【0058】
これらの範囲内であれば、分離導体層3の導体3aをエッチング加工により形成する場合に、エッチングばらつきが生じても十分に目標値範囲内に入れることができるので製造が容易になる。
【0059】
【表2】
【0060】
表2は、シート状誘電体基板2の比誘電率を4.0とした場合である。表2において、網掛け部は反射減衰ピーク周波数が28GHz帯域内にあり、かつ、減衰量が6dB以上となる辺長さとピッチ長さの領域を示す。これからわかるように、比誘電率を4.0とした場合には、辺長さを2.4mm~2.6mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さを6.5mm~9.5mmの範囲に設定すれば、反射減衰ピーク周波数と減衰量との両方を目標値内にすることができる。あるいは、辺長さを2.45mm~2.55mmの範囲とし、かつ、ピッチ長さを6mm~10mmまでの範囲としてもよい。比誘電率が4.0の場合には、辺長さが2.45mm~2.55mmでピッチ長さが10mmの範囲を除けば、その他の範囲で減衰量が10dB以上あるので、、エッチング加工のばらつきがある程度生じても10dB以上の減衰量を確保することができる。
【0061】
なお、表2からもわかるように、上記範囲だけでなく、例えば、辺長さを2.65mmとし、ピッチ長さを6.5mmとした場合、反射減衰ピーク周波数は27.05GHzで、減衰量は12.5dBであるので、必要に応じてこのような辺長さとピッチ長さを選択してもよい。この場合には、エッチング加工のばらつきを抑えるための管理が要求される。
【0062】
【表3】
【0063】
表3は、シート状誘電体基板2の比誘電率を4.5とした場合である。表3において、網掛け部は反射減衰ピーク周波数が28GHz帯域内にあり、かつ、減衰量が6dB以上となる辺長さとピッチ長さの領域を示す。これからわかるように、比誘電率を4.5とした場合には、辺長さを2.2mm~2.35mmの範囲とし、ピッチ長さを5.5mm~9.5mmの範囲に設定すれば、反射減衰ピーク周波数と減衰量との両方を目標値内にすることができる。なお、上記の辺長さとピッチ長さの範囲では、一部を除き減衰量は10dB以上である。
【0064】
(実施例1)
比誘電率が3.5であるシリコン樹脂をシート状誘電体基板2として用いた。厚みは150μmである。このシート状誘電体基板2の両面に35μm厚の銅箔を貼り付け、一方の面の銅箔を辺長さが2.8mmで、ピッチ長さが9mmとしてエッチング加工し、電磁波吸収シートを作製した。この電磁波吸収シートを図5で説明した実測値を求めた方法と同じ方法で反射減衰特性を評価した。その結果、反射減衰ピーク周波数は27.94GHzで減衰量は11.71dBが得られた。さらに、反射減衰ピーク周波数を中心として400MHzの幅において6dB以上であることも確認した。
【0065】
(実施例2)
比誘電率が4.0であるエポキシ樹脂をシート状誘電体基板2として用いた。厚みは150μmとした。このシート状誘電体基板2の両面に18μm厚の銅箔を貼り付け、一方の面の銅箔を辺長さが2.45mmで、ピッチ長さが6mmとしてエッチング加工し、電磁波吸収シートを作製した。この電磁波吸収シートを図5で説明した実測値を求めた方法と同じ方法で反射減衰特性を評価した。その結果、反射減衰ピーク周波数は29.27GHzで減衰量は13.41dBが得られた。さらに、反射減衰ピーク周波数を中心として400MHzの幅において6dB以上であることも確認した。
【0066】
(実施例3)
比誘電率が4.0であるエポキシ樹脂をシート状誘電体基板2として用いた。厚みは同様に150μmとした。このシート状誘電体基板2の両面に35μm厚の銅箔を貼り付け、一方の面の銅箔を辺長さが2.6mmで、ピッチ長さが8mmとしてエッチング加工し、電磁波吸収シートを作製した。この電磁波吸収シートを図5で説明した実測値を求めた方法と同じ方法で反射減衰特性を評価した。その結果、反射減衰ピーク周波数は27.18GHzで減衰量は9.95dBが得られた。さらに、反射減衰ピーク周波数を中心として400MHzの幅において6dB以上であることも確認した。
【0067】
(実施例4)
比誘電率が4.5であるガラスエポキシ樹脂をシート状誘電体基板2として用いた。厚みは同様に150μmとした。このシート状誘電体基板2の一方の面に真空蒸着により銅薄膜を形成した後、さらに銅メッキを行い、8μmの銅膜を作製した。他方の面には35μm厚の銅箔を貼り付けて連続導体層とした。そして、一方の面の銅膜を辺長さが2.35mmで、ピッチ長さが8mmとしてエッチング加工し、電磁波吸収シートを作製した。本実施例では、辺長さが他の実施例に比べて小さいが、銅膜の厚みを8μmとしているのでエッチングばらつきを小さくすることができた。この電磁波吸収シートを図5で説明した実測値を求めた方法と同じ方法で反射減衰特性を評価した。その結果、反射減衰ピーク周波数は27.56GHzで減衰量は18.28dBが得られた。さらに、反射減衰ピーク周波数を中心として400MHzの幅において6dB以上であることも確認した。
【0068】
以上のように、本発明の電磁波吸収シートは、目標とする反射減衰ピーク周波数を決め、それに合わせて比誘電率を設定した後、辺長さとピッチ長さとを求めて一方の面上の導体膜をエッチング加工して必要とする形状の導体からなる分離導体層を形成するだけでよいので、製造プロセスが簡単でありながら自己干渉を効率よく防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明の電磁波吸収シートは、第5世代(5G)通信に用いる電子機器分野に有用である。
【符号の説明】
【0070】
1 電磁波吸収シート
2 シート状誘電体基板
3 分離導体層
3a 導体
4 連続導体層
10 電子回路ユニット
11 電子回路部
11a 電子回路(送信回路)
11b 電子回路(受信回路)
11c 配線基板
12 シールドカバー
12a 内面
15 電子機器

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9