(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】外観検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/88 20060101AFI20241023BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20241023BHJP
【FI】
G01N21/88 Z
G06T7/00 300F
(21)【出願番号】P 2020195687
(22)【出願日】2020-11-26
【審査請求日】2023-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【氏名又は名称】藤田 隆
(72)【発明者】
【氏名】三浦 光
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06738450(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0205997(US,A1)
【文献】特開2016-007270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G06T 7/00 - G06T 7/90
G06V 10/00 - G06V 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G01B 11/00 - G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多次元のベクトル空間により、太陽電池の外観特性を評価することで前記太陽電池の外観検査を行う外観検査装置であって、
前記太陽電池の全体に関する画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された一又は複数の画像内の前記太陽電池が占める領域を複数の小領域に細分化し、各小領域のそれぞれにおいて複数の特徴量を算出し、前記複数の特徴量を用いて前記画像内の前記太陽電池全体の特徴量ベクトルを算出し、さらに前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の所定のクラスターに属する確率を算出する評価部を有する
ものであり、
前記評価部は、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の複数のクラスターに属する確率をそれぞれ算出し、各確率に基づいて前記太陽電池の外観評価を行うものであり、
前記評価部は、前記各確率に基づいて評価指数を算出し、前記評価指数が基準範囲内である場合に正常と判定する、外観検査装置。
【請求項2】
多次元のベクトル空間により、太陽電池の外観特性を評価することで前記太陽電池の外観検査を行う外観検査装置であって、
前記太陽電池の全体に関する画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された一又は複数の画像内の前記太陽電池が占める領域を複数の小領域に細分化し、各小領域のそれぞれにおいて複数の特徴量を算出し、前記複数の特徴量を用いて前記画像内の前記太陽電池全体の特徴量ベクトルを算出し、さらに前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の所定のクラスターに属する確率を算出する評価部を有するものであり、
前記評価部は、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の複数のクラスターに属する確率をそれぞれ算出し、各確率に基づいて前記太陽電池の外観評価を行う
ものであり、
前記評価部は、前記複数のクラスターのいずれにも属さない確率が所定の基準値以上であることを条件として、新たなクラスターとして報知し、前記新たなクラスターに関する定義を要求し、前記定義を受信したときに前記定義に基づきクラスターモデルの再規定を行う、外観検査装置。
【請求項3】
多次元のベクトル空間により、太陽電池の外観特性を評価することで前記太陽電池の外観検査を行う外観検査装置であって、
前記太陽電池の全体に関する画像を取得する画像取得部と、
前記画像取得部によって取得された一又は複数の画像内の前記太陽電池が占める領域を複数の小領域に細分化し、各小領域のそれぞれにおいて複数の特徴量を算出し、前記複数の特徴量を用いて前記画像内の前記太陽電池全体の特徴量ベクトルを算出し、さらに前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の所定のクラスターに属する確率を算出する評価部を有し、
前記評価部は、前記多次元のベクトル空間内において、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが、複数の外観条件を全て満たす複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルが全て属する正常基準クラスターに属する確率と、外観条件ごとに、当該外観条件を満たさない複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルによって支配的に規定される各異常基準クラスターに属する確率をそれぞれ算出し、全ての確率が所定の基準値未満であることを条件として、新たな異常として報知する、外観検査装置。
【請求項4】
前記評価部は、前記正常基準クラスターに属する確率が所定の基準値未満である場合に、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の異常基準クラスターに属する確率を算出するものであり、
前記異常基準クラスターは、前記複数の外観条件のうち、少なくとも所定の外観条件を満たさない複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルによって、支配的に規定される、請求項
3に記載の外観検査装置。
【請求項5】
前記評価部は、前記全ての確率が前記所定の基準値未満であることを条件として、新たなクラスターとして報知し、前記新たなクラスターに関する定義を要求し、前記定義を受信したときに前記定義に基づきクラスターモデルの再規定を行う、請求項
3又は4に記載の外観検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観検査装置に関し、特に太陽電池の外観を検査する外観検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池の安定した品質を確保するために、太陽電池の欠陥の有無を検出する検出装置が知られている(例えば、特許文献1)。
例えば、特許文献1の検出装置は、候補領域抽出部と、画像生成部と、第1学習器と、検出部を有したものである。そして、特許文献1の検出装置は、候補領域抽出部によって第1画像を画像処理して検出対象候補が含まれる候補領域を抽出し、画像生成部によって候補領域が含まれる第2画像を生成し、さらに第2画像をニューラルネットワークで構成された第1学習器に入力して検出部が検出対象の有無を検出する。特許文献1によれば、こうすることで、微小な検出対象を精度良く検出できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、結晶シリコン太陽電池等の太陽電池パネルは、結晶シリコンの焼結度やテクスチャー構造等によって外観上の色が異なり、外観上の特性が一定でない。そのため、従来の方法によって、異常の見逃しを防ぐには、異常とみなす閾値を広くとる必要があり、多量の過検出を許容する必要がある。
また、太陽電池セルの色表現のばらつきによって、異常箇所の色表現も影響されるため、異常の定義を一義的に設定することが困難であり、既存の定義に当てはまらない稀な異常も検知する必要がある。
この点、特許文献1の検出装置は、画像そのものを第1学習器に入力し、教師あり学習により学習するため、上記した欠陥も検出できる。
しかしながら、特許文献1の検出装置は、欠陥を検出する場合、膨大な量の学習サンプルが必要となり、その分類及び属性の紐づけに係る工程が多くなってしまう問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、外観上の特性が一定でない太陽電池パネルであっても容易に外観異常を検査できる外観検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの様相は、多次元のベクトル空間により、太陽電池の外観特性を評価することで前記太陽電池の外観検査を行う外観検査装置であって、前記太陽電池の全体に関する画像を取得する画像取得部と、前記画像取得部によって取得された一又は複数の画像内の前記太陽電池が占める領域を複数の小領域に細分化し、各小領域のそれぞれにおいて複数の特徴量を算出し、前記複数の特徴量を用いて前記画像内の前記太陽電池全体の特徴量ベクトルを算出し、さらに前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の所定のクラスターに属する確率を算出する評価部を有する、外観検査装置である。
【0007】
ここでいう「小領域の特徴量」とは、小領域を特徴付ける定性的及び/又は定量的な項目をいう。
【0008】
本様相によれば、画像を直接入力して異常を判定するのではなく、画像の小領域ごとに特徴量を抽出し、この特徴量から特徴量ベクトルを算出する。そして、この特徴量ベクトルのベクトル座標を使用して外観異常を評価する。すなわち、本様相によれば、特徴量ベクトルのベクトル座標から太陽電池が多次元ベクトル空間内の所定のクラスターに属する確率を算出するため、外観上の特性が一定でない太陽電池であっても、外観異常を検査できる。
【0009】
好ましい様相は、前記評価部は、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の複数のクラスターに属する確率をそれぞれ算出し、各確率に基づいて前記太陽電池の外観評価を行うことである。
【0010】
本様相によれば、各クラスターに属する確率に基づいて太陽電池の外観評価を行うため、より正確かつ定量的に外観異常を評価できる。
【0011】
より好ましい様相は、前記評価部は、前記各確率に基づいて評価指数を算出し、前記評価指数が基準範囲内である場合に正常と判定することである。
【0012】
本様相によれば、評価指数が属する範囲に基づいて正常と判定するため、正確に正常かどうかを判定できる。
【0013】
より好ましい様相は、前記評価部は、前記特徴量ベクトルが前記複数のクラスターのいずれにも属さない確率が所定の基準値以上であることを条件として、新たなクラスターとして報知し、前記新たなクラスターに関する定義を要求し、前記定義を受信したときに前記定義に基づきクラスターモデルの再規定を行うことである。
【0014】
本様相によれば、未知の外観異常が生じていてもクラスターモデルを再規定することで、それ以降の外観評価において対応できる。
【0015】
好ましい様相は、前記所定のクラスターは、複数の外観条件を全て満たす複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルが全て属する正常基準クラスターであることである。
【0016】
ここでいう「外観条件」とは、外観が正常であるか異常であるかを判定する外観判定条件をいう。典型的な「外観条件」には、受光面の色や色むら、基板等の欠け、各電極の断線などの正常とみなす基準条件がある。
【0017】
本様相によれば、正常基準クラスターに属する確率を算出して評価するので、評価対象の太陽電池が正常であるかを判断できる。
【0018】
より好ましい様相は、前記評価部は、前記正常基準クラスターに属する確率が所定の基準値未満である場合に、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが前記多次元のベクトル空間内の異常基準クラスターに属する確率を算出するものであり、前記異常基準クラスターは、前記複数の外観条件のうち、少なくとも所定の外観条件を満たさない複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルによって、支配的に規定されることである。
【0019】
本様相によれば、所定の外観条件を満たさない異常基準クラスターに属する確率を算出するため、属する異常基準クラスターの種類によって異常の原因となる外観条件を推定できる。
【0020】
より好ましい様相は、前記多次元のベクトル空間内において、外観条件ごとに、当該外観条件を満たさない複数の基準太陽電池の前記特徴量ベクトルによって支配的に規定される異常基準クラスターをそれぞれ算出し、前記評価部は、前記太陽電池の前記特徴量ベクトルが、前記正常基準クラスターに属する確率と、各異常基準クラスターに属する確率をそれぞれ算出し、全ての確率が所定の基準値未満であることを条件として、新たな異常として報知することである。
【0021】
本様相によれば、正常基準クラスターと異常基準クラスターのどのクラスターにも属する確率が低い場合に、新たな異常が発生しているものとして報知するため、未知の異常に対しても異常を報知できる。
【0022】
さらに好ましい様相は、前記評価部は、前記全ての確率が前記所定の基準値未満であることを条件として、新たなクラスターとして報知し、前記新たなクラスターに関する定義を要求し、前記定義を受信したときに前記定義に基づきクラスターモデルの再規定を行うことである。
【0023】
本様相によれば、未知の外観異常が生じていてもクラスターモデルを再規定することで、それ以降の外観評価において対応できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の製造装置によれば、外観上の特性が一定でない太陽電池パネルであっても容易に外観異常を検査できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態の外観検査装置を示した構成図である。
【
図2】
図1の外観検査装置で検査する太陽電池パネルの一例の説明図であり、(a)は太陽電池パネルの受光面の平面図であり、(b)は(a)のA-A断面図である。
【
図3】
図2の太陽電池パネルを載置部に載置した状態の説明図であり、(a)は太陽電池パネルの受光面の撮影画像においてエッジを抽出した概念図であり、(b)は(a)の小領域a~cの拡大図である。
【
図4】各種類の基準太陽電池パネルの特徴量ベクトルを各クラスターに割り当てたグラフである。
【
図5】
図1の外観検査装置を用いた事前学習工程のフローチャートである。
【
図6】
図1の外観検査装置を用いた評価工程のフローチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態における評価工程のフローチャートである。
【
図8】本発明の他の実施形態における太陽電池モジュールの受光面の撮影画像においてエッジを抽出した概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0027】
本発明の第1実施形態の外観検査装置1は、太陽電池パネル100の製造装置の一部であって、外観上の特性が一定でない太陽電池パネル100の外観の異常を検査する装置である。
外観検査装置1は、
図1のように、評価装置2(評価部)と、1又は複数のカメラ装置3(画像取得部)と、照明装置5を備えている。
【0028】
評価装置2は、CPU、ハードディスク、ROM、RAM等のハードウェアを備えたコンピュータである。
評価装置2は、主に制御装置と、演算装置と、記憶装置と、入力装置と、出力装置を有しており、
図1のように、画像処理部10と、画像解析部11と、クラスター分類部12と、係数計算部13と、確率計算部14と、評価指数計算部15と、データ記憶部16と、報知手段17を構成している。
【0029】
画像処理部10は、カメラ装置3によって撮影された画像を画像処理するものである。
画像処理は、特に限定されるものではないが、典型的には、濃度補正、雑音除去、エッジ検出、特徴量抽出などがある。
画像解析部11は、画像処理部10によって画像処理された画像に対して解析し、特徴量ベクトルを算出するものである。
クラスター分類部12は、画像解析部11で算出された特徴量ベクトルを複数のクラスターに分類するものである。クラスター分類部12は、統計学的にクラスターを分類してもよいし、機械学習によってクラスターを分類してもよい。
クラスター分類部12は、機械学習によってクラスターを分類する場合には、入力層と中間層(隠れ層)と出力層を持ったニューラルネットワークを備えていることが好ましい。
係数計算部13は、クラスター分類部12で分類された各クラスターに対して評価係数を計算するものである。
確率計算部14は、評価対象の太陽電池パネル100の特徴量ベクトルが各クラスターに属する確率を算出するものである。
評価指数計算部15は、各クラスターに属する確率と、各クラスターに割り当てられた評価係数から評価指数を算出するものである。
データ記憶部16は、撮影した画像や画像処理された画像、各クラスター、各クラスターに割り当てられた評価係数、各クラスターに属する確率に関するデータを記憶するものである。
報知手段17は、光や音等によって使用者に所定の報知を行うものである。
【0030】
カメラ装置3は、太陽電池パネル100の受光面を撮影する撮影部である。
照明装置5は、太陽電池パネル100の受光面を照らす照明であり、具体的には、LED照明である。なお、照明装置5は、面状光源であって拡散光を照射する有機EL照明装置であってもよい。
【0031】
太陽電池パネル100は、片面に受光面を有した板状パネルであって、受光面で受光した光エネルギーを電気エネルギーに変換する光電変換パネルである。
太陽電池パネル100は、
図2のように、受光側電極層101と、裏面側電極層102と、受光側電極層101と裏面側電極層102でPN接合又はPIN接合を有した光電変換部103を挟んだ断面形状を有している。
電極層101,102は、それぞれ透明電極層105(105a,105b)上にバスバー電極部110(110a,110b)とフィンガー電極部111(111a,111b)を有している。
太陽電池パネル100は、平面視したときに、バスバー電極部110とフィンガー電極部111によって縦方向及び横方向において複数の小領域112に区画されている。
太陽電池パネル100は、結晶シリコン型太陽電池パネルであり、受光面に結晶シリコンの色が反映されるものである。すなわち、太陽電池パネル100は、外観上の特性が一定でなく、外観上、色にばらつきが生じて個体差がある。
【0032】
続いて、本実施形態の外観検査装置1を用いた太陽電池パネル100の評価方法について説明する。
【0033】
本実施形態の評価方法では、事前学習工程と、評価工程を実行するものであり、事前学習工程にて教師なし学習を行って学習モデル(クラスターモデル)を構築してから、学習結果に基づいて評価工程で評価するものである。
【0034】
まず、事前学習工程について
図5のフローチャートに基づいて説明する。
事前学習工程では、あらかじめランダムに抽出された多数(例えば、100個)の太陽電池パネル100(以下、基準太陽電池パネルともいう)を、
図3のように載置部120に載置し、基準太陽電池パネルの受光面をそれぞれカメラ装置3によって撮影する(ステップS1-1)。
このとき、載置部120は、基準太陽電池パネルの色によって影響を受けない色(例えば、白色)となっている。
また、載置部120は、載置台の天面で構成されていてもよいし、太陽電池パネル100を2つのエリア間を搬送する搬送装置の搬送面で構成されていてもよい。
【0035】
カメラ装置3によって撮影された画像を載置部120の色を基準として小領域112で区画して分類し(ステップS1-2)、各小領域112におけるエッジを抽出する(ステップS1-3)。
【0036】
小領域112ごとにN個の評価項目a1~aNによって評価してそれぞれ特徴量を算出し、それぞれの特徴量からN次元のベクトル空間(多次元ベクトル空間)における特徴量ベクトルA1~ANを算出していく(ステップS1-4)。そして、各小領域112における特徴量ベクトルA1~ANの合成ベクトルたる全体の特徴量ベクトルATotalを算出する(ステップS1-5)。
【0037】
本実施形態では、小領域112内の形状(評価項目a1)、小領域112内でのエッジで区画された部分の大きさ(評価項目a2)、小領域112内でのエッジで区画された部分の個数(評価項目a3)、小領域112内の色勾配(評価項目a4)、小領域112内の色平均(評価項目a5)、小領域112内の色分散(評価項目a6)、隣接する小領域112間での色の差(評価項目a7)、小領域112内で規定の輝度値範囲G1を満たすピクセルの数(評価項目a8)、小領域112内で規定の輝度値範囲G2を満たすピクセルの数(評価項目a9)、小領域112内で規定の輝度値範囲G3を満たすピクセルの数(評価項目a10)、の10個(N=10)の評価項目によって各小領域112をそれぞれ評価し、各小領域112において1行N(N=10)列の特徴量ベクトルA=(a1,a2,a3,a4,a5,a6,a7,a8,a9,a10)を算出する。
【0038】
各基準太陽電池パネルの特徴量ベクトルA
Totalにおいて、非階層的手法によってクラスター分析を行い(ステップS1-6)、S個のクラスターC1~CSに分類し、S個のクラスターのそれぞれに評価係数を割り当てて、各クラスターの属性と各評価係数をそれぞれ定義付けしたクラスターモデルを構築する(ステップS1-7)。
非階層的手法としては、例えばk平均法などが挙げられる。
また、クラスター数Sは、次元数N以下の値であり、任意の数でも計算により求められた数でもよい。
クラスター数Sは、例えば、エルボー法やシルエット法などの公知の計算手法により求めることができる。
本実施形態では、
図4のように、クラスター数Sは4であり、クラスターにはクラスターC1~C4があるものとして以下、説明する。
【0039】
続いて、評価対象の太陽電池パネル100(以下、評価太陽電池パネルともいう)を評価する評価工程を行う。なお、評価工程については
図6のフローチャートに基づいて説明する。
評価工程では、ステップS2-1からステップS2-5までの動作が事前学習工程のステップS1-1からステップS1-5までの動作と同様である。
【0040】
すなわち、評価太陽電池パネルを載置部120に載置し、評価太陽電池パネルの受光面をカメラ装置3によって撮影する(ステップS2-1)。
カメラ装置3によって撮影された画像を載置部120の色を基準として小領域112で区画して分類し(ステップS2-2)、各小領域112におけるエッジを抽出する(ステップS2-3)。
各小領域112においてN個の評価項目a1~aNによって評価してそれぞれ特徴量を算出し、それぞれの特徴量からN次元のベクトル空間における特徴量ベクトルA1~ANを算出していく(ステップS2-4)。そして、各小領域112における特徴量ベクトルA1~ANの合成ベクトルたる全体の特徴量ベクトルATotalを算出する(ステップS2-5)。
【0041】
続いて、評価太陽電池パネルの特徴量ベクトルATotalが各クラスターC1~C4に属する確率をそれぞれ算出する(ステップS2-6)。
すなわち、評価太陽電池パネルの特徴量ベクトルATotalからクラスターC1に属する確率P1、クラスターC2に属する確率P2、クラスターC3に属する確率P3、クラスターC4に属する確率P4、及びいずれのクラスターC1~C4にも属さない確率PTotalをそれぞれ統計処理により算出する。
【0042】
いずれのクラスターにも属さない確率PTotalが所定の基準値T1未満の場合には(ステップS2-7でYES)、各クラスターC1~C4に属する確率と各クラスターC1~C4のそれぞれに割り当てられた評価係数から、下記数式(1)によって評価太陽電池パネルの評価指数を算出する(ステップS2-8)。
【0043】
【数1】
Eは評価指数であり、P
iはクラスターCiに属する確率であり、X
i:クラスターCiに割り当てられた評価係数である。
【0044】
本実施形態では、評価指数がクラスター数Sを上回らないように評価係数が設定されている。各評価係数は、全てのクラスターで同じでもよいし、各クラスターで異なっていてもよい。
【0045】
このとき、所定の基準値T1は、50%超過100%以下の値であることが好ましく、70%以上90%以下の値であることがより好ましい。
【0046】
評価太陽電池パネルの評価指数が所定の基準範囲T2内の場合には(ステップS2-9でYES)、外観評価として正常と評価する(ステップS2-10)。
【0047】
このとき、所定の基準範囲T2は、0.4S以上0.9S以下の範囲であることが好ましく、0.5S以上0.8S以下の範囲であることがより好ましい。
本実施形態の場合、クラスター数が4であるから、本実施形態では、所定の基準範囲T2が1.6以上3.6以下の範囲であることが好ましい。
【0048】
ステップS2-9において、評価太陽電池パネルの評価指数が所定の基準範囲T2外の場合には(ステップS2-9でNO)、外観評価として異常と評価し(ステップS2-11)、異常である旨を報知手段17で報知する(ステップS2-12)。
【0049】
ステップS2-7において、評価太陽電池パネルがいずれのクラスターC1~C4にも属さない確率PTotalが所定の基準値T1以上の場合には(ステップS2-7でNO)、評価太陽電池パネルがいずれのクラスターC1~C4にも属さない新たなクラスターである旨を報知手段17で報知する(ステップS2-13)。
使用者は、報知手段17によって新たなクラスターである旨の報知を受けると、使用者が評価太陽電池パネルを評価し、クラスターの再構築が必要と判断して外観検査装置1に対してクラスターに関する定義を要求する。外観検査装置1は使用者から定義を要求されると(ステップS2-14でYES)、評価太陽電池パネルの特徴量ベクトルを中心座標とし、所定の半径Rにより規定されるN次元球中に、所定の密度Dに基づきランダム配置された座標点群からなる疑似クラスターを生成して、再度クラスター分析を行い(ステップS2-15)、クラスターを再規定したクラスターモデルを再構築する(ステップS2-16)。
ステップS2-14において、使用者がクラスターの再構築が必要ないと判断し、定義を要求しない場合には(ステップS2-14でNO)、クラスターモデルを変更せずに終了する。
【0050】
本実施形態の外観検査装置1によれば、複数成分を有した特徴量ベクトルのベクトル座標から外観異常を検査するため、外観上の特性が一定でなくても、外観異常を容易に検査でき、正確に判定できる。
【0051】
本実施形態の外観検査装置1によれば、画像から複数の特徴量を抽出して特徴量ベクトルを算出し、特徴量ベクトルを入力して学習及び評価に利用する。そのため、直接画像を入力して学習する場合に比べて、統計処理又は機械学習による計算負荷及び学習データ要求量を大幅に低減できる。また、検査対象の外観特性変動を反映する特徴量及び各種の外観異常の発生によって変動しうる特徴量を網羅的に抽出及び集積できる。
【0052】
本実施形態の外観検査装置1によれば、非階層的手法によってクラスターを分類するため、既存の分類に当てはまらない外観異常が発生した場合にも、確率に基づいて新しい異常として推定することが可能である。
【0053】
本実施形態の外観検査装置1によれば、出力された推定結果に対してフィードバックを行うことでモデルの応答的再学習も可能である。
【0054】
続いて、本発明の第2実施形態の外観検査装置について説明する。
【0055】
本発明の第2実施形態の外観検査装置は、複数の外観条件を設定し、基準太陽電池パネルとして、あらかじめ全ての外観条件を満たし正常と判断された正常基準太陽電池パネルと、複数の外観条件のうち少なくとも所定の外観条件を満たさず、所定の外観条件が支配的な要因として異常と判断された複数種類の異常基準太陽電池パネルを用意する。すなわち、過去の測定・評価によって正常とみなされた既知の正常基準太陽電池パネルと、過去の測定・評価によって異常の支配的な要因が既知の異常基準太陽電池パネルを用意する。
そして、第2実施形態の外観検査装置は、事前学習工程のステップS1-6において、各基準太陽電池パネルの特徴量ベクトルにおいて、階層的手法によってクラスター分析を行う(ステップS1-6)。
本実施形態では、複数の正常基準太陽電池パネルで構成される正常基準クラスターC1と、複数の異常基準太陽電池パネルで構成される異常基準クラスターC2~C4の4つのクラスターC1~C4に分類する。
異常基準クラスターC2~C4は、各外観条件で基準太陽電池パネルごとに割り当てて階層を形成している。
階層的手法としては、例えば、最短距離法や、最長距離法、メディアン法、群平均法、重心法、ウォード法、可変法などが挙げられる。
【0056】
また、外観条件としては、以下(A1)~(A14)のいずれかを含むことが好ましい。
(A1)電極部110,111を構成する導電性ペーストの印刷ズレ
(A2)チッピング
(A3)欠け
(A4)色むら
(A5)フィンガー電極部111の断線
(A6)電極部110,111を構成する導電性ペーストのムラ
(A7)透明電極層105の不形成部分
(A8)コンタミネーション
(A9)電極部110,111を構成する導電性ペーストの不形成部分
(A10)傷
(A11)バスバー電極部110の幅
(A12)粉
(A13)白濁汚れ
(A14)色
【0057】
また、本発明の第2実施形態の外観検査装置は、評価工程がステップS2-6まで第1実施形態の評価工程と同様であり、ステップS2-6以降の工程が異なる。
すなわち、
図7のように、評価工程のステップS2-6にて各クラスターにおける確率を算出し、正常基準クラスターに属する確率が正常基準値T3以上である場合には(ステップS3-7でYES)、外観評価として正常であると評価する(ステップS3-8)。
このとき、正常基準値T3は、50%以上100%未満の値であることが好ましく、70%以上90%以下の値であることがより好ましい。
【0058】
ステップS3-7において、正常基準クラスターに属する確率が正常基準値T3未満である場合には(ステップS3-7でNO)、カウンターnを1にし(ステップS3-9)、第n異常基準クラスターに属する確率を異常基準値T4と比較する(ステップS3-10)。
第n異常基準クラスターに属する確率が異常基準値T4以上の場合には(ステップS3-10でYES)、外観評価として異常であると評価し(ステップS3-11)、報知手段17で異常を報知する(ステップS3-12)。
このとき、異常基準値T4は、0%超過50%以下の値であることが好ましく、20%以上30%以下の値であることがより好ましい。
各第n異常基準クラスターにおける異常基準値T4は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
また各第n異常基準クラスターにおける異常基準値T4は、正常基準クラスターにおける正常基準値T3と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0059】
必要に応じて、異常と評価した評価太陽電池パネルが属する異常基準クラスターの支配的な外観条件であり、異常の原因と推定される外観条件を報知手段17で報知する(ステップS3-13)。
【0060】
ステップS3-10において、第n異常基準クラスターに属する確率が異常基準値T4未満の場合には(ステップS3-10でNO)、カウンターnが異常基準クラスターの数m(本実施形態では3)以上であるか判断し(ステップS3-14)、カウンターnが異常基準クラスターの数m以上である場合には(ステップS3-14でYES)、評価太陽電池パネルが新たなクラスターであることを報知手段17で報知する(ステップS3-15)。
使用者は、報知手段17によって新たなクラスターである旨の報知を受けると、使用者が評価太陽電池パネルを評価し、クラスターの再構築が必要と判断して外観検査装置1に対してクラスターに関する定義を要求する。外観検査装置1は使用者から定義を要求されると(ステップS3-16でYES)、評価太陽電池パネルの特徴量ベクトルを中心座標とし、所定の半径Rにより規定されるN次元球中に、所定の密度Dに基づきランダム配置された座標点群からなる疑似クラスターを生成して、再度クラスター分析を行い(ステップS3-17)、クラスターを再規定したクラスターモデルを再構築する(ステップS3-18)。
【0061】
ステップS3-14において、カウンターnが異常基準クラスターの数m未満である場合には(ステップS3-14でNO)、カウンターnをn+1にし(ステップS3-19)、ステップS3-10に移る。
【0062】
ステップS3-16において、使用者がクラスターの再構築が必要ないと判断し、定義を要求しない場合には(ステップS3-16でNO)、クラスターモデルを変更せずに終了する。
【0063】
本実施形態の外観検査装置によれば、外観条件ごとに異常基準クラスターを割り当てるため、異常の原因となる外観条件を特定しやすい。
【0064】
本実施形態の外観検査装置によれば、太陽電池パネル100の外観が正常である場合には、全てのクラスターに属する確率を算出する必要がないので、評価効率を向上できる。
【0065】
上記した実施形態では、太陽電池パネル100の受光面を撮影した1つの画像から外観評価を行ったが、本発明はこれに限定されるものではない。複数の画像から外観評価を行ってもよい。
【0066】
上記した実施形態では、画像からエッジを検出することによって小領域の境界を抽出したが、本発明はこれに限定されるものではない。画像における小領域の境界を抽出できる画像処理であれば、例えば、画像を2値化して小領域の境界を抽出してもよい。
【0067】
上記した実施形態では、バスバー電極部110とフィンガー電極部111によって区画された小領域112ごとに複数の特徴量を抽出したが、本発明はこれに限定されるものではない。所定の面積毎に複数の特徴量を抽出してもよく、例えば、画像を碁盤状に区画して各小領域で特徴量を抽出してもよい。
【0068】
上記した実施形態では、太陽電池パネル100の受光面に対して外観評価を行ったが、本発明はこれに限定されない。太陽電池パネル100に対してフレームや端子ボックス等を設けた太陽電池モジュール150の受光面に対して外観評価を行ってもよい。
この場合、小領域152は、
図8のように、太陽電池パネル100の縁とバスバー配線とに囲まれた領域とすることが好ましい。
【0069】
上記した実施形態では、太陽電池パネル100が結晶シリコン型太陽電池パネルである場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池パネル100は、薄膜型太陽電池パネルや化合物型太陽電池パネル、ペロブスカイト型太陽電池パネル、PERC型太陽電池パネル等の他の種類の太陽電池パネルであってもよい。
【0070】
上記した実施形態では、太陽電池パネル100は、受光面が片面にある片面受光型の太陽電池パネルであったが、受光面が両面にある両面受光型の太陽電池パネルであってもよい。この場合、両面を撮影し、外観検査を行うことが好ましい。
【0071】
上記した実施形態では、太陽電池パネル100は、両面に電極層101,102を有していたが、本発明はこれに限定されるものではない。太陽電池パネル100は、裏面にのみ電極層101,102を備えたバックコンタクト型の太陽電池パネルであってもよい。
【0072】
上記した第2実施形態では、正常の基準となる正常基準クラスターが一つの場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。正常基準クラスターが複数の場合には、各正常基準クラスターに属する確率と正常基準値を算出して外観評価を行ってもよい。
【0073】
上記した第2実施形態では、正常基準クラスターに属する確率を正常基準値T3と比較してから、各第n基準クラスターに属する確率を異常基準値T4と比較していたが、本発明はこれに限定されるものではない。各第n基準クラスターに属する確率を異常基準値T4と比較してから正常基準クラスターに属する確率を正常基準値T3と比較してもよい。
また、各第n基準クラスターに属する確率を異常基準値T4と比較する工程の間に正常基準クラスターに属する確率を正常基準値T3と比較する工程を行ってもよい。
【0074】
上記した実施形態は、本発明の技術的範囲に含まれる限り、各実施形態間で各構成部材を自由に置換や付加できる。
【符号の説明】
【0075】
1 外観検査装置
2 評価装置(評価部)
3 カメラ装置(画像取得部)
100 太陽電池パネル(太陽電池、基準太陽電池)
112,152 小領域
150 太陽電池モジュール(太陽電池、基準太陽電池)