(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】レジスタのダンパ機構
(51)【国際特許分類】
B60H 1/34 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B60H1/34 631
B60H1/34 611B
(21)【出願番号】P 2020200554
(22)【出願日】2020-12-02
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】308016242
【氏名又は名称】豊和化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】永田 昌之
【審査官】塩田 匠
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-106352(JP,A)
【文献】特開2004-245488(JP,A)
【文献】特開2011-016513(JP,A)
【文献】実開平01-140447(JP,U)
【文献】特開2017-193228(JP,A)
【文献】特開2008-169911(JP,A)
【文献】特開平01-163551(JP,A)
【文献】実開昭61-027035(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0126824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
通風路を内側に設けた筒状のリテーナと、
該リテーナ内に回動可能に設置され、該通風路の送風量を調整する或は該通風路を閉鎖するダンパプレートと、
該リテーナの外側から挿入されダンパプレートを支持する支持軸部材と、
を備えたレジスタのダンパ機構であって、
該ダンパプレートは、一端側に、該リテーナに対して回動可能な軸支部を有し、該ダンパプレートの他端側には、該支持軸部材の嵌着掛止部が嵌着する嵌着部が設けられ、
該リテーナは、横断方向に向かい合う側壁の一方側に、該ダンパプレートの該軸支部を枢支する軸孔が設けられ、該側壁の他方側に、該支持軸部材を枢支する孔部が設けられ、
該ダンパプレートの該軸支部が該リテーナの該軸孔に枢支され、該支持軸部材の該嵌着掛止部が該リテーナの該孔部に外側から挿入され該ダンパプレートの該嵌着部に嵌着されて、該支持軸部材が該孔部に枢支され、
該支持軸部材は、
該リテーナの該孔部に枢支される円筒状の環状本体部と、該環状本体部の外側に設けられたフランジ部と、該フランジ部から突設する弾性アーム部と、を備え、
該フランジ部の外周部に、該弾性アーム部の基点となる基点部が半径方向に突設され、該弾性アーム部は、該基点部から、該支持軸部材の半径方向外側の周方向に沿って、該支持軸部材の軸方向に弾性変形可能
に設けられ、該弾性アーム部の先端に、該側壁の外側に弾性をもって当接する当接部が設けられ、
該嵌着掛止部、
該環状本体部、該弾性アーム部及び該当接部を含む
該支持軸部材が一体に形成されたことを特徴とするレジスタのダンパ機構。
【請求項2】
前記
周方向に沿って前記弾性アーム部が複数本配置され、前記当接部が
該周方向に沿った円周上に等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレジスタのダンパ機構。
【請求項3】
前記弾性アーム部は3本
が配置され、前記当接部が120度の角度間隔で配置されることを特徴とする請求項2に記載のレジスタのダンパ機構。
【請求項4】
前記基点部は2つが120度の角度間隔で配置され、一方の該基点部には外角側に前記弾性アーム部が配置され、他方の該基点部には外角側と内角側のそれぞれに該弾性アーム部が配置されることを特徴とする請求項3に記載のレジスタのダンパ機構。
【請求項5】
前記側壁に、前記支持軸部材の回動時に、前記当接部が当接し摺動する摺動溝が周方向に沿って設けられたことを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載のレジスタのダンパ機構。
【請求項6】
前記当接部の先端は半球状に形成され、前記摺動溝は該摺動溝の底部から外側に向けて拡開することを特徴とする請求項5に記載のレジスタのダンパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車室内等の換気や空調の空気吹出口に使用されるレジスタにおいて、通風路の送風量を調整する或は通風路を閉鎖するダンパプレートを開閉可能に支持するダンパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用の空調用レジスタとして、風向等を調整するためにベゼル内に横可動ルーバと縦可動ルーバを配設し、その可動ルーバを設けた通風路の上流側(後側)に、通風路の送風量を調整する或は通風路を閉鎖するダンパプレートが開閉可能に設けられたレジスタが、使用されている。
【0003】
このレジスタで使用されるダンパプレートは、例えば、
図15に示すように、ダンパプレート41の左右方向に回動軸を有し、通風路22となるリテーナ21の左右の一端部側(L側)の軸孔23と他端部側(R側)の大径の孔部31とに軸支され、通風路22に対して開閉可能に設けられている。リテーナ21の左右の他端部側は、アーム状のレバー部52を有した大径の支持軸部材51がリテーナ21の外側から大径の孔部31に嵌入され、ダンパプレート41の左右の他端部側の嵌着部に嵌着し、支持軸部材51がリテーナ21に対して回動可能に軸支される。これにより、ダンパプレート41がリテーナ21に対して回動可能となる構造となっている。
【0004】
レジスタは、手動操作用のダイヤルノブ44がリテーナ21の前面側部に枢支され、そのダイヤルノブ44の後部側に設けたレバーリンク部44aに、リンク部材45を介して、支持軸部材51のアーム状のレバー部52が連結され、ダイヤルノブ44の操作によりダンパプレート41を回動させて、通風路22の送風量を調整する或は通風路22を閉鎖するように構成されている。
【0005】
支持軸部材51はリテーナの側壁に設けた孔部31に嵌入されるため、孔部31と支持軸部材51との間に、隙間が生じる。この隙間は、各部品の寸法公差範囲内での誤差に応じてばらつきが生じる。この隙間が大きいと、ダンパプレートが通風路22を開いた状態において、空気流により軸振動が発生しやすく異音が発生しやすい。
【0006】
このような異音を防止するために、
図15に示す如く、ダンパプレート41を支持する支持軸部材51に、支持軸部材51を付勢する金属ピン101を当接させ、ダンパプレート41の摺動部の隙間による“あそび”を小さくすることにより、ダンパプレート41の軸振動を抑えて異音を防止するようにしたレジスタが、下記特許文献1で知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載されたレジスタは、支持軸部材の付勢に、金属ピンを独立した部品として使用しているため、部品数が増し、レジスタの組み付け時の組み付け作業性が悪く、また、製造コストが嵩むという課題があった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、部品数を削減し、組み付け作業性を改善し、製造コストを抑制し、かつ、ダンパプレートの軸振動を抑えて異音の発生を防止することができるレジスタのダンパ機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るレジスタのダンパ機構は、通風路を内側に設けた筒状のリテーナと、
該リテーナ内に回動可能に設置され、該通風路の送風量を調整する或は該通風路を閉鎖するダンパプレートと、
該リテーナの外側から挿入されダンパプレートを支持する支持軸部材と、
を備えたレジスタのダンパ機構であって、
該ダンパプレートは、一端側に、該リテーナに対して回動可能な軸支部を有し、該ダンパプレートの他端側には、該支持軸部材の嵌着掛止部が嵌着する嵌着部が設けられ、
該リテーナは、横断方向に向かい合う側壁の一方側に、該ダンパプレートの該軸支部を枢支する軸孔が設けられ、該側壁の他方側に、該支持軸部材を枢支する孔部が設けられ、
該ダンパプレートの該軸支部が該リテーナの該軸孔に枢支され、該支持軸部材の該嵌着掛止部が該リテーナの該孔部に外側から挿入され該ダンパプレートの該嵌着部に嵌着されて、該支持軸部材が該孔部に枢支され、
該支持軸部材は、該支持軸部材の軸方向に弾性変形可能な弾性アーム部を備え、該弾性アーム部の先端に、該側壁の外側に弾性をもって当接する当接部が設けられ、該嵌着掛止部、該弾性アーム部及び該当接部を含む支持軸部材が一体に形成されたことを特徴とする。
【0011】
この発明のレジスタのダンパ機構によれば、支持軸部材の弾性アーム部の先端の当接部が側壁を外側から軸方向に弾性をもって当接するため、支持軸部材とこれに嵌着したダンパプレートは、常に軸方向に付勢される。このため、ダンパプレートの軸振動を抑えて異音の発生を防止することができる。また、嵌着掛止部、弾性アーム部及び当接部を含む支持軸部材が一体に形成されているため、ダンパ機構は、部品数を削減し、組み付け作業性を改善し、製造コストを抑制することができる。
【0012】
また、上記レジスタのダンパ機構において、前記支持軸部材の環状本体部の周囲に、前記弾性アーム部が複数本配置され、前記当接部が前記支持軸部材の中心軸を中心とする円周上に等間隔で設けられている構成とすることができる。
【0013】
これによれば、複数の弾性アーム部の当接部が、支持軸部材の中心軸を中心とする円周上に等間隔で設けられているため、支持軸部材及びダンパプレートを軸方向にバランス良く付勢することができる。
【0014】
また、上記レジスタのダンパ機構において、前記弾性アーム部が前記中心軸を中心とする前記円周上に沿って設けられている構成とすることができる。
【0015】
これによれば、弾性アーム部が、中心軸を中心とする円周上に沿って設けられているため、支持軸部材をコンパクトなものにすることができる。
【0016】
また、上記レジスタのダンパ機構において、前記弾性アーム部は3本が前記支持軸部材の周囲に配置され、前記当接部が120度の角度間隔で配置されることが好ましい。
【0017】
これによれば、最少のアーム数で支持軸部材を軸方向にバランス良く安定して付勢することができる。
【0018】
また、上記レジスタのダンパ機構において、前記側壁に、前記支持軸部材の回動時に、前記当接部が当接し摺動する摺動溝が周方向に沿って設けられた構成とすることができる。
【0019】
これによれば、当接部が摺動溝にガイドされて摺動するため、ダンパプレートの回動がスムーズに保持される。
【0020】
また、上記レジスタのダンパ機構において、前記当接部の先端は半球状に形成され、前記摺動溝は該摺動溝の底部から外側に向けて拡開する構成とすることができる。
【0021】
これによれば、当接部が摺動溝に点接触するため、ダンパプレートの回動操作をスムーズにすることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明のレジスタのダンパ機構によれば、製造コストを抑制し、かつ、ダンパプレートの軸振動を抑えて異音の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態のレジスタの正面図である。
【
図5】ダンパプレートの平面図(A)、その正面図(B)、その右上前方からの斜視図(C)、Cの部分拡大図(D)である。
【
図6】支持軸部材の右側面図(A)、その左側面図(B)、その左側からの斜視図(C)、その右側からの斜視図(D)である。
【
図8】ダンパを開いた状態のレジスタの右側面図(A)、同じ状態の
図1のVIII-VIII線断面図(B)である。
【
図9】ダンパを閉じた状態のレジスタの右側面図(A)、同じ状態の
図1のIX-IX線断面図(B)である。
【
図10】ダンパを閉じた状態の
図2のX-X線断面図(A)、Aの部分拡大図(B)である。
【
図11】支持軸部材、孔部及び摺動溝の部分拡大図である。
【
図12】
図11のXII-XII線断面図(A)、Aの部分拡大図(B)である。
【
図13】その他実施形態の
図11のXIII-XIII線断面図の部分拡大図である。
【
図14】その他実施形態の支持軸部材の右側面図(A、B、C)である。
【
図15】従来のレジスタの後方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~12は、実施形態のレジスタを示しており、
図8B及び
図9Bに示すように、このレジスタは、調整された空気の吹出口としてのベゼル19の後側のリテーナ21内に、風向等を調整するための縦可動の前可動ルーバ11と横可動の後可動ルーバ16を配設し、後可動ルーバ16の後側に、通風路22の送風量を調整する或は通風路22を閉鎖するダンパプレート41を開閉可能に支持するダンパ機構を備えている。なお、本明細書において、レジスタの向きは、
図3及び
図4に示すように、ベゼル19を有する側を前とし、リテーナ21内の通風路22の空気吸入口22a側を後とする。上下左右は、レジスタを前側から見た際の上下左右とし、図示で使用する、Fは前、Bは後、Uは上、Dは下、Lは左、Rは右を示す。また、リテーナ21を基準に、内側又は外側と表現することがある。
【0025】
図4及び
図7に示すように、レジスタの筐体となるリテーナ21は、内側に通風路22を設けた略角筒状の筐体であり、前側に、風向等を調整するための前可動ルーバ11と後可動ルーバ16を収容するルーバ収容部21cが設けられ、後側に、ダンパ機構を備えるための軸孔23と孔部31が設けられている。軸孔23は、リテーナ21の左右方向に向かい合う側壁の一方側の左側壁21aに設けられ、後述するダンパプレート41の軸支部42を回動可能に支持する。孔部31は、側壁の他方側の右側壁21bに設けられ、レバー部52を有した大径の支持軸部材51が、外側からこの孔部31に回動可能に嵌入され、ダンパプレート41の他端部に設けられた嵌着部43(
図5)に、支持軸部材51の嵌着掛止部54が嵌着される。これにより、
図10に示す如く、ダンパプレート41は、軸支部42と支持軸部材51とが、リテーナ21の両側の側壁(左側壁21a及び右側壁21b)の軸孔23と孔部31とに回動可能に支持され、支持軸部材51と共に回動可能に支持される。
【0026】
図5、
図8B、
図9B及び
図10に示すように、ダンパプレート41は、通風路22を閉鎖可能な板状に形成され、周縁部にスポンジゴム等の可とう性シートからなるシール材41aが取着される。
図4及び
図10に示すように、ダンパプレート41は、一端側としての左側に、リテーナ21の軸孔23に対して回動可能に支持される軸支部42を有し、他端側としての右側に、支持軸部材51の嵌着掛止部54と嵌着する嵌着部43を有している。支持軸部材51の環状本体部53がリテーナ21の孔部31に回動可能に嵌入され、軸支部42が軸孔23に回動可能に支持されるため、ダンパプレート41は、リテーナ21に対して回動可能に支持され、
図8B及び
図9Bに示す如く、通風路22を開放及び閉塞可能としている。
【0027】
支持軸部材51は、
図6に示すように、リテーナ21の孔部31に枢支される円筒状の環状本体部53と、環状本体部53の外側に設けられたフランジ部53aと、フランジ部53aから突設する弾性アーム部55と、環状本体部53の内側に設けられた嵌着掛止部54と、環状本体部53から外側に突設されたレバー部基部57と、レバー部基部57から半径方向に突設されたレバー部52と、から構成されている。
【0028】
レバー部52は、ダイヤルノブ44からの回動操作をリンク機構によって回動を受けて、支持軸部材51と支持軸部材51に嵌着されたダンパプレートを回動させる突起であり、先端が左右に分かれ、リンク部材45の先端の連結球体45aを回動可能に挟持するように構成されている。レバー部52は、環状本体部53から外側(右側)に突設したレバー部基部57の外側(右側)端部から、半径方向に突設し、レバー部基部57には、撓みを防ぐため、補強リブ57aが設けられている。
【0029】
図6Aに示すように、環状本体部53のフランジ部53aの外周部に、弾性アーム部55の基点となる2個の基点部55aが120度の角度間隔で半径方向に突設されている。2個の基点部55aから、環状本体部53の半径方向外側の周方向に沿って、中心軸CA方向に弾性変形可能な弾性アーム部55が3本配置され、各弾性アーム部55の先端の内側(左側)に、リテーナ21に弾性をもって当接する半球状の当接部56が3個、中心軸CAを中心に角度αとして120度の角度間隔で設けられている。3本の弾性アーム部55は、各々、同じ大きさ、形状に形成され、同じ弾性力が生じるように形成されている。当接部56がリテーナ21に弾性をもって当接したとき、支持軸部材51とダンパプレート41は、この弾性力により、リテーナ21の外側(右側)に付勢される。このため、実施形態のレジスタは、ダンパプレート41の軸振動が抑えられて異音の発生を防止することができる。
【0030】
弾性アーム部55は、
図6Aにおいて、レバー部52から時計回り方向に位置する基点部55aから、反時計回り方向の周方向に沿って延びるように1本が設けられ、レバー部52から反時計回り方向に位置する基点部55aから、時計回り方向と反時計回り方向のそれぞれの周方向に沿って延びるように2本が設けられている。弾性アーム部55は、それぞれ、環状本体部53の中心軸CAからの角度で60度の周方向の角度まで延び、弾性アーム部55の先端内側(左側)に、リテーナ21に弾性をもって当接する当接部56がそれぞれ設けられている。つまり、
図6Aに示す如く、3本の弾性アーム部55が同じ弾性力が生じるように形成され、3個の当接部56は、環状本体部53の中心軸CAを中心に、角度αとして120度の角度間隔で配置されている。これにより、支持軸部材51は、弾性アーム部55の数を最少にして、支持軸部材51を軸方向にバランス良く安定して付勢することができる。
【0031】
図7、
図11及び
図12に示すように、リテーナ21の右側壁21bの孔部31の外周の周方向に沿って、支持軸部材51(ダンパプレート41)の回動時に当接部56が当接し摺動する、摺動溝32が設けられている。摺動溝32が設けられ、当接部56が摺動溝32にガイドされて摺動するため、支持軸部材51(ダンパプレート41)のラジアル方向の振動が抑制され、その回動がスムーズに行われる。
【0032】
摺動溝32は、
図12に示すように、その横断面が、左側の底部32aと、底部32aから外側(右側)に向けて拡開するように傾斜した両側の側壁となる傾斜面32bと、を有して形成される。摺動溝32が底部32aと外側に向けて拡開するように傾斜した傾斜面32bとを有し、
図12Bに示す如く、摺動する当接部56は、底部32a及び/又は両傾斜面32bに点で接触して摺動するため、スムーズな摺動を行なうことができ、また、支持軸部材51のラジアル方向の振動やがたつきが抑制される。
【0033】
ダンパプレート41の回動による通風路22の開閉は、
図3、
図8A及び
図9Aに示すように、ベゼル19の右端部側に設けられたダイヤルノブ44を回動させることによって行なう。ダイヤルノブ44は、リテーナ21の右側壁21bの外側に設けられたノブ支軸24に回動可能に組み付けられ、その形状は、略円形枠状に形成され、後方側に、レバーリンク部44aが突設されている。レバーリンク部44aの先端には、ダイヤルノブの回動をダンパプレート41に伝えるリンク部材45が連結され、リンク部材45の他端はダンパプレート41の支持軸部材51のレバー部52と連結される。リンク部材45の両端部には、それぞれ球状の連結球体45aを備え、支持軸部材51のレバー部52の先端は、左右に分かれ、連結球体45aを回動可能に挟持する挟持部52aを備え、挟持部52aが連結球体45aを挟持することにより、リンク部材45はレバー部52と連結される。また、ダイヤルノブ44のレバーリンク部44aの先端は、左右に分かれ、連結球体45aを回動可能に挟持する挟持部44bを備え、挟持部44bが連結球体45aを挟持することにより、リンク部材45はレバーリンク部44aと連結される。これにより、ダイヤルノブ44を回動操作したとき、レバーリンク部44a、リンク部材45、及びレバー部52を介して、ダンパプレート41が回動し、通風路22を開閉する構造となっている(
図8、
図9)。
【0034】
当接部56が弾性アーム部55の弾性によってリテーナ21を付勢するため、支持軸部材51とダンパプレート41は、リテーナ21の外側(右側)に付勢され、ダンパプレート41がリテーナ21の内側に当接する。
図5及び
図10に示すように、リテーナ21の内側に当接するダンパプレート41の部分に、突起状の当接部41bが設けられている。当接部41bが設けられていることにより、ダンパプレート41は、リテーナ21の内側に、突起状の当接部41bが当接する。このため、ダンパプレート41は、リテーナ21の内側に点接触するため、ダンパプレート41の回動操作をスムーズにすることができる。
【0035】
図4に示すように、リテーナ21前部のベゼル19とダンパプレート41(ダンパ機構)との間のルーバ収容部21cに、風向等を調整するための縦可動の前可動ルーバ11と横可動の後可動ルーバ16が配設される。
【0036】
前可動ルーバ11は、3本の前フィン12を略横方向(水平方向)に間隔をおいて配置し、各前フィン12は、左右に配設した軸受部に対し、両側の軸を介して回動可能に保持される。各前フィン12の一端に突設された偏心軸には、1本のリンクバー13が連結され、全ての前フィン12が同期してその向きを上下に変え得る構造となっている。中央の前フィン12には、スライドノブ14が左右に摺動可能に外嵌され、スライドノブ14に指を当てて前可動ルーバ11を上下に傾動させるとともに、左右方向にスライドさせて、後述の後可動ルーバ16を左右に傾動させるようになっている。
【0037】
後可動ルーバ16は、
図4に示す如く、5本の後フィン17を縦方向に、間隔をおいて配置し、各後フィン17は上下に配設した軸受部に対し、上下の軸を介して回動可能に保持される。また、各後フィン17の一端に突設された偏心軸に、1本のリンクバー18が連結され、全ての後フィン17が同期してその向きを左右に変え得る構造となっている。
【0038】
後可動ルーバ16には、1本の後フィン17の前部に、係合軸部や歯車部などの連係部が設けられ、スライドノブ14の後部に設けた係合脚部、ラック部などの被連係部と係合し、スライドノブ14を左右方向に摺動させたとき、後可動ルーバ16の後フィン17の向きを左右に調整する構造となっている。
【0039】
これにより、スライドノブ14は、その上下の回動操作により、前可動ルーバ11の各前フィン12の向きを上または下に調整し、スライドノブ14の左右方向の摺動操作により、係合部を介して後可動ルーバ16の後フィン17の左右方向を左または右に調整する。
【0040】
レジスタの組み立て時、ダンパプレート41は、
図4に示す如く、リテーナ21の通風路22内に、その端部に設けた軸支部42を内側から嵌めるように挿入され、リテーナ21の右側壁21bの孔部31外側から、支持軸部材51の嵌着掛止部54を挿入し、ダンパプレート41の嵌着部43に嵌着させて、ダンパプレート41が通風路22内に取り付けられる。これにより、ダンパプレート41は、軸支部42と支持軸部材51とによって、通風路22内で通風路22を開閉可能に軸支される。
【0041】
ダンパプレート41が通風路22内に取り付けられたとき、支持軸部材51の弾性アーム部55は、先端の当接部56がリテーナ21の摺動溝32に当接し、支持軸部材51とダンパプレート41を、中心軸CA方向の右側に常に付勢する。摺動溝32は、
図12Bに示すように、その横断面が、左側の底部32aと、底部32aから外側(右側)に向けて拡開するように傾斜した両側の側壁となる傾斜面32bと、を有して形成される。摺動する当接部56は、底部32a及び/又は両傾斜面32bに点で接触して摺動するため、スムーズな摺動を行なうことができ、また、支持軸部材51のラジアル方向の振動やがたつきが抑制される。また、支持軸部材51が、嵌着掛止部54、弾性アーム部55及び当接部56を含めて一体に形成されているため、ダンパ機構は、部品数が削減され、組み付け作業性が改善され、製造コストが抑制されたものとなる。
【0042】
図3及び
図4に示すように、ダイヤルノブ44をリテーナ21の外側に設けられたノブ支軸24に取り付ける。次に、ダイヤルノブ44のレバーリンク部44aの左右に分かれた挟持部44bに、リンク部材45の一方の連結球体45aを回動可能に挟持させ、支持軸部材51のレバー部52の左右に分かれた挟持部52aに、リンク部材45の他方の連結球体45aを回動可能に挟持させる。これにより、ダイヤルノブ44のレバーリンク部44aとダンパプレート41の支持軸部材51のレバー部52との間に、リンク部材45が連結される。リンク部材45が連結されることにより、
図9に示すように、ダイヤルノブ44を下側に回動させたとき、ダンパプレート41が通風路22を閉鎖するように回動し、
図8に示すように、ダイヤルノブ44を上側に回動させたとき、ダンパプレート41が通風路22を開放するように回動する。
【0043】
上記構成のダンパ機構を備えたレジスタは、自動車の車内のインストルメントパネルやダッシュボードの部分に、そのリテーナ21の末端を図示しない通風ダクトに接続するようにして装着される。通風ダクトから送られる空気は、リテーナ21内の通風路22からベゼル19の空気吹出口を通して吹き出される。
【0044】
空気の吹出向きを上または下に調整する場合、スライドノブ14を上または下に操作すると、前可動ルーバ11の前フィン12が回動して、その向きが上下に変化し、空気の吹出方向が上下に調整される。
【0045】
空気の吹出向きを左右に調整する場合、スライドノブ14を右または左に摺動操作すると、後可動ルーバ16の後フィン17が、その上下の回動軸を軸に回動し、その左右の向きが所定の角度範囲で変化し、空気の吹出方向が左右に調整される。
【0046】
送風を止めまたは送風量を絞り或は増大させるため通風路22を開く場合、ベゼル19の正面右側のダイヤルノブ44を指などで上または下に押して回動させる。このとき、ダイヤルノブ44は中心軸CAを軸に回動し、レバーリンク部44a、リンク部材45、レバー部52及び支持軸部材51を介して、ダンパプレート41が回動し、通風路22を開閉する(
図8、
図9)。
【0047】
ダンパプレート41は、連結された支持軸部材51の弾性アーム部55の先端の当接部56がリテーナ21の摺動溝32に当接することによって、中心軸CA方向の右側に常に付勢される。このため、ダンパプレート41の軸振動が抑えられ、異音の発生が抑制される。リテーナ21の右側壁21bの孔部31の外周の周方向に沿って、当接部56が当接し摺動する摺動溝32が設けられているため、回動時に摺動する当接部56は、摺動溝32にガイドされ、摺動溝32に点で接触して摺動するため、ダンパプレート41の回動をスムーズに行うことができる。
【0048】
なお、実施形態のレジスタのダンパ機構は、その他実施形態として、以下のような形態であってもその実施をすることができる。
【0049】
実施形態のダンパ機構ではリテーナ21の形状は角筒状の筐体としたが、リテーナ21の形状を円筒状の筐体とすることもできる。この場合、ダンパプレート41の形状は円板状とし、ベゼル19又は空気吹出口の形状は円形とすることができる。
【0050】
実施形態のダンパ機構では当接部56の先端の形状は半球状としたが、
図13に示すような円錐状や多角錐状とすることもできる。
【0051】
実施形態のダンパ機構では支持軸部材51のレバー部52は、連結球体45aを挟持部52aが回動可能に挟持することにより、リンク部材45と連結させたが、レバー部52は、をピン受穴52b(
図14A)にリンク部材45から突設したピン部45b(
図15)を回動可能に嵌入させることにより、リンク部材45と連結させることもできる。これは、ダイヤルノブ44を回動させることにより、リンク部材45を介して支持軸部材51(ダンパプレート41)を回動させる、3部材リンク方式である。
【0052】
また、支持軸部材51のレバー部52は、
図14Bに示すように、中心軸CAから略半径方向に延びる溝穴52cを、ダイヤルノブ44から突設したピン部(図示せず)に摺動可能に嵌入させることにより、ダイヤルノブ44と連結させることもできる。これは、ダイヤルノブ44を回動させることにより、リンク部材45を介さず支持軸部材51(ダンパプレート41)を回動させる、2部材リンク方式である。
【0053】
また、支持軸部材51のレバー部52は、
図14Cに示すように、レバー部52が歯車52dを備え、歯車52dが、ダイヤルノブ44と連動して回動する中間歯車(図示せず)又はダイヤルノブ44の備えられた歯車(図示せず)と、噛み合うことにより、中間歯車又はダイヤルノブ44と連結させることもできる。歯車52dを備えるレバー部52では、中間歯車と連結させた場合には3部材リンク方式となり、ダイヤルノブ44と連結させた場合には2部材リンク方式となる。
【符号の説明】
【0054】
11…前可動ルーバ、12…前フィン、13…リンクバー、14…スライドノブ、16…後可動ルーバ、17…後フィン、18…リンクバー、19…ベゼル、21…リテーナ、21a…左側壁、21b…右側壁、21c…ルーバ収容部、22…通風路、22a…空気吸入口、23…軸孔、24…ノブ支軸、31…孔部、32…摺動溝、32a…底部、32b…傾斜面、41…ダンパプレート、41a…シール材、41b…当接部、42…軸支部、43…嵌着部、44…ダイヤルノブ、44a…レバーリンク部、44b…挟持部、45…リンク部材、45a…連結球体、45b…ピン部、51…支持軸部材、52…レバー部、52a…挟持部、52b…ピン受穴、52c…溝穴、52d…歯車、53…環状本体部、54…嵌着掛止部、55…弾性アーム部、55a…基点部、56…当接部、57…レバー部基部、57a…補強リブ、101…金属ピン、CA…中心軸、α…角度。