(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】スパウトおよびスパウト付き袋容器
(51)【国際特許分類】
B65D 25/42 20060101AFI20241023BHJP
B65D 33/38 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B65D25/42 B
B65D33/38
(21)【出願番号】P 2020207393
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2023-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】溝上 彩香
(72)【発明者】
【氏名】八島 昇
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-246182(JP,A)
【文献】特開2013-241197(JP,A)
【文献】特開2015-048143(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02371732(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/42
B65D 33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容液が収容される容器に取り付けられ、前記内容液の流路を形成し、前記内容液の液漏れ防止機構を備えるスパウトであって、
前記液漏れ防止機構は、
加えられる圧力に応じて前記内容液の注出方向へ変位して、前記内容液の流路を形成する可動弁と、
前記注出方向に対して、前記可動弁の注出方向上流側に配置される、環状の閉鎖部と、
前記可動弁を内部に収容し、保持する筒状のホルダと、
を有し、
前記ホルダは、内周面の少なくとも一部に、前記可動弁を所定位置に位置決めするフランジ部を有しており、
前記閉鎖部により、前記可動弁に対して前記圧力が加えられておらず、変位していない状態において設けられている隙間が閉鎖され、
加えられる前記圧力は、前記スパウトの外部から前記可動弁に加えられる負圧または前記容器の内部から前記可動弁に加えられる正圧である、スパウト。
【請求項2】
内容液が収容される容器に取り付けられ、前記内容液の流路を形成し、前記内容液の液漏れ防止機構を備えるスパウトであって、
前記液漏れ防止機構は、
加えられる圧力に応じて前記内容液の注出方向へ変位して、前記内容液の流路を形成する可動弁と、
前記注出方向に対して、前記可動弁の注出方向上流側に配置される、環状の閉鎖部と、
を有し、
前記可動弁は、
前記圧力に応じて、前記内容液の前記注出方向へ変位する中央弁体と、
前記中央弁体と前記可動弁の周縁部とを接続し、支持する少なくとも1つの接続支持部と、
を有し、
前記中央弁体は、前記接続支持部の弾性領域の範囲内で変位し、
前記可動弁の前記注出方向側に配置され、前記中央弁体の変位を規制する位置規制部をさらに備え、
前記可動弁を内部に収容し、保持する筒状のホルダを有し、
前記ホルダは、内周面の少なくとも一部に、前記位置規制部を所定位置に位置決めするフランジ部を有しており、
前記閉鎖部により、前記可動弁に対して前記圧力が加えられておらず、変位していない状態において設けられている隙間が閉鎖され、
加えられる前記圧力は、前記スパウトの外部から前記可動弁に加えられる負圧または前記容器の内部から前記可動弁に加えられる正圧である、スパウト。
【請求項3】
前記閉鎖部は、前記注出方向側に延設する凸部を有する、請求項1
または2に記載のスパウト。
【請求項4】
前記スパウトに装着されて前記スパウトの注出口を封止する封止面部を有するキャップであって、前記封止面部の内側表面から下方に向けて延伸された弁体抑え部材を有し、前記スパウトに装着された状態において、前記中央弁体の前記注出方向への移動を規制する、請求項
2に記載のスパウト。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のスパウトを備えたスパウト付き袋容器。
【請求項6】
前記袋容器は、スタンディングパウチ、ボトル形状パウチ、バッグインボックスまたは紙パックである請求項
5に記載のスパウト付き袋容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウトに関し、特に、内容液の液漏れ防止機構を備えるスパウトに関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、包装袋から容器へ内容物を注ぐ際に、傾けた包装袋から内容物が勢いよく飛び出すのを防止するために、内容物の注出方向へのみ変位可能な可動弁(逆止弁)を備えた流路形成部材(スパウト)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のスパウトでは、被詰替え容器に内容液を充填するために、袋容器を持ち上げて傾けた瞬間から、内容液が流れ出てしまう。そのため、袋容器をうまく移動させられない場合には、被詰替え容器を内容液で汚してしまう可能性があった。また、ユーザが、袋容器の胴部を強く握った場合も、内容液が袋容器から溢れ出てしまうこととなり、同様に、周りを汚してしまう可能性があった。
【0005】
したがって、本発明は、被詰替え容器の内容液を詰め替える際に、袋容器からの液漏れを防止できるスパウトに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、内容液が収容される容器に取り付けられ、前記内容液の流路を形成し、前記内容液の液漏れ防止機構を備えるスパウトであって、前記液漏れ防止機構は、加えられる圧力に応じて前記内容液の注出方向へ変位して、前記内容液の流路を形成する可動弁と、前記注出方向に対して、前記可動弁の注出方向上流側に配置される、環状の閉鎖部と、を有し、前記閉鎖部により、前記可動弁に対して前記圧力が加えられておらず、変位していない状態において設けられている隙間が閉鎖され、加えられる前記圧力は、前記スパウトの外部から前記可動弁に加えられる負圧または前記容器の内部から前記可動弁に加えられる正圧である、スパウトに関する。
【0007】
また、本発明は、上記スパウトを備えたスパウト付き袋容器に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のスパウトによれば、内容液の詰め替え時の液漏れを防ぐことができる。また、本発明のスパウトによれば、内装容器に取り付けられる注出口を外装容器に設けられた注出口係止用の係止部に簡易、正確に位置合わせすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るスパウトの(a)流路形成前の断面図、(b)流路形成後の断面図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るスパウトの(a)斜視図、(b)上面図、(c)側面図、(d)底面図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るスパウトのホルダの(a)斜視図、(b)上面図、(c)側面図、(d)A-A断面図、(e)底面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るスパウトの可動弁の(a)底面側から見た斜視図、(b)底面図、(c)側面図、(d)A-A断面図、(e)上面図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るスパウトのキャップ部の(a)斜視図、(b)側面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るスパウトの(a)流路形成前の断面図、(b)流路形成後の断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るスパウトが取り付けられる容器の一例を示す(a)~(d)斜視図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るスパウトに取り付け可能な注出部の一例を示す(a)~(b)側面図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係るスパウトの(a)流路形成前の断面図、(b)流路形成後の断面図である。
【
図10】本発明の第2実施形態に係るスパウトの位置規制部の(a)斜視図、(b)側面図、(c)上面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るスパウトの(a)流路形成前の断面図、(b)流路形成後の断面図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るスパウトの位置規制部の(a)斜視図、(b)側面図、(c)上面図、(d)底面図である。
【
図13】本発明の第3実施形態に係るスパウトの流路形成前の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1実施形態]
次に本発明の第1実施形態に係るスパウトについて、
図1~
図8を参照して説明する。スパウト20は、基部20a、雄ネジ部20b、筒部20c及び開口部20dを有する。筒部20cは、基部20aから注出方向22へ向けて立設する円筒形状の部材であり、スパウト20の胴部に相当する。筒部20cの外周面の注出方向22の下流側には、2条の雄ネジ部20bが設けられているが、条数はこれには限定されない。スパウト20は、例えば、袋状の容器(袋容器)の注出部分に取り付けられ、袋状の容器に収容された内容液などを注出するための流路を形成する部材である。開口部20dは、内容液の注出口となっており、筒部20cの注出方向の最下流の位置に設けられ、外部に向かって開放されている。内容液は、筒部20cの内側の空間を通過し、開口部20dから注出方向22へ注出される。基部20aは、袋状の容器の天面部側に配置され、例えば、天面部の表面フィルムと裏側フィルムとの間に挿入されて、固定される。
【0011】
また、スパウト20の外周面には、雄ネジ部20bが設けられており、オーバーキャップやキャップ23の内周面に設けられた雌ネジ部が、雄ネジ部20bと噛み合って、スパウト20に蓋がされる。つまり、オーバーキャップやキャップ23は、スパウト20に螺着され、スパウト20の注出口に密着して、封止する封止面部を有する部材であり、注出口を開放したり、塞いだりするために用いられる部材である。容器内に収容された内容液を使用する場合には、オーバーキャップやキャップ23を外して、内容液を注出する。内容液の注出が終了したら、オーバーキャップを閉めてスパウト20の注出口を塞ぐ。
【0012】
スパウト20は、液漏れ防止機構21を有している。つまり、スパウト20は、袋状の容器に収容されている内容液の流路上に、液漏れ防止用の機構を有している。そして、液漏れ防止機構21は、加えられる圧力に応じて内容液の注出方向へ変位して、内容液の流路を形成する可動弁21aと、可動弁21aの注出方向上流側に配置される底部27d(閉鎖部)を有する。
【0013】
可動弁21aは、ホルダ27の内部に収容される。ホルダ27は、天面部(開口天板部)が開放され、底面部の一部が貫通した円形の穴部が設けられた筒状(環状)の部材である(
図3等参照)。ホルダ27の内部の内側底面部の上に可動弁21aが載置される。
【0014】
また、ホルダ27は、内周面の少なくとも一部に、可動弁21aを所定位置に位置決めするフランジ部27aを有している。フランジ部27aは、可動弁21aに対して、吐出方向側に設けられており、これにより、液漏れ防止機構21が吐出方向側に移動しないように規制している。そして、フランジ部27aは、ホルダ27の内周面の表面からホルダ27の半径方向に向けて飛び出した出っ張り部分であり、断面視で、アーチ形状(円弧の一部の形状)をした盛り上がり部分である。フランジ部27aは、ホルダ27の底面部から可動弁21aの厚み分の高さ位置に設けられている。フランジ部27aをこのような高さ位置に設けることにより、可動弁21aがホルダ27の内部に隙間なく収容される。ここで、可動弁21aの外径は、ホルダ27の内径と同じかそれよりも小さい。
【0015】
そして、ホルダ27の内部において、可動弁21aは、フランジ部27aの直下に配置されている。フランジ部27aの直下に配置することにより、スパウト20に振動などが加えられた場合や、スパウト20が逆さまになったりした場合であっても、可動弁21aが、ホルダ27の内部で動いたり、位置がずれたりしなくなる。つまり、可動弁21aが、ホルダ27の内部で動こうとすると、フランジ部27aに引っ掛かって、可動弁21aの動きが制限される。
【0016】
次に、ホルダ27は、
図1及び
図3に示すように、内容液を注出するための注出孔27eを有している底部27d(閉鎖部)を有している。また、底部27dは、注出孔27eの縁部に沿って注出方向22に延設された凸部27c(凸部)を有している。注出孔27eは、上面から見ると、円形形状の孔である。凸部27cは、注出孔27eの縁部に沿って設けられた部材であり、上面から見ると、環状形状の部材となっており、側面から見ると、底部27dの上面から注出方向22(上方)に向けて突出した突出部となっている。そして、可動弁21aの中央弁体21cが変位していない状態において、液漏れ防止機構21は、底部27dの凸部27cに嵌合した状態となり、中央弁体21cと周縁部21eとの間に形成される隙間が、底部27dにより閉鎖されるので、流路24を閉鎖することが可能となる。そのため、スパウト20に蓋がされていない状態であっても、流路24を閉鎖することが可能となる。さらに、ホルダ27は、鍵爪脚部27bを有している。鍵爪脚部27bは、ホルダ27の外側底面部からホルダ27の外側に向けて突出した、細長い棒状の部材であり、ホルダ27の底面部とは反対側(鉛直方向下方)の先端部分に鍵爪が設けられている部材である。そして、ホルダ27がスパウト20の底面部に設けられた穴部に挿通されると、鍵爪脚部27bの鍵爪部分が、スパウト20の基部20aの外側底面部分に引っ掛かるように係止され、ホルダ27が、スパウト20の内部に固定される。このように、鍵爪脚部27bが、スパウト20に係止されると、注出方向22にホルダ27を引っ張る力に対しては、鍵爪が抵抗するので、ホルダ27がスパウト20から外れないようになっている。なお、ここでは、鍵爪脚部27bは、外側底面部に等間隔に3本設けられた例で説明をしたが、鍵爪脚部27bの本数はこれには限定されない。
【0017】
可動弁21aは、
図4に示すように、中央弁体21c、接続支持部21d及び周縁部21eを有する。可動弁21aは、所定厚みを有する円形形状の部材である。中央弁体21cは、円形形状の可動弁21aの中央部分に配置され、周囲を周縁部21eに取り囲まれる円形形状の部材であり、周縁部21eよりも薄い部材である。また、周縁部21eは、円環形状の部材である。中央弁体21cは、可動弁21aに加えられる圧力に応じて、内容液の注出方向22へ変位する。中央弁体21cが変位することにより、
図1(b)に示すように内容液の流路24が形成される。中央弁体21cと周縁部21eとは、後述する接続支持部21dにより接続されているが、中央弁体21cと周縁部21eとの間には、隙間が形成されている(
図4参照)。この隙間は、中央弁体21cが変位していない状態では、凸部27cを有する底部27dにより塞がれる(
図1等参照)。すなわち、底部27dは、隙間閉鎖部として機能する部材となっている。
【0018】
ここで、可動弁21aの中央弁体21cに加えられる圧力は、スパウト20の外部から中央弁体21cに加えられる負圧26または袋状の容器の内部から中央弁体21cに加えられる正圧25である。中央弁体21cに加えられる負圧26は、例えば、中央弁体21cを鉛直上方へと引っ張り上げる力(持ち上げる力)である。例えば、スパウト20に排気装置を取り付け、スパウト20の注出口と可動弁21aとの間の空間の空気を排気したり、吸引したりして、中央弁体21cに加えられる圧力である。また、中央弁体21cに加えられる正圧25は、例えば、袋状の容器に収容された内容液が、外部へ流出する際に加えられる圧力である流出圧であり、鉛直方向下方から中央弁体21cを上方へ向けて押す力である。
【0019】
中央弁体21cは、3本の接続支持部21dにより、可動弁21aの周縁部21eと接続されている(
図4等参照)。接続支持部21dは、細長く薄い棒状の部材であり、Z字形状をしている。そして、接続支持部21dは、一端が中央弁体21cに接続され、他端が周縁部21eに接続されることにより、中央弁体21cと周縁部21eとを接続している。
【0020】
中央弁体21cに圧力が加えられると、中央弁体21cは、注出方向22へ向けて加えられた圧力に応じた量だけ変位する。中央弁体21cが変位することにより、中央弁体21cと周縁部21eとの間に、内容液が流れる流路24が形成される。つまり、中央弁体21cと周縁部21eとの間には、接続支持部21dが設けられているが、接続支持部21dが存在しない部分には、隙間が形成されており、この隙間により流路24の一部が形成される。
【0021】
接続支持部21dは、弾性機能を有する部材(可撓性部材)であり、円弧と円弧の一端から周縁部21eへ向けて延設される直線及び円弧の他端から中央弁体21cへ向けて延設される直線とを組み合わせた形状となっている。このように、接続支持部21dのうち、周縁部21eに接続される部分(一端側の直線部分)と、中央弁体21cに接続される部分(他端側の直線部分)とを離して配置することにより、接続支持部21d全体としての変位量を大きくすることができる。なお、接続支持部21dの形状は、ここに示した形状には限定されず、中央弁体21cと周縁部21eとを接続でき、中央弁体21cを支持できる形状であればいずれの形状であってもよい。例えば、周縁部21eを4等分した位置のそれぞれから中央弁体21cの中心に向かって延設される4本の直線からなる形状であってもよい。中央弁体21cは、接続支持部21dの弾性領域の範囲内で変位する。接続支持部21dは、中央弁体21cに圧力が加えられて変位すると、中央弁体21cの変位に引きずられる形で、弾性変形を起こし、中央弁体21cを支持しつつ、中央弁体21cの可動範囲を制限する。中央弁体21cに加えられている圧力が取り除かれると、接続支持部21dの弾性力により、中央弁体21cは、元の位置へと復帰する。つまり、中央弁体21cは、注出方向22とは反対方向へ向けて移動し、最終的に、元の位置へと戻る。ここで、中央弁体21cの変位量(可動域)の観点から、接続支持部21dの形状は、
図4に示した円弧と2つの直線とを組み合わせた形状が、変位量を大きくすることができるので有利である。
【0022】
中央弁体21cが、接続支持部21dの弾性領域の範囲以上、つまり、弾性限界を超える変位を起こすと、接続支持部21dは、破断する。中央弁体21c、接続支持部21dおよび周縁部21eは、いずれも同じ材質の部材から形成されても、接続支持部21dは弾性部材で形成され、中央弁体21cおよび周縁部21eは、その他の部材で形成されてもよい。
【0023】
次に、
図5を参照すると、キャップ23の内周面には、雌ネジが切られており、雌ネジと雄ネジ部20bとにより、キャップ23がスパウト20に対して着脱可能となっている。キャップ23は、封止面部の内側表面から細長い棒状の部材である弁体抑え部材23aが下方に向けて延伸している。弁体抑え部材23aの封止面部とは反対側の先端部は、キャップ23の底面部から飛び出している。つまり、弁体抑え部材23aの長さの値は、少なくとも、キャップ23の鉛直方向の厚み幅の値よりも大きい。
【0024】
そして、キャップ23がスパウト20に装着された状態(
図1(a))で、弁体抑え部材23aが可動弁21aの中央弁体21cと僅かな隙間を置いた位置に配置されているか、あるいは、接触していてもよい。この状態では、可動弁21aは、鉛直方向上方から弁体抑え部材23aと、鉛直方向下方からはホルダ27の凸部27cと接触するため、可動弁21aは、上下いずれの方向へも移動することができない。
【0025】
また、凸部27cは、可動弁21aが変位していない状態において、可動弁21aの中央弁体21cを下側から少し持ち上げる(中央弁体21cを少し下流側に押し上げる)ように支持しており、これにより、可動弁21aに対して下側に押さえつける力(可動弁21aを注出方向の反対側へ押さえつける力)が発生する。なお、キャップ23の外周面にも複数の溝が彫られており、ユーザがキャップ23を取り外したり、取り付けたりする際の滑り止めの役割をはたす。
【0026】
また、
図6に示したように、ホルダ27を有しないスパウト20であってもよい。スパウト20においては、液漏れ防止機構21はリブ20eによりスパウト20に嵌合される。また、スパウト20の底部20gは、内容液が流出する注出孔20hを有している。凸部20fは、注出孔20hの縁部にそって注出方向22に延設されている。注出孔20hは、円形の孔であり、凸部20fも円形(環状)の部材となっている。
【0027】
そして、可動弁21aに対して圧力が加えられておらず、変位していない状態においては、液漏れ防止機構21は、凸部20fと嵌合した状態となり、底部20gにより、流路24を形成するために液漏れ防止機構21に設けられている隙間が閉鎖される。スパウト20においては、液漏れ防止機構21の可動弁21aが注出方向22に変位することにより、液漏れ防止機構21に設けられた隙間が、内容液の流路24の一部を形成することになる。つまり、液漏れ防止機構21の隙間は、可動弁21aが変位の有無に関わらず存在しているため、可動弁21aが変位していない場合に、この隙間を塞がなければ、液漏れを防止できない。そのため、凸部20fを有する底部20gは、隙間を塞ぐ隙間閉鎖部として機能する。よって、可動弁21aが変位していない状態においても、隙間を閉鎖することができるので、スパウト20に蓋をしていない状態であっても、内容液が漏れ出ることがない。
【0028】
このように、凸部20fを有する底部20gにより、隙間(流路24)を塞ぐ構成としたので、例えば、容器28を横倒しにした状態、つまり、スパウト20の開口部が水平方向を向いた状態で容器28が静置されるようなシチュエーションであっても、内容液が流れ出ることがない。このように、容器28の保管時のスペースの都合で、容器28を横倒しする場合や洗濯機用カートリッジの挿入部が横向きの場合、ユーザが誤って横向きに置いた場合などであっても、内容液が流れ出ることがない。
【0029】
また、スパウト20に蓋がされていない状態で容器28が保管されたような場合であっても、液漏れ防止機構21により、流路24が塞がれているので、外気が容器28内に侵入して、内容液が酸化して、品質が劣化することを防止できたり、ほこり等の異物および水分が容器28内に混入し、菌が発生するリスクを低減することができたりする。
【0030】
さらに、一般的な逆止弁においては、容器のキャップに取り付けられ、キャップの内側で嵌合されている。そのため、嵌合状態に不備があった場合、容器内に逆止弁が脱落してしまうことがある。また、逆止弁は、キャップの内側に取り付けられるため、キャップの内部構造となり、外側から逆止弁の嵌合状態等を確認することが困難である。そして、嵌合状態をより確実なものとするためには、嵌合補強のための追加のパーツを取り付ける必要がある。
【0031】
これに対して、スパウト20においては、液漏れ防止機構21は、スパウト20の注出口側からスパウト20への嵌合を行うため、容器内への脱落が発生せず、外側から嵌合状態等を容易に確認することが可能となっている。また液漏れ防止機構21を固定するためのリブ20e(嵌合用リブ)を設けることで、パーツ数を低減させることができる。
【0032】
次に、
図7を参照して、スパウト20が取り付けられる容器について説明する。スパウト20が取り付けられる容器28の一例として、自立するスタンディングパウチ28aや、パウチそのものがボトルとして機能するボトル形状パウチ28b、段ボールケース等の外装容器の内部に、液体等が充填されたプラスチック製の内装容器を収容して使用するバッグインボックス(BIB)28cなどのフィルム容器であって、容器胴部が変形可能な容器28がある。これらの容器28の場合、スパウト20は、フィルムに溶着等で取り付けられる。そして、例えば、スタンディングパウチ28aやボトル形状パウチ28bの場合、オーバーキャップを開けた状態で、容器28を持ち上げて、容器28の底面部が天面部よりも高い位置となるようにすると、内容液を注出できる。また、この他にも、スパウト20は、紙パック28dに取り付けてもよい。いずれの容器においても、スパウト20は、点線で示した、各容器の注出部に取り付けられて、使用される。
【0033】
図8を参照して、袋状の容器28に収容された内容液の流出圧とは異なる、中央弁体21cに加えられる圧力について説明する。
図8(a)、(b)には、トリガー式ディスペンサー29aと、レバー式ディスペンサー29bが図示されている。これらのディスペンサー29には、通常、ディップチューブが設けられ、ディップチューブにより内容液を吸い上げて、内容液が噴霧される。図示したディスペンサー29においては、オーバーキャップを介して各ディスペンサーをスパウト20に取り付ける。そして、ユーザが、トリガーまたはレバーを操作すると、スパウト20の内部の空気が外部へ排出され、スパウト20の内部の圧力が減少し、負圧26の状態となる。これにより、可動弁21aの中央弁体21cに負圧26による圧力が加えられ、中央弁体21cが鉛直方向上方へ向けて移動するので、流路24が形成される。流路24が形成されると、内容液にも負圧26が作用し、ディスペンサー29の噴霧口に向けて吸い上げられ、噴霧される。
【0034】
本実施形態によれば、スパウトの内部に可動弁を含む液漏れ防止機構を設けたので、簡易な構成で、液漏れを確実に防止できる。
【0035】
[第2実施形態]
次に本発明の第2実施形態に係るスパウトについて、
図9~
図12を用いて説明する。本実施形態に係るスパウトは、上記第1実施形態と比べると、位置規制部を有する点で異なる。
【0036】
まず、
図9および
図10を参照して、スパウト30について説明する。スパウト30は、位置規制部31(位置規制部)をさらに有する。位置規制部31は、可動弁21aの可動範囲を規制する部材である。また、位置規制部31は、ホルダ27に収容され、保持される。位置規制部31は、可動弁21aの注出方向側に配置、つまり、スパウト20の内部において、可動弁21aの直上に置かれている。つまり、スパウト30においては、中央弁体21cは、注出方向22へ向けて変位するため、中央弁体21cが接続支持部21dの弾性領域の範囲以内で変位するように、位置規制部31が設けられている。
【0037】
図10に示したように、位置規制部31は、円形のドーナツ形状の部材であり、中央の穴開き部分に十字形状の規制アーム部31aと、円形の規制中央部31bとを有している。規制アーム部31aおよび規制中央部31bはともに、位置規制部31の厚みの範囲内に収まる厚みとなっている。そして、可動弁21aの中央弁体21cが変位し、中央弁体21cが、位置規制部31の規制アーム部31aと規制中央部31bと接触すると、可動弁21aの変位は停止する。なお、袋状の容器に収容されている内容液は、規制アーム部31aおよび規制中央部31bとドーナツ形状の位置規制部31との間に形成される隙間を通過する。
【0038】
次に、
図10および
図11を参照して、位置規制部41の他の形状について説明する。位置規制部41は、位置規制部31と同様に円形のドーナツ形状の部材である。位置規制部41の内周面から半径方向に向けて、4本の規制アーム部41aが延伸している。上述した位置規制部31と比較すると、位置規制部41は、規制中央部31bを欠く形状となっている。可動弁21aの中央弁体21cは、規制アーム部41aと接触すると変位が停止する。
【0039】
本実施形態によれば、位置規制部を設けることにより、可動弁の中央弁体を接続支持部の弾性領域の範囲内で変位させることができるので、接続支持部を破断させることがない。
【0040】
[第3実施形態]
次に本発明の第3実施形態に係るスパウトについて、
図13を用いて説明する。本実施形態に係るスパウト60は、上記第1実施形態及び第2実施形態と比べると、液漏れ防止機構61がスパウト60の流出口の近くに設けられている点で異なる。スパウト60は、
図6に示した、ホルダ27を有しないスパウト20において、液漏れ防止機構61が、スパウト60の流出口付近に設けられたものである。可動弁61aが上下に変位することにより、内容液を注出したり、詰め替え時の内容液の液漏れを防止したりすることが可能となっている。このように、スパウト60の流出口付近に液漏れ防止機構61を配置したことにより、スパウト60の基部から液漏れ防止機構61の間のスパウト60の内周面へのほこり等の付着をより低減することが可能となる。
【0041】
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は、上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたスパウトも、本発明の範疇に含まれる。
【符号の説明】
【0042】
20 スパウト
20a 基部
20b 雄ネジ部
20c 筒部
20d 開口部
20e リブ
20f 凸部
20g 底部
20h 注出孔
21 液漏れ防止機構
21a 可動弁
21c 中央弁体
21d 接続支持部
21e 周縁部
22 注出方向
23 キャップ
23a 弁体抑え部材
24 流路
25 正圧
26 負圧
27 ホルダ
27a フランジ部
27b 鍵爪脚部
27c 凸部
27d 底部
27e 注出孔
28 容器
28a スタンディングパウチ
28b ボトル形状パウチ
28c バッグインボックス
28d 紙パック
29 ディスペンサー
29a トリガー式ディスペンサー
29b レバー式ディスペンサー
30 スパウト
31 位置規制部
31a 規制アーム部
31b 規制中央部
40 スパウト
41 位置規制部
41a 規制アーム部
60 スパウト
61 液漏れ防止機構
61a 可動弁