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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ホースのガイド機構および建設機械
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/12 20060101AFI20241023BHJP
   B66C 23/70 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B66C13/12 A
B66C23/70 D
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021033372
(22)【出願日】2021-03-03
(65)【公開番号】P2022134317
(43)【公開日】2022-09-15
【審査請求日】2024-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 幸治
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-115046(JP,A)
【文献】特開2017-165519(JP,A)
【文献】実開平3-9388(JP,U)
【文献】実開平3-53990(JP,U)
【文献】米国特許第04404986(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
B66F 1/00-19/02
E02F 1/00- 9/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持軸を中心として回転可能に支持され、
前記支持軸に近い側に位置してホースを巻き掛けられる中心側のガイドドラムと、
前記支持軸から遠い側に位置して前記ホースを巻き掛けられる周縁側のガイドドラムと、
前記中心側のガイドドラムと前記周縁側のガイドドラムの回転軸同士を接続するリンク部材と
を備えたドラムユニットを備え、
前記支持軸を中心とした前記ドラムユニットの回転操作を、
前記ホースに対して前記中心側のガイドドラムと同じ側に位置する前記周縁側のガイドドラムが、前記中心側のガイドドラムと、該中心側のガイドドラムを取り巻くホースの間を経由する向きと反対向きに行えるよう構成されていること
を特徴とするホースのガイド機構。
【請求項2】
前記ドラムユニットは、ブームの先端に振出し式のジブを備えたクレーンにおいて、前記ブームと前記ジブとの接続部に設置されること
を特徴とする請求項1に記載のホースのガイド機構。
【請求項3】
前記中心側のガイドドラムまたは前記周縁側のガイドドラムの少なくともいずれか一方に、前記ガイドドラムの回転軸に関して径方向外側に位置して前記ホースを拘束する閉姿勢と、前記ホースを拘束しない開姿勢との間で回動可能なホース留めを備えたこと
を特徴とする請求項1または2に記載のホースのガイド機構。
【請求項4】
閉姿勢にある前記ホース留めの回転軌道上に位置し、前記ホース留めと当接するホース留め当接部を設けたこと
を特徴とする請求項3に記載のホースのガイド機構。
【請求項5】
前記ドラムユニットは、
前記中心側のガイドドラムまたは前記周縁側のガイドドラムの少なくともいずれか一方に、前記ガイドドラムの回転軸に関して径方向外側に前記ホースの動きを拘束する固定ピンを取付可能なホース留め機構を備えると共に、
前記ホース留め機構に取り付けられた固定ピンにより、前記ドラムユニットの位置が固定されるよう構成されていること
を特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のホースのガイド機構。
【請求項6】
前記ドラムユニットの回転操作の際に把持可能な把持部を前記ドラムユニットの周縁側に備えたこと
を特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のホースのガイド機構。
【請求項7】
前記把持部から前記支持軸に関して径方向外側へ張り出すガード部を備えていること
を特徴とする請求項6に記載のホースのガイド機構。
【請求項8】
前記ドラムユニットの上方に、前記ホースを通すガイド環が位置し、
前記ガイド環は、開放時に下辺に位置する部材が上方へ退避するよう構成されていること
を特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のホースのガイド機構。
【請求項9】
前記ドラムユニットから裏側へ突出するストッパと、
該ストッパの回転軌道上に位置し、前記ストッパと当接するストッパ当接部を設けたこと
を特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載のホースのガイド機構。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載のホースのガイド機構を適用したことを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械等に備えられた油圧ホース等のホースをガイドするための機構、およびこれを適用した建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばクレーンや高所作業車など、油圧で作動する機構を備えた建設機械では、前記機構の油圧を伝達するホース(油圧ホース)が装備される。前記ホースは可撓性であり、建設機械に設けられた各種機器の動作(ブームの伸縮や起伏、ジブの振出しなど)を妨げることのないよう、前記機器の動作に合わせて適宜繰り出され、あるいは巻き取られながら、変形しつつ前記機器に寄り添って動く。
【0003】
前記機器の各所には、作動する前記機器に対し油圧ホースが適切な位置を保ちつつ動くよう、ガイド機構が設けられる。ガイド機構としては、油圧ホースを巻き掛けられるガイドドラムや、油圧ホースの周囲を取り囲む環状の部材(以下、「ガイド環」)等がある。これらのガイド機構は、油圧ホースの延びる経路上の要所に取り付けられ、油圧ホースの長手方向に沿ってスライドする動きや、長手方向と交わる向きに屈曲する動きを適度に許容しながら、油圧ホースを機器から大きく逸脱しないよう拘束するようになっている。
【0004】
こうした建設機械に取り付けられる油圧ホースや、そのガイド機構について記載した技術文献としては、例えば下記特許文献1等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-115046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述の如きホースのガイド機構においては、必要に応じて油圧ホースの掛替えや構成部品の移動等が行われる。例えばガイド環は、建設機械の稼働時には油圧ホースを通されて使用されるが、格納時には収納やメンテナンス等の妨げにならぬように油圧ホースを取り外される。またガイドドラムも、建設機械の稼働状態に応じて動かされる場合がある。
【0007】
ここで、油圧ホースの掛替えやガイドドラムの移動といった作業には、これを人力で行う場合、相応の腕力が要求される。油圧ホースには、該油圧ホースの自重や、内部を流通するオイルの重量、さらにホースリールから加わる張力等がかかっており、これらの力に抗して油圧ホースやガイドドラムを操作しなくてはならないからである。
【0008】
例えば上記特許文献1に記載のガイド装置の場合、ジブの振出し時に回動してガイドドラムの位置を変更できるようになっているが、このとき、ガイド装置の回動する余地を作るため、ホースリールから油圧ホースを引き出す作業が必須である。この作業はホースリールのホースを引っ張る力に抗して行わねばならず、作業員への負担が大きい。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ホースの掛替えに伴う作業を簡便に行い得るホースのガイド機構および建設機械を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、支持軸を中心として回転可能に支持され、前記支持軸に近い側に位置してホースを巻き掛けられる中心側のガイドドラムと、前記支持軸から遠い側に位置して前記ホースを巻き掛けられる周縁側のガイドドラムと、前記中心側のガイドドラムと前記周縁側のガイドドラムの回転軸同士を接続するリンク部材とを備えたドラムユニットを備え、 前記支持軸を中心とした前記ドラムユニットの回転操作を、前記ホースに対して前記中心側のガイドドラムと同じ側に位置する前記周縁側のガイドドラムが、前記中心側のガイドドラムと、該中心側のガイドドラムを取り巻くホースの間を経由する向きと反対向きに行えるよう構成されていることを特徴とするホースのガイド機構にかかるものである。
【0011】
本発明のホースのガイド機構に関し、前記ドラムユニットは、ブームの先端に振出し式のジブを備えたクレーンにおいて、前記ブームと前記ジブとの接続部に設置することができる。
【0012】
本発明のホースのガイド機構は、前記中心側のガイドドラムまたは前記周縁側のガイドドラムの少なくともいずれか一方に、前記ガイドドラムの回転軸に関して径方向外側に位置して前記ホースを拘束する閉姿勢と、前記ホースを拘束しない開姿勢との間で回動可能なホース留めを備えることができる。
【0013】
本発明のホースのガイド機構は、閉姿勢にある前記ホース留めの回転軌道上に位置し、前記ホース留めと当接するホース留め当接部を設けることができる。
【0014】
本発明のホースのガイド機構において、前記ドラムユニットは、前記中心側のガイドドラムまたは前記周縁側のガイドドラムの少なくともいずれか一方に、前記ガイドドラムの回転軸に関して径方向外側に前記ホースの動きを拘束する固定ピンを取付可能なホース留め機構を備えると共に、前記ホース留め機構に取り付けられた固定ピンにより、前記ドラムユニットの位置が固定されるよう構成することができる。
【0015】
本発明のホースのガイド機構は、前記ドラムユニットの回転操作の際に把持可能な把持部を前記ドラムユニットの周縁側に備えることができる。
【0016】
本発明のホースのガイド機構は、前記把持部から前記支持軸に関して径方向外側へ張り出すガード部を備えることができる。
【0017】
本発明のホースのガイド機構は、前記ドラムユニットの上方に、前記ホースを通すガイド環が位置し、前記ガイド環は、開放時に下辺に位置する部材が上方へ退避するよう構成することができる。
【0018】
本発明のホースのガイド機構は、前記ドラムユニットから裏側へ突出するストッパと、該ストッパの回転軌道上に位置し、前記ストッパと当接するストッパ当接部を設けることができる。
【0019】
また、本発明は、上述のホースのガイド機構を適用した建設機械にかかるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明のホースのガイド機構および建設機械によれば、ホースの掛替えに伴う作業を簡便に行うという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の適用対象である建設機械の全体像の一例を示す側面図である。
図2図1の建設機械に備えられたブームの前方部分の形態を示す側面図である。
図3】建設機械に取り付けられるガイド環の形態の一例を示す正面図である。
図4】本発明の実施によるガイド機構におけるドラムユニットの構成の一例(第一実施例)を示す斜視図であり、ドラムユニットが格納位置にある格納時の状態を示している。
図5図4のドラムユニットをブーム側から取り外した状態を示す分解斜視図である。
図6図4のドラムユニットを斜め下方から見た斜視図である。
図7図4のドラムユニットをさらに別の方向から見た斜視図であり、図6のVII方向から見た図である。
図8図4の状態から、ドラムユニットの回転操作に先立って固定ピンを外し、片方のホース留めを引き起こした状態を示す斜視図である。
図9図8の状態から、ドラムユニットの回転操作を開始した状態を示す斜視図である。
図10図9の状態から、ドラムユニットを稼働位置付近まで回転させた状態を示す斜視図である。
図11図10の状態からさらにドラムユニットを回転させ、稼働位置で固定した状態を示す斜視図である。
図12図10の状態からジブを振り出した状態を示している。
図13】格納時におけるドラムユニットの各部と、ブームおよびジブ側の固定ブラケットとの位置関係を簡易的に示す図である。
図14】ドラムユニットの回転操作時におけるドラムユニットの各部と、ブームおよびジブ側の固定ブラケットとの位置関係を簡易的に示す図である。
図15】ジブの振出し時におけるドラムユニットの各部と、ブームおよびジブ側の固定ブラケットとの位置関係を簡易的に示す図である。
図16】本発明の実施によるガイド機構におけるドラムユニットの構成の別の一例(第二実施例)を示す斜視図であり、ドラムユニットが格納位置にある格納時の状態を示している。
図17図16のドラムユニットを別の方向から見た斜視図である。
図18図16の状態から、ドラムユニットの回転操作に先立って固定ピンとホース留めピンを取り外した状態を示している。
図19図18の状態からドラムユニットを回転させ、稼働位置で固定した状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0023】
図1図2は、本発明の適用対象としての建設機械、および該建設機械に備えられるブームの形態の一例を示している。建設機械である車両式クレーン1は、車体2の上部に旋回台3を介してブーム4を備えている。ブーム4は、基部を旋回台3に対し水平な軸を中心に回転可能に支持されており、図示しない油圧式の起伏シリンダの伸縮により、旋回台3に対して起伏動作を行うようになっている。
【0024】
ブーム4は、図2に示す如く、複数の筒体5がテレスコピック状に連結された構造であり、図示しない油圧機構により伸縮可能に構成されている。ブーム4の先端部の下側には、振出し式のジブ6の基部が回動軸6aを介して回転可能に取り付けられるようになっており、車両式クレーン1の稼働時には、ジブ6がブーム4の先端から振り出されて使用され、車両式クレーン1の格納時等には、必要に応じてジブ6をブーム4から取り外せるようになっている。尚、図2は、ジブ6をブーム4に下抱きし、且つブーム4を縮めて倒伏させた格納時の状態を示している。
【0025】
ブーム4の中間部には、ホース(油圧ホース)7を巻き掛けられて該油圧ホース7の繰出し・巻取りの動作を行うホースリール8が取り付けられており、ホースリール8よりも先端側にはガイドドラム9が取り付けられている。油圧ホース7は、ブーム4に沿って基部側から先端側へ延びており、ホースリール8に巻き掛けられた後、ブーム4の各所に設けられたガイドドラム9に順次巻き掛けられている。油圧ホース7は、さらにブーム4の先端部で折り返し、ジブ6に沿って延びて該ジブ6に対し駆動のための油圧を供給するようになっている。ジブ6にも、適当な位置にガイドドラム9が設けられ、油圧ホース7が巻き掛けられている。
【0026】
ブーム4の先端部に設定されたブーム4とジブ6との接続部には、2個のガイドドラム11,12を備えたドラムユニット10が取り付けられている。このドラムユニット10の構成については後に詳述する。
【0027】
ガイドドラム9やドラムユニット10は、それぞれ油圧ホース7の位置や動きをガイドするガイド機構を構成するが、車両式クレーン1は、ガイド機構として、さらにガイド環14を備えている。ガイド環14は、ブーム4を構成する各筒体5の先端部にそれぞれ取り付けられている。
【0028】
尚、図1図2では説明の都合上、本発明の要旨に直接関係のない部分や、要部の視認性を妨げる部分等については適宜図示を省略している(以降の各図でも同様である)。
【0029】
図3はガイド環14の形態の一例を示している。ガイド環14は、ブーム4(図1図2参照)側に固定された取付ブラケット15に対し取り付けられるベース部材16と、該ベース部材16に取り付けられて開閉可能な環状構造をなす3本の柱状部材(第一~第三の柱状部材17~19)を備えて構成されている。これらの柱状部材17~19は、第一の柱状部材17が上辺、第二の柱状部材18が側辺、第三の柱状部材19が下辺をなすようにベース部材16に対してコの字状に取り付けられ、ベース部材16と共に環状構造をなしている。ガイド環14は、第二の柱状部材18と第三の柱状部材19が第一の柱状部材17に対し回転することで、環状構造の開閉が行われるようになっている。第二の柱状部材18と第三の柱状部材19の回転軸は第一の柱状部材17の先端部(ベース部材16に取り付けられた側とは反対側の端部)に設定されており、図3に一点鎖線で示す如く、環状構造の下辺にあたる第三の柱状部材19を下辺部から上方へ退避させる形で、ガイド環14の環状構造を開くことができるようになっている(尚、以下では説明の都合上、ガイド環やその他の装置における上下の位置関係は、ブーム4を倒伏させた状態を基準に記述することとする)。
【0030】
第一実施例におけるドラムユニット10の構成について説明する。ドラムユニット10は、図4図7に示す如く、2個のガイドドラム11、12の互いに平行な軸11a,12a同士をリンク部材13により連結して構成されている。
【0031】
リンク部材13は、ガイドドラム11,12の表側の面(ブーム4やジブ6と向かい合う側と反対側の面)に、軸11a,12aの端部同士を繋ぐように延びる第一主材13aと、ガイドドラム11,12の裏側の面(ブーム4やジブ6と向かい合う側の面)軸11a,12a同士を繋ぐように延びる第二主材13bとを備えて構成されている。第一、第二主材13a,13bの一端側は、軸11aに対し軸11aを中心として回転可能に支持されており、第一、第二主材13a,13bの他端側にはガイドドラム12の軸12aが取り付けられている。また、ガイドドラム11の軸11aは、基端側をジブ6に固定されてガイドドラム11を回転自在に支持している。こうして、ブーム4の先端部にジブ6が接続された状態においては、ガイドドラム11,12を含むドラムユニット10の全体が、ブーム4の先端部に対し軸11aを中心として回転可能に支持され、リンク部材13を軸11aを中心に回転させることで、ガイドドラム12がガイドドラム11の周囲を回転するようになっている。
【0032】
尚、以下では必要に応じ、個々のガイドドラムの回転軸としての軸を「回転軸」、ドラムユニット全体を回転可能に支持する軸を「支持軸」と称する。軸11aはガイドドラム11の回転軸であり、且つドラムユニット10の支持軸である。軸12aはガイドドラム12の回転軸である。
【0033】
また、説明の便宜のため、以下ではドラムユニット10に関し、ブーム4と対向する側の面(第二主材13bを取り付けられた面)を「裏側」の面、それと反対側の面(第一主材13aを取り付けられた面)を「表側」の面と称することとする。また、ガイドドラム11,12やリンク部材13といったドラムユニット10の構成部材に関し、支持軸11aに近い側を「中心側」、支持軸11aから遠い側を「周縁側」と、それぞれ必要に応じて称することとする。ガイドドラム11は「中心側のガイドドラム」、ガイドドラム12は「周縁側のガイドドラム」であり、リンク部材13のうち、ガイドドラム11に近い部分は「中心側」、ガイドドラム12に近い部分(ガイドドラム11から遠い部分)は「周縁側」である。
【0034】
ガイドドラム11の回転軸であり、且つジブ6に対するドラムユニット10の支持軸でもある軸11aは、ブーム4に対するジブ6の回動軸6aと同軸に設定されており、ジブ6の振出し操作によってブーム4に対するドラムユニット10の位置関係が変化することがないようになっている。
【0035】
リンク部材13を構成する第一、第二主材13a,13bは、ガイドドラム11とガイドドラム12の間の中間部において、表側の第一主材13aから裏側の第二主材13bに延びる連結材13cにより相互に連結されている。
【0036】
また、第一、第二主材13a,13bの中間部には、固定ピン20を挿入される係留機構としてのピン留め孔13d,13eが開口している。第一、第二主材13a,13bにおける各ピン留め孔13d,13eの位置は、ドラムユニット10の表側から見たときに互いに一致する。
【0037】
一方、後述するように、ドラムユニット10にとって裏側に位置するジブ6とブーム4には、それぞれ固定ブラケット21または固定ブラケット22が設けられており、これらの固定ブラケット21,22には、固定ピン20を挿入される係留機構としての固定孔21a,22aが設けられている。そして、リンク部材13側のピン留め孔13d,13eがこれらの固定孔21aまたは固定孔22aと向かい合う位置にリンク部材13を回転させ、ピン留め孔13d,13eと固定孔21a、またはピン留め孔13d,13eと固定孔22aに固定ピン20を通すことにより、ドラムユニット10をジブ6またはブーム4に対し特定の角度で保持することができるようになっている。
【0038】
尚、係留機構としては、支持軸11aを中心に回転可能に構成されたドラムユニット10を適宜の姿勢に固定できる限りにおいて、種々の構成を採用し得る。例えば、上記ピン留め孔13d,13eや固定孔21a,22aは孔として形成されているが、孔の代わりに溝状の構造としても良い。これは、後に第二実施例にて説明するピン留め孔13j,13kや固定孔31aに関しても同様である。また、第二実施例にはホース留め機構として固定ピン20の挿入されるピン留め孔13f,13gが登場するが、これらについても孔に限らず、溝等であってもよい。固定ピン20を取り付けることでホース留めとして機能し得る構造であればよい。
【0039】
リンク部材13の中心側の端部には、ホース留め23が取り付けられている。ホース留め23は、第一主材13aの端部に回動可能に取り付けられており、ホース留め23の回動軸は、ガイドドラム11の周方向と平行に設定されている。これにより、ホース留め23は、ガイドドラム11の外周から回転軸11aに関してやや径方向外側に位置し、軸11aと平行な向きをなして横切る姿勢(閉姿勢;図4図6図7中に実線で示す)と、ガイドドラム11の表側を第一主材13aの端部から径方向外側に延びる姿勢(開姿勢;図6図7中に一点鎖線で示す)とを切り替えることができるようになっている。ホース留め23は、閉姿勢においてはガイドドラム11に巻き掛けられた油圧ホース7の動きを規制して逸脱しないよう拘束し、開姿勢においては油圧ホース7の延びる経路から退避して油圧ホース7の拘束を解除し、ドラムユニット10やジブ6の操作に伴う油圧ホース7の動きを妨げないようになっている。
【0040】
第一主材13aの周縁側の端部にも、同様にホース留め24が取り付けられている。ホース留め24は、第一主材13aの端部に回動可能に取り付けられており、ホース留め24の回動軸は、ガイドドラム12の周方向と平行に設定されている。これにより、ホース留め24は、ガイドドラム12の外周からやや径方向外側を軸12aと平行な向きをなして横切る姿勢(閉姿勢;図4図6図7中に実線で示す)と、ガイドドラム12の表側を第一主材13aの端部から径方向外側に延びる姿勢(開姿勢;図6図7中に一点鎖線で示す)とを切り替えることができるようになっており、中心側のホース留め23と同様、閉姿勢においては油圧ホース7の動きを拘束し、開姿勢においては拘束しないようになっている。
【0041】
こうして、ホース留め23,24により、車両式クレーン1やブーム4、ジブ6の稼働状況に応じてガイドドラム11,12における油圧ホース7の拘束・非拘束を切り替えることができるようになっている。尚、ホース留め23,24には、それぞれピン等による係留機構が設けられており、ホース留め23,24が閉姿勢または開姿勢にある場合、ホース留め23,24をその姿勢にて固定できるようになっている。
【0042】
周縁側のホース留め24には、さらに該ホース留め24と一体的に回動するように把持部25が設けられている。把持部25は、ホース留め24に対し、閉姿勢においてはガイドドラム12の回転軸12aに関して径方向外側に張り出した位置、開姿勢においては表側に張り出した位置でホース留め24と平行に延びており、ドラムユニット10の回転操作の際、把持部25を把持してドラムユニット10を操作することができるようになっている。尚、把持部25は、ホース留め24の角度によらず(すなわち、ホース留め24が開姿勢または閉姿勢のいずれであっても)これを把持し、ドラムユニット10の回転操作を行うことができる。
【0043】
また、把持部25には、該把持部25から支持軸11aに関して径方向外側に張り出すようにガード部26が設けられている。ガード部26は、ホース留め24が閉姿勢にある状態において、把持部25の裏側寄りの位置で支持軸11aの径方向に関してガイドドラム12の外周よりも外側に延びており、後述するドラムユニット10の回転操作の際、ガイドドラム12の回転範囲の外側に位置する別の部材(例えばガイド環14)と干渉することにより、ドラムユニット10の意図せぬ回転を抑えるようになっている。
【0044】
また、ドラムユニット10に対するホース留め24の回転軸は、周縁側のガイドドラム12に対して表側の位置に配置されている。このようにすると、ホース留め24が開姿勢にある状態において、ホース留め24はドラムユニット10の裏表方向に関し、ガイドドラム12よりも表側に位置することになる。したがって、後述するドラムユニット10の回転操作の際には、ホース留め24を開姿勢としておくことにより、ガイドドラム12の後方に位置するガイド環14と、ホース留め24との干渉を避けることができる。
【0045】
さらに、リンク部材13の中間部には、リンク部材13から裏側に向けて延びるように棒状のストッパ27が設けられている。このストッパ27は、ガイドドラム11,12の裏側に位置する第二主材13bからさらに裏側へ延びており、ドラムユニット10の回転操作時、裏側に位置する固定ブラケット21,22と干渉することによって、ジブ6やブーム4に対するドラムユニット10の回転範囲を制限するようになっている。上述の固定ピン20はリンク部材13に対し着脱する形で用いられるが、ストッパ27はリンク部材13に固定されている。リンク部材13は、特定の位置に固定される時には上述の通り固定ピン20によってジブ6またはブーム4に係留されるが、固定ピン20が取り外された状態であっても、ストッパ27によって回転範囲を制限されるのである。
【0046】
尚、本第一実施例の場合、ピン留め孔13d,13eおよびストッパ27はリンク部材13の中間部に設けられ、ストッパ27は軸11aを中心とする回転に関してピン留め孔13d,13eよりも径方向やや内側に設けられているが、ドラムユニット10の姿勢を固定ないし回転を制限するための構造としてのピン留め孔やストッパの位置、またこれらに対応するジブ6やブーム4の固定ブラケット21,22における各部(固定孔21a,22aや後述する突出部21e、ストッパ当接部21f、ホース留め当接部21g)の位置は、後に説明するようなドラムユニット10の回転操作や固定に際して適切な機能を発揮できる限りにおいて適宜変更し得る。
【0047】
ジブ6の基端部には、図5に示す如く軸11aの周囲に固定ブラケット21が設けられている。固定ブラケット21は、ジブ6の基端部における回動軸6aからやや離れた位置から表側へ突出する支持柱21bにより、全体をジブ6に対し固定される。支持柱21bには、係合部21cおよび補強部21dという2枚の板状の部材が取り付けられている。この係合部21cと補強部21dは、それぞれ軸11aと直交する面をなして支持柱21bから回動軸6aの位置まで延びており、軸11aを回動軸6aと同軸に支持している。軸11aは係合部21cを貫通しつつ、基部を補強部21dに固定されている。支持柱21bは軸11aと別の位置で係合部21cと補強部21dを支持しており、係合部21c、補強部21dと支持柱21b、軸11aとで環状の構造をなしている。これに加え、図示しない部材を取り付けて閉断面を構成することで、軸11aにドラムユニット10を支持するにあたり必要な剛性を確保することができる。
【0048】
また、係合部21cは、ドラムユニット10を構成するガイドドラム11のすぐ裏側に位置し、固定ピン20やドラムユニット10の各部(ストッパ27、ホース留め23)と干渉してドラムユニット10を固定したり、ドラムユニット10の回転範囲を制限する役割を果たす。係合部21cは、まず図4図5に示すようにジブ6をブーム4に下抱きした状態における右下(ジブ6の先端寄りの斜め下方)へ延びるように、軸11aに関して径方向外側へ突出する突出部21eを備えている。突出部21eの先端には固定孔21aが設けられており、ガイドドラム12がガイドドラム11に対して斜め下方に位置する状態において、固定ピン20をドラムユニット10側のピン留め孔13d,13eとジブ6側の固定孔21aに通すことで、ドラムユニット10がジブ6に対し固定されるようになっている(以下、この状態におけるドラムユニット10の位置を「格納位置」と称する)。
【0049】
また、突出部21eの基部は、ジブ6が下抱きされ、且つドラムユニット10が格納位置にある状態において、ドラムユニット10のストッパ27の回転軌道内における下方に位置しており、ストッパ27の先端と当接するストッパ当接部21fとして機能する。すなわち、ドラムユニット10の回転操作時、ストッパ27がストッパ当接部21fと当接することにより、ドラムユニット10がそれ以上、下方へ回転することを阻止するようになっている。
【0050】
また、係合部21cは、ジブ6を下抱きした状態における左下(ジブ6の先端から離れる向きの斜め下方)に、軸11aに関して径方向外側へ突出するようにホース留め当接部21gを備えている。このホース留め当接部21gは、閉状態にあるホース留め23の支持軸11aを中心とした回転の軌道上に位置している。これにより、ホース留め23を閉状態としたままで回転操作を実行してしまうことを防止するようになっている。
【0051】
ここで、補強部21dは、係合部21cに対して裏側に位置することにより、ドラムユニット10や油圧ホース7、ジブ6といった各部の動きを制限しないようになっている。補強部21dは、上述したように係合部21cおよび支持柱21b、軸11aと閉断面をなすことで剛性を確保する役割を担うが、その他にガイドドラム11を支持するうえで剛性を保ち得る構造としては、例えば係合部21cからガイドドラム11を径方向に迂回して表側へ至るような部材を設けることが一般的に考えられる。しかしながら、そのような構造では、前記部材がジブ6に対して表側に長く突出することになり、同じく表側に設けられたドラムユニット10や油圧ホース7とジブ6が相互に動作する上で妨げになる可能性も想定できる。そこで図5に示すように、補強部21dを係合部21cの裏側に設ければ、各部の動きを妨げることなく、ドラムユニット10の支持に十分な剛性を確保することができる。
【0052】
ブーム4におけるドラムユニット10の支持軸11aより上方の位置には、図5に示す如く固定ブラケット22が設けられている。固定ブラケット22は、ブーム4の表面から表側へ突出するように設けられた支持柱22bと、該支持柱22bの先端部に設けられた係合部22cを備えて構成されている。係合部22cは、ジブ6の係合部21cと略同一または略平行の面をなす板状の部材であり、ジブ6に支持されたドラムユニット10に対してすぐ裏側に位置し、軸11a,12aの向きに対して略直交する面をなしている。
【0053】
係合部22cの中央部には固定孔22aが設けられており、ガイドドラム12がガイドドラム11に対して上方に位置する状態において、固定ピン20をドラムユニット10側のピン留め孔13d,13eとブーム4側の固定孔22aに通すことで、ドラムユニット10がブーム4に対し固定されるようになっている(以下、この状態におけるドラムユニット10の位置を「稼働位置」と称する)。
【0054】
また、係合部22cには、図中左側の部分(ブーム4にとって先端側)から下に向かって突出するようにストッパ当接部22dが設けられている。ストッパ当接部22dは、ドラムユニット10のストッパ27の回転軌道内における上方に位置しており、ガイドドラム12がガイドドラム11に対して上方に位置する時に、ドラムユニット10のリンク部材13に備えたストッパ27に当接するようになっている。ドラムユニット10の回転操作時には、ストッパ27がストッパ当接部22dと当接することで、ガイドドラム12がブーム4の先端側へ倒れる向きに回転することを阻止するようになっている。
【0055】
尚、ストッパ27とストッパ当接部21f,22d、およびホース留め23とホース留め当接部21gの干渉によるドラムユニット10の回転の制限については、後に改めて説明する。
【0056】
次に、上記第一実施例における油圧ホース7の掛替えと、これに伴うドラムユニット10の回転操作の手順を説明する。
【0057】
格納時には、図4に示す如くジブ6はブーム4に下抱きされ、ドラムユニット10は、周縁側のガイドドラム12が中心側のガイドドラム11に対して下方に位置している。リンク部材13の中間部のピン留め孔13d,13eに通された固定ピン20は、軸11aに対して下方に位置するジブ6側の固定ブラケット21の固定孔21aにさらに通され、ドラムユニット10が格納位置に保持されている。
【0058】
油圧ホース7は、下抱きされたジブ6にとって上方に位置するブーム4に沿って先端部まで延びた後、ドラムユニット10において上側に位置するガイドドラム11に巻き掛けられ、続いて下側に位置するガイドドラム12に巻き掛けられ、その先は折り返してジブ6の先端側へ延びている。ドラムユニット10の上方には、ブーム4に取り付けられた複数のガイド環14が位置しているが、油圧ホース7はこれらのガイド環14には通されていない。ドラムユニット10の中心側と周縁側にそれぞれ設けられたホース留め23,24は閉状態であり、各ガイドドラム11,12に対して径方向外側に位置するこれらのホース留め23,24と、各ガイドドラム11,12の外周面との間に、ガイドドラム11,12に巻き掛けられた油圧ホース7が拘束されている。
【0059】
この状態から、図8に示す如く固定ピン20を抜き取ると、ドラムユニット10の固定状態が解除され、支持軸11aを中心に回転できるようになる。回転操作の実行に先立ち、周縁側のホース留め24を開姿勢まで引き起こす。このとき、把持部25もあわせて引き起こされる。
【0060】
続いて図9に示す如く、図中における反時計回りにドラムユニット10を回転させていく。この際、周縁側に備えられた把持部25を持って操作すると、回転操作を楽に行うことができる。また、この回転操作をホース留め24を開姿勢としたまま行うことで、ホース留め24をドラムユニット10の裏表方向に関してガイドドラム12より表側の位置に退避させ、回転操作時にホース留め24がガイド環14と干渉することを避けることができる。
【0061】
ドラムユニット10を反時計回りに回転させ、ガイドドラム12を持ち上げると、油圧ホース7に弛みが生じる。そこで、弛んだ油圧ホース7を引き上げ、ドラムユニット10の上方に位置するガイド環14に通す。ガイド環14は、上述の如く開閉可能に構成されているので(図3参照)、これを一旦開いてから、ガイドドラム11の上側にある油圧ホース7をガイド環14の内側に持ち上げ、ガイド環14を閉じる。ここで、本第一実施例におけるガイド環14は、環状構造を開くと、下辺にあたる第三の柱状部材19が下辺の位置から退避するようになっているので、油圧ホース7をガイド環14の内側に移動させるには、単に開いたガイド環14の位置まで油圧ホース7を持ち上げればよい。
【0062】
さらにドラムユニット10を回転させ、図10に示す如くガイドドラム12をガイドドラム11の上方まで引き起こす。ここで、ブーム4やジブ6における各装置の配置によっては、ガイド環14のうち少なくとも一部が、ガイドドラム12の回転範囲内に位置している場合がある。そのような場合、回転の妨げにならぬよう、ガイドドラム12の回転範囲内にあるガイド環14を退避させる。
【0063】
このとき、本第一実施例のガイド環14は、環状構造を開いた際、下辺にあたる第三の柱状部材19が、側辺にあたる第二の柱状部材18と共に上方へ退避するようになっている(図3参照)。よって、ドラムユニット10の回転操作の際、ガイド環14を回転範囲から退避させ得るような機構を別途備えなくとも、図9に示すようにガイド環14を開く操作をすれば回転範囲から退避させることができ、ドラムユニット10の回転操作を支障なく実行することができる。ガイドドラム11をガイド環14と干渉しない位置まで引き起こしたら、図10に示す如くガイド環14を閉じる。また、周縁側のホース留め24を閉姿勢に回動させる。
【0064】
さらに図11に示す如く、リンク部材13のピン留め孔13d,13eの位置をブーム4の固定ブラケット22の固定孔22aに合わせ、固定ピン20を挿入し、ドラムユニット10を稼働位置で固定する。このとき、中心側のホース留め23を開姿勢へ回動させておく。
【0065】
ドラムユニット10を稼働位置に固定したら、図12に示す如くジブ6を振り出すことができる。ブーム4に沿って先端側へ延びてきた油圧ホース7は、ガイド環14を通って軸11aより上側に位置するガイドドラム12まで誘導され、前方に位置するジブ6のガイドドラム9を経由してジブ6の先端側に延びる。ガイドドラム11に巻き掛けられていた油圧ホース7は、ホース留め23が開姿勢に回動されているためホース留め23によって拘束されることなく、ジブ6の振出し動作に伴って自動的にガイドドラム11から外れ、前方へ移動したジブ6のガイドドラム9へ延びることになる。
【0066】
ジブ6を収納し、ブーム4を収縮させ、車両式クレーン1を格納する場合には、上記と逆の手順で作業を行えばよい。
【0067】
尚、上に説明したガイド環14の構成や、油圧ホース7をガイド環14に通す手順、それに伴うガイド環14の開閉の手順等はあくまで一例であって、本発明の実施にあたり、これらについては適宜変更を加えてもよい。例えば、上に説明したように環状構造の下辺をなす部材(第三の柱状部材19)が退避するような構造のガイド環14(図3参照)を採用する場合、油圧ホース7をガイド環14に通す作業は次のような手順で行ってもよい。まず、ガイド環14を開いてからドラムユニット10を回転させると、ガイドドラム12の引き起こしに伴って油圧ホース7が持ち上がる。このとき、第三の柱状部材19はガイド環14の環状構造の下辺から退避しているので、ドラムユニット10の配置によっては、持ち上がった油圧ホース7はそのままガイド環14の内側に入る。その状態からガイド環14を閉じれば、油圧ホース7をガイド環14に通す作業が完了する。つまり、ガイド環14を開いてからドラムユニット10を回転させ、続いてガイド環14を通すだけで、図8の状態から図10の状態までの作業を完了することができる。
【0068】
また、ガイド環14の構造としては、例えば環状構造を開く際、第三の柱状部材19の位置はそのままで、側辺にあたる第二の柱状部材18が退避するような構造を採用することも可能である。尚、ガイド環14がこのような構造である場合には、図8の状態から図9の状態へ至る際、油圧ホース7をガイド環14の内側に収めるために、油圧ホース7に第三の柱状部材19を迂回させる操作をする必要がある。また、ガイド環14を開いた際、第三の柱状部材19が環状構造の下辺から退避しないため、ガイド環14に対するドラムユニット10の配置によっては、ガイド環14をドラムユニット10の回転範囲から退避させ得るような機構を別途備える必要がある。
【0069】
本第一実施例の最大の特徴は、上記一連の回転操作において、ドラムユニット10の回転を図中における反時計回りに行えるようにしたことである。ここで、「時計回り」とは、すなわち周縁側のガイドドラム12が、中心側のガイドドラム11と、該ガイドドラム11を取り巻く油圧ホース7の間を経由する向きであり、「反時計回り」はその反対側の回転方向である。
【0070】
図4に示す格納位置から、ドラムユニット10を軸11aを中心に回転させて、図11に示す稼働位置まで引き起こすことを考える。図4に示す状態において、ドラムユニット10を軸11aに沿った向きに表側から見ると、右方から延びる油圧ホース7が、中心側のガイドドラム11に上から巻き掛けられて折返し、右下へ延びている。ガイドドラム11の外周を、油圧ホース7がC字状に取り巻いている形である。
【0071】
このような中心側のガイドドラム11と油圧ホース7の位置関係において、周縁側のガイドドラム12は、油圧ホース7に対して中心側のガイドドラム11と同じ側(C字の内側。ガイドドラム11の上側を通る油圧ホース7にとってはガイドドラム11と同じ下側、ガイドドラム11の外周を取り巻く油圧ホース7にとってはガイドドラム11と同じ内側、ガイドドラム11の下側を通る油圧ホース7にとってはガイドドラム11と同じ上側)に位置している。この状態からドラムユニット10を回転操作する場合、中心側のガイドドラム11の周囲を周縁側のガイドドラム12が回転する形となる。
【0072】
ここで、ドラムユニット10を時計回りに回転させる場合、周縁側のガイドドラム12が、中心側のガイドドラム11と、該ガイドドラム11に巻き掛けられた油圧ホース7との間を経由することになるので、ここをガイドドラム12が通る余地を作るために油圧ホース7を引き出す作業が必要である。油圧ホース7には、ホースリール8(図1図2参照)から張力が加えられており、さらに油圧ホース7の自重や内部を流通するオイルの重量もあるため、この引出し作業を人力で行う場合、相応の力が必要である。
【0073】
一方、ドラムユニット10を反時計回りに回転させる場合には、ガイドドラム12がガイドドラム11と油圧ホース7の間を経由しないので、ドラムユニット10を格納位置から稼働位置へ引き起こすまでの間、油圧ホース7の引出しは不要であるか、最小限に抑えることができる。
【0074】
すなわち、ホースリール8がモータ式である場合は、動力であるモータを停止すれば油圧ホース7に対し巻取り力は発生せず、油圧ホース7に弛みが生じても、油圧ホース7が自動的に巻き取られることはない。よって、ドラムユニット10を反時計回りに回転させる場合には、作業を通じて油圧ホース7を引き出す必要はない。
【0075】
ホースリール8がゼンマイ式である場合は、油圧ホース7に対し常時巻取り力が発生しており、油圧ホース7に弛みが生じれば自動的に巻き取られてしまう。このため、ドラムユニット10を反時計回りに回転する場合であっても、回転操作の後半には油圧ホース7を引き出す作業が必要である。しかしながら、ドラムユニット10を時計回りに回転させることを考えると、回転操作の前半で油圧ホース7を大きく引き出し、その後もホースリール8の巻取り力に抗しながらドラムユニット10をゆっくりと操作しなくてはならない。これと比較すれば、反時計回りに回転する場合、必要な引出し量は少なく、また巻取り力に抗して行う作業の量も少ない。
【0076】
また、ブーム4やジブ6における機器や部品類の配置、あるいは作業時における周囲の状況によっては、ドラムユニット10の前方に何らかの物体が存在し、ドラムユニット10を反時計回りに回転させようとしても、作業のための空間を確保することが難しい可能性も想定できる。本第一実施例のように、ドラムユニット10を時計回りに回転できるようにしておけば、ドラムユニット10の引き起こしを最低限の移動量で完了させることができ、回転のための空間を確保する作業が別途生じるようなことはない。
【0077】
このように、ホースリール8の型式にかかわらず、ドラムユニット10を引き起こすにあたり、反時計回りに回転させる方が作業を楽に行うことができる。
【0078】
尚、ドラムユニット10が格納位置にある状態における油圧ホース7の繰出し長さは、格納位置におけるガイドドラム12の角度によって調整できる。そこで、ホースリール8がモータ式であり、モータをオフにした状態で作業を行う場合には、格納位置のドラムユニット10に巻き掛けられた状態における油圧ホース7の繰出し長さが、稼働位置のドラムユニット10に巻き掛けられた状態における油圧ホース7の繰出し長さと等しくなるか、少なくともそれに近い長さになるよう、格納位置におけるドラムユニット10の角度を設定しておくとよい。このようにすれば、掛替えに伴う油圧ホース7の引出し作業を不要にするか、引き出し量を抑えることができるし、また、掛替え後の油圧ホース7の弛みも無くすか、少なくすることができる。こうして、油圧ホース7の掛替えに伴うドラムユニット10の操作の負担を大幅に低減することができる。
【0079】
さらに本第一実施例では、上述のようにガード部26やストッパ27を設けることでドラムユニット10の回転範囲を制限し、安全の確保や作業性のさらなる向上を図っている。
【0080】
図13図15は、上記の一連の操作(図8図12)におけるドラムユニット10および固定ブラケット21,22の各構成部材同士の位置関係を簡易的に示している。
【0081】
図4に示す状態から、図8に示すように固定ピン20を取り外すと、ドラムユニット10の固定状態が解除される。この状態においては、図13に示す如く、ドラムユニット10に設けられたストッパ27の回転軌道における下方の位置に、固定ブラケット21のストッパ当接部21fが位置している。このため、ガイドドラム12の自重により、ガイドドラム12が下方へ向かう向きにドラムユニット10が回転しようとしても、ストッパ27がストッパ当接部21fと当接することで回転が止まる。
【0082】
また、図10に示すようにドラムユニット10を引き起こしてからガイド環14を閉じると、図14に示す如く、ガイド環14の一部がドラムユニット10の回転範囲内に位置する。この状態においては、ドラムユニット10の周縁側の端部に取り付けられた把持部25がガイド環14に干渉し得る。ここで、把持部25には、支持軸11aに関して径方向外側へ突出するようにガード部26が設けられているので、ガイド環14に接触し得るのは専らこのガード部26である。
【0083】
ドラムユニット10を引き起こした状態において、周縁側のガイドドラム12には油圧ホース7が巻き掛かっており、この油圧ホース7からガイドドラム12に加わる力は、ガイドドラム12の自重と共に、ドラムユニット10を時計回りに回転させる向きに作用する。ここで、把持部25に作業者の手等がかかっていると、作業者の意図する回転方向(反時計回り)に反し、ドラムユニット10が作業者の手ごと時計回りに回転しようとすることが考えられる。このとき、把持部25より径方向外側へ突出するガード部26がガイド環14に接触すると、それ以上の回転が止められ、把持部25にかかった作業者の手がガイド環14に接触するような事態は未然に防止される。
【0084】
また、ドラムユニット10を引き起こした状態においては、図14に示す如く、ドラムユニット10に設けられたストッパ27の回転軌道における前方(図中左側)の位置に、固定ブラケット22のストッパ当接部22dが位置している。このため、仮にガイドドラム12が前方へ向かう向きにドラムユニット10が回転しようとしても、ストッパ27がストッパ当接部22dと当接することで回転が止まる。
【0085】
また、図11に示す稼働位置までドラムユニット10を引き起こす過程において、ドラムユニット10の中心側のホース留め23が図10図13に示す如く閉姿勢にある場合、ホース留め23の回転軌道における下側の位置に固定ブラケット21のホース留め当接部21gが位置しており、このホース留め当接部21gがホース留め23と当接するので、ドラムユニット10を稼働位置まで回動させることができない。このため、ドラムユニット10の回動操作を完遂しようとすれば、必ず図11図14に示す如く、ホース留め23を開姿勢に引き起こす必要がある。仮にホース留め23を閉姿勢にしたままジブ6を振り出してしまうと、油圧ホース7の動きが不適切に拘束されて油圧ホース7が破損したり、ブーム4やジブ6の稼働に不具合が生じるなどの可能性があるが、本第一実施例の如きホース留め当接部21gを備えていれば、ジブ6の振出しに先立つドラムユニット10の回転操作時に必ずホース留め23を開姿勢に引き起こすことになるので、ホース留め23の開き忘れを未然に防止することができる。
【0086】
尚、ジブ6を振り出した状態においては、図15に示すように、ジブ6とブーム4の固定ブラケット21,22が相互に干渉したり、これらにドラムユニット10のストッパ27が干渉するようなことはなく、ジブ6の動作に支障は生じない。ブーム4側の固定ブラケット22に対し、ジブ6側の固定ブラケット21は下方に位置しており、また、軸11aと同軸の回動軸6aを中心としたジブ6の振出し動作に伴い、ジブ6側の固定ブラケット21はブーム4側の固定ブラケット22の下方を回動するので、固定ブラケット21,22の寸法や形状を適切に調整することにより、相互の干渉を防止することができる。
【0087】
図16図17は、本発明の実施によるドラムユニットの形態の別の一例を示している。本第二実施例のドラムユニット30は、ガイドドラム11,12の軸11a,12aをリンク部材13により相互に連結し、軸11aを中心として全体を回転可能に構成されている点は上記第一実施例と共通しているが、ホース留めの仕組みや固定ピンによる固定の位置、回動操作のための把持部の構成が第一実施例と異なっている。
【0088】
本第二実施例の場合、固定ピン20の挿入される孔として、リンク部材13の中間部に設けられたピン留め孔13d,13eの他に、リンク部材13の中心側の端部に設けられたピン留め孔13f,13gを備えている。ピン留め孔13d,13eは、上記第一実施例(図4参照)におけるピン留め孔13d,13eと同様、稼働位置におけるドラムユニット10の係留機構として機能する。ピン留め孔13f,13gは、格納位置におけるドラムユニット10の係留機構としての機能のほか、中心側のガイドドラム11のホース留め機構としての機能を有する。
【0089】
ドラムユニット30のリンク部材13を構成する第一主材13hおよび第二主材13iは、中心側の端部がガイドドラム11の回転軸11aに関して径方向外側まで延びており、ピン留め孔13f,13gは、ガイドドラム11の回転軸11aに関して径方向外側の位置に設けられている。また、ジブ6側の固定ブラケット31には、格納位置にあるドラムユニット30のピン留め孔13f,13gと向かい合う位置に係留機構としての固定孔31aが設けてある。そして、格納位置にあるドラムユニット30のピン留め孔13f,13gと、固定ブラケット31の固定孔31aを貫通するように固定ピン20を挿入することにより、ドラムユニット30を格納位置で固定できるようになっている。この状態において、固定ピン20は、ドラムユニット30を固定する機能に加え、第一実施例におけるホース留め23(図4参照)の閉姿勢時と同様、ガイドドラム11に巻き掛けられた油圧ホース7を拘束する機能を兼ねる。
【0090】
また、第一、第二主材13h,13iの周縁側の端部は、周縁側のガイドドラム12の回転軸12aに関して径方向外側まで延びており、そのガイドドラム12の回転軸12aに関して径方向外側の位置には、それぞれ係留機構としてのピン留め孔13j,13kが設けられている。ピン留め孔13j,13kにはホース留めピン32が挿入され、このホース留めピン32により、第一実施例におけるホース留め24(図4参照)の閉姿勢時と同様の機能(ガイドドラム12に巻き掛けられた油圧ホース7を拘束する機能)を発揮するようになっている。
【0091】
また、第一主材13hの周縁側寄りの位置には、把持部33が設けられている。本第二実施例の把持部33は、第一主材13hの表側に突出するように取り付けられたコの字型の部材であり、この把持部33を掴んでドラムユニット30の回転操作を行えるようになっている。
【0092】
図16に示す状態から油圧ホース7を掛け替える場合、まず図18に示す如く、ピン留め孔13f,13gから固定ピン20を取り外し、またピン留め孔13j,13kからホース留めピン32を取り外す。係留機構としてのピン留め孔13f,13gから固定ピン20を取り外すとドラムユニット30の固定状態が解除されるので、把持部33を把持してドラムユニット30を反時計回りに回転させ、図19に示すように引き起こす。リンク部材13の中間部に設けられたピン留め孔13d,13eの位置を、ブーム4側の固定ブラケット22に設けられた固定孔22aの位置に合わせ、係留機構としてのピン留め孔13d,13eと固定孔22aに固定ピン20を挿入すると、ドラムユニット10が稼働位置で固定される。ホース留めピン32は、再びピン留め孔13j,13kへ挿入する。
【0093】
こうして、本第二実施例においても、上記第一実施例(図4図8図12参照)と同様の手順により油圧ホース7の掛替えやドラムユニット30の回転操作を行うことができるようになっている。ここで、本第二実施例の場合、上述の如く格納位置において固定ピン20がホース留めとしての機能を兼ねることにより、ホース留めの外し忘れを防止できるようになっている。すなわち、ドラムユニット30を格納位置から稼働位置まで回転させようとする場合には、固定ピン20の取り外しが必須であり、この時に中心側のホース留めである固定ピン20が取り外されることになる。これにより、回転操作時における中心側のホース留めの外し忘れを未然に防止することができる。
【0094】
尚、以上に説明した第一、第二の各実施例は、細部の仕様を変更したり、それぞれの構成を適宜組み合わせるなど、適宜変形させてもよい。例えば、ドラムユニットの一端側には第一実施例の如き回動式のホース留めを設け、他端側には、第二実施例の如きホース留めピンによるホース留め機構を設けてもよい。また、第二実施例の如き把持部を備える場合も、もし回転操作時に把持部と干渉し得る部材が周囲に存在するのであれば、支持軸に関して径方向外側へ張り出す形でガード部を備えることができる。ストッパの位置や、係留機構(ピン留め孔や固定孔)の位置も、実際の機器の構成に合わせて調整すればよい。また、ガイド環に関しても、環状構造を開閉するための機構や、ドラムユニットの回転範囲から退避する機構として、上に説明した以外に種々の機構を想定できる。その他、ガイド機構を構成する各部の構成や位置等は適宜変更することができる。
【0095】
以上のように、上記各実施例のホースのガイド機構は、支持軸(軸)11aを中心として回転可能に支持され、支持軸11aに近い側に位置してホース(油圧ホース)7を巻き掛けられる中心側のガイドドラム11と、支持軸11aから遠い側に位置してホース7を巻き掛けられる周縁側のガイドドラム12と、中心側のガイドドラム11と周縁側のガイドドラム12の回転軸11a,12a同士を接続するリンク部材13とを備えたドラムユニット10,30を備え、支持軸11aを中心としたドラムユニット10,30の回転操作を、ホース7に対して中心側のガイドドラム11と同じ側に位置する周縁側のガイドドラム12が、中心側のガイドドラム12と、該中心側のガイドドラム12を取り巻くホース7の間を経由する向きと反対向きに行えるよう構成されている。このようにすれば、ホース7の掛替えに伴うホース7の引出し作業の負担を軽減することができる。
【0096】
また、上記各実施例に関し、ドラムユニット10,30は、ブーム4の先端に振出し式のジブ6を備えたクレーン(車両式クレーン)1において、ブーム4におけるジブ6の接続部に設置されている。このようにすれば、振出し式のジブ6を備えたクレーン1において、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0097】
また、一部の実施例は、中心側のガイドドラム11または周縁側のガイドドラム12の少なくともいずれか一方(実施例では、両方)に、ガイドドラム12の回転軸12aに関して径方向外側に位置してホース7を拘束する閉姿勢と、ホース7を拘束しない開姿勢との間で回動可能なホース留め23,24を備えている。このようにすれば、稼働状況に応じてホース7の動きを拘束し、また拘束を解除することができる。
【0098】
また、一部の実施例には、閉姿勢にあるホース留め23の回転軌道上に位置し、ホース留め23と当接するホース留め当接部21gを設けている。このようにすれば、ホース留め23を閉状態としたままで回転操作を実行してしまうことを防止することができる。
【0099】
また、一部の実施例において、ドラムユニット30は、中心側のガイドドラム11または周縁側のガイドドラム12の少なくともいずれか一方(実施例では、一方のガイドドラム11)に、ガイドドラム11の回転軸11aに関して径方向外側にホース7の動きを拘束する固定ピン20を取付可能なホース留め機構(ピン留め孔13f,13g)を備えると共に、前記ホース留め機構(ピン留め孔13f,13g)に取り付けられた固定ピン20により、ドラムユニット30の位置が固定されるよう構成されている。このようにすれば、ドラムユニット30の回転操作時に固定ピン20の取り外しを必須とすることで、ホース留め機構の外し忘れを未然に防止することができる。
【0100】
また、各実施例は、ドラムユニット10,30の回転操作の際に把持可能な把持部25,33をドラムユニット10,30の周縁側に備えている。このようにすれば、ドラムユニット10,30の回転操作を楽に行うことができる。
【0101】
また、一部の実施例は、把持部25から支持軸11aに関して径方向外側へ張り出すガード部26を備えている。このようにすれば、ガード部26が別の部材に接触することによって、それ以上のドラムユニット30の回転が止められ、これにより、把持部25にかかった作業者の手が前記部材に接触するような事態を防止することができる。
【0102】
また、各実施例では、ドラムユニット10,30の上方に、ホース7を通すガイド環14が位置し、ガイド環14は、開放時に下辺に位置する部材(第三の柱状部材19)が上方へ退避するよう構成されている。このようにすれば、ドラムユニット10の回転操作の際、ガイド環14を回転範囲から退避させ得るような機構を別途備えなくとも、ガイド環14を開く操作をすれば回転範囲から退避させることができ、ドラムユニット10の回転操作を支障なく実行することができる。
【0103】
また、一部の実施例には、ドラムユニット10から裏側へ突出するストッパ27と、ストッパ27の回転軌道上に位置し、ストッパ27と当接するストッパ当接部21f,22dが設けられている。このようにすれば、ドラムユニット10の回転操作に際してドラムユニット10の回転範囲を制限し、安全の確保や作業性の向上を図ることができる。
【0104】
また、各実施例では、上述のホースのガイド機構を建設機械(車両式クレーン1)に適用している。このようにすれば、建設機械1において上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0105】
したがって、上記本実施例によれば、ホースの掛替えに伴う作業を簡便に行い得る。
【0106】
尚、本発明のホースのガイド機構および建設機械は、上述の実施例にのみ限定されるものではない。例えば、上記実施例では建設機械として振出し式のジブを搭載した車両型クレーンを想定したが、本発明はその他の種類の建設機械にも適用できる。例えば、振出し式のジブを搭載しないクレーンや、車両式でないクレーン、さらには高所作業車などクレーン以外の建設機械も適用対象として想定できる。油圧ホース等のホースを巻き掛ける複数のガイドドラムを備え、装置上における該ガイドドラムの位置が変動するような機構を備えている限りにおいて、本発明は種々の建設機械に適用することができる。その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、実施形態には種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0107】
1 クレーン(車両式クレーン、建設機械)
4 ブーム
6 ジブ
7 ホース(油圧ホース)
10 ドラムユニット
11 ガイドドラム(中心側のガイドドラム)
11a 軸(支持軸、回転軸)
12 ガイドドラム(周縁側のガイドドラム)
12a 軸(回転軸)
13 リンク部材
13f ピン留め孔(ホース留め機構)
13g ピン留め孔(ホース留め機構)
14 ガイド環
20 固定ピン
21f ストッパ当接部
21g ホース留め当接部
22a 固定孔(係留機構)
22d ストッパ当接部
23 ホース留め
24 ホース留め
25 把持部
27 ストッパ
30 ドラムユニット
31a 固定孔(係留機構)
33 把持部
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