(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】回転機械のラビング位置同定装置、及び、ラビング位置同定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 29/14 20060101AFI20241023BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20241023BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241023BHJP
【FI】
G01N29/14
G01N29/07
G01M99/00 A
(21)【出願番号】P 2021054045
(22)【出願日】2021-03-26
【審査請求日】2023-10-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 理
(72)【発明者】
【氏名】川畠 竜
(72)【発明者】
【氏名】石沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】山下 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 良典
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開昭54-149696(JP,A)
【文献】実開昭61-021964(JP,U)
【文献】特開2003-149043(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0160849(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01H 17/00
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する回転機械のラビング位置同定装置であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサと、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記一対の第1AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット、又は、前記第2静止部を含む第2ユニットのいずれであるかを判定するためのラビング位置同定部と、
を備え、
前記軸受は、前記軸方向に沿って互いに隣接するように配置された第1軸受及び第2軸受を含み、
前記第1軸受に取り付けられた第4AEセンサと、
前記第2軸受に取り付けられた第5AEセンサと、
を更に備え、
前記ラビング位置同定部は、前記第4AEセンサ及び前記第5AEセンサで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づいて、前記ラビングの発生位置を同定する、回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項2】
前記ラビング位置同定部は、前記一対の第1AEセンサのいずれか一方で前記ラビングに対応する前記AE信号が検出された場合に、当該AE信号が検出された前記第1AEセンサが取り付けられたユニットを前記ラビングの発生位置として同定する、請求項1に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項3】
前記一対の第1AEセンサ、前記第4AEセンサ又は前記第5AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの有無を判定するためのラビング判定部と、
を更に備える、請求項1又は2に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項4】
前記一対の第1AEセンサは、前記第1静止部及び前記第2静止部のうち前記軸受側の第1端部に取り付けられる、請求項1から3のいずれか一項に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項5】
前記第1静止部及び前記第2静止部のうち前記第1端部とは反対側の第2端部にそれぞれ取り付けられる一対の第3AEセンサを更に備え、
前記ラビング位置同定部は、前記一対の第1AEセンサ及び前記一対の第3AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置を同定する、請求項4に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項6】
前記回転部は、接合部を介して軸方向に沿って互いに連結された複数の部材を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項7】
前記第1ユニット及び前記第2ユニットは、前記第1静止部及び前記第2静止部と前記回転部との間に作動流体を導入するための入口部をそれぞれ有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の回転機械のラビング位置同定装置。
【請求項8】
軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する回転機械のラビング位置同定方法であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサでAE信号を検出する工程と、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記AE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット、又は、前記第2静止部を含む第2ユニットのいずれであるかを判定する工程と、
を備え、
前記軸受は、前記軸方向に沿って互いに隣接するように配置された第1軸受及び第2軸受を含み、
前記第1軸受に取り付けられた第4AEセンサと、
前記第2軸受に取り付けられた第5AEセンサと、
を更に備え、
前記ラビングの発生位置を判定する工程では、前記第4AEセンサ及び前記第5AEセンサで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づいて、前記ラビングの発生位置を同定する、回転機械のラビング位置同定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転機械のラビング位置同定装置、及び、ラビング位置同定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
静止部に対して回転可能な回転部を備える回転機械では、静止部と回転部との間に存在するクリアランスが縮小することで、ラビング(接触)が発生することがある。例えば蒸気を作動流体とする蒸気タービンでは、運転中に外部車室や内部車室等の静止部が熱変形することにより、静止部に設けられたシールフィンと、回転部であるロータとの間にラビングが発生することがある。また近年、回転機械の性能向上のためにクリアランスが縮小される傾向にあるため、ラビングの発生リスクが高まっている。このようなラビングの発生は、回転機械の軸振動や、シール劣化による性能低下をもたらすため、ラビング発生を早期に検知し、運転にフィードバックする技術が求められている。
【0003】
このような要求に対して、例えば特許文献1では、AE(Acoustic Emisson)信号を検出可能なAEセンサを用いたラビングの検出技術が開示されている。特許文献1では、回転機械において回転部を両側で支持する軸受の各々にAEセンサを設置し、各AEセンサで検出されたAE信号に基づいてラビングを検出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1では、回転部を両側で支持する各軸受に設けられたAEセンサで検出されるAE信号に基づいてラビングの有無を判断しているが、ラビングの発生位置の特定がなされていない。そのため特許文献1でラビングが検知された場合、ラビングを解消又は緩和するために、回転機械の全体を対象に対処を検討しなければならない。一方で、ラビングの発生位置を特定することができれば、対象を回転機械の特定範囲に絞り込むことができ、効率化を図ることができる。
【0006】
また回転機械において回転部を支持する軸受が複数ある場合には、特許文献1に倣って、各軸受にAEセンサを設置し、ラビングを検知したAEセンサの位置からラビングの発生位置を絞り込むことも考えられる。しかしながら、例えば回転部が互いに異なる複数の部材が軸方向に連結されて構成されている場合、ラビングの発生位置からのAE信号が連結部において遮断され、然るべき位置のAEセンサにおいてラビングを検知できないことがある。また作動流体によって動作する回転機械では、作動流体に起因するノイズがAE信号に含まれてしまい、然るべき位置のAEセンサにおいてラビングを検知できないことがある。またラビングの発生位置からのAE信号が小さい場合にも、然るべき位置のAEセンサにおいてラビングを検知できないことがある。そのため、特許文献1のような技術では、ラビングの発生位置を精度よく特定することが難しい。
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態は上述の事情に鑑みなされたものであり、AEセンサで検出されるAE信号に基づいてラビングの発生位置を精度よく同定可能な回転機械のラビング位置同定装置、及び、ラビング位置同定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のラビング位置同定装置は、上記課題を解決するために、
軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する回転機械のラビング位置同定装置であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサと、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記一対の第1AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット、又は、前記第2静止部を含む第2ユニットのいずれであるかを判定するためのラビング発生位置判定部と、
を備える。
【0009】
本開示の少なくとも一実施形態に係る回転機械のラビング位置同定方法は、上記課題を解決するために、
軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する回転機械のラビング位置同定方法であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサでAE信号を検出する工程と、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記AE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット、又は、前記第2静止部を含む第2ユニットのいずれであるかを判定する工程と、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、AEセンサで検出されるAE信号に基づいてラビングの発生位置を精度よく同定可能な回転機械のラビング位置同定装置、及び、ラビング位置同定方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】一実施形態に係る回転機械の断面構造図である。
【
図2】
図1のラビング位置同定装置によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。
【
図3】他の実施形態に係る回転機械の断面構造図である。
【
図4】
図4のラビング位置同定装置によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。
【
図5】他の実施形態に係る回転機械の断面構造図である。
【
図6】
図5のラビング位置同定装置によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0013】
図1は一実施形態に係る回転機械1の断面構造図である。回転機械1は、静止部2と、静止部2に対して回転可能な回転部4を備える。静止部2は回転機械1のケーシングであり、外部に対して静止している。回転部4は、静止部2に対して軸受6を介して回転可能に支持されており、任意の動力によって駆動可能である。
【0014】
静止部2及び回転部4の間には、クリアランスDが設けられる(より正確には、クリアランスDは、静止部2が有する静翼の最内周部と、回転部4が有する動翼の最外周部(先端)との間に主に形成されるが、静翼が取り付けられる静止体と動翼が取り付けられる回転体との間に至ってもよい)。クリアランスDには、外部から作動流体Wが導入されることにより、回転部4が駆動される。回転部4を駆動した作動流体Wは、外部に排出される。回転機械1の運転時には、静止部2又は回転部4の少なくとも一方が熱等の影響によって変形することで、クリアランスDが縮小し、ラビングが発生することがある。このようなラビングは、後述するAEセンサで検出されるAE信号に基づいて検知可能である。
【0015】
回転機械1は、回転部4の軸方向(延在方向)に沿って配列された複数のユニットUを含む。本実施形態では、回転機械1は、複数のユニットUとして、第1ユニットUa及び第2ユニットUbを有する。回転機械1が有するユニットの数は任意でもよい。
【0016】
第1ユニットUa及び第2ユニットUbは、回転部4を共有しており、それぞれ独立した静止部2(第1静止部2a及び第2静止部2b)を有する。すなわち、第1ユニットUaは第1静止部2a及び回転部4から構成され、第2ユニットUbは第2静止部2b及び回転部4から構成される。
【0017】
回転部4は、任意の動力によって回転可能なロータであり、本実施形態では前述の作動流体Wによって動力が与えられる。本実施形態では、回転部4は軸方向に分割された複数の部材(第1部材4a、第2部材4b)が、接合部4cで互いに連結されて構成される。複数の部材は、互いに異なる材料から構成されていてもよい。この場合、ラビングの発生位置からのAE信号は接合部4cで遮断されやすいが、後述するように回転機械1に取り付けられた各AEセンサ10でAE信号を検出することで、ラビングの発生位置を好適に同定できる。
【0018】
回転機械1は、例えば作動流体Wとして蒸気を用い、各ユニットUが蒸気タービンとして構成されていてもよい。この場合、作動流体Wの流路は、各ユニットUにおいて独立していてもよいし、各ユニットUが直列又は並列に接続されるように構成されていてもよい。例えば、各ユニットUの作動流体Wの流路が直列に接続されている場合、第1ユニットUaは高圧タービンであり、第2ユニットUbは高圧タービンからの蒸気で駆動可能な高圧タービンであってもよい。
【0019】
尚、各ユニットUには、作動流体Wを外部からクリアランスDに導入するための入口部8と、クリアランスDで仕事を終えた作動流体Wを外部に排出するための出口部(不図示)が設けられている。具体的には、第1ユニットUaには第1クリアランスDaに作動流体Wを導入するための第1入口部8aが設けられており、第2ユニットUbには第2クリアランスDbに作動流体Wを導入するための第2入口部8bが設けられている。このような入口部8の近傍では作動流体Wに起因するノイズが発生することで、ラビングの発生位置からのAE信号が遮断されやすいが、後述するように回転機械1に取り付けられた各AEセンサ10でAE信号を検出することで、ラビングの発生位置を好適に同定できる。
【0020】
また回転機械1は、回転部4を支持するための少なくとも1つの軸受6(ラジアル軸受)を有する。本実施形態では、軸受6として、軸受6a、6b及び6cを有する。軸受6aは回転部4の一端側に設けられ、軸受6bは回転部4の中間位置(具体的には、第1ユニットUaを構成する第1静止部2aと第2ユニットUbを構成する第2静止部2bとの間)に設けられ、軸受6cは回転部4の他端側(軸受6aとは反対側)に設けられる。回転部4は、このような複数の軸受6によって回転可能に支持される。
【0021】
ラビング位置同定装置100は、上記構成を有する回転機械1において、AEセンサ10で検出されたAE(Acoustic Emission;高周波出力)信号に基づいてラビングが有ると判定された場合に、ラビングの発生位置を同定するための装置である。回転機械1は、例えば、熱変形を生じた静止部2に取り付けられているシール等が回転部4に対してラビング(擦れ)を発生することによりAE波を生じる。例えば、ラビングの発生個所で生じたAE波は、弾性波として静止部2及び回転部4を伝播し、回転機械1に設置された各AEセンサ10でAE信号として検出される。AE波は、一般的に数10kHz~数MHzの音波領域の周波数を有する。
【0022】
ラビング位置同定装置100は、回転機械1に設置されたAEセンサ10で検出されたAE信号に基づいてラビングが発生した場合に、ラビングの発生位置を同定するための演算を行う演算装置105を備える。演算装置105は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。尚、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0023】
このような演算装置105は、AEセンサ10で検出されたAE信号を取得し、AE信号に基づいてラビングの有無を判定するためのラビング判定部110と、ラビングが有ると判定された場合にラビングの発生位置を同定するためのラビング位置同定部120とを備える。尚、ラビング判定部110におけるラビングの有無に関する判定方法については公知の例に従うとし、詳細は省略する。
【0024】
本実施形態のラビング位置同定装置100は、AEセンサ10として、第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサ10A、10Bを備える。第1静止部2a及び第2静止部2bの間には、前述したように、軸受6bが配置されており、一対の第1AEセンサ10A、10Bは、第1静止部2a及び第2静止部2bのうち軸受6b側の第1端部2a1、2b1に取り付けられている。回転機械1においてラビングが発生した場合には、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE波が、一対のAEセンサ10A、10Bによって好適に検出される。
【0025】
ここで
図2は、
図1のラビング位置同定装置100によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。まずラビング判定部110は、ラビングが有るか否かを判定する(ステップS100)。ステップS100におけるラビング判定は、例えば、一対のAEセンサ10A、10Bの少なくとも一方において検出されるAE信号に基づいて行われる。尚、AEセンサ10A、10Bでそれぞれ検出されたAE信号のいずれにおいてもラビングが無いと判定された場合(ステップS100:NO)、ラビング判定部110はステップS100を繰り返し実施することで、ラビング監視を行う。そしてAEセンサ10A、10Bでそれぞれ検出されたAE信号の少なくとも一方でラビングが有ると判定された場合(ステップS100:YES)、処理を次に進める。
【0026】
尚、本実施形態ではステップS100においてAEセンサで検出されたAE信号に基づいてラビング判定を行う場合を例示しているが、AE信号に代えて、軸振動センサで検出された軸振動信号に基づいてラビング判定を行ってもよいし、AE信号及び軸振動信号の両者に基づいてラビング判定を行ってもよい。
【0027】
ラビング判定部110においてラビングが有ると判定された場合(ステップS100:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビング発生に対応するAE信号が、一対の第1AEセンサ10A、10Bのどちらで検出されたかを判定する。具体的には、ラビング位置同定部120は、一方の第1AEセンサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS101)。その結果、第1AEセンサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS101:YES)、ラビング位置同定部120はラビングの発生位置を第1ユニットUaであると同定する(ステップS102)。一方、第1AEセンサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS101:NO)、ラビング位置同定部120はラビングの発生位置を第2ユニットUbであると同定する(ステップS103)。
【0028】
このようにラビング位置同定部120は、一対の第1AEセンサ10A、10Bのいずれか一方でラビングに対応するAE信号が検出された場合に、当該AE信号が検出された第1AEセンサが取り付けられたユニットをラビングの発生位置として同定することができる。
【0029】
このようなラビングの発生位置の同定は、例えば、以下のような場合に特に有利である。ラビングの発生位置を特定するための構成として、軸受6a、6b、6cにそれぞれAEセンサを配置することが考えられるが、このような構成では、
図1に示すように、軸受6bと6cとの間に回転部4の接合部4cが位置していると(軸受6aと6bとの間に接合部4cがある場合も同様)、接合部4cによってラビング波形が遮断されてしまうことがある。例えば、第1ユニットUa側にラビングの発生位置が有る場合に、軸受6aと6bとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6aに設置されたAEセンサで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。また第2ユニットUb側にラビングの発生位置が有る場合に、
図1に示すように、軸受6bと6cとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6cに設置されたAEセンサで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。
それに対して
図1及び
図2に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10Bで検出できる。そのため、接合部4cの位置に関わらず、第1AEセンサ10A、10Bで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を同定することができる。
【0030】
また
図1に示すように、第1ユニットUa及び第2ユニットUbは、軸受6aと6bとの間、及び、軸受6bと6cとの間に、それぞれ作動流体Wを導入するための第1入口部8a及び第2入口部8bが設けられている。第1入口部8a及び第2入口部8bでは作動流体に起因するノイズが発生するため、軸受6a、6b、6cにそれぞれAEセンサを配置した構成では、ラビングの発生位置によっては各AEセンサで検出されるAE信号にノイズが含まれてしまい、十分な同定精度が得られないおそれがある。
それに対して
図1及び
図2に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10Bで検出できる。そのため、第1入口部8a及び第2入口部8bにおける作動流体Wに起因するノイズの影響を受けにくく、第1AEセンサ10A、10Bで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を精度よく同定することができる。
【0031】
図3は他の実施形態に係る回転機械1の断面構造図である。尚、以下の説明では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付しており、重複する説明は適宜省略することとする。
【0032】
この実施形態では、ラビング位置同定装置100は、AEセンサ10として、軸受6a、6b、6cにそれぞれ取り付けられた第2AEセンサ10C、10D、10Eを更に備える。第2AEセンサ10C、10D、10Eは、軸受6a、6b、6cが備える軸受箱に取り付けられることで、ラビングの発生位置から回転部4を介して軸受6a、6b、6cに伝播するAE波を好適に検出できる。
【0033】
尚、軸受6a、6b、6cの軸受箱が上下分割構造を有する場合、第2センサ10C、10D、10Eは、軸受箱のうち下方側の分割体に取り付けられていてもよい。ラビングは回転機械1の下方側において発生しやすい傾向があるため、このように軸受箱の下方側の分割体に第2センサ10C、10D、10Eを取り付けることで、ラビング発生に対応するAE波を好適に検出することができる。
【0034】
前述の第1AEセンサ10A、10Bは静止部2a、2bに取り付けられることでラビングの発生位置から静止部2a、2bを介して伝播するAE波を検出するため、第2AEセンサ10C、10D、10Eは、第1AEセンサ10A、10Bとは異なる経路で伝播するAE波(例えば回転部4を伝播したAE波)を検出できる。ラビング位置同定装置100は、第1AEセンサ10A、10Bに加えて、第2AEセンサ10C、10D、10Eを備えることで、互いに異なる経路で伝播するAE波に基づいて、より精度のよいラビングの有無判定、及び、ラビングの発生位置の同定を行うことができる。
【0035】
またラビング位置同定装置100は、AEセンサ10として、第3AEセンサ10F、10Gを更に備える。第3AEセンサ10F、10Gは、前述の第1AEセンサ10A、10Bと同様に、第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けられる。第3AEセンサ10F、10Gは、第1静止部2a及び第2静止部2bのうち、第1AEセンサ10A、10Bが取り付けられた第1端部2a1、2b1(軸受6b側)とは反対側の第2端部2a2、2b2にそれぞれ取り付けられる。
【0036】
図4は、
図3のラビング位置同定装置100によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。まずラビング判定部110は、ラビングが有るか否かを判定する(ステップS200)。ステップS200におけるラビング判定は、例えば、第1AEセンサ10A、10B、第2AEセンサ10C、10D、10E、及び、第3AEセンサ10F、10Gのいずれかにおいて、ラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かにより行われる。
【0037】
ラビング判定部110においてラビングが有ると判定された場合(ステップS200:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビング発生に対応するAE信号が、第2AEセンサ10C、10D、10Eのどちらで検出されたかを判定する。すなわち、ラビングの発生位置を同定するために、まずは軸受6a、6b、6cにそれぞれ取り付けられた第2AEセンサ10C、10D、10Eのどこでラビングの発生箇所からのAE波が検出されたかを判定することで、第1段階のラビングの発生位置の同定が行われる。
【0038】
具体的には、ラビング位置同定部120は、軸受6aに取り付けられた第2AEセンサ10Cでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS201)。その結果、第2AEセンサ10Cでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS201:YES)、ラビング位置同定部120は、第1静止部2aに取り付けられた第3センサ10Fでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS202)。その結果、第3AEセンサ10Fでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS202:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第1ユニットUaのうち軸受6a側であると同定する(ステップS203)。一方、第3AEセンサ10Fでラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS202:NO)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第1ユニットUaのどこかであると同定する(ステップS204)。
【0039】
またラビング位置同定部120は、軸受6bに取り付けられた第2AEセンサ10Dでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS205)。その結果、第2AEセンサ10Dでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS205:YES)、ラビング位置同定部120は、第1静止部2aに取り付けられた第1センサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS206)。その結果、第1AEセンサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS206:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第1ユニットUaのうち軸受6b側であると同定する(ステップS207)。一方、第1AEセンサ10Aでラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS206:NO)、ラビング位置同定部120は、第2静止部2bに取り付けられた第1センサ10Bでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS208)。その結果、第1AEセンサ10Bでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS208:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第2ユニットUbのうち軸受6b側であると同定する(ステップS209)。一方、第1AEセンサ10Bでもラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS208:NO)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置が同定不能であると判定する(ステップS210)。
【0040】
またラビング位置同定部120は、第3軸受6cに取り付けられた第2AEセンサ10Eでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS211)。その結果、第2AEセンサ10Eでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS211:YES)、ラビング位置同定部120は、第2静止部2bに取り付けられた第3センサ10Gでラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かを判定する(ステップS212)。その結果、第3AEセンサ10Gでラビング発生に対応するAE信号が検出された場合(ステップS212:YES)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第2ユニットUbのうち第3軸受6c側であると同定する(ステップS213)。一方、第3AEセンサ10Gでラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS212:NO)、ラビング位置同定部120は、ラビングの発生位置を第2ユニットUbのどこかであると同定する(ステップS214)。
尚、第2AEセンサ10Eでラビング発生に対応するAE信号が検出されなかった場合(ステップS211:NO)、ラビング位置同定部120は、ステップS200でラビングが有ると判定したAE信号を検出したAEセンサの設置位置に基づいてラビングの発生位置を同定する(ステップS215)。
【0041】
このように本実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bに加えて、第2AEセンサ10C、10D、10E及び第3AEセンサ10F、10Gで検出したAE信号に基づいて、回転機械1におけるラビングの発生位置をより詳細に同定することができる。
【0042】
このようなラビングの発生位置の同定は、例えば、以下のような場合に特に有利である。ラビングの発生位置を特定するための構成として、軸受6a、6b、6cにそれぞれ第2AEセンサ10C、10D、10Eのみを配置することが考えられるが、このような構成では、
図3に示すように、軸受6bと6cとの間に回転部4の接合部4cが位置していると(軸受6aと6bとの間に接合部4cがある場合も同様)、接合部4cによってラビング波形が遮断されてしまうことがある。例えば、第1ユニットUa側にラビングの発生位置が有る場合に、軸受6aと6bとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6aに設置された第2AEセンサ10Cで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。また第2ユニットUb側にラビングの発生位置が有る場合に、
図3に示すように、軸受6bと6cとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6cに設置された第2AEセンサ10Eで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。
それに対して
図3及び
図4に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けるとともに、第3AEセンサ10F、10Gをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで検出できる。そのため、接合部4cの位置に関わらず、第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を同定することができる。
【0043】
また
図1に示すように、第1ユニットUa及び第2ユニットUbは、軸受6aと6bとの間、及び、軸受6bと6cとの間に、それぞれ作動流体Wを導入するための第1入口部8a及び第2入口部8bが設けられている。第1入口部8a及び第2入口部8bでは作動流体に起因するノイズが発生するため、軸受6a、6b、6cにそれぞれ第2AEセンサ10C、10D、10Eのみを配置した構成では、ラビングの発生位置によっては各AEセンサで検出されるAE信号にノイズが含まれてしまい、十分な同定精度が得られないおそれがある。
それに対して
図3及び
図4に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けるとともに、第3AEセンサ10F、10Gをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで検出できる。そのため、第1入口部8a及び第2入口部8bにおける作動流体Wに起因するノイズの影響を受けにくく、第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を精度よく同定することができる。
【0044】
図5は他の実施形態に係る回転機械1の断面構造図である。尚、以下の説明では、前述の実施形態に対応する構成には共通の符号を付しており、重複する説明は適宜省略することとする。
【0045】
この実施形態では、回転機械1のうち第1静止部2a及び第2静止部2bの間に配置された軸受6bは、回転部4の軸方向に沿って配置された第1軸受6b-1及び第2軸受6b-2を含む。第1軸受6b-1及び第2軸受6b-2は、回転部4を回転可能に支持するラジアル軸受であり、共通の軸受箱に収容されている。軸受箱には、
図3に示す実施形態における第2AEセンサDに代えて、第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iが取り付けられている。第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iは軸受箱のうち、軸方向に沿った異なる位置に、間隔ΔLでそれぞれ配置されている。
【0046】
図6は、
図5のラビング位置同定装置100によって実施されるラビング位置同定方法を示すフローチャートである。まずラビング判定部110は、ラビングが有るか否かを判定する(ステップS300)。ステップS
300におけるラビング判定は、例えば、第1AEセンサ10A、10B、第3AEセンサ10F、10G、第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iのいずれかにおいて、ラビング発生に対応するAE信号が検出されたか否かにより行われる。
【0047】
続いてラビング位置同定部120は、第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づいて、ラビングの発生位置を同定する(ステップS301)。第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iは前述のように互いに間隔ΔLで配置されているため、ラビングからのAE波を検出するタイミングに少なからず時間差又は位相差が生じることから、ステップS301では、このような時間差又は位相差を評価することにより、ラビングの発生位置が第1ユニットUaにあるか、第2ユニットUbにあるかを同定することができる。例えば、第4AEセンサ10Hにおいて第5AEセンサ10Iより早いタイミングでAE波を検出した場合には、ラビングの発生位置が第4AEセンサ10Hに近い第1ユニットUaにあると同定される。一方、第5AEセンサ10Iにおいて第4AEセンサ10Hより早いタイミングでAE波を検出した場合には、ラビングの発生位置が第5AEセンサ10Iに近い第2ユニットUbにあると同定される。
【0048】
尚、ラビング位置同定部120は、更に、第1AEセンサ10A、10B、第3AEセンサ10F、10G、第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iで検出されたAE信号に基づいて前述の実施形態と同様にラビングの発生位置を同定し、その同定結果を、ステップS301の同定結果と照合してもよい。この照合結果は、例えば、所定の記録装置に記録することで適宜利用可能である。
【0049】
このように本実施形態では、前述の実施形態と同様に各AEセンサ10で検出されたAE信号に基づくラビングの発生位置の同定結果を、第4AEセンサ10H及び第5AEセンサ10Iで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づく同定結果と照合することにより、より良い精度でラビングの発生位置を同定できる。
【0050】
このようなラビングの発生位置の同定は、例えば、以下のような場合に特に有利である。ラビングの発生位置を特定するための構成として、軸受6a、6b-1、6b-2、6cにそれぞれAEセンサ10C、10H、10I、10Eのみを配置することが考えられるが、このような構成では、
図5に示すように、軸受6bと6cとの間に回転部4の接合部4cが位置していると(軸受6aと6bとの間に接合部4cがある場合も同様)、接合部4cによってラビング波形が遮断されてしまうことがある。例えば、第1ユニットUa側にラビングの発生位置が有る場合に、軸受6aと6bとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6aに設置された第2AEセンサ10Cで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。また第2ユニットUb側にラビングの発生位置が有る場合に、
図5に示すように、軸受6bと6cとの間に接合部4cがあると、ラビングの発生位置からのAE信号が接合部4cで遮断されてしまい、軸受6cに設置された第2AEセンサ10Eで検知することができず、ラビングの発生位置の同定が困難になってしまうことがある。
それに対して
図5及び
図6に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けるとともに、第3AEセンサ10F、10Gをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで検出できる。そのため、接合部4cの位置に関わらず、第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を同定することができる。
【0051】
また
図1に示すように、第1ユニットUa及び第2ユニットUbは、軸受6aと6bとの間、及び、軸受6bと6cとの間に、それぞれ作動流体Wを導入するための第1入口部8a及び第2入口部8bが設けられている。第1入口部8a及び第2入口部8bでは作動流体に起因するノイズが発生するため、軸受6a、6b-1、6b-2、6cにそれぞれAEセンサ10C、10H、10I、10Eのみを配置した構成では、ラビングの発生位置によっては各AEセンサで検出されるAE信号にノイズが含まれてしまい、十分な同定精度が得られないおそれがある。
それに対して
図5及び
図6に示す実施形態では、第1AEセンサ10A、10Bをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けるとともに、第3AEセンサ10F、10Gをそれぞれ第1静止部2a及び第2静止部2bにそれぞれ取り付けることで、ラビングの発生位置から第1静止部2a及び第2静止部2bを伝播するAE信号を第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで検出できる。そのため、第1入口部8a及び第2入口部8bにおける作動流体Wに起因するノイズの影響を受けにくく、第1AEセンサ10A、10B及び第3AEセンサ10F、10Gで的確にAE信号を検出し、当該AE信号に基づいてラビングの発生位置を精度よく同定することができる。
【0052】
上述の各実施形態では、回転機械1におけるラビングの発生位置が同定される。このようなラビングの発生位置の同定結果は、回転機械1で発生しているラビングを解消又は緩和するための各種対策に利用可能である。例えば、ラビングの発生位置が第1ユニットUa又は第2ユニットUbのいずれか一方にあることが同定された場合、回転機械1の全体ではなく、当該ユニットを対象に対策を実施すればよい。このような対策として、ラビングの発生位置を含む箇所を開放し点検することがあるが、対策の実施対象となるユニットを特定することで、対策に要する負担を大幅に軽減できる。その結果、対策に必要なコストや工期を効果的に抑制することができる。またラビングの解消又は緩和のために運転方法を変更することも考えられるが、このような対策の場合においても、実施対象となるユニットを特定することで、効果的に実施することができる。
【0053】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0054】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0055】
(1)一態様に係る回転機械のラビング位置同定装置は、
軸方向に沿って配置される第1静止部(例えば上記実施形態の第1静止部2a)及び第2静止部(例えば上記実施形態の第2静止部2b)の間に配置される軸受(例えば上記実施形態の軸受6b)によって回転可能に支持される回転部(例えば上記実施形態の回転部4)を有する回転機械(例えば上記実施形態の回転機械1)のラビング位置同定装置(例えば上記実施形態のラビング位置同定装置100)であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサ(例えば上記実施形態の第1AEセンサ10A、10B)と、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記一対の第1AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット(例えば上記実施形態の第1ユニットUa)、又は、前記第2静止部を含む第2ユニット(例えば上記実施形態の第2ユニットUb)のいずれであるかを判定するためのラビング位置同定部(例えば上記実施形態のラビング位置同定部120)と、
を備える。
【0056】
上記(1)の態様によれば、回転機械は軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する。第1静止部及び第2静止部には、それぞれ一対の第1AEセンサが取り付けられる。回転機械でラビングが発生した場合には、一対の第1AEセンサでそれぞれ検出されたAE信号に基づいて、回転機械のうち第1静止部を含む第1ユニット、又は、第2静止部を含む第2ユニットのいずれにおいてラビングが発生したか、ラビングの発生位置が同定される。
【0057】
(2)他の態様では、上記(1)の態様において、
前記ラビング位置同定部は、前記一対の第1AEセンサのいずれか一方で前記ラビングに対応する前記AE信号が検出された場合に、当該AE信号が検出された前記第1AEセンサが取り付けられたユニットを前記ラビングの発生位置として同定する。
【0058】
上記(2)の態様によれば、ラビング位置同定部は、ラビングに対応するAE信号が、一対の第1AEセンサのいずれで検出されたかを判断する。そして、その判断結果に基づいて、ラビングの発生位置が、ラビングに対応するAE信号が検出された第1AEセンサが取り付けられた静止部を有するユニットであることを同定する。
【0059】
(3)他の態様では、上記(1)又は(2)の態様において、
前記軸受に取り付けられた第2AEセンサ(例えば上記実施形態の第2AEセンサ10C、10D、10E)と、
前記第2AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの有無を判定するためのラビング判定部(例えば上記実施形態のラビング判定部110)と、
を更に備える。
【0060】
上記(3)の態様によれば、軸受に取り付けられた第2AEセンサによって検出されるAE信号に基づいて、回転機械におけるラビングの有無が判定される。そして、回転機械でラビングが有ると判定された場合に、前述のように、一対の第1AEセンサで検出されるAE信号に基づいてラビングの発生位置を同定することができる。
【0061】
(4)他の態様では、上記(1)から(3)のいずれか一態様において、
前記一対の第1AEセンサは、前記第1静止部及び前記第2静止部のうち前記軸受側の第1端部(例えば上記実施形態の第1端部2a1、2b1)に取り付けられる。
【0062】
上記(4)の態様によれば、一対の第1AEセンサは、静止部のうち軸受側の端部に取り付けられることで、ラビングによって発生し、静止部を伝搬するAE信号を好適に検出できる。
【0063】
(5)他の態様では、上記(1)から(4)のいずれか一態様において、
前記第1静止部及び前記第2静止部のうち前記第1端部とは反対側の第2端部(例えば上記実施形態の第2端部2a2、2b2)にそれぞれ取り付けられる一対の第3AEセンサ(例えば上記実施形態の第3AEセンサ10F、10G)を更に備え、
前記ラビング位置同定部は、前記一対の第1AEセンサ及び前記一対の第3AEセンサで検出されたAE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置を同定する。
【0064】
上記(5)の態様によれば、第1AEセンサが取り付けられた第1端部とは反対側の第2端部に第3AEセンサが取り付けられる。これにより、第1AEセンサと第3AEセンサの検出結果を比較することにより、ラビングの発生位置が静止部のうち第1端部側にあるのか、それとも、第2端部側にあるかを同定することができる。
【0065】
(6)他の態様では、上記(1)から(5)のいずれか一態様において、
前記軸受は、前記軸方向に沿って互いに隣接するように配置された第1軸受(例えば上記実施形態の第1軸受6b1)及び第2軸受(例えば上記実施形態の第2軸受6b2)を含み、
前記第1軸受に取り付けられた第4AEセンサ(例えば上記実施形態の第4AEセンサ10H)と、
前記第2軸受に取り付けられた第5AEセンサ(例えば上記実施形態の第5AEセンサ10I)と、
を更に備え、
前記ラビング位置同定部は、前記第4AEセンサ及び前記第5AEセンサで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づいて、前記ラビングの発生位置を同定する。
【0066】
上記(6)の態様によれば、第1ユニット及び第2ユニットとの間に配置される軸受には、第1軸受及び第2軸受が含まれる。第1軸受及び第2軸受には、それぞれ第4AEセンサ及び第5AEセンサが取り付けられる。ラビング位置同定部は前述のように一対の第1AEセンサで検出されたAE信号に基づいてラビングの発生位置を同定できるが、第4AEセンサ及び第5AEセンサで検出されたAE信号の時間差又は位相差に基づいても同定でき、両者を照合することにより良好な同定精度を得ることができる。
【0067】
(7)他の態様では、上記(1)から(6)のいずれか一態様において、
前記回転部は、接合部(例えば上記実施形態の接合部4c)を介して軸方向に沿って互いに連結された複数の部材(例えば上記実施形態の第1部材4a及び第2部材4b)を含む。
【0068】
上記(7)の態様によれば、回転部に接合部がある場合、ラビングの発生位置からのAE信号は接合部で遮断されやすいが、前述のように第1静止部及び第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサでAE信号を検出することで、ラビングの発生位置が第1ユニットにあるのか第2ユニットにあるのかを好適に同定できる。
【0069】
(8)他の態様では、上記(1)から(7)のいずれか一態様において、
前記第1ユニット及び前記第2ユニットは、前記第1静止部及び前記第2静止部と前記回転部との間に作動流体(例えば上記実施形態の作動流体W)を導入するための入口部(例えば上記実施形態の入口部8)をそれぞれ有する。
【0070】
上記(8)の態様によれば、第1ユニット及び第2ユニットを駆動するための作動流体の入口部がある場合、入口部の近傍では作動流体に起因するノイズが発生することで、ラビングの発生位置からのAE信号が遮断されやすいが、前述のように第1静止部及び第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサでAE信号を検出することで、ラビングの発生位置が第1ユニットにあるのか第2ユニットにあるのかを好適に同定できる。
【0071】
(9)一態様に係る回転機械のラビング位置同定方法は、
軸方向に沿って配置される第1静止部(例えば上記実施形態の第1静止部2a)及び第2静止部(例えば上記実施形態の第2静止部2b)の間に配置される軸受(例えば上記実施形態の)によって回転可能に支持される回転部(例えば上記実施形態の回転部4)を有する回転機械(例えば上記実施形態の回転機械1)のラビング位置同定方法であって、
前記第1静止部及び前記第2静止部にそれぞれ取り付けられた一対の第1AEセンサ(例えば上記実施形態の第1AEセンサ10A、10B)でAE信号を検出する工程と、
前記回転機械でラビングが発生した場合に、前記AE信号に基づいて、前記ラビングの発生位置が前記第1静止部を含む第1ユニット(例えば上記実施形態の第1ユニットUa)、又は、前記第2静止部を含む第2ユニット(例えば上記実施形態の第2ユニットUb)のいずれであるかを判定する工程と、
を備える。
【0072】
上記(9)の態様によれば、回転機械は軸方向に沿って配置される第1静止部及び第2静止部の間に配置される軸受によって回転可能に支持される回転部を有する。第1静止部及び第2静止部には、それぞれ一対の第1AEセンサが取り付けられる。回転機械でラビングが発生した場合には、一対の第1AEセンサでそれぞれ検出されたAE信号に基づいて、回転機械のうち第1静止部を含む第1ユニット、又は、第2静止部を含む第2ユニットのいずれにおいてラビングが発生したか、ラビングの発生位置が同定される。
【符号の説明】
【0073】
1 回転機械
2 静止部
2a 第1静止部
2b 第2静止部
2a1、2b1 第1端部
2a2、2b2 第2端部
4 回転部
4a 第1部材
4b 第2部材
4c 接合部
6(6a、6b、6c) 軸受
6b1 第1軸受
6b2 第2軸受
8 入口部
8a 第1入口部
8b 第2入口部
10 AEセンサ
10A、10B 第1センサ
10C、10D、10E 第2センサ
10F、10G 第3センサ
10H 第4センサ
10I 第5センサ
100 ラビング位置同定装置
105 演算装置
110 ラビング判定部
120 ラビング位置同定部
D クリアランス
Da 第1クリアランス
Db 第2クリアランス
U ユニット
Ua 第1ユニット
Ub 第2ユニット
W 作動流体