(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】車両用高電圧機器の固定構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20241023BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 E
(21)【出願番号】P 2021054564
(22)【出願日】2021-03-29
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000157083
【氏名又は名称】トヨタ自動車東日本株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】配島 広成
(72)【発明者】
【氏名】天野 信介
(72)【発明者】
【氏名】関尾 諭
(72)【発明者】
【氏名】中谷 竜彦
(72)【発明者】
【氏名】柄澤 清紀
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-155993(JP,A)
【文献】特開2005-297861(JP,A)
【文献】国際公開第2020/170578(WO,A1)
【文献】特開2013-067334(JP,A)
【文献】米国特許第10651440(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フロアパネル上に配置され、車幅方向に延設される第一骨格部材と、
前記フロアパネル上に配置されるとともに、前記第一骨格部材に対して間隔を空けて車両後方に配置され、車幅方向に延設される第二骨格部材と、
車幅中央部分において前記フロアパネルから突出し前記第一骨格部材から前記第二骨格部材に亘って車両前後方向に延設される剛性部材の車幅方向外側に設けられるとともに、前記第一骨格部材及び前記第二骨格部材に車両前後方向に掛け渡されて固定される、車両用の高電圧機器を支持するブラケット
モジュールと、
を備える、車両用高電圧機器の固定構造であって、
前記ブラケット
モジュールは、
前記第一骨格部材の上壁に締結される第一締結フランジと、
前記第二骨格部材の上壁に締結される第二締結フランジと、
前記第一締結フランジの後端及び前記第二締結フランジの前端を繋ぎ、
立壁部及び前記フロアパネルに沿って延設される底壁部によって、車両側面視で下に凸のコ字状に形成され、
前記底壁部に前記高電圧機器が載置される、ブラケット本体部と、
前記ブラケット本体部の前記底壁部の後方部分に設けられ、車幅方向に延設され、さらに前記高電圧機器の下面に締結される、後方ブラケットと、
を備え、
前記ブラケット
モジュールは、前記第一締結フランジ及び前記第二締結フランジのみを締結点と
し、
前記ブラケット本体部の前記底壁部と、前記後方ブラケットの、車幅方向外側の側端は、前記高電圧機器の車幅方向外側の側面よりも車幅方向外側に張り出される、
車両用高電圧機器の固定構造。
【請求項2】
フロアパネル上に配置され、車幅方向に延設される第一骨格部材と、
前記フロアパネル上に配置されるとともに、前記第一骨格部材に対して間隔を空けて車両後方に配置され、車幅方向に延設される第二骨格部材と、
車幅中央部分において前記フロアパネルから突出し前記第一骨格部材から前記第二骨格部材に亘って車両前後方向に延設される剛性部材の車幅方向外側に設けられるとともに、前記第一骨格部材及び前記第二骨格部材に車両前後方向に掛け渡されて固定される、車両用の高電圧機器を支持するブラケットと、
を備える、車両用高電圧機器の固定構造であって、
前記ブラケットは、
前記第一骨格部材の上壁に締結される第一締結フランジと、
前記第二骨格部材の上壁に締結される第二締結フランジと、
前記第一締結フランジの後端及び前記第二締結フランジの前端を繋ぎ、車両側面視で下に凸のコ字状に形成され、前記高電圧機器が載置される、ブラケット本体部と、
を備え、
前記ブラケットは、前記第一締結フランジ及び前記第二締結フランジのみを締結点とし、
前記ブラケット本体部は、前記フロアパネルに沿って延設される底壁部を備え、前記底壁部は、前記第一骨格部材及び前記第二骨格部材の間に略直線状に延設されるアーム部を備える、
車両用高電圧機器の固定構造。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の車両用高電圧機器の固定構造であって、
前記第二締結フランジは、車幅方向に離隔され前記第二骨格部材に締結されるように一対設けられ、
一対の前記第二締結フランジと前記第一締結フランジとを結ぶように、前記ブラケット本体部は車両平面視でy字形状となっている、
車両用高電圧機器の固定構造。
【請求項4】
請求項
3に記載の車両用高電圧機器の固定構造であって、
一対の前記第二締結フランジのうち車幅方向外側の前記第二締結フランジと、前記第一締結フランジとは車両前後方向に並んで配置される、
車両用高電圧機器の固定構造。
【請求項5】
請求項
1に記載の車両用高電圧機器の固定構造であって、
前記ブラケット本体部
の前記底壁部は、前記第一骨格部材及び前記第二骨格部材の間に略直線状に延設されるアーム部を備える、
車両用高電圧機器の固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、車両用高電圧機器の固定構造が開示される。
【背景技術】
【0002】
例えば、駆動源として回転電機が用いられる、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車両等には、高電圧機器が搭載される。例えば車両用の高電圧機器として、バッテリ、DC/DCコンバータ、インバータ、及び、高電圧回路の切断/接続を行うシステムメインリレーが設けられるジャンクションブロックが、車両に搭載される。
【0003】
車両衝突時に、これらの高電圧機器の損傷を抑制するための固定構造が、例えば特許文献1に開示されている。この文献では、車幅方向に一対の電池アセンブリが配置されるとともに、この一対の電池アセンブリの間に、電気接続箱(ジャンクションブロック)が設けられる。電気接続箱は、フローティングブラケットにより支持される。フローティングブラケットは、一対の電池アセンブリにのみ締結され、フロアパネルには直接的には締結されない。
【0004】
このような構造において、車両の側面衝突時(側突時)には、一対の電池アセンブリのうち、車幅方向外側の電池アセンブリが、車幅方向内側に押し込まれる。これに沿って、当該電池アセンブリに締結されたフローティングブラケット及びこれに支持される電気接続箱も、車幅方向内側に変位させられる。このようにして、例えば電気接続箱がフロアパネルに固定されている場合と比較して、電気接続箱と電池アセンブリとの衝突が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両用の高電圧機器と、それよりも車幅方向内側に設けられた剛性部材との、車幅方向の離隔距離が短い場合には、側突時における、高電圧機器の、車幅方向の可動距離(逃げストローク)が短くなる。
【0007】
例えば、車体の車幅方向中央に設けられたフロアトンネル等の剛性部材と、車体の車幅方向側端に設けられた骨格部材であるロッカとの間にインバータ等の高電圧機器が配置される場合がある。この場合において、高電圧機器の車幅方向寸法が、フロアトンネルとロッカとの、車幅方向間隔よりもわずかに短いような寸法である場合には、側突時における高電圧機器の可動距離を十分に取ることが困難となるおそれがある。
【0008】
そこで本明細書では、車両用の高電圧機器と、それよりも車幅方向内側に配置された剛性部材との、車幅方向の間隔が狭い場合であっても、車両の側突時における高電圧機器と剛性部材との衝突を抑制可能な、車両用高電圧機器の固定構造が開示される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で開示される車両用高電圧機器の固定構造は、第一骨格部材、第二骨格部材、及びブラケットを備える。第一骨格部材は、フロアパネル上に配置され、車幅方向に延設される。第二骨格部材は、フロアパネル上に配置されるとともに、第一骨格部材に対して間隔を空けて車両後方に配置され、車幅方向に延設される。ブラケットは、車両用の高電圧機器を支持する。またブラケットは、車幅中央部分においてフロアパネルから突出し第一骨格部材から第二骨格部材に亘って車両前後方向に延設される剛性部材の車幅方向外側に設けられるとともに、第一骨格部材及び第二骨格部材に車両前後方向に掛け渡されて固定される。またブラケットは、第一締結フランジ、第二締結フランジ、及びブラケット本体部を備える。第一締結フランジは、第一骨格部材の上壁に締結される。第二締結フランジは、第二骨格部材の上壁に締結される。ブラケット本体部は、第一締結フランジの後端及び第二締結フランジの前端を繋ぎ、車両側面視で下に凸のコ字状に形成され、高電圧機器が載置される。さらにブラケットは、第一締結フランジ及び第二締結フランジのみを締結点とする。
【0010】
上記構成によれば、第一締結フランジ及び第二締結フランジのみがブラケットの締結点となる。車両の側突時には、第一締結フランジ及び第二締結フランジが支点となって、コ字状のブラケット本体部及びこれに載置された高電圧機器が、車幅方向内側かつ上方に振り子状(またはブランコ状)に移動し、車幅方向内側に隣接する剛性部材を乗り越え可能となる。
【0011】
また上記構成において、第二締結フランジは、車幅方向に離隔され第二骨格部材に締結されるように一対設けられてよい。この場合、一対の第二締結フランジと第一締結フランジとを結ぶように、ブラケット本体部は車両平面視でy字形状となる。
【0012】
上記構成によれば、高電圧機器を3点締結にて支持可能となり、高電圧機器の回動を抑制できる。また4点締結と比較してブラケット本体部の振り子移動が容易となる。
【0013】
また上記構成において、一対の第二締結フランジのうち車幅方向外側の第二締結フランジと、第一締結フランジとは車両前後方向に並んで配置されてよい。
【0014】
上記構成によれば、ブラケット本体部の振り子移動時に、その回転軸を車両前後方向に沿った方向に取ることが出来る。
【0015】
また上記構成において、ブラケット本体部は、フロアパネルに沿って延設される底壁部を備えてもよい。この場合、底壁部は、第一骨格部材及び第二骨格部材の間に略直線状に延設されるアーム部を備える。
【0016】
上記構成によれば、車両の斜突または前面衝突により第一骨格部材が衝突荷重を受けたときに、アーム部が突っ張り部材となって、第一骨格部材と第二骨格部材側との距離が縮まることを抑制可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本明細書に開示される車両用高電圧機器の固定構造によれば、車両用の高電圧機器と、それよりも車幅方向内側に配置された剛性部材との、車幅方向の間隔が狭い場合であっても、車両の側突時における高電圧機器と剛性部材との衝突を抑制可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施形態に係る車両用高電圧機器の固定構造を例示する斜視図である。
【
図2】
図1から高電圧機器であるインバータを取り外したときの車室床下構造を例示する斜視図である。
【
図3】
図2からブラケットモジュールを取り外したときの車室床下構造を例示する斜視図である。
【
図4】本実施形態に係るブラケットモジュールを例示する斜視図である。
【
図5】ブラケットモジュールの基本構成である、ハット型ブラケットとL字型ブラケットの結合体を例示する斜視図である。
【
図6】
図1のA-A断面を例示する側面視断面図である。
【
図7】ポール側突時のインバータの挙動について説明する斜視図である。
【
図8】
図7のB-B断面であって、ポール側突時のインバータの挙動について説明する正面視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1には、本実施形態に係る車両用高電圧機器の固定構造が設けられた、車室のフロア部分が例示される。このフロア部分が搭載される車両は、駆動源として回転電機を備える車両であって、例えばハイブリッド車両、電気自動車、及び燃料電池車両が含まれる。
【0020】
なお
図1~
図8において、車両前後方向が記号FRで表される軸で示され、車幅方向が記号LHで表される軸で示され、鉛直方向が記号UPで表される軸で示される。記号FRはFrontの略であり、前後方向軸FRは車両前方を正方向とする。記号LHはLeft Handの略であり、幅方向軸LHは左幅方向を正方向とする。また高さ軸UPは上方向を正方向とする。
【0021】
図1に示されているように、これらFR軸、LH軸、UP軸は互いに直交する。以下適宜、これら3軸を基準に、本実施形態に係る車両用高電圧機器の固定構造が説明される。例えば「前端」は任意の部材のFR軸正方向側の端部を指し、「後端」は任意の部材のFR軸負方向側の端部を指す。「幅内側」はLH軸に沿って相対的に車両の幅方向内側を指すものとし、「幅外側」はLH軸に沿って相対的に車両の幅方向外側を指すものとする。さらに「上側」は相対的にUP軸の正方向側を指し、「下側」は相対的にUP軸の負方向側を指す。
【0022】
<全体構成>
図1には、車室の床下構造が例示される。例えば図示される床下構造は、後部座席に着座する乗員が足を置くリアフロアの床下構造であってよい。例えばこの床下構造の上に、床板パネルが敷かれる。
【0023】
図1では、車室床下に配置される車両用高電圧機器の例として、インバータ60が示される。本実施形態に係る車両用高電圧機器の固定構造では、このインバータ60が支持部材であるブラケットモジュール100を介してクロスメンバ20(第一骨格部材)及びセンタークロス30(第二骨格部材)に固定される。
【0024】
後述されるように、ブラケットモジュール100はクロスメンバ20(第一骨格部材)及びセンタークロス30(第二骨格部材)に車両前後方向に掛け渡されて固定される。ブラケットモジュール100はいわゆるフローティングブラケットであって、クロスメンバ20及びセンタークロス30にのみ締結される。言い換えると、ブラケットモジュール100は、クロスメンバ20に締結される第一締結フランジ116と、センタークロス30に締結される第二締結フランジ118,126のみを締結点とする。
【0025】
なお、ブラケットモジュール100に支持される高電圧機器は、インバータ60に限られない。例えば、バッテリ、DC/DCコンバータ、及びジャンクションブロックの少なくとも何れか一つが、ブラケットモジュール100に支持されてよい。また
図1~
図8では、高電圧機器の支持に当たり、ゴムマウント等の絶縁部材は図示が省略される。
【0026】
図1を参照して、インバータ60は、フロアトンネル10(センタートンネルとも呼ばれる)の車幅方向外側に設けられる。インバータ60とフロアトンネル10との車幅方向の間隔は、後述されるようなインバータ60の振り子移動が可能な間隔が確保できれば良い。例えばインバータ60とフロアトンネル10との車幅方向の間隔は、インバータ60の車幅方向寸法の1/4以上1/2以下に定められる。
【0027】
インバータ60は、図示しない直流電源であるバッテリの直流電力を直交変換して駆動源に交流電力を送るための直交変換器である。なお
図1では、バッテリとインバータ60とを接続する高圧ケーブルや、インバータ60と回転電機を接続する高圧ケーブルの図示が省略されている。
【0028】
図8には、車両正面視断面の模式図が例示される。
図8上段を参照して、インバータ60の、車幅方向外側には、骨格部材であるロッカ40が隣接し、車幅方向内側には、剛性部材であるフロアトンネル10が隣接する。インバータ60の上面はロッカ40の上面と同等、またはそれよりも高い位置になるように、インバータ60がブラケットモジュール100に支持される。
【0029】
図1に戻り、フロアトンネル10は、車室の床下に設けられたフロアパネル50の車幅中央部分において、フロアパネル50から上方に突出する。フロアトンネル10は、フロアパネル50の車幅中央部分において、車両前後方向に延設される。例えば
図1に示されるように、フロアトンネル10は、車室前方から、クロスメンバ20(第一骨格部材)を横切り、さらにセンタークロス30(第二骨格部材)に亘って車両前後方向に延設される。フロアトンネル10の後端はセンタークロス30の側壁32に当接する。
【0030】
フロアトンネル10は、剛性部材としての機能を備える。例えばフロアトンネル10は、フロアパネル50の車幅方向中央分を隆起させるとともに、その隆起部分に高張力鋼板が重ね張りすることで構成される。車室床の、車幅方向中央部分に、車両前後方向に亘って剛性部材であるフロアトンネル10が延設されることで、車両前後方向の衝突荷重が車両に加えられたときに、当該荷重に抗してフロアトンネル10が突っ張ることで、車室容積の減少が抑制される。
【0031】
なお、高電圧機器であるインバータ60の、車幅方向内側に設けられる剛性部材は、フロアトンネル10に限られない。例えばスライド移動式のシート下にインバータ60が設けられる場合には、インバータ60の車幅方向内側に設けられ、車両前後方向に延設するシートレールが剛性部材に相当する。
【0032】
フロアパネル50の車幅方向外側端部には、骨格部材であるロッカ40が設けられる。ロッカ40は例えば超高張力鋼板からなり、車両前後方向に延設される。例えば
図8に例示されるように、ロッカ40は中空の閉断面構造を備える。
【0033】
フロアパネル50上には、車幅方向に延設される骨格部材が複数設けられる。例えば
図1に例示されるように、フロアパネル50上には、フロアトンネル10から車幅方向外側にクロスメンバ20(第一骨格部材)が延設される。
【0034】
例えば
図6に例示されるように、クロスメンバ20は側面視(
図1のA-A視)の断面ハット型形状の骨格部材であって、例えば高張力鋼板や超高張力鋼板から構成される。
図1を参照して、クロスメンバ20は車幅方向外側に延設されるにしたがって、フロアパネル50から上方に離隔され、その車幅方向端部には、上壁24からフランジ26が車幅方向外側に張り出される。このフランジ26がロッカ40の上壁42に溶接等により接合される。また、クロスメンバ20の車幅方向内側には、側壁22からフランジ28がフロアパネル50に沿って張り出され、当該フランジ28がフロアパネル50に溶接等により接合される。
【0035】
図3、
図6を参照して、クロスメンバ20の上壁24には、その厚さ方向に貫通する締結孔24Aが設けられる。後述されるように、この締結孔24Aと、ブラケットモジュール100の締結孔116Aとが軸合わせされ、ボルト15及びナット17により、ブラケットモジュール100が、クロスメンバ20に締結される。
【0036】
図1を参照して、フロアパネル50上には、クロスメンバ20(第一骨格部材)に対して間隔を空けて車両後方に、センタークロス30(第二骨格部材)が配置される。センタークロス30は、フロアパネル50の車幅方向両端を繋ぐようにして、言い換えると、車幅方向両端に設けられた一対のロッカ40,40を繋ぐようにして、車幅方向に延設される。
【0037】
センタークロス30(第二骨格部材)は、例えば車両のリアシート下に設けられる。
図6を参照して、センタークロス30は側面視で略逆Z形状であって、センタークロス30の前端に設けられたフランジ37及び上壁34の後端がフロアパネル50に溶接等により接合される。また
図3を参照して、上壁34の車幅方向端部からフランジ36が車幅方向に張り出される。このフランジ36が溶接等によってロッカ40の上壁42に接合される。
【0038】
図3、
図6を参照して、センタークロス30の上壁34には、その厚さ方向に貫通する一対の締結孔34A,34Bが、車幅方向に間隔を空けて設けられる。後述されるように、締結孔34Aと、ブラケットモジュール100の締結孔126Aが軸合わせされ、また、センタークロス30の締結孔34Bと、ブラケットモジュール100の締結孔118A(
図5参照)が軸合わせされる。さらにこれら軸合わせされた締結孔及びナット17(
図6参照)にボルト15が螺入されることで、ブラケットモジュール100がセンタークロス30に締結される。
【0039】
なお、クロスメンバ20の締結孔24Aと、センタークロス30の車幅方向外側の締結孔34Aとは、車両前後方向に並んで配置されてよい。例えば、締結孔24A,34Aの車幅方向位置が、僅かな車幅方向のずれを持ちつつ、実質的に一致していてもよい。
【0040】
このような構成を備えることで、
図2に例示されるように、一対の第二締結フランジ118,126のうち、車幅方向外側の第二締結フランジ126と、第一締結フランジ116とが、車両前後方向に並んで配置可能となる。
【0041】
後述されるように、車両の側突時には、ブラケットモジュール100において、第一締結フランジ116と第二締結フランジ126とを結ぶ線が、ブラケット本体部105およびこれに支持される高電圧機器であるインバータ60の回転軸となる。第一締結フランジ116と第二締結フランジ126とが実質的に車両前後方向に並んで配置されていることで、車両側突時において、ブラケット本体部105とインバータ60の回転軸を車両前後方向に延設可能となり、車幅方向への振り子移動が可能となる。
【0042】
<ブラケットモジュールの構成>
図4には、ブラケットモジュール100の単体斜視図が例示される。ブラケットモジュール100は、ハット型ブラケット110、L字型ブラケット120、前側ブラケット130、後側ブラケット140、及び蓋板150を含んで構成される。これらの部材は、例えばアルミの板金をプレス加工することで形成される。
【0043】
なお、
図4では、種々のブラケット及び蓋板150の部品群としてブラケットモジュール100が例示されているが、例えば鋳物等によってこれらの部品群が一体的に成型可能である場合には、ブラケットモジュール100は単一物であるブラケットとして扱われる。
【0044】
図5には、ブラケットモジュール100から前側ブラケット130、後側ブラケット140、及び蓋板150が取り去られ、同モジュールの主要部品である、ハット型ブラケット110及びL字型ブラケット120が示される。
【0045】
ハット型ブラケット110は、側面視(LH軸視)で断面ハット型形状であって、当該断面ハット型形状を、上下逆さまにひっくり返した状態でクロスメンバ20(第一骨格部材)及びセンタークロス30(第二骨格部材)に締結固定される。
【0046】
ハット型ブラケット110は、鍔に対応する第一締結フランジ116及び第二締結フランジ118と、断面ハット型形状の筒部分に対応する立設壁112A,112Bと、断面ハット型形状の頂面部に対応する底壁部114を備える。
【0047】
ハット型ブラケット110はその長手方向が車両前後方向となるように位置決めされる。より詳細には、前方に行くほど車幅方向外側に向かうような、車両前後軸に対して若干傾斜した状態でその長手方向が延設される。
【0048】
ハット型ブラケット110の長手部材である底壁部114は、立設壁112Aから立設壁112Bまで略直線状に延設される。具体的に底壁部114は、前方の立設壁112Aから、車両前後方向軸に傾斜するようにして直線状に延設され、後方の立設壁112Bの手前で屈曲され車両前後方向軸に沿って延設される。
【0049】
図2、
図5を参照して、底壁部114は、クロスメンバ20(第一骨格部材)からセンタークロス30(第二骨格部材)まで略直線状に延設される。このことから、底壁部114は、車両前後方向の衝突荷重が車両に加わったときに、クロスメンバ20とセンタークロス30との近接を阻害するようにして突っ張る、アーム部材として機能する。
【0050】
特に底壁部114が直線状に延設する方向と平行に衝突荷重が入力される、車両の斜突時には、クロスメンバ20がセンタークロス30側に付勢される荷重、またはその逆方向の荷重に抗して、両者の近接が有効に抑制される。
【0051】
底壁部114は、その長手方向に直交する断面がハット形状となっていてよい。このハット形状の開放部分に蓋板150(
図4参照)が溶接またはボルト・ナット締結により固定されることで、閉断面構造が得られる。
【0052】
底壁部114の前端から上方に立設壁112Aが立ち上がる。また底壁部114の後端から上方に立設壁112Bが立ち上がる。前方の立設壁112Aの上端は第一締結フランジ116の後端に接続される。同様にして、後方の立設壁112Bの上端は第二締結フランジ118の前端に接続される。立設壁112A,112Bの立設高さ(つまりZ軸方向長さ)は、同一であってよい。
【0053】
第一締結フランジ116はブラケットモジュール100の前端部であって、例えば底壁部114と平行に延設される。第一締結フランジ116にはその厚さ方向に貫通して締結孔116Aが穿孔される。
【0054】
図6に例示されるように、第一締結フランジ116の締結孔116Aとクロスメンバ20の上壁24に穿孔された締結孔24Aとが軸合わせされ、ボルト15がこれらの穴に螺入される。螺入されたボルト15とナット17とによって、ブラケットモジュール100の前端がクロスメンバ20に締結される。ナット17は、例えば、上壁24の下面に溶接されたウェルドナットであってよい。
【0055】
図5を参照して、第二締結フランジ118はブラケットモジュール100の後端部であって、例えば底壁部114と平行に延設される。第二締結フランジ118にはその厚さ方向に貫通して締結孔118Aが穿孔される。
【0056】
第二締結フランジ118の締結孔118Aと、センタークロス30(
図3参照)の上壁24に穿孔された締結孔34Bとが軸合わせされ、ボルト・ナット締結により、ブラケットモジュール100の後端がセンタークロス30に締結される。
【0057】
図5を参照して、L字型ブラケット120は、側面視(LH軸視)でL字型のブラケットであって、立設壁122、底壁部124、及び第二締結フランジ126を含んで構成される。
【0058】
底壁部124は車両前後方向に延設され、その前端は、ハット型ブラケット110の底壁部114に当接する。例えばハット型ブラケット110の底壁部114の前端と後端との間の中間部分に、L字型ブラケット120の底壁部124の前端が当接する。この当接部分が溶接等により接合される。
【0059】
底壁部124は、その長手方向に直交する断面がハット形状となっていてよい。ハット型ブラケット110とは異なり、L字型ブラケット120の底壁部124のハット形状の開放部分には、蓋板150を設けずに、開断面構造としてもよい。また底壁部124は、例えばハット型ブラケット110の底壁部114と側面視(LH軸視)で平行となるように延設される。
【0060】
L字型ブラケット120の底壁部124は、ブラケット本体部105のうち最も車幅方向外側に張り出している。したがって車両側突時には、ブラケット本体部105の中でまず底壁部124の側端124Aが衝突荷重(側突荷重)を受ける。
【0061】
底壁部124の後端には立設壁122が立設される。例えば立設壁122は、ハット型ブラケット110の立設壁112Bと平行となるように延設される。立設壁122の上端には第二締結フランジ126が接続される。第二締結フランジ126は、ハット型ブラケット110の第二締結フランジ118と平行となるように延設される。
【0062】
第二締結フランジ126は、L字型ブラケット120の後端部であって、その厚さ方向に貫通して締結孔126Aが設けられる。この締結孔126Aと、センタークロス30(
図3、
図6参照)の上壁34に穿孔された締結孔34Aとが軸合わせされ、ボルト15及びナット17の締結により、L字型ブラケット120の後端がセンタークロス30に締結される。
【0063】
図5を参照して、ブラケットモジュール100を構成する、ハット型ブラケット110及びL字型ブラケット120とは溶接等によって一体の結合体となっている。
図1を参照して、この結合体は、クロスメンバ20(第一骨格部材)の上壁24に締結される第一締結フランジ116と、センタークロス30の上壁34に締結され車幅方向に離隔される一対の第二締結フランジ118,126を備える。またこの結合体は、第一締結フランジ116の後端及び第二締結フランジ118,126の前端を繋ぎ、車両側面視(LH軸視)で下に凸のコ字状に形成された、ブラケット本体部105を備える。
図5の例では、ブラケット本体部105は、立設壁112A,112B,122と、底壁部114,124を含んで構成される。底壁部114,124に、高電圧機器であるインバータ60が載置される。
【0064】
また上述のように、L字型ブラケット120の底壁部124の前端は、ハット型ブラケット110の底壁部114の長手方向中間部分に当接(接続)される。このことから、ブラケット本体部105は、一対の第二締結フランジ118,126と第一締結フランジ116とを結ぶようにして、車両平面視(UP軸視)でy字形状となる。
【0065】
ブラケット本体部105がy字形状となることで、高電圧機器であるインバータ60の3点支持が可能となる。2点支持の場合、2点を結ぶ直線を軸とする回動を抑制するのが困難となるが、3点支持とすることでそのような回動を抑制可能となる。また、3点支持とすることで、支持点が4点以上となる場合と比較して、後述するブラケット本体部105の振り子移動が容易となる。
【0066】
図4を参照して、ブラケット本体部105の、高電圧機器の搭載面を構成する底壁部114(
図5参照),124には、高電圧機器を締結させるための前側ブラケット130及び後側ブラケット140が設けられる。
【0067】
前側ブラケット130は、ハット型ブラケット110の上面に被せられた蓋板150上に設けられる。例えば前側ブラケット130は側面視(LH軸視)で断面ハット型形状であって、上壁134、一対の側壁132,132、一対のフランジ136,136を備える。一対の側壁132,132は、上壁134の前端及び後端から下方に延設される。一対のフランジ136,136は、側壁132,132の下端から蓋板150に沿って延設される。フランジ136,136と蓋板150とが溶接等により接合される。
【0068】
前側ブラケット130は、ハット型ブラケット110の底壁部114(
図5参照)の前方部分に設けられる。例えばハット型ブラケット110の底壁部114のうち、立設壁112Aに近接させた位置に、前側ブラケット130が設けられる。
【0069】
前側ブラケット130の上壁134には、その厚さ方向に貫通する締結孔134Aが設けられる。後述されるように、この締結孔134Aと、インバータ60(
図6参照)の下面から前方に延設される締結バー62の締結孔62Aとが軸合わせされ、ボルト15及びナット17により、インバータ60が前側ブラケット130に締結される。
【0070】
図4を参照して、ハット型ブラケット110及びL字型ブラケット120を跨ぐようにして、後側ブラケット140が設けられる。例えば後側ブラケット140は車幅方向に延設され、上壁144、側壁142,及び一対のフランジ146,146を備える。
【0071】
図4、
図5を参照して、後側ブラケット140は、底壁部114,124の後方部分に設けられる。例えば立設壁112B,122に近接するようにして、後側ブラケット140が設けられる。
【0072】
例えば後側ブラケット140の車幅方向寸法は、高電圧機器であるインバータ60の車幅方向寸法を超過するように形成される。後述される車両の側突時には、ロッカ40から入力される車幅方向内側への衝突荷重に後側ブラケット140が抗する(突っ張る)。インバータ60の車幅方向寸法を超過させるように、後側ブラケット140の車幅方向寸法を定めることで、ロッカ40とフロアトンネル10(
図1参照)との間隔を、インバータ60の車幅方向寸法以上に確保可能となり、インバータ60を保護することができる。
【0073】
後側ブラケット140の上壁144には、その厚さ方向に一対の締結孔146A1,146A2が設けられる。例えば締結孔146A1は、ハット型ブラケット110の底壁部114(
図5参照)上に設けられ、締結孔146A2は、L字型ブラケット120の底壁部124上に設けられる。
【0074】
図6を参照して、これらの締結孔146A1,146A2と、インバータ60の下面から後方に延設される一対の締結バー62,62の締結孔62A,62Aとが軸合わせされる。さらにこれら軸合わせされた締結孔及びナット17にボルト15が螺入され、インバータ60が後側ブラケット140に締結される。
【0075】
上述のように、ブラケットモジュール100は、クロスメンバ20(第一骨格部材)及びセンタークロス30(第二骨格部材)にのみ締結され、フロアパネル50には締結されない。また
図6を参照して、車両の側突時における、ブラケットモジュール100の振り子移動を可能とするために、ブラケットモジュール100の底壁部114,124は、フロアパネル50から上方に離隔されていてよい。
【0076】
また、
図1、
図5を参照して、ブラケットモジュール100にインバータ60が搭載されると、ブラケットモジュール100の車幅方向外側の側端124A及び後側ブラケット140の車幅方向外側の側端が、インバータ60の側面64よりも車幅方向外側に張り出す。なおブラケットモジュール100の側端124Aとは、
図5を参照して、ブラケット本体部105の底壁部124の側端124Aを指す。
【0077】
<車両側突時の挙動>
図7、
図8には、車両のポール側突時の様子が例示される。例えば車両が折進中(右折又は左折中)にスリップしたときに、路上の電柱等のポール200に車両側面が衝突する場合がある。このとき、ポール200はロッカ40に衝突した後、車幅方向内側にめりこみ車室内に進入する。
【0078】
図8上段及び下段に例示されるように、ポール200に押され、ロッカ40も車室内に進入する。ここで上述のように、インバータ60の側面64よりも、ブラケット本体部105の車幅方向外側の側端124A、及び後側ブラケット140の車幅方向外側の側端が先に、ロッカ40に衝突する。これによりインバータ60へのロッカ40の直撃が免れる。
【0079】
ブラケット本体部105の車幅方向外側の側端124A及び後側ブラケット140の車幅方向外側の側端にロッカ40が衝突した後、さらにロッカ40が車室内に進入する。このとき、
図8下段の破線で示されるように、ロッカ40によって底壁部124の側端124A及び後側ブラケット140の車幅方向外側の側端が車幅方向内側に押し込まれる。これに伴い、ブラケット本体部105は、第二締結フランジ118(
図7参照)を座屈させながら、第一締結フランジ116及び第二締結フランジ126を結ぶ線を回転軸として、車幅方向内側及び上方に振り子移動する。これに伴って、ブラケット本体部105に締結されたインバータ60も車幅方向内側及び上方に振り子移動する。
【0080】
このように、ロッカ40の車室内への進入過程で、インバータ60が上方に持ち上げられ、フロアトンネル10を乗り越えることが可能となり、インバータ60とフロアトンネル10との衝突が抑制される。
【符号の説明】
【0081】
10 フロアトンネル、20 クロスメンバ(第一骨格部材)、22 クロスメンバの側壁、24 クロスメンバの上壁、24A クロスメンバの締結孔、30 センタークロス(第二骨格部材)、32 センタークロスの側壁、34 センタークロスの上壁、34A,34B センタークロスの締結孔、40 ロッカ、50 フロアパネル、60 インバータ(高電圧機器)、64 インバータの側面、100 ブラケットモジュール(ブラケット)、105 ブラケット本体部、110 ハット型ブラケット、112A,112B ハット型ブラケットの立設壁、114 ハット型ブラケットの底壁部、116 第一締結フランジ、118 ハット型ブラケットの第二締結フランジ、120 L字型ブラケット、122 L字型ブラケットの立設壁、124 L字型ブラケットの底壁部、124A ブラケット本体部の側端、126 ハット型ブラケットの第二締結フランジ、130 前側ブラケット、140 後側ブラケット、150 蓋板、200 ポール。