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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】対話制御システム、および対話制御方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 16/90 20190101AFI20241023BHJP
【FI】
G06F16/90 100
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021057657
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154561
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 理
【審査官】酒井 恭信
(56)【参考文献】
【文献】特許第6570792(JP,B1)
【文献】特開2018-041336(JP,A)
【文献】特開2010-267062(JP,A)
【文献】特開2019-125317(JP,A)
【文献】特開2018-147100(JP,A)
【文献】特開平09-016667(JP,A)
【文献】特開2007-149070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 16/00 - 16/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置を用いて構成され、
有向グラフ構造を有する対話モデルの入力文に対する応答文が設定されたノードをユーザの入力に応じてエッジに従い遷移させていくことにより対話処理を行い、ユーザに前記応答文を提供する対話制御部と、
前記対話モデルを生成する対話モデル生成部と、
前記対話モデルの生成に用いる文書データを記憶する記憶部と、
を備え、
前記対話モデル生成部は、
前記文書データを予め設定されたセグメント化ルールに従って複数のセグメントに分割したデータであるセグメント化済文書データを生成するセグメント化部と、
前記セグメント化済文書データから、前記セグメントの間の状態遷移を発生させるキーワードである状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出する状態遷移キーワード抽出部と、
前記セグメント化済文書データの前記セグメントの夫々から自然言語処理技術を用いて抽出される情報であるセグメント単位データを取得し、前記セグメント単位データに基づく応答文を前記セグメントに対応する前記ノードの夫々に設定し、前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子に基づき前記ノードの間をエッジで結ぶことにより前記対話モデルを生成する対話モデル生成処理部と、
を有する、
対話制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の対話制御システムであって、
前記状態遷移キーワード抽出部は、前記セグメント化済文書データに含まれている一部の文章に、当該一部の文書に含まれている前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子をラベルとして対応づけた学習データにより学習した機械学習モデルである状態遷移キーワード抽出モデルに基づき、前記セグメント化済文書データの前記一部の文章以外の文章から前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出する、
対話制御システム。
【請求項3】
請求項2に記載の対話制御システムであって、
前記状態遷移キーワード抽出モデルは、前記セグメント化済文書データにおいて、前記ラベルである前記状態遷移キーワードの周辺に記述されている情報を特徴量とするパラメータにより構成される、
対話制御システム。
【請求項4】
請求項1に記載の対話制御システムであって、
前記文書データの前記セグメントへの分割方法を示す情報であるセグメント化ルールを前記文書データごとに記憶し、
前記セグメント化部は、前記文書データの前記セグメントへの分割を、当該文書データの前記セグメント化ルールに従って行う、
対話制御システム。
【請求項5】
請求項4に記載の対話制御システムであって、
前記文書データは、フローチャートの形式のデータであり、
前記セグメント化ルールは、前記フローチャートの各構成部品の各領域に記述されている文章を1つの前記セグメントとして抽出することを指定する、
対話制御システム。
【請求項6】
請求項4に記載の対話制御システムであって、
前記文書データは、箇条書き形式のデータであり、
前記セグメント化ルールは、前記箇条書きにおける1つの項目の文章を1つの前記セグメントとして抽出することを指定する、
対話制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の対話制御システムであって、
前記対話モデル生成処理部は、生成した前記対話モデルの内容を示す画面を生成してユーザに提示する、
対話制御システム。
【請求項8】
請求項2に記載の対話制御システムであって、
前記対話モデル生成部は、前記ラベルの設定を受け付ける画面を提示しつつユーザから前記ラベルの設定を受け付ける、
対話制御システム。
【請求項9】
請求項1に記載の対話制御システムであって、
前記対話制御部がユーザに提供する前記応答文は、ユーザが所定の作業を行う現場における前記作業の手順を示す、
対話制御システム。
【請求項10】
情報処理装置が、
有向グラフ構造を有する対話モデルの生成に用いる文書データを記憶するステップと、
前記文書データを予め設定されたセグメント化ルールに従い複数のセグメントに分割したデータであるセグメント化済文書データを生成するステップと、
前記セグメント化済文書データから、前記セグメントの間の状態遷移を発生させるキーワードである状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出するステップと、
前記セグメント化済文書データの前記セグメントの夫々から自然言語処理技術を用いて抽出される情報であるセグメント単位データを取得し、前記セグメント単位データに基づく応答文を前記対話モデルの前記セグメントに対応するノードの夫々に設定し、前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子に基づき前記ノードの間をエッジで結ぶことにより前記対話モデルを生成するステップと、
前記ノードをユーザの入力に応じて前記エッジに従い遷移させていくことにより対話処理を行い、ユーザに前記応答文を提供するステップと、
を実行する、対話制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の対話制御方法であって、
前記情報処理装置が、前記セグメント化済文書データから、前記セグメントの間の状態遷移を発生させるキーワードである状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出するステップにおいて、前記セグメント化済文書データに含まれている一部の文章に、当該一部の文書に含まれている前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子をラベルとして対応づけた学習データにより学習した機械学習モデルである状態遷移キーワード抽出モデルに基づき、前記セグメント化済文書データの前記一部の文章以外の文章から前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出する
対話制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載の対話制御方法であって、
前記状態遷移キーワード抽出モデルは、前記セグメント化済文書データにおいて、前記ラベルである前記状態遷移キーワードの周辺に記述されている情報を特徴量とするパラメータにより構成される、
対話制御方法。
【請求項13】
請求項10に記載の対話制御方法であって、
前記情報処理装置が、
前記文書データの前記セグメントへの分割方法を示す情報であるセグメント化ルールを前記文書データごとに記憶するステップと、
前記文書データの前記セグメントへの分割を、当該文書データの前記セグメント化ルールに従って行うステップと、
を更に実行する、対話制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載の対話制御方法であって、
前記文書データは、フローチャートの形式のデータであり、
前記セグメント化ルールは、前記フローチャートの各構成部品の各領域に記述されている文章を1つの前記セグメントとして抽出することを指定する、
対話制御方法。
【請求項15】
請求項13に記載の対話制御方法であって、
前記文書データは、箇条書き形式のデータであり、
前記セグメント化ルールは、前記箇条書きにおける1つの項目の文章を1つの前記セグメントとして抽出することを指定する、
対話制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対話制御システム、および対話制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザとの対話によりユーザが探索を要望する情報に関する条件を漏れなく取得することを目的として構成された情報処理装置について記載されている。上記情報処理装置は、質問の表示と、質問に対するユーザからの回答の取得とを繰り返すことにより、ユーザが探索を要望する情報についての絞り込みを進行させる端末のディスプレイに、探索の対象に関する質問を第1態様で表示させ、端末を通して、ユーザによって入力された質問に対する回答を取得し、質問の上部に、絞り込みの進行状況に関する第1情報を第2態様で表示させ、質問の下部に、質問に対する回答案内に関する第2情報を第3態様で表示させる。
【0003】
特許文献2には、1つの情報セットを構成する複数の要素間の関連性を、要素間を接続する関係線によって表現する情報マップを作成する単語マップ作成装置に関して記載されている。単語マップ作成装置は、情報マップへの制限情報を取得し、制限情報に基づき、情報マップ上に表現される複数の要素が他の要素と接続する関係線を介して接続されるように情報マップを作成する。また、単語マップ作成装置は、要素ごとに設定された制限情報を取得し、制限情報に基づき、情報マップ上において有効とする関係線を選択し、有効となった関係線の表示属性を他の関係線の表示属性と区別して情報マップを表示させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2018-92585号公報
【文献】特開2004-021913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、建設現場、工場、社会インフラ施設等の産業制御システムの運用現場においては熟練者の不足が顕在化しており、非熟練者による現場作業を支援する技術についての期待や関心が高まっている。こうしたニーズに応えるべく、熟練者により蓄積された、障害診断手順や定期点検手順等のOT(Operational Technology)知識を、対話エンジン(チャットボット)による対話処理を通じて非熟練者に提供する仕組みの実現に向けた取り組みが進められている。
【0006】
上記のような対話エンジンを有効に機能させるためには、OT知識が蓄積されたマニュアル等のデータから、作業手順等のシナリオに沿って対話を進めるための情報(以下、「対話モデル」と称する。)を効率よく抽出する必要がある。しかし、多様な形式で記述されているマニュアル等の文書データから対話モデルを抽出するには複雑な判断が要求され、また、ユーザの入力に対して適切な応答を返すためには有向グラフ(directed graph)構造を構成可能な情報を抽出する必要があり、対話モデルの抽出にかかる人的負荷や作業工数の削減が課題となっている。
【0007】
特許文献1には、情報処理装置が、質問の表示と、質問に対するユーザからの回答の取得とを繰り返すことにより、ユーザが探索を要望する情報についての絞り込みを進行させる仕組みに関して記載されている。しかし、上記情報の抽出元となる情報(対話モデル)の具体的な作成方法については記載されていない。
【0008】
一方、特許文献2に記載の技術は対話エンジンに関するものではないが、文書データから、文書を構成する単語を抽出し、抽出した単語について統計情報と単語間の関連情報とを解析して情報マップ(単語マップ)を作成することが記載されている。しかし、同文献に開示されている情報マップは無向グラフであり、文書データから有向グラフ構造を有する情報を抽出する技術については記載されていない。
【0009】
本発明は、このような背景に鑑みてなされたものであり、対話形式で情報提供を行う対話エンジンを機能させるための対話モデルを文書データに基づき効率よく生成することが可能な、対話制御システム、および対話制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の1つは、対話制御システムであって、情報処理装置を用いて構成され、有向グラフ構造を有する対話モデルの入力文に対する応答文が設定されたノードをユーザの入力に応じてエッジに従い遷移させていくことにより対話処理を行い、ユーザに前記応答文を提供する対話制御部と、前記対話モデルを生成する対話モデル生成部と、前記対話モデルの生成に用いる文書データを記憶する記憶部と、を備え、前記対話モデル生成部は、前記文書データを予め設定されたセグメント化ルールに従って複数のセグメントに分割したデータであるセグメント化済文書データを生成するセグメント化部と、前記セグメント化済文書データから、前記セグメントの間の状態遷移を発生させるキーワードである状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子を抽出する状態遷移キーワード抽出部と、前記セグメント化済文書データの前記セグメントの夫々から自然言語処理技術を用いて抽出される情報であるセグメント単位データを取得し、前記セグメント単位データに基づく応答文を前記セグメントに対応する前記ノードの夫々に設定し、前記状態遷移キーワード、当該状態遷移キーワードの遷移元の前記セグメントの識別子、および当該状態遷移キーワードの遷移先の前記セグメントの識別子に基づき前記ノードの間をエッジで結ぶことにより前記対話モデルを生成する対話モデル生成処理部と、を有する。
【0011】
その他、本願が開示する課題、およびその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、および図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、対話形式で情報提供を行う対話エンジンを機能させるための対話モデルを文書データに基づき効率よく生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】対話制御システムの主な構成を説明するシステムフロー図である。
図2A】対話モデルの一例を示す図である。
図2B】対話モデルTBLの一例である。
図3】対話処理を説明するフローチャートである。
図4】対話モデル生成部の機能を説明する図である。
図5A】フローチャート形式の文書データの一例である。
図5B】箇条書き形式の文書データの一例である。
図6】セグメント化ルールTBLの一例である。
図7】セグメント化済文書データの一例である。
図8】セグメント化処理を説明するフローチャートである。
図9】状態遷移キーワードラベルTBLの一例である。
図10】状態遷移キーワードデータの一例である。
図11】状態遷移キーワード抽出処理を説明するフローチャートである。
図12】状態遷移キーワードラベル設定画面の一例である。
図13】セグメント単位データの一例である。
図14】対話モデル生成処理を説明するフローチャートである。
図15】対話モデル確認画面の一例である。
図16】対話制御システムの実現に用いる情報処理装置の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。尚、以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略もしくは簡略化がなされている。本発明は、他の種々の形態でも実施することが可能である。とくに限定しない限り、各構成要素は単数でも複数でも構わない。
【0015】
以下の説明において、同一または類似の構成について同一の符号を付して重複した説明を省略することがある。また、以下の説明において、符号の前に付した「S」の文字は処理ステップを意味する。また、以下の説明では、「テーブル」、「情報」等の表現にて各種情報を説明することがあるが、各種情報は、これら以外のデータ構造で表現されていてもよい。また、以下の説明において、「テーブル」のことを「TBL」と表記することがある。
【0016】
以下、一実施形態として、建設現場、工場、社会インフラ施設等の産業制御システムの運用現場において、対話モデルを用いた対話エンジン(チャットボット)により、現場で作業を行う作業者に、障害診断手順や定期点検手順等の作業手順に関するOT(Operational Technology)知識等の情報を対話形式で提供する情報処理システム(以下、「対話制御システム1」と称する。)について説明する。
【0017】
図1は、対話制御システム1の主な構成を示す図である。同図に示すように、対話制御システム1は、対話制御部100と対話モデル生成部200の各機能を備える。また、対
話制御システム1は、対話モデルの実体である対話モデルTBL101、文書データ201、セグメント化ルールTBL202、および状態遷移キーワードラベルTBL203を記憶する。
【0018】
上記機能のうち、対話制御部100は、ユーザ装置2を介してユーザの入力文を受信し、受信した入力文に対する応答文を対話モデルに基づき取得し、取得した応答文をユーザ装置2に送信する。入力文は、例えば、ユーザがキーボードやタッチパネル等の文字入力装置を利用して入力したもの、マイクロフォン等の音声入力装置により取得されるユーザの発話を音声認識技術により文字列に変換したもの等である。
【0019】
対話モデル(対話モデルTBL101)は、対話モデル生成部200によって生成される情報(対話シナリオ、ルールベース)であり、例えば、産業制御システムの運用現場において用いられている作業手順を示したマニュアル等のOT知識が記載された文書データ201に基づき生成される。
【0020】
図2Aに、対話モデルの一例を、また、図2Bに、図2Aの対話モデルに対応する対話モデルTBL101を示す。
【0021】
図2Aに示すように、対話モデルは、入力文に対する応答文(以下、「出力キーワード」とも称する。)を質問文の内容に応じて選択的に辿ることが可能な有向グラフ (directed graph)構造を有する。有向グラフの各ノード(node)は、入力文に対する応答文を
表し、有向グラフの各エッジ(edge)(以下、「有向エッジ」とも称する。)は、入力文に対する応答文のノードを示す。同図において、符号「S」を付したノードは始点ノード(ルートノード)であり、また、符号「E」を付したノードは終点ノードである。
【0022】
例示する対話モデルは、建設機械の障害診断手順に関するものであり、ユーザからの入力文「診断手順は?」に対して応答文「フロントアイドラー,チェック」を返す。また、対話モデルは、上記応答文「フロントアイドラー,チェック」に対するユーザの入力文「
異常あり」に対して応答文「フロントアイドラー破損です。」を返し、上記応答文「フロントアイドラー,チェック」に対するユーザの入力文「異常なし」に対して応答文「ボルトトルク,確認」を返す。また、対話モデルは、上記応答文「ボルトトルク,確認」に対する入力文「トルク不十分」に対して応答文「ボルトトルク不足です」を返し、上記応答文「ボルトトルク,確認」に対するユーザの入力文「トルク十分」に対して応答文「上ロー
ラ,確認」を返す。
【0023】
図2Bに示すように、対話モデルTBL101は、セグメントID1011、出力キーワード1012、終了フラグ1013、第1入力候補1014、第1遷移先セグメントID1015、第2入力候補1016、および第2遷移先セグメントID1017の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。対話モデルTBL101の1つのエントリは、対話モデルの1つのノードに対応している。
【0024】
上記項目のうち、セグメントID1011には、ノードの識別子であるセグメントIDが格納される。
【0025】
出力キーワード1012には、当該ノードに対応づけられている応答文が格納される。尚、始点ノード(セグメントID1011が「211」のノード)の出力キーワード1012には、当該ノードが始点ノードであることを表す記号「<S>」が格納される。
【0026】
終了フラグ1013には、当該ノードが終点ノードであるか否かを示すフラグである終了フラグが格納される。本例では、当該ノードが終点ノードであれば終了フラグ1013には「1」が、当該ノードが終点ノードでなければ終了フラグ1013には「0」が格納される)。
【0027】
第1入力候補1014には、ユーザからの入力文の候補(以下、「第1入力候補」と称する。)が格納される。第1遷移先セグメントID1015には、ユーザの入力文が当該第1入力候補に相当する場合における遷移先ノードのセグメントID(以下、「第1遷移先セグメントID」と称する。)が格納される。
【0028】
第2入力候補1016には、ユーザからの入力文の他の候補(以下、「第2入力候補」と称する。)が格納される。第2遷移先セグメントID1017には、ユーザの入力文が当該第2入力候補に相当する場合における遷移先ノードのセグメントID(以下、「第2遷移先セグメントID」と称する。)が格納される。
【0029】
尚、本実施形態では、ノードの分岐先の最大数が「2」である場合を例示するが、ノードの分岐先の最大数は「3」以上でもよい。
【0030】
図1に戻り、例えば、ユーザは、現場においてユーザ装置2を操作しつつ対話制御部100と対話を行うことにより必要な情報(例えば、障害診断手順や定期点検手順等のOT知識)を取得し、取得した情報を利用して作業を進める。これにより、例えば、作業の非熟練者であっても、熟練者と同じように作業を効率よく適切に進めることが可能になる。
【0031】
図3は、ユーザとの対話に際して対話制御部100が行う処理(以下、「対話処理S300」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに対話処理S300について説明する。対話処理S300は、例えば、ユーザがユーザ装置2に対して所定の開始操作(キーボードやタッチパネルに対する開始操作、マイクロフォンへの発話開始等)を行ったことを契機として開始される。尚、以下の説明において、対話制御部100は、対話処理S300の実行中、対話モデルにおける現在のノードを示す情報として、対話モデルTBL101における現在のノードのセグメントID1011をポインタ(以
下、「現在ノード」と称する。)にリアルタイムに管理(記憶)しているものとする。
【0032】
まず、対話制御部100は、現在ノード(ポインタ)に、対話モデルTBL101の始点ノードのセグメントID(対話モデルTBL101の出力キーワード1012に記号「<S>」が格納されているエントリのセグメントID1011)設定する(S311)。
【0033】
続いて、対話制御部100は、ユーザの入力文を取得し(S312)、取得した入力文を対話モデルTBL101と対照し、当該入力文に相当する入力候補(第1入力候補1014または第2入力候補1016)を選択する(S313)。
【0034】
尚、入力候補が入力文に相当するか否かは、例えば、入力候補が入力文と同一または類似か否かに基づき判定する。また、この場合における同一または類似の判定は、例えば、入力候補と入力文の類似度(コサイン類似度やレーベンシュタイン距離(Levenshtein distance)等)が予め設定した閾値を超えているか否かにより行う。
【0035】
続いて、対話制御部100は、現在ノードに、対話モデルTBL101における、S313で選択した入力候補のセグメントID(本例では、第1遷移先セグメントID1016または第2遷移先セグメントID1017)を設定する(S314)。
【0036】
続いて、対話制御部100は、対話モデルTBL101における現在ノードが示すエントリの出力キーワード1012を応答文としてユーザ装置2に送信する(S315)。
【0037】
続いて、対話制御部100は、対話モデルTBL101を参照し、現在ノードのエントリの終了フラグ1013を確認する(S316)。終了フラグ1013にオフ「0」が格納されていれば(S316:NO)、処理はS312に戻り、対話制御部100は次の入力文について同様の処理を行う。一方、終了フラグ1013にオン「1」が格納されていれば(S316:YES)、対話処理S300は終了する。
【0038】
図4は、対話モデル生成部200の機能を説明する図である。同図に示すように、対話モデル生成部200は、セグメント化部211、状態遷移キーワード抽出部212、および対話モデル生成処理部213の各機能を備える。
【0039】
このうちセグメント化部211は、後述するセグメント化ルールTBL202を参照し、文書データ201に含まれている文章を複数のセグメントに分割してセグメント化済文書データ20を生成する。
【0040】
セグメント化部211によりセグメントに分割される文書データ201は、例えば、テキストデータ、文書編集ソフトウェア等のアプリケーションに用いられる所定フォーマットのデータ、マニュアル等が記述されたマークアップ言語(HTML(HyperText Markup
Language)、XML(Extensible Markup Language)等)で記述されたデータ、マニュ
アル等から光学式画像読取装置(イメージスキャナ)等により取り込まれた画像データである。文書データ201は、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムにおけるファイルとして管理される。
【0041】
図5Aおよび図5Bに文書データ201の例を示す。図5Aに例示する文書データ201は、フローチャート形式で記述されており、図形(フロー構成部品を表す図形)と文章(フロー構成部品に記述される文章)の記述を含む。一方、図5Bに例示する文書データ201は、箇条書き形式の文章の記述を含む。
【0042】
図4に戻り、セグメント化ルールTBL202は、セグメント化部211が文書データ201をセグメント化する際に参照するデータである。セグメント化ルールTBL202には、文書データ201のセグメント化の方法(以下、「セグメント化ルール」と称する。)を示す情報が管理されている。セグメント化ルールTBL202の内容は、例えば、ユーザが予め設定する。
【0043】
図6に、セグメント化ルールTBL202の一例を示す。同図に示すように、セグメント化ルールTBL202は、文書ID2021、ルール2022、およびID付与方法2023の各項目を有する1つ以上のエントリ(レコード)で構成される。セグメント化ルールTBL202の1つのエントリは、1つのセグメント化ルールに対応している。
【0044】
上記項目のうち、文書ID2021には、文書データ201の識別子である文書IDが格納される。
【0045】
ルール2022には、当該文書データ201のセグメント化ルールが格納される。同図において、文書ID2021が「1」のルール2022に格納されている「矩形領域抽出」というセグメント化ルールは、当該文書データ201の個々の矩形領域(例えば、フローチャートの構成部品が記載されている領域)に記述されている文章(一つの矩形領域の文章)を1つのセグメントとして抽出することを意味する。また、文書ID2021が「2」のルール2022に格納されている「箇条書き項目抽出」というセグメント化ルールは、文書データ201の箇条書きにおける1つの項目(項目番号や記号「・」で区別される項目)の文章を1つのセグメントとして抽出することを意味する。
【0046】
ID付与方法2023には、抽出した各セグメントへのセグメントIDの付与方法を示す情報が格納される。同図において、文書ID2021が「1」のID付与方法2023「自動」は、各セグメントにセグメントIDを自動採番することを意味する。また、文書ID2021が「2」のID付与方法2023に格納されている「項目番号」は、各セグメントに、箇条書きの各文章に付与されている項目番号を各文章のセグメントIDとして付与することを意味する。
【0047】
図4に戻り、セグメント化済文書データ20には、セグメント化部211がセグメント化ルールに従って文書データ201をセグメント化した内容が管理される。
【0048】
図7に、セグメント化済文書データ20の一例を示す。同図に示すように、セグメント化済文書データ20は、文書ID2051、セグメントID2052、およびテキスト2053の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。セグメント化済文書データ20の1つのエントリは1つのセグメントに対応している。
【0049】
文書ID2051には、当該セグメントの抽出元の文書データ201の文書IDが格納される。セグメントID2052には、当該セグメントのセグメントIDが格納される。テキスト2053には、当該セグメントの文章(本例ではテキストデータ)が格納される。
【0050】
図8は、セグメント化部211がセグメント化済文書データ205の生成に際して行う処理(以下、「セグメント化処理S800」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともにセグメント化処理S800について説明する。尚、セグメント化処理S800は、例えば、ユーザ等により新たな文書データ201が入力され、当該文書データ201に基づき対話モデル(対話モデルTBL101)を生成もしくは更新する必要が生じた際に実行される。
【0051】
まず、セグメント化部211は、セグメント化ルールTBL202から、セグメント化の対象となる文書データ201の文書IDに対応するエントリの内容(セグメント化ルール)を取得する(S811)。
【0052】
続いて、セグメント化部211は、取得したエントリのルール2022のセグメント化ルールに従い対象の文書データ201をセグメント化する(S812)。例えば、ルール2022が「矩形領域抽出」である場合、セグメント化部211は、文書データ201(フローチャート形式)の各矩形領域(フローチャートの画像のフロー構成部品の各領域)を特定し、特定した各矩形領域に記載されている文章の内容を取得し、取得した矩形領域ごとのセグメントを生成する。また、例えば、ルール2022が「箇条書き項目抽出」である場合、セグメント化部211は、箇条書きの各項目の夫々に対応するセグメントを生成する。
【0053】
尚、文書データ201が、例えば、画像データである場合、セグメント化部211は、例えば、パターン認識の方法により矩形領域を特定する。また、文書データ201が、例えば、マークアップ言語で記述されている場合、矩形領域をタグに基づき特定する。また、文書データ201が、例えば、画像データである場合、光学文字認識(OCR:Optical Character Recognition)により文章の内容をテキストデータ等に変換する。
【0054】
続いて、セグメント化部211は、取得したエントリのID付与方法2023に従い各セグメントにセグメントIDを付与する(S813)。例えば、ID付与方法2023が「自動」である場合、セグメント化部211は、各セグメントに元の文書データ201における出現順に自然数のセグメントIDを昇順に自動採番する。また、例えば、ID付与方法2023が「項目番号」である場合、セグメント化部211は、元の文書データ201における箇条書きの各項目番号を各セグメントのセグメントIDとして付与する。
【0055】
続いて、セグメント化部211は、以上により生成した各セグメントの内容に基づきセグメント化済文書データ205を生成する(S814)。
【0056】
以上のように、セグメント化部211は、対象の文書データ201について設定されたセグメント化ルールに従って文書データ201をセグメント化するので、文書データ201の形式に応じて適切にセグメント化ルールを設定することで、様々な形式の文書データ201に柔軟に対応することができる。
【0057】
図4に戻り、状態遷移キーワード抽出部212は、状態遷移キーワードラベルTBL203を用いて、セグメント化済文書データ205から、状態遷移を生じさせるキーワード(以下、「状態遷移キーワード」と称する。)を抽出し、状態遷移キーワードデータ206を生成する。
【0058】
より具体的には、状態遷移キーワード抽出部212は、状態遷移キーワードラベルTBL203を学習データとして学習した機械学習モデル(以下、「状態遷移キーワード抽出モデル」と称する。)に、セグメント化済文書データ205を入力することにより状態遷移キーワードを抽出して状態遷移キーワードデータ206を生成する。
【0059】
図9に、状態遷移キーワードラベルTBL203の一例を示す。同図に示すように、状態遷移キーワードラベルTBL203は、文書ID2031、キーワード2032、遷移元セグメントID2033、および遷移先セグメントID2034の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。状態遷移キーワードラベルTBL203の1つのエントリは、状態遷移キーワード抽出モデルの学習データの1つを構成する。状態遷移キーワードラベルTBL203は、例えば、ユーザが予め設定する。
【0060】
上記項目のうち、文書ID2031には、状態遷移キーワード抽出モデルの入力となる文書データ201の文書IDが格納される。
【0061】
キーワード2032、遷移元セグメントID2033、および遷移先セグメントID2034の組は、状態遷移キーワード抽出モデルの学習に際し当該モデルの出力と対照されるラベル(正解データ)である。キーワード2032には、状態遷移キーワードが、遷移元セグメントID2033には、当該キーワード2032による遷移元のセグメントのセグメントIDが、遷移先セグメントID2034には、当該キーワード2032による遷移先のセグメントのセグメントIDが、夫々格納される。
【0062】
状態遷移キーワード抽出部212は、文書ID2031で特定される文書データ201の一部の文章を状態遷移キーワード抽出モデルに入力する。そして、状態遷移キーワード抽出部212は、当該入力に対する状態遷移キーワード抽出モデルの出力を、当該入力に対応するラベル(キーワード2032、遷移元セグメントID2033、および遷移先セグメントID2034)と対照し、その差分に基づき状態遷移キーワード抽出部212のパラメータ(特徴量と特徴量の重み)を調整することにより状態遷移キーワード抽出モデルを学習する。
【0063】
図10に、状態遷移キーワード抽出部212によって生成される状態遷移キーワードデータ206の一例を示す。同図に示すように、例示する状態遷移キーワードデータ206は、文書ID2061、キーワード2062、遷移元セグメントID2063、および遷移先セグメントID2064の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。状態遷移キーワードデータ206の1つのエントリは、セグメント化済文書データ205を状態遷移キーワード抽出モデルに入力することにより抽出される1つの状態遷移キーワードに対応している。
【0064】
上記項目のうち、文書ID2061には、当該キーワードの抽出元の文書データ201の文書IDが格納される。キーワード2062には、状態遷移キーワード抽出部212によって抽出された状態遷移キーワードが格納される。遷移元セグメントID2063には、当該キーワード2062による遷移元のセグメントのセグメントIDが、遷移先セグメントID2064には、当該キーワード2062による遷移先のセグメントのセグメントIDが、夫々格納される。
【0065】
図11は、状態遷移キーワード抽出部212が、セグメント化済文書データ205から状態遷移キーワードを抽出して状態遷移キーワードデータ206を生成する処理(以下、「状態遷移キーワード抽出処理S1100」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに状態遷移キーワード抽出処理S1100について説明する。尚、状態遷移キーワード抽出処理S1100は、セグメント化処理S800が実行された後に実行される。
【0066】
まず、状態遷移キーワード抽出部212は、セグメント化済文書データ205を取得する(S1111)。
【0067】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、状態遷移キーワードラベルTBL203を取得する(S1112)。
【0068】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、状態遷移キーワードラベルTBL203からエントリ(学習データ)を1つ選択する(S1113)。
【0069】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、特徴量の抽出に用いるセグメント化済文書データ205の一部の文章から、状態遷移キーワードラベルTBL203のキーワード2032(もしくはキーワード2032に類似するキーワード)を抽出する(S1114)。
【0070】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、抽出したキーワードについて、当該キーワードを含むセグメントに近接するセグメントや当該セグメントが記述されている図形に近接する図形、当該キーワードの周辺単語や周辺文を特徴量として抽出し、抽出した特徴量に基づく状態遷移キーワード抽出モデルのパラメータ(特徴量、各特徴量の重み)を調整する(S1115)。
【0071】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、S1113で全てのエントリ(学習データ)を状態遷移キーワードラベルTBL203から選択済か否かを判定する(S1116)。全てのエントリを選択済でなければ(S1116:NO)、処理はS1113に戻る。全てのエントリを選択済であれば(S1116:YES)、処理はS1117に進む。
【0072】
S1117では、状態遷移キーワード抽出部212は、調整後のパラメータに基づき状態遷移キーワード抽出モデルを生成する。
【0073】
続いて、状態遷移キーワード抽出部212は、S1113で対象とした一部のセグメント化済文書データ205以外のセグメント化済文書データ205の文章を、S1117で生成した状態遷移キーワード抽出モデルに入力することにより、状態遷移キーワードデータ206を生成する(S1118)。
【0074】
以上で状態遷移キーワード抽出処理S1100は終了する。
【0075】
ところで、状態遷移キーワードラベルTBL203の設定にかかるユーザの負荷軽減を図るべく、例えば、対話モデル生成部200が、文書データ201を表示して、ユーザに、状態遷移キーワードラベルTBL203の各項目(状態遷移キーワード、遷移元セグメント、遷移先セグメント)を指定させるユーザインタフェースを提供するようにしてもよい。
【0076】
図12に、上記ユーザインタフェースを構成する画面の一例(以下、「状態遷移キーワードラベル設定画面1200」と称する。)を示す。同図に示すように、例示する状態遷移キーワードラベル設定画面1200は、文書IDの入力欄1210、セグメント化済文書データの表示欄1220、遷移元/遷移先設定欄1230、および登録ボタン1240を有する。
【0077】
ユーザが文書IDの入力欄1210に文書IDを入力すると、セグメント化済文書データ205の当該文書IDに対応するセグメントの内容がセグメント化済文書データの表示欄1220に表示される。ユーザが、セグメント化済文書データの表示欄1220においてキーワードを指定する操作(マウスのドラッグ操作等)を行うと、指定したキーワードが遷移元/遷移先設定欄1230に表示される。ユーザは、遷移元/遷移先設定欄1230に、各キーワードの遷移元と遷移先のセグメントのセグメントIDを入力する。ユーザが登録ボタン1240を操作すると、遷移元/遷移先設定欄1230の内容が状態遷移キーワードラベルTBL203に反映される。
【0078】
ユーザは、状態遷移キーワードラベル設定画面1200を利用することで、セグメント化済文書データ205の内容を確認しつつ、状態遷移キーワードラベルTBL203を効率よく設定することができる。
【0079】
尚、以上では、キーワード、遷移元セグメントID、および遷移先セグメントIDのセットをラベルとして状態遷移キーワード抽出モデルを学習する場合を例示したが、ラベルの設定方法や機械学習の方法は必ずしも限定されない。例えば、キーワード、遷移元セグメントID、および遷移先セグメントIDのうちのいずれか1つまたは2つをラベルとして学習した機械学習モデルを組み合わせることにより状態遷移キーワード抽出モデルを構成してもよい。
【0080】
図4に戻り、対話モデル生成処理部213は、セグメント化済文書データ205に基づきセグメント単位データ207を生成し、状態遷移キーワードデータ206とセグメント単位データ207とに基づき対話モデルTBL101を生成する。
【0081】
図13に、セグメント単位データ207の一例を示す。セグメント単位データ207には、セグメント化済文書データ205の各セグメントから抽出される情報(本例では単語)がセグメントIDごとに管理される。対話モデル生成処理部213は、セグメント化済文書データ205の各セグメントのテキスト2053から、例えば、固有表現抽出等の自然言語処理技術を用いて上記情報を抽出する。
【0082】
同図に示すように、例示するセグメント単位データ207は、文書ID2071、セグメントID2072、部位名2073、および動作名2074の各項目を有する複数のエントリ(レコード)で構成される。セグメント単位データ207の1つのエントリは、1つのセグメントに対応している。
【0083】
上記項目のうち、文書ID2071には、当該セグメントの抽出元の文書データ201の文書IDが格納される。セグメントID2072には、当該セグメントのセグメントIDが格納される。部位名2073および動作名2074には、夫々、セグメント化済文書データ205の各セグメントのテキスト2053から抽出される情報が格納される。尚、本例では、上記情報として、部位名2073および動作名2074を抽出しているが、対話モデル生成処理部213から抽出する情報は、対話制御システム1が対象とする作業の種類や内容に応じて選択される。
【0084】
図14は、対話モデル生成処理部213が、対話モデルTBL101を生成する際に行う処理(以下、「対話モデル生成処理S1400」と称する。)を説明するフローチャートである。以下、同図とともに対話モデル生成処理S1400について説明する。尚、対話モデル生成処理S1400は、状態遷移キーワード抽出処理S1100が実行された後に実行される。
【0085】
まず、対話モデル生成処理部213は、セグメント化済文書データ205を取得する(S1411)。
【0086】
続いて、対話モデル生成処理部213は、セグメント化済文書データ205のセグメントごとに情報を抽出し、セグメント単位データ207を生成する(S1412)。
【0087】
続いて、対話モデル生成処理部213は、状態遷移キーワードデータ206を取得する(S1413)。
【0088】
続いて、対話モデル生成処理部213は、状態遷移キーワードデータ206とセグメント単位データ207とに基づき、対話モデルTBL101(例えば、図2Bを参照)を生成する(S1414)。
【0089】
続いて、対話モデル生成処理部213は、対話モデルTBL101の始点ノードのエントリの出力キーワード1012に記号「<S>」を格納し、また、対話モデルTBL101の終点ノードのエントリの終了フラグ1013に「1」を格納する(S1415)。
【0090】
以上で対話モデル生成処理S1400は終了する。尚、対話モデル生成処理部213は、対話モデル生成処理S1400により生成した対話モデルTBL101の内容を、ユーザインタフェースを介してユーザに提示する。
【0091】
図15は、対話モデル生成処理部213が、生成した対話モデルTBL101の内容をユーザに提示する際に表示する画面(以下、「対話モデル確認画面1500」と称する。)の一例である。同図に示すように、対話モデル確認画面1500は、有向グラフの表示欄1510、対話モデルTBLの表示欄1520、編集ボタン1530、および登録ボタン1540を有する。
【0092】
有向グラフの表示欄1510には、対話モデルTBL101の内容に対応する有向グラフが表示される。ユーザは有向グラフを見ることで対話モデルTBL101の内容を直感的に把握することができる。対話モデルTBLの表示欄1520には、対話モデルTBL101の内容が表示される。
【0093】
ユーザが編集ボタン1530を操作すると、対話モデルTBLの表示欄1520の内容を編集するためのユーザインタフェースが表示され、これを利用してユーザは対話モデルTBL101の内容を編集することができる。
【0094】
ユーザが登録ボタン1540を操作すると、表示されている(編集された場合は編集後の)対話モデルTBLの表示欄1520の内容が対話モデルTBL101に反映される。
【0095】
このように、ユーザは、生成された対話モデルTBL101を対話モデル確認画面1500を介して視覚的に確認することができる。また、必要な場合であればユーザは対話モデル確認画面1500を介して対話モデルTBL101の内容を編集することもできる。
【0096】
図16は、以上に説明した対話制御システム1の構成に用いる情報処理装置の一例である。同図に示すように、例示する情報処理装置10は、プロセッサ11、主記憶装置12、補助記憶装置13、入力装置14、出力装置15、および通信装置16を備える。
【0097】
対話制御システム1は、例えば、通信可能に接続された複数の情報処理装置10を用いて実現してもよい。また、情報処理装置10は、その全部または一部が、例えば、クラウドシステムによって提供される仮想サーバのように、仮想化技術やプロセス空間分離技術等を用いて提供される仮想的な情報処理資源を用いて実現されるものであってもよい。また、情報処理装置10によって提供される機能の全部または一部は、例えば、クラウドシステムがAPI(Application Programming Interface)等を介して提供するサービスに
よって実現してもよい。
【0098】
また、情報処理装置10によって提供される機能の全部または一部は、例えば、SaaS(Software as a Service)、PaaS(Platform as a Service)、IaaS(Infrastructure as a Service)等を利用して実現されるものであってもよい。
【0099】
同図に示すプロセッサ11は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU
(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、
AI(Artificial Intelligence)チップ等を用いて構成されている。
【0100】
主記憶装置12は、プログラムやデータを記憶する装置であり、例えば、ROM(Read
Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、不揮発性メモリ(NVRAM(Non Volatile RAM))等である。
【0101】
補助記憶装置13は、例えば、SSD(Solid State Drive)、ハードディスクドライ
ブ、光学式記憶装置(CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)等)、ストレージシステム、ICカード、SDカードや光学式記録媒体等の記録媒体の読取/書込装置、クラウドサーバの記憶領域等である。補助記憶装置13には、記録媒体の読取装置や通信装置16を介してプログラムやデータを読み込むことができる。補助記憶装置13に格納(記憶)されているプログラムやデータは主記憶装置12に随時読み込まれる。
【0102】
入力装置14は、外部からの入力を受け付けるインタフェースであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、カードリーダ、ペン入力方式のタブレット、音声入力装置等である。
【0103】
出力装置15は、処理経過や処理結果等の各種情報を出力するインタフェースである。出力装置15は、例えば、上記の各種情報を可視化する表示装置(液晶モニタ、LCD(Liquid Crystal Display)、グラフィックカード等)、上記の各種情報を音声化する装置(音声出力装置(スピーカ等))、上記の各種情報を文字化する装置(印字装置等)である。尚、例えば、情報処理装置10が通信装置16を介して他の装置との間で情報の入力や出力を行う構成としてもよい。
【0104】
入力装置14と出力装置15は、ユーザとの間での対話処理(情報の受け付け、情報の提示等)を実現するユーザインタフェースを構成する。
【0105】
通信装置16は、他の装置との間の通信を実現する装置である。通信装置16は、通信ネットワーク5(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、イン
ターネット、公衆通信網、専用線等)を介して他の装置との間の通信を実現する、有線方式または無線方式の通信インタフェースであり、例えば、NIC(Network Interface Card)、無線通信モジュール、USBモジュール等である。
【0106】
情報処理装置10には、例えば、オペレーティングシステム、ファイルシステム、DBMS(DataBase Management System)(リレーショナルデータベース、NoSQL等)、KVS(Key-Value Store)等が導入されていてもよい。対話制御システム1は、前述し
た各種の情報(データ)を、例えば、データベースのテーブルやファイルシステムが管理するファイルとして記憶する。主記憶装置12や補助記憶装置13は、対話制御システム1が管理する各種のデータを記憶する記憶部として機能する。
【0107】
対話制御システム1が提供する各種の機能は、プロセッサ11が、主記憶装置12に格納されているプログラムを読み出して実行することにより、もしくは、対話制御システム1を構成するハードウェア(FPGA、ASIC、AIチップ等)自体によって実現される。
【0108】
また、対話制御システム1が備える各種の機能は、例えば、テキストデータマイニング等の公知の各種データマイニング手法、公知の各種自然言語処理手法(形態素解析、構文解析、意味解析、文脈解析、特徴量抽出、単語分散表現、固有表現抽出、テキスト分類、系列ラベリング)、公知の各種機械学習手法(深層学習(DNN(Deep Neural Network
)、RNN(Recurrent Neural Network)等)を用いて実現される。
【0109】
以上詳細に説明したように、本実施形態の対話制御システム1によれば、対話形式で情報提供を行う対話エンジンを機能させるために必要な有向グラフ構造の対話モデル(対話モデルTBL101)を、マニュアル等の文書データに基づき効率よく生成することができる。このため、少ない作業負荷でOT知識等の情報を対話形式で提供する仕組みを実現することができる。
【0110】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上記実施形態の構成の一部について、他の構成の追加や削除、置換をすることが可能である。
【0111】
例えば、以上では、各種の処理が文書(文書データ201)を単位として行われる場合を例として説明したが、処理の単位は必ずしも限定されず、本実施形態の対話制御システム1は、文書に代え文章(1つ以上の文からなる文章)を単位としても同様の処理を行うことができる。
【0112】
また、例えば、対話制御部100は、ユーザの入力文を対話モデルと対照する際の前処理として、入力文のばらつきや入力文の一部の誤り等を、例えば、機械学習モデルを用いた方法や所定のアルゴリズムにより矯正または修正する仕組みを備えていてもよい。
【0113】
また、上記の各構成、機能部、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば、集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、
ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0114】
また、以上に説明した各情報処理装置の各種機能部、各種処理部、各種データベースの配置形態は一例に過ぎない。各種機能部、各種処理部、各種データベースの配置形態は、これらの装置が備えるハードウェアやソフトウェアの性能、処理効率、通信効率等の観点から最適な配置形態に変更し得る。
【0115】
また、前述した各種のデータを格納するデータベースの構成(スキーマ(Schema)等)は、リソースの効率的な利用、処理効率向上、アクセス効率向上、検索効率向上等の観点から柔軟に変更し得る。
【符号の説明】
【0116】
1 対話制御システム、2 ユーザ装置、100 対話制御部、101 対話モデルTBL、200 対話モデル生成部、201 文書データ、202 セグメント化ル-ルTB
L、203 状態遷移キーワードラベルTBL、205 セグメント化済文書データ、206 状態遷移キーワードデータ、207 セグメント単位データ、211 セグメント化部、212 状態遷移キーワード抽出部、213 対話モデル生成処理部、S300 対話処理、S800 セグメント化処理、S1100 状態遷移キーワード抽出処理、1200 状態遷移キーワードラベル設定画面、S1400 対話モデル生成処理、1500 対話モデル確認画面
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16