(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】粒度分布測定用の撮影装置
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20241023BHJP
B07C 5/10 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G01N15/0227 100
B07C5/10
(21)【出願番号】P 2021086164
(22)【出願日】2021-05-21
【審査請求日】2024-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000142595
【氏名又は名称】株式会社栗本鐵工所
(74)【代理人】
【識別番号】110001586
【氏名又は名称】弁理士法人アイミー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横谷 建一郎
(72)【発明者】
【氏名】久保田 聡志
【審査官】森口 正治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2008/0217217(US,A1)
【文献】特開2014-92494(JP,A)
【文献】特開2003-275570(JP,A)
【文献】特開2001-337028(JP,A)
【文献】特開2015-10952(JP,A)
【文献】特開2018-155612(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/0227
B07C 5/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアにより搬送される多数の骨材からなる材料の粒度分布測定用の撮影装置であって、
前記コンベアの搬送方向前方端部から排出される材料の落下軌道上に配置され、幅方向における一部の骨材が相対的に前方に落下し、幅方向における他の骨材が相対的に後方に落下するように、前記材料を分流するための分流部と、
前記分流部の下方に配置され、前記分流部により分流された前方側の骨材と後方側の骨材との間に配置されるスクリーン部と、
前記スクリーン部に対面して配置され、前記前方側の骨材および前記後方側の骨材のいずれか一方を撮影する撮影部とを備える、粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項2】
前記分流部は、前記落下軌道に交差し、前記落下軌道の断面の厚み以上の長さを有する少なくとも1つの交差板と、前記交差板と幅方向に隣接し、前記材料の一部を前方に通過させる空間部とを含む、請求項1に記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項3】
複数の前記交差板は、前記空間部を形成する少なくとも1つのスリットが設けられた板状部材によって構成されている、請求項2に記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項4】
前記スクリーン部は、前記板状部材の下端に一体的に設けられている、請求項3に記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項5】
前記板状部材の非撮影面の幅方向両側部に、落下ガイド部が設けられている、請求項3または4に記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項6】
前記交差板を、前記落下軌道に交差する交差位置と、前記落下軌道に交差しない非交差位置とに位置変更するための位置変更手段をさらに備える、請求項2~5のいずれかに記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項7】
前記交差板の傾斜角度、設置高さ、および前後方向位置の少なくとも一つを調整するための調整手段をさらに備える、請求項2~6のいずれかに記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【請求項8】
前記分流部は、前記材料を下方から受ける前方傾斜板および後方傾斜板が幅方向に沿って交互に配置された材料分岐部材により構成されている、請求項1に記載の粒度分布測定用の撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベアにより搬送される多数の骨材からなる材料の粒度分布測定用の撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートは、セメント、骨材、水を混練することにより製造されるが、各材料の配合比率の他、骨材の粒径およびその分布によって性状が変化するため、コンクリートの品質管理においては、骨材の粒径および粒度分布を把握する必要がある。骨材に関しては、予め粒度調整された市販品を用いる場合もあれば、粒度調整されていない調達品、もしくは製造現場に設置された破砕機で直接破砕された破砕物を用いる場合がある。後者の場合、コンクリート製造前に、製造現場等で粒度分布を把握する必要がある。
【0003】
そのため、製造現場等において、骨材を搬送するコンベアから自由落下する骨材を撮影し、撮影画像に基づいて骨材の粒度分布を測定することが、従来から行われている。また、粒度分布の測定精度を向上させるために、撮影対象の骨材(材料)を整流させる技術が提案されている。
【0004】
特開2012-202757号公報(特許文献1)には、コンベアの無端ベルトから排出された材料を、表面に拡散用突起を設けた傾斜板上を流下させる構成が開示されている。
【0005】
特開2018-155612号公報(特許文献2)には、コンベアの無端ベルトから排出された材料の全てを整流部に取り込み、整流部に設けた回転ピンによって材料をスムーズに流下させる構成が開示されている。
【0006】
また、コンベアにより搬送される材料の一部をサンプリングして撮影する技術も従来から提案されている。特開2003-275570号公報(特許文献3)では、造粒機で造粒されたペレットがコンベアを移動、もしくはコンベアから落下する際に、傾斜板を所定の距離を差し込むことにより一部を採取し、その採取したペレットをカメラで撮影することにより、ペレットの重なりによる測定誤差を抑制して粒径を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-202757号公報
【文献】特開2018-155612号公報
【文献】特開2003-275570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、コンベアから落下する材料が多い場合、拡散用突起により材料(骨材)の滞留が発生し、処理能力が低下するおそれがある。
【0009】
また、特許文献2の技術でも、コンベアから落下する材料が多い場合には、回転ピンにより材料を幅方向に分散させたとしても撮影部から見て奥行き方向(前後方向)における骨材の重なりが十分に解消されず、撮影画像から測定される粒度分布と実際の粒度分布とに誤差が生じるおそれがある。
【0010】
また、コンベア上に積み重なった骨材の粒径にバラツキが大きい場合、粒径が小さいものは下の方に溜まりやすいため、特許文献3のように、コンベア上の材料の厚み方向の一部(上部)をサンプリングすると、サンプリングされた一部の骨材と全骨材の粒度分布に誤差が生じるおそれがある。
【0011】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであって、その目的は、コンベアから落下する材料が多い場合であっても、撮影した画像に基づいて、精度良く骨材の粒度分布を測定できるようにするための、粒度分布測定用の撮影装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明のある局面に従う粒度分布測定用の撮影装置は、コンベアにより搬送される多数の骨材からなる材料の粒度分布測定用の撮影装置であって、分流部と、スクリーン部と、撮影部とを備える。分流部は、コンベアの搬送方向前方端部から排出される材料の落下軌道上に配置されて、幅方向における一部の骨材が相対的に前方に落下し、幅方向における他の骨材が相対的に後方に落下するように、材料を分流する。スクリーン部は、分流部の下方に配置され、分流部により分流された前方側の骨材と後方側の骨材との間に配置される。撮影部は、スクリーン部に対面して配置され、前方側の骨材および後方側の骨材のいずれか一方を撮影する。
【0013】
好ましくは、分流部は、落下軌道に交差し、落下軌道の断面の厚み以上の長さを有する少なくとも1つの交差板と、交差板と幅方向に隣接し、材料の一部を前方に通過させる空間部とを含む。
【0014】
より好ましくは、複数の交差板は、空間部を形成する少なくとも1つのスリットが設けられた板状部材によって構成されている。
【0015】
スクリーン部は、板状部材の下端に一体的に設けられていることが望ましい。
【0016】
また、板状部材の非撮影面の幅方向両側部に、落下ガイド部が設けられていることが望ましい。
【0017】
好ましくは、粒度分布測定用の撮影装置は、交差板を、落下軌道に交差する交差位置と、落下軌道に交差しない非交差位置とに位置変更するための位置変更手段をさらに備える。
【0018】
また、粒度分布測定用の撮影装置は、交差板の傾斜角度、設置高さ、および前後方向位置の少なくとも一つを調整するための調整手段をさらに備えていてもよい。
【0019】
分流部は、材料を下方から受ける前方傾斜板および後方傾斜板が幅方向に沿って交互に配置された材料分岐部材により構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、コンベアから落下する材料が多い場合であっても、精度良く骨材の粒度分布を測定するための、骨材の撮影画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の形態に係る撮影装置の概略構成を模式的に示す側面図である。
【
図2】(A),(B)は、本発明の実施の形態における分流部を構成するサンプリング板の構成を示す図である。
【
図3】(A),(B)は、
図2のサンプリング板を用いた場合のシミュレーション結果を示す図である。
【
図4】
図3のシミュレーション結果に基づいて、サンプリングされた骨材の粒度と元の骨材の粒度とを比較したグラフである。
【
図5】(A)~(C)は、本発明の実施の形態におけるサンプリング板の付加機能を模式的に示す図である。
【
図6】(A)~(C)は、本発明の実施の形態において、使用時におけるサンプリング板の配置(傾き、高さ、前後方向位置)が調整された状態を模式的に示す図である。
【
図7】(A)~(D)は、サンプリング板の他の構成例を示す図である。
【
図8】(A),(B)は、本発明の実施の形態の変形例に係る撮影装置が備える分流部(材料分岐部材)を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
【0023】
<概要について>
本発明の実施の形態に係る粒度分布測定用の撮影装置(以下「撮影装置」と略す)の概要について説明する。
図1は、撮影装置1の概略構成を模式的に示す側面図である。
【0024】
図1を参照して、撮影装置1は、コンベア101により搬送される多数の骨材(砂利や砂を含む)からなる材料Mの粒度分布を測定するために、コンベア101の下流側に配置される。コンベア101は無端ベルトを有するベルトコンベアである。本実施の形態では、コンベア101の搬送方向における下流側(紙面右側)を、前方といい、
図1において矢印A1で示す。また、前後方向(矢印A1方向およびその反対方向)に直交する方向を、幅方向という。幅方向は、コンベア101の無端ベルトの横幅方向に対応する。
【0025】
コンベア101は、たとえば破砕機の排出口となる骨材供給部(図示せず)から供給された材料Mを、無端ベルトの回転により、前方へ向かって搬送する。この際、多数の骨材がコンベア101上に積み重なった状態で、すなわち厚みを有した状態で、前方へ搬送される。そのため、コンベア101の下流側端部から排出される材料Mは、高密度のまま落下する。なお、コンベア101は、下流側端部が上流側端部よりも若干上方となるように配置されている。
【0026】
図1には、骨材がコンベア101から材料Mが自由落下する際の軌道(以下「落下軌道」という)90を模式的に示している。落下軌道90は、コンベア101上における骨材の重なりに応じた厚みを有している。落下軌道90の断面の厚みは、材料Mの最外表面91と最内表面92との間隔に相当する。
【0027】
撮影装置1は、主に、分流部11と、スクリーン部12と、撮影部13とを備えている。分流部11は、落下軌道90上に配置され、コンベア101から排出される材料Mを前後方向に分流する。具体的には、幅方向における一部の骨材が相対的に前方に落下し、幅方向における他の骨材が相対的に後方に落下するように、材料Mを分流する。つまり、分流部11は、材料Mを厚み方向に分割することなく、前後方向に分流する。
【0028】
コンベア101上に積み重なった骨材は粒径が小さいものは下の方に溜まりやすい傾向にあり、材料Mの粒度は厚み断面方向でバラツキがある。分流部11は、材料Mを厚み方向に分割することなく前後方向に分流するので、分流部11は、骨材の粒度分布を維持したままで、一部の骨材をサンプリングすることができる。分流部11の具体的な構成例については、後に詳述する。
【0029】
スクリーン部12は、分流部11の下方に配置され、後述の
図2(B)等に示されるように、分流部11により分流された前方側の骨材と後方側の骨材との間に配置される。
【0030】
撮影部13は、スクリーン部12に対面して配置され、前方側の骨材および後方側の骨材のいずれか一方を撮影する。つまり、撮影部13は、分流部11によりサンプリングされた一部の骨材を撮影する。本実施の形態では、撮影部13が、スクリーン部12よりも前方に配置されており、分流部11により前方側に分流されて落下する骨材を撮影する。
【0031】
撮影部13により撮影された画像は、パソコンやタブレット等の情報処理端末103に送られて、情報処理端末103において、骨材の粒径および粒度分布が算出(推定)される。なお、撮影画像に基づく骨材の粒径の算出は、二値化処理などの公知の手法により実現できる。
【0032】
分流部11から落下する全ての骨材(材料M)は、ホッパ(図示せず)に収容されてもよいし、他の破砕機(図示せず)に投入されてもよいし、他のコンベア102により次工程に搬送されてもよい。コンベア102は、スクリーン部12よりも下方に位置し、たとえば後方から前方に向かって材料Mを搬送する。
【0033】
<分流部の構成例>
本実施の形態では、分流部11は、落下軌道90に交差して配置されるサンプリング板20によって実現されている。サンプリング板20は、少なくとも1つのスリットが設けられた板状部材である。サンプリング板20は、上下方向に延在し、前後方向に直交して(幅方向に沿って)配置されている。サンプリング板20は、たとえば鋼板など剛性を有する素材により形成されている。
【0034】
サンプリング板20は、撮影部13が取り付けられたケーシング10に、支持部材14を介して、たとえば鉛直状態となるように取り付けられている。サンプリング板20は、コンベア101の下流側端部に対面し、典型的には、コンベア101に比較的近い位置に配置される。
【0035】
図2を参照して、分流部11を構成するサンプリング板20について詳細に説明する。
図2(A)は、サンプリング板20を前方から(
図1の矢視線IIAで示す方向から)見た模式図であり、
図2(B)は、
図2(A)のIIB-IIB線に沿うサンプリング板20の断面図である。
図2(A)には、サンプリング板20に交差する落下軌道90の断面形状、すなわちコンベア101から排出される材料Mの外形を、想像線(二点鎖線)の枠で模式的に示している。なお、
図2(A)の矢印A2は幅方向を示す。
【0036】
図2(A)を参照して、サンプリング板20は、典型的には、平面視において略矩形形状である。サンプリング板20の横幅寸法W1は、落下軌道90の横幅W10よりも大きく、サンプリング板20には、幅方向に沿って互いに間隔をあけて複数(たとえば2つ)の縦長のスリット21が設けられている。すなわち、サンプリング板20は、幅方向において、板厚方向に貫通する貫通孔であるスリット21と、スリット21の無い板部分(以下「交差板」という)22とを交互に形成している。言い換えると、サンプリング板20は、幅方向に沿って互いに間隔をあけて配置される複数(この例では3つ)の交差板22によって形成されている。
【0037】
そのため、コンベア101から排出された骨材は、一部だけがスリット21を通過して前方に落下し(
図2(B)の流路F1)、残りは交差板22の裏面(後方側の面)に当たり、交差板22の裏面に沿って流下する(
図2(B)の流路F2)。このように、スリット21は、材料Mの一部を通過させる空間部を形成している。
【0038】
各スリット21の長さ寸法L1は、落下軌道90の断面の厚みT10以上である。すなわち、各スリット21は、材料Mの最外表面91から最内表面92に跨がる長さを有している。スリット21に隣接する交差板22も同様である。このように、スリット21、および、スリット21に隣接する各交差板22が、厚みT10以上の長さを有しているため、コンベア101で搬送されている材料M(全ての骨材)と同一の粒度分布のまま、材料Mを前方および後方の二方向に分流して落下させることができる。
【0039】
スリット21の形状は、特に限定はされないが、縦長の方がよく、また、図示されるように、上端の横幅L2よりも下端の横幅L3が長い台形形状であってもよい。各スリット21の横幅(L2,L3)は、スリット21を通過してサンプリングされる骨材の量が、全体の1/2以下となるように定められることが望ましい。
【0040】
本実施の形態のように2個のスリット21が設けられている場合、各スリット21の横幅(たとえばL2,L3の平均値)が、落下軌道90の横幅W10の1/5以下であることが望ましい。これにより、スリット21を通過したサンプリング対象の骨材を、幅方向に分散させながら落下させることができる。
【0041】
なお、各スリット21は、処理される骨材の最大粒径以上の幅を有している必要がある。たとえば、骨材の最大粒径が40mm~50mm程度の場合には、各スリット21の横幅L2,L3は、具体的には60mm以上150mm以下であることが望ましい。
【0042】
本実施の形態では、骨材の透過率(コンベア101から排出された材料Mのうち前方側へサンプリングされる骨材の割合)が20%~40%となるように、スリット21の横幅が定められている。一例として、スリット21の上端の横幅L2を約80mm、スリット21の下端の横幅L3を約120mmとしている。
【0043】
<シミュレーション結果>
上記のような構成のサンプリング板20を用いて、骨材の透過率を20%~40%とした場合のシミュレーション結果が、
図3に示されている。
図3(A),(B)は、サンプリング板20によって材料Mが分流される様子を、前方(正面)および斜め後方(裏面)からそれぞれ見た図である。この例では、サンプリング板20が、コンベア101から前方側に落下直後の骨材をサンプリングするように、落下軌道90の上端部付近に配置されている。
【0044】
図3(A),(B)に示されるように、コンベア101から排出された高密度な骨材(材料M)の幅方向の一部だけが、スリット21を通過し、落下軌道90に沿って前方側に落下している。この際、
図3(A)に示されるように、スリット21を通過した骨材maは、密度が低下するため、幅方向に分散されて落下している。つまり、前後方向の重なりが低減されている。また、
図3(B)に示されるように、コンベア101で搬送されている材料Mの厚み方向の全体がスリット21を通過している。
【0045】
このように、本実施の形態のサンプリング板20を用いることによって、骨材の粒度分布を変えることなく、前後方向の重なりが低減された骨材をサンプリングすることが可能である。そのため、コンベア101から排出された高密度の骨材をそのまま撮影対象とする場合に比べて、粒度分布の測定誤差を低減することができる。また、落下軌道90に沿って落下する骨材をサンプリングする構成であるため、骨材の滞留による処理能力の低下を防止することができる。
【0046】
図4は、
図3のシミュレーション結果に基づいて、サンプリング板20のスリット21を通過した骨材ma、すなわちサンプリングされた骨材maの粒度と、元の骨材(材料M)の粒度とを比較したグラフである。グラフの横軸には、0~40mmの篩目が5mm単位で示され、グラフの縦軸には、累積通過割合(0~100%)が示されている。このシミュレーションのように、骨材の粒径にバラツキがある場合であっても、元の骨材の粒度分布とサンプリングされた骨材の粒度分布とが略同一となっている。このことから、本実施の形態のサンプリング板20を用いることにより、簡易かつ精度良く、骨材の粒度分布を測定可能であることが理解できる。
【0047】
<サンプリング板の位置変更手段>
図2(A),(B)を参照して、撮影装置1は、サンプリング板20の位置を変更するための位置変更手段30をさらに備えている。位置変更手段30は、サンプリング板20を、たとえば支持部材14を回転軸として前後方向に回動させることにより、落下軌道90に交差する交差位置P1(実線で示す)と、これに交差しない非交差位置P2(想像線で示す)とに位置変更する。
【0048】
交差位置P1に位置するサンプリング板20は、裏面(非撮影面)が真っ直ぐ後方を向くように、略鉛直に配置されているのに対し、非交差位置P2に位置するサンプリング板20は、上端よりも下端側が前方となるよう傾斜し、裏面が斜め下方を向いている。非交差位置P2におけるサンプリング板20の傾斜角度θは、たとえば30°~50°である。
【0049】
位置変更手段30の具体的な構成例が
図2(A)に模式的に示されている。位置変更手段30は、たとえば、回転軸としての支持部材14と、支持部材14の軸方向端部に相対回転不可となるように取り付けられた、係合ピン31を有する係合部32と、ケーシング10の側壁に固定され、係合ピン31が係合する複数の孔(図示せず)が円弧状に設けられた被係合部33とを含む。
【0050】
なお、支持部材14の回転および位置決めは、係合ピン31を用いて手動で行われれる例に限定されず、外部からの制御により自動的に支持部材14を回転させることも可能である。たとえば、位置変更手段は、回転軸としての支持部材14と、支持部材14を回転させるための回転駆動部と、回転駆動部を制御して、支持部材14を所定の角度(θ)回転させる制御手段とを含んでいてもよい。
【0051】
このような位置変更手段30が設けられることにより、撮影部13による撮影時以外(つまり、骨材の粒度分布測定時以外)は、サンプリング板20を非交差位置P2に退避させることができる。したがって、サンプリング板20の裏面に常時、骨材が接触することによるサンプリング板20の摩耗を抑制または防止することができる。その結果、サンプリング板20のメンテナンス頻度を下げることができる。
【0052】
<スクリーン部>
図1および
図2に示されるように、本実施の形態において、スクリーン部12は、サンプリング板20の下端に一体的に設けられている。つまり、スクリーン部12は、支持部材14により、サンプリング板20を介して吊り下げ支持されている。これにより、撮影装置1の構成を簡素化できるとともに、現場での撮影装置1の設置を容易に行うことができる。
【0053】
具体的には、サンプリング板20の下端部とスクリーン部12の上端部とが重なった状態で、締結ボルト等によって両者が締結されている。なお、スクリーン部12の上端部とその下方の本体部分とが屈曲可能であってもよい。この場合、サンプリング板20の傾斜角度に関わらず、スクリーン部12の本体部分を常時、鉛直状態で配置することができる。そのため、
図2(B)に示したように、サンプリング板20を退避させた場合であっても、スクリーン部12が撮影部13に接触することを防止できる。
【0054】
スクリーン部12の横幅寸法W2は、サンプリング板20の横幅寸法W1と同じか、それよりも大きい。これにより、サンプリング板20により後方側に分流した骨材mb(
図3(B))が、撮影部13による撮影画像に写り込むことを防止できる。
【0055】
なお、サンプリング板20自体を下方に延ばし、サンプリング板20の下方部分をスクリーン部12として機能させてもよい。
【0056】
<サンプリング板の付加機能>
サンプリング板20の付加機能について、
図5を参照して説明する。
図5(A),(B)は、それぞれ、サンプリング板20の裏面(非撮影面)および表面(撮影面)を示す平面図である。
図5(C)は、
図5(B)のVC-VC線に沿うサンプリング板20の断面図である。
【0057】
図5(A),(C)に示されるように、サンプリング板20の裏面(非撮影面)の幅方向両側部に、落下ガイド部41が設けられていることが望ましい。
【0058】
落下ガイド部41は、たとえば、上下方向に延在する一対の側壁部411,412により実現されている。一対の側壁部411,412は、上端の間隔よりも下端の間隔が狭くなるように、テーパ状に配置されていてもよい。これにより、サンプリング板20の交差板22に当たった骨材を整流して落下させることができる。その結果、サンプリング板20により後方側に分流した骨材mb(
図3(B))の写り込みを確実に防止できる。
【0059】
また、
図5(B),(C)に示されるように、スリット21の下辺から前方に突出する突出部42を設けてもよい。突出部42は、たとえばスリット21の下辺中央に設けられた棒状部材である。これにより、サンプリング板20のスリット21を通過した骨材を、より確実に幅方向に分散させることができる。
【0060】
<使用時におけるサンプリング板の配置調整>
本実施の形態では、使用時(撮影時)において、サンプリング板20が略鉛直に配置されることとしたが、落下軌道90に交差さえしていれば、多少傾斜していてもよい。
【0061】
たとえば
図6(A)の実線で示されるように、サンプリング板20は、鉛直に延びる基準線Bに対し、上端よりも下端側が前方となるように傾斜して配置されてもよい。あるいは、
図6(A)の想像線で示されるように、基準線Bに対し、上端よりも下端側が後方となるように傾斜して配置されてもよい。
【0062】
コンベア101により搬送される骨材の量やコンベア101の搬送速度等によって、たとえば現場ごとに、骨材の落下軌道90が変わる可能性があるため、サンプリング板20の傾斜角度θxを調整するための角度調整手段(図示せず)が設けられていてもよい。この場合、上述の位置変更手段30が、角度調整手段を兼ねていてもよい。
【0063】
また、
図6(B)に示されるように、たとえば支持部材14の高さ(H1,H2)を調整することにより、サンプリング板20の設置高さを調整する高さ調整手段(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、スリット21の高さを調整できるので、各現場において適切に骨材をサンプリングすることができる。
【0064】
さらに、
図6(C)に示されるように、たとえば支持部材14の前後方向の位置(X1,X2)を調整することにより、サンプリング板20とコンベア101との間隔(近接度合)を調整する間隔調整手段(図示せず)が設けられていてもよい。これにより、サンプリング板20とコンベア101との間隔を調整できるので、各現場において適切に骨材をサンプリングすることができる。
【0065】
このように、撮影装置1は、サンプリング板20(交差板22)の傾斜角度、設置高さ、および前後方向位置の少なくとも一つを調整するための調整手段をさらに備えていてもよい。
【0066】
<サンプリング板の他の構成例>
本実施の形態では、サンプリング板20が2個のスリット21を有していることとしたが、このような例に限定されない。たとえば
図7(A)に示すサンプリング板20Aのように、スリット21の個数は1個であってもよい。また、
図7(B)に示すサンプリング板20Bのように、スリット21の個数は3個以上であってもよい。
【0067】
また、サンプリング板20Bの中央のスリット21のように、一部または全てのスリット21の台形形状が上下逆であってもよい。あるいは、スリット21の形状は台形形状に限定されず、
図7(C)に示すサンプリング板20Cのように、長方形状であってもよいし、菱形形状や楕円形状などであってもよい。
【0068】
いずれの場合であっても、スリット21は、サンプリング板の横幅方向中央位置を中心として左右対称に設けられていることが望ましい。
【0069】
さらに、
図7(D)に示すサンプリング板20Dのように、少なくとも、落下軌道90の横幅W10よりも幅の狭い交差板22を有していればよく、スリット21は必須ではない。つまり、分流部11は、落下軌道90の断面の厚みT10以上の長さを有する少なくとも1つの交差板22と、交差板22と幅方向に隣接する空間部21A(上述のスリット21に相当)とを含んでいればよい。なお、サンプリング板20Dは、複数の交差板22の上端部を連結する連結部23を有している。
【0070】
<変形例>
上記実施の形態では、分流部11が、材料Mの一部を前方に通過させる空間部(スリット)を含むサンプリング板により構成される例について説明したが、このような例に限定されない。
【0071】
図8を参照して、本実施の形態の変形例に係る撮影装置1Aの構成について説明する。
図8(A)は、撮影装置1Aの分流部11Aの構成を模式的に示す断面図であり、(B)は、分流部11Aの機能を模式的に示す平面図である。
【0072】
本変形例における撮影装置1Aは、実施の形態1の分流部11に代えて、分流部11Aを備えている。分流部11Aは、コンベア101から排出された材料Mを前後方向に分岐させて排出する材料分岐部材50により構成されている。撮影装置1Aにおいて、スクリーン部12は、材料分岐部材50の下方に、これと一体または別体で配置される。
【0073】
材料分岐部材50は、コンベア101から落下軌道90に沿って排出された材料Mの全てを下方から受けるように、上述のサンプリング板20の設置高さよりも下方位置に設置されている。
【0074】
材料分岐部材50は、
図8(B)に示すように幅方向に沿って交互に配置された前方傾斜板51および後方傾斜板52を含んでいる。前方傾斜板51が受けた骨材は、前方傾斜板51上を転がって前方へ落下し(流路F11)、後方傾斜板52が受けた骨材は、後方傾斜板52上を転がって後方へ落下する(流路F12)。
【0075】
前方傾斜板51および後方傾斜板52の個数は、典型的には同数であるが、異なっていてもよい。前方傾斜板51および後方傾斜板52の個数が同数(複数)である場合、材料分岐部材50は縮分機により実現可能である。
【0076】
本変形例においても、材料分岐部材50から二方向に排出される骨材の密度が低下するため、撮影部13による撮影対象の骨材の前後方向の重なりが低減される。また、材料Mは幅方向に分割されるのみで、厚み方向には分割されないため、撮影部13が撮影した一部の骨材(前方に落下した骨材)の画像によって、精度良く骨材の粒度分布を算出することができる。
【0077】
本変形例では、撮影部13は、
図8(A)において想像線で示すように、スクリーン部12の後方側に配置されていてもよい。つまり、撮影装置1Aは、材料分岐部材50により後方側に排出された骨材を撮影してもよい。
【0078】
なお、上述の実施の形態においても、撮影部13が、サンプリング板20の交差板22に沿って相対的に後方に落下する骨材(
図3の骨材mb)を撮影するようにしてもよい。
【0079】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0080】
1,1A 撮影装置、11,11A 分流部、12 スクリーン部、13 撮影部、20,20A,20B,20C,20D サンプリング板、21 スリット、21A 空間部、22 交差板、30 位置変更手段、41 落下ガイド部、50 材料分岐部材、51 前方傾斜板、52 後方傾斜板、90 落下軌道、101,102 コンベア、M 材料(骨材)、ma,mb 骨材、P1 交差位置、P2 非交差位置。