IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 京セラ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図1
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図2
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図3
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図4
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図5
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図6
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図7
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図8
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図9
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図10
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図11
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図12
  • 特許-電力管理サーバ及び電力管理方法 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電力管理サーバ及び電力管理方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 13/00 20060101AFI20241023BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20241023BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02J13/00 311R
H02J3/38 110
H02J3/00 130
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021087058
(22)【出願日】2021-05-24
(65)【公開番号】P2022087790
(43)【公開日】2022-06-13
【審査請求日】2023-08-18
(31)【優先権主張番号】P 2020199785
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 聡史
(72)【発明者】
【氏名】木下 健太
(72)【発明者】
【氏名】中垣 和歌
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212861(JP,A)
【文献】特開2014-103717(JP,A)
【文献】国際公開第2017/149724(WO,A1)
【文献】特開2016-059185(JP,A)
【文献】特開2016-014588(JP,A)
【文献】特開2017-211763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J3/00-5/00
H02J13/00
G01R11/00-11/66
G01R21/00-22/10
G01R35/00-35/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設に関する電力を所定粒度で計測する計測装置から、前記施設に関する電力を示す情報要素を第1周期で受信する受信部と、
前記施設に設置される分散電源を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記所定粒度が閾値よりも粗い場合に、前記第1周期よりも長い第2期間における前記施設に関する電力の積算値に基づいて前記分散電源を制御する第1制御を実行し、
前記所定粒度が閾値よりも粗くない場合に、前記施設に関する電力の瞬時値に基づいて前記分散電源を制御する第2制御を実行する、電力管理サーバ。
【請求項2】
前記制御部は、対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、前記対象期間における前記施設に関する電力の積算値を補正し、
前記予測誤差は、前記参照期間における前記施設に関する電力の予測値と、前記参照期間における前記施設に関する電力の実績値と、の差異である、請求項1記載の電力管理サーバ。
【請求項3】
前記制御部は、対象期間における前記分散電源の寄与電力の実績値を算出し、
前記対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、前記対象期間における前記分散電源の寄与電力の想定値を算出し、
前記寄与電力の実績値及び前記寄与電力の想定値に特定係数を乗算した値に基づいて、前記対象期間における前記施設に関する電力の積算値を補正する、請求項に記載の電力管理サーバ。
【請求項4】
前記特定係数は、前記寄与電力の想定値に乗算される第1係数と、前記寄与電力の実績値に乗算される第2係数と、を含む、請求項に記載の電力管理サーバ。
【請求項5】
前記特定係数は、前記寄与電力の実績値と前記寄与電力の想定値との比率に乗算される第3係数を含む、請求項又は請求項に記載の電力管理サーバ。
【請求項6】
前記特定係数は、前記対象期間の開始タイミングから経過した時間によって変化する、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の電力管理サーバ。
【請求項7】
前記制御部は、前記所定粒度に基づいて、前記施設に関する電力の積算値を補正する、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の電力管理サーバ。
【請求項8】
前記制御部は、前記対象期間において、前記分散電源を目標値に基づいて制御し、
前記目標値は、前記対象期間における前記施設に関する電力の予測値に基づいて設定される、請求項乃至請求項のいずれか1項に記載の電力管理サーバ。
【請求項9】
前記分散電源は、蓄電装置であり、
前記制御部は、
前記目標値が設定される第1タイミングにおいて、前記対象期間における前記施設に関する電力の予測値に基づいて、前記対象期間の開始タイミングで必要な前記蓄電装置の目標蓄電残量を設定する設定処理を実行し、
前記第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、前記対象期間における前記施設に関する電力の補正予測値を特定し、特定された補正予測値に基づいて、前記対象期間の開始タイミングで必要な前記蓄電装置の目標蓄電残量を補正する補正処理を実行する、請求項に記載の電力管理サーバ。
【請求項10】
前記制御部は、特定条件が満たされる場合に、前記補正処理を実行せずに、前記目標蓄電残量を最大化する最大化処理を実行する、請求項に記載の電力管理サーバ。
【請求項11】
施設に関する電力を所定粒度で計測する計測装置から、前記施設に関する電力を示す情報要素を第1周期で受信するステップAと、
前記施設に設置される分散電源を制御するステップBと、を備え、
前記ステップAは、
前記所定粒度が閾値よりも粗い場合に、前記第1周期よりも長い第2期間における前記施設に関する電力の積算値に基づいて前記分散電源を制御する第1制御を実行するステップと、
前記所定粒度が閾値よりも粗くない場合に、前記施設に関する電力の瞬時値に基づいて前記分散電源を制御する第2制御を実行するステップと、を含む、電力管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力管理サーバ及び電力管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電力系統の電力需給バランスを維持するために、電力系統から施設への潮流電力を抑制する技術が知られている。電力系統の電力需給バランスを維持するために、2以上の施設の潮流電力が目標電力となるように、2以上の施設のそれぞれに設置される蓄電装置の放電電力を制御する技術が提案されている。
【0003】
具体的には、電力系統の電力需給バランスを維持するために調整する電力(以下、調整要求電力)よりも蓄電装置の放電電力によって調整可能な電力(以下、調整可能電力)が大きい場合に、電力管理サーバは、2以上の施設に含まれる一部の施設を逐次的に制御する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2019/107435号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した技術では、蓄電装置の制御において、潮流電力を計測する計測装置によって計測された値を参照する必要がある。
【0006】
このような背景下において、発明者等は、計測装置の計測粒度が粗いことによって、電力系統の電力需給バランスを適切に制御することができないことを見出した。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、電力系統の電力需給バランスを適切に制御することを可能とする電力管理サーバ及び電力管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の概要は、電力管理サーバであって、施設に関する電力を所定粒度で計測する計測装置から、前記施設に関する電力を示す情報要素を第1周期で受信する受信部と、前記施設に設置される分散電源を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記所定粒度が閾値よりも粗い場合に、前記第1周期よりも長い第2期間における前記施設に関する電力の積算値に基づいて前記分散電源を制御する第1制御を実行する、ことを要旨とする。
【0009】
開示の概要は、電力管理方法であって、施設に関する電力を所定粒度で計測する計測装置から、前記施設に関する電力を示す情報要素を第1周期で受信するステップAと、前記施設に設置される分散電源を制御するステップBと、を備え、前記ステップAは、前記所定粒度が閾値よりも粗い場合に、前記第1周期よりも長い第2期間における前記施設に関する電力の積算値に基づいて前記分散電源を制御する第1制御を実行するステップを含む、ことを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、電力系統の電力需給バランスを適切に制御することを可能とする電力管理サーバ及び電力管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態に係る電力管理システム100を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る施設300を示す図である。
図3図3は、実施形態に係る下位管理サーバ200を示す図である。
図4図4は、実施形態に係るローカル制御装置360を示す図である。
図5図5は、実施形態に係る適用シーンを説明するための図である。
図6図6は、実施形態に係る適用シーンを説明するための図である。
図7図7は、実施形態に係る電力管理方法を示す図である。
図8図8は、変更例1を説明するための図である。
図9図9は、変更例1を説明するための図である。
図10図10は、変更例2を説明するための図である。
図11図11は、変更例2を説明するための図である。
図12図12は、変更例2を説明するための図である。
図13図13は、変更例3を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものである。
【0013】
[実施形態]
(電力管理システム)
以下において、実施形態に係る電力管理システムについて説明する。
【0014】
図1に示すように、電力管理システム100は、下位管理サーバ200と、施設300と、上位管理サーバ400と、を有する。図1では、施設300として、施設300A~施設300Cが例示されている。
【0015】
各施設300は、電力系統110に接続される。以下において、電力系統110から施設300への電力の流れを潮流と称し、施設300から電力系統110への電力の流れを逆潮流と称する。電力系統110から施設300への潮流電力は需要電力と称されてもよい。需要電力は、施設300から電力系統110への逆潮流電力を含む概念であってもよい。このようなケースにおいて、潮流電力は正の値で表され、逆潮流電力は負の値で表されてもよい。
【0016】
下位管理サーバ200、施設300及び上位管理サーバ400は、ネットワーク120に接続されている。ネットワーク120は、下位管理サーバ200と施設300との間の回線及び下位管理サーバ200と上位管理サーバ400との間の回線を提供すればよい。例えば、ネットワーク120は、インターネットを含んでもよい。ネットワーク120は、VPN(Virtual Private Network)などの専用回線を含んでもよい。
【0017】
下位管理サーバ200は、電力系統110の需給バランスを調整する電力管理サーバの一例である。下位管理サーバ200は、発電事業者、送配電事業者或いは小売事業者、リソースアグリゲータなどの事業者によって管理されるサーバである。リソースアグリゲータは、VPP(Virtual Power Plant)において、発電事業者、送配電事業者及び小売事業者などに逆潮流電力を提供する電力事業者であってもよい。リソースアグリゲータは、リソースアグリゲータによって管理される施設300の潮流電力(消費電力)の削減電力を生み出す電力事業者であってもよい。
【0018】
下位管理サーバ200は、施設300に設置されるローカル制御装置360に対して、施設300に設置される分散電源(例えば、太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する制御メッセージを送信する。例えば、下位管理サーバ200は、潮流の制御を要求する潮流制御メッセージを送信してもよく、逆潮流の制御を要求する逆潮流制御メッセージを送信してもよい。さらに、下位管理サーバ200は、分散電源の動作状態を制御する電源制御メッセージを送信してもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、絶対値(例えば、○○kW)で表されてもよく、相対値(例えば、○○%)で表されてもよい。或いは、潮流又は逆潮流の制御度合いは、2以上のレベルで表されてもよい。潮流又は逆潮流の制御度合いは、現在の電力需給バランスによって定められる電力料金(RTP; Real Time Pricing)によって表されてもよく、過去の電力需給バランスによって定められる電力料金(TOU; Time Of Use)によって表されてもよい。
【0019】
施設300は、図2に示すように、太陽電池装置310、蓄電装置320、燃料電池装置330と、負荷機器340、ローカル制御装置360及び計測装置390を有する。
【0020】
太陽電池装置310は、太陽光などの光に応じて発電を行う分散電源である。太陽電池装置310は、VPPで用いる分散電源の一例であってもよい。例えば、太陽電池装置310は、PCS(Power Conditioning System)及び太陽光パネルによって構成される。
【0021】
蓄電装置320は、電力の充電及び電力の放電を行う分散電源である。蓄電装置320は、VPPで用いる分散電源の一例であってもよい。例えば、蓄電装置320は、PCS及び蓄電池セルによって構成される。
【0022】
燃料電池装置330は、燃料を用いて発電を行う分散電源である。燃料電池装置330は、VPPで用いる分散電源の一例であってもよい。例えば、燃料電池装置330は、PCS及び燃料電池セルによって構成される。
【0023】
例えば、燃料電池装置330は、固体酸化物型燃料電池(SOFC: Solid Oxide Fuel Cell)であってもよく、固体高分子型燃料電池(PEFC: Polymer Electrolyte Fuel Cell)であってもよく、リン酸型燃料電池(PAFC: Phosphoric Acid Fuel Cell)であってもよく、溶融炭酸塩型燃料電池(MCFC: Molten Carbonate Fuel Cell)であってもよい。
【0024】
負荷機器340は、電力を消費する機器である。例えば、負荷機器340は、空調機器、照明機器、AV(Audio Visual)機器などである。
【0025】
ローカル制御装置360は、施設300の電力を管理する装置(EMS; Energy Management System)である。ローカル制御装置360は、太陽電池装置310の動作状態を制御してもよく、蓄電装置320の動作状態を制御してもよく、燃料電池装置330の動作状態を制御してもよい。ローカル制御装置360の詳細については後述する(図4を参照)。
【0026】
計測装置390は、施設300に関する電力を所定粒度で計測する計測装置の一例である。計測装置390は、施設300に関する電力として、電力系統110から施設300への潮流電力を計測してもよい。すなわち、施設300に関する電力は施設300の需要電力であると考えてもよい。計測装置390は、施設300に関する電力として、施設300から電力系統110への逆潮流電力を計測してもよい。計測装置390によって計測される値は、計測値と称されてもよい。計測装置390は、施設300に関する電力を示す情報要素を含むメッセージを第1周期(例えば、1分)で送信してもよい。計測装置390は、メッセージをローカル制御装置360に送信してもよく、下位管理サーバ200に送信してもよい。計測装置390は、自律的にメッセージを送信してもよく、送信相手の要求に応じてメッセージを送信してもよい。例えば、計測装置390は、上位管理サーバ400に帰属するSmart Meterであってもよい。所定粒度は、計測粒度と称されてもよく、デマンド計測粒度と称されてもよい。
【0027】
ここで、計測装置390は、施設300に関する電力の積算値を計測する。このようなケースにおいて、所定粒度は、計測装置390が積算値を区別可能な電力幅であると考えてもよい。例えば、計測装置390は、m回目の積算値がn×電力幅とn+1×電力幅との間である場合に、n×電力幅を積算値として特定する。
【0028】
例えば、所定粒度が15kWhである場合においては、計測装置390は、15kWhを最小単位として積算値を特定する。従って、計測装置390によって計測される積算値は、15kWhの整数倍(0kWh、15kWh、30kWh、45kWh…)である。さらに、12:00~12:01までの実際の需要電力の積算値が25kWh、12:01~12:02までの実際の需要電力の積算値が25kWhであるケースを想定すると、計測装置390は、12:01において15kWhを積算値として計測し、12:02において45kWhを積算値として計測する。
【0029】
上位管理サーバ400は、電力系統110などのインフラストラクチャーを提供するエンティティであり、発電事業者又は送配電事業者によって管理されるサーバであってもよい。上位管理サーバ400は、リソースアグリゲータを制御するアグリゲータコントローラによって管理されるサーバであってもよい。
【0030】
上位管理サーバ400は、電力系統110の需給バランスの調整を要求する調整メッセージを下位管理サーバ200に送信する。調整メッセージは、電力系統の電力需要の削減を要求するメッセージ(DR(Demand Response)メッセージ)を含んでもよい。調整メッセージは、電力系統の電力供給の削減を要求するメッセージ(出力抑制メッセージ)を含んでもよい。
【0031】
調整メッセージは、電力系統110の需給バランスの調整を要求する調整要求電力を特定する情報要素を含んでもよい。調整要求電力は、対象期間において調整すべき電力によって表されてもよい。調整要求電力は、ベースライン電力に基づいて定められてもよい。ベースライン電力は、調整メッセージの送信前の一定期間の需要電力の平均値であってもよい。一定期間は、ネガワット取引の実体に応じて定められてもよく、下位管理サーバ200と上位管理サーバ400との間で定められてもよい。或いは、調整要求電力は、対象期間における需要電力の予測値に基づいて定められてもよい。
【0032】
例えば、調整要求電力は、ベースライン電力から調整すべき電力の瞬時値によって表されてもよい。調整要求電力の瞬時値は、AC指令値と称されてもよい。
【0033】
実施形態において、下位管理サーバ200とローカル制御装置360との間の通信は、第1プロトコルに従って行われる。一方で、ローカル制御装置360と分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)との間の通信は、第1プロトコルとは異なる第2プロトコルに従って行われる。例えば、第1プロトコルとしては、Open ADR(Automated Demand Response)に準拠するプロトコル、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第2プロトコルとしては、ECHONET Lite(登録商標)に準拠するプロトコル、SEP(Smart Energy Profile)2.0、KNX、或いは、独自の専用プロトコルを用いることができる。例えば、第1プロトコル及び第2プロトコルの双方は、独自の専用プロトコルであってもよく、異なる規則で作られたプロトコルであればよい。但し、第1プロトコル及び第2プロトコルは、同一の規則で作られたプロトコルであってもよい。
【0034】
(下位管理サーバ)
以下において、実施形態に係る下位管理サーバについて説明する。図3に示すように、下位管理サーバ200は、管理部210と、通信部220と、制御部230とを有する。下位管理サーバ200は、VTN(Virtual Top Node)の一例であってもよい。
【0035】
管理部210は、不揮発性メモリ又は/及びHDD(Hard Disk Drive)などの記憶媒体によって構成される。
【0036】
例えば、管理部210は下位管理サーバ200によって管理される施設300に関するデータを管理する。下位管理サーバ200によって管理される施設300は、下位管理サーバ200を管理するエンティティと契約を有する施設300であってもよい。例えば、施設300に関するデータは、電力系統110から施設300に供給される需要電力であってもよく、電力系統110全体の需要電力の削減要請(DR)に応じて各施設300で削減された電力であってもよい。施設300に関するデータは、施設300に設置される分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)の種別、施設300に設置される分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)のスペックなどであってもよい。スペックは、太陽電池装置310の定格発電電力(W)、蓄電装置320の最大出力電力(W)、燃料電池装置330の最大出力電力(W)であってもよい。さらに、施設300に関するデータは、過去において分散電源に指示した出力電力であってもよい。例えば、分散電源が蓄電装置320である場合において、施設300に関するデータは、蓄電装置320に指示した放電電力であってもよい。施設300に関するデータは、分散電源の劣化度であってもよい。例えば、分散電源が蓄電装置320である場合において、施設300に関するデータは、蓄電装置320のSOH(State Of Health)であってもよい。
【0037】
通信部220は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0038】
通信部220は、ネットワーク120を介してローカル制御装置360と通信を行う。通信部220は、上述したように、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージをローカル制御装置360に送信する。通信部220は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答をローカル制御装置360から受信する。
【0039】
例えば、通信部220は、電力系統110から施設300に供給される需要電力を示す情報要素を含むメッセージを施設300(例えば、ローカル制御装置360、計測装置390)から受信する。需要電力は、上述した計測装置390によって計測された値でもよい。需要電力は、負荷機器340の消費電力から分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320、燃料電池装置330)の出力電力を除いた値でもよい。
【0040】
制御部230は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(integrated circuit)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路(integrated circuit(s))及び/又はディスクリート回路(discrete circuit(s))など)によって構成されてもよい。
【0041】
例えば、制御部230は、下位管理サーバ200の各構成を制御する。具体的には、制御部230は、制御メッセージの送信によって、施設300に設置されるローカル制御装置360に対して、施設300に設置される分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)に対する制御を指示する。制御メッセージは、上述したように、潮流制御メッセージであってもよく、逆潮流制御メッセージであってもよく、電源制御メッセージであってもよい。
【0042】
(ローカル制御装置)
以下において、実施形態に係るローカル制御装置について説明する。図4に示すように、ローカル制御装置360は、第1通信部361と、第2通信部362と、制御部363とを有する。ローカル制御装置360は、VEN(Virtual End Node)の一例であってもよい。
【0043】
第1通信部361は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0044】
例えば、第1通信部361は、ネットワーク120を介して下位管理サーバ200と通信を行う。第1通信部361は、上述したように、第1プロトコルに従って通信を行う。例えば、第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージを下位管理サーバ200から受信する。第1通信部361は、第1プロトコルに従って第1メッセージ応答を下位管理サーバ200に送信する。
【0045】
第2通信部362は、通信モジュールによって構成される。通信モジュールは、IEEE802.11a/b/g/n、ZigBee、Wi-SUN、LTE、5Gなどの規格に準拠する無線通信モジュールであってもよく、IEEE802.3などの規格に準拠する有線通信モジュールであってもよい。
【0046】
例えば、第2通信部362は、分散電源(太陽電池装置310、蓄電装置320又は燃料電池装置330)と通信を行う。第2通信部362は、上述したように、第2プロトコルに従って通信を行う。例えば、第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージを分散電源に送信する。第2通信部362は、第2プロトコルに従って第2メッセージ応答を分散電源から受信する。
【0047】
制御部363は、少なくとも1つのプロセッサを含んでもよい。少なくとも1つのプロセッサは、単一の集積回路(integrated circuit)によって構成されてもよく、通信可能に接続された複数の回路(集積回路(integrated circuit(s))及び/又はディスクリート回路(discrete circuit(s))など)によって構成されてもよい。
【0048】
例えば、制御部363は、ローカル制御装置360に設置される各構成を制御する。具体的には、制御部363は、施設300の電力を制御するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって、分散電源の動作状態の設定を機器に指示する。制御部363は、施設300の電力を管理するために、第2メッセージの送信及び第2メッセージ応答の受信によって分散電源の情報の報告を分散電源に指示してもよい。
【0049】
(適用シーン)
以下において、実施形態の適用シーンについて説明する。適用シーンでは、上述した所定粒度に起因する課題を解決する方法について説明する。適用シーンでは、上述した下位管理サーバ200が蓄電装置320を制御するケースについて例示する。
【0050】
このような前提下において、通信部220は、施設300に関する電力を示す情報要素を第1周期で受信する受信部を構成する。制御部230は、施設300に設置される蓄電装置320を制御する。
【0051】
ここで、制御部230は、所定粒度が閾値よりも粗い場合に、第1周期よりも長い第2期間における施設300に関する電力の積算値に基づいて蓄電装置320を制御する第1制御を実行する。第2期間は、電力系統110の需給バランスを調整するための単位期間(例えば、30分)であってもよい。第2期間は、単位期間よりも短くてもよく、単位期間よりも長くてもよい。
【0052】
一方で、制御部230は、所定粒度が閾値よりも粗くない場合に、施設300に関する電力の瞬時値に基づいて蓄電装置320を制御する第2制御を実行する。第2制御は、計測装置390から計測値を受信する第1周期で実行される制御であってもよい。すなわち、第2制御は、第1制御よりもリアルタイム性に優れている。
【0053】
ここで、制御部230は、所定粒度で計測装置390から受信する積算値を瞬時値に変換する。具体的には、制御部230は、計測値を受信する第1周期がt秒である場合に、積算値[kWh]=瞬時値[kW]×t[秒]/3600[秒]の式に従って、積算値を瞬時値に変換する。
【0054】
例えば、上述したように、所定粒度が15kWhである場合において、12:00~12:01までの実際の需要電力の積算値が25kWh、12:01~12:02までの実際の需要電力の積算値が25kWhであるケースを想定すると、計測装置390は、12:01において15kWhを積算値として計測し、12:02において45kWhを積算値として計測する。このようなケースにおいて、制御部230は、12:00~12:01までの積算値として15kWhを特定し、12:01~12:02までの積算値として30kWh(=45kWh-15kWh)を特定する。このような前提下において、第1周期が1分(60秒)であるケースを想定すると、制御部230は、12:00~12:01までの瞬時値として900kW(15kWh×60)を特定し、12:01~12:02までの瞬時値として1800kW(30kWh×60)を特定する。
【0055】
なお、所定粒度が15kWhである場合において、1分の所定粒度が900kWであると考えてもよく、30分の所定粒度が30kWであると考えてもよい。
【0056】
以下において、上述した第1制御及び第2制御について、図面を参照しながら説明する。ここでは、施設300に関する電力について需要電力と称する。
【0057】
例えば、制御部230は、対象期間において、蓄電装置320を目標値に基づいて制御する。目標値は、対象期間における需要電力の予測値に基づいて設定される。目標値は、上述したDRなどにおいて設定される目標値である。目標値の設定に用いる需要電力の予測値は、対象期間よりも前の第1タイミングにおいて予測される値である。需要電力の予測値は、施設300から下位管理サーバ200に通知されてもよく、下位管理サーバ200によって予測されてもよい。さらに、対象期間の長さが上述した単位期間の長さと同じであるケースについて説明する。対象期間として12:00~12:30を例示する。
【0058】
このような背景下において、第1制御の有用性を説明するために、まずは第2制御について図5を参照しながら説明する。
【0059】
図5に示すように、制御部230は、第2制御において、施設300に関する電力(需要電力)の瞬時値に基づいて蓄電装置320を制御する。具体的には、制御部230は、需要電力の瞬時値が目標値よりも小さい場合には、充電動作を実行するように蓄電装置320を制御する。一方で、制御部230は、需要電力の瞬時値が目標値よりも大きい場合には、放電動作を実行するように蓄電装置320を制御する。
【0060】
このように、第2制御は、リアルタイム性に優れており、瞬時的な意味でも電力系統110の需給バランスの安定化に寄与する。しかしながら、所定粒度が閾値よりも粗い場合には、需要電力の計測値と需要電力の実績値との間に誤差が生じる。例えば、単位期間において電力需要の積算値を需要電力の目標値に近づけるケースを想定すると、リアルタイム性の高い第2制御では、却って電力系統110の需給バランスを安定化することができない事態が想定される。このような事態は、計測値と目標値との差異が最大放電可能電力又は最大充電可能電力よりも大きいケースで生じ得る。さらに、このような事態は、所定粒度(計測値と実績値との差異)によっても生じ得る。
【0061】
上述した課題を解決するために、実施形態では、制御部230は、所定粒度が閾値よりも粗い場合に、上述した第1制御を実行する。具体的には、図6に示すように、制御部230は、第1制御において、施設300に関する電力(需要電力)の積算値に基づいて蓄電装置320を制御する。すなわち、制御部230は、需要電力の積算値を目標値に近づけるように蓄電装置320を制御する。ここで、図6に示す目標値は、図5に示す目標値を瞬時値から積算値に変換したものであり、図5に示す目標値と同様であることに留意すべきである。
【0062】
このような構成によれば、計測値と目標値との差異が最大放電可能電力又は最大充電可能電力よりも大きいケースが生じる場合であっても、単位期間の終了タイミングにおいて、電力需要の積算値を需要電力の目標値に近づけやすい。言い換えると、リアルタイム性を犠牲にしつつも、単位期間として電力系統110の需給バランスを安定化することができる。
【0063】
(電力管理方法)
以下において、実施形態に係る電力管理方法について説明する。ここでは、下位管理サーバ200の動作について説明する。
【0064】
図7に示すように、ステップS10において、下位管理サーバ200は、計測装置390の所定粒度を特定する。下位管理サーバ200は、所定粒度を示す情報要素を計測装置390から受信することによって所定粒度を特定してもよい。下位管理サーバ200は、所定粒度をユーザ入力によって特定してもよい。
【0065】
ステップS11において、下位管理サーバ200は、所定粒度が閾値よりも粗いか否かを判定する。下位管理サーバ200は、所定粒度が閾値よりも粗い場合に、ステップS12の処理を実行する。下位管理サーバ200は、所定粒度が閾値よりも粗くない場合に、ステップS13の処理を実行する。
【0066】
ステップS12において、下位管理サーバ200は、第1周期よりも長い第2期間における施設300に関する電力の積算値に基づいて蓄電装置320を制御する第1制御を実行する(図6を参照)。
【0067】
ステップS13において、下位管理サーバ200は、施設300に関する電力の瞬時値に基づいて蓄電装置320を制御する第2制御を実行する(図5を参照)。
【0068】
(作用及び効果)
実施形態では、下位管理サーバ200は、所定粒度が閾値よりも粗い場合に、第1制御を実行する。このような構成によれば、リアルタイム性を犠牲にしつつも、単位期間として電力系統110の需給バランスを安定化することができる。
【0069】
実施形態では、下位管理サーバ200は、所定粒度が閾値よりも粗くない場合に、第2制御を実行する。このような構成によれば、瞬時的な意味で、単位期間として電力系統110の需給バランスを安定化することができる。
【0070】
[変更例1]
以下において、実施形態の変更例1について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0071】
変更例1では、施設300に関する電力の積算値(計測値)を補正する方法について説明する。ここでは、下位管理サーバ200が需要電力の積算値(計測値)を補正する方法について例示する。このような補正は、上述した第1制御で適用されてもよい。
【0072】
具体的には、上述した制御部230は、対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、施設300に関する電力の積算値を補正する。予測誤差は、参照期間における施設300に関する電力の予測値と、参照期間における施設300に関する電力の実績値と、の差異である。制御部230は、上述した所定粒度に基づいて、施設300に関する電力の積算値を補正してもよい。
【0073】
ここで、参照期間の長さは対象期間の長さと同じであってもよい。参照期間は、対象期間の直前の単位期間であってもよい。上述したように、電力需要の予測値は、目標値の設定で用いられる。
【0074】
以下において、このような補正方法について図面を参照しながら説明する。対象期間としては12:00~12:30を例示し、参照期間としては11:30~12:00を例示する。さらに、上述した補正が12:15に実行されるケースについて例示する。さらに、電力系統110の需給バランスを安定化させるために、蓄電装置320の放電動作が実行されるケースについて例示する。
【0075】
第1に、制御部230は、図8に示すように、参照期間における需要電力の予測値と参照期間における需要電力の実績値との予測誤差を特定する。予測値及び実績値は、参照期間における平均値で表されてもよい。需要電力の予測値は、需要電力(予測値)と表記されてもよく、需要電力の実績値は、需要電力(実績値)と表記されてもよい。
【0076】
第2に、制御部230は、対象期間における需要電力の予測値を予測誤差によって補正することによって、需要電力の補正後予測値を特定する。予測値及び補正後予測値は、対象期間における平均値で表されてもよい。例えば、参照期間の予測誤差が“予測値/実績値”といった予測誤差率によって表される場合に、対象期間の予測値に予測誤差率の逆数を乗算ことによって補正後予測値が算出されてもよい。或いは、参照期間の予測誤差が“実績値-予測値”といった差異絶対値によって表される場合には、対象期間の予測値に差異絶対値を加算することによって補正後予測値が算出されてもよい。
【0077】
第3に、制御部230は、補正後予測値と対象期間における需要電力の目標値との差異に基づいて、蓄電装置320の想定放電電力を特定する。続いて、制御部230は、想定放電電力と最大放電可能電力との比率(想定放電電力/最大放電可能電力)を特定する。制御部230は、特定された比率を補正係数として用いる。例えば、想定放電電力が40kWであり、最大放電可能電力が50kWである場合に、制御部230は、補正係数として0.8(=40/50)を特定する。想定放電電力は、計算上の電力であり、対象期間における実際の放電電力とは異なる。想定放電電力は、理想放電電力と称されてもよい。需要電力の目標値は、需要電力(目標値)と表記されてもよい。
【0078】
変更例1では、このような前提下において、上述した所定粒度に起因して生じる誤差(需要電力の計測値と需要電力の実績値との差異)について着目する。このような誤差は、対象期間において累積される。
【0079】
従って、図9に示すように、計測値によって特定される需要電力の積算値は、実際の需要電力の積算値よりも小さい可能性がある。しかしながら、これらの差異は不明である。
【0080】
このような課題を解決するために、変更例1では、図9に示すように、制御部230は、電力需要の積算値(計測値)を補正するための補正値を特定する。例えば、積算値ベースの所定粒度が15kWhであるケースについて考える。このようなケースにおいて、制御部230は、上述した補正係数(0.8)及び所定粒度(15kWh)に基づいて、需要電力の積算値(計測値)を補正するための補正値(13.5=7.5+7.5×0.8)を特定する。最初の項である”7.5”は、所定粒度に基づいて計測値を補正するための項目である。ここでは、所定粒度に基づいて計測値を補正するための値が所定粒度×1/2であるケースについて例示しているが、所定粒度に基づいて計測値を補正するための値は、補正値が所定粒度を超えない条件下において、所定粒度×1/2以外の値となってもよい。符号”+”は、蓄電装置320の放電が必要であることを意味する。蓄電装置320の充電が必要である場合には、符号は”-”であってもよい。2番目の項である”7.5×0.8”は、参照期間の予測誤差によって計測値を補正するための項目である。
【0081】
さらに、制御部230は、特定された補正値を電力需要の積算値(計測値)を加算することによって、補正後の需要電力の積算値(補正後需要電力)を特定する。制御部230は、上述した第1制御において、補正後の需要電力の積算値を目標値に近づけるように蓄電装置320を制御する。
【0082】
上述した変更例1では、需要電力の予測値が需要電力の実績値よりも大きいケースについて例示した。しかしながら、変更例1はこれに限定されるものではない。変更例1は、需要電力の予測値が需要電力の実績値よりも小さいケースに適用されてもよい。このようなケースにおいて、参照期間の予測誤差によって計測値を補正するための項目は、所定粒度に基づいて計測値を補正するための項目から減算されてもよい。
【0083】
上述した変更例1では、蓄電装置320の放電動作について例示した。しかしながら、変更例1はこれに限定されるものではない。変更例1は、蓄電装置320の充電動作に適用されてもよい。
【0084】
(定式化)
以下において、上述した蓄電装置320の放電動作(又は、充電動作)に関する定式化の一例について説明する。例えば、蓄電装置320の充電電力又は放電電力(以下、充放電電力)は、以下の式によって表すことができる。
【0085】
ここで、各略号の意味は以下に示す通りである。
【0086】
【0087】
(作用及び効果)
変更例1では、下位管理サーバ200は、対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、施設300に関する電力(電力需要)の積算値を補正する。このような構成によれば、参照期間で生じる予測誤差が考慮されるため、需要電力の積算値を適切に補正することができる。従って、上述した第1制御の精度が向上する。
【0088】
変更例1では、下位管理サーバ200は、所定粒度に基づいて、施設300に関する電力(電力需要)の積算値を補正する。このような構成によれば、所定粒度に起因する需要電力の積算値の過小評価が考慮されるため、需要電力の積算値を適切に補正することができる。従って、上述した第1制御の精度が向上する。
【0089】
[変更例2]
以下において、実施形態の変更例2について説明する。以下においては、実施形態に対する相違点について主として説明する。
【0090】
変更例2では、蓄電装置320の蓄電残量(以下、SOC(State Of Charge))の制御方法について説明する。
【0091】
変更例2では、対象期間において蓄電装置320が目標値に基づいて制御され、する。目標値が対象期間における需要電力の予測値に基づいて設定されるケースについて着目する。目標値の設定に用いる需要電力の予測値は、対象期間よりも前の第1タイミングにおいて予測される値である。特に限定されるものではないが、第1タイミングは、対象期間を含む日の前日の正午(12:00)であってもよい。
【0092】
このような背景下において、制御部230は、目標値が設定される第1タイミングにおいて、対象期間における施設300に関する電力(需要電力)の予測値に基づいて、対象期間の開始タイミングで必要な蓄電装置320の目標蓄電残量(以下、目標SOC)を設定する設定処理を実行する。目標SOCは、対象期間における放電動作だけではなく、対象期間における充電動作を考慮して設定されてもよい。
【0093】
制御部230は、第1タイミングよりも後の第2タイミングにおいて、対象期間における施設300に関する電力(需要電力)の補正予測値を特定し、特定された補正予測値に基づいて、対象期間の開始タイミングで必要な蓄電装置320の目標SOCを補正する補正処理を実行する。特に限定されるものではないが、第2タイミングは、対象期間の開始タイミングよりも所定時間(1時間、3時間、6時間など)だけ前のタイミングであってもよい。特に限定されるものではないが、補正予測値は、第1タイミングにおける需要電力の予測値と第2タイミングにおける需要電力の予測値との差異であってもよい。需要電力の予測は、対象期間を含む日の気象情報(例えば、気温、湿度、日射量、天候など)に基づいて実行されてもよい。
【0094】
例えば、図10に示すように、下位管理サーバ200は、第1タイミングにおいて目標SOCを設定する。下位管理サーバ200は、第2タイミングにおいて目標SOCを補正する。下位管理サーバ200は、第1タイミングにおける需要電力の予測値が第2タイミングにおける需要電力の予測値よりも小さい場合に、目標SOCが小さくなるように目標SOCを補正してもよい。このような構成によれば、対象期間において、蓄電装置320の放電余力が減少するが、蓄電装置320の蓄電余力が増大する。
【0095】
例えば、図11に示すように、下位管理サーバ200は、第1タイミングにおいて目標SOCを設定する。下位管理サーバ200は、第2タイミングにおいて目標SOCを補正する。下位管理サーバ200は、第1タイミングにおける需要電力の予測値が第2タイミングにおける需要電力の予測値よりも大きい場合に、目標SOCが大きくなるように目標SOCを補正してもよい。このような構成によれば、対象期間において、蓄電装置320の蓄電余力が減少するが、蓄電装置320の放電余力が増大する。
【0096】
さらに、下位管理サーバ200は、特定条件が満たされた場合に、上述した補正処理を実行せずに、蓄電装置320の目標SOCを最大化する最大化処理を実行してもよい。特定条件は、対象期間において災害の発生(台風、大雪など)が予測されることであってもよい。特定条件は、対象期間において停電(計画停電)が予測されることであってもよい。
【0097】
例えば、図12に示すように、下位管理サーバ200は、第1タイミングにおいて目標SOCを設定する。下位管理サーバ200は、第2タイミングにおいて特定条件が満たされると判定した場合に、目標SOCを最大化する。このような構成によれば、災害や停電などに備えて、蓄電装置320のSOCを確保することができる。
【0098】
[変更例3]
以下において、実施形態の変更例3について説明する。以下においては、変更例1に対する相違点について主として説明する。
【0099】
具体的には、変更例1では、上述した制御部230は、対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、施設300に関する電力の積算値を補正する。予測誤差は、参照期間における施設300に関する電力の予測値と、参照期間における施設300に関する電力の実績値と、の差異である。
【0100】
これに対して、変更例3では、需要電力(予測値)と需要電力(実績値)との乖離に伴って、施設300に関する電力の積算値を補正するための補正値を適切に算出することができないケースについて検討する。例えば、図13に示すように、参照期間における需要電力(実績値)が参照期間における需要電力(予測値)よりも大きい一方で、対象期間における需要電力(実績値)が対象期間における需要電力(予測値)よりも小さいケースなどが考えられる。このようなケースにおいて、対象期間における需要電力(予測値)は、参照期間における予測誤差に基づいて補正されるため(図13では、補正後予測値)、補正値が大きくなり過ぎる可能性が考えられる。
【0101】
なお、図13では、補正後予測値、需要電力(予測値)、需要電力(実績値)及び需要電力(目標値)は、対象期間における平均値で表されている。需要電力(実績値)は、需要電力(瞬時値)の平均値であり、需要電力(瞬時値)は、計測装置390によって計測される計測値であってもよい。
【0102】
このようなケースにおいて、充放電電力の実績値は、需要電力(実績値)と需要電力(目標値)との差異で表される。充放電電力の想定値は、補正後予測値と需要電力(目標値)との差異で表される。補正後予測値は、参照期間における予測誤差に基づいて算出されるため、充放電電力の想定値は、参照期間における予測誤差に基づいて算出される。充放電電力の実績値は、充放電電力(実績値)と表記されてもよく、充放電電力の想定値は、充放電電力(想定値)と表記されてもよい。
【0103】
このような前提下において、上述した制御部230は、対象期間における蓄電装置320の充放電電力の実績値を算出し、対象期間よりも前の参照期間で生じる予測誤差に基づいて、対象期間における蓄電装置320の充放電電力の想定値を算出する。制御部230は、充放電電力の実績値及び充放電電力の想定値に特定係数を乗算した値に基づいて、対象期間における施設300に関する電力の積算値を補正する。特定係数としては、以下に示す係数が用いられてもよい。
【0104】
第1オプションにおいて、特定係数は、充放電電力の想定値に乗算される第1係数と、充放電電力の実績値に乗算される第2係数と、を含んでもよい。
【0105】
第2オプションにおいて、特定係数は、充放電電力の実績値と充放電電力の想定値との比率に乗算される第3係数を含んでもよい。
【0106】
第3オプションにおいて、特定係数は、上述した第1係数、第2係数及び第3係数を含んでもよい。
【0107】
ここで、特定係数は、対象期間の開始タイミングから経過した時間によって変化してもよい。
【0108】
例えば、第1係数は、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど大きな値となり、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど小さな値となるように定義されてもよい。すなわち、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど、参照期間における予測誤差の影響が大きく、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど、参照期間における予測誤差の影響が小さくなるように、第1係数が定義されてもよい。
【0109】
第2係数は、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど小さな値となり、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど大きな値となるように定義されてもよい。すなわち、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど、計測装置390によって計測される計測値の影響が小さく、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど、計測装置390によって計測される計測値の影響が大きくなるように、第2係数が定義されてもよい。
【0110】
第3係数は、比率が充放電電力の実績値/充放電電力の想定値で表される場合に、第2係数と同様の考え方で、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど小さな値となり、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど大きな値となるように定義されてもよい。比率が充放電電力の想定値/充放電電力の実績値で表される場合に、第1係数と同様の考え方で、対象期間の開始タイミングから経過した時間が短いほど大きな値となり、対象期間の開始タイミングから経過した時間が長いほど小さな値となるように定義されてもよい。或いは、第3係数は、対象期間の開始タイミングから経過した時間とは無関係に定義されてもよい。例えば、第3係数は、蓄電装置320の蓄電残量に基づいて定義されてもよい。
【0111】
なお、補正値が取り得る範囲は、マイナス側において所定粒度を下回らず、、かつ、プラス側において所定粒度を超えない範囲であってもよい。補正値がマイナス側において所定粒度を下回る場合には、補正値として所定粒度(マイナスの値)が用いられてもよい。同様に、補正値がプラス側において所定粒度を上回る場合には、補正値として所定粒度(プラスの値)が用いられてもよい。さらに、第1係数、第2係数及び第3係数は、補正値がマイナス側において所定粒度を下回らず、かつ、補正値がプラス側において所定粒度を超えない範囲となるように定義されてもよい。
【0112】
第1オプション、第2オプション及び第3オプションについては、計測装置390の所定粒度、施設300の需要電力の傾向、蓄電装置320の蓄電容量などに応じて選択されてもよい。第1係数、第2係数及び第3係数の取り得る範囲は、計測装置390の所定粒度、施設300の需要電力の傾向、蓄電装置320の蓄電容量などに応じて定義されてもよい。
【0113】
(定式化)
以下において、上述した補正値に関する定式化の一例について説明する。例えば、補正値は、以下に示すいずれかの式によって表すことができる。
【0114】
【数2】
【0115】
なお、オプション1~オプション3において、他の略号の意味は変更例1と同様である。但し、補正値(Pda)は、-Pdg<Pda<Pdgの条件を満たすことに留意すべきである。算出された補正値(Pda)は、-Pdgを下回る場合に、補正値(Pda)として-Pdgが用いられてもよい。算出された補正値(Pda)は、Pdgを上回る場合に、補正値(Pda)としてPdgが用いられてもよい。さらに、第1係数(αt)、第2係数(βt)及び第3係数(γt)は、-Pdg<Pda<Pdgの条件を満たすように定義されてもよい。言い換えると、第1係数(αt)、第2係数(βt)及び第3係数(γt)は、Pdgが乗算される項の取り得る範囲が-1以上1以下の範囲となるように定義されてもよい。
【0116】
(作用及び効果)
変更例3では、下位管理サーバ200は、充放電電力の実績値及び充放電電力の想定値に特定係数を乗算した値に基づいて、対象期間における施設300に関する電力の積算値を補正する。このような構成によれば、参照期間における予測誤差を用いた補正(すなわち、充放電電力の想定値の補正)だけではなく、充放電電力の実績値が考慮されるため、参照期間における予測誤差が対象期間における予測誤差と異なる傾向を有する場合であっても、施設300に関する電力の積算値を補正するための補正値を適切に算出することができる。
【0117】
[その他の実施形態]
本発明は上述した上述した開示によって説明したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替上述した開示、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【0118】
例えば、下位管理サーバ200は、ローカル制御装置360を通じて蓄電装置320を間接的に制御してもよい。下位管理サーバ200は、蓄電装置320を直接的に制御してもよい。蓄電装置320を制御するための制御メッセージは、ローカル制御装置360を介して送信されてもよく、ローカル制御装置360を介さずに送信されてもよい。蓄電装置320及びローカル制御装置360を蓄電装置と考えてもよい。
【0119】
上述した開示では、計測装置390は、施設300に関する電力の積算値を計測する。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。計測装置390は、施設300に関する電力の瞬時値を計測してもよい。このようなケースであっても、瞬時値が所定粒度で計測されるため、上述した開示を適用することが可能である。
【0120】
上述した開示では、潮流電力の削減要請について主として説明した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。上述した開示は、逆潮流電力の削減要請(出力抑制)に適用されてもよい。
【0121】
上述した開示では、蓄電装置320を制御する主体が下位管理サーバ200であるケースを例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。蓄電装置320を制御する主体は、ローカル制御装置360であってもよい。
【0122】
上述した開示では、分散電源として蓄電装置320を例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。分散電源は、太陽電池装置310であってもよく、燃料電池装置330であってもよい。分散電源は、風力発電装置、地熱発電装置、バイオマス発電装置などであってもよい。このようなケースにおいて、蓄電装置320の充放電電力は、分散電源の出力電力と読み替えられてもよい。出力電力は、蓄電装置320の放電電力と同様の意味を持ち、蓄電装置320の充電電力を含まない概念であってもよい。充放電電力及び出力電力は、施設300の需要電力の調整に寄与するという意味で同様の意味を持ち、寄与電力と称されてもよい。
【0123】
上述した開示では、1つの施設300について着目して、第1制御又は第2制御を分散電源に適用するケースについて説明した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。第1制御が適用される分散電源を有する施設300及び第2制御が適用される分散電源を有する施設300が混在してもよい。すなわち、下位管理サーバ200は、閾値よりも粗い所定粒度を有する計測装置を有する施設300に設置される分散電源に第1制御を適用し、閾値よりも粗くない所定粒度を有する計測装置を有する施設300に設置される分散電源に第2制御を適用してもよい。
【0124】
上述した開示では、計測装置390が施設300の潮流電力又は逆潮流電力を計測する装置であるケースを例示した。しかしながら、上述した開示はこれに限定されるものではない。計測装置390は、施設300に関する電力として、負荷機器340の消費電力を計測する装置であってもよく、分散電源の出力電力を計測する装置であってもよい。例えば、計測装置390が負荷機器340の消費電力を計測する装置である場合には、計測装置390によって計測される電力の積算値又は瞬時値は、蓄電装置320の負荷追従制御に用いられてもよい。計測装置390が蓄電装置320の充放電電力を計測する装置である場合には、計測装置390によって計測される充放電電力の積算値又は瞬時値は、蓄電装置320の目標電力制御に用いられてもよい。
【0125】
上述した開示では特にふれていないが、下位管理サーバ200は、1つの施設300を対象として分散電源を制御してもよく、複数の施設300を対象として分散電源を制御してもよい。下位管理サーバ200は、分散電源を制御するための目標値を施設300毎に決定してもよい。さらに、下位管理サーバ200は、複数の蓄電装置320の中から、電力系統110の需給バランスの安定化に用いる蓄電装置320を選択してもよい。
【0126】
上述した開示では特に触れていないが、ローカル制御装置360が有する機能の少なくとも一部は、ネットワーク120上に配置されるサーバによって実行されてもよい。言い換えると、ローカル制御装置360は、クラウドサービスによって提供されてもよい。
【0127】
上述した開示では特に触れていないが、電力とは、特に断らない限りにおいて、あるタイミングの電力の瞬時値((k)W)であってもよく、ある期間の電力の積算値((k)Wh)であってもよい。
【符号の説明】
【0128】
100…電力管理システム、110…電力系統、120…ネットワーク、200…下位管理サーバ、210…管理部、220…通信部、230…制御部、300…施設、310…太陽電池装置、320…蓄電装置、330…燃料電池装置、340…負荷機器、360…ローカル制御装置、361…第1通信部、362…第2通信部、363…制御部、390…計測装置、400…上位管理サーバ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13