(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】テンションロッドの保持構造およびクレーン車
(51)【国際特許分類】
B66C 23/70 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B66C23/70 C
B66C23/70 Z
(21)【出願番号】P 2021091284
(22)【出願日】2021-05-31
【審査請求日】2024-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000140719
【氏名又は名称】株式会社加藤製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 和幸
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-111415(JP,A)
【文献】特開2020-179956(JP,A)
【文献】特開平05-116888(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーン車の車体に起伏可能に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に接続され、前記ブームから振り出されるよう構成されたジブと、
基端部をブームリンクを介して前記ブームの先端部に対し回動可能に連結され、且つ先端部を前記ジブに沿ってスライド可能に構成されたスライドブラケットを介して前記ジブに対し取り付けられたテンションロッドと、
前記ジブおよび前記テンションロッドに各々設けられ、互いに係合することにより前記テンションロッドを前記ジブに対し仮置き可能に構成された仮置部と
を備えたことを特徴とするテンションロッドの保持構造。
【請求項2】
前記テンションロッドは、前記ジブに保持されるための保持部を基端部に備えると共に、
前記テンションロッドに設けられた前記仮置部は、前記テンションロッドの基端部に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載のテンションロッドの保持構造。
【請求項3】
前記ブームリンクおよび前記テンションロッドに各々設けられ、互いに係合することにより前記テンションロッドを前記ブームリンクに対し仮置き可能に構成された第二の仮置部をさらに備えたこと
を特徴とする請求項1または2に記載のテンションロッドの保持構造。
【請求項4】
前記テンションロッドは、前記ブームリンクに連結されるための連結部を基端部に備えると共に、
前記テンションロッドに設けられた前記第二の仮置部は、前記テンションロッドの基端部に設けられていること
を特徴とする請求項3に記載のテンションロッドの保持構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のテンションロッドの保持構造を備えたことを特徴とするクレーン車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブクレーンにおいてブームの先端に取り付けられるジブを補助的に支持する部材であるテンションロッドを、ジブの振出し等の作業時に一時的に保持するための構造、およびこれを備えたクレーン車に関する。
【背景技術】
【0002】
ブームの先端に取り付けられたジブを振り出し、該ジブの先端から垂下されるフックを利用して吊荷を運搬するジブクレーンにおいては、前記ジブに係る荷重の一部を支持するための機構として、テンションロッドと称される部品が取り付けられる。ジブは、基端部をブームの先端に対し回動軸としてのピンで回動可能に接続され、且つ油圧シリンダ等の起伏機構によって起伏されるが、これらのピンや起伏機構のみでジブを支持しようとすると、吊荷によって前記ピンに加わる荷重が過大になる可能性がある。そこで、ブームとジブの間をさらにテンションロッドで接続し、このテンションロッドにより荷重の一部を分担し、ジブを補助的に支持するのである。
【0003】
こうしたジブを支持するためのテンションロッドに関連する先行技術文献としては、例えば、下記の特許文献1等がある。特許文献1に記載されているクレーン車では、テンションロッドの一端がブームの先端部に対しブームリンクを介して回動可能に取り付けられると共に、他端にはスライドブラケットが取り付けられており、該スライドブラケットがジブに沿って適宜スライドすることで、ジブの起伏に追従してテンションロッドが回動するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-111415号公報
【文献】特開2020-179956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の如きジブクレーンを搭載したクレーン車では、格納時や走行時など必要な場合にはジブがブームから取り外され、このとき、ジブと共にテンションロッドも取り外される。取り外されたジブは、テンションロッドと共に、例えば倒伏されたブームの下方に保持される(下抱き式の場合)。
【0006】
この格納状態から、ブームの起立およびジブの振り出しを行う際には、先立ってジブの基端部をブームの先端部に接続すると共に、テンションロッドの一端をブームの先端部に取り付ける必要がある。この作業は、例えば上記特許文献2に記載されている手順により実行できる。
【0007】
また、上記特許文献2には、ジブの格納時およびブームに対する接続作業時においてジブに対しテンションロッドを保持する機構(テンションロッドの保持装置)も記載されている。特許文献2に記載のテンションロッドの保持装置は、移動制限部材と下側支持機構を備えている。下側支持機構は、ジブおよびテンションロッドの格納時においてテンションロッドを下方から支持するようになっていると共に、ローラ式の受け部材により、テンションロッドの車体に関して前後方向の動きをも許容し得るよう構成されている。テンションロッドをブームに取り付ける作業の際には、ジブに対しテンションロッドを下側支持機構によって支持しつつ、該下側支持機構に対しテンションロッドを長手方向にスライドさせることができるようになっている。
【0008】
ここで、ジブおよびテンションロッドをブームに取り付けた後、ブームを起立させてジブを振り出すにあたっては、ジブに対するテンションロッドの保持を確実に解除しておく必要がある。すなわち、特許文献2に記載のクレーン車の場合、テンションロッドの保持装置を構成する下側支持機構の揺動部を上方外側へ揺動させ、テンションロッドをブームに対し下方へ移動できるよう解放する。仮に作業員がこのような作業を忘れ、テンションロッドの保持を解除しないままジブの振出しを実行しようとした場合、ジブの動作がテンションロッドに妨げられ、ジブが正常に振り出されない可能性がある。
【0009】
本発明は、斯かる実情に鑑み、テンションロッドによるジブの振出しの妨げをより確実に回避し得るテンションロッドの保持構造およびクレーン車を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、クレーン車の車体に起伏可能に設けられたブームと、前記ブームの先端部に接続され、前記ブームから振り出されるよう構成されたジブと、基端部をブームリンクを介して前記ブームの先端部に対し回動可能に連結され、且つ先端部を前記ジブに沿ってスライド可能に構成されたスライドブラケットを介して前記ジブに対し取り付けられたテンションロッドと、前記ジブおよび前記テンションロッドに各々設けられ、互いに係合することにより前記テンションロッドを前記ジブに対し仮置き可能に構成された仮置部とを備えたことを特徴とするテンションロッドの保持構造にかかるものである。
【0011】
本発明のテンションロッドの保持構造において、前記テンションロッドは、前記ジブに保持されるための保持部を基端部に備えると共に、前記テンションロッドに設けられた前記仮置部は、前記テンションロッドの基端部に設けることができる。
【0012】
本発明のテンションロッドの保持構造は、前記ブームリンクおよび前記テンションロッドに各々設けられ、互いに係合することにより前記テンションロッドを前記ブームリンクに対し仮置き可能に構成された第二の仮置部をさらに備えることができる。
【0013】
本発明のテンションロッドの保持構造において、前記テンションロッドは、前記ブームリンクに連結されるための連結部を基端部に備えると共に、前記テンションロッドに設けられた前記第二の仮置部は、前記テンションロッドの基端部に設けることができる。
【0014】
また、本発明は、上述のテンションロッドの保持構造を適用したことを特徴とするクレーン車にかかるものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明のテンションロッドの保持構造およびクレーン車によれば、テンションロッドによるジブの振出しの妨げをより確実に回避するという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施によるクレーン車の形態の一例を示す全体側面図であり、ブームを縮めて倒伏させた状態を示している。
【
図2】
図1のクレーン車のブームを起こし、ジブを振り出した状態を示す全体側面図である。
【
図3】格納時におけるジブおよびテンションロッドの形態を示す斜視図である。
【
図4】
図1におけるブームの先端部周辺の状態を示す拡大斜視図である。
【
図5】本実施例におけるテンションロッドの保持構造の要部を示す拡大斜視図である。
【
図6】
図5におけるジブの突出部を別の角度(
図5のVI矢視方向)から見た斜視図であり、仮置部の形態を示している。
【
図7】格納状態におけるジブ、テンションロッドおよびブームリンクの配置を示す側面図である。
【
図8】連結状態におけるジブ、テンションロッドおよびブームリンクの配置を示す側面図である。
【
図9】テンションロッドの基端部をジブに保持した状態を拡大して示す側面図である。
【
図10】テンションロッドの基端部をジブに仮置きした状態を拡大して示す側面図である。
【
図11】テンションロッドの基端部をブームリンクに仮置きした状態を拡大して示す側面図である。
【
図12】テンションロッドの基端部をブームリンクに連結した状態を拡大して示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0018】
図1~
図4は本発明の実施によるテンションロッドの保持構造、およびこれを備えたクレーン車の形態の一例を示している。
【0019】
クレーン車1は、
図1、
図2に示す如く、車体2の上部に旋回台3を介してブーム4を備えている。ブーム4は、基部を旋回台3に対し水平な軸を中心に回転可能に支持されており、図示しない油圧式の起伏シリンダの伸縮により、旋回台3に対して起伏動作を行うようになっている。
【0020】
ブーム4は、複数の筒体5がテレスコピック状に連結された構造であり、図示しない油圧機構により伸縮可能に構成されている。ブーム4の先端部には、振出し式のジブ6の基端部が回動軸6aを介して回動可能に接続されるようになっており、クレーン車1の稼働時には、ジブ6が
図2に示す如くブーム4の先端から振り出されて使用され、クレーン車1の格納時等には、必要に応じてジブ6をブーム4から取り外せるようになっている。また本実施例の場合、吊荷を吊り下げるためのフックとして主フック7と補フック8を備えており、
図2に示す如く、主フック7はブーム4の先端から吊り下げられ、補フック8はジブ6の先端から吊り下げられて使用されるようになっている。尚、
図2はジブ6がそれぞれ異なる角度に振り出された状態を1枚の図面にて示している。
【0021】
ジブ6は、回動軸6aを中心として回動可能にブーム4に接続されるが、この他に、クレーン車1にはジブ6をブーム4に対し補助的に支持するための機構(テンションロッド9)が備えられており、回動軸6aに加え、このテンションロッド9によっても、ジブ6に加わる荷重が支持されるようになっている。テンションロッド9は、一端側(先端部)がスライドブラケット10を介してジブ6に取り付けられており、ジブ6の振出し時(
図2参照)においては、他端側(基端部)がブームリンク11を介してブーム4の先端部に連結される。
【0022】
スライドブラケット10は、ジブ6の周囲を取り囲むように設けられた環状の部品であり、ジブ6の表面を長手方向に沿ってスライドできるようになっている。スライドブラケット10の外周面の一部には、テンションロッド9の先端部が回動可能に取り付けられている。尚、スライドブラケット10は、上記特許文献1、2に記載されているスライドブラケットと同等の物品として構成することができる。
【0023】
ジブ6およびテンションロッド9の形態を
図3に示す。ジブ6は、基部側(
図3における左下の部分)が二股に分かれたY字状の部品であり、
図4に示す如く、2本の基部端を回動軸6aの両端に取り付ける形でブーム4に対し接続される。テンションロッド9は、ジブ6に沿って取り付けられる一対の棒状の部品であり、それぞれ棒状の本体部9aと、筒状の調節部(エクステンション)9bとを備えて構成されている。本体部9aは、先端部側をエクステンション9bの内部に基端部側から挿入されており、エクステンション9bに対する本体部9aの固定位置を変更することにより、テンションロッド9全体の長さを調節できるようになっている。
【0024】
一対のテンションロッド9を構成する各エクステンション9bの先端部は、上述の通りスライドブラケット10の外周面に回動可能に取り付けられ、本体部9aの基端部は、
図4に示す如くブームリンク11の先端部に回動可能に連結されるようになっている。
【0025】
ブームリンク11は、各テンションロッド9と、ブーム4を連結する一対の棒状の部材である。
図1、
図2および
図4に示す如く、ブームリンク11の基端部は、ブーム4の先端部に回動可能に連結されており、先端部は、上述の通りテンションロッド9の本体部9aの基端部と連結される。
【0026】
ブーム4の先端部において、ジブ6の基端部が接続される回動軸6aはブーム4の下側に位置し、ブームリンク11の基端部が連結される部分はブーム4の上側に位置する(尚、以下では説明の便宜のため、上下や前後といった方向を表す場合には必要に応じ、
図1に示すようにブーム4を倒伏させ、ジブ6を下抱きした状態における位置関係を基準として記述することとする。ブーム4を起立させた状態(
図2参照)においては、「上」は車両にとっての後方、「下」は車両にとっての前方、「前」は上方、「後」は下方にそれぞれ対応する)。そして、
図2に示す如くブーム4を振り出す際には、テンションロッド9とブームリンク11がジブ6に対し後側から張力を加え、ジブ6に加えられる荷重の一部を分担するようになっている。この際、テンションロッド9の先端部に連結されたスライドブラケット10がブーム4の長手方向に沿ってスライドし、またテンションロッド9がブームリンク11に対し適宜回動し、あるいはブームリンク11と共にブーム4に対し回動することで、ジブ6の回動に対しテンションロッド9が回動しながら追従し、ジブ6を支持することができる。
【0027】
ここで、
図3はジブ6をブーム4から取り外した状態を示しており、クレーン車1の格納時等において、テンションロッド9はここに示すように、ジブ6と共にブーム4およびブームリンク11から取り外されてジブ6の下側に保持される。
図1、
図4は、ブーム4にジブ6およびテンションロッド9を連結した状態を示し、
図2は、そこからブーム4を起立させた状態を示している。本実施例のクレーン車1は、
図3に示す如くジブ6にテンションロッド9を保持し、また、その状態から
図1、
図4に示す如くテンションロッド9をブーム4側に連結する作業を行うにあたって好適な保持構造を備えている。このテンションロッド9の保持構造について、以下に
図5~
図8を参照しながら説明する。
【0028】
図8に示す連結状態(
図8は、
図1、
図4と同様、テンションロッド9がブーム4に連結された状態を示している)において、テンションロッド9は先端部をスライドブラケット10によってジブ6に支持され、基端部はブーム4側に連結されたブームリンク11の先端側に連結されることでブーム4に支持されている。
図5に示す如く、テンションロッド9の本体部9aの基端部には、ブームリンク11と連結するための連結部として連結孔9cが設けられる一方、ブームリンク11の先端部には、テンションロッド9と連結するための連結部としての連結孔11aが設けられており、
図8に示す如く、互いの連結孔9c,11a同士の位置を合わせて連結ピン12を通すことにより、テンションロッド9とブームリンク11が連結される。
【0029】
これに対し、
図7に示す格納状態においては、ジブ6はブーム4に設けられた回動軸6a(
図4参照)から取り外されて該ブーム4に下抱きされており、テンションロッド9もブーム4側のブームリンク11から取り外されている。この状態において、テンションロッド9の先端部はスライドブラケット10によってジブ6に支持されているが、基端部はブームリンク11との連結を解除されているため、ブームリンク11に代わってテンションロッド9を保持する機構が別途必要である。また、
図7に示す格納状態から
図8に示す連結状態に至るまでには、ジブ6やテンションロッド9を移動させ、ブーム4の先端に設けられた回動軸6aやブームリンク11に連結する作業が必要であり、その際にもテンションロッド9を一時的に保持する機構があれば便利である。
【0030】
そこで、本実施例では、テンションロッド9の保持構造として、テンションロッド9、ジブ6およびブームリンク11に、以下に説明する各種の機構を備えている(
図5、
図6参照)。
【0031】
図5に示す如く、テンションロッド9は、保持部(格納時においてジブ6に対しテンションロッド9を保持するための機構)としての保持孔9d、ジブ6への仮置部(テンションロッド9をジブ6から取り外す際やジブ6へ連結する際に仮置きするための機構)としてのフック9e、ブームリンク11への第二の仮置部(テンションロッド9をブームリンクへ連結する際やブームリンク11から取り外す際に仮置きするための機構)としてのフック9fを基端部に備えている。
【0032】
テンションロッド9の本体部9aの基端部には、保持ブラケット9gが設けられている。保持ブラケット9gは、ブームリンク11側の連結孔11aの軸方向に対し略直交する面に沿って伸びる小さい板状の部材であり、ここにブームリンク11との連結のための機構である連結孔9cが設けられているほか、保持孔9dおよびフック9e,9fもここに設けられている。
【0033】
保持孔9dおよびフック9eは、保持ブラケット9gに設けられた突出部9hに形成されている。突出部9hは、保持ブラケット9gから上方(ジブ6に向かう側)に突出した部分である。保持孔9dは、突出部9hの中央部を貫通する孔として設けられ、フック9eは、突出部9hの後端から後方へ突出する鉤型の突起として設けられている。また、フック9fは、保持ブラケット9gの最前端(基部端)から前方へ突出する鉤型の突起として設けられている。
【0034】
図5、
図6に示す如く、ジブ6は、保持部(格納時においてテンションロッド9を保持するための機構)としての保持孔6bと、テンションロッド9をジブ6から取り外す際やジブ6へ連結する際に仮置きするための機構としての仮置部6cを備えている。
【0035】
保持孔6bおよび仮置部6cは、ジブ6に設けられた突出部6dに形成されている。突出部6dは、ジブ6の基端部の下面から下側へ突出するように設けられた部分である。保持孔6bは、突出部6dの中央部を貫通する孔として設けられており、突出部6dにおける保持孔6bが設けられた部分の周辺は、保持孔6bの軸に直交し且つ互いに平行な2枚の板状の部材として形成されている。言い換えれば、保持孔6bは突出部6dを構成する前記2枚の板状の部材を貫通する孔として形成されている。仮置部6cは、突出部6dを構成する前記2枚の板状の部材の間を渡すように設けられた板状の部材であり(
図6参照)、保持孔6bの後方に設けられている。
【0036】
図7に示す格納状態においては、テンションロッド9の保持ブラケット9gに設けられた突出部9hを、ジブ6側の突出部6dを構成する前記2枚の板状の部材の間に差し込み、テンションロッド9側の保持孔9dの位置をジブ6側の保持孔6bの位置に合わせ、ここに保持ピン13を挿入することにより、テンションロッド9の基端部がジブ6側に保持される。
【0037】
図5に示す如く、ブームリンク11は、テンションロッド9をブームリンク11へ連結する際やブームリンク11から取り外す際に仮置きするための機構として、第二の仮置部11bを備えている。
【0038】
ブームリンク11の先端には、上述の通り連結孔11aが設けられている。この連結孔11aが設けられた部分は、
図4、
図8に示す如くテンションロッド9が連結された状態において、テンションロッド9の基端部に設けられた保持ブラケット9gを挟み込むような2枚の板状の部材として形成されている。そして、本実施例の場合、このブームリンク11の先端部の構成部材が連結孔11aの位置よりさらに先端側に伸びており、連結孔11aより先端寄りの位置において、前記2枚の板状の部材同士の間に仮置部11bが設けられている。すなわち、
図4、
図5に示すように、ブームリンク11の先端部を構成する2枚の板状の部材の間を渡すように設けられ、ブームリンク11の長手方向と平行且つ前記2枚の板状の部材と交差する面をなす部分が仮置部11bである。
図7に示す格納状態においては、ブームリンク11は先端を下方に向けた姿勢にあるので、仮置部11bは連結孔11aの下方に位置する。また、仮置部11bは、
図2に示す如くジブ6を振り出す際にテンションロッド9の動きを妨げないよう、格納状態(
図7参照)における連結孔11aよりも前方の位置(
図2に示す如くブーム4を起立させた状態においては、連結孔11aの背後にあたる位置)に設けられている。さらに仮置部11bは、
図2に示す如くジブ6が振り出された際、連結孔11aの背後に位置することにより、テンションロッド9がブームリンク11に対して背面側にまで回動しないようにガードする機能も果たす。尚、
図7、
図8に示す状態においてテンションロッド9の保持ブラケット9gから上方へ張り出すように設けられた突出部9hは、
図2に示す如くジブ6が振り出された状態においてはテンションロッド9にとって前方に位置し、この位置は仮置部11bとはテンションロッド9に関して反対側にあたるので、ジブ6を振り出した際に突出部9hが仮置部11bと干渉する心配はない。また、テンションロッド9の保持ブラケット9gから基部側へ張り出すように設けられたフック9fは、ジブ6を振り出した状態においてはブームリンク11の先端部をなす2枚の板状の部材の間に隠れるので、ロープ(図示せず)等と干渉する虞はない。
【0039】
図7に示す格納状態から、
図8に示す連結状態へ至る一連の作業について、
図9~
図12を参照しながら説明する。
【0040】
ジブ6の格納状態(
図7参照;
図9に対応)において、ジブ6は、ブーム4に接続された状態(
図8参照;
図12に対応)と比較するとブーム4に対して後方に位置しており、また、テンションロッド9は、ブーム4に接続された状態と比較するとジブ6に対して後方寄りに位置している。ブーム4(
図4参照)の先端部に基端部を連結されたブームリンク11は、先端部を下方に向けた状態であり、該ブームリンク11の先端部に対し後方に、ジブ6の基端部およびテンションロッド9の基端部が位置している。ジブ6の突出部6dに設けられた保持孔6bには保持ピン13が挿入されており、同じ保持ピン13がテンションロッド9の保持ブラケット9gに設けられた保持孔9dにも挿入されている。こうして、テンションロッド9の基端部がジブ6に保持されている。この状態において、テンションロッド9のフック9eは、ジブ6の仮置部である仮置部6cの上方に位置している。尚、テンションロッド9の先端部はスライドブラケット10によってジブ6に保持されている。
【0041】
この状態(
図7、
図9の状態)から、ジブ6をブーム4(
図1、
図4参照)に対し前方へ移動させ、ジブ6の基端部を回動軸6aに接続する(
図1、
図4参照)。このとき、先端部をスライドブラケット10を介してジブ6に支持され、基端部を保持孔6bにより保持されたテンションロッド9は、ジブ6と共に前方へ移動する。
【0042】
続いて、ジブ6とテンションロッド9を連結している保持ピン13を保持孔6b,9dから抜き取ると、ジブ6におけるテンションロッド9の基端部の保持が解除される。保持が解除されると、テンションロッド9の基端部は自重により落下しようとするが、直前の保持状態(
図7、
図9参照)において、テンションロッド9のフック9eはジブ6の仮置部6cの上方に位置していたので、
図10に示す如くフック9eが仮置部6cと係合することにより、テンションロッド9の基端部の下方への移動は止まる。こうして、保持状態が解除されても、テンションロッド9の基端部をジブ6にそのまま仮置きすることができる。
【0043】
次に、テンションロッド9をジブ6に対し前方へ移動させ、テンションロッド9をブームリンク11に連結させる作業を行う。フック9eを仮置部6cから外し、テンションロッド9の基端部を作業員が保持しながらテンションロッド9を前方へスライドさせて、まず
図11に示す如く、保持ブラケット9gの基端部に設けられたフック9fを、ブームリンク11の先端部に設けられた仮置部11bに係合させる。こうして、テンションロッド9の基端部をブームリンク11側に仮置きすることができる。
【0044】
さらに、
図12および
図8に示す如く、テンションロッド9の基端部を持ち上げて連結孔9cの位置をブームリンク11の連結孔11aに合わせ、両者に連結ピン12を通す。こうして、ジブ6およびテンションロッド9のブーム4への連結は完了する。
【0045】
その後、
図2に示す如くジブ6を振り出し、ブーム4を伸縮させたり、主フック7や補フック8を適宜繰り出して搬送作業を実行する。
【0046】
作業後、クレーン車1を走行させたり、格納する場合には、上記の逆の手順によりテンションロッド9をブームリンク11から取り外し、ブームリンク11の仮置部11bやジブ6のフック9fにテンションロッド9の基端部を適宜仮置きしつつテンションロッド9やその周辺の設備を操作し、最終的にジブ6の保持孔6bによりテンションロッド9の基端部を保持すればよい。
【0047】
以上のような本実施例のテンションロッドの保持構造によれば、連結状態においてはブームリンク11に連結されるテンションロッド9の基端部を、格納状態においては保持部としての保持孔6b,9dによりジブ6に連結して保持し、これによりテンションロッド9の全体をジブ6で保持できるようになっている。一方、テンションロッド9の基端部がブームリンク11やジブ6に連結されない状態(テンションロッド9をブームリンク11に連結しようとする場合や、テンションロッド9をブームリンク11から取り外した場合)には、テンションロッド9の基端部をジブ6側の仮置部6cおよびテンションロッド9側の仮置部であるフック9eを用いてジブ6に仮置きし、あるいはブームリンク11側の第二の仮置部11bおよびテンションロッド9側の第二の仮置部であるフック9fを用いてブームリンク11に仮置きできるようになっている。すなわち、上記特許文献2においてテンションロッド保持装置が担っていた機能を、仮置部6c,9eおよび第二の仮置部11b,9fが担う形である。
【0048】
こうした仮置きによるテンションロッドの保持構造では、ジブ6の振出しの際に仮置き状態の解除を忘れてしまうような心配がない。テンションロッド9をジブ6側へ仮置きするための仮置部6c,9eは、仮置部の一方であるフック9eがテンションロッド9の基端部に設けられているので、テンションロッド9をブームリンク11へ連結しようとする際には、仮置部6c,9e同士の係合は必ず解除される。同様に、テンションロッド9をブームリンク11側へ仮置きするための第二の仮置部11b,9fについても、仮置部の一方であるフック9fがテンションロッド9の基端部に設けられているので、テンションロッド9をブームリンク11へ連結しようとする際には、仮置部11b,9f同士の係合は必ず解除される。よって、テンションロッド9をブームリンク11と連結してジブ6を振り出す段階において、仮置部6c,9e同士あるいは第二の仮置部11b,9f同士が係合されたままになり、これがジブ6の振出しの妨げになるような事態は生じ得ない。
【0049】
また、テンションロッド9側の仮置部9e,9fは、基端部に設けられた連結孔9cおよび保持孔9dと近接して設けられているので、テンションロッド9を仮置きする際の操作が簡便である。すなわち、テンションロッド9の基端部をジブ6に対し着脱する際には、テンションロッド9の基端部あるいはその周辺でのみ保持ピン13の着脱やテンションロッド9の仮置きを行えばよく、例えばテンションロッド9の基端部とは別の場所にてテンションロッド9をジブ6に仮置きする作業を行ってから、テンションロッド9の基端部付近に移動して保持状態を解除するような手間は不要である。同様に、テンションロッド9の基端部をブームリンク11に対し着脱する際にも、テンションロッド9の基端部あるいはその周辺でのみ連結ピン12の着脱やテンションロッド9の仮置きを行えばよく、テンションロッド9の基端部とは別の場所にてテンションロッド9をブームリンク11に仮置きする作業を行ってから、テンションロッド9の基端部付近に移動して連結状態を解除するような手間は不要である。例えば上記特許文献2に記載のテンションロッド保持装置の場合、テンションロッドの中間部付近にて下側支持機構を保持位置に回動させてから基端部付近に移動してジブとテンションロッドの基端部の連結を解除し、テンションロッドをブームリンクに連結してからテンションロッドの中間部付近に再び移動して下側支持機構による保持状態を解除する、といった手順が必要であり、煩雑である。
【0050】
また、これらのテンションロッドの保持構造は非常に単純な形状の部材により構成されており、特許文献2に記載されているような複雑な仕組みのテンションロッド保持装置を設ける必要がないので、テンションロッドの保持構造やクレーン車1を製造するための費用を低減することができる。
【0051】
また、特許文献2に記載の如きテンションロッド保持装置では、移動制限部材や下側支持機構といった各種の機構がジブの各所から張り出すように設けられ、且つこれらの機構はある程度複雑な仕組みと、それに相応の体積と形状を有しているので、クレーン車に設けられる他の装備と干渉する虞がある。特にクレーン車が小型である場合、テンションロッド保持装置の体積や、それがほかの装備と干渉する可能性は相対的に大きくなる。本実施例のテンションロッドの保持構造であれば、最小限の単純な構成要素をテンションロッド9やジブ6、ブームリンク11に備えるだけでよいので、他の装備と干渉するような可能性を大きく低減することができる。
【0052】
尚、本発明を実施するにあたり、上記したテンションロッドの保持構造の具体的な形状等は適宜変更してよい。例えば、仮置部としてはフックの代わりに環状の部材等を設けてもよいし、ジブやブームリンク側の仮置部をフック状の形状にするといったことも可能である。また、テンションロッドやジブの実際の構成によっては、保持孔と連結孔の機能を兼用することも理論上は可能である。すなわち、ジブをブームに連結する際にはテンションロッド側の連結孔とブームリンク側の連結孔をピンで連結し、格納時にはジブ側の保持孔とテンションロッド側の連結孔をピンで連結してテンションロッドを保持するのである。このほか、テンションロッドを適宜保持し、連結し、仮置きし得る限りにおいて、テンションロッドの保持構造としてはここに実施例として説明した以外に種々の構成や形状を採用し得る。
【0053】
以上のように、上記本実施例のテンションロッドの保持構造は、クレーン車1の車体2に起伏可能に設けられたブーム4と、ブーム4の先端部に接続され、ブーム4から振り出されるよう構成されたジブ6と、基端部をブームリンク11を介してブーム4の先端部に対し回動可能に連結され、且つ先端部をジブ6に沿ってスライド可能に構成されたスライドブラケット10を介してジブ6に対し取り付けられたテンションロッド9と、ジブ6およびテンションロッド9に各々設けられ、互いに係合することによりテンションロッド9をジブ6に対し仮置き可能に構成された仮置部(仮置部6c、フック9e)とを備えている。このようにすれば、テンションロッド9の基端部がジブ6に連結されない状態において、テンションロッド9の基端部を仮置部6c,9eを用いてジブ6に仮置きすることができ、且つジブ6の振出しの際にはその仮置き状態を確実に解除することができる。
【0054】
また、本実施例のテンションロッドの保持構造において、テンションロッド9は、ジブ6に保持されるための保持部(保持孔)9dを基端部に備えると共に、テンションロッド9に設けられた仮置部9eは、テンションロッド9の基端部に設けられている。このようにすれば、仮置部9eを保持部9dと近接して設けることにより、テンションロッド9をジブ6に仮置きする際の操作を簡便に実行することができる。
【0055】
また、本実施例のテンションロッドの保持構造は、ブームリンク11およびテンションロッド9に各々設けられ、互いに係合することによりテンションロッド9をブームリンク11に対し仮置き可能に構成された第二の仮置部(仮置部11b、フック9f)をさらに備えている。このようにすれば、テンションロッド9の基端部がジブ6に連結されない状態において、テンションロッド9の基端部をブームリンク11側にも仮置きすることができる。
【0056】
また、本実施例のテンションロッドの保持構造において、テンションロッド9は、ブームリンク11に連結されるための連結部9cを基端部に備えると共に、テンションロッド9に設けられた第二の仮置部9fは、テンションロッド9の基端部に設けられている。このようにすれば、第二の仮置部9fを連結部9cと近接して設けることにより、テンションロッド9をブームリンク11に仮置きする際の操作を簡便に実行することができる。
【0057】
また、本実施例においては、上述のテンションロッドの保持構造をクレーン車1に適用しているので、クレーン車1において上記と同様の作用効果を奏することができる。
【0058】
したがって、上記本実施例によれば、テンションロッドによるジブの振出しの妨げをより確実に回避し得る。
【0059】
尚、本発明のテンションロッドの保持構造およびクレーン車は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0060】
1 クレーン車
2 車体
4 ブーム
6 ジブ
6c 仮置部
9 テンションロッド
9c 連結部(連結孔)
9d 保持部(保持孔)
9e 仮置部(フック)
9f 仮置部(フック、第二の仮置部)
10 スライドブラケット
11 ブームリンク
11b 仮置部(第二の仮置部)