(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ポリウレタン発泡体とその成形体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/00 20060101AFI20241023BHJP
C08J 9/28 20060101ALI20241023BHJP
C08J 9/30 20060101ALI20241023BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
C08G18/00 L
C08G18/00 G
C08J9/28 102
C08J9/30 CFF
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021105600
(22)【出願日】2021-06-25
(62)【分割の表示】P 2018162569の分割
【原出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-07-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】593139123
【氏名又は名称】株式会社ロジャースイノアック
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桐山 卓也
(72)【発明者】
【氏名】内田 健斗
【合議体】
【審判長】近野 光知
【審判官】小出 直也
【審判官】藤井 勲
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-235903(JP,A)
【文献】特開2017-134398(JP,A)
【文献】特開平6-322261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーポリオールと融点が80~165℃である酸変性ポリオレフィン
粉末とを含有
するポリウレタン反応組成物の発泡体であり、前記発泡体はセル内に不活性ガスを含み、圧縮残留歪(JIS K6401に基づく)が5%未満であることを特徴とするポリウレタン発泡体。
【請求項2】
以下の測定方法で得られる初期成形性(%)が50%以上である請求項1に記載のポリウレタン発泡体。
<測定方法>
元厚み10mmのポリウレタン発泡体のシートを200℃で5分間加熱した後、常温のプレス装置で5mmに圧縮し、その状態を5分間維持した後の「成形直後の厚み」を測定し、次式で初期成形性(%)を算出する。
初期成形性(%)=[100×(10mm-成形直後の厚み)/5mm]
【請求項3】
25%圧縮荷重が0.405~1.082MPaの範囲内であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリウレタン発泡体。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載のポリウレタン発泡体を圧縮して賦形された、凹凸を有する成形体。
【請求項5】
請求項4に記載の成形体を備える
インソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱圧縮成形に好適なポリウレタン発泡体とその成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂は加熱により賦形が可能であるが、歪特性が悪い(歪が大きい)問題がある。
一方、熱硬化性樹脂は、型を用いる先加工によって賦形が可能であり、後加工が困難であるが、歪特性が良い(歪が少ない)利点がある。
また、従来のポリウレタン発泡体は、高温で熱圧縮成形が可能であるが、歪特性が良いとは言いがたい問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、熱圧縮成形可能で、歪特性が良いポリウレタン発泡体とその成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、ポリオール成分、整泡剤、触媒、イソシアネート成分を含むポリウレタン反応組成物と、不活性ガスとからメカニカルフロス法により得られるポリウレタン発泡体であって、前記ポリオール成分にはポリマーポリオールが含まれ、前記ポリウレタン反応組成物には、酸変性ポリオレフィン粉末が含まれることを特徴とする。
【0006】
請求項2の発明は、請求項1において、前記酸変性ポリオレフィン粉末は、無水マレイン酸で変性されたポリオレフィン粉末であることを特徴とする。
【0007】
請求項3の発明は、請求項1または2において、前記ポリマーポリオールの固形分と前記酸変性ポリオレフィン粉末との合計重量が、前記ポリウレタン反応組成物重量の5~40重量%であることを特徴とする。
【0008】
請求項4の発明は、請求項1から3の何れか一項において、前記ポリウレタン発泡体の圧縮残留歪(JIS 6401に基づく)が10%以下であることを特徴とする。
【0009】
請求項5の発明は、ポリウレタン発泡体のシートの表面に熱圧縮成形で賦形された凹凸を有する成形体において、前記ポリウレタン発泡体が請求項1から4の何れか一項に記載のポリウレタン発泡体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のポリウレタン発泡体によれば、ポリマーポリオールと酸変性ポリオレフィン粉末をポリウレタン反応組成物に含むことにより、ポリウレタン結合の分解温度以下でポリウレタン発泡体を熱可塑的に変形でき、歪特性を良好にしながら熱圧縮成形時の形状を保持することができるようになる。
【0011】
本発明のポリウレタン発泡体の成形体によれば、熱圧縮成形により賦形された表面の凹凸を維持することのできる歪特性が良好なシート状の成形体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】ポリウレタン発泡体の成形体の一実施形態を示す平面図である。
【
図3】実施例と比較例の配合、成形保持性、25%CLD、圧縮残留歪の値と評価を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリウレタン発泡体の実施形態について説明する。本発明のポリウレタン発泡体は、ポリウレタン反応組成物と、不活性ガスとからメカニカルフロス法により得られる。
メカニカルフロス法は、ポリウレタン反応組成物に不活性ガスを圧縮して混入させた混合原料を、オークスミキサーまたは先端を絞ったノズルに供給してオークスミキサーまたはノズルから吐出することによりポリウレタン発泡体を形成する方法である。メカニカルフロス法では、混合原料の吐出時にそれまで圧縮されていた不活性ガスが膨張して気泡を形成し、その状態でポリオール成分とイソシアネート成分が反応して硬化することによりポリウレタン発泡体が形成される。このため、ポリウレタン反応組成物の発泡機能剤(発泡剤)として不活性ガスを用いたポリウレタン発泡体であり、ポリウレタン発泡体のセル内には不活性ガスが含まれたものとなる。
【0014】
ポリウレタン反応組成物は、ポリオール成分、整泡剤、触媒、イソシアネート成分が含まれ、さらに本発明では酸変性ポリオレフィン粉末が含まれ、さらに発泡機能剤(発泡剤)として不活性ガスが混合原料として含まれる。
ポリオール成分には、ポリマーポリオールと共にポリマーポリオール以外のポリオールが含まれる。
【0015】
ポリマーポリオールとしては、ポリエーテルポリオールにアクリロニトリル、スチレン等をグラフト重合させたものが挙げられる。ポリマーポリオールは、分子量2000~5000、官能基数2~4、ポリマーポリオール中のアクリロニトリル、スチレン等の固形分が10~50重量%(wt%)のものが好ましい。ポリマーポリオールは、二種類以上を併用してもよい。ポリオール成分にポリマーポリオールを含むことにより、歪特性を良好にすることができる。
【0016】
ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの量は、5~40重量%が好ましい。ポリマーポリオールの量が少なくなると、適度な硬度を得られず、逆に多くなると、ポリウレタン反応組成物の粘度が上昇しすぎてメカニカルフロスによる発泡がしにくくなる。 ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの固形分含量は、2~13重量%が好ましい。ポリマーポリオールの固形分含量が少なくなると、熱賦形しにくくなり成形保持性が悪くなる、逆に多くなると、熱賦形しやすいもののポリマーポリオールの粘度が上昇し過ぎて扱いにくくなる恐れがある。
【0017】
ポリマーポリオール以外のポリオールとしては、公知のポリオール、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールなどを用いることができる。ポリエーテルポリオールとしては、分子量400~5000、官能基数2~4、ポリエステルポリオールとしては、分子量300~3000、官能基数2~4のものが好ましい。ポリマーポリオール以外のポリオールは、二種類以上を併用してもよい。
【0018】
整泡剤としては、ポリウレタンフォーム用として公知のものを使用することができる。例えば、シリコーン系整泡剤、フッ素系整泡剤および公知の界面活性剤を挙げることができる。整泡剤の量は、適宜決定されるが、例としてポリオール成分100重量部当たり1.0~6.0重量部を挙げる。
【0019】
触媒としては、ポリウレタン発泡体用のアミン系触媒、有機金属触媒が単独または併用される。アミン系触媒としては、モノアミン化合物、ジアミン化合物、トリアミン化合物、ポリアミン化合物、環状アミン化合物、アルコールアミン化合物、エーテルアミン化合物等が挙げられ、これらの1種類でもよく、2種類以上併用してもよい。有機金属触媒としては、有機錫化合物、有機鉄化合物、有機ビスマス化合物、有機鉛化合物、有機亜鉛化合物等を挙げることができ、これらの1種類でもよく、あるいは2種類以上用いてもよい。触媒の量は、適宜決定されるが、例としてポリオール成分100重量部当たり0.03~3.0重量部を挙げる。
【0020】
イソシアネート成分としては、芳香族系、脂環式、脂肪族系の何れのイソシアネートでもよく、また、1分子中に2個のイソシアネート基を有する2官能のイソシアネートであっても、あるいは1分子中に3個以上のイソシアネート基を有する3官能以上のイソシアネートであってもよく、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0021】
例えば、2官能のイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート(TDI)、2,6-トリレンジイソシアネート(TDI)、m-フェニレンジイソシネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、キシリレンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートなどの芳香族系のもの、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネートなどの脂環式のもの、ブタン-1,4-ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、リジンイソシアネートなどの脂肪族系のものを挙げることができる。
【0022】
また、2官能以上のイソシアネートとしては、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(ポリメリックMDI)を挙げることができる。3官能以上のイソシアネートとしては、1-メチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、1,3,5-トリメチルベンゾール-2,4,6-トリイソシアネート、ビフェニル-2,4,4’-トリイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4,4’-トリイソシアネート、メチルジフェニルメタン-4,6,4’-トリイソシアネート、4,4’-ジメチルジフェニルメタン-2,2’,5,5’テトライソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4”-トリイソシアネート、等を挙げることができる。また、イソシアネートは、それぞれ一種類に限られず一種類以上であってもよい。例えば、脂肪族系イソシアネートの一種類と芳香族系イソシアネートの二種類を併用してもよい。イソシアネートインデックスは90~110が好ましい。なお、イソシアネートインデックスは、ウレタン原料中に含まれる活性水素基1モルに対するイソシアネート基のモル数を100倍した値であり、[(発泡原料中のイソシアネート当量/発泡原料中の活性水素の当量)×100]で計算される。
【0023】
酸変性ポリオレフィン粉末としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン(PB)、ポリペンテン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-エチレン・ブテン-スチレン共重合体(SEBS)等を、不飽和カルボン酸またはその無水物の酸で変性されたものの粉末を挙げることができる。
【0024】
酸変性ポリオレフィンの中でも、無水マレイン酸で変性された酸変性ポリオレフィンが好ましい。無水マレイン酸で変性された酸変性ポリオレフィンとしては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体等を挙げることができる。無水マレイン酸変性ポリプロピレンには、エチレンとのランダムコポリマーであるポリプロピレンに、無水マレイン酸で変性されたものを含むものとし、無水マレイン酸変性エチレン-プロピレン共重合体には、エチレンとプロピレンが共重合されたいわゆるブロックコポリマーであるポリプロピレンに無水マレイン酸で変性されたものを含むものとする。特に無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレンは、他の酸変性ポリオレフィンと比べて成形保持性が良くなるため、好ましいものである。酸変性ポリオレフィン粉末は、一種類に限られず、複数種類を含んでもよい。粉末とは、粒径5~250μmをいう。酸変性ポリオレフィンの融点は80~165℃であり、90~140℃が好ましい。
酸変性ポリオレフィン粉末をポリマーポリオールと共にポリウレタン反応組成物に含むことにより、ポリウレタン発泡体を酸変性ポリオレフィン粉末の融点よりも高い温度で予熱し、ポリウレタン発泡体をウレタン結合の分解温度以下で熱可塑的に変形(熱圧縮成形)できるようになり、かつ歪特性が良好になる。
【0025】
また、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリオレフィン粉末の量は、3~35重量%が好ましい。酸変性ポリオレフィン粉末の量が少なくなると、熱賦形できなくなり、逆に多くなると、粘度上昇によりメカニカルフロスによる発泡ができなくなる。
【0026】
ポリマーポリオールの固形分と酸変性ポリオレフィン粉末との合計重量は、ポリウレタン反応組成物重量の5~40重量%が好ましい。ポリマーポリオールの固形分と酸変性ポリオレフィン粉末との合計重量が少なくなると熱賦形できなくなり、逆に多くなるとポリウレタン反応組成物の粘度が上昇しすぎてメカニカルフロスによる発泡ができなくなる。
【0027】
その他、任意の添加剤をポリウレタン反応組成物に添加してもよい。任意の添加剤として、例えば、架橋剤、充填剤、染料、顔料、酸化防止剤、難燃剤等を挙げることができる。
架橋剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1-4ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等を挙げることができる。
充填剤としては、アルミナ三水和物、シリカ、タルク、炭酸カルシウム、粘土等を挙げることができる。
【0028】
発泡機能剤(発泡剤)として用いる不活性ガスとしては、ポリオールとイソシアネートとの反応等に悪影響を与えない気体、例えば乾燥空気あるいは窒素等が好適である。不活性ガスは、ポリウレタン反応組成物における混合割合が31体積%~91体積%となるようにするのが好ましい。なお、不活性ガスの混合割合とは、不活性ガスを除いたポリウレタン反応組成物100体積部に対する造泡用気体の体積%をいう。
【0029】
本発明のポリウレタン発泡体は、圧縮残留歪(JIS K 6401に基づく)が10%以下であり、長期使用による塑性変形が少ない。
また、本発明のポリウレタン発泡体は、25%圧縮荷重(25%CLD、JIS K 6254:φ50mmのサンプルを1mm/minの速度で25%圧縮したときの圧縮応力)が、0.01~0.1MPaが好ましい。
【0030】
本発明のポリウレタン発泡体は、熱圧縮成形により賦形され、成形体とされる。熱圧縮成形は、ポリウレタン発泡体を190℃~210℃で3~10分間、予備加熱し、常温(20~30℃)の金型により、圧縮プレスすることにより行う。金型の型面には凹凸を設けておき、成形体の表面に凹凸を賦形する。熱プレス時の圧縮率は、25~75%が好ましい。なお、圧縮率は、圧縮率=[(元厚み-圧縮時の厚み)/元厚み×100]で算出される。
【0031】
ポリウレタン発泡体の成形体の例を示す。
図1及び
図2に示すポリウレタン発泡体の成形体10は、所定厚みからなる本発明のポリウレタン発泡体のシートを200℃×5分で予備加熱し、常温(25℃)で圧縮成形することにより賦形されたものであり、インソールとして使用される。ポリウレタン発泡体の成形体10は、足の指の付け根付近、土踏まず部分、及びかかと部分と対応する部位に凹部101、103と、凸部102、104、106が形成されている。符号107は、凹凸の無い一般部107である。
【0032】
熱圧縮成形されたポリウレタン発泡体の成形体10は、使用した本発明のポリウレタン発泡体が歪特性の良いものであるため、長期使用による押圧によっても凹凸形状が塑性変形しにくく、良好な品質を維持することができる。
【実施例】
【0033】
以下の原料を用い、
図3の配合からなるポリウレタン反応組成物に、不活性ガス(窒素)の混合割合を85体積%にして、メカニカルフロス発泡機で混合、撹拌を行い、離形紙上に連続的に吐出して120~200℃に加熱し、厚み10mmのシート状のポリウレタン発泡体を作製した。
・ポリオール1:ポリエーテルポリオール、製品名;PP-3000、三洋化成工業社製、分子量3000、官能基数3、プロピレンオキサイド含有率100%
・ポリオール2:ポリマーポリオール、製品名;EX-914、旭硝子社製、分子量3000、官能基数3、固形分量22.9重量%
・ポリオール3:ポリマーポリオール、製品名;EX-913、旭硝子社製、分子量3000、官能基数2、固形分量20重量%
・ポリオール4:ポリマーポリオール、製品名;FS-7301、三洋化成工業社製、分子量3000、官能基数3、固形分量43重量%
・通常ポリエチレン(PE)粉末:1050、融点=105℃、東京インキ社製
・ポリアミド樹脂粉末:SK-1、融点=115℃、東京インキ社製
・ポリエステル樹脂粉末:G-120、融点=125℃、東京インキ社製
・酸変性ポリエチレン(PE)粉末:無水マレイン酸変性ポリエチレン、製品名;アドマーAT1000、融点=123℃、三井化学(株)製
・酸変性ポリプロピレン(PP)粉末:無水マレイン酸変性ポリプロピレン、製品名;ユーメックス1010、融点=135℃、三洋化成社製
・シリコーン整泡剤:製品名;SZ-1952、東レ・ダウコーニング社製
・鉄触媒:製品名:製品名;FIN-P1、日本化学産業社製
・イソシアネート:製品名;M5S、BASFイノアックポリウレタン社製、ポリメリックMDI(クルードMDI)、NCO%;34%
なお、通常ポリエチレン(PE)粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、酸変性ポリエチレン(PE)粉末、酸変性ポリプロピレン(PP)粉末は、何れも熱可塑性樹脂粉末であるため、それらを含む分類として
図3では「熱可塑性粉末」として示した。
図3における「wt%」は、ポリウレタン反応組成物中の重量%である。また、全樹脂量(wt%)は、ポリウレタン反応組成物中の熱可塑性樹脂粉末とポリマーポリオールの固形分の合計量のポリウレタン反応組成物に対する重量%である。
【0034】
各実施例及び各比較例について、発泡状態を目視で判断した。評価は破泡などの無い良好な場合「◎」、破泡などの不良部分がある場合「×」とした。
【0035】
また、各実施例及び各比較例について、熱圧縮成形を行い、初期成形性、常温で24時間経過後の成形保持性(常温×24h)、常温で1週間経過後の成形保持性(常温×1週間)を測定した。
熱圧縮成形は、厚み(元厚み)10mmのポリウレタン発泡体のシートを200℃で5分間予備加熱した後、常温のプレス装置で厚み5mm(圧縮率50%)に圧縮し、その状態を5分間維持した。なお、プレス時、厚み5mmのスペーサをポリウレタン発泡体のシートの両側に配置してプレスすることにより、プレス量を5mmに調節した。
初期成形性(%)は、前記圧縮状態を5分間維持した成形直後の成形保持率を、[(元厚み-成形直後の厚み)/(元厚み-スペーサの厚み)×100]で算出した。
成形保持性(常温×24h(%))は、成形後、常温で24時間放置した後の成形保持率を、[(元厚み-24時間後の厚み)/(元厚み-成形直後の厚み)×100]で算出した。
成形保持性(常温×1週間(%))は、成形後、常温で1週間放置した後の成形保持率を、[(元厚み-一週間後の厚み)/(元厚み-成形直後の厚み)×100]で算出した。
初期成形性と成形保持性の評価は、成形保持率が50%未満の場合「×」、50%~70%未満の場合「△」、70%~90%未満の場合「〇」、90%~100%の場合「◎」とした。
【0036】
また、各実施例及び各比較例について、25%CLD、圧縮残留歪を測定した。
25%CLD(MPa)は、JIS K 6254に基づき、φ50mmのサンプルを1mm/minの速度で25%圧縮したときの圧縮応力である。
圧縮残留歪(%)は、JIS K6401に基づき、50×50mmのサンプルを厚み方向に50%圧縮し、所定温度(70℃)下にて22時間静置し、その後、常温下にて圧縮応力を解放して30分経過後のサンプルの厚み(解放後の厚み)を測定し、下記の式により算出した値である。
圧縮残留歪(%)=[(圧縮前の厚み-解放後の厚み)/圧縮前の厚み×100]
圧縮残留歪の評価は、圧縮残留歪の値が5%未満の場合「◎」、5%以上の場合に「×」とした。
各試験項目の結果にしたがって総合評価を行った。総合評価は、各試験項目の評価のうち最も低い評価を総合評価とした。例えば、試験項目の評価に一つでも「×」がある場合は総合評価「×」、試験項目の評価が全て「△」以上であって、かつ一つでも「△」である場合は総合評価を「△」、試験項目の評価が全て「〇」以上であって、かつ一つでも「〇」がある場合は総合評価を「〇」、試験項目の評価が全て「◎」の場合は総合評価を「◎」とした。
【0037】
比較例1は、ポリオール成分にポリマーポリオールを含み、熱可塑性樹脂粉末として通常のポリエチレン粉末を添加した例である。比較例1の結果は、発泡状態に破泡があったため、その他の試験については行わなかった。総合評価「×」である。
【0038】
比較例2は、ポリマーポリオールを含まず、熱可塑性樹脂粉末を添加しない例である。比較例2は、発泡状態が「◎」、初期成形性が10.6%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が90.5%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が66.7%、評価「△」、25%CLDが0.015MPa、圧縮残留歪が2.8%、評価「◎」であり、初期成形性が悪く、総合評価「×」である。
【0039】
比較例3は、ポリマーポリオールを含み、熱可塑性樹脂粉末については添加せず、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオール固形分含量を5wt%、全樹脂量5.0wt%とした例である。比較例3は、発泡状態が「◎」、初期成形性が20.5%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が93.5%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が41.9%、評価「×」、25%CLDが0.050MPa、圧縮残留歪が2.7%、評価「◎」であり、初期成形性及び成形保持性(常温×1週間)が悪く、総合評価「×」である。
【0040】
比較例4は、ポリマーポリオールを含み、熱可塑性樹脂粉末については添加せず、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオール固形分含量を7.5wt%、全樹脂量7.5wt%とした例である。比較例4は、発泡状態が「◎」、初期成形性が35.1%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が91.7%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が64.3%、評価「△」、25%CLDが0.053MPa、圧縮残留歪が2.5%、評価「◎」であり、初期成形性が悪く、総合評価「×」である。
【0041】
比較例5は、ポリマーポリオールを含まず、熱可塑性樹脂粉末として通常ポリエチレン粉末を29.4wt%添加し、全樹脂量を29.4wt%とした例である。比較例5は、発泡状態が「◎」、初期成形性が28.2%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が82.5%、評価「〇」、成形保持性(常温×1週間)が38.6%、評価「×」、25%CLDが0.028MPa、圧縮残留歪が2.1%、評価「◎」であり、初期成形性及び成形保持性(常温×1週間)が悪く、総合評価「×」である。
【0042】
比較例6はポリマーポリオールを含み、熱可塑性樹脂粉末としてポリアミド樹脂粉末を添加し、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオール固形分含量を15wt%、ポリアミド樹脂粉末の添加量を18.1wt%、全樹脂量を33.1wt%とした例である。比較例6は、発泡状態が「◎」、初期成形性が31.8%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が78.8%、評価「〇」、成形保持性(常温×1週間)が69.5%、評価「△」、25%CLDが0.103MPa、圧縮残留歪が7.1%、評価「×」であり、初期成形性と圧縮残留歪が悪く、総合評価「×」である。
【0043】
比較例7は、熱可塑性樹脂粉末としてポリエステル樹脂粉末を使用した以外は比較例6と同様の例である。比較例7は、発泡状態が「◎」、初期成形性が30.4%、評価「×」、成形保持性(常温×24h)が78.2%、評価「〇」、成形保持性(常温×1週間)が69.4%、評価「△」、25%CLDが0.048MPa、圧縮残留歪が8.0%、評価「×」であり、初期成形性と圧縮残留歪が悪く、総合評価「×」である
【0044】
実施例1は、ポリオール成分65.9重量部中にポリマーポリオールとしてポリオール4(POP)を5重量部とし、熱可塑性樹脂粉末として酸変性ポリエチレン粉末を5重量部添加し、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を5.0wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を2.0wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を5.0wt%、全樹脂量を7.0wt%とした例である。実施例1は、発泡状態が「◎」、初期成形性が63.5%、評価「△」、成形保持性(常温×24h)が71%、評価「〇」、成形保持性(常温×1週間)が60.3%、評価「△」、25%CLDが0.691MPa、圧縮残留歪が3.7%、評価「◎」であり、総合評価は「△」である。実施例1は、全ての評価に「×」がなく、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0045】
実施例2は、ポリオール成分65.9重量部中にポリマーポリオールとしてポリオール4(POP)を20重量部とした以外は実施例1と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を20.1wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を5.0wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を5.0wt%、全樹脂量を10.0wt%とした例である。実施例2は、発泡状態が「◎」、初期成形性が97.9%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が91.3%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が84.8%、評価「〇」、25%CLDが0.715MPa、圧縮残留歪が3.3%、評価「◎」であり、総合評価は「〇」である。実施例2は、全ての評価が「〇」以上であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0046】
実施例3は、ポリオール成分65.9重量部中にポリマーポリオールとしてポリオール4(POP)を40重量部とし、酸変性ポリエチレン粉末を10重量部添加した以外は実施例1と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を38.2wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を11.0wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を9.6wt%、全樹脂量を20.6wt%とした例である。実施例3は、発泡状態が「◎」、初期成形性が95.4%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が92.2%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が88.5%、評価「〇」、25%CLDが1.073MPa、圧縮残留歪が3.7%、評価「◎」であり、総合評価は「〇」である。実施例3は、全ての評価が「〇」以上であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0047】
実施例4は、ポリオール成分65.9重量部中にポリマーポリオールとしてポリオール4(POP)を30重量部とし、酸変性ポリエチレン粉末を30重量部添加した以外は実施例1と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を24.1wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を8.4wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を24.1wt%、全樹脂量を32.5wt%とした例である。実施例4は、発泡状態が「◎」、初期成形性が97.0%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が96.8%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が95.2%、評価「◎」、25%CLDが0.669MPa、圧縮残留歪が3.1%、評価「◎」であり、総合評価は「◎」である。実施例4は、全ての評価が「◎」であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0048】
実施例5は、全樹脂量の値を実施例4と同一の32.5wt%に維持して、ポリマーポリオールと酸変性ポリエチレン粉末の割合を変えた例である。実施例5は、ポリオール成分65.9重量部中にポリマーポリオールとしてポリオール4(POP)を10重量部とし、酸変性ポリエチレン粉末を40重量部添加した以外は実施例4と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を7.4wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を2.8wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を29.7wt%、全樹脂量を32.5wt%とした。実施例5は、発泡状態が「◎」、初期成形性が97.1%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が98.1%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が97.2%、評価「◎」、25%CLDが0.550MPa、圧縮残留歪が3.6%、評価「◎」であり、総合評価は「◎」である。実施例5は、全ての評価が「◎」であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0049】
実施例6は、酸変性ポリエチレン粉末を50重量部に増やした以外は実施例5と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を6.9wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を2.8wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリエチレン粉末の添加量を34.6wt%、全樹脂量を37.4wt%とした例である。実施例6は、発泡状態が「◎」、初期成形性が97.7%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が98.8%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が97.9%、評価「◎」、25%CLDが0.405MPa、圧縮残留歪が4.6%、評価「◎」であり、総合評価は「◎」である。実施例6は、全ての評価が「◎」であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0050】
実施例7は、酸変性ポリエチレンに代えて酸変性ポリプロピレンを添加した以外は実施例3と同様であり、ポリウレタン反応組成物中のポリマーポリオールの含有量を38.2wt%、ポリマーポリオールの固形分含量を11wt%、ポリウレタン反応組成物中の酸変性ポリプロピレン粉末の添加量を9.6wt%、全樹脂量を20.6wt%とした例である。実施例7は、発泡状態が「◎」、初期成形性が94.2%、評価「◎」、成形保持性(常温×24h)が91.5%、評価「◎」、成形保持性(常温×1週間)が87.2%、評価「〇」、25%CLDが1.082MPa、圧縮残留歪が3.8%、評価「◎」であり、総合評価は「◎」である。実施例7は、全ての評価が「◎」であり、初期成形性、成形保持性及び圧縮残留歪の何れも良好であるため、熱圧縮成形が可能で、歪特性が良好である。
【0051】
このように、本発明のポリウレタン発泡体は、熱圧縮成形可能で、歪特性が良いものである。また、本発明のポリウレタン発泡体の成形体は、熱圧縮成形により賦形された表面の凹凸を維持することができる歪特性が良好なものである。
【符号の説明】
【0052】
10 ポリウレタン発泡体の成形体
101、103 凹部
102、104、106 凸部
107 凹凸の無い一般部