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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】耐黄変性ポリエステル及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/199 20060101AFI20241023BHJP
   C08G 63/85 20060101ALI20241023BHJP
   C08G 63/87 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C08G63/199
C08G63/85
C08G63/87
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021110835
(22)【出願日】2021-07-02
(65)【公開番号】P2022119158
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2024-04-03
(31)【優先権主張番号】110104076
(32)【優先日】2021-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595009383
【氏名又は名称】長春人造樹脂廠股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHANG CHUN PLASTICS CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】7F., No.301, Songkiang Rd., Zhongshan Dist Taipei City,Taiwan 104
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホン、チンジュイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、ピンチー
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051686(WO,A1)
【文献】特開2009-235298(JP,A)
【文献】特開平06-100680(JP,A)
【文献】国際公開第2007/072893(WO,A1)
【文献】特開2012-229369(JP,A)
【文献】特開平08-301958(JP,A)
【文献】特開2004-189962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 63/00-91
C08L 67/00-08
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオールに由来する1以上の反復単位及び多塩基酸に由来する1以上の反復単位を含み、リン及び金属元素を含むポリエステルであって、
ポリオールに由来する1以上の反復単位がトリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位を含み、
金属元素に対するリンの重量比が0.50~4.86の範囲であり、
リンが、リン(III)を含み
金属元素が、Tiであり、
リンの量が、ポリエステルの全重量に基づいて5ppm~200ppmであるポリエステル。
【請求項2】
トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量が、ポリオールに由来する1以上の反復単位の全モル数に基づいて10モル%以上である、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項3】
リンが、更にリン(V)を含む、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項4】
属元素の量が、ポリエステルの全重量に基づいて5ppm~500ppmである、請求項1に記載のポリエステル。
【請求項5】
ポリオールに由来する1以上の反復単位が更に、
〔式中、Rは、C~C17直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基である。〕で示される1以上の反復単位を含む、請求項1~4のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項6】
多塩基酸に由来する1以上の反復単位が
〔式中、Rは、C~C16ヒドロカルビル基である。〕で示される反復単位から選択される、請求項1~4のいずれかに記載のポリエステル。
【請求項7】
リン及び金属元素の存在下、ポリオール成分を多塩基酸成分とポリマー化することを含む、請求項1~6のいずれかに記載のポリエステルの製造方法であって、
ポリオール成分がトリシクロデカンジメタノールを含み、0.15mgKOH/g未満のカルボニル価を有する、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
本出願は、2021年2月3日に出願された台湾特許出願110104076号の優先権を主張する。その特許出願の主題は、参照としてその全体が本明細書中に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本出願は、高い光透過率と耐黄変性を有するポリエステル、特にトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)ポリエステルと、ポリエステルの製造方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
ポリエステルは、食品と接触する道具(food contact)、包装材料、食品容器等の分野で広く用いられている。ポリエステルの調製でトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)を用いることで、調製されたポリエステルの機械的強度及び耐熱性を改良することができることが知られている。しかし、そのポリエステル材料は依然として低い耐黄変性を有する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の技術的課題の観点で、本願発明は、高い機械的強度、高い耐熱性、高い透過率、及び優れた耐黄変性を有するポリエステル、並びにそのポリエステルの製造方法を提供する。本願発明のポリエステルは、食品と接触する道具、包装材料、食品容器、鋳造物、商業製品、家庭用品、電気製品、装置の筐体、照明器具、屋外標識、パーソナルケア適用、スポーツ用品、玩具等の分野で使用することができるが、本願発明のポリエステルの適用は、これらに限定されない。
【0005】
従って、本願発明の課題は、ポリオールに由来する1以上の反復単位及び多塩基酸に由来する1以上の反復単位を含み、リン及び金属元素を含むポリエステルであって、ポリオールに由来する1以上の反復単位がトリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位を含み、金属元素に対するリンの重量比が0.05~5.00の範囲であり、金属元素が、Ti、Sn、Sb、Ge、Mn、Zn、Ca、Co、Pb、Al、Zr及びこれらの組み合わせからなる群から選択されるポリエステルを提供することである。
【0006】
本願発明のいくつかの実施態様において、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量が、ポリオールに由来する1以上の反復単位の全モル数に基づいて10モル%以上である。
【0007】
本願発明のいくつかの実施態様において、リンが、リン(III)、リン(V)又はこれらの組み合わせである。
【0008】
本願発明のいくつかの実施態様において、金属元素が、Ti、Sn、Ge、Sb及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0009】
本願発明のいくつかの実施態様において、リンの量が、ポリエステルの全重量に基づいて3ppm~200ppmであり、金属元素の量が、ポリエステルの全重量に基づいて5ppm~500ppmである。
【0010】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位が更に、
〔式中、Rは、C~C17直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基である。〕で示される1以上の反復単位を含む。
【0011】
本願発明のいくつかの実施態様において、多塩基酸に由来する1以上の反復単位が
〔式中、Rは、C~C16ヒドロカルビル基である。〕で示される反復単位から選択される。
【0012】
本願発明の他の課題は、リン及び金属元素の存在下、ポリオール成分を多塩基酸成分とポリマー化することを含む、前記のポリエステルの製造方法であって、ポリオール成分がトリシクロデカンジメタノールを含み、0.15mgKOH/g未満のカルボニル価を有する、製造方法を提供することである。
【0013】
本願発明の上記の課題、技術的特徴及び利点をより明らかにするために、以下にいくつかの実施態様を参照して本願発明を詳細に説明する。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本願発明のいくつかの実施態様を、詳細に説明する。しかし、本願発明は、様々な実施態様で具現化されてよく、保護を求める発明の範囲は、本明細書に記載された実施態様に限定されるべきではない。
【0015】
追加的に説明されていなければ、本明細書及び請求項に記載された表現「1つの(a)」、「その(the)」等は単数及び複数の形態の両方を含むべきである。
【0016】
追加的に説明されていなければ、溶液、混合物又は組成物中の成分を本明細書中に記載する場合、各々の成分の量は、乾燥重量に基づいて、すなわち溶媒の重量を考えずないで計算される。
【0017】
本明細書では、トリシクロデカンジメタノール(TCDDM)ポリエステルを、TCDDMに由来する反復単位を含むポリエステルと言う。ポリエステルは、他のポリオール(例えば、ジオール)に由来する1以上の反復単位を更に含んでもよく、又は含まなくてもよい。本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステルは、TCDDMに由来する反復単位、及び他のポリオール(例えば、ジオール)に由来する1以上の反復単位を含む。
【0018】
本願発明の効果は、特に、ポリエステルが高い耐熱性と高い透過度及び優れた耐黄変性を有する点にある。本願発明のポリエステル及びその製造方法を以下に詳細に説明する。
【0019】
1.ポリエステル
本願発明のポリエステルは、リン及び金属元素を含む。ポリエステルの主鎖は、ポリオールに由来する1以上の反復単位及び多塩基酸に由来する1以上の反復単位を含み、又は実質的にポリオールに由来する1以上の反復単位及び多塩基酸に由来する1以上の反復単位からなる。本願発明のポリエステルの成分の詳細な説明を以下に記す。
【0020】
1.1.ポリオールに由来する反復単位
本願発明のポリエステルはポリオールに由来する1以上の反復単位を含み、そのポリオールに由来する1以上の反復単位はトリシクロデカンジメタノール(TCDDM)に由来する反復単位を含む。本願発明のいくつかの実施態様において、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位は、
等の
の構造、又はその2以上の構造を有するが、本願発明はこれらに限定されない。理論に拘泥することなく、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位がポリエステルの機械的強度及び耐熱性を改良する効果を与えることができると信じられる。
【0021】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位の全モル数に基づいて、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量は、好ましくは10モル%以上、特に15モル%~90モル%、及びより特に20モル%~80モル%である。例えば、ポリオールに由来する1以上の反復単位の全モル数に基づいて、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量は、21モル%、22モル%、23モル%、24モル%、25モル%、26モル%、27モル%、28モル%、29モル%、30モル%、31モル%、32モル%、33モル%、34モル%、35モル%、36モル%、37モル%、38モル%、39モル%、40モル%、41モル%、42モル%、43モル%、44モル%、45モル%、46モル%、47モル%、48モル%、49モル%、50モル%、51モル%、52モル%、53モル%、54モル%、55モル%、56モル%、57モル%、58モル%、59モル%、60モル%、61モル%、62モル%、63モル%、64モル%、65モル%、66モル%、67モル%、68モル%、69モル%、70モル%、71モル%、72モル%、73モル%、74モル%、75モル%、76モル%、77モル%、78モル%若しくは79モル%、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する反復単位の全モル数に基づいて、トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量は、30モル%~80モル%、より特に40モル%~70モル%である。トリシクロデカンジメタノールに由来する反復単位の量が上記の範囲内である場合、それによって提供されるポリエステルは優れた機械的強度及び耐熱性を有することができる。
【0022】
任意に、本願発明のポリエステルは更に、TCDDM以外のポリオールに由来する1以上の反復単位を含むことができる。例えば、本願発明のポリエステルは更に、TCDDM以外のジオールに由来する1以上の反復単位を含むことができる。ジオールは、例えば、C~Cジオールであることができる。C~Cジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、オクチレングリコール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ペンタシクロ[6.5.1.13-6.02-7.09-13]ペンタデカンジメタノール、及びペンタシクロ[9.2.1.14-7.02-10.03-8]ペンタデカンジメタノールが含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステルは更に、C~C直鎖若しくは分岐鎖のジオール又は1,4-シクロヘキサンジメタノールに由来する1以上の反復単位を含む。C~C直鎖若しくは分岐鎖のジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、ヘキシレングリコール、ヘプチレングリコール、及びオクチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステルは更に、C~C直鎖ジオールに由来する1以上の反復単位を含む。C~C直鎖ジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、及びヘキシレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、本願発明のポリエステルは更に、C~C直鎖ジオールに由来する1以上の反復単位を含む。C~C直鎖ジオールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びブチレングリコールが含まれるが、これらに限定されない。添付された実施例において、本願発明のポリエステルは更に、エチレングリコールに由来する反復単位を含む。
【0023】
従って、本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位は更に、
〔式中、Rは、C~C17直鎖若しくは分岐鎖のヒドロカルビル基、又はC~C17環状若しくは架橋多環式ヒドロカルビル基である。〕で示される1以上の反復単位を含む。C~C17直鎖若しくは分岐鎖のヒドロカルビル基の例には、C~C17直鎖若しくは分岐鎖のアルケンが含まれる。C~C17環状若しくは架橋多環式ヒドロカルビル基の例には、C~C17環状若しくは架橋多環式アルキルが含まれる。C~C17直鎖若しくは分岐鎖のアルケンの例には、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、
〔式中、*は結合位置を示す。〕が含まれるが、それらに限定されない。C~C17環状若しくは架橋多環式アルキルの例には、シクロヘキサンジメチル:
、ペンタシクロ[6.5.1.13-6.02-7.09-13]ペンタデカンジメチル:
、及びペンタシクロ[9.2.1.14-7.02-10.03-8]ペンタデカンジメチル:
が含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位は更に、
〔式中、Rは、C~C直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン、又は環状アルキルであり、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、ヘプチレン、オクチレン、
〔式中、*は結合位置を示す。〕である。〕で示される1以上の反復単位を含む。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位は更に、
〔式中、Rは、C~C直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、ペンチレン、又はヘキシレンである。〕で示される1以上の反復単位を含む。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリオールに由来する1以上の反復単位は更に、
〔式中、Rは、C~C直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン、例えば、エチレン、プロピレン、又はブチレンである。〕で示される1以上の反復単位を含む。添付された実施例において、ポリオールに由来する反復単位は更に、
〔式中、Rは、エチレンである。〕で示される反復単位を含む。
【0024】
1.2.多塩基酸に由来する反復単位
本願発明のポリエステルは、多塩基酸に由来する1以上の反復単位を含む。多塩基酸に由来する1以上の反復単位の例には、多塩基酸に由来する反復単位が含まれる。多塩基酸の例には、C~C18ジカルボン酸、例えば、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びナフタレンジカルボン酸が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本願発明のいくつかの実施態様において、多塩基酸に由来する1以上の反復単位は、
〔式中、Rは、C~C16直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基、及びC~C16環状又は多環式ヒドロカルビル基を含む、C~C16ヒドロカルビル基である。〕で示される反復単位から選択される。C~C16直鎖又は分岐鎖のヒドロカルビル基の例には、C~C16直鎖又は分岐鎖のアルキレンが含まれる。C~C16環状又は多環式ヒドロカルビル基の例には、C~C16環状又は多環式アリールが含まれる。C~C16直鎖又は分岐鎖のアルキレンの例には、ブチレン及びオクチレンが含まれるが、これらに限定されない。C~C16環状又は多環式アリールの例には、フェニレン及びナフタレンが含まれるが、これらに限定されない。本願発明のいくつかの実施態様において、多塩基酸に由来する1以上の反復単位は更に、
〔式中、RはC~C20ヒドロカルビル基である。R、R及びRは、独立してC~Cヒドロカルビル基である。n、n、n、n、n及びnは、独立して0又は1である。及び、*は結合位置を示す。〕で示される1以上の反復単位を含む。
で示される反復単位の量は、ポリエステルの反復単位の総数に基づいて、0.7%以下である。
【0026】
1.3.リン
本願発明のポリエステルは、リンを必須成分として含む。以下に示す金属元素に対するリンの重量比は、0.05~5.00の間である。例えば、以下に示す金属元素に対するリンの重量比は、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50、0.55、0.60、0.65、0.70、0.75、0.80、0.85、0.90、0.95、1.00、1.05、1.10、1.15、1.20、1.25、1.30、1.35、1.40、1.45、1.50、1.55、1.60、1.65、1.70、1.75、1.80、1.85、1.90、1.95、2.00、2.05、2.10、2.15、2.20、2.25、2.30、2.35、2.40、2.45、2.50、2.55、2.60、2.65、2.70、2.75、2.80、2.85、2.90、2.95、3.00、3.05、3.10、3.15、3.20、3.25、3.30、3.35、3.40、3.45、3.50、3.55、3.60、3.65、3.70、3.75、3.80、3.85、3.90、3.95、4.00、4.05、4.10、4.15、4.20、4.25、4.30、4.35、4.40、4.45、4.50、4.55、4.60、4.65、4.70、4.75、4.80、4.85、4.90若しくは4.95、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。金属元素に対するリンの重量比が上記範囲の下限値より低ければ、調製されたポリエステルの耐黄変性は低い。金属元素に対するリンの重量比が上記範囲の上限値より高ければ、ポリマー化効率が低くなり、ポリエステルが許容される分子量を有することが無くなり、その結果、低い機械的強度になる。
【0027】
本願発明のポリエステル中のリンは、元素形態でも酸化形態でもあることができる。すなわち、リンの酸化数は0又はそれ以上であることができる。本願発明のいくつかの実施態様において、リンはリン(III)である。本願発明のいくつかの実施態様において、リンはリン(V)である。本願発明のいくつかの実施態様において、リンはリン(III)及びリン(V)の組み合わせである。驚くべきことに、リン(III)を含むポリエステルがより良好な透過率と耐黄変性を有することを見出した。従って、本願発明のポリエステル中のリンは、好ましくはリン(III)を含む。
【0028】
本願発明のポリエステル中のリンの原料は、特に限定されず、如何なるリン含有成分も含まれる。例えば、リン酸(HPO)、リン酸二水素ナトリウム(HNaPO)、及びリン酸トリメチル(TMPA)の少なくとも1つを、リン(V)の原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。トリス(ノニルフェニル)ホスファイト(例えば、番号AO 1178の製品,Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.,台湾)、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト(例えば、番号2112の製品,Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.,台湾)、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニルジホスホナイト(例えば、番号PEPQの製品,Clariant Corporation,スイス)、ジオクタデシルペンタエリスリトールビス(ホスファイト)(例えば、番号PEP-8Tの製品,Chang Chun Petrochemical Co.,Ltd.,台湾)、及びビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(例えば、番号PEP-36の製品,株式会社ADEKA,日本)の少なくとも1つを、リン(III)の原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。しかし、本願発明はこれらに限定されない。
【0029】
本願発明のポリエステル中のリンの量は必要に応じて調節することができる。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のリンの量は、好ましくは3ppm~200ppm、より特に5ppm~150ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のリンの量は、10ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppm若しくは145ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。添付された実施例において、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のリンの量は、15ppm~75ppmである。
【0030】
1.4.金属元素
本願発明のポリエステルは、金属元素を必須成分として含む。金属元素は、Ti、Sn、Sb、Ge、Mn、Zn、Ca、Co、Pb、Al、Zr及びこれらの組み合わせからなる群から選択され、好ましくはTi、Sn、Ge、Sb及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。加えて、ポリエステル中の金属元素とリンの比は、上記の通りである。
【0031】
本願発明のポリエステル中の金属元素は、元素形態でも酸化形態でもあることができる。すなわち、金属元素の酸化数は0又はそれ以上であることができる。
【0032】
金属元素の原料は、特に限定されず、例えば金属元素の酸化物又は塩等の金属元素を含む様々な成分であることができる。例えば、チタンブトキシド(例えば、番号TBTの製品,Dorf&Ketal)、又はチタンイソプロポキシド(例えば、番号AQ-5000の製品,Borica)を、チタンの原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。ブチル錫トリス(2-エチルヘキサノエート)を、錫の原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。酸化アンチモン(Sb)又はアンチモンアセテート(Sb(OAc))を、アンチモンの原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。酸化ゲルマニウム(GeO)を、ゲルマニウムの原料としてポリエステルの製造のための原料に加えることができる。しかし、本願発明はこれらに限定されない。
【0033】
本願発明のポリエステル中の金属元素の量は必要に応じて調節することができる。本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中の金属元素の量は、5ppm~500ppm、より特に8ppm~200ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中の金属元素の量は、9ppm、10ppm、11ppm、12ppm、13ppm、14ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm、45ppm、50ppm、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppm、145ppm、150ppm、155ppm、160ppm、165ppm、170ppm、175ppm、180ppm、185ppm、190pp若しくは195ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。添付された実施例において、ポリエステルの全重量に基づいて、金属元素の量は、8ppm~200ppmである。
【0034】
本願発明のいくつかの実施態様において、金属元素はSnである。ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のSnの量は、30ppm~300ppm、より特に50ppm~200ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のSnの量は、55ppm、60ppm、65ppm、70ppm、75ppm、80ppm、85ppm、90ppm、95ppm、100ppm、105ppm、110ppm、115ppm、120ppm、125ppm、130ppm、135ppm、140ppm、145ppm、150ppm、155ppm、160ppm、165ppm、170ppm、175ppm、180ppm、185ppm、190ppm若しくは195ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。添付された実施例において、金属元素Snの量は、60ppmである。
【0035】
本願発明のいくつかの実施態様において、金属元素はGeである。ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のGeの量は、100ppm~400ppm、より特に150ppm~300ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のGeの量は、155ppm、160ppm、165ppm、170ppm、175ppm、180ppm、185ppm、190ppm、195ppm、200ppm、205ppm、210ppm、215ppm、220ppm、225ppm、230ppm、235ppm、240ppm、245ppm、250ppm、255ppm、260ppm、265ppm、270ppm、275ppm、280ppm、285ppm、290ppm若しくは295ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。
【0036】
本願発明のいくつかの実施態様において、金属元素はTiである。ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のTiの量は、5ppm~100ppm、より特に10ppm~50ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のTiの量は、11ppm、12ppm、13ppm、14ppm、15ppm、20ppm、25ppm、30ppm、35ppm、40ppm若しくは45ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。添付された実施例において、金属元素Tiの量は、10ppm~15ppmである。
【0037】
本願発明のいくつかの実施態様において、金属元素はSbである。ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のSbの量は、100ppm~400ppm、より特に150ppm~300ppmである。例えば、ポリエステルの全重量に基づいて、ポリエステル中のSbの量は、155ppm、160ppm、165ppm、170ppm、175ppm、180ppm、185ppm、190ppm、195ppm、200ppm、205ppm、210ppm、215ppm、220ppm、225ppm、230ppm、235ppm、240ppm、245ppm、250ppm、255ppm、260ppm、265ppm、270ppm、275ppm、280ppm、285ppm、290ppm若しくは295ppm、又はこれら記載された2つの値の間の範囲内に入ることができる。添付された実施例において、金属元素Sbの量は、200ppmである。
【0038】
2.ポリエステルの製造方法
本出願願はまた、前記のリン及び金属元素の存在下、ポリオール成分を多塩基酸成分とポリマー化することでポリエステルを製造することができる、ポリエステルの製造方法であって、ポリオール成分がトリシクロデカンジメタノール、及び任意のトリシクロデカンジメタノール以外の1以上のポリオールを含み、多塩基酸成分が1以上の多塩基酸を含み、ポリオール成分が0.15mgKOH/g未満のカルボニル価を有する、製造方法を提供する。
【0039】
本願発明のいくつかの実施態様において、ポリエステルは、リン及び金属元素の存在下、トリシクロデカンジメタノールを含むポリオール及び多塩基酸成分を、エステル化及び縮合ポリマー化反応に供することで製造される。特に、本願発明のポリエステルの製造方法は、以下の工程(a)~(c)を含むことができる。工程(a)トリシクロデカンジメタノール、多塩基酸成分、及び任意の他のポリオールを混合して、混合物を生成させる工程。工程(b)適切な圧力条件下、混合物を加熱して、エステル化反応をさせて、オリゴマーを生成させる工程。工程(c)真空ポンプを用いて未反応のモノマーを除去しつつ、オリゴマーを含む混合物を加熱して、オリゴマーの縮合反応をさせて、本願発明のポリエステルを得る工程。前記の金属元素を含む成分を、工程(a)、(b)又は(c)で加えることができ、リンを含む成分を、工程(a)、(b)又は(c)で加えることができる。
【0040】
前記の反応において、反応温度及び圧力の条件は、特に限定されず、当業者は、本明細書の開示及び従来技術に基づいて、適切な条件を選択することができる。例えば、本願発明のいくつかの実施態様において、工程(b)の反応温度は220℃~270℃であることができる。工程(b)の反応圧力は0気圧~6気圧、好ましくは0気圧~4気圧であることができる。工程(c)の反応温度は、250℃~300℃であることができる。工程(c)の反応圧力は3トル以下、好ましくは1トル以下であることができる。
【0041】
前記の反応において、トリシクロデカンジメタノール及び任意の他のポリオールを含むポリオール成分は、0.15mgKOH/g未満、好ましくは0.03mgKOH/g未満、より好ましくは0mgKOH/g(すなわち、装置で測定できないカルボニル価)のカルボニル価を有する。そのカルボニル価は、ポリマー化反応前に反応物質を精製工程に付すことで達成することができる。精製工程の例には、以下の方法が含まれる。
【0042】
方法I:循環パイプ及び循環ポンプを備えた固定層を準備し、固定層に遷移金属類水素化触媒、好ましくはVIIIB族水素化触媒、より好ましくはNi、Pd、Rh又はPtの遷移金属を含む触媒を充填し、その後、固定層に水素を導入し、精製されるポリオール成分を循環パイプに流して、系の背圧が好ましくは5バール~100バール、より好ましくは10バール~30バールであり、系の温度が好ましくは0℃~200℃、より好ましくは60℃~150℃である循環水素化を繰り返す方法。
【0043】
方法II:精製されるポリオール成分を丸底フラスコに加え、そこに、ポリオール成分の全重量に基づいて、1ppm~1000ppm、好ましくは10ppm~100ppmのp-トルエンスルホン酸(PTSA)を加え、温度を80℃に昇温し、30分間、連続して攪拌した後、真空ポンプで系の圧力を2トル~10トルに調節し、温度をポリオール成分の沸点に昇温し、ポリオール成分を系外に蒸留する方法。例えば、TCDDMを、172℃~180℃で2トルで系外に蒸留することができる。
【0044】
方法III:精製されるポリオール成分を高圧オートクレーブに加え、そこに触媒を加え、触媒は、遷移金属類触媒、好ましくはVIIIB族触媒、より好ましくはNi、Pd、Rh又はPtの遷移金属を含む触媒であり、触媒の量は、ポリオール成分の全重量に基づいて、10ppm~10000ppm、好ましくは100ppm~5000ppmであり、その後、20バール~100バールの圧力で2時間~10時間、例えば3時間、反応を行うことで、精製を完成する方法。
【実施例
【0045】
3.実施例
3.1.試験方法
本願発明を以下に示す実施態様で更に説明する。試験装置及び試験方法は以下の通りである。
【0046】
[カルボニル価試験]
電極とスターラーを備えた自動滴定装置を用いてカルボニル価試験を行い、サンプルの1g当たりのカルボニル基の量を計算する。試験方法は、以下の通りである。50gのサンプルをビーカーに加え、10mlの0.1N NHOH・HClをビーカーに加え、得られたサンプル溶液の成分がよく混合されるまでサンプル溶液をスターラーで攪拌し、続いて、サンプル溶液を0.05N KOH溶液で滴定し、最初の平衡点(pH<5)の滴定体積を記録し、その結果をブランクの滴定と比較し、以下の式に従って、カルボニル価を計算する。
カルボニル価(mgKOH/g)=((A-B)×N×56.11)/W
〔式中、Aは、サンプルの滴定で用いたKOH溶液の量(単位:ml)である。Bは、ブランクの滴定で用いたKOH溶液の量(単位:ml)である。Nは、KOH溶液の規定濃度(すなわち、規定度)である。Wは、サンプルの重量(単位:g)である。〕
【0047】
[粘度試験]
調製されたサンプルを、ASTM D4603に従った粘度試験に付す。粘度を、IV(インヘレント粘度)として記録する。IV値が低いほど、ポリエステルの分子量は低い。
【0048】
[リン及び金属元素の量の測定]
リン及び金属元素の量を、US EPA 3052マイクロ波分解に従って、プラズマ光学放射スペクトロメーター(ICP-OES)で測定する。1mg/kgの正確性に達するために、測定前にリン標準及び金属元素標準を用いて、検量線を作成する。試験方法は、以下の通りである。調製されたポリエステルを2mm×2mm切片に切断し、0.2gの切断されたポリエステルをサンプルとして量り、サンプルを分解容器に加え、3mlのHNO(濃度:70%)、9mlのHCl(濃度:31%)、及び3mlのHF(濃度:40%)をその中に加え、分解容器をマイクロ波分解装置に設置し、サンプルが完全に溶解するまで分解を行い、次に、分解容器が室温まで冷却された後、サンプルを純水で25mlに定量化し、リン及び金属元素の量をプラズマ光学放射スペクトロメーターで分析する。
【0049】
[耐黄変性試験]
ポリエステルのLab色空間におけるb値を、ASTM D6290に従って測定する。ポリエステルのYI(黄色度指数)値を、ASTM D6290に従って測定する。b値又はYI値が高いほど、ポリエステルの耐黄変性は低い。
【0050】
[透過率試験]
60mm×60mm×2mmのポリエステルサンプルを、射出成形装置(射出成形装置V90,Year-Chance Machinery Co.,Ltd.,台湾)で調製する。ポリエステルサンプルの全透過率を、日本電色NH5000ヘーズメーターで測定し、T.T%値として記録する。T.T%値が高いほど、透過率が良好である。
【0051】
3.2.実施例及び比較例で用いた原料のリスト
【表1】
【0052】
3.3.ポリエステルの調製及び特性
3.3.1.実施例1~5及び比較例1~9:ポリエステルの調製
[実施例1]
393gのTCDDM、279gのEG、830gのPTA、0.14gのHPO及び0.131gのTBTを、高圧オートクレーブに加え、150rpmの攪拌速度で均一に攪拌して、混合物を生成させた。得られた混合物中のポリオール成分は、0.03未満のカルボニル価を有する。その後、高圧オートクレーブの圧力を4気圧にした。温度を室温から220℃にゆっくりと昇温させて、エステル化反応を行った。エステル化反応で生成する水の量が、水の理論値の90%に達した後、高圧オートクレーブの温度を250℃に昇温させ、真空ポンプを30分間行った。その後、高圧オートクレーブの温度を280℃に維持し、縮合反応を行った。反応が終了した後、高圧オートクレーブの温度を下げて、ポリエステル生成物を回収した。
【0053】
[実施例2]
POを0.143gのHNaPOに変更し、TBTを0.376gのBuSn(OOC15に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0054】
[実施例3]
POの量を0.092gに変更し、TBTを0.604gのSb(OAc)に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0055】
[実施例4]
POを2.051gのAO 1178に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0056】
[実施例5]
POを0.377gのPEP-36に変更し、用いたポリオール成分が0.11のカルボニル価を有すること以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0057】
[比較例1]
TCDDMを用いず、EGの量を403gに変更し、HPOを0.295gのPEP-36に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0058】
[比較例2]
POを用いず、TBTの量を0.087gに変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0059】
[比較例3]
POを0.048gのHNaPOに変更した以外は、実施例3の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0060】
[比較例4]
POの量を5gに変更し、TBTを0.627gのBuSn(OOC15に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0061】
[比較例5]
POを1.256gのPEP-36に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0062】
[比較例6]
PEP-36を用いなかったこと以外は、実施例5の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0063】
[比較例7]
POを0.126gのPEP-36に変更し、TBTを0.302gのSb(OAc)に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0064】
[比較例8]
POを4.103gのAO 1178に変更し、TBTを0.091gのSb(OAc)に変更した以外は、実施例1の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0065】
[比較例9]
Sb(OAc)の量を1.207gに変更した以外は、実施例3の調製方法に従って、ポリエステルを調製した。
【0066】
3.3.2.実施例1~5及び比較例1~9:ポリエステルの特性
実施例1~5及び比較例1~9のポリエステルの、リンの量、金属元素の量、金属元素に対するリンの重量比(P/Mの比)、b値、YI値、T.T%値、及びIV値を含む特性を、前記の試験方法に従って、試験した。その結果を表2-1及び表2-2に記す。
【0067】
【表2-1】
【0068】
【表2-2】
【0069】
表2-1及び表2-2に示される通り、適切なポリマー化時間内で本願発明のポリエステルを製造することができ、本願発明のポリエステルは適切な分子量及び良好な耐黄変性と透過率を有する。特に、実施例1~5は、P/M比が本願発明の特定された範囲内である限り、異なるリン含有化合物(P)及び金属元素含有化合物(M)を用いて上記の優れた特性を有するポリエステルを提供することができることを示す。比較例1は、TCDDMを用いずに調製したポリエステルが低い耐黄変性を有することを示す。比較例2~4、6~7及び9は、本願発明の特定された範囲より低いP/M比を用いて調製したポリエステルが低い耐黄変性と透過率を有することを示す。比較例5及び8は、本願発明の特定された範囲より高いP/M比がポリエステルのポリマー化を阻害することを示す。その結果、ポリエステルは上手く合成できない(比較例8)か、又は得られたポリエステルが適切な分子量を有さず(比較例5,IV値が低すぎる)、従って、低い強度を有する。
【0070】
3.3.3.実施例6~12及び比較例10と11:ポリエステルの調製
実施例6~12及び比較例10と11のポリエステル生成物は、同じTCDDM、EG及びPTAの配合組成を用いつつ、しかし、リンと金属元素の比及び種類を表2-3及び表2-4に記載の通り、調節して、調製した。特に、各々の成分を高圧オートクレーブに加え、250rpmの攪拌速度で攪拌して、混合物を生成させた。混合物中のポリオール成分は、0.03未満のカルボニル価を有する。その後、高圧オートクレーブの圧力を2気圧にした。温度を室温から240℃にゆっくりと昇温させて、エステル化反応を行った。エステル化反応で生成する水の量が、水の理論値の90%に達した後、高圧オートクレーブの温度を260℃に昇温させ、真空ポンプを30分間行った。その後、高圧オートクレーブの温度を280℃に維持し、縮合反応を行った。反応が終了した後、高圧オートクレーブの温度を下げて、ポリエステル生成物を回収した。
【0071】
3.3.4.実施例6~12及び比較例10と11:ポリエステルの特性
実施例及び比較例のポリエステルの、金属元素に対するリンの重量比(P/Mの比)、b値、YI値、及びT.T%値を含む特性を、前記の試験方法に従って、試験した。その結果を表2-3及び表2-4に記す。
【0072】
【表2-3】
【0073】
【表2-4】
【0074】
表2-3及び表2-4に更に示される通り、P/M比が本願発明の特定された範囲内である場合、リン(III)を含むポリエステル(実施例6~10)は、リン(V)を含むポリエステル(実施例11と12)よりも優れた耐黄変性を有する。更に、P/M比が本願発明の特定された範囲内に無い場合、リン(V)を用いている(比較例10)か、リン(III)を用いている(比較例11)かに関わらず、ポリエステルは低い耐黄変性を有する。
【0075】
上記の実施例は、本願発明の原理及び効果を説明し、その発明的特徴を示すために用いられており、本願発明の範囲を限定するために用いられない。当業者は、記載された発明の開示及び提案に基づいて、様々な変更及び交換を行うことができる。従って、本願発明の保護範囲は、添付する特許請求の範囲で定義されたものである。