(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】データセット作成方法、学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及びデータセット作成装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B29C45/76
(21)【出願番号】P 2021122631
(22)【出願日】2021-07-27
【審査請求日】2024-01-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 明彦
(72)【発明者】
【氏名】赤木 誉志
(72)【発明者】
【氏名】平野 峻之
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-059045(JP,A)
【文献】国際公開第2021/065779(WO,A1)
【文献】特開2021-012475(JP,A)
【文献】特開2017-030152(JP,A)
【文献】特開2013-182564(JP,A)
【文献】特開2021-066084(JP,A)
【文献】特開2019-166702(JP,A)
【文献】特開平08-309814(JP,A)
【文献】特開昭63-209917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0230857(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料を計量し、可塑化して射出する加熱シリンダ及びスクリュを有する射出成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、
成形材料の計量値又は背圧を含む第1成形条件パラメータを成形品の品質を悪化させるように変更し、
成形品の品質を悪化させる第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
前記
射出成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更し、
第1成形条件パラメータ及び変更後の第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
変更前の第2成形条件パラメータと、該第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データと、変更後の第2成形条件パラメータ又は第2成形条件パラメータの変更量と、変更後の第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データ又は該物理量データに基づく評価値とを対応付けて記憶し、
第1及び第2成形条件パラメータの変更並びに物理量データの取得を繰り返すことによって機械学習用のデータセットを作成する
データセット作成方法。
【請求項2】
前記第2成形条件パラメータは、保圧切替位置、射出速度又は保圧圧力を含む
請求項1に記載のデータセット作成方法。
【請求項3】
前記物理量データは、成形品に生ずるバリ又はショートの面積又は体積を含む
請求項1
又は請求項2に記載のデータセット作成方法。
【請求項4】
記憶する物理量データは、成形品の部位を示す情報と、該部位に生ずるバリ又はショートの面積又は体積とを含む
請求項3に記載のデータセット作成方法。
【請求項5】
第2成形条件パラメータを変更する処理は、
成形品の品質を改善させる第2成形条件パラメータの変更処理と、成形品の品質を悪化させる第2成形条件パラメータの変更処理とを含む
請求項1から
請求項4のいずれか1項に記載のデータセット作成方法。
【請求項6】
第2成形条件パラメータを変更する処理は、
前記第2成形条件パラメータをランダムに変更する処理、所定の確率分布に従って変更する処理、又は前回以前に得られた物理量データに基づいて変更する処理を含む
請求項1から
請求項5のいずれか1項に記載のデータセット作成方法。
【請求項7】
複数の第1成形条件パラメータの変更可能な探索範囲を初期設定し、
第1成形条件パラメータを変更する処理は、
一の第1成形条件パラメータを変更した場合、少なくとも前記一の第1成形条件パラメータの値と、他の第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示すテーブルに基づいて、前記他の第1成形条件パラメータの初期設定された探索範囲を変更する
請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のデータセット作成方法。
【請求項8】
複数の第2成形条件パラメータの変更可能な探索範囲を初期設定し、
第2成形条件パラメータを変更する処理は、
一の第2成形条件パラメータを変更した場合、少なくとも前記一の第2成形条件パラメータの値と、他の第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示すテーブルに基づいて、前記他の第2成形条件パラメータの初期設定された探索範囲を変更する
請求項1から
請求項7のいずれか1項に記載のデータセット作成方法。
【請求項9】
複数の第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの変更可能な探索範囲を初期設定し、
第1成形条件パラメータを変更する処理は、
一の第1成形条件パラメータを変更した場合、少なくとも前記一の第1成形条件パラメータの値と、他の第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示すテーブルに基づいて、前記他の第1成形条件パラメータの初期設定された探索範囲を変更し、
第2成形条件パラメータを変更する処理は、
一の第1成形条件パラメータ及び一の第2成形条件パラメータを変更した場合、少なくとも前記一の第1成形条件パラメータ及び前記一の第2成形条件パラメータの値と、前記一の第1成形条件パラメータ及び前記一の第2成形条件パラメータ以外の第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示すテーブルに基づいて、前記他の第2成形条件パラメータの初期設定された探索範囲を変更する
請求項1から
請求項6のいずれか1項に記載のデータセット作成方法。
【請求項10】
射出成形機の成形条件パラメータを調整するための学習モデルの生成方法であって、
請求項1から
請求項9のいずれか1項に記載のデータセット作成方法に基づいて、データセットを作成し、
作成したデータセットに基づく機械学習により、少なくとも変更前の第2成形条件パラメータと、該第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データとが入力された場合、物理量データに基づく評価値が高くなる変更後の第2成形条件パラメータ又は第2成形条件パラメータの変更量を出力する学習モデルを生成する
学習モデル生成方法。
【請求項11】
成形材料を計量し、可塑化して射出する加熱シリンダ及びスクリュを有する射出成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、
成形材料の計量値又は背圧を含む第1成形条件パラメータを成形品の品質を悪化させるように変更し、
成形品の品質を悪化させる第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
前記
射出成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更し、
第1成形条件パラメータ及び変更後の第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
変更前の第2成形条件パラメータと、該第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データと、変更後の第2成形条件パラメータ又は第2成形条件パラメータの変更量と、変更後の第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データ又は該物理量データに基づく評価値とを対応付けて記憶する
処理をコンピュータに繰り返し実行させて機械学習用のデータセットを作成させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
成形材料を計量し、可塑化して射出する加熱シリンダ及びスクリュを有する射出成形機に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデルの機械学習用のデータセットを作成する処理を実行するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
射出成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、
成形材料の計量値又は背圧を含む第1成形条件パラメータを成形品の品質を悪化させるように変更し、
成形品の品質を悪化させる第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
前記
射出成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更し、
第1成形条件パラメータ及び変更後の第2成形条件パラメータが設定された前記
射出成形機によって製造される成形品の状態又は該
射出成形機の状態を示す物理量データを取得し、
変更前の第2成形条件パラメータと、該第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データと、変更後の第2成形条件パラメータ又は第2成形条件パラメータの変更量と、変更後の第2成形条件パラメータを設定したときに得られた物理量データ又は該物理量データに基づく評価値とを対応付けて記憶部に記憶する
処理を実行し、第1及び第2成形条件パラメータの変更並びに物理量データの取得を繰り返すことによって機械学習用のデータセットを作成する
データセット作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データセット作成方法、学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及びデータセット作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習により、射出成形機の成形条件パラメータを調整する射出成形機システムがある(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、成形機の成形条件パラメータを調整する学習モデルの機械学習用のデータセットの作成には多大な時間と労力を要するという問題があった。機械学習用のデータセットを作成するためには、作業者が成形機の状態を成形不良が生ずる状態に設定し、成形不良を解消する設定の調整を行い、データの紐づけ及び収集を行う必要がある。
【0005】
本開示の目的は、成形機に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデルの機械学習用のデータセットを自動で作成することができるデータセット作成方法、自動作成したデータセットを用いた学習モデル生成方法を提供することにある。
本開示の目的は、成形機に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデルの機械学習用のデータセットを自動で作成することができるコンピュータプログラム及びデータセット作成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本態様に係るデータセット作成方法は、以下の処理を繰り返すことによって機械学習用のデータセットを作成する。成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、第1成形条件パラメータを、成形品の品質を悪化させるように変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。変更前後の第2成形条件パラメータ及び物理量データを対応付けて記憶する。
【0007】
本態様に係る学習モデル生成方法は、上記データセット作成方法にて作成したデータセットを用いて学習モデルを機械学習させる。
【0008】
本態様に係るコンピュータプログラムは、以下の処理をコンピュータに繰り返し実行させることによって機械学習用のデータセットを作成する。成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、第1成形条件パラメータを、成形品の品質を悪化させるように変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。変更前後の第2成形条件パラメータ及び物理量データを対応付けて記憶する。
【0009】
本態様に係るデータセット作成装置は、以下の処理を繰り返すことによって機械学習用のデータセットを作成する。成形機に設定された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータのうち、第1成形条件パラメータを、成形品の品質を悪化させるように変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。成形機に設定されている第2成形条件パラメータを変更する。成形機によって製造される成形品の状態又は該成形機の状態を示す物理量データを取得する。変更前後の第2成形条件パラメータ及び物理量データを対応付けて記憶する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、成形機に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデルの機械学習用のデータセットを自動で作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態1に係る射出成形機の構成例を説明する模式図である。
【
図2】実施形態1に係るデータセット作成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】実施形態1に係るデータセットの一例を示す説明図である。
【
図5】実施形態1に係る学習モデル生成の処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】学習モデルの構成を概念的に示す説明図である。
【
図7】変形例に係るデータセットの一例を示す説明図である。
【
図8】実施形態2に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態2に係るデータセットの一例を示す説明図である。
【
図10】実施形態3に係るデータセット作成装置の構成例を示すブロック図である。
【
図11】実施形態4に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るデータセット作成方法、学習モデル生成方法、コンピュータプログラム及びデータセット作成装置の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0013】
<射出成形機の全体構成>
図1は実施形態1に係る射出成形機2の構成例を説明する模式図である。本実施形態1に係る射出成形機(成形機)2は、射出装置21と、当該射出装置21の前方に配置される型締装置22と、本実施形態1に係るデータセット作成装置1を有する制御装置23と、測定部3とを備える。
【0014】
射出装置21は、先端部にノズルを有する加熱シリンダ21aと、当該加熱シリンダ内で回転方向と軸方向とに駆動可能に設けられているスクリュ21bとを備える。射出装置21は、当該スクリュ21bを回転方向に駆動する回転モータと、スクリュ21bを軸方向に駆動するモータ等とを備える。射出装置21には、加熱シリンダ21aに樹脂成形材料を供給するためのホッパ21cと、加熱シリンダ21aに供給された樹脂成形材料を加熱して可塑化するための加熱ヒータ21dとが設けられている。
【0015】
型締装置22は、金型が着脱自在に取り付けられる型装置22aを備える。型締装置22は、金型を開閉させ、射出装置21から射出された溶融成形材料が金型に充填される際、金型が開かないように金型を締め付けるトグル機構22bを備える。
型締装置22は、トグル機構22bを駆動する型締駆動モータ22iを備える。
【0016】
型装置22aは、固定金型22fが着脱自在に取り付けられる固定盤22dと、同様に可動金型22gが着脱自在に取り付けられる可動盤22eとを備える。トグル機構22bは、可動盤22eと型締ハウジング22hとの間に設けられている。トグル機構22bは、型締駆動モータ22iの駆動力により、可動盤22eを前後方向(
図1中横方向)へ移動させることによって固定金型22f及び可動金型22gを開閉させる。トグル機構22bは、射出装置21から射出された溶融樹脂が金型に充填される際、固定金型22f及び可動金型22gが開かないように金型を締め付けることができる。また、型締装置22は、成形品を金型から取り出すためのエジェクタピンが設けられたエジェクタプレート22cを備える。
【0017】
制御装置23は、射出装置21及び型締装置22の動作を制御する装置又は回路である。本実施形態1に係る制御装置23は、データセット作成装置1を備える。データセット作成装置1は、射出成形機2に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデル5(
図6参照)の機械学習用のデータセットを自動で作成する装置である。
【0018】
射出成形機2には、成形条件を定める成形条件パラメータが設定され、当該成形条件パラメータに従って動作する。成形条件パラメータは、例えば、金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ加熱温度、ホッパ温度、型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク等を含む。また成形条件パラメータは、例えば、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力、保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置を含む。更に、成形条件パラメータは、例えば、クッション位置、計量背圧、計量トルク、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等を含む。最適な成形条件パラメータは射出成形機2の環境、成形品によって異なる。
【0019】
測定部3は、射出成形機2による成形が実行された際、実成形に係る物理量を測定する装置である。測定部3は、測定処理によって得られた物理量データをデータセット作成装置1へ出力する。
【0020】
測定部3によって測定して得られる物理量データには、成形品が正常であるか否か、成形品の不良タイプ、不良の程度に関連するデータが含まれる。成形品に係る物理量データは、例えば成形品を撮像して得たカメラ画像、レーザ変位センサにて得た成形品の変形量である。変形量は具体的には、成形品のバリ又はヒケの面積又は体積である。また、成形品に係る物理量データは、光学的計測器にて得られた成形品の色度、輝度等の光学的計測値、重量計にて計測された成形品の重量、強度計測器にて測定された成形品の強度等のデータであってもよい。
【0021】
<データセット作成装置>
図2は実施形態1に係るデータセット作成装置1の構成例を示すブロック図である。データセット作成装置1は、コンピュータであり、ハードウェア構成としてプロセッサ11、記憶部12及び操作部13等を備える。
【0022】
なお、データセット作成装置1は、ネットワークに接続されたサーバ装置であっても良い。また、データセット作成装置1は、複数台のコンピュータで構成し分散処理する構成でもよいし、1台のサーバ内に設けられた複数の仮想マシンによって実現されていてもよいし、クラウドサーバを用いて実現されていてもよい。
【0023】
プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)、マルチコアCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、NPU(Neural Processing Unit)等の演算回路、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等の内部記憶装置、I/O端子等を有する。
【0024】
プロセッサ11は、後述の記憶部12が記憶するコンピュータプログラム(プログラム製品)12aを実行することにより、取得部14、制御部15として機能する。また、プロセッサ11は、後述の記憶部12が記憶するコンピュータプログラム12aを実行することにより、第1成形条件パラメータ変更部16、第2成形条件パラメータ変更部17及びデータセット記憶処理部18として機能する。なお、データセット作成装置1の各機能部は、ソフトウェア的に実現しても良いし、一部又は全部をハードウェア的に実現しても良い。
【0025】
記憶部12は、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable
ROM)、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリである。記憶部12は、成形条件パラメータの調整を行う学習モデル5の機械学習用のデータセット作成処理をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム12aを記憶している。
【0026】
本実施形態1に係るコンピュータプログラム12aは、記録媒体4にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様でも良い。記憶部12は、読出装置によって記録媒体4から読み出されたコンピュータプログラム12aを記憶する。記録媒体4はフラッシュメモリ等の半導体メモリである。また、記録媒体4はCD(Compact Disc)-ROM、DVD(Digital Versatile Disc)-ROM、BD(Blu-ray(登録商標)Disc)等の光ディスクでも良い。更に、記録媒体4は、フレキシブルディスク、ハードディスク等の磁気ディスク、磁気光ディスク等であっても良い。更にまた、通信網に接続されている外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム12aをダウンロードし、記憶部12に記憶させても良い。
【0027】
操作部13は、タッチパネル、ソフトキー、ハードキー、キーボード、マウス等の入力装置である。
【0028】
取得部14は、成形工程サイクルにおいて射出成形機2による成形が実行されたときに測定部3にて測定され、出力された物理量データを取得する。取得部14は、取得した物理量データを制御部15へ出力する。
【0029】
制御部15は、設定又は変更された成形条件パラメータに基づく制御信号を射出装置21及び型締装置22へ出力し、射出成形機2の動作を制御する。
【0030】
第1成形条件パラメータ変更部16は、成形品の不良を発生させるように成形条件パラメータを変更する機能部である。成形品の不良を発生させる成形条件パラメータを、第1成形条件パラメータと呼ぶ。第1成形条件パラメータは、例えば成形材料の計量値、射出装置21の背圧を設定するパラメータである。
【0031】
第2成形条件パラメータ変更部17は、成形品の不良が生じている場合において、成形不良を改善させる条件を探索するために、成形条件パラメータを変更する機能部である。成形不良を改善させるために探索的に変更される成形条件パラメータを、第2成形条件パラメータと呼ぶ。第2成形条件パラメータは、例えば保圧切替位置、射出速度又は保圧圧力を含む。第2成形条件パラメータ変更部17による第2成形条件パラメータの変更は探索的に個々綯われる。このため、第2成形条件パラメータ変更部17による第2成形条件パラメータの変更処理には、成形品の品質を改善させる変更処理と、成形品の品質を悪化させる変更処理とが含まれる。
【0032】
データセット記憶処理部18は、成形工程サイクルにおいて、第1及び第2成形条件パラメータを変更し、成形品に係る物理量を測定することによって得られた各種データを対応付けて得られるデータセットを記憶部12に記憶する機能部である。具体的には、データセット記憶処理部18は、変更前後の第2成形条件パラメータと、当該第2成形条件パラメータ変更前後で得られた成形品の物理量データとを対応付けて記憶する。
【0033】
成形工程サイクルの概要は以下の通りであり、データセット作成装置1は、繰り返される成形工程サイクルにおいて、成形条件パラメータを変更することにより機械学習用のデータセットを作成する。射出成形に際しては、周知のエジェクト後退工程、型閉工程、型締工程、射出工程、保圧工程、計量工程、型開工程、エジェクト前進工程が順次に行われる。
【0034】
<処理手順(データセット作成方法)>
図3は、実施形態1に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ11又は第1成形条件パラメータ変更部16は、射出成形機2に設定されている成形条件パラメータのうち、成形品の品質を悪化させるように第1成形条件パラメータを変更する(ステップS111)。第1成形条件パラメータは、例えば成形材料の計量値、射出装置21の背圧を設定するパラメータである。第1成形条件パラメータを、正常な初期値から変更すれば、成形品の不良を発生させることができる。つまり、ステップS111では、人為的に射出成形機2の状態を不具合のある状態にする。
【0035】
プロセッサ11又は制御部15は、変更された第1成形条件パラメータと、第2成形条件パラメータ及びその他の成形条件パラメータとに基づく制御信号を射出装置21及び型締装置22へ出力し、射出成形機2の動作を制御する(ステップS112)。射出成形機2の射出装置21及び型締装置22はプロセッサ11から出力された制御信号に従って射出成形処理を行う。
【0036】
そして、測定部3は、射出成形機2が成形を実行したときに、成形品に係る物理量を測定し、プロセッサ11又は取得部14は、測定部3にて測定して得た物理量データを取得する(ステップS113)。物理量データは、例えば、成形品のバリ又はヒケの面積又は体積を示すデータである。
【0037】
次いで、プロセッサ11又は第2成形条件パラメータ変更部17は、射出成形機2に設定されている成形条件パラメータのうち、第2成形条件パラメータを変更する(ステップS114)。第2成形条件パラメータの変更は、成形品の状態を改善させるために、探索的に行われる。
【0038】
第2成形条件パラメータの変更方法は特に限定されるものでは無い。例えば、プロセッサ11は、第2成形条件パラメータをランダムに変更すればよい。また、プロセッサ11は、所定の確率分布に従って第2成形条件パラメータを変更すればよい。更に、前回以前の成形工程サイクルで得られた物理量データ及び第2成形条件パラメータを用いたベイズ最適化により、第2成形条件パラメータを変更すればよい。
【0039】
プロセッサ11又は制御部15は、変更された第1及び第2成形条件パラメータ並びにその他の成形条件パラメータに基づく制御信号を射出装置21及び型締装置22へ出力し、射出成形機2の動作を制御する(ステップS115)。そして、測定部3は、射出成形機2が成形を実行したときに、成形品に係る物理量を測定し、プロセッサ11又は取得部14は、ステップS113同様、測定部3にて測定して得た物理量データを取得する(ステップS116)。
【0040】
プロセッサ11又はデータセット記憶処理部18は、ステップS112~ステップS116の処理で得られたデータに基づいて、学習用データを作成して記憶部12に記憶する(ステップS117)。
【0041】
図4は、実施形態1に係るデータセットの一例を示す説明図である。複数の学習データによって機械学習用のデータセットが構成される。データセットを構成する学習用データは、第2成形条件パラメータの変更前の成形条件パラメータと、第2成形条件パラメータの変更前と変更後に得られた物理量データと、第2成形条件パラメータの変更値とを対応付けたデータである。変更値は、変更後の第2成形条件パラメータであってもよいし、変更前の第2成形条件パラメータに対する変更後の第2成形条件パラメータの変更量であってもよい。データセットに含める変更前の成形条件パラメータは、少なくとも第2成形条件パラメータを含む。
【0042】
次いで、プロセッサ11は、ステップS116で取得した物理量データに基づいて、成形品の状態が改善したか否かを判定する(ステップS118)。例えば、プロセッサ11は、物理量データに基づいて、バリ又はヒケの面積又は体積を算出し、バリ又はヒケの面積又は体積が所定値未満になったか否かを判定する。成形品の状態が改善していないと判定した場合(ステップS118:NO)、プロセッサ11は処理をステップS113へ戻す。
【0043】
成形品の状態が改善したと判定した場合(ステップS118:YES)、プロセッサ11は、データセットの作成を終了するか否かを判定する(ステップS119)。終了条件は、特に限定されるものでは無いが、所定量のデータセットが作成された場合、第1成形条件パラメータの変更回数が閾値以上になった場合、第1成形条件パラメータの変更範囲が所定範囲に達した場合等を終了条件とすればよい。終了条件を満たすと判定した場合(ステップS119:YES)、プロセッサ11は処理を終える。終了条件を満たしていないと判定した場合(ステップS119:NO)、プロセッサ11は、処理をステップS111へ戻し、データセットの作成を継続する。
【0044】
以上の処理により、射出成形機2に設定された成形条件パラメータを調整するための学習モデル5の機械学習用のデータセットを自動で作成することができる。
【0045】
<処理手順(学習モデル生成方法)>
図5は、実施形態1に係る学習モデル生成の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ11は、
図3を用いて説明した方法を用いて機械学習用のデータセットを作成する(ステップS151)。次いで、プロセッサ11は、第2成形条件パラメータの変更後に得られた物理量データに基づいて、成形品の評価値を算出する(ステップS152)。評価値は、バリ又はヒケの面積又は体積が小さい程、評価値が大きくなるようような関数又はテーブルを用いて算出すればよい。バリ又はヒケの面積又は体積をそのまま評価値として用いてもよい。
【0046】
次いで、プロセッサ11は、学習前の学習モデル5をメモリ上に用意する(ステップS153)。
【0047】
図6は、学習モデル5の構成を概念的に示す説明図である。学習モデル5は、入力層51、複数の中間層52及び出力層53を有する。入力層51は、射出成形機2に設定される成形条件パラメータ及び成形品に係る物理量データが入力される複数のノードを有する。
複数の中間層52は、入力層51に入力された物理量データの特徴を抽出する複数のノードを有する。物理量データに画像が含まれる場合、中間層52は、複数の畳み込み層及びプーリング層を有する。
出力層53は、第2成形条件パラメータの複数の値に対応する複数のノードを有し、当該値が最適であることの確信度を出力する。また、出力層53は、第2成形条件パラメータの複数の変更量に対応する複数のノードを有し、当該値が最適であることの確信度を出力するように構成してもよい。第2成形パラメータは1種類でもよいし、複数種類であってもよい。
【0048】
学習モデル5は、例えば、成形条件パラメータと、成形品の状態を測定して得た物理量データとが入力された場合、成形品の状態を向上させる第2成形条件パラメータ、又は第2成形条件パラメータの変更量を出力するモデルである。学習モデル5は、物理量データが画像データである場合、ResNet、DenseNet等のCNN(Convolution Neural Network)を有するモデルであってもよい。学習モデル5は、観測データが時系列的データである場合、時系列情報である観測データを認識する再帰型ニューラルネットワーク(RNN: Recurrent Neural Network)、LSTM、Vision Transformer等を有するモデルであってもよい。また、学習モデル5は、上記したCNN、RNN等以外のニューラルネットワーク、Vision Transformer、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、XGBoost等の決定木、等の構成の学習モデル5を用いて構成してもよい。
【0049】
図5に戻り、プロセッサ11は、データセットに含まれる成形条件パラメータ及び物理量データ(第2成形条件パラメータ変更前の物理量データ)を学習モデル5の入力層51に入力する(ステップS154)。そして、プロセッサ11は、成形品に係る物理量データに基づく評価値が高くなる第2成形条件パラメータが出力されるように中間層52の重み係数を最適化する(ステップS155)。当該重み係数は、例えばノード間の重み(結合係数)などである。重み係数の最適化の方法は特に限定されないが、例えば最急降下法、誤差逆伝播法等を用いて各種係数の最適化を行う。同様に、プロセッサ11は、成形品に係る物理量データに基づく評価値が低くなる第2成形条件パラメータが出力されないように中間層52の重み係数を最適化する(ステップS156)。なお、説明の便宜上、ステップS155及びステップS156を別の処理ステップとして説明したが、各処理は実質的に同等の処理であり、プロセッサ11は各処理を同時的に実行する。
【0050】
このように、自動生成した機械学習用のデータセットを用いて、学習モデル5を機械学習させることができる。なお、プロセッサ11が学習モデル5の機械学習を行う例を説明したが、データセットの作成及び学習モデル5の機械学習処理は、他のコンピュータで実行するように構成してもよい。
【0051】
以上の通り、本実施形態1によれば、射出成形機2に設定された成形条件パラメータを調整するための学習モデル5の機械学習用のデータセットを自動で作成することができる。
【0052】
具体的には、データセット作成装置1は、第1成形条件パラメータとして、成形材料の計量値又は背圧を変更することによって、人為的に成形品の不良が発生し得る状態とし、機械学習用のデータセットを効率的に作成することができる。
【0053】
また、データセット作成装置1は、第2成形条件パラメータとして、保圧切替位置、射出速度又は保圧圧力を含む機械学習用のデータセットを作成することができる。つまり、成形品の状態を改善させるために、第2成形条件パラメータを調整する学習モデル5を機械学習させるためのデータセットを作成することができる。
【0054】
更に、データセット作成装置1は、成形品に生ずるバリ又はショートを改善させるために、第2成形条件パラメータを調整する学習モデル5を機械学習させるためのデータセットを作成することができる。
【0055】
更にまた、データセットに含まれる変更値には、成形品の品質を改善させる変更値及び品質を更に悪化させる変更値が含まれるため、第2成形条件パラメータを調整する学習モデル5をより効率良く機械学習させるためのデータセットを作成することができる。
【0056】
更にまた、第2成形条件パラメータを所定の確率分布に従って変更し、又はベイズ最適化により変更することによって、速やかに成形品の状態を改善させる第2成形条件パラメータの変更値に到達することができる。このため、成形品の状態を改善させるための機械学習に有用な第2成形条件パラメータの変更量をより多く含むデータセットを作成することができる。
【0057】
更にまた、本実施形態1に係る学習モデル生成方法によれば、自動作成したデータセットを用いて、成形条件パラメータを調整するための学習モデル5を生成することができる。
【0058】
(変形例1)
図7は、変形例1に係るデータセットの一例を示す説明図である。プロセッサ11は、ステップS113及びステップS116において、物理量データを取得する際、成形品の部位を示す情報と、該部位に生ずるバリ又はショートの面積又は体積と取得するとよい。例えば、プロセッサ11は、成形品の第1部位を示す情報と、当該第1部位におけるバリ又はショートの面積又は体積と、成形品の第2部位を示す情報と、当該第2部位におけるバリ又はショートの面積又は体積とを取得するとよい。もちろん成形品の3箇所以上の部位におけるバリ又はショートの面積又は体積を取得してもよい。
【0059】
変形例1によれば、成形品の複数の部位それぞれのバリ又はショートを改善するための第2成形条件パラメータの調整を行うための機械学習用のデータセットを作成することができる。
【0060】
(変形例2)
また、上記実施形態1では、成形品の状態を示す物理量データを測定部3にて取得してデータセットを作成する例を説明したが、射出成形機2の状態を示す物理量データを測定するように構成してもよい。また、測定部3は、成形品の状態を示す物理量データ及び射出成形機2の状態を示す物量データの双方を取得するように構成してもよい。
【0061】
変形例2に係る測定部3は射出成形機2による成形が実行された際、射出成形に関連する任意の物理量を測定する装置である。測定部3は、測定処理によって得られた物理量データをデータセット作成装置1へ出力する。物理量には、温度、位置、速度、加速度、電流、電圧、圧力、時間、画像データ、トルク、力、歪、消費電力等がある。
なお、測定部3は、射出成形機2と別体の構成であってもよいし、射出装置21等に組み込まれる構成であってもよい。
【0062】
測定部3によって測定される情報は、例えば成形品の状態を示す情報、射出成形機2の状態を示す情報等を含む。成形品の状態を示す情報は、上記実施形態1と同様である。
【0063】
射出成形機2の状態を示す情報は、温度計、圧力計、速度測定器、加速度測定器、位置センサ、タイマ、重量計等を用いて測定して得られる。射出成形機2の状態を示す情報は、例えば金型内樹脂温度、ノズル温度、シリンダ温度、ホッパ温度等の情報を含む。射出成形機2の状態を示す情報は、例えば型締力、射出速度、射出加速度、射出ピーク圧力、射出ストローク、シリンダ先端樹脂圧、逆防リング着座状態、保圧切替圧力等の情報を含む。射出成形機2の状態を示す情報は、例えば保圧切替速度、保圧切替位置、保圧完了位置、クッション位置、計量背圧、計量トルク、計量完了位置、スクリュ後退速度、サイクル時間、型閉時間、射出時間、保圧時間、計量時間、型開時間等の情報を含む。
【0064】
なお、間接的に射出成形機2の状態を示す情報として、射出成形機2の周辺機器の情報、温度計、湿度計、流量計等を用いて得た雰囲気温度、雰囲気湿度、対流に関する情報(レイノルズ数等)等の情報を含んでもよい。
【0065】
なお、上記の実施形態1及び変形例では、成形機の一例として樹脂成形を行う射出成形機2を説明したが、中空成形機、フィルム成形機、押出機、二軸スクリュ押出機、紡糸押出機、造粒機等に本発明を適用してもよい。また、成形材料も樹脂に限定されるものでは無く、マグネシウム射出成形機等に本発明を提供してもよい。
【0066】
(実施形態2)
実施形態2に係る射出成形機は、データセット作成処理及びデータセットの内容が実施形態1と異なる。射出成形機のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0067】
図8は、実施形態2に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ11は、実施形態1におけるステップS111~ステップS116と同様の処理を実行する(ステップS211~ステップS216)。
【0068】
次いで、プロセッサ11は、ステップS216で取得した物理量データに基づいて、成形品が正常であるか否か、不良タイプ(バリ、ヒケ等)、不良の程度を示す評価値を算出する(ステップS217)。
【0069】
プロセッサ11又はデータセット記憶処理部18は、ステップS212~ステップS217の処理で得られたデータに基づいて、学習用データを作成して記憶部12に記憶する(ステップS217)。
【0070】
図9は、実施形態2に係るデータセットの一例を示す説明図である。複数の学習データによって機械学習用のデータセットが構成される。データセットを構成する学習用データは、第2成形条件パラメータの変更前の成形条件パラメータと、第2成形条件パラメータの変更前に得られた物理量データと、第2成形条件パラメータの変更値と、第2成形条件パラメータ変更後の成形品の評価値とを対応付けたデータである。
【0071】
以下、プロセッサ11は、実施形態1におけるステップS118~ステップS119と同様の処理を実行し(ステップS219~ステップS220)、データセットの作成及び収集を行う。
【0072】
本実施形態2に係るデータセット作成装置1は、実施形態1同様、射出成形機2に設定された成形条件パラメータを調整する学習モデル5の機械学習用のデータセットを自動で作成することができる。特に実施形態2に係るデータセット作成装置1、成形品の評価値を含むデータセットを作成することができる。
【0073】
(実施形態3)
実施形態3に係る射出成形機は、複数の成形条件パラメータを変更する際の処理が
実施形態1と異なる。射出成形機のその他の構成は、実施形態1に係る射出成形機と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、実施形態3に係る技術は本実施形態2にも適用してもよい。
【0074】
データセット作成するために複数の第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータを変更する際、各パラメータの探索範囲、つまり各パラメータの上限値及び下限値を考慮する必要がある。各パラメータの探索範囲を考慮しないと、射出成形機2に重大な問題を生じさせるおそれがある。例えば、金型を壊してしまうおそれがある。また、ショートの程度がひどくなり成形品を金型から取り出せなくなるおそれがある。
【0075】
このため、第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの探索範囲の初期設定は、安全性を考慮して予めオペレータ(人)が設定することが望ましい。ただし、第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータそれぞれの設定値について、各パラメータ間の相互作用を考えずに、独立して探索範囲を決める場合、それぞれの探索範囲はより安全をみたものになる。このため、得られる成形品の程度のばらつきがあまり大きくならない。
【0076】
本実施形態3に係るデータセット作成装置1は、上記問題を解決するものでる。実施形態3に係るデータセット作成装置1は、複数の第1及び第2成形条件パラメータの相互作用を考慮して各パラメータの探索範囲を動的に決定する。この動的な探索範囲の決定により、データセット作成装置1は、射出成形機2に重大な問題が発生せず、かつ各パラメータを幅広く変更することができる。従って、得られる成形品の程度のばらつきをより大きくすることができる。よって、学習モデル5を効果的に学習させることができるデータセットを得ることができる。以下、実施形態3に係るデータセット装置の構成を説明する。
【0077】
図10は、実施形態3に係るデータセット作成装置1の構成例を示すブロック図である。実施形態3に係るデータセット作成装置1のハードウェア構成は実施形態1と同様である。実施形態3に係る記憶部12は、複数の第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの相関関係を考慮し、射出成形機2又は金型に悪影響が無い範囲で動的に探索範囲を決定するための情報を格納したテーブル12cを記憶している。
【0078】
例えば、テーブル12cは、少なくとも一の第1成形条件パラメータの値と、他の第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納している。テーブル12cは、複数の第1成形条件パラメータの値と、複数の第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納してもよい。
【0079】
同様に、テーブル12cは、少なくとも一の第2成形条件パラメータの値と、他の第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納している。テーブル12cは、複数の第2成形条件パラメータの値と、複数の第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納してもよい。
【0080】
また、テーブル12cは、一の第1成形条件パラメータの値と、第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納してもよい。テーブル12cは、複数の第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの値と、複数の第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値との対応関係を示す情報を格納してもよい。
【0081】
図11は、実施形態4に係るデータセット作成の処理手順を示すフローチャートである。プロセッサ11は、第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの探索範囲、つまり各パラメータの値を変更可能な範囲を初期設定する(ステップS311)。オペレータは、操作部13を操作することによって、第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの探索範囲を入力することができ、プロセッサ11は、操作部13にて探索範囲を受け付ける。
【0082】
次いで、プロセッサ11又は第1成形条件パラメータ変更部16は、射出成形機2に設定されている成形条件パラメータのうち、成形品の品質を悪化させるように第1成形条件パラメータを変更する(ステップS312)。
【0083】
プロセッサ11は、変更された第1成形条件パラメータの値をキーにしてテーブル12cを参照することにより、第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値を読み出し、第1成形条件パラメータを変更する(ステップS313)。例えば、ある第1成形条件パラメータを初期設定された探索範囲の下限値に変更した場合、他の第1成形条件パラメータの探索範囲の上限値がより大きな値に変更されることがある。この場合、次回のステップS312においては、第1成形条件パラメータは、初期設定された探索範囲を超えて変更されることになる。
【0084】
プロセッサ11又は制御部15は、変更された第1成形条件パラメータと、第2成形条件パラメータ及びその他の成形条件パラメータとに基づく制御信号を射出装置21及び型締装置22へ出力し、射出成形機2の動作を制御する(ステップS314)。
【0085】
そして、測定部3は、射出成形機2が成形を実行したときに、成形品に係る物理量を測定し、プロセッサ11又は取得部14は、測定部3にて測定して得た物理量データを取得する(ステップS315)。
【0086】
次いで、プロセッサ11又は第2成形条件パラメータ変更部17は、射出成形機2に設定されている成形条件パラメータのうち、第2成形条件パラメータを変更する(ステップS316)。
【0087】
プロセッサ11は、変更された第1成形条件パラメータ及び第2成形条件パラメータの値をキーにしてテーブル12cを参照することにより、第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値を読み出し、第2成形条件パラメータを変更する(ステップS317)。第1成形条件パラメータ同様、第2成形条件パラメータも、次回のステップS316においては、第2成形条件パラメータは、初期設定された探索範囲を超えて変更されることもある。
なお、プロセッサ11は、変更された第2成形条件パラメータの値をキーにしてテーブル12cを参照することにより、第2成形条件パラメータの探索範囲の上限値又は下限値を読み出し、第2成形条件パラメータを変更するように構成してもよい。
【0088】
プロセッサ11又は制御部15は、変更された第1及び第2成形条件パラメータ並びにその他の成形条件パラメータに基づく制御信号を射出装置21及び型締装置22へ出力し、射出成形機2の動作を制御する(ステップS318)。
【0089】
以下、実施形態1に係るステップS115~ステップS119と同様の処理を、ステップS318~ステップS322にて実行する。
【0090】
以上の処理により、第1及び第2成形条件パラメータの相関を考慮しつつ、各パラメータを幅広く変更し、学習モデル5の機械学習用のデータセットを自動で作成することができる。
【0091】
第1及び第2成形条件パラメータの相関を考慮せず、初期設定された探索範囲内で各パラメータを変更する場合に比べて、成形品の状態を大きくばらつかせることができ、より効果的な機械学習が可能なデータセットを作成することができる。
【0092】
一方、探索範囲を無視して際限無く第1及び第2成形条件パラメータを変更すると、金型又は射出成形機2が壊れるおそれがあるが、実施形態3においては、テーブル12cに記録された各パラメータの相関関係を用いてパラメータ変更を行う。従って、射出成形機2及び金型に悪影響を及ぼすこと無く、幅広く、場合によっては初期設定された探索範囲を超えてパラメータを変更し、データセットを作成することができる。
【符号の説明】
【0093】
1 データセット作成装置
2 射出成形機
3 測定部
4 記録媒体
11 プロセッサ
12 記憶部
12a コンピュータプログラム
12b データセット
12c テーブル
13 操作部
14 取得部
15 制御部
16 第1成形条件パラメータ変更部
17 第2成形条件パラメータ変更部
18 データセット記憶処理部
21 射出装置
21a 加熱シリンダ
21b スクリュ
21c ホッパ
21d 加熱ヒータ
22 型締装置