(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】高周波誘電加熱装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/54 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H05B6/54
(21)【出願番号】P 2021138650
(22)【出願日】2021-08-27
【審査請求日】2024-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】399048917
【氏名又は名称】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】藤本 貴行
(72)【発明者】
【氏名】市川 勝英
(72)【発明者】
【氏名】堀内 敬介
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/066080(WO,A1)
【文献】特開2021-034231(JP,A)
【文献】特開平08-185966(JP,A)
【文献】特開2020-145114(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0181455(US,A1)
【文献】特開2019-121592(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/46 - 6/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MHz帯域の高周波電力を出力する高周波電源と、被加熱物を誘電加熱するための電極を備える加熱部とを備え、
前記加熱部が備える前記電極は、直列接続された渦巻状の2組の電極が形成する2組の電極面が対向配置され、直列接続された一方電極の中心端が高周波電源の給電点とされ、他方電極の一端が開放端とされていることを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高周波誘電加熱装置であって、
前記加熱部が備える前記電極は、対向する基板内壁に前記2組の渦巻状の電極をそれぞれ配置し、基板外壁からグランド電極を介して前記高周波電源の他方端に接続していることを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の高周波誘電加熱装置であって、
対向配置された前記渦巻状の2組の電極の電極面間に、中心端及び終端が開放端とされた第3の渦巻状の電極を配置するとともに、
前記渦巻状の2組の電極の巻線方向は互いに相違する方向とされていることを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の高周波誘電加熱装置であって、
渦巻状の電極の間に前記被加熱物を収納することを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高周波誘電加熱装置であって、
2組の渦巻状の電極の総延長が高周波電力の波長の半波長とされることを特徴とする高周波誘電加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波誘電加熱装置に係り、特にMHz帯域の高周波電界を冷凍食品に印加し、誘電加熱により冷凍食品を解凍する高周波誘電加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品の加工工場等では、冷凍状態の食材を解凍して食品を加工する場合がある。食品加工工場等で使用する解凍機の一種として、対向する電極間に配置した冷凍食品に、MHz帯域の高周波電界を印加し、誘電加熱により冷凍食品を解凍する高周波解凍装置が知られている。
【0003】
高周波誘電加熱とは、被加熱物である誘電体に高周波電圧を印加し、被加熱物を構成する極性分子の振動等に起因する自己発熱(誘電損失)により、被加熱物を内部から加熱する技術である。電子レンジによるマイクロ波(GHz帯域)による誘電加熱では氷と水の発熱差が大きいため、食品表層部の融解した部分が著しく発熱することで加熱ムラが生じる。しかしながら、マイクロ波よりも低い周波数帯域を使用する高周波誘電加熱では、エネルギーの浸透深度がマイクロ波よりも深く、また、氷と水の発熱量の差も小さいため、加熱ムラが生じ難いという利点があることが一般に知られている。
【0004】
MHz帯域の高周波電界を用いた解凍技術に関して、例えば、特許文献1の要約書には、「高周波解凍装置は、加熱室1と、加熱室1内に平行に配置され、間に被解凍物3が挿入される上部電極2aおよび下部電極2bと、上部電極2aと下部電極2bとの間に高周波電圧を印加する高周波電源4および整合回路6と、印加された高周波電圧の反射電力を検知する電力検知回路5と、電力検知回路5の検知信号の解凍開始時からの変化に基づいて被解凍物の進捗状態を推定して解凍の完了を判定し、判定に基づいて高周波電源4を制御する制御装置7と、を備える。」との記載があり、また、同文献の段落0002には、「MHz以上の高周波を印加して、誘電加熱にて冷凍された食品等の被解凍物を解凍する高周波解凍装置が知られている(例えば、特許文献1、2)。高周波解凍装置は、加熱室内に上部電極と下部電極とを備え、高周波電源から両電極間に高周波電界を与え、被解凍物の誘電損失により解凍を行う。誘電加熱方式は、平行電界が冷凍食品の内部に均等に到達するため、電子レンジによるマイクロ波を用いた解凍に比べて、大型の被解凍物の解凍に適している。」との記載がある。すなわち、特許文献1の高周波解凍装置では、MHz帯域の高周波電界を使用することにより、マイクロ波(GHz帯域の高周波電界)を使用する電子レンジでの解凍に比べ、被解凍物の内部をほぼ均等に解凍することができる。
【0005】
また、特許文献2の要約書には、「高周波を発振する発振部3、増幅部6a~6b、給電部9a、9b、伝送線路7を備え、前記伝送線路7は、増幅部6a、6bからの給電位相により、放射部8a、8b、8cへの高周波伝送を選択制御する構成としてある。」との記載があり、続いて同文献の要約書には、「高周波を、伝送線路上で合成し、選択した放射部8a、8b、8cより放射して、さまざまな形状・種類・量の異なる被加熱物を所望の状態に短時間で加熱することができる。」との記載がある。
【0006】
また、同文献の実施の形態1における高周波処理装置の構成図である
図1では、放射部8a、8b、8cが被加熱物2の下側に配置される構成が示されている。また、同文献の段落0035には、「放射部をパッチアンテナで構成」との記載がある。
【0007】
すなわち、特許文献2の高周波処理装置では、例えばパッチアンテナで構成される放射部から、高周波電界を被加熱物の下側から放射し、被加熱物を誘電加熱する構成が示されている。なお、パッチアンテナとは、マイクロストリップアンテナとも呼ばれ、誘電体基板上に配線された導体(放射素子)と基板裏面のグランド板を構成要素とする平面アンテナの一種である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2020―145114号公報
【文献】特開2019-204571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1のように、加熱室内に上部電極と下部電極とを備え、両電極間に配置された食品に高周波電源から高周波電界を与えて解凍を行う平行電極方式では、平行電界が食品内部にほぼ均等に到達するため、食品の端部、角部、突起部などに電界が集中してしまい、食品の一部が過加熱されてしまう。過加熱に伴う温度ムラは、食品の解凍品質の低下に直接繋がることから、過加熱の抑制が課題となっている。
【0010】
また、特許文献2のように、放射部(パッチアンテナ等)が被加熱物の下方に位置するように配置される場合、発明者らによる電磁界解析により、被加熱物の加熱ムラが大きいことが分かっている。なお、被加熱物の加熱ムラの詳細について、
図4にて後述する。
【0011】
そこで、本発明においては、MHz帯域の高周波電界を印加して冷凍食品を解凍する高周波誘電加熱装置において、食品の端部や角部、突起部などの過加熱を低減し、食品の解凍品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明は、「MHz帯域の高周波電力を出力する高周波電源と、被加熱物を収納し、誘電加熱するための電極を備える加熱部とを備え、加熱部が備える電極は、直列接続された渦巻状の2組の電極が形成する2組の電極面が対向配置され、直列接続された一方電極の中心端が高周波電源の給電点とされ、他方電極の一端が開放端とされていることを特徴とする高周波誘電加熱装置。」としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の高周波誘電加熱装置により、冷凍食品の端部や角部、突起部などの過加熱を低減し、食品の解凍品質の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例1に係る高周波誘電加熱装置の概略構成例を示す図。
【
図2】本発明の実施例1に係る高周波誘電加熱装置の加熱部の内部構成例を示す図。
【
図3】線状電極上に生じる電圧定在波を示した概略説明図。
【
図4】解凍時の食材の発熱密度分布を、電磁界解析により計算した結果を示す図。
【
図5】本発明の実施例1の変形例に係る高周波誘電加熱装置の概略構成例を示す図。
【
図6】本発明の実施例2に係る高周波誘電加熱装置の概略構成例を示す図。
【
図7】本発明の実施例2に係る高周波誘電加熱装置の加熱部の内部構成例を示す図。
【
図8】実施例2における、線状電極の巻線方向を示した概略説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の実施例について説明する。なお高周波誘電加熱装置は、被加熱物の加熱場面で広く適用することができるが、特に解凍に特化して使用する場合にはこれを高周波解凍装置ということがあり、以下の実施例では高周波解凍装置について説明する。
【0016】
また、本発明の実施例においては、コンビニエンスストアやスーパーマーケット等の小売店のバックヤード等に高周波誘電加熱装置を設置し、入店する客数に応じて貯蔵している冷凍状態の弁当や惣菜等の冷凍食品を解凍し、店舗内の陳列棚にチルド品として並べる場合や、解凍した食品を客に提供する場合等を想定している。
【0017】
ただし、以下の説明は、本発明の内容の具体例を示すものであり、本発明がこれらの説明に限定されるものでは無く、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において、当業者による様々な変更および修正が可能である。
【実施例1】
【0018】
まず、
図1から
図5を用いて、本発明の実施例1に係る高周波解凍装置100(高周波誘電加熱装置)を説明する。
図1は、本実施例の高周波解凍装置100の概略構成図であり、特に加熱部10の内部を立体的に図示している。
図2は、本実施例の高周波解凍装置100の加熱部10を平面的に図示した概略構成図である。また、
図3は、本実施例の高周波解凍装置100における、線状電極上に生じる電圧の定在波を示すための概略説明図である。
【0019】
図1、
図2の構造に示すように、高周波解凍装置100は、筐体101内に主たる構成要素として、加熱部10と、高周波電源20と、インピーダンス変換器30と、加熱室40と、加熱室40の壁面に少なくとも一対に対向して配置される電極50を備えて構成されている。また加熱部10内には、グランド電極12、基板11、電極50を備えている。
【0020】
ここで、電極50は、加熱室40の壁面に、少なくとも一対に対向して配置される。
図1の例では、加熱室40の底面11aおよび天井面11bを形成する基板11上に、互いに対向するように電極50a、50bが配置されており、いずれの電極50a、50bも導電性の線材により渦巻状に形成された線状電極である。ここで、底面11aを形成する基板11上に形成される線状電極50aを第1の電極、天井面11bを形成する基板11上に形成される線状電極50bを第2の電極と称し、第1の電極50aの渦巻中心を60a、第1の電極50aの渦巻の外周端を60bとし、第2の電極50bの渦巻中心を60c、第2の電極50bの渦巻の外周端を60dとする。また、グランド電極12は、加熱室40を囲むように基板11の外側に形成されている。
【0021】
このとき、第1の電極50aの渦巻の外周端60bと、第2の電極50bの渦巻の外周端60dは、加熱室40の側面11c(あるいは11d)を形成する基板11上に配置される導電性を有する接続線53により直列に接続される。また、第1の電極50aの渦巻中心60aは、インピーダンス変換器30を介して、高周波電源20からの出力電力を給電する給電線54と接続され、線状電極50aへの給電位置(給電点)となっている。また、第2の電極50bの渦巻中心60cは、線状電極50bの開放端となっている。そして、グランド電極12は、グランド線13を介して高周波電源20の他方端と接続される。
【0022】
図2に示すように、高周波解凍装置100で冷凍食品70を解凍する際は、食品70は第1の電極50a上に配置される載置台41上に置かれる。載置台41の構成部材は、セラミックスや耐熱樹脂などの非金属製である。また、食品70を出し入れするため、加熱室40の開口を開閉するためにドア(図示せず)を備えている。
【0023】
なお、誘電加熱による食品70の解凍中は、解凍の進行に伴う冷凍食品70の誘電損失の変化により、冷凍食品70を含む負荷側のインピーダンスが大きく変化する。そこで、高周波電源20の出力インピーダンスと、被解凍物である食品70を含む負荷側のインピーダンスを略同一にすることで、高周波電源20に戻る反射電力(反射波)を無くして食品70の加熱効率を向上させる必要があり、高周波電源20と電極50の間にインピーダンス変換器30を備えている。
【0024】
また、高周波電源20は、電子レンジで使用するマイクロ波(GHz帯域の高周波電界)より低い周波数のMHz帯域の高周波電力を発振し、インピーダンス変換器30を介して電極50に電力を供給する電源である。上記したように、MHz帯域の高周波電界は、マイクロ波(GHz帯域の高周波電界)に比べ、冷凍食品70の内部に到達しやすいという特性があるため、本実施例の高周波電源20を利用することで、冷凍食品70の解凍を促進することが出来る。
【0025】
このとき、第1の電極50aと第2の電極50bと接続線53の総長さは、高周波電源20から供給される高周波電力の周波数に応じた特定の長さを有しており、例えば、高周波電力の波長の1/2(半波長)であることが望ましい。
【0026】
図3は、横軸に給電点(第1の電極50aの渦巻き中心60a)から接続線53を経由して開放端(第2の電極50bの渦巻中心60c)に至る各点を示し、縦軸に各点における電圧の大きさを示している。この場合、
図3に示すように、第1の電極50aの渦巻中心60a(給電点)と、第2の電極50bの渦巻中心60c(開放端)の電圧定在波の振幅が最大となるため、第1の電極50aおよび第2の電極50bの渦巻中心の領域の電界強度が強くなる。よって、食品70の中心領域の電界強度が強くなり、食品70の加熱ムラを低減することが可能となる。
【0027】
図4に、解凍時の食材の発熱密度分布を、電磁界解析により計算した結果を示す。
図4の下段(c)には、例えば冷凍された食品70として、縦横高さ方向の大きさが図示の長さのマグロ赤身を示している。
図4の上段(a)には本発明により上下に電極50を配置した構成例の時の食品70の解凍状況を、
図4の中段(b)には従来手法として下にのみ電極50を配置した構成例の時の食品70の解凍状況を示している。なお、解凍状況は、
図4下段の検査断面におけるものを示している。
【0028】
このようにこの図では、上記の実施例で示した形態と従来の形態における、食材の中心断面(図中斜線で表示している検査断面)の発熱密度分布を色の濃淡で示している。ここで、従来の形態とは、渦巻状の線状電極を食材の下側に1個設けた場合(単一電極)であり、渦巻の外周端60aから給電し、渦巻中心60cは開放端となっているものを例示している。対象とした食材70はマグロの赤身(誘電率6程度)である。
【0029】
中段(b)に示した従来(単一電極)の場合、食材の厚さ方向、長手方向共に加熱ムラが生じているが、上段(a)に示した実施例では、食材の中心から周囲に渡り比較的均一に加熱されており、加熱ムラが低減されているのが分かる。
【0030】
このように、第1の電極50aの渦巻中心60aを給電点とし、第2の電極50bの渦巻中心60cを開放端とし、第1の電極50aと第2の電極50bと接続線53の総長さを、高周波電力の波長の1/2(半波長)とすることで、電極50の渦巻中心(60aおよび60c)の電圧振幅が最大となるため、食品70の中心領域の電界強度が強くなり、食品70の加熱ムラを低減することが出来る。
【0031】
なお、本実施例では、第1の電極50aの渦巻の外周端60bと、第2の電極50bの渦巻の外周端60dを接続線53により直列に接続し、第1の電極50aの渦巻中心60aを給電点とし、第2の電極50bの渦巻中心60cを開放端としたが、
図5に示すように、第1の電極50aの渦巻の外周端60bと、第2の電極50bの渦巻中心60cを接続線53により直列に接続し、第1の電極50aの渦巻中心60aを給電点とし、第2の電極50bの渦巻の外周端60dを開放端とした場合であってもよい。
【0032】
また、本実施例では、一対に対向して配置される渦巻状の電極50を、加熱室40の底面11aおよび天井面11bに配置する構成としたが、側面11cおよび側面11dに配置する構成であってもよい。また、二対以上の複数の電極対が、加熱室40の壁面に配置される構成であってもよい。また、電極50は基板11上に形成されるとしたが、電極50とグランド電極12の間は、基板11の代わりに空気層であってもよい。
【0033】
要するに、渦巻状の2組の電極50a、50bが直列接続されて、その総延長が高周波電力の波長の1/2(半波長)とされ、渦巻状の2組の電極50a、50bが形成する2組の電極面が対向配置され、直列接続された一方電極の中心端が高周波電源の給電点とされ、他方電極の一端が開放端とされたものである。ここでは渦巻状の2組の電極50a、50bの左右回り方向であることを問わない。
【実施例2】
【0034】
図6から
図8を用いて、本発明の実施例2に係る高周波解凍装置100について説明する。なお、以下では、実施例1との共通点については重複説明を省略する。
【0035】
図6は、本実施例の高周波解凍装置100の概略構成図であり、特に加熱部10の内部を立体的に図示している。また、
図7は、本実施例の高周波解凍装置100の加熱部10を平面的に図示した概略構成図である。
【0036】
実施例1で示したように、高周波解凍装置100は、主に、加熱部10と、高周波電源20と、インピーダンス変換器30と、加熱室40と、加熱室40の壁面を構成する基板11上に少なくとも一対に対向して配置される渦巻状の線状電極50a(第1の電極)および渦巻状の線状電極50b(第2の電極)を備えており、本実施例ではさらに、導電性の線材により渦巻状に形成された線状電極50cを有するトレイ80を備えている。
【0037】
渦巻状の線状電極50cは基板82上に形成されており、ここでは第3の電極と称す。第3の電極50cの渦巻中心60e、および、渦巻の外周端60fは、いずれも線状電極の開放端である。また、第3の電極50cの上側には、食品71を載せるための載置台42が備わっている(
図7)。載置台42の構成部材は、載置台41と同様にセラミックスや耐熱樹脂などの非金属製である。なお、
図6では、電極50a、50b、50cの構成を明示するため、敢えて載置台41および載置台42の記載を省略している。
【0038】
実施例2では、第1の電極50aと第2の電極50bの巻線方向を、互いに反転させている。この点について実施例1では、第1の電極50aと第2の電極50bの巻線方向を特に限定していない。
【0039】
図8に、高周波解凍装置100を上側からみた場合の、第1の電極50aと第2の電極50bの巻線方向を図示している。本実施例では、第1の電極50aの巻線方向を時計回りとし、第2の電極50bの巻線方向を反時計回りとしている。こうすることで
図6に示すように、本実施例の場合、第1の電極50aおよび第2の電極50b共に、電流が流れる方向(72aおよび72b)が時計回りで同一となり、発生する磁界の方向が一致する。本実施例の場合、第1の電極50a、第2の電極50b共に、磁界の方向(73aおよび73b)は下向きとなる。
【0040】
この状態で、第3の電極50cが備わるトレイ80を
図6のように加熱室40内に挿入すると、電極50cに上記の磁界(73aおよび73b)を打ち消す方向に、磁界73cが発生し、電極50cに誘導電流72cが流れる(レンツの法則)。よって、誘導電流72cによって生じる電界により、トレイ80に載置した食品71を加熱することが可能となる。磁界でエネルギーを伝えて、誘導電流によって生じる電界により加熱をするものであり、電磁誘導を利用した加熱方式である。
【0041】
こうすることにより、食品の高さが低い場合であっても、
図7で示すように食品と電極が近接し、効率的に食品を加熱することが出来る。
【0042】
なお、以上の実施例は、食品以外を対象とした高周波誘電加熱装置にも適用できるものである。
【符号の説明】
【0043】
100:高周波解凍装置
101:筐体
10:加熱部
11:基板
11a:底面
11b:天井面
11c、11d、11e:側面
12:グランド電極
13:グランド線
20:高周波電源
30:インピーダンス変換器
40:加熱室
41、42:載置台
50:電極
50a:線状電極(第1の電極)
50b:線状電極(第2の電極)
50c:線状電極(第3の電極)
53:接続線
54:給電線
60a、60c渦巻の中心
60b、60d:渦巻の外周端
70、71:食品
72a、72b、72c:電流
73a、73b、73c:磁界
80:トレイ
50c:線状電極(第3の電極)
82:基板