(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】自動車用シートバックフレームおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
B60N 2/68 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B60N2/68
(21)【出願番号】P 2021156884
(22)【出願日】2021-09-27
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】吉田 正敏
【審査官】二階堂 恭弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-221586(JP,A)
【文献】特開2018-52257(JP,A)
【文献】特開2017-114423(JP,A)
【文献】特開2017-197081(JP,A)
【文献】特開2017-43226(JP,A)
【文献】特開2017-197076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、
前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、
前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットと
を備え、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に延びる押出材であり、下端部を固定され、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有し、
前記第1サイドフレームの前記上端部は車両後方へ押し潰されており、前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みが前記第1サイドフレームの前記下端部に比べて小さくなっており、
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記下端部において、車両幅方向の大きさが大きい順に、後部と、前部と、中間部とを有し、
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記上端部において、前記中間部を有しておらず、溶接された前記前部および前記後部を有している、自動車用シートバックフレーム。
【請求項2】
前記閉断面部は、車両幅方向に対向して配置された一対の側壁を有し、
前記一対の側壁は、前記第1サイドフレームの前記上端部において前記押し潰しに伴って前記閉断面部の内側へ折り込まれている、請求項1に記載の自動車用シートバックフレーム。
【請求項3】
前記一対の側壁のそれぞれは、前記第1サイドフレームの前記下端部において前記閉断面部の内側へ凹んだ形状の溝部を有する、請求項2に記載の自動車用シートバックフレーム。
【請求項4】
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、
前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、
前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットと
を備え、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に延びる押出材であり、下端部を固定され、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有し、
前記第1サイドフレームの前記上端部は車両後方へ押し潰されており、前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みが前記第1サイドフレームの前記下端部に比べて小さくなっており、
前記閉断面部は、車両幅方向に対向して配置された一対の側壁を有し、
前記一対の側壁は、前記第1サイドフレームの前記上端部において前記押し潰しに伴って前記閉断面部の内側へ折り込まれており、
前記一対の側壁の車両前後方向中央部には、複数の貫通孔が設けられている、自動車用シートバックフレーム。
【請求項5】
前記複数の貫通孔は、車両上方ほど高密度で配置されている、請求項4に記載の自動車用シートバックフレーム。
【請求項6】
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットとを備える自動車用シートバックフレームの製造方法であって、
車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有するように前記第1サイドフレームを押し出し成形し、
前記第1サイドフレームの前記上端部を車両後方へ押し潰すことにより、前記第1サイドフレームの下端部に比べて前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みを小さくする
ことを含み、
前記第1サイドフレームの前記上端部に車両上方ほど開口量が増加する開口部を形成し、
前記押し潰し後に前記開口部を閉じるように連続的に溶接する
ことをさらに含む、自動車用シートバックフレームの製造方法。
【請求項7】
前記閉断面部は、車両幅方向に対向して配置された一対の側壁を有し、
前記押し出し成形では、前記一対の側壁に前記閉断面部の内側へ凹んだ溝部を形成する、請求項6に記載の自動車用シートバックフレームの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用シートバックフレームおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用のシートバックフレームにおいて、シートベルトを内蔵する構造が知られている。このような構造では、自動車が急減速または衝突した際にシートベルトを介してシートバックフレームに大きな荷重が加わる。従って、座屈変形が生じることを抑制するために、高い耐荷重性能を有するシートバックフレームが求められている。
【0003】
特許文献1には、高い耐荷重性能を有する自動車用のシートバックフレームが開示されている。当該シートバックフレームでは、サイドフレームが閉断面形状を有し、高い耐荷重性能を発揮する。また、シートバックフレームの上部を車両後方へ向かって湾曲させるとともに部分的に切除することにより、座面上方の空間を広く確保し、乗り降りし易くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシートバックフレームでは、閉断面形状を有するサイドフレームの一部を切除する加工が必要である。このような加工は、製造工程上、複雑かつ困難であり、省略されることが好ましい。従って、簡易に製造する観点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、シートベルト内蔵型の自動車用シートバックフレームおよびその製造方法において、高い耐荷重性能を有しつつ簡易に製造可能な構造を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、
前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、
前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットと
を備え、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に延びる押出材であり、下端部を固定され、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有し、
前記第1サイドフレームの前記上端部は車両後方へ押し潰されており、前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みが前記第1サイドフレームの前記下端部に比べて小さくなっており、
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記下端部において、車両幅方向の大きさが大きい順に、後部と、前部と、中間部とを有し、
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記上端部において、前記中間部を有しておらず、溶接された前記前部および前記後部を有している、自動車用シートバックフレームを提供する。
【0008】
この構成によれば、第1サイドフレームが閉断面部を有するため、高い耐荷重性能を有する。また、第1サイドフレームの上端部が車両後方へ押し潰されているため、座面上方の空間を広く確保し、乗り降りし易くできる。また、第1サイドフレームの下端部が固定され、上端部にはシートベルトを案内するアッパーブラケットが配置され、自動車が急減速または衝突した際にアッパーブラケットを通じて高い荷重が車両略前方向に加わるため、下端部には相対的に高い曲げモーメントが付加され、上端部には相対的に低い曲げモーメントが付加される。これに対し、上端部を車両後方へ押し潰し、下端部よりも上端部を小さくしているため、下端部の断面係数を上端部の断面係数に比べて大きくでき、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。
【0009】
前記閉断面部は、車両幅方向に離間して配置された一対の側壁を有していてもよく、
前記一対の側壁は、前記第1サイドフレームの前記上端部において前記押し潰しに伴って前記閉断面部の内側へ折り込まれていてもよい。
【0010】
この構成によれば、第1サイドフレームの外観を保ち、設計上求められる形状レイアウトを満足し易くできる。また、自動車が急減速または衝突した際に荷重が付加されても一対の側壁が互いに支持し合うため、高い耐荷重性能を確保できる。
【0011】
前記一対の側壁のそれぞれは、前記第1サイドフレームの前記下端部において前記閉断面部の内側へ凹んだ形状の溝部を有していてもよい。
【0012】
この構成によれば、第1サイドフレームは押出材であるため、押し出し成形時には上端部および下端部が同一形状で形成される。上記構成では、下端部において溝部が設けられているため、上端部においても押し潰しを受ける前には溝部が同様に設けられている。このような溝部により、上端部を容易に押し潰すことができ、意図しない変形を抑制できる。
【0013】
本発明の第1の別の態様は、
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、
前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、
前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットと
を備え、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に延びる押出材であり、下端部を固定され、
前記第1サイドフレームは、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有し、
前記第1サイドフレームの前記上端部は車両後方へ押し潰されており、前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みが前記第1サイドフレームの前記下端部に比べて小さくなっており、
前記閉断面部は、車両幅方向に対向して配置された一対の側壁を有し、
前記一対の側壁は、前記第1サイドフレームの前記上端部において前記押し潰しに伴って前記閉断面部の内側へ折り込まれており、
前記一対の側壁の車両前後方向中央部には、複数の貫通孔が設けられている、自動車用シートバックフレームを提供する。
【0014】
この構成によれば、複数の貫通孔を設けることで軽量化できる。また、複数の貫通孔は、連続的な1つの孔を設ける場合に比べて荷重を分散できるために高い耐荷重性能を発揮できる。また、複数の貫通孔は、上端部において押し潰しを容易にすることにも資する。また、自動車が急減速または衝突した際にアッパーブラケットを通じて第1サイドフレームに荷重が加わると第1サイドフレームに曲げ変形が発生するおそれがあるが、一対の側壁の車両前後方向中央部が当該曲げ変形における中立軸近傍に位置するため、当該中央部分に発生する応力が小さく、複数の貫通孔を設けても強度が低下することを抑制できる。
【0015】
前記複数の貫通孔は、車両上方ほど高密度で配置されていてもよい。
【0016】
この構成によれば、下部の断面係数を上部に比べて大きくし、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。
【0017】
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記下端部において、車両幅方向の大きさが大きい順に、後部と、前部と、中間部とを有していてもよく
前記閉断面部は、前記第1サイドフレームの前記上端部において、前記中間部を有しておらず、溶接された前記前部および前記後部を有していてもよい。
【0018】
この構成によれば、製造工程において、前部を後部に押し当てるように上端部を押し潰すことができるため、押し潰し加工やその後の溶接加工を容易にできる。
【0019】
本発明の第2の態様は、
車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレームおよび第2サイドフレームと、前記第1サイドフレームの上端部および前記第2サイドフレームの上端部を連結するアッパーフレームと、前記第1サイドフレームの前記上端部に取り付けられ、シートベルトを案内するアッパーブラケットとを備える自動車用シートバックフレームの製造方法であって、
車両上下方向に垂直な断面において閉断面部を有するように前記第1サイドフレームを押し出し成形し、
前記第1サイドフレームの前記上端部を車両後方へ押し潰すことにより、前記第1サイドフレームの下端部に比べて前記第1サイドフレームの前記上端部の車両前後方向の厚みを小さくする
ことを含み、
前記第1サイドフレームの前記上端部に車両上方ほど開口量が増加する開口部を形成し、
前記押し潰し後に前記開口部を閉じるように連続的に溶接する
ことをさらに含む、自動車用シートバックフレームの製造方法を提供する。
【0020】
この方法によれば、前述と同様に、シートベルト内蔵型の自動車用シートバックフレームの製造方法において、高い耐荷重性能を有しつつ簡易に製造可能な構造を実現できる。
【0021】
前記閉断面部は、車両幅方向に離間して配置された一対の側壁を有していてもよく、
前記押し出し成形では、前記一対の側壁に前記閉断面部の内側へ凹んだ溝部を形成してもよい。
【0022】
この方法によれば、一対の側壁に対して閉断面部の内側へ向かう初期不整が与えられているため、上端部を押し潰す際に一対の側壁が閉断面部の外側へ折り曲げられることを抑制できる。
【0023】
前記自動車用シートバックフレームの製造方法は、
前記第1サイドフレームの前記上端部に車両上方ほど開口量が増加する開口部を形成し、
前記押し潰し後に前記開口部を閉じるように連続的に溶接する
ことをさらに含んでもよい。
【0024】
この方法によれば、開口部を形成することによって軽量化できる。また、開口部は、車両下方ほど断面係数が高くなるように開口量が調整されているため、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。なお、溶接によって開口部が閉じられても軽量化と高い耐荷重性能は実現される。ここで、連続的に溶接とは、スポット溶接のように点状に溶接するのではなく、線状に溶接することをいう。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、シートベルト内蔵型の自動車用シートバックフレームおよびその製造方法において、高い耐荷重性能を有しつつ簡易に製造可能な構造を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る自動車用シートバックフレームの斜視図。
【
図5】第1サイドフレームの第1変形例を示す側面図。
【
図6】第1サイドフレームの第2変形例を示す側面図。
【
図7】
図6の第1サイドフレームの製造方法の第1工程図。
【
図8】
図6の第1サイドフレームの製造方法の第2工程図。
【
図9】
図6の第1サイドフレームの製造方法の第3工程図。
【
図10】
図6の第1サイドフレームの製造方法の第4工程図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
図1は、本発明の一実施形態に係る自動車用のシートバックフレーム1の斜視図を示している。
図1において、車両幅方向において外向きを符号Xで示し、車両前後方向において前向きを符号Yで示し、車両上下方向において上向きを符号Zで示す。
【0029】
シートバックフレーム1は、車両幅方向に離間して配置された第1サイドフレーム2および第2サイドフレーム3を有している。第1サイドフレーム2および第2サイドフレーム3は、車両上下方向に延びている。第1サイドフレーム2は車両幅方向外側に配置され、第2サイドフレーム3は車両幅方向内側に配置されている。
【0030】
シートバックフレーム1は、第1サイドフレーム2の上端部2aおよび第2サイドフレーム3の上端部3aを連結するアッパーフレーム4を有している。また、シートバックフレーム1は、第1サイドフレーム2の下端部2bおよび第2サイドフレーム3の下端部3bをそれぞれ連結するロアーフレーム5を有している。また、シートバックフレーム1は、第1サイドフレーム2の中央部および第2サイドフレーム3の中央部を連結するミッドフレーム6を有している。本実施形態では、アッパーフレーム4、ロアーフレーム5、およびミッドフレーム6は、車両幅方向に延びるアルミニウム合金製の円管部材である。なお、本実施形態では、第2サイドフレーム3とアッパーフレーム4とは別体の部品とする構造としているが、この構造に限定されず、第2サイドフレーム3とアッパーフレーム4とを一体とする構造としても良い。
【0031】
シートバックフレーム1は、シートベルト内蔵型であり、シートベルトを巻き取るリトラクタ(図示せず)と、シートベルトを案内するアッパーブラケット7を有している。アッパーブラケット7は、第1サイドフレーム2の上端部2aおよびアッパーフレーム4の車幅方向外側端部に取り付けられている。また、リトラクタは、アッパーブラケット7に取り付けられている。なお、リトラクタは、例えばミッドフレーム6に取り付けられていても良い。この場合、シートベルトは、シートバックフレーム1の後方からアッパーブラケット7を介して前方側に延在されている。
【0032】
図2は、第1サイドフレーム2の側面図を示している。
図3は、
図2のIII-III線に沿った断面図を示している。
図4は、
図2のIV-IV線に沿った断面図を示している。
【0033】
第1サイドフレーム2は、車両上下方向に延びる押出材である。本実施形態では、第1サイドフレーム2は、アルミニウム合金製の押出材である。第1サイドフレーム2の下端部2bは、リクライナ8を介してシートクッションフレーム(図示せず)に固定されている。
【0034】
第1サイドフレーム2の上端部2aは、車両後方へ押し潰されている。本実施形態では、上端部2aだけでなく、第1サイドフレーム2の概ね上半分が車両後方へ押し潰されており、車両上方ほど大きく押し潰されている。また、第1サイドフレーム2の下端部2bは押し潰されることなく、押し出し成形時の形状を維持している。これにより、下端部2bに比べて上端部2aの車両前後方向の厚みが小さくなっている(
図2において、D1<D2)。
【0035】
第1サイドフレーム2は、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部10を有している。本実施形態では、閉断面部10は、車両前方に位置する前壁11と、車両後方に位置する後壁12と、それらを繋ぐ一対の側壁13,14とを含んでいる。一対の側壁13,14は、車両幅方向に対向して配置されている。一対の側壁13,14のそれぞれは、下端部2bにおいて閉断面部10の内側へ凹んだ形状の溝部13a,14aを有する。
【0036】
本実施形態では、閉断面部10において、車両前方側に位置する前部10aと、車両後方側に位置する後部10bと、それらの間の中間部10c(溝部13a,14a)とが構成されている。前部10aおよび後部10bの車両幅方向の大きさは等しく(
図4において、D3=D4)、中間部10cの車両幅方向の大きさはこれらより小さい(
図4において、D5<D3,D4)。
【0037】
一対の側壁13,14は、上端部2aにおいて上記押し潰しに伴って閉断面部10の内側へ折り込まれている(
図3参照)。即ち、中間部10c(溝部13a,14a)が、車両前後方向に縮められるとともに閉断面部10の内側へ深く形成されている。中間部10c(溝部13a,14a)において、折り込まれた一対の側壁13,14は、当接し互いに支持し合っている。なお、中間部10c(溝部13a,14a)において、折り込まれた一対の側壁13,14は、当接せず離間していても良く、また、本実施形態のように当接させる場合には例えば接着剤による接合を行っても良い。
【0038】
本実施形態では、第1サイドフレーム2は、リクライナ8に対して、ボルト16a,16bおよびナット17a,17bによって締結されている。ボルト16a,16bは、閉断面部10の前部10aおよび後部10bを車両幅方向にそれぞれ貫通し、閉断面部10内においてカラー18a,18bでそれぞれ被覆されている。カラー18a,18bは、車両幅方向において側壁13,14を支持している。
【0039】
図1を参照して、第2サイドフレーム3は、ハイテンション鋼からなり、板状である。第2サイドフレーム3は、車両上下方向から見て、2か所で直角に折り曲げられ、即ち概略C字形に構成されている。第2サイドフレーム3は、上端部3aに比べて下端部3bが車両前後方向に大きい。
【0040】
次に、上記自動車用シートバックフレーム1の製造方法について説明する。以下では、主に第1サイドフレーム2の製造方法について説明する。
【0041】
まず、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部10を有するように第1サイドフレーム2を押し出し成形する。この押し出し成形時に、一対の側壁13,14に閉断面部10の内側へ凹んだ溝部13a,14aも合わせて形成する。次いで、第1サイドフレーム2の上端部2aを車両後方へ押し潰す。このとき、下端部2bを押し潰すことはなく、押し出し成形時の形状を維持する。これにより、下端部2bに比べて上端部2aの車両前後方向の厚みを小さくする(
図2において、D1<D2)。そして、第1サイドフレーム2に対して、第2サイドフレーム3、アッパーフレーム4、ロアーフレーム5、ミッドフレーム6、アッパーブラケット7、および、リクライナ8等を組み合わせて、シートバックフレーム1(
図1参照)を構成する。
【0042】
本実施形態のシートバックフレーム1によれば、以下の作用効果を奏する。
【0043】
第1サイドフレーム2が閉断面部10を有するため、高い耐荷重性能を有する。また、第1サイドフレーム2の上端部2aが車両後方へ押し潰されているため、座面上方の空間を広く確保し、乗り降りし易くできる。また、第1サイドフレーム2の下端部2bが固定され、上端部2aにはアッパーブラケット7が配置され、アッパーブラケット7を通じて高い荷重が車両略前方向に加わるため、下端部2bには相対的に高い曲げモーメントが付加され、上端部2aには相対的に低い曲げモーメントが付加される。これに対し、下端部2bを押し潰すことなく上端部2aを車両後方へ押し潰すことで、下端部2bの断面係数を上端部2aの断面係数に比べて大きくでき、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。
【0044】
上端部2aにおいて上記押し潰しに伴って、一対の側壁13,14は、閉断面部10の内側へ折り込まれている。よって、第1サイドフレーム2の外観を保ち、設計上求められる形状レイアウトを満足し易くできる。また、自動車が急減速または衝突した際に荷重が付加されても一対の側壁13,14が互いに支持し合うため、高い耐荷重性能を確保できる。
【0045】
一対の側壁13,14に対して閉断面部10の内側へ向かう初期不整(溝部13a,14a)が設けられているため、上端部2aを押し潰す際に一対の側壁13,14が閉断面部10の外側へ折り曲げられることを抑制できる。
【0046】
(第1変形例)
図5は、
図2に対応する第1サイドフレーム2の第1変形例を示す断面図を示している。
【0047】
本変形例では、上記実施形態の第1サイドフレーム2の一対の側壁13,14に対して複数の貫通孔15が設けられている。詳細には、一対の側壁13,14の車両前後方向中央部において、車両上下方向に並んで複数の貫通孔15が設けられている。
【0048】
本実施形態では、複数の貫通孔15のそれぞれは、円形であり、5個設けられている。上端部2aにおいては、押し潰し加工に伴い楕円形に変形している。
【0049】
複数の貫通孔15は、車両上方ほど高密度で配置されている。即ち、複数の貫通孔15の配置される車両上下方向の間隔(中心点間の距離D6~D9)が車両上方ほど短くなっている(
図5において、D6<D7<D8<D9)。代替的には、複数の貫通孔15は等間隔で配置されるとともに車両上方ほど大きく形成されてもよい。
【0050】
本変形例によれば、複数の貫通孔15を設けることで軽量化できる。また、複数の貫通孔15は、連続的な1つの孔を設ける場合に比べて荷重を分散できるために高い耐荷重性能を発揮できる。また、複数の貫通孔15は、上端部2aにおいて押し潰し加工を容易にすることにも資する。また、自動車が急減速または衝突した際にアッパーブラケット7を通じて第1サイドフレーム2に荷重が加わると第1サイドフレーム2に曲げ変形が発生するおそれがあるが、一対の側壁13,14の車両前後方向中央部が当該曲げ変形における中立軸近傍に位置するため、当該中央部分に発生する応力が小さく、複数の貫通孔15を設けても強度が低下することを抑制できる。
【0051】
また、複数の貫通孔15の配置密度を車両上方ほど高くすることで、第1サイドフレーム2の下部の断面係数を上部に比べて大きくし、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。
【0052】
(第2変形例)
図6は、
図2に対応する第1サイドフレーム2の第2変形例を示す断面図を示している。
【0053】
本変形例では、第1サイドフレーム2の上端部2aを単に押し潰すだけでなく、上端部2aを部分的に切除し、切除した部分を繋ぐように押し潰して連続的に溶接している(
図6において斜線領域W参照)。ここで、連続的に溶接とは、スポット溶接のように点状に溶接するのではなく、線状に溶接することをいう。
【0054】
図7~10は、本変形例の第1サイドフレーム2の製造方法の第1~4工程図をそれぞれ示している。
図7~10において、中央には側面図が示され、上部には上面図が示され、下部には下面図が示されている。なお、上面図および下面図は、上端面および下端面の形状がそれぞれ示されている。
【0055】
第1工程を示す
図7を参照して、車両上下方向に垂直な断面において閉断面部10を有するように第1サイドフレームを押し出し成形する。本変形例では、閉断面部10は、車両幅方向の大きさが大きい順に、後部10bと、前部10aと、中間部10cとを含んでいる(
図7において、D10>D11>D12)。本工程では、上端部2aおよび下端部2bの形状は同じである。また、押し出し成形後に一対の側壁13,14に起点孔19を形成する。図示の例では、起点孔19は、円形であり、車両上下方向の概ね中央に設けられる。
【0056】
第2工程を示す
図8を参照して、第1サイドフレーム2の上端部2aに車両上方ほど開口量が増加する開口部20を形成する。図示の例では、開口部20は、上端部2aから中央部2cに設けられている。開口部20は、起点孔19を起点とし、上端を一辺とする直角三角形状である。これにより、上端部2aでは、中間部10cが除去される。
【0057】
第3工程を示す
図9を参照して、前部10aおよび後部10bが当接するとともに開口部20を閉じるように上端部2aを車両後方へ押し潰す。このとき、下端部2bは、押し潰されることなく押し出し成形時の形状を維持している。これにより、下端部2bに比べて上端部2aの車両前後方向の厚みが小さくなる(
図9において、D13<D14)。
【0058】
第4工程を示す
図10を参照して、上端部2aにおいて、前部10aおよび後部10bを連続的に溶接する(
図10の斜線領域W参照)。図示の例では、車両上下方向に前部10aおよび後部10bを線状に溶接している。そして、第1サイドフレーム2に対して、第2サイドフレーム3、アッパーフレーム4、ロアーフレーム5、ミッドフレーム6、アッパーブラケット7、および、リクライナ8等を組み合わせて、シートバックフレーム1(
図1参照)を構成する。
【0059】
本変形例によれば、前部10aを後部10bに押し当てるように上端部2aを押し潰すことができるため、押し潰し加工やその後の溶接加工を容易にできる。
【0060】
また、開口部20を形成することによって軽量化できる。また、開口部20は、車両下方ほど断面係数が高くなるように開口量が調整されているため、必要な耐荷重性能を効率的に確保できる。なお、溶接によって開口部20が閉じられても軽量化と高い耐荷重性能は実現される。また、本変形例の場合には一対の側壁13,14が当接していないため互いに支持し合っていないが、側壁13,14それぞれを介して車両前後方向に荷重を伝達することができ、高い耐荷重性能を確保できる。
【0061】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 シートバックフレーム
2 第1サイドフレーム
2a 上端部
2b 下端部
2c 中央部
3 第2サイドフレーム
3a 上端部
3b 下端部
4 アッパーフレーム
5 ロアーフレーム
6 ミッドフレーム
7 アッパーブラケット
8 リクライナ
10 閉断面部
10a 前部
10b 後部
10c 中間部
11 前壁
12 後壁
13,14 側壁
13a,14a 溝部
15 貫通孔
16a,16b ボルト
17a,17b ナット
18a,18b カラー
19 起点孔
20 開口部