(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】型締装置、および射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/64 20060101AFI20241023BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20241023BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B29C45/64
B29C45/03
B29C45/17
(21)【出願番号】P 2021190714
(22)【出願日】2021-11-25
【審査請求日】2024-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】三谷 聡麻
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-064308(JP,A)
【文献】特表2004-512203(JP,A)
【文献】特開2017-170857(JP,A)
【文献】実開平04-020422(JP,U)
【文献】特開2009-066774(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/64
B29C 45/03
B29C 45/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定盤と、
該固定盤に対してスライド自在に設けられている可動盤と、
前記固定盤と前記可動盤とを連結する
4組のボールねじ機構と、を備え、
前記可動盤に4組の前記ボールねじ機構のそれぞれのボールナットが固定され、
前記ボールねじ機構を駆動すると型開閉するようになっており、
前記可動盤
は、平面視で略正方形に形成されていると共に前記固定盤に対向する面と反対側の面にリブが形成されてお
り、
前記リブは、前記可動盤を前記反対側の面から平面視したとき、前記可動盤の中心からそれぞれの前記ボールナットに向かうように放射状に形成されると共にそれぞれの前記ボールナットに近づくにつれて幅が次第に広くなって前記ボールナット近傍において前記ボールナットより幅広に形成され、前記ボールナットの周囲を一部囲んでいる、型締装置。
【請求項2】
前記リブは、
前記可動盤を前記反対側の面から平面視したとき、
前記可動盤の中心に対して4回対称に形成されている、請求項
1に記載の型締装置。
【請求項3】
金型を型締めする型締装置と、
射出材料を射出する射出装置とからなり、
前記型締装置は、固定盤と、
該固定盤に対してスライド自在に設けられている可動盤と、
前記固定盤と前記可動盤とを連結する
4組のボールねじ機構と、を備え、
前記可動盤に4組の前記ボールねじ機構のそれぞれのボールナットが固定され、
前記ボールねじ機構を駆動すると型開閉するようになっており、
前記可動盤
は、平面視で略正方形に形成されていると共に前記固定盤に対向する面と反対側の面にリブが形成されてお
り、
前記リブは、前記可動盤を前記反対側の面から平面視したとき、前記可動盤の中心からそれぞれの前記ボールナットに向かうように放射状に形成されると共にそれぞれの前記ボールナットに近づくにつれて幅が次第に広くなって前記ボールナット近傍において前記ボールナットより幅広に形成され、前記ボールナットの周囲を一部囲んでいる、射出成形機。
【請求項4】
前記リブは、
前記可動盤を前記反対側の面から平面視したとき、
前記可動盤の中心に対して4回対称に形成されている、請求項
3に記載の射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定盤と可動盤とを備え、これらが複数組のボールねじ機構で連結されている型締装置、ならびに射出成形機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出成形機もしくはプレス機には、金型を型締めする型締装置が設けられている。型締装置には色々な種類があるが、特許文献1にはいわゆる2プラテンからなる型締装置が記載されている。この型締装置は、固定盤と可動盤と、これら固定盤と可動盤とを連結する4組のボールねじ機構と、それぞれのボールねじ機構に設けられている4個のサーボモータとから構成されている。4個のサーボモータを駆動すると4組のボールねじ機構が駆動されて、可動盤が固定盤に対してスライドする。すなわち型開閉することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の型締装置は、型盤が3個ではなく2個からなるので、型締装置をコンパクトに構成できる。したがって、比較的接地面積を小さくすることができるという優れた効果を奏する。しかしながら、解決すべき課題も見受けられる。具体的には、型締めするときに可動盤がわずかに弾性変形して、4組のボールねじ機構に負担がかかって劣化しやすいという問題である。詳しく説明すると、型締めするとき可動盤には4組のボールねじ機構から引張力が作用し、そして可動盤の中央に取り付けられている金型から押力が作用する。これらによって可動盤は弾性変形によりわずかに湾曲する。湾曲すると4組のボールねじ機構のボールナットが傾く。ボールねじに対してボールナットが傾いた状態でボールねじが回転すると負荷がかかって劣化しやすい。
【0005】
可動盤の弾性変形を防止するために、可動盤の厚さを厚くして剛性を大きくすることもできる。しかしながら可動盤の重量が大きくなり型締装置が大型化してしまう。また重量が大きいと可動盤を駆動するサーボモータの負荷が大きくなり採用することはできない。
【0006】
本開示において、十分な剛性を備えていながら可動盤の重量が小さい型締装置、および射出成形機を提供する。
【0007】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、固定盤と、この固定盤に対してスライド自在に設けられている可動盤と、これらを連結する4組のボールねじ機構と、を備えた型締装置を対象とする。本開示は可動盤の固定盤に対向する面と反対側の面にリブを形成するようにする。可動盤は略正方形に形成され、4組のボールねじ機構のそれぞれのボールナットが固定されている。リブは、可動盤を平面視したとき、可動盤の中心からそれぞれのボールナットに向かうように放射状に形成すると共にそれぞれのボールナットに近づくにつれて幅を次第に広くしてボールナット近傍においてボールナットより幅広に形成し、ボールナットの周囲を一部囲むように構成する。
【発明の効果】
【0009】
本開示により、可動盤の剛性を大きく確保しながら重量を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施の形態に係る射出成形機を示す正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る型締装置を示す斜視図である。
【
図4】本実施の形態に係る型締装置の正面図である。
【
図5】第2の実施の形態に係る可動盤の平面図である。
【
図6】第3の実施の形態に係る可動盤の平面図である。
【
図7】第4の実施の形態に係る可動盤の平面図である。
【
図8】第5の実施の形態に係る可動盤の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0012】
<本実施の形態に係る射出成形機>
本実施の形態に係る射出成形機1は、
図1に示されているように、ベッドBに設けられている型締装置2と、射出装置4とから構成されている。
【0013】
<射出装置>
射出装置4は加熱シリンダ6と、この加熱シリンダ6に入れられているスクリュ7と、スクリュ7を駆動するスクリュ駆動装置8とから構成されている。加熱シリンダ6にはホッパ10が設けられ、そして先端に射出ノズル11が設けられている。ホッパ10から射出材料が投入され、そしてスクリュ7を回転して射出材料を溶融するとスクリュ7の先端に計量される。スクリュ7を軸方向に駆動すると射出材料が射出されるようになっている。
【0014】
<型締装置>
本実施の形態に係る型締装置2は、いわゆる2プラテンの型締装置からなる。すなわち型締装置2は、
図2に示されているように、第1、2の型盤13、14、つまり固定盤13と可動盤14とを備えている。固定盤13はベッドB上に固定されており、可動盤14はベッドB上に設けられたリニアガイド15、15に載せられている。すなわち可動盤14は固定盤13に接近・離間する方向にスライド自在になっている。固定盤13には固定側金型16が、そして可動盤14には可動側金型17がそれぞれ取り付けられている。
【0015】
本実施の形態に係る型締装置2は、固定盤13と可動盤14とが4組のボールねじ機構18、18、…によって連結されている点に特徴がある。それぞれのボールねじ機構18、18、…は、ボールねじ19、19、…と、ボールねじ19、19、…が螺合するボールナット20、20、…とを備えている。
【0016】
図2には示されていないが、可動盤14には貫通孔が開けられており、この貫通孔にボールナット20、20、…が固着されている。つまりボールねじ19、19、…はボールナット20、20、…を介して可動盤14に接続されている。一方、ボールねじ19、19、…は、固定盤13を貫通し、固定盤13に対して回転可能に支持されている。固定盤13にはサーボモータ22、22、…が設けられ、ボールねじ19、19、…と接続されている。したがって、サーボモータ22、22、…を駆動するとボールねじ19、19、…が回転し、可動盤14がスライドすることになる。すなわち金型16、17(
図1参照)が型開閉される。
【0017】
<可動盤のリブ>
本実施の形態に係る型締装置2は、可動盤14に特徴があり、軽量化と剛性の確保とを両立させる構造になっている。具体的には、可動盤14には、固定盤13に対向する面と反対側の面において、リブ24が形成されている。
図3には、可動盤13を平面視した様子が示されており、可動盤13は略正方形に形成されている。この正方形に対して、正方形の中心28から4組のボールねじ機構18、18、…に向かうように、リブ24が放射状に形成されている。
【0018】
正方形には対辺の中点同士を結ぶ線分が2本存在する。すなわち線分26、27である。これら2本の線分26、27に対して、リブ24は線対称に形成されている。あるいは、リブ24を正方形の中心28を中心に90度回転させると、リブ24に重なる。つまり90度の回転対称つまり4回対称になっている。このようにリブ24は対称に形成されているので、可動盤14に作用する力が均一に分散することになる。なお、可動盤13の厚さに対するリブ24の高さは、本実施の形態において約0.5倍になっているが、0.2~0.8倍等にすることができる。
【0019】
<リブの作用>
型締装置2において型締めをすると、
図4に示されているように、可動盤14には複数の力が作用する。まず、4組のボールねじ機構18、18、によって引張力30、30が作用する。次いで金型17から押力31が作用する。引張力30、30は可動盤14の端部に作用し、押力31は可動盤14の中央に作用する。これらの力30、3は符号33で示されているように、可動盤14に対して弾性変形させるように作用する。このような弾性変形が生じてしまうと、可動盤14に固定されているボールナット20、20が傾き、ボールねじ機構18、18に大きな負荷が生じる。
【0020】
しかしながら、本実施の形態に係る可動盤14にはリブ24が形成されているので、可動盤14の剛性は十分に大きくほとんど弾性変形しない。したがって、本実施の形態に係る型締装置2において、ボールねじ機構18、18にはボールナット20、20の傾きに起因する負荷は発生しない。さらには、可動盤14が弾性変形しないので、型締めが安定する効果も得られる。このように本実施の形態に係る可動盤14の剛性はリブ24によって得られるようになっているので、可動盤14にはくり抜かれた部分が形成されている。したがって可動盤14は軽量化されている。、サーボモータ22、22、…(
図2参照)とボールねじ機構18、18、…とによって可動盤14を駆動するとき、駆動力は少なくて済むという効果も得られる。
【0021】
<変形例>
本実施の形態は色々な変形が可能である。
図5には第2の実施の形態に係る可動盤14Aが示されている。この実施の形態に係る可動盤14Aに形成されているリブ24Aは第1の実施の形態に係る可動盤14(
図3参照)のリブ24と形状が相違しているが、線分26、27に対して線対称に形成され、中心28に対して4回対称になっている。
図6には第3の実施の形態に係る可動盤14Bが示されている。この可動盤14Bにおいて正方形の中心28の近傍にはリブ24Bが形成されていない。しかしながら、線分26、27に対して線対称に形成され、中心28に対して4回対称になっている。
図5、6に記載の第2、3の可動盤14A、14Bも、リブ24A、24Bによって高い剛性を備えている。
【0022】
図7には、第4の実施の形態に係る可動盤14Cが示されている。この可動盤14Cは正方形ではなく、長方形状を呈している。この可動盤14Cに形成されているリブ24Cも、線分26、27に対して線対称に形成されている。この第4の実施の形態に係る可動盤14Cも高い剛性を備えている。
【0023】
本実施の形態に係る型締装置2(
図2参照)は、固定盤13と可動盤14とを連結するボールねじ機構18、18、…は4組になっている。このボールねじ機構18、18、…の組数を変形することができる。例えば固定盤13と可動盤14とを連結するボールねじ機構18、18を2組とすることができる。
図8には、このような2組のボールねじ機構18、18を備えた型締装置2Dの一部、つまり第5の実施の形態に係る可動盤14Dが示されている。2組のボールねじ機構18、18は、可動盤14Dを平面視したとき、正方形の4個の頂点のうち、対角の2個の頂点に配置されている。この実施の形態において、正方形の他の2個の頂点には、ガイドロッド35、35が設けられている。
【0024】
第5の実施の形態に係る可動盤14Dに形成されているリブ24Dは、正方形の中心28近傍から、対角線上に位置する2組のボールねじ機構18、18に向かって伸びた形状になっている。このような形状のリブ24Dによって十分に可動盤14Dの弾性変形を防止することができ、ボールねじ機構18、18、…のボールナット20、20、…の傾きを防止できる。型締力を発生させるとき、可動盤14Dに対して2組のボールねじ機構18、18から引張力が作用するが、ガイドロッド35、35から引張力は作用しないからである。なお、この実施の形態にはガイドロッド35、35が設けられているが、ガイドロッド35、35は必須ではない。2組のボールねじ機構18、18によっても、可動盤14Dを滑らかにスライドさせることができるからである。
【0025】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0026】
1 射出成形機 2 型締装置
4 射出装置 6 加熱シリンダ
7 スクリュ 8 スクリュ駆動装置
10 ホッパ 11 射出ノズル
13 固定盤 14 可動盤
15 リニアガイド 16 固定側金型
17 可動側金型 18 ボールねじ機構
19 ボールねじ 20 ボールナット
22 サーボモータ 24 リブ
35 ガイドロッド
B ベッド