(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ヒトの血漿及び全血から抗A及び/又は抗B抗体を除去するための架橋多糖ベースの吸収剤
(51)【国際特許分類】
C07K 16/34 20060101AFI20241023BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20241023BHJP
B01J 20/30 20060101ALI20241023BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20241023BHJP
C07K 1/22 20060101ALI20241023BHJP
C07H 3/06 20060101ALI20241023BHJP
C08B 11/145 20060101ALI20241023BHJP
C08B 37/02 20060101ALI20241023BHJP
C08B 31/00 20060101ALI20241023BHJP
C08B 37/08 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C07K16/34
B01J20/26 H
B01J20/30
B01J20/28 Z
C07K1/22
C07H3/06
C08B11/145
C08B37/02
C08B31/00
C08B37/08 A
(21)【出願番号】P 2021520544
(86)(22)【出願日】2019-12-02
(86)【国際出願番号】 US2019063934
(87)【国際公開番号】W WO2020154038
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-01
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512254586
【氏名又は名称】サイトソーベンツ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(72)【発明者】
【氏名】グリアシュビリ,タマズ
(72)【発明者】
【氏名】グルダ,マリアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴロビシュ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ,デビッド
(72)【発明者】
【氏名】ルッゲベルク,カール-グスタフ
(72)【発明者】
【氏名】オサリバン,パム
(72)【発明者】
【氏名】パターソン,サラ
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-053846(JP,A)
【文献】国際公開第2016/177967(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトの血液又は血漿から抗A抗体及び抗B抗体の一つ又は両方を除去するための修飾天然多糖に基づくポリマー性媒体であって、該媒体は、
(i)
ビーズ形態の官能性多糖を含むポリマー性固体支持体であって、前記固体支持体には血液型A抗原リガンドを結合させ
ており、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定である前記ポリマー性固体支持体、及び
(ii)
ビーズ形態の官能性多糖を含むポリマー性固体支持体であって、前記固体支持体には血液型B抗原リガンドを結合させ
ており、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定である前記ポリマー性固体支持体
の内の一つ又は両方を含み、
前記官能性多糖の各々が、NaIO
4酸化
による官能化、その後の適切なジ、トリ又はポリアミンによる二次的架橋、
およびその後の前記リガンドの結合により調製されている、
前記ポリマー性媒体。
【請求項2】
前記血液型A抗原リガンドが、抗A-O-NH
2又は抗A-S-NH
2である、請求項1に記載のポリマー性媒体。
【請求項3】
前記血液型B抗原リガンドが、抗B-O-NH
2又は抗B-S-NH
2である、請求項1に記載のポリマー性媒体。
【請求項4】
第一のポリマー性固体支持体に結合された前記血液型A抗原リガンドと、第二の固体支持体に結合された前記血液型B抗原リガンドの両方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項5】
前記固体支持体に結合された前記血液型A抗原リガンドと、前記固体支持体に結合され
た前記血液型B抗原リガンドの両方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項6】
前記固体支持体、第一の固体支持体及び第二の固体支持体が、
官能化セルロース、デキストラン、デンプン、アガロース、及びキトサンの内の少なくとも一つを含むポリマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項7】
前記ビーズ形態の官能性多糖のビーズサイズ範囲が45-1,000
μmであり、細孔サイズが無孔性から1-20,000オングストローム孔径までの範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項8】
前記架橋多糖ベースのビーズ材料が、ペプチド、タンパク質、糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質及び薬物を含む天然又は合成化合物で官能化されている、請求項7に記載のポリマー性媒体。
【請求項9】
前記固体支持体が分解に対して安定化され、二、三、四又は多官能性第一又は第二アミンによる部分架橋で前記媒体の広いpH範囲1-14下で安定化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項10】
前記三官能性アミンが、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)である、請求項9に記載のポリマー性媒体。
【請求項11】
前記固体支持体が、請求項1~5に記載の抗A及び抗B血液型抗原リガンドなどの各種のアミノ基含有リガンドのカップリングのために使用される官能基として、部分未反応アルデヒド基を含有する、請求項1~10のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
【請求項12】
前記血液型A抗原リガンドが、リンカーアームとNH
2官能基を有する四糖を含む、請求項1に記載のポリマー性媒体。
【請求項13】
前記血液型B抗原リガンドが、リンカーアームとNH
2官能基を有する四糖を含む、請求項1に記載のポリマー性媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
[0001]本発明は、2018年12月5日出願の米国特許出願第62/775,476号に基づく優先権を主張し、前記出願の開示内容は引用によってその全文を援用する。
【0002】
政府権利
[0002]本発明は、米国陸軍医学研究・資材司令部(U.S. Army Medical Research and Materiel Command)によって授与された契約第W81XWH-17-C-0053号の下、政府支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
[0003]本発明は、天然又は合成化合物のバイオコンジュゲーションにより、その個別成分の組合せ特性を有する、特に個別成分に優る増強特性を有する新規複合体を形成する分野に関する。架橋剤及び修飾剤を適用すれば、化合物を固体支持体に結合させることができる。
【背景技術】
【0004】
[0004]血液中又は血漿中の抗体が4種類の血液型、A、B、AB及びOを定義付けている。その特徴付けは、抗原A及びBを遺伝的に持っているか否かで決定される。抗体は、個々人自身のRBC上に存在する抗原とは異なるRBC抗原と交差反応できる。交差反応は命取りになりうるので、輸血においては重要である。
【0005】
[0005]現在、ヒトの血漿/血液から抗A及び抗B抗体を削減するためのいくつかの市販製品は、Glycobar-A及びGlycobar-B(Elicityl社、フランス)、Glycosorb-ABO装置(Glycorex Transplantation AB社、スウェーデン)などである。Glycosorb(登録商標)ABO(Glycorex Transplantation社、スウェーデン)及びBiosynsorbカラム(現在入手不可)は、ビーズに結合させたA及びB抗原の三糖末端を含有しており、ABO不適合移植のために、臓器から抗A及び抗B抗体を削減するために臨床的に使用されていた(Genberg H,G Kumlien L Wennberg,G Tyden. ABO不適合腎移植における抗A/B抗体の抗原特異的免疫吸着の有効性とリバウンド(The efficacy of antigen-specific immunoadsorption and rebound of anti-A/B antibodies in ABO-incompatible kidney transplantation).Nephol Dial Transplant.2011.2394-2400,以後“Genberg 2011”)。Glycosorb(登録商標)ABO装置は、1回の通過(シングルパス)で最大30%のA/B IgM及び20%のA/B IgGレベルの除去が可能である(Kannabhiran D,Everly MJ,Walker-McDermott JK,Tiongko S,Friedlander R,Putheti P,Sharma V,Dadhania D.抗体媒介性拒絶反応のためのボルテゾミブ療法後のドナー特異的抗HLA抗体のIgGサブクラスの変化(Changes in IgG subclasses of donor specific anti-HLA antibodies following bortezomib-based therapy for antibody mediated rejection).Clinical Transplants 2012:229-235] PMID:23721027,以後“Kannabhiran 2012”)。また、最近出願された米国特許出願第US2017/0066839 A1号(Merck Patent GmbH社、ドイツ)には、新規アフィニティークロマトグラフィー媒体に基づく抗A及び抗B抗体の除去が記載されている。
【0006】
[0006]上記すべての商品は、適切な血液型抗原A又は血液型抗原Bタイプのリガンドと結合させた天然(セルロース)又は合成ポリマー(ポリアクリレート)材料に基づいている。
【0007】
[0007]普遍的に供与可能な血漿を提供するため又は供与された全血の適合性を拡大するために、抗原A及びBを除去するための改良された方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願第US2017/0066839 A1号
【非特許文献】
【0009】
【文献】Genberg H,G Kumlien L Wennberg,G Tyden.Nephol Dial Transplant.2011.2394-2400
【文献】Kannabhiran D,Everly MJ,Walker-McDermott JK,Tiongko S,Friedlander R,Putheti P,Sharma V,Dadhania D.Clinical Transplants 2012:229-235] PMID:23721027
【発明の概要】
【0010】
[0008]一部の態様において、本発明は、ヒトの血漿から抗A抗体及び抗B抗体の一つ又は両方を除去するための修飾天然多糖に基づくポリマー性媒体に関し、該媒体は、
(i)血液型A抗原リガンドを結合させたポリマー性固体支持体であって、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷(ligand loading)で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定であるポリマー性固体支持体、及び
(ii)血液型B抗原リガンドを結合させたポリマー性固体支持体であって、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定であるポリマー性固体支持体
の一つ又は両方を含む。A抗原リガンドとB抗原リガンドは、同じ支持体上にあっても又は別の支持体上にあってもよい。
【0011】
[0009]一定の態様において、血液型A抗原リガンドは抗A-O-NH2又は抗A-S-NH2である。他の態様において、血液型B抗原リガンドは抗B-O-NH2又は抗B-S-NH2である。
【0012】
[0010]ポリマー性媒体は、第一のポリマー性固体支持体に結合された血液型A抗原リガンドと、第二の固体支持体に結合された血液型B抗原リガンドを含みうる。あるいは、両抗原とも同じ支持体に結合されていてもよい。
【0013】
[0011]任意の適切な材料が固体支持体として使用できる。これらの材料は、セルロース、デキストラン、デンプン、アガロース、及びキトサンの内の少なくとも一つを含むものなどである。一部の固体支持体はビーズ形態の官能性多糖で、ビーズサイズ範囲45-1,000umである。そして細孔サイズは無孔性から1-20,000オングストローム孔径までの範囲である。一部の態様において、ビーズサイズは45-800umである。一定の固体支持体は、NaIO4酸化と、その後の適切なジ、トリ又はポリアミンによる二次的架橋で官能化されている。
【0014】
[0012]一部の態様において、架橋多糖ベースのビーズ材料は、ペプチド、タンパク質、糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質及び薬物を含む天然又は合成化合物で官能化されている。
【0015】
[0013]一定の態様において、固体支持体は分解に対して安定化され、二、三、四又は多官能性第一又は第二アミンによる部分架橋で媒体の広いpH範囲(1-14)下で安定化されている。一つの好適な三官能性アミンは、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)である。
【0016】
【0017】
[0014]一部の態様において、固体支持体は部分未反応アルデヒド基を含有する(NaIO4酸化と二次的架橋後)。そのような基は、本明細書中に記載の抗A及び抗B血液型抗原リガンドのような様々なアミノ基含有リガンドのカップリングに使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[0015]本発明は、架橋多糖ベースのビーズ材料(デキストラン、セルロースなど)の、天然又は合成化合物による特異的官能化に関する。例示的化合物は、これらに限定されないが、ペプチド及びタンパク質、糖及び多糖、ヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド、脂質ならびに薬物である。複合リガンドの提示は、体液及びその他の複合溶液から、免疫グロブリン、リポ多糖及び微小胞(マイクロベシクル)のような大型分子を認識及び又は吸着するための重要な因子である。好適でない手段による軟質又は固体支持体へのバイオコンジュゲーションは、リガンド活性の喪失を招く恐れがある。リガンド活性は、選択された支持体マトリックス、リンカー、リガンド密度、官能化条件及びその他の因子に依存する。担体又は固体支持体マトリックスの適切な選択は、立体特異的吸着の適用成功にとって決定的に重要である。さらに、担体は、その用途にふさわしい適切な特徴を有していなければならない。例えば、多孔度(多孔性又は無孔性)、リガンド結合の安定性;寸法安定性、すなわち、圧力、温度及び媒体の変化後の物理的形状の保持;ならびに微生物攻撃に対する抵抗性などの特徴である。
【0019】
[0016]生物学的リガンドを固体表面に共有結合するための技術は当該技術分野で周知であるが、これらの方法がすべてのリガンドにうまく適合するわけではない。多糖リガンドの認識は、例えば、これらに限定されないが、炭水化物の間隔及び配向、リンカーの長さ及び柔軟性、ならびにリガンド密度といった提示の特徴に敏感である。架橋多糖をベースにしたビーズへの固定化時に使用される条件に敏感なリガンド構造の例をスキーム1に示す。これらの官能性四糖(テトラオース)はGlycobar(フランス系企業)によって提供されており、赤血球表面に見出される天然六糖の長さに近いリンカーアームを有する血液型A及びB抗原四糖を表す。個人の血液型は、赤血球表面上の糖脂質に結合した特異的A及びB炭水化物構造から誘導されたABO抗原系によって決定される。個人は、自分の持っていない血液型に対して抗A又は抗B免疫グロブリンを生ずるので、輸血されると異型輸血レシピエントのRBCの溶血を招きうる。AB型血漿を有する個人は、A又はB抗原のいずれにも抗体を生じないので、AB型血漿は任意のABO血液型の個人に輸血できる。AB型血漿は供給が限られているので、A、B及びO型ドナーの血漿及び血液から抗A及び抗B抗体を除去するのが望ましい。最適には、装置は、溶血、又は凝固もしくはファウリング(目詰まり)が起きないように生体適合性でなければならず、そして抗A及び抗B血液型抗体が効率的に血液及び血漿から除去される一方で、凝固因子及びアルブミンなどの有益物質は保持されるように特異的でなければならない。そのような装置は、輸血ロジスティクスを簡素化し、安全防護コストを削減し、そしてABO不適合によって引き起こされる過誤を排除するので有益である。
【0020】
[0017]スキーム1に、リンカーアームとNH2官能基を有する官能化血液型A及びB抗原四糖を示す。
【0021】
【0022】
[0018]現在、ヒトの血漿/血液から抗A及び抗B抗体を削減するためのいくつかの市販製品は、Glycobar-A及びGlycobar-B(Elicityl社、フランス)、Glycosorb-ABO装置(Glycorex Transplantation AB社、スウェーデン)などである。Glycosorb(登録商標)ABO(Glycorex Transplantation社、スウェーデン)及びBiosynsorbカラム(現在入手不可)は、ビーズに結合させたA及びB抗原の三糖末端を含有しており、ABO不適合移植のために、臓器から抗A及び抗B抗体を削減するために臨床的に使用されていた(Genberg 2011)。Glycosorb(登録商標)ABO装置は、1回通過(シングルパス)で最大30%のA/B IgM及び20%のA/B IgGレベルの除去が可能である(Kannabhiran 2012)。また、最近出願された米国特許出願第US2017/0066839 A1号(Merck Patent GmbH社、ドイツ)には、新規アフィニティークロマトグラフィー媒体に基づく抗A及び抗B抗体の除去が記載されている。
【0023】
[0019]上記すべての商品は、適切な血液型抗原A又は血液型抗原Bタイプのリガンドと結合させた天然(セルロース)又は合成ポリマー(ポリアクリレート)材料に基づいている。
【0024】
[0020]本明細書において、架橋デキストラン又はセルロースベースビーズの官能化、安定化及び適切なテトラオースとの還元的アミノ化法を使う又は使わないカップリングについて記載する。代表的な化学変換をスキーム2、3及び4にまとめた。
【0025】
[0021]本発明において、我々は、デキストラン又はセルロースベースのビーズ(多官能性アミンを用いた二次的架橋で安定化されている)の製造法と、抗A及び抗B四糖を固定化し、その後ヒトの血漿又は全血から抗A及び抗B抗体を除去するためのその使用を開示する。これらの実施例は様々な提示の影響を示している。
【0026】
マトリックスベース:デキストラン
【0027】
【0028】
[0022]架橋デキストランの酸化と、その後の少量の任意の多官能性第一アミン、例えばトリス-(2-アミノエチル)-アミン(TREN)による二次的架橋は、アルカリ条件下で安定な、そして血液型A及び/又はBテトラオースとの更なるカップリングが可能なビーズを提供する。末端NH2基を含有するテトラオースのカップリングは、架橋され酸化されたデキストランのアルデヒド基と血液型A又はBテトラオースのアミノ含有アームとの反応中に形成されるイミノ基(>C=N-)をホウ化水素で還元する工程を使わずに実施できる。
【実施例】
【0029】
実施例1.架橋デキストランビーズの酸化及び二次的架橋:CY18099ベースポリマービーズ(200-600um)の合成
[0023]架橋デキストラン(Aldrich材料、ビーズサイズ:100-300um)50.0gを水中に懸濁し、約600mLのゲルを形成させた。この架橋デキストランヒドロゲル(600mL)をNaIO4(150g)と200mLの脱イオン水(DI H2O)で処理する(1Lガラス反応器、機械的撹拌器付き)。反応時間:25℃で2時間。反応完了後、形成されたビーズを5×1Lの脱イオン水(DI H2O)で洗浄する。得られたヒドロゲルビーズの収量は約400mL。酸化された架橋デキストランビーズ(400mL)を100mLの脱イオン水(DI H2O)中に溶解された4mmol(約0.6g)のTRENで処理する。反応時間:25℃で60分。反応完了後、帯黄色ビーズを再度5×500mLの脱イオン水(DI H2O)で洗浄し、ふるいにかける(200-600umサイズ)。酸化とTRENによる二次的架橋でデキストランビーズの体積は拡張する。最終CY18099ビーズの収量は約300mL(200-600um)。
【0030】
実施例2.CY18130の合成:血液型A:抗A-S-NH2リガンドとCY18099のカップリング
[0024]CY18099ポリマービーズ(5mL、湿潤、200-600um)と、pH=7.4のPBS緩衝液30mL中に溶解されている血液型Aテトラオース:抗A-S-NH2(15mg)を50mLガラスバイアル中で混合する。反応時間:25℃で24時間。反応完了後、ビーズを5×50mLの脱イオン水(DI H2O)で洗浄し、最終的に生理食塩水に入れる。血液型Bの抗B-S-NH2を用いることによってCY18131ポリマービーズも合成する(CY18130と同じ方法で)。
【0031】
マトリックスベース:セルロース
[0025]セルロースベースのビーズは少なくとも二つの方法で製造される。最初はセルロース粉末の直接酸化による。
【0032】
1).DI水中に懸濁されたセルロース粉末のNaIO4による直接酸化と、その後のTRENリガンドによる二次的架橋
【0033】
【0034】
実施例3.CY18074ポリマービーズの製造:セルロース(微結晶性、20um粉末、Aldrich社製)を、20gのNaIO4を含有する200mLのDI水中に懸濁する。ビーズ形成時間:室温で48時間。ビーズをDI水で洗浄し(5×300mL)、45-600umサイズのふるいにかける。50mLのDI水中に懸濁された10mLの酸化セルロースビーズを20mlのTREN溶液(0.05mmol/mL)と室温で2時間反応させる。架橋ビーズをDI水で洗浄する(5×100mL)。
【0035】
2).セルロース架橋ビーズを逆エマルション技術(架橋剤としてエピクロルヒドリンを使用)を用いて製造後、NaIO4による酸化とTRENリガンドによる二次的架橋
【0036】
【0037】
実施例4.CY18075の合成:血液型A:抗B-S-NH2リガンドとCY18074のカップリング
[0026]CY18074ポリマービーズ(5mL、湿潤、200-600um)と、pH=7.4のPBS緩衝液30mL中に溶解されている血液型Bテトラオース:抗B-S-NH2(20mg)を50mLガラスバイアル中で混合する。反応時間:25℃で24時間。反応完了後、ビーズを5×50mLの脱イオン水(DI H2O)で洗浄し、最終的に生理食塩水に入れる。血液型A:抗A-S-NH2を用いることによってCY18082ポリマービーズも合成する(CY18075と同じ方法で)。
【0038】
実施例5.CY18208セルロースCLビーズの製造:
[0027]40gのNaOHと16.5gのチオ尿素の200mL DI水中溶液を1Lガラス反応器(機械的撹拌器付き)に入れた。セルロース(Aldrich社製)粉末を加える。セルロースの溶解後(8℃、200rpm、4時間)、有機相(構成:100mLのトルエン、170mLのイソオクタン、30mLのエピクロルヒドリン及び2.5gのSpan 80)を加え(8℃、200rpm)、エマルションを70℃で16時間加熱する。反応完了後:有機相を除去し、形成された白色ビーズを3×300mLのDI水で洗浄し、続いて2×300mLのイソプロパノールで洗浄し、最後に2×300mLのDI水で洗浄する。ビーズを100-600umでふるいにかける。収量は約120mL(湿潤)。このようにして製造されたセルロースCLビーズ50mLを、15gのNaIO4の200mLのDI水中溶液(3滴の濃H2SO4含有、pH約3.5)で酸化する。酸化時間:室温で24時間。ビーズを10×200mLのDI水で洗浄し、過剰のNaIO4と副産物を除去する。酸化ビーズの収量:約30mL。30mLの酸化セルロースCLビーズをTRENの水中溶液(0.05mmol/mlTREN溶液10mL)で、室温で1時間処理する。帯黄色ビーズを水(DI)で洗浄し、アルデヒド基を含有する約15mLのCY18208ベースポリマーを得る。
【0039】
実施例6.CY18277の合成:還元的アミノ化法を用いる血液型Aテトラオース:抗A-S-NH2リガンドとCY18208のカップリング
[0028]CY18208ポリマービーズ(5mL、湿潤、100-600um)と、pH=7.4のPBS緩衝液20mL(3mg/mLのNaBH3CN含有)中に溶解されている血液型A:抗A-S-NH2リガンド(15mg)を50mLガラスバイアル中で混合する。反応時間:25℃で16時間。反応完了後、ビーズを5×50mLの脱イオン水(DI H2O)で洗浄し、生理食塩水に入れる。CY18276ポリマービーズも抗B-S-NH2リガンドを用いてCY18277と同様に製造する。
【0040】
実施例7.ポリマー性媒体の使用による全血からの抗A及び抗B抗体の除去
[0029]全血から抗A及び抗B抗体を除去するためにも使用されるデキストラン又はセルロース(ビーズ形態)マトリックスに基づくポリマーの例は、スキーム5に描かれているポリマーを含むが、これらに限定されない。これらの特別なポリマーは、過ヨウ素酸ナトリウムによる多糖ビーズの酸化と、その後のビーズ表面へのアミノ官能性血液型A及びBテトラオースの直接カップリングを用いて官能化される(還元的アミノ化又は二次的架橋を使用しない)。
【0041】
【0042】
[0030]血液型抗体の≧88%除去を示した、スキーム2、3、4に記載のCytoSorbentsポリマー[血漿:ポリマー比16:1]:
【0043】
【0044】
全血を用いて試験されたCytoSorbentsポリマー:CY18006(Bリガンド)、CY18007(Aリガンド)。N=5。
【0045】
【0046】
[0031]CytoSorbentsポリマーを用いて血液から抗体を除去するための改変シングルパス法:
1.ヒト全血をクエン酸-リン酸-デキストロース中に採取し、5日以内に使用する。
【0047】
2.全血を周囲温度(22-25℃)にする。
3.15ml遠心管を使用し、湿潤ポリマーを0.5mlの境界線まで加える。0.9%生理食塩水を用いて体積を10mlにし、反転してポリマーを洗浄する。ピペットを用いて生理食塩水を除去する。8mlの全血を加える[血液:ポリマー比16:1]。
【0048】
4.穏やかに10回反転する。60秒間放置する。
5.50ミクロンポリエステルフィルター/ゴム製Oリング付きの30mlカットデバイスに血液-ポリマー混合物を加える。自然流下方式(gravity flow)により血液を濾過する。
【0049】
6.遠心分離により血液から血漿を分離。4000RPM、10分、Thermo Scientific Megafuge 16R使用。
7.血漿を新ラベル付き微小遠心管に移す。ゲルカード凝集アッセイにより抗体価を決定する。サンプルの抗体価は、凝集を伴う最小希釈として規定される。
【0050】
[0032]CytoSorbentsポリマーを用いて血漿から抗体を除去するための管法(tube-method)の手順
1.原料血漿を37℃の水浴中で解凍する。取り出し、乾燥させ、使用するまで室温に置いておく。
【0051】
2.2ml微小遠心管を使用し、湿潤ポリマーを0.25mlの境界線まで加える。0.9%生理食塩水を用いて体積を2mlにし、反転してポリマーを洗浄する。ピペットを用いて生理食塩水を除去し、生理食塩水を1mlの境界線まで加える。ポリマーを段階希釈して0.625mlにする。ピペットを用いて生理食塩水を除去する。1mlの血漿を加える[血漿:ポリマー比16:1]。
【0052】
3.TalBoys Microplateシェーカー(500RPM)を用い、室温で15分間、撹拌しながらインキュベートする。
4.遠心分離により血液から血漿を分離。4000RPM、10分、Thermo Scientific Megafuge 16R使用。
【0053】
5.血漿を新ラベル付き微小遠心管に移す。抗体価の決定後、サンプルを-80℃で凍結する。
血漿を用いて試験されたポリマー:上記表に掲載されているすべて。
【0054】
[0033]ポリマーで処理された血漿から抗体価を決定するための、Ortho Clinical Diagnostics Gel Cardsを用いる試験手順
1.ガラス試験管を使用し、0.9%生理食塩水を用いて血漿を段階希釈する。希釈の程度は原料血漿のそれぞれについて経験的に決定されるべきである。
【0055】
2.ゲルカードを目視検査し、ホイルシールが損傷されていないことを確認する。各微小管内のマトリックスが無傷であり、液層で覆われていることを確認する。ゲルカードを優しく叩くことにより液層を再沈静化できる。
【0056】
3.各カードに、対応するサンプルと希釈係数をラベル付けする。
4.各試薬赤血球のバイアルを赤血球が完全に懸濁するまで優しく混合する。赤血球凝集物がバイアルの底に見えてはならない。
【0057】
5.50μLの赤血球試薬A又はBを微小管に加える。
6.50μLの血漿サンプルを加え、適切な希釈を適切な微小管に行う。
7.Ortho Workstationを用い、ゲルカードを37℃で15分間インキュベートする。
【0058】
8.Ortho Workstation Centrifugeを用い、予めセットされた条件(1032RPM、10分)でゲルカードを遠心分離する。
9.カードを手動で読み取り、抗体価を決定する。抗体除去効率は、試薬赤血球の凝集を伴う最小希釈として計算される。
【0059】
[0034]本明細書全体を通じて、用語は、別段の指示がない限り、関連分野の当業者が理解するようなそれらの通常の意味を与えられるものとする。しかしながら、誤解を回避するために、一定の用語の意味は具体的に定義又は明確化されている。
【0060】
[0035]本開示において、単数形の“a”、“an”及び“the”は、複数形の指示対象を含み、特定の数値への言及は、文脈が明らかに他の場合を指示していない限り、少なくともその特定の値を含む。従って、例えば、“(ある)材料”への言及は、当業者に公知のそのような材料及びその等価物の少なくとも一つへの言及等々である。
【0061】
[0036]値が記述子“約”の使用によって近似値として表現されている場合、その特定値は別の態様を形成することは理解されるであろう。一般に、“約”という用語の使用は、開示されている主題によって得ようとしている所望の特性に応じて変動しうる近似値を示しているので、それが使用されている特定の文脈の中で、その機能に基づいて解釈されるべきである。当業者であれば、これを日常的なこととして解釈できるであろう。一部の場合においては、特定の値に使用されている有効数字の桁数が、“約”という用語の範囲を決定する一つの非制限的方法になることがある。他の場合においては、一連の値で使用される漸次的移行(グラデーション)が、各値の“約”という用語の利用できる意図的範囲を決定するために使用されることもある。
【0062】
[0037]存在する場合、すべての範囲は包括的かつ結合可能である。すなわち、範囲の中で記述されている値への言及は、終点値を含め、その範囲内のあらゆる値を含む。
[0038]リストが提示されている場合、特に明記しない限り、そのリストの各個別要素及びそのリストのあらゆる組合せは、別個の態様として解釈されるべきであることは理解されるはずである。例えば、“A、B、又はC”として提示される態様のリストは、態様“A”、“B”、“C”、“A及びB”、“A及びC”、“B及びC”、又は“A、B、及びC”を含むと解釈されるべきである。
【0063】
[0039]明確にするために本明細書中の別個の態様の文脈で記載されている本発明の一定の特徴は、単一の態様において組み合わせて提供されてもよいことは理解されるはずである。すなわち、明らかに不適合であるか又は具体的に除外されない限り、各個別の態様は任意のその他の可能な態様(一つ又は複数)と組合せ可能であると考えられ、そのような組合せは別の態様と見なされる。反対に、簡潔にするために単一の態様の文脈において記載されている本発明の様々な特徴は、別個に又は任意の副次的組合せで提供することもできる。さらに、態様が一連の工程の一部又はより一般的な構造の一部として記載されることもあるが、各前記工程又は部分はそれ自体で独立した態様と見なすことも可能である。
以下に、出願時の特許請求の範囲の記載を示す。
[請求項1]
ヒトの血液又は血漿から抗A抗体及び抗B抗体の一つ又は両方を除去するための修飾天然多糖に基づくポリマー性媒体であって、該媒体は、
(i)血液型A抗原リガンドを結合させたポリマー性固体支持体であって、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定である前記ポリマー性固体支持体、及び
(ii)血液型B抗原リガンドを結合させたポリマー性固体支持体であって、前記リガンドは前記固体支持体に1-5mg/mL固体支持体のリガンド負荷で結合され、そして前記媒体は生理的pH条件下で安定である前記ポリマー性固体支持体
の内の一つ又は両方を含む、前記ポリマー性媒体。
[請求項2]
血液型A抗原リガンドが、抗A-O-NH2又は抗A-S-NH2である、請求項1に記載のポリマー性媒体。
[請求項3]
血液型B抗原リガンドが、抗B-O-NH2又は抗B-S-NH2である、請求項1に記載のポリマー性媒体。
[請求項4]
第一のポリマー性固体支持体に結合された前記血液型A抗原リガンドと、第二の固体支持体に結合された前記血液型B抗原リガンドの両方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項5]
前記固体支持体に結合された前記血液型A抗原リガンドと、前記固体支持体に結合された前記血液型B抗原リガンドの両方を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項6]
前記固体支持体、第一の固体支持体及び第二の固体支持体が、セルロース、デキストラン、デンプン、アガロース、及びキトサンの内の少なくとも一つを含むポリマーを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項7]
前記固体支持体、第一の固体支持体及び第二の固体支持体が、ビーズ形態の官能性多糖を含み、ビーズサイズ範囲が45-1,000umであり、細孔サイズが無孔性から1-20,000オングストローム孔径までの範囲である、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項8]
前記固体支持体、第一の固体支持体及び第二の固体支持体が、NaIO4酸化と、その後の適切なジ、トリ又はポリアミンによる二次的架橋で官能化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項9]
架橋多糖ベースのビーズ材料が、ペプチド、タンパク質、糖、多糖、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質及び薬物を含む天然又は合成化合物で官能化されている、請求項7に記載のポリマー性媒体。
[請求項10]
固体支持体が分解に対して安定化され、二、三、四又は多官能性第一又は第二アミンによる部分架橋で前記媒体の広いpH範囲(1-14)下で安定化されている、請求項1~7のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。
[請求項11]
三官能性アミンが、トリス(2-アミノエチル)アミン(TREN)である、請求項10に記載のポリマー性媒体。
[請求項12]
固体支持体が、請求項1~5に記載の抗A及び抗B血液型抗原リガンドなどの各種のアミノ基含有リガンドのカップリングのために使用される官能基として、部分未反応アルデヒド基を含有する(請求項10に記載のNaIO4酸化と二次的架橋の後)、請求項1~11のいずれか1項に記載のポリマー性媒体。