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特許7576029電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電源装置とこの電源装置を備える電動車両及び蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/262 20210101AFI20241023BHJP
   H01M 50/291 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 50/293 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 50/209 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 50/264 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20241023BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20241023BHJP
   H01M 10/658 20140101ALI20241023BHJP
   H01M 10/6555 20140101ALI20241023BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20241023BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20241023BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241023BHJP
【FI】
H01M50/262 E
H01M50/291
H01M50/293
H01M50/209
H01M50/264
H01M50/249
H01M10/48 P
H01M10/625
H01M10/658
H01M10/6555
H01M10/647
H01M10/613
B60K1/04 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021528225
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023444
(87)【国際公開番号】W WO2020262080
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019122220
(32)【優先日】2019-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003225
【氏名又は名称】弁理士法人豊栖特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古上 奈央
(72)【発明者】
【氏名】高橋 宏行
【審査官】渡部 朋也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/042698(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/123903(WO,A1)
【文献】特開2018-204708(JP,A)
【文献】特開2013-097888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0335398(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
H01M 10/48
H01M 10/625
H01M 10/658
H01M 10/6555
H01M 10/647
H01M 10/613
B60K 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、
前記電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、
前記一対のエンドプレートに連結されて、前記エンドプレートを介して前記電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーとを備える電源装置であって、
前記セパレータが、
断熱シートと、
前記断熱シートの表面に積層してなる弾性層を備え、
前記弾性層が、
前記電池セルのケース表面に部分的に密着して、前記電池セルの膨張で変形する弾性突出部を有し、
前記電池セルと前記セパレータの間に前記電池セルに押圧されて前記弾性突出部が押圧方向と直する外周方向に移動する変形スペースを有し、
前記弾性突出部が、中央部を突出させ、両側の裾が前記電池セルの端縁に向かって延伸された状態で、前記電池セルに密着されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載される電源装置であって、
前記断熱シートが、無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材であることを特徴とする電源装置。
【請求項3】
請求項2に記載される電源装置であって、
前記無機粉末がシリカエアロゲルであることを特徴とする電源装置。
【請求項4】
請求項1ないしいずれかに記載される電源装置であって、
前記セパレータが、
前記断熱シートの両面に前記弾性層を積層してなることを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記弾性突出部が前記電池セルのケース表面に接合されてなることを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
前記弾性層が合成ゴム、熱可塑性エラストマー、発泡ウレタンから選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする電源装置。
【請求項7】
請求項1ないしのいずれかに記載する電源装置であって、
非圧縮状態における前記弾性層の厚さが、0.2mm以上であって3mm以下であることを特徴とする電源装置。
【請求項8】
請求項1ないしのいずれかに記載の電源装置を備える電動車両であって、
前記電源装置と、
該電源装置から電力供給される走行用のモータと、
前記電源装置及び前記モータを搭載してなる車両本体と、
前記モータで駆動されて前記車両本体を走行させる車輪と
を備えることを特徴とする電動車両。
【請求項9】
請求項1ないしのいずれかに記載の電源装置を備える蓄電装置であって、
前記電源装置と、
該電源装置への充放電を制御する電源コントローラと
を備え、
前記電源コントローラでもって、外部からの電力により前記池セルへの充電を可能とすると共に、該池セルに対し充電を行うよう制御することを特徴とする蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多数の電池セルを積層している電源装置と、この電源装置を備える電動車両及び蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電池セルを積層している電源装置は、電動車両に搭載されて車両を走行させるモータに電力を供給する電源、太陽電池等の自然エネルギーや深夜電力で充電される電源、停電のバックアップ電源に適している。この構造の電源装置は、積層している電池セルの間にセパレータを挟着している。セパレータは、電池セル間の熱伝導を断熱して、電池セルの熱暴走の誘発を抑制する。電池セルの熱暴走は、正極と負極が内部で短絡して発生する内部ショートや誤った取り扱い等で発生する。電池セルが熱暴走すると大量の熱を発生するので、セパレータの断熱性が充分でないと、隣接する電池セルに熱暴走を誘発する。電池セルの熱暴走が誘発されると、電源装置全体は極めて大きな熱エネルギーを放出して装置としての安全性を阻害する。この弊害を防止するために、積層する電池セルの間には断熱シートを積層している。
【0003】
断熱シートのセパレータを介して複数の電池セルを積層している電源装置は、充放電される状態で電池セルが膨張する。膨張する電池セルを定位置に配置するために、電池セルを積層している電池ブロックは、両端面に一対のエンドプレートを配置して、一対のエンドプレートをバインドバーで連結している。バインドバーとエンドプレートは、電池セルを相当に強い圧力で加圧状態に保持して、電池セルの相対移動や振動による誤動作を防止する。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-220117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池セルを加圧状態に固定している電源装置は、電池ブロックの両端面に一対のエンドプレートを配置して、両端面から相当に強い圧力で加圧状態に保持してバインドバーで連結している。この電源装置は、電池セルを強く加圧して固定して電池セルの相対移動や振動による誤動作を防止している。この電源装置は、たとえば、積層面の面積を約100cmとする電池セルを使用する装置において、エンドプレートを数トンもの強い力で押圧してバインドバーで固定している。この構造の電源装置は、隣接して積層される電池セルの熱伝導を遮断するために、断熱特性の優れたセパレータが使用される。優れた断熱特性のセパレータは、熱伝導を小さくする目的として制作されるので、電池セルの内圧が上昇して膨張する状態で、電池セルの膨張を吸収できない。このため、電池セルが膨張するとセパレータとの面圧が急激に高くなって、エンドプレートやバインドバーに極めて強い力が作用する。このため、エンドプレートとバインドバーには、極めて強靭な材質と形状が要求されて、電源装置が重く、大きく、材料コストが高くなる弊害がある。
【0006】
電源装置は、セパレータの全面にゴム状弾性シートを設け、このゴム状弾性シートを電池セルの全面に積層して電池セルの膨張を吸収できる。このセパレータは、電池セルに加圧されるゴム状弾性シートが薄く押されて電池セルの膨張を吸収する。この状態で電池セルの膨張を吸収するゴム状弾性シートは、体積が減少して電池セルの膨張を吸収するので、電池セルの膨張を無理なく吸収するのが難しい。
【0007】
本発明は、以上の欠点を解消することを目的に開発されたもので、本発明の目的の一は、加圧状態に固定される電池セルの膨張をスムーズに吸収できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る電源装置は、複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロック10と、電池ブロック10の両端面に配置してなる一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3に連結されて、エンドプレート3を介して電池ブロック10を加圧状態に固定してなるバインドバー4とを備えている。セパレータ2は、断熱シート5と、断熱シート5の表面に積層してなる弾性層6を備え、弾性層6が、電池セル1のケース表面に部分的に密着して、電池セル1の膨張で変形する弾性突出部6aを有し、電池セル1とセパレータ2の間に電池セル1に押圧されて弾性突出部6aが押圧方向と直交する外周方向に移動する変形スペース7を有している。また弾性突出部6aが、中央部を突出させ、両側の裾が電池セル1の端縁に向かって延伸された状態で、電池セル1に密着されている。
【0009】
本発明のある態様に係る電動車両は、上記電源装置100と、電源装置100から電力供給される走行用のモータ93と、電源装置100及びモータ93を搭載してなる車両本体91と、モータ93で駆動されて車両本体91を走行させる車輪97とを備えている。
【0010】
本発明のある態様に係る蓄電装置は、上記電源装置100と、電源装置100への充放電を制御する電源コントローラ88と備えて、電源コントローラ88でもって、外部からの電力により池セル1への充電を可能とすると共に、池セル1に対し充電を行うよう制御している。
【発明の効果】
【0011】
以上の電源装置は、加圧状態に固定される電池セルの膨張をセパレータで吸収して、電池セルが膨張してエンドプレートとバインドバーに過大な応力が作用するのを減少できる特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る電源装置の斜視図である。
図2図1に示す電源装置の垂直断面図である。
図3図1に示す電源装置の水平断面図である。
図4】セパレータと電池セルを示す斜視図である。
図5】セパレータと電池セルの積層状態を示す拡大断面図である。
図6】他の実施例に係るセパレータと電池セルの積層状態と示す拡大断面図である。
図7】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図8】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図9】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図10】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図11】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図12】セパレータの他の一例を示す一部拡大斜視図である。
図13】セパレータの他の一例を示す垂直断面図である。
図14】弾性層が変形する状態を示す要部拡大断面図である。
図15】エンジンとモータで走行するハイブリッド車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図16】モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示すブロック図である。
図17】蓄電用の電源装置に適用する例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明を詳細に説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分又は部材を示す。さらに以下に示す実施形態は、本発明の技術思想の具体例を示すものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0014】
本発明の第1の実施形態の電源装置は、複数の電池セルをセパレータを挟んで厚さ方向に積層してなる電池ブロックと、電池ブロックの両端面に配置してなる一対のエンドプレートと、一対のエンドプレートに連結されて、エンドプレートを介して電池ブロックを加圧状態に固定してなるバインドバーとを備える電源装置であって、セパレータが、断熱シートと、断熱シートの表面に積層してなる弾性層を備え、弾性層が、電池セルのケース表面に部分的に密着して、電池セルの膨張で変形する弾性突出部を有し、電池セルとセパレータの間に電池セルに押圧されて弾性突出部が押圧方向と直交する外周方向に移動する変形スペースを有している。
【0015】
以上の電源装置は、電池セルの内圧上昇による膨張をセパレータが無理なく吸収する。このため、膨張する電池セルを定位置に配置し、さらに電池セルが膨張する状態においても、エンドプレートやバインドバーに作用する応力を緩和できる。それは、セパレータが、断熱シートの表面に弾性層を設けて、この弾性層を電池セルのケース表面に部分的に密着して、電池セルの膨張で変形する弾性突出部と、この弾性突出部が電池セルに押圧されて押圧方向に直交する外周方向に移動する変形スペースとを設けているからである。
【0016】
セパレータは、断熱シートの全面に弾性のシートを積層して電池セルの膨張を吸収することもできる。この弾性シートは、電池セルの膨張で薄くなって電池セルの膨張を吸収するので、電池セルの膨張を体積の減少で吸収する必要がある。弾性シートの体積減少による変位量は、押圧力に対する変位量のコントロールが難しく、押圧力に対する変位量を最適に設定するのが難しい。
【0017】
以上の電源装置は、セパレータに設けている弾性層に、弾性突出部を設けると共に、弾性突出部が押圧されて変形する変形スペースとを設けている。この弾性突出部は、膨張する電池セルに押圧されると、変形スペースに押し出されて薄くなる。したがって、電池セルの全面に積層される弾性シートのように、密度変化のみで薄くなるのでなく、変形スペースに移動して薄くなるので、電池セルの膨張を無理なく吸収でき、さらに電池セルの膨張を吸収できる膨張吸収範囲をも大きくできる特長がある。
【0018】
以上の電源装置は、図14の拡大断面図に示すように、電池セル1が膨張して弾性層6の弾性突出部6aが押圧されると、矢印で示すように、弾性突出部6aの弾性体が変形スペース7に向かって移動する。弾性体は、圧縮されてほとんど体積が変化しない非圧縮性があるので、弾性突出部6aが薄く圧縮されると、弾性突出部6aからはみ出して、押圧方向に直交する方向に押し出されて変形スペース7に向かって移動する。変形スペース7に移動する弾性体は、弾性突出部6aを薄く変形させる。電池セルが膨張して、弾性突出部の弾性体を変形スペースに移動する電源装置は、電池セルの膨張をセパレータに効果的に吸収して、電池セルの位置ずれを防止し、エンドプレートとバインドバーの応力を緩和する。この電源装置は、エンドプレートのバインドバーの強度を低くして、損傷を防止できるので、エンドプレートとバインドバーを軽量化できる特長も実現する。
【0019】
また、以上の電源装置は、電池セルの膨張で弾性層が薄く変形するので、電池セルが膨張して相対位置がずれるのも抑制できる。隣接する電池セルの相対的な位置ずれは、電池セルの電極端子に固定している金属板のバスバーと電極端子とを損傷させる原因となる。弾性層が膨張する電池セルの相対的な位置ずれを阻止できる電源装置は、電池セルの膨張で電極端子とバスバーとの接続部の故障を防止できる。
【0020】
本発明の第2の実施形態の電源装置は、断熱シートが、無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材としている。
【0021】
以上の電源装置は、断熱シートの熱伝導率を小さくして、セパレータの断熱特性を向上し、さらに、弾性層が電池セルの膨張を吸収して、断熱シートのハイブリッド素材が加圧されて断熱特性が低下する弊害を抑制できる特長も実現する。
【0022】
本発明の第3の実施形態の電源装置は、無機粉末をシリカエアロゲルとしている。
【0023】
以上の電源装置は、断熱シートの熱伝導率を極めて小さくして、セパレータの断熱特性を著しく向上し、さらに、弾性層が電池セルの膨張を吸収して、断熱シートのシリカエアロゲルの断熱特性が加圧されて低下する弊害を抑制できる特長も実現する。
繊維強化材とシリカエアロゲルからなる断熱シートは、微細な無機粒のシリカエアロゲルの極めて低い熱伝導率によって、優れた断熱特性を示すが、無機流体のシリカエアロゲルを繊維隙間に充填しているので加圧されても厚さは変形しない。この断熱シートが電池セルの強い圧力で加圧されて圧縮応力が強くなると、無機粒のシリカエアロゲルは破壊されて断熱特性が低下する。シリカエアロゲルは、二酸化ケイ素(SiO2)の骨格と、90%~98%の空気で構成された微粒子で、強い圧縮応力が作用すると破壊されて熱伝導率が低下する。断熱シートの表面に積層している弾性層は、電池セルの圧力で薄く変形するので、電池セルが膨張して増加するシリカエアロゲルの圧縮応力を減少する。このため、膨張する電池セルが断熱シートを加圧してシリカエアロゲルを破壊するのを抑制して、断熱シートの優れた断熱特性を維持する。電池セルが膨張する状態においても、優れた断熱特性を維持するセパレータは、長期間にわたって隣接する電池セルを優れた断熱状態に保持して、電池セルの熱暴走が隣に誘発されるのを防止して、電源装置の安全性を長期間にわたって保障する。
【0024】
さらに、以上の電源装置は、電池セルが膨張する状態においては、断熱シートに積層している弾性層が薄く変形して、断熱シートの内部応力を減少させるので、断熱シート自体を圧力で変形する特別な構造とする必要がない。このため、圧力で押し潰されない断熱シートを使用しながら、シリカエアロゲルの破壊による断熱特性の低下を抑制できる。
【0025】
本発明の第4の実施形態の電源装置は、弾性層が、中央部が突出して電池セルに密着してなる弾性突出部を有している。
【0026】
以上の電源装置は、弾性層の弾性突出部が、膨張する電池セルに押圧されてよりスムーズに変形して電池セルの膨張を吸収できる特長がある。それは、弾性突出部のゴム状弾性体の移動量を少なくして、薄く押し潰される変異量を大きくできるからである。
【0027】
本発明の第5の実施形態の電源装置は、弾性層が複数の弾性突出部を有している。以上の電源装置は、弾性突出部を設ける配列を調整して、膨張する電池セルの膨張状態を最適な状態にコントロールできる特長がある。
【0028】
本発明の第6の実施形態の電源装置は、隣接する弾性突出部の間に設けてなる空隙を変形スペースとしている。以上の電源装置は、各々の弾性突出部をスムーズに変形させて、電池セルの膨張を吸収できる特長がある。
【0029】
本発明の第7の実施形態の電源装置は、セパレータが、断熱シートの両面に弾性層を積層している。
【0030】
本発明の第8の実施形態の電源装置は、弾性突出部が電池セルのケース表面に接合されている。以上の電源装置は、弾性突出部を位置ずれなく電池セルの表面に配置できる特長がある。
【0031】
本発明の第9の実施形態の電源装置は、弾性層を合成ゴム、熱可塑性エラストマー、発泡ウレタンから選ばれる少なくとも一つとしている。
【0032】
本発明の第10の実施形態の電源装置は、非圧縮状態における弾性層の厚さを、0.2mm以上であって3mm以下としている。
【0033】
(実施の形態1)
以下、さらに具体的な電源装置詳述する。
図1の斜視図と図2の垂直断面図と図3の水平断面図に示す電源装置100は、複数の電池セル1をセパレータ2を挟んで厚さ方向に積層している電池ブロック10と、電池ブロック10の両端面に配置している一対のエンドプレート3と、一対のエンドプレート3を連結してエンドプレート3を介して電池ブロック10を加圧状態に固定しているバインドバー4とを備える。
【0034】
(電池ブロック10)
電池ブロック10の電池セル1は、図4に示すように、外形を四角形とする角形電池セルで、底を閉塞している電池ケース11の開口部に封口板12をレーザー溶接して気密に固定して、内部を密閉構造としている。封口板12は、両端部に正負一対の電極端子13を突出して設けている。電極端子13の間には安全弁14の開口部15を設けている。安全弁14は、電池セル1の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出する。安全弁14は、電池セル1の内圧上昇を防止する。
【0035】
(電池セル1)
電池セル1は、リチウムイオン二次電池である。電池セル1をリチウムイオン二次電池とする電源装置100は、容量と重量に対する充電容量を大きくできる特長がある。ただし、電池セル1は、リチウムイオン二次電池以外の非水系電解液二次電池等、他の充電できる全ての電池とすることができる。
【0036】
(エンドプレート3、バインドバー4)
エンドプレート3は、電池ブロック10に押圧されて変形しない、電池セル1の外形にほぼ等しい外形の金属板で、両側縁にバインドバー4を連結している。バインドバー4は、エンドプレート3が積層している電池セル1を加圧状態で連結して、電池ブロック10を所定の圧力で加圧状態に固定している。
【0037】
(セパレータ2)
セパレータ2は、積層している電池セル1の間に挟まれて、電池セル1の膨張を吸収し、さらに隣接する電池セル1を絶縁し、さらに電池セル1間における熱伝導を遮断する。電池ブロック10は、隣接する電池セル1の電極端子13にバスバー(図示せず)を固定して、電池セル1を直列又は並列に接続している。直列に接続される電池セル1は、電池ケース11に電位差が発生するので、セパレータ2で絶縁して積層する。並列に接続される電池セル1は、電池ケース11に電位差は発生しないが、熱暴走の誘発を防止するために、セパレータ2で断熱して積層する。
【0038】
セパレータ2は、図4図5に示すように、断熱シート5の表面に弾性層6を積層している。断熱シート5は、無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材5Aである。無機粉末は、好ましくはシリカエアロゲルである。ハイブリッド素材5Aの断熱シート5は、繊維の隙間に熱伝導率の極めて小さいシリカエアロゲル等の無機粉末を充填している。また、断熱シート5は、上記ハイブリッド素材5A以外に、樹脂シートを用いることもできる。
【0039】
弾性層6は、加圧されて薄く弾性変形する弾性突出部6aを有する。さらに、弾性突出部6aの周囲に、電池セル1とセパレータ2の間に弾性突出部6aの弾性体6を移動させる変形スペース7を設けている。弾性層6は、電池セル1の加圧力で弾性突出部6aが弾性的に押し潰されて、電池セル1の膨張と収縮を吸収する。弾性層6は、電池セル1の膨張を吸収することに加えて、断熱シート5を過大な圧力から保護して、圧力による断熱特性の劣化を防止する。
【0040】
シリカエアロゲルと繊維強化材とのハイブリッド素材5Aからなる断熱シート5は、脆弱なシリカエアロゲルが圧縮されて破壊されると断熱特性が低下する。弾性層6は、電池セル1の膨張時におけるシリカエアロゲルの圧縮応力を減少して破壊を防止し、長期間にわたって断熱シート5の優れた断熱特性を保障して、電池セル1の熱暴走と熱暴走の誘発を防止する。
【0041】
(断熱シート5)
断熱シート5は、シリカエアロゲル等の無機粉末と繊維強化材とのハイブリッド素材5Aである。ハイブリッド素材5Aの断熱シート5は、ナノサイズの多孔質構造を有するシリカエアロゲルと繊維シートからなる。この断熱シート5は、シリカエアロゲルのゲル原料を、繊維に含浸して製造される。シリカエアロゲルを繊維シートに含浸した後、繊維を積層し、ゲル原料を反応させて湿潤ゲルを形成し、さらに湿潤ゲル表面を疎水化、熱風乾燥して製造される。繊維シートの繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)である。ただ、繊維シートの繊維は、難燃処理を施した酸化アクリル繊維やグラスウールなどの無機繊維も使用できる。
【0042】
断熱シート5の繊維シートは、好ましくは繊維径を0.1~30μmとする。繊維シートの繊維径を30μmより細くし、繊維による熱伝導を小さくして、断熱シート5の断熱特性を向上できる。シリカエアロゲルは、90%~98%を空気で構成している無機質の微粒子で、ナノオーダの球状体が結合したクラスタで形成される骨格間に微細孔があって、三次元的な微細な多孔性構造をしている。
【0043】
繊維シートとシリカエアロゲルからなる断熱シート5は、薄くて優れた断熱特性を示す。この断熱シート5は、電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーを考慮して、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止できる厚さに設定する。電池セル1が熱暴走して発熱するエネルギーは、電池セル1の充電容量が大きくなると大きくなる。したがって、断熱シート5の厚さは、電池セル1の充電容量を考慮して最適値に設定される。たとえば、充電容量を5Ah~20Ahとするリチウムイオン二次電池を電池セル1とする電源装置は、断熱シート5の厚さを0.5mm~2mm、最適には約1mm~1.5mmとする。ただし、本発明は断熱シート5の厚さを以上の範囲に特定するものでなく、断熱シート5の厚さは、繊維シートとシリカエアロゲルからなる熱暴走の断熱特性と、電池セル1の熱暴走の誘発を防止するために要求される断熱特性を考慮して最適値に設定される。
【0044】
(弾性層6)
セパレータ2は、図4図5に示すように、断熱シート5の表面に弾性層6を積層している。厚いセパレータ2は、各々の電池セル1の間に積層されて電池ブロック10を大きくする。電池ブロック10は小形化が要求されるので、セパレータ2はできる限り薄くして断熱特性が要求される。電源装置100において、容積に対して充電容量を大きくすることが要求されるからである。電源装置100は、電池ブロック10を小形化して充電容量を大きくするために、セパレータ2には、全体を薄くして、電池セル1の熱暴走の誘発を阻止することが大切である。このことから、弾性層6は、たとえば0.2mm以上であって2mm以下、さらに好ましくは0.3mm~1mm以下として、電池セル1の膨張による圧縮応力の増加を抑制する。さらに、弾性層6は、好ましくは断熱シート5よりも薄くしながら、電池セル1の膨張時の圧縮応力を低下させる。
【0045】
弾性層6は、非発泡の弾性体である。但し、非発泡の弾性体以外に、熱可塑性エラストマー、発泡ウレタンの弾性体でも良い。非発泡の弾性体からなる弾性突出部6aは、圧縮されて体積がほとんど変化しない非圧縮性によって、圧縮して押し潰された弾性体を変形スペース7に押し出して、弾性突出部6aを薄く変形する。弾性層6の弾性体は、好ましくは合成ゴム、熱可塑性エラストマー、発泡ウレタンである。合成ゴムは、耐熱限界温度を100℃以上とする合成ゴムが適している。この合成ゴムは、たとえば、シリコンゴム、フッ素ゴム、ウレタンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプロンゴム、ニトリルゴム、水素化ニトリルゴム、ホリイソブチレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレン酢酸ビニル共重合体ゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、熱可塑性オレフィンゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、ブチルゴム、ポリエーテルゴムなどが使用できる。
【0046】
とくに、フッ素ゴムとシリコンゴムは、耐熱限界温度が230℃と相当に高く、高温の電池セル1に加熱される状態でゴム状弾性を保持して、高温に発熱する電池セル1の膨張を安定して吸収できる特徴がある。さらにアクリルゴムの耐熱限界温度は160℃、水素化ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴムの耐熱限界温度が140℃と100℃以上であるので、電池セル1が高温に発熱する状態においても膨張を安定して吸収できる。
【0047】
図4ないし図13の断面図と斜視図は、弾性突出部6aと変形スペース7とを設けているセパレータ2を示している。図4図5のセパレータ2は、断熱シート5の中央部にひとつの弾性突出部6aを設けて、弾性突出部6aの周囲に変形スペース7を設けている。図6の断面図と、図7図10の斜視図に示すセパレータ2は、上下の端部を除く領域に複数の弾性突出部6aを設け、図11ないし図13のセパレータ2は、両側縁部を除く領域に弾性突出部6aを設けて、弾性突出部6aの間に変形スペース7を設けている。これ等のセパレータ2は、断熱シート5に積層している弾性層6に、中央部が山形に突出して電池セル1に密着している弾性突出部6aを設けている。これ等の弾性突出部6aは、中央部に電池セル1の当たり部6xを設けて、当たり部6xの外側を外周に向かって下り勾配に傾斜する形状としている。
【0048】
図4図5のセパレータ2は、当たり部6xを幅方向に伸びる帯状としている。このセパレータ2は、帯状である当たり部6xの上下幅を調整して、弾性突出部6aが電池セル1に密着する面積を調整できる。弾性突出部6aは、当たり部6xの上下幅を広くして、電池セル1のケース表面との面圧を低くでき、狭くして面圧を高くできる。図4図5のセパレータ2は、中央部に一列の弾性突出部6aを設けている。図7ないし図10のセパレータ2は、複数列の弾性突出部を平行姿勢に配置している。帯状の弾性突出部6aは、図に示すように幅方向に伸びる姿勢で、あるいは図11ないし図13に示すように、上下方向に伸びる姿勢で、あるいはまた、図示しないが格子状に設けることもできる。複数列の弾性突出部6aを設けるセパレータ2は、弾性突出部6aの間隔や高さを変更して、電池セル1のケース表面との接触圧を調整できる。また、各々の弾性突出部6aの形状、横幅、高さ等で、膨張する電池セル1の形状をコントロールすることもできる。
【0049】
図6のセパレータ2は、複数個の弾性突出部6aを局部的に点在させて配置する。このセパレータ2の弾性層6は、各々の弾性突出部6aの配列、大きさ、高さ等を調整して、膨張する電池セル1のケース表面の形状を最適なようにコントロールできる。図7ないし図13に示すように、複数列の弾性突出部6aを設けるセパレータ2は、弾性突出部6aの形状、配列、横幅、ピッチ、高さ等を調整して、膨張する電池セルのケース表面の形状を最適形状にコントロールできる。複数列のあるいは複数個の弾性突出部6aを設けているセパレータ2は、内圧が上昇して電池セルが膨張する形状を各々の弾性突出部6aでコントロールできるが、図9図10のセパレータ2は、上下部分の弾性突出部6aを高くして膨張を制限する形状とするので、電池セル1の膨張形状を上下部分を低くして、上下の中央部を高く突出する形状にできる。図11図12に示すように、上下方向に伸びる弾性突出部6aを設けているセパレータは、図13の断面図に示すように、弾性突出部6aの高さを上下部分で高く、中央部で低くして、電池セル1の膨張形状を上下部分を低く、上下の中央部を高く突出する形状にできる。図7ないし図12のセパレータ2は、複数列の弾性突出部6aの断面形状を、三角形の山形(図8図10図12)とし、あるいはアーチ状の山形(図7図9図11)として、膨張する電池セルで押し潰される状態をコントロールすることができる。弾性突出部6aは、三角形の山形として膨張する電池セルの押圧力に対する変形を大きく、アーチ状の山形として膨張する電池セルの押圧力に対する変形量を小さくできる。
【0050】
以上の電源装置100は、好ましくは全てのセパレータ2を、断熱シート5の両面に弾性層6を積層する構造とするが、必ずしも全てのセパレータ2を、断熱シート5の両面に弾性層6を積層する構造とする必要はない。セパレータは、図示しないが、断熱シートの片面に弾性層を積層することもできる。また、電源装置は、全てのセパレータを断熱シートと弾性層の積層構造とする必要はなく、断熱シートのみのセパレータと、断熱シートと弾性層の積層構造のセパレータとを混在して設けることもできる。
【0051】
弾性層6と断熱シート5は、接着層や粘着層を介して、あるいは二色成型を用いて接合して定位置に積層される。セパレータ2と電池セル1も接着層剤や粘着層を介して接合されて定位置に配置される。ただ、セパレータは、電池セルを嵌合構造で定位置に配置する電池ホルダー(図示せず)の定位置に配置することもできる。
【0052】
以上の電源装置100は、電池セル1を充電容量を6Ah~80Ahとする角形電池セルとし、セパレータ2の断熱シート5を、繊維シートにシリカエアロゲルを充填している厚さが1mmである「パナソニック製のNASBIS(登録商標)」とし、断熱シート5の両面に積層している弾性層6を弾性突出部6aの最大厚さが2mmのシリコンゴムとして、特定の電池セル1の内圧上昇による膨張を無理なく吸収できる。
【0053】
以上の電源装置は、電動車両を走行させるモータに電力を供給する車両用の電源として利用できる。電源装置を搭載する電動車両としては、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車やプラグインハイブリッド自動車、あるいはモータのみで走行する電気自動車等の電動車両が利用でき、これらの車両の電源として使用される。なお、車両を駆動する電力を得るために、上述した電源装置を直列や並列に多数接続して、さらに必要な制御回路を付加した大容量、高出力の電源装置100を構築した例として説明する。
【0054】
(ハイブリッド車用電源装置)
図15は、エンジンとモータの両方で走行するハイブリッド自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両HVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させるエンジン96及び走行用のモータ93と、これらのエンジン96及び走行用のモータ93で駆動される車輪97と、モータ93に電力を供給する電源装置100と、電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。車両HVは、電源装置100の電池を充放電しながらモータ93とエンジン96の両方で走行する。モータ93は、エンジン効率の悪い領域、例えば加速時や低速走行時に駆動されて車両を走行させる。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、エンジン96で駆動され、あるいは車両にブレーキをかけるときの回生制動で駆動されて、電源装置100の電池を充電する。なお、車両HVは、図15に示すように、電源装置100を充電するための充電プラグ98を備えてもよい。この充電プラグ98を外部電源と接続することで、電源装置100を充電できる。
【0055】
(電気自動車用電源装置)
また、図16は、モータのみで走行する電気自動車に電源装置を搭載する例を示す。この図に示す電源装置を搭載した車両EVは、車両本体91と、この車両本体91を走行させる走行用のモータ93と、このモータ93で駆動される車輪97と、このモータ93に電力を供給する電源装置100と、この電源装置100の電池を充電する発電機94とを備えている。電源装置100は、DC/ACインバータ95を介してモータ93と発電機94に接続している。モータ93は、電源装置100から電力が供給されて駆動する。発電機94は、車両EVを回生制動する時のエネルギーで駆動されて、電源装置100の電池を充電する。また車両EVは充電プラグ98を備えており、この充電プラグ98を外部電源と接続して電源装置100を充電できる。
【0056】
(蓄電装置用の電源装置)
さらに、本発明は、電源装置の用途を、車両を走行させるモータの電源には特定しない。実施形態に係る電源装置は、太陽光発電や風力発電等で発電された電力で電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。図17は、電源装置100の電池を太陽電池82で充電して蓄電する蓄電装置を示す。
【0057】
図17に示す蓄電装置は、家屋や工場等の建物81の屋根や屋上等に配置された太陽電池82で発電される電力で電源装置100の電池を充電する。この蓄電装置は、太陽電池82を充電用電源として充電回路83で電源装置100の電池を充電した後、DC/ACインバータ85を介して負荷86に電力を供給する。このため、この蓄電装置は、充電モードと放電モードを備えている。図に示す蓄電装置は、DC/ACインバータ85と充電回路83を、それぞれ放電スイッチ87と充電スイッチ84を介して電源装置100と接続している。放電スイッチ87と充電スイッチ84のON/OFFは、蓄電装置の電源コントローラ88によって切り替えられる。充電モードにおいては、電源コントローラ88は充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をOFFに切り替えて、充電回路83から電源装置100への充電を許可する。また、充電が完了し満充電になると、あるいは所定値以上の容量が充電された状態で、電源コントローラ88は充電スイッチ84をOFFに、放電スイッチ87をONにして放電モードに切り替え、電源装置100から負荷86への放電を許可する。また、必要に応じて、充電スイッチ84をONに、放電スイッチ87をONにして、負荷86への電力供給と、電源装置100への充電を同時に行うこともできる。
【0058】
さらに、電源装置は、図示しないが、夜間の深夜電力を利用して電池を充電して蓄電する蓄電装置の電源として使用することもできる。深夜電力で充電される電源装置は、発電所の余剰電力である深夜電力で充電して、電力負荷の大きくなる昼間に電力を出力して、昼間のピーク電力を小さく制限することができる。さらに、電源装置は、太陽電池の出力と深夜電力の両方で充電する電源としても使用できる。この電源装置は、太陽電池で発電される電力と深夜電力の両方を有効に利用して、天候や消費電力を考慮しながら効率よく蓄電できる。
【0059】
以上のような蓄電装置は、コンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用または工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機や道路用の交通表示器などのバックアップ電源用などの用途に好適に利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係る電源装置は、ハイブリッド自動車、燃料電池自動車、電気自動車、電動オートバイ等の電動車両を駆動するモータの電源用等に使用される大電流用の電源として好適に利用できる。例えばEV走行モードとHEV走行モードとを切り替え可能なプラグイン式ハイブリッド電気自動車やハイブリッド式電気自動車、電気自動車等の電源装置が挙げられる。またコンピュータサーバのラックに搭載可能なバックアップ電源装置、携帯電話等の無線基地局用のバックアップ電源装置、家庭内用、工場用の蓄電用電源、街路灯の電源等、太陽電池と組み合わせた蓄電装置、信号機等のバックアップ電源用等の用途にも適宜利用できる。
【符号の説明】
【0061】
100…電源装置、1…電池セル、2…セパレータ、3…エンドプレート、4…バインドバー、5…断熱シート、6…弾性層、6a…弾性突出部、6x…当たり部、7…変形スペース、10…電池ブロック、11…電池ケース、12…封口板、13…電極端子、14…安全弁、15…開口部、81…建物、82…太陽電池、83…充電回路、84…充電スイッチ、85…DC/ACインバータ、86…負荷、87…放電スイッチ、88…電源コントローラ、91…車両本体、93…モータ、94…発電機、95…DC/ACインバータ、96…エンジン、97…車輪、98…充電プラグ、HV、EV…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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