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7576039第IX因子バリアントおよび治療でのその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】第IX因子バリアントおよび治療でのその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 14/745 20060101AFI20241023BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20241023BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 38/36 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20241023BHJP
【FI】
C07K14/745 ZNA
C07K19/00
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K38/36
A61K48/00
A61K31/7088
A61K35/12
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021556439
(86)(22)【出願日】2020-03-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2020057400
(87)【国際公開番号】W WO2020187969
(87)【国際公開日】2020-09-24
【審査請求日】2023-03-15
(31)【優先権主張番号】19163619.0
(32)【優先日】2019-03-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521541826
【氏名又は名称】シーエスエル・イノベーション・プロプライエタリー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・クラー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・ヴァイマー
(72)【発明者】
【氏名】ワリッド・アザール
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・リント
(72)【発明者】
【氏名】マルコ・ホフマン
【審査官】小倉 梢
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/022844(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 14/00 - 14/825
C12N 15/00 - 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1の野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ配列番号1の野生型第IX因子の338位に対応する位置でVおよびTからなる群から選択されるアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子。
【請求項2】
配列番号1の野生型第IX因子の338位に対応する位置でアミノ酸Vを含む、請求項に記載の分子。
【請求項3】
半減期延長部分をさらに含む、請求項1または2に記載の分子。
【請求項4】
第IX因子バリアントポリペプチドと半減期延長部分との間に、切断可能なペプチドリンカーをさらに含む、請求項に記載の分子。
【請求項5】
配列番号11または2の第IX因子バリアントポリペプチドを含む、請求項1~のいずれか1項に記載の分子。
【請求項6】
配列番号11または2の第IX因子バリアントポリペプチド、配列番号8のリンカー、および配列番号9の半減期延長部分を含む、請求項1~のいずれか1項に記載の分子。
【請求項7】
第IX因子バリアントポリペプチドは、第IX因子バリアントポリペプチドの活性化バージョンである、請求項1~のいずれか1項に記載の分子。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1項に記載の分子をコードする核酸。
【請求項9】
請求項に記載の核酸を含むベクター。
【請求項10】
請求項に記載の核酸または請求項に記載のベクターを含む細胞。
【請求項11】
請求項1~のいずれか1項に記載の分子、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、または請求項10に記載の細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
薬物としての使用のための、請求項1~のいずれか1項に記載の分子、請求項に記載の核酸、請求項に記載のベクター、請求項10に記載の細胞、または請求項11に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第IX因子バリアント、バリアントを含む分子、バリアントをコードする核酸、バリアントまたはバリアントをコードする核酸を含む組成物、および止血の調節方法における、例えば、血友病B等の血液凝固障害の処置または予防におけるこれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト凝固第IX因子(FIX)は、凝固カスケードにおける重要な構成要素である。第IX因子をコードする遺伝子におけるある特定の機能喪失的改変により、第IX因子欠乏症が生じ、出血性障害である血友病B(クリスマス病としても既知である)が引き起こされ、一般的には第IX因子補充療法が必要となる。
【0003】
第IX因子は、分子量が57kDaである一本鎖糖ポリペプチドである。第IX因子は肝臓中で合成され、46アミノ酸(aa)のプレプロペプチドの切断後に血流中に分泌される。第IX因子は、415アミノ酸の不活性チモーゲンとして血流中を循環する。第IX因子は、N末端のGlaドメイン、続いて2つの上皮成長因子(EGF)ドメイン、活性化ペプチド、およびC末端のトリプシン型セリンプロテアーゼドメインを含む。血管が損傷すると、第IX因子は、35aaの活性化ペプチドのR145-A146およびR180-V181でのタンパク質分解により、第IX因子の活性型である第IXa因子へと変換され、N末端の軽鎖(aa1~145;18kDa)およびC末端の重鎖(aa181~415;28kDa)の2本のポリペプチド鎖が形成され、これらのポリペプチド鎖はジスルフィド架橋により繋がっている。この活性型第IX因子の血液凝固カスケードにおける役割は、Ca2+イオン、膜リン脂質、および第VIIIa因子との相互作用を介して第X因子をその活性型(第Xa因子)へと活性化することである。第Xa因子はプロトロンビンを切断し、それにより活性トロンビンが生じる。トロンビンはフィブリノーゲンをフィブリンへと変換し、このフィブリンが架橋して血栓が形成される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
血友病Bは、第IX因子の機能不全または欠損により引き起こされ、一般的には第IX因子補充療法、例えば、血漿からの第IX因子濃縮液または組換え型の第IX因子、を必要とする。現在の第IX因子補充療法の内のいくつかは、有効ではあるが、投与された第IX因子ポリペプチドの半減期が短いという欠点があり、そのために高用量での頻繁な静脈内注射が必要である。さらに、タンパク質補充には大量の第IX因子ポリペプチドが必要であり、コストがかかる可能性がある。したがって、生物学的特性が改善されている第IX因子ポリペプチドが必要とされている。具体的には、第IX因子活性の必要なレベルを達成するのに必要な第IX因子ポリペプチドの量を減少させることが望ましい。投与頻度を減少させること、即ち投与間隔を延ばすことも望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、野生型第IX因子ポリペプチドにおけるある特定のアミノ酸位置のアミン酸に対して、その位置に置換を有する第IX因子バリアントが、有利な特性を有し得、これにより、血友病B等の出血性障害の処置または予防に特に適していることを発見した。例えば、本発明の第IX因子バリアントは、野生型第IX因子ポリペプチドと比較して、さらには他の既知の第IX因子バリアントと比較して、高い凝固促進活性(「比活性」)を有し得る。より高い比活性は、野生型第IX因子または比活性がより低い他の第IX因子バリアントと同レベルの第IX因子活性を達成するために投与する必要がある第IX因子ポリペプチドの総量がより少ないため、予防および/または治療において有利であり得る。より高い比活性はまた、より迅速な治療反応を可能にする(例えば、急性出血エピソードを処置する場合)ことからも有利であり得る。さらに、比活性がより高い第IX因子バリアントは、遺伝子治療アプローチにおいて特に有用であり得、なぜならば、例えば、より低いウイルスベクター用量の投与が可能となり、それにより一部の対象で見られる抗ベクター免疫反応(例えば抗カプシド細胞性免疫)が減少するかまたは回避される可能性があり、それでも第IX因子活性の臨床的に有意なレベルが実現されるからである。
【0006】
さらに、本発明者らは、本発明の第IX因子バリアントが、第IX因子活性の増加の能力を維持しつつ、半減期延長剤に(例えば切断可能なリンカーを介して)連結されることも示した。したがって、そのような第IX因子バリアントは、インビボでのより長い機能性半減期と、活性化時のより高い凝固促進活性との両方を有し得る。このことは特に有利であり得、なぜならば、野生型第IX因子または他の第IX因子バリアントと同レベルの第IX因子活性を達成するために必要な第IX因子ポリペプチドの総量がより少なく、さらには必要な投与頻度がより少ない(各投与により、より長い期間にわたり第IX因子活性が増加した第IX因子ポリペプチドが提供されるため)からである。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、他の第IX因子バリアントおよび/または野生型第IX因子と比較して生物学的特性が改善されている第IX因子バリアントを提供する。特に、本明細書に記載されている第IX因子バリアントは、野生型第IX因子および/または他の第IX因子バリアントと比較して高い凝固活性(高い比活性)を有し得る。本発明はまた、インビボでの機能性半減期がより長い第IX因子バリアントをもたらす半減期延長剤に連結された第IX因子バリアントを含む分子も提供する。したがって、本発明の第IX因子バリアントまたはこれを含む分子は、血友病B等の出血性障害の予防または処置において特に有用である。この第IX因子バリアントまたはこれを含む分子は、典型的には、組換えポリペプチドである。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸H(ヒスチジン)を含むかまたは野生型第IX因子の338位に対応する位置でR(アルギニン)以外のアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子を提供する。したがって、本発明は、例えば、野生型第IX因子の338位に対応する位置でアミノ酸V(バリン)、T(スレオニン)、またはW(トリプトファン)を含み、例えばVまたはTを含み、特にVを含む分子を提供する。ポリペプチドの文脈での用語「アミノ酸」は「アミノ酸残基」と互換的に使用されることを当業者は理解するであろう。
【0009】
ナンバリングは、配列番号1で特定される野生型第IX因子でのアミノ酸位置を指す。例えば、「野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含む第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子」は、配列番号1の410位(この位置でアミノ酸Eを有する)に対応する位置でアミノ酸Hを含む第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子を指し、例えば、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1の410位でアミノ酸Hを含む。この特徴を示す別の方法は、例えば、「410H」または「E410H」である。
【0010】
本発明はまた、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でR以外のアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子も提供する。
【0011】
野生型第IX因子の338位に対応する位置のアミノ酸は、338位でアミノ酸Rを含む同一の配列を有する第IX因子ポリペプチドと比較して第IX因子バリアントポリペプチドの比活性を増加させる任意のアミノ酸であり得る。この比活性は、典型的には、インビトロでの凝固一段法、例えばaPTTアッセイを使用して決定され、他の方法が当業者に既知である。好ましい実施形態では、第IX因子活性は、典型的には実施例3に記載されているように、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して決定される。
【0012】
第IX因子バリアントポリペプチドの相対的な比活性は、338位でアミノ酸Rを有する同一の配列を有する第IX因子ポリペプチドと比較して少なくとも3倍または少なくとも4倍増加し得る(各ポリペプチドでは、410位に対応するアミノ酸はEである)。
【0013】
第IX因子バリアントポリペプチドの相対的な比活性は、338位でアミノ酸Rを有する同一の配列を有する第IX因子ポリペプチドと比較して少なくとも2.5倍、少なくとも3.0倍、または少なくとも3.5倍増加し得る(各ポリペプチドでは、410位に対応するアミノ酸はHである)。
【0014】
第IX因子バリアントポリペプチドの相対的な比活性は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でR以外のアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドを、410位でアミノ酸Eを有し、かつ338位でアミノ酸Rを有する同一の配列を有する第IX因子ポリペプチドと比較した場合に、少なくとも5倍、少なくとも6倍、または少なくとも7倍増加し得る。したがって、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でR以外のアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドの相対的な比活性は、野生型第IX因子(例えば配列番号1)と比較して少なくとも5倍、少なくとも6倍、または少なくとも7倍増加し得る。
【0015】
本第IX因子バリアントポリペプチドの相対的な比活性は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でR以外のアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドを、(i)410位でアミノ酸Hを有し、かつ338位でアミノ酸Rを有する同一の配列を有する第IX因子ポリペプチド、および(ii)410位でアミノ酸Eを有し、かつ338位でR以外のアミノ酸を有する同一の配列を有する第IX因子ポリペプチドのそれぞれと比較した場合に、少なくとも1.5倍増加し得る。
【0016】
したがって、一実施形態では、本分子は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み得、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、W、L、Y、またはE、例えばV、T、W、またはL、例えばV、T、またはW、例えばVまたはT、特にV、からなる群から選択されるアミノ酸を含み得る。
【0017】
他の実施形態では、野生型第IX因子の338位に対応する位置のアミノ酸は、RおよびL以外のアミノ酸である。
【0018】
例示的実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、およびWからなる群から選択されるアミノ酸を含む。
【0019】
別の実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、VおよびTからなる群から選択されるアミノ酸を含む。
【0020】
具体的な実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でアミノ酸Vを含む。
【0021】
具体的な実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でアミノ酸Tを含む。
【0022】
具体的な実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でアミノ酸Wを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、上に記載されている位置でのアミノ酸を有し、かつ配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。具体的な実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む。これらの実施形態の内のいずれかでは、第IX因子バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、即ち、第X因子を活性化し得る(即ち、第Xa因子を生成し得る)。
【0024】
具体的には、第IX因子バリアントポリペプチドは、上に記載されている位置でのアミノ酸を有し得、かつ配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有し得る。具体的な実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有する。特定の実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有する。これらの実施形態の内のいずれかでは、第IX因子バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、即ち、第X因子を活性化し得る(即ち、第Xa因子を生成し得る)。
【0025】
したがって、例示的実施形態は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、およびW(例えばVまたはT、特にV)からなる群から選択されるアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドであって、配列番号1に対して少なくとも70%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第IX因子バリアントポリペプチドである。
【0026】
別の例示的実施形態は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、およびW(例えばVまたはT、特にV)からなる群から選択されるアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドであって、配列番号1に対して少なくとも80%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第IX因子バリアントポリペプチドである。
【0027】
別の例示的実施形態は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、およびW(例えばVまたはT、特にV)からなる群から選択されるアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドであって、配列番号1に対して少なくとも90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第IX因子バリアントポリペプチドである。
【0028】
別の例示的実施形態は、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置で、V、T、およびW(例えばVまたはT、特にV)からなる群から選択されるアミノ酸を含む第IX因子バリアントポリペプチドであって、配列番号1に対して少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む第IX因子バリアントポリペプチドである。
【0029】
上述したように、これらの実施形態の内のいずれかでは、第IX因子バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、即ち、第X因子を活性化し得る(即ち、第Xa因子を生成し得る)。
【0030】
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドは、典型的には、天然に存在するアミノ酸で構成されている。しかしながら、1種またはそれ以上の天然には存在しないアミノ酸も存在し得る。
【0031】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性の百分率は、アラインされた場合に、このアミノ酸の百分率が、これら2つの配列の比較において同一であることを意味する。配列同一性の百分率は、338位および/または410位でのアミノ酸を除いて、アラインされた配列内の同一のアミノ酸の百分率として算出される。別の配列に対してx%の配列同一性を「有する」(または「有している」)配列とは、この配列がこの他の配列とx%同一であることを意味する。
【0032】
例えば、配列番号1の410位に対応する、第IX因子バリアントポリペプチド中のアミノ酸が、配列番号1中のこの位置のアミノ酸と異なるが、配列番号1の338位に対応する、第IX因子バリアントポリペプチド中のアミノ酸が、配列番号1中のこの位置のアミノ酸と同一である実施形態では、配列同一性の百分率は、アラインされた領域内のかつ410位でのアミノ酸を除いた、同一のアミノ酸の百分率として算出される。しかしながら、配列番号1の410位に対応する、第IX因子バリアントポリペプチド中のアミノ酸が、配列番号1中のこの位置のアミノ酸と異なり、かつ配列番号1の338位に対応する、第IX因子バリアントポリペプチド中のアミノ酸が、配列番号1中のこの位置のアミノ酸と異なる実施形態では、配列同一性の百分率は、アラインされた領域内のかつ410位および338位でのアミノ酸を除いた、同一のアミノ酸の百分率として算出される。
【0033】
第IX因子バリアントポリペプチドが、場合により切断可能なリンカーによって、半減期延長部分(例えばアルブミン)と連結されている(即ち、融合タンパク質である)か、またはいくつかの他のポリペプチドと連結されている実施形態では、配列番号1との配列同一性を決定する場合には、配列同一性を算出する目的のために、この分子の第IX因子バリアントポリペプチド部分のみが考慮され、即ち、この分子のあらゆるリンカーおよび半減期延長部分が除外される。このことは、例えばリンカーが第IX因子配列に由来する場合にも適用される。
【0034】
同様に、第IX因子バリアントポリペプチドが、完全長第IX因子ポリペプチドの1つまたはそれ以上の断片に相当する(例えば、第IX因子の活性型である)場合には、配列番号1との配列同一性を決定する場合に、配列番号1中に存在するが第IX因子バリアントポリペプチド中には存在しないあらゆる部分(例えば活性化ペプチド)は、配列同一性の算出の目的のために除外される。
【0035】
特定の実施形態では、338位および410位以外の第IX因子バリアントポリペプチド中の全ての残基は、野生型であり、即ち、338位および410位でのアミノ酸を除いて、配列番号1に対して100%の配列同一性である。
【0036】
いくつかの実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号11、12、13、または14、例えば配列番号11、12、または13、特に配列番号11または12で定義されている通りである。配列番号11は、第IX因子比活性が特に高い第IX因子バリアントポリペプチドを定義する。第IX因子バリアントポリペプチドはまた、配列番号11、12、13、または14、例えば配列番号11、12、または13の内のいずれか1つの生物学的に活性な断片でもあり得(即ち、第IX因子バリアントポリペプチドは凝固促進活性を有する、例えば活性型第IX因子)、かつ配列番号11、12、13、または14、例えば、配列番号11、12、または13の内のいずれか1つで定義されているアミノ酸338および410も包含し得る。この第IX因子バリアントはまたは、配列番号11、12、13、もしくは14(例えば配列番号11、12、もしくは13)またはこれらの配列番号の断片に対して少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有するポリペプチドでもあり得る。これらの実施形態の内のいずれかでは、第IX因子バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、即ち、第X因子を活性化し得る(即ち、第Xa因子を生成し得る)。
【0037】
本明細書に記載されている第IX因子バリアントは、バリアントを含み、さらには1つまたはそれ以上の追加部分を含む分子の一部であり得る。例えば、第IX因子バリアントポリペプチドは、半減期延長部分に連結されている。この半減期延長部分は、アルブミン(例えば組換えヒトアルブミン)、抗体のFc部分(例えばIgG Fc)、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(CTP)のC末端ペプチド、または非構造化組換えポリペプチド(例えばXTEN)等の別の様々なポリペプチドであり得る。本第IX因子バリアントはまた、ペグ化されている。本第IX因子バリアントは、これらの方法の内のいずれかで直接連結されているか、またはリンカーを介して連結されている。このリンカーは、切断可能なリンカーであり得、例えば、タンパク質分解により切断可能なリンカーであり得る。あるいは、切断不能なリンカーが使用される。
【0038】
あるいは、本発明の分子は、本明細書で提供される第IX因子バリアントポリペプチドからなり得、即ち、半減期延長部分等のあらゆる追加部分を含まない。本発明はまた、例えば遺伝子治療、例えば血友病Bの予防または処置における使用のための、本発明の第IX因子バリアントをコードするかまたはこの第IX因子バリアントを含む分子をコードする核酸も提供する。
【0039】
本発明はまた、この核酸を含むベクターも提供する。適切な例示的ベクターは、当業者に既知であり、かつアデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、プラスミド、およびレンチウイルスベクターからなる群から選択される。
【0040】
本発明の別の態様は、本発明の核酸またはベクターを含む細胞を含む。
【0041】
さらに、本明細書に記載されている第IX因子バリアント、核酸、ベクター、または細胞と、薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物が提供される。
【0042】
第IX因子バリアント、核酸、ベクター、または細胞は、精製形態で提供される。第IX因子バリアント、核酸、ベクター、または細胞は、単離形態で提供される。第IX因子バリアントポリペプチドは、翻訳後に改変される。
【0043】
本発明はまた、薬物としての使用のための、本明細書に記載されている第IX因子バリアント、これを含む分子、核酸、ベクター、細胞、または医薬組成物も提供する。
【0044】
例えば、本発明は、それを必要とする患者における対象の血液凝固障害の処置または予防の方法であって、この対象に、第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。そのような方法は、(例えば、出血を予防するために、減少させるために、または阻害するために)凝固促進活性が必要とされ、かつ血友病、特に血友病Bが挙げられるがこれに限定されない障害の予防または処置で有効である。したがって、本発明は、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病B(先天性第IX因子欠乏症)の患者における出血の処置または予防の方法を提供する。
【0045】
本発明はまた、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病Bの患者における出血の処置または予防における使用のための第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)も提供する。
【0046】
同様に、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病Bの患者における出血の処置または予防のための薬物の製造のための第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)の使用が提供される。
【0047】
処置または予防として、出血エピソードのオンデマンドコントロール、出血の周術期管理、および/または出血エピソードの頻度を防止するかもしくは減少させるための日常的な予防が挙げられ得る。例えば、処置として、出血エピソードのオンデマンドコントロールまたは出血の手術管理が挙げられ得る。予防として、出血エピソードの予防または出血エピソードの頻度の減少が挙げられ得る。
【0048】
対象は、典型的にはヒトである。対象は、成人または小児であり得る。対象は、健康な対象の血漿第IX因子活性と比較して、(予防または処置を伴わない)基礎的な血漿第IX因子活性が5%以下、4%以下、3%以下、2%以下、1~5%、または1%以下であり得る。
【0049】
処置または予防は、ヒト遺伝子治療等の遺伝子治療を含み得る。遺伝子治療は、典型的には、本発明の第IX因子バリアントをコードするかまたは第IX因子バリアントを含む分子をコードするベクター、例えばアデノ随伴ウイルスベクター、として投与される。
【0050】
同様に、本発明の第IX因子バリアントまたは第IX因子バリアントを含む分子を製造する方法であって、この分子が発現されるような条件下で細胞を培養することを含む方法が提供される。
【0051】
第IX因子バリアントポリペプチド
本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子のポリペプチド配列に由来する。バリアントは、野生型第IX因子での対応する位置とは1つまたはそれ以上のアミノ酸位置で異なり、即ち、バリアントは、野生型第IX因子での対応する位置と比較して1つまたはそれ以上のアミノ酸置換を有する。
【0052】
例えば、本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含み得、かつ野生型第IX因子の338位に対応する位置でR以外のアミノ酸を含み得る。本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子と比較して他の位置でアミノ酸置換をさらに含み得る。
【0053】
バリアントは、第IX因子の生物学的機能を有し、即ち、バリアントは、場合により、第IX因子バリアントポリペプチドが、活性化ペプチドの切除により、第IX因子バリアントポリペプチドの活性型(第IXa因子)へと変換された後に、第Xa因子を生成し得る。第IX因子の活性化切断は、例えば第XIa因子または第VIIa/TF因子により、インビトロで達成される。第IX因子活性を測定するための適切なインビトロでのアッセイは、当業者に既知である(例えば、aPTTアッセイ等の凝固一段法、発色アッセイ等)。インビトロでのaPTTベースの凝固一段法は、典型的には実施例3に記載されている第IX因子活性を決定するのに好ましいアッセイである。
【0054】
バリアントは、典型的には、バリアントが由来する野生型第IX因子ポリペプチドと比較して少なくとも1つの「機能獲得」アミノ酸置換の結果として、この野生型と比較して第IX因子比活性が増加しており、即ち、バリアントは「高活性」である。
【0055】
第IX因子バリアントポリペプチドは、任意の哺乳動物種の第IX因子ポリペプチド配列に由来し得る。特定の実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチドは、ヒト起源の第IX因子ポリペプチド配列に由来する。Gene ID:2158(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/gene/2158)、GenBank受託番号NM_000133.3(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/nuccore/NM_000133.3)、NP_000124.1(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/NP_000124.1?report=genpept)、およびUniProt entry P00740(https://www.uniprot.org/uniprot/P00740)は、野生型ヒト第IX因子のアミノ酸配列および/またはヌクレオチド配列の例を提供する。
【0056】
本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチドは、例えばヒト起源の成熟した(即ち、シグナルペプチドおよびプロペプチドを除いた)野生型第IX因子に由来し得、このアミノ酸配列は、配列番号1に示されている。このポリペプチド配列は、ヒト第IX因子の「アイソフォーム1」である。
【0057】
配列番号1のポリペプチドは、338位でアミノ酸Rを有し、かつ410位でアミノ酸Eを有する(本明細書でのアミノ酸への言及は、当該技術分野で公知である一文字コードを使用しており、例えば、「R」はアルギニンを表し、「E」はグルタミン酸を表す)。配列番号1中の338位および410位は、ペプチダーゼS1ドメイン中に存在する。338位および410位を、下記において太字でおよび下線を引いて示す。FIXa(活性型第IX因子)を形成するために切除される35個のaaの活性化ペプチドに下線を引いている。
【0058】
【化1】
【0059】
配列番号1のポリペプチドの例示的なポリヌクレオチドコード配列は、配列番号2に示されている。
【0060】
用語「野生型第IX因子のポリペプチド配列に由来する」(または同様の表現)は、第IX因子バリアントポリペプチドが、これら2つの配列がアラインされた場合に野生型第IX因子ポリペプチドとある程度の配列同一性を有することを意味する。例えば、第IX因子バリアントポリペプチドは、上に記載されているように、配列番号1に対して少なくとも70%等の配列同一性を有し得る。第IX因子バリアントポリペプチドは、生物学的に活性であり、即ち、第X因子を活性化し得る(即ち、第Xa因子を生成し得る)。
【0061】
用語「野生型第IX因子」は、天然に存在する第IX因子ポリペプチド配列を指し、即ち、この配列は、天然に存在するポリペプチド配列の配列と比較して人工的に改変されていない。このことは、天然に存在するポリペプチド配列中のアミノ酸はいずれも異なるアミノ酸に置換されていないことを意味する。配列番号1は野生型ポリペプチド配列の一例であるが、下記に例示するように、断片、切断物等もこの用語に包含される。例えば、末端アミノ酸の欠失または付加を含む改変されたN末端またはC末端を有するポリペプチドは、このポリペプチドが第IX因子活性を実質的に保持する限り、この用語に含まれる。この用語にはまた、第IX因子のあらゆる天然の多型バリアントも含まれる。例えば、33%の頻度で生じる一般的な天然多型バリアントは、配列番号1中のT148位に対応する位置でアラニン(A)を示す第IX因子ポリペプチドである。このT148A多型バリアントは、配列番号7に示されている。したがって、本明細書での配列番号1への全ての言及はまた、配列番号7も指し得る。
【0062】
第IX因子バリアントポリペプチドはまた、配列番号3に示されるように、シグナルおよび/またはプロペプチドを含む野生型第IX因子にも由来し得る。配列番号3は、シグナルペプチド(aa1~28)およびプロペプチド(aa29~46)の両方を含む。これは、当該技術分野では、ヒト第IX因子の前駆体またはプレプロペプチド第IX因子として既知である。プロペプチドを有するがシグナルペプチドを欠く第IX因子はまた、プロペプチド第IX因子としても既知である。配列番号3のポリペプチドをコードする例示的なポリヌクレオチドコード配列が、配列番号4に示されている。
【0063】
第IX因子バリアントポリペプチドはまた、野生型第IX因子の1つまたはそれ以上の断片にも由来し得、例えば、第IX因子の2つの断片を含む活性型第IX因子(配列番号1に示される介在「活性化ペプチド」を欠いている)に由来し得る。配列番号5および6はそれぞれ、ヒト活性型第IX因子の軽鎖および重鎖を示しており、これらは、ジスルフィド架橋により互いに保持されている。別例は、ヒト第IX因子のアイソフォーム2であり、これは、配列番号1の47~84位で38個のaaのストレッチを欠いている。
【0064】
あるいは、第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型第IX因子の切断物または融合体に由来し得る。
【0065】
したがって、第IX因子バリアントポリペプチドは、上に記載されている第IX因子の生物学的機能を維持する(即ち、機能的第IX因子バリアントポリペプチドである)限り様々な異なる形態を取り得る。したがって、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドは、野生型プレプロペプチド第IX因子、プロペプチド第IX因子、成熟第IX因子、活性型第IX因子、またはこれらの断片、切断物、融合体、アイソフォーム、多型バリアント等のバリアントであり得る。第IX因子のこれらの形態は全て、別途指示されない限り、本明細書では「第IX因子」と総称される。
【0066】
本明細書で行なわれているアミノ酸位置への言及は、配列番号1でのナンバリングとの比較であり、即ち、このアミノ酸位置は、配列番号1でのこの位置に対応するものである。このことは、例えば、第IX因子バリアントポリペプチドは、配列番号1に基づくが、さらに、第IX因子のプロペプチドおよびシグナルペプチド(共に46個のアミノ酸の長さであり、かつ配列番号1から欠失している)を含む場合には、例えば、「野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含む第IX因子バリアントポリペプチド」は、第IX因子バリアントポリペプチドが、バリアントポリペプチドの456(410+46)位でHを含むことを意味する。同様に、第IX因子バリアントポリペプチドは、第IX因子の活性型バージョン(配列番号1の35個のaaの活性化ペプチドを欠く)に基づく場合には、例えば、「野生型第IX因子の410位に対応する位置でアミノ酸Hを含む第IX因子バリアントポリペプチド」は、第IX因子バリアントポリペプチドが、バリアントポリペプチドの375(410-35)位でHを含み、この位置は、活性型第IX因子の重鎖の230位に対応する。当業者は、第IX因子バリアントポリペプチドのポリペプチド配列と配列番号1のポリペプチド配列とを比較してアライン部分を特定することにより、バリアント中の関連する位置を決定し得る。
【0067】
第IX因子バリアントポリペプチド(またはこれを含む分子)は、「単離」ポリペプチドまたは「精製」ポリペプチドとしても提供される。この用語は、本発明の単離核酸分子の発現により産生されるポリペプチドを指し得る。あるいは、この用語は、(例えば「実質的に純粋な」形態で存在するように)自然界では付随するであろう他のタンパク質から十分に分離されているタンパク質を指し得る。「単離」は、他の化合物もしくは物質との人工的混合物もしくは合成混合物を除外する意味ではないか、または基本的な活性を妨げずかつ例えば不完全な精製もしくは安定剤の添加に起因して存在し得る不純物の存在を除外する意味ではない。
【0068】
用語「実質的に純粋」は、目的の化合物(例えば、第IX因子バリアントポリペプチドまたはこれを含む分子)を少なくとも50~60重量%含み、特に、目的の化合物を少なくとも75重量%、または少なくとも90~99重量%、またはより多くを含む調製物を指す。純度を、目的の化合物に適した方法(例えば、クロマトグラフィー方法、アガロースまたはポリアクリルアミドゲル電気泳動、HPLC分析、および同類のもの)により測定し得る。
【0069】
本発明のいくつかの実施形態では、第IX因子バリアントは、下でより詳細に記載されるように、例えば遺伝子治療における使用のための核酸として提供される。そのような実施形態では、本明細書に記載されている第IX因子バリアントポリペプチドをコードする核酸が提供される。この核酸は、対象にウイルスベクターにより投与され、例えば、アデノウイルス随伴ベクターまたはレンチウイルスベクターにより投与される。同様に、遺伝子編集アプローチを使用して、本明細書に記載されている第IX因子バリアントポリペプチドを対象に提供し得る。
【0070】
本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチド(またはこれを含む分子、またはこれをコードする核酸、またはこれを含む医薬組成物)は、治療用であり得、即ち、血友病B等の第IX因子欠乏症の対象(例えばヒト)に投与された場合に、予防効果または治療効果を観察し得る。このことは、第IX因子活性の血漿レベルが少なくとも一時的に上昇し得ることを意味する。そのような予防効果または治療効果を、例えば、予防後または処置後の対象での血漿第IX因子活性を測定し、この活性と、予防前または処置前の対象での血漿第IX因子活性とを比較することにより決定し得る。予防後または処置後の第IX因子活性の増加は、予防効果または治療効果を示す。予防効果または治療効果はまた、予防後または処置後の第IX因子活性が、出血を予防するのに、減少させるのに、または阻害するのに十分な場合にも得られる。予防後または処置後の第IX因子活性は、病理学的範囲外であり得る。予防後または処置後の第IX因子活性は、正常なヒト血漿での第IX因子活性と同等であり得る。第IX因子活性を、当業者に既知の任意の第IX因子活性アッセイを使用して測定し得、例えば、aPTTアッセイを使用して測定し得る(aPTT値の減少は、第IX因子活性の増加を示す)。したがって、好ましい実施形態では、第IX因子活性を、典型的には実施例3に記載されているように、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して決定する。
【0071】
本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチド(またはこれを含む分子)は、好ましくは、対象(典型的にはヒト対象)中で非免疫原性である。このことは、このポリペプチドもしくはこれを含む分子の対象への投与後に、または対象中でのこのポリペプチドもしくは分子のインビボでの発現後に、この対象が、対応する野生型ポリペプチドに対して観察された免疫反応を超えて、バリアントポリペプチドまたは分子に対して測定可能な免疫反応(例えば中和抗体)を示さないことを意味する。しかしながら、あらゆるそのような免疫反応は、例えば副腎皮質ステロイドにより、必要に応じて回避されるかまたは処置される。免疫原性を評価するための試験は、当該技術分野で既知であり、例えば、参考文献1の実施例11である。
【0072】
第IX因子バリアントポリペプチドの製造
本発明の第IX因子バリアントポリペプチド(またはこれを含む分子)を、例えば実施例1に記載されている、当業者に周知の標準的な技術を使用して製造し得る。
【0073】
例えば、野生型第IX因子のcDNA配列(例えば配列番号2)を、標準的な変異誘発技術(例えば部位特異的変異誘発)を使用して、所望の第IX因子バリアントポリペプチドをコードする(例えば、野生型第IX因子の410位(この位置でアミノ酸Eをコードする)に対応する位置でアミノ酸Hをコードし、かつ野生型第IX因子の338位(この位置でアミノ酸Rをコードする)に対応する位置でアミノ酸Vをコードする)ように改変し得る。組換えタンパク質の産生を目的とするN末端リーダーペプチドは、天然の第IX因子リーダーペプチド(配列番号3に示されている)または当業者に既知の代替物をベースとして使用し得る。
【0074】
このcDNA配列を適切な発現プラスミドに挿入して、この組換え第IX因子バリアントポリペプチドを発現させ得る。このことを、典型的には、哺乳動物細胞(例えば、一時的発現用のHEK、または安定発現用のCHO細胞系統)を使用して実施するが、グリコシル化されかつ正確に折り畳まれたタンパク質を産生し得る他のタイプの細胞も使用し得る。続いて、この組換え第IX因子バリアントポリペプチドを、例えば陰イオン交換クロマトグラフィーを使用して精製し得る。
【0075】
この組換え第IX因子バリアントポリペプチドを、他の薬剤および/または薬学的に許容される担体と組み合わせ得る。この組換え第IX因子バリアントポリペプチドをまた、凍結乾燥させ得る。
【0076】
第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドは、それ自体で提供され、即ち、第IX因子バリアントポリペプチドにいかなる非第IX因子部分も連結されていることなく提供される。そのような実施形態では、「第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子」は、第IX因子バリアントポリペプチドからなる分子を指す。
【0077】
あるいは、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドは、バリアントを含み、さらには1つまたはそれ以上の追加部分を含む分子の一部として提供される。1つまたはそれ以上の追加部分は、典型的には第IX因子とは異なり、即ち、上記で定義されている第IX因子の生物学的機能を有しない(第Xa因子を生成する能力を有しない)。このことは、第IX因子の断片、例えば、第IX因子由来のポリペプチド配列の断片を含むが、それ自体では第IX因子の機能を有しないリンカー、が、そのような「1つまたはそれ以上の追加部分」であり得、即ち、第IX因子バリアントポリペプチドの一部ではないが、第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子の一部であり得ることを意味する。
【0078】
半減期延長部分およびリンカー
第IX因子バリアントポリペプチドを含む例示的な分子は、第IX因子バリアントポリペプチドが半減期延長部分に連結されている分子である。
【0079】
この半減期延長部分は、1つまたはそれ以上のポリペプチド(半減期延長ポリペプチド、HLEP)を含み得、例えば、アルブミンもしくは免疫ブロブリン、またはいずれかの断片もしくは誘導体を含み得る。一実施形態では、HLEPはアルブミンであり、例えば組換えヒトアルブミンである。別の実施形態では、HLEPは、抗体(免疫グロブリン)の断片であり、例えばFc断片であり、例えばIgG1 Fc等のIgG Fcである。あるいは、HLEPは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(CTP)のC末端ペプチドであり得る。HLEPはまた、非構造化組換えポリペプチド(例えばXTEN)でもあり得る。そのような分子はまた、当該技術分野では融合ポリペプチドとも称される。
【0080】
本第IX因子バリアントは、切断可能なリンカーを介してHLEPに連結される。典型的には、この切断可能なリンカーは、第IX因子を活性化するのと同一のプロテアーゼにより切断可能である。したがって、そのような切断可能なリンカーは、融合ポリペプチドの高いモル比活性を提供する。適切な切断可能なリンカーは、例えば参考文献1で教示されている。
【0081】
本第IX因子バリアントはまたは、PEG化もされる。
【0082】
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子は、1つの半減期延長部分を含み得るか、または複数の半減期延長部分を含み得る。したがって、表現「半減期延長部分」は、1つまたはそれ以上の半減期延長部分を包含する。これらの半減期延長部分は、同一のタイプであり得る。これらの半減期延長部分は、異なるタイプであり得る。例えば、第IX因子バリアントポリペプチドは、XTEN(例えばXTEN72)に連結され、加えてFcドメイン(例えばヒトIgG1 Fc)に連結される。
【0083】
好ましくは、この半減期延長部分は、非融合第IX因子バリアントポリペプチドと比較した場合に、インビボ(血漿中)での第IX因子バリアントポリペプチドの半減期を少なくとも約25%延長させ得る。好ましくは、この半減期延長部分は、インビボ(血漿中)での第IX因子バリアントポリペプチドの半減期を少なくとも約50%延長させ得、より好ましくは100%超延長させ得る。
【0084】
本発明の融合ポリペプチドのインビボでの半減期は、一般的には、終末相半減期またはβ半減期として決定されている。
【0085】
アルブミン
本明細書で使用される場合、「アルブミン」は、アルブミンポリペプチド配列もしくはアルブミンアミノ酸配列、またはアルブミンの1種もしくはそれ以上の機能的活性(生物学的活性)を有するアルブミン断片、バリアント、もしくは類似体を総称する。特に、「アルブミン」は、ヒトアルブミン(HA)またはその断片を指し得、特に、本明細書の配列番号9に示されているヒトアルブミンの成熟形態を指し得る。アルブミンはまた、他の種にも由来し得、特に、他の脊椎動物にも由来し得る。
【0086】
本融合ポリペプチドのアルブミン部分は、配列番号9に記載されているHA配列の全長を含み得、または第IX因子バリアントポリペプチドの治療活性を安定化させ得るかもしくは延長し得る、このHA配列の1つもしくはそれ以上の断片を含み得る。そのような断片は、10個以上のアミノ酸の長さであり得るか、または約15個、20個、25個、30個、50個、もしくはより多くの、HA配列由来の連続するアミノ酸を含み得、またはHAの特定のドメインの一部もしくは全てを含み得る。これらのおよび他の適切なアルブミン部分(バリアントを含む)は、参考文献1に記載されている。
【0087】
アルブミンファミリーの構造的に関連するファミリーメンバーも、HLEPとして使用し得る。例えば、アルファ-フェトポリペプチド(alpha-fetopolypeptide)(AFP、参考文献2)は、アルブミンファミリーのメンバーであり、同様に、第IX因子バリアントポリペプチドの半減期を延長させるために使用し得る。そのような半減期延長ポリペプチドは、参考文献3に記載されている。別の選択肢は、アファミン(AFM、参考文献4)またはビタミンD結合ポリペプチド(DBP、参考文献5)である。これらのポリペプチドの断片も使用し得る。
【0088】
アルブミンHLEPを使用する実施形態では、アルブミンは、典型的には、第IX因子バリアントポリペプチドとの遺伝子融合体として提供される。このことは、単一のcDNA分子が、第IX因子バリアントポリペプチドとアルブミン部分とをコードし、場合により、切断可能なリンカー等のリンカーをコードする介在配列と共にコードすることを意味する。
【0089】
切断可能なリンカーが介在する例示的な第IX因子バリアントポリペプチド(R338V+E410H)アルブミン融合ポリペプチドが、配列番号15に示されている。
【0090】
免疫グロブリン
免疫グロブリン(Ig)またはその断片も、HLEPとして使用し得る。適切な免疫グロブリンの一例は、IgG、またはFc領域等のIgG断片である。Fc領域は、Fcドメイン(例えば、それぞれがヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)、CH2領域、およびCH3領域を含む2本のポリペプチド鎖)であり得る。そのため、特定の実施形態では、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドは、直接的にまたはリンカーを介して、Fcドメインに融合している。リンカーを使用する実施形態では、このリンカーは切断可能であり得る。
【0091】
単量体、二量体、およびハイブリッドは全て、包含される。例えば、本発明は、2本のポリペプチド鎖を含むヘテロ二量体であって、第1の鎖は、免疫グロブリン(例えばIgG1)のヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)、CH2領域、およびCH3領域に連結されている本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含み、第2の鎖は、免疫グロブリン(例えばIgG1)のヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)、CH2領域、およびCH3領域を含む、ヘテロ二量体を提供する。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、2本のポリペプチド鎖を含むホモ二量体であって、各鎖は、免疫グロブリン(例えばIgG1)のヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)、CH2領域、およびCH3領域に連結されている本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含む、ホモ二量体を提供する。
【0093】
本発明はまた、免疫グロブリン(例えばIgG1)のヒンジ領域(またはヒンジ領域の一部)、CH2領域、およびCH3領域に連結されている本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含む単量体も提供する。
【0094】
適切な第IX因子IgG Fc融合分子の配置の他の例は、例えば参考文献6に見出される。
【0095】
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドとの使用のための例示的なFcポリペプチド(ヒトIgG1 Fcドメインに由来する)は、配列番号16に示されている。本発明の第IX因子バリアントポリペプチドとの使用のための別の例示的なFcポリペプチド(ヒトIgG1 Fcドメインに由来する)は、配列番号17に示されている。
【0096】
これらの実施形態の内のいずれかでは、本第IX因子バリアントポリペプチドは、Fc領域に直接的にまたはリンカーを介して連結される。リンカーを使用する実施形態では、リンカーは、切断可能であり得るか、または切断不能であり得る。特定の実施形態では、リンカーは切断可能である。例示的な切断可能なリンカーは、配列番号8に示されている。
【0097】
具体的な実施形態では、本発明は、ヒトIgG1 Fc領域(配列番号16または配列番号17)に連結されている、本明細書に記載されている第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子を提供する。このヒトIgG1 Fc領域は、第IX因子バリアントポリペプチドに、直接的にまたはリンカーを介して連結され、場合により切断可能なリンカーを介して連結される。
【0098】
別の具体的な実施形態では、本発明は、2本のポリペプチド鎖を含むヘテロ二量体であって、第1の鎖は、ヒトIgG1 Fc領域に連結されている本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含み、第2のポリペプチド鎖は、ヒトIgG1 Fc領域を含む、ヘテロ二量体を提供する。このヒトIgG1 Fc領域は、配列番号16または配列番号17であり得る。第1のポリペプチド鎖では、このヒトIgG1 Fc領域は、第IX因子バリアントポリペプチドに、直接的にまたはリンカーを介して連結され、場合により切断可能なリンカーを介して連結される。
【0099】
エフトレノナコグアルファ(Alprolix(登録商標))は、第IX因子Fc融合体の一例である。参考文献7、8、または9も参照されたい。
【0100】
ヒト絨毛性ゴナドトロピン(CTP)のC末端ペプチド
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドとの使用のための別の例示的な半減期延長部分は、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(CTP)のC末端ペプチドである。CTPは、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)ベータ鎖のC末端ペプチドである31個のアミノ酸の長さの天然ペプチドをベースとする。
【0101】
CTPの1つまたはそれ以上の単位は、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドに融合される。CTPの1つまたはそれ以上の単位は、第IX因子のN末端および/またはC末端に融合され、好ましくはC末端に融合される。
【0102】
一実施形態では、本発明は、3~5個のCTPと連結している本明細書に記載されている第IX因子バリアントポリペプチドを含むCTP改変第IX因子バリアントポリペプチドであって、場合により、このCTPは、第IX因子バリアントポリペプチドのC末端に付着している、CTP改変第IX因子バリアントポリペプチドを提供する。具体的な実施形態では、CTPの3個のタンデム単位が第IX因子バリアントポリペプチドに付着しており、場合により、第IX因子バリアントポリペプチドのC末端で付着している。
【0103】
これらの実施形態の内のいずれかでは、CTPの内の少なくとも1つは、リンカーを介して第IX因子バリアントポリペプチドに付着する。このリンカーは、ペプチド結合であり得る。このリンカーは、切断可能であり得る。
【0104】
例示的な実施形態では、CTP配列は、配列番号18を含む。別の例示的な実施形態では、CTP配列は、配列番号19を含む。別の例示的な実施形態では、CTP配列は、配列番号20を含む。
【0105】
他の適切なCTP配列および関連する方法は、当業者に既知であり、例えば参考文献10、11、または12を参照されたい。
【0106】
非構造化組換えポリペプチド
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドとの使用のための別の例示的な半減期延長部分は、非構造化組換えポリペプチドである。そのような非構造化組換えポリペプチドの一例は、XTENであり、例えば参考文献13を参照されたい。
【0107】
したがって、一実施形態では、本発明は、少なくとも1つのXTENと融合している第IX因子バリアントポリペプチドを提供する。XTENは、第IX因子の生物学的活性を維持しつつ第IX因子バリアントポリペプチド配列に挿入することにより、第IX因子バリアントポリペプチドに融合される。例えば、XTENは、XTENが挿入される場合に凝固中に第IX因子バリアントの活性化ペプチドの切断を妨げない位置で、この活性化ペプチド中の隣接する2つのアミノ酸の間に挿入される。あるいは、XTENは、第IX因子バリアントポリペプチドのC末端および/またはN末端に融合され、好ましくはC末端に融合される。XTENは、リンカー(例えば切断可能なリンカー)を介して第IX因子バリアントポリペプチドのC末端および/またはN末端(好ましくはC末端)に融合される。このリンカーは、トロンビンより切断可能であり得る。
【0108】
好ましいXTENは、XTEN72である。例示的なXTEN72配列は、配列番号21に示されている。代替のXTEN配列は、配列番号22に示されている。他の適切な配列および方法は、例えば参考文献14、15、または16に開示されている。
【0109】
具体的な実施形態では、本発明は、活性化ペプチドに連結されているXTEN72を含む第IX因子バリアントポリペプチドであって、第IX因子バリアントポリペプチドのC末端でヒトIgG1 Fcドメインにも連結されている第IX因子バリアントポリペプチドを提供する。
【0110】
PEG化
本発明の第IX因子バリアントポリペプチドとの使用のための別の例示的な半減期延長部分は、ポリエチレングリコール(PEG)である。
【0111】
糖ペグ化は、本明細書で使用される場合、用語「PEG化」の範囲内である。例えば、約40kDaのPEG部分は、例えば活性化ペプチド内の特定のN連結型グリカンを介して、第IX因子バリアントポリペプチドに共有結合的に付着する。糖ペグ化第IX因子ポリペプチドの一例は、ノナコグベータペゴル(Refixia(登録商標))(参考文献17も参照されたい)であり、このノナコグベータペゴルでは、第IX因子のN157またはN167(配列番号1に従うナンバリング)でのグリカンの平均1個の非還元末端が、アミノ基を介して2個のPEGポリマー(このポリマーの総平均分子量は約42kDaである)にコンジュゲートしたノイラミン酸に付着している。第IX因子ポリペプチドのPEG化はまた、例えば参考文献18、19、および20でも教示されている。
【0112】
リンカー
半減期延長部分を含む本発明の分子は、切断可能なリンカー、特に、タンパク質分解により切断可能なリンカーを用い得る。このリンカーは、一般的には、第IX因子バリアントポリペプチドと、半減期延長部分との間に位置している。このリンカーは、凝固カスケードのプロテアーゼ、例えば、第IX因子バリアントポリペプチドのその活性型、例えば第XIa因子またはVIIa/組織因子(TF)、への変更も可能なプロテアーゼによるこのリンカーの切断時に、第IX因子バリアントポリペプチドを遊離させ得る。切断可能なリンカーは、HLEPがアルブミンである場合に特に有用である。
【0113】
第IX因子のインビボでの半減期が延長されることが望ましいが、特に機能亢進性の第IX因子バリアントポリペプチドによる血栓形成促進効果のリスクを低減するために、活性化された後の第IX因子の半減期を制限することが望ましい。したがって、いくつかの実施形態では、切断可能なリンカーが、第IX因子バリアントポリペプチドと半減期延長部分とを連結させ、それにより、非融合ポリペプチドと比較して半減期が長い第IX因子バリアントポリペプチドが得られる。しかしながら、出血が起こり、凝固カスケードが開始されると、凝固カスケードのプロテアーゼが、例えば対応する野生型第IX因子と比較して比活性が高い第IX因子バリアントポリペプチドを活性化する。同時に、リンカーが切断されて、活性化された第IX因子バリアントポリペプチドが半減期延長部分から遊離し、それにより、任意の第IX因子活性の持続的増加に起因する血栓形成促進効果のリスクが低減される。
【0114】
このリンカーは、第IX因子の断片であり得、好ましくは、第IX因子の活性化に関与する断片であり得る。例えば、このリンカーは、プロリン残基等のN末端残基により延長された、第IX因子配列のそのような断片を含み得る。例示的な切断可能なリンカーが、配列番号8に示されている。他の切断可能なリンカーは、参考文献1に記載されている。
【0115】
介在する切断可能なリンカーを介して半減期延長部分に連結されている第IX因子バリアントポリペプチドを含む本発明の分子は、少なくとも1種の凝固関連アッセイで測定した場合に、切断不能なリンカー(例えばGGGGGGV)を有する対応する分子と比較して少なくとも25%高いモル非活性を有し得、このアッセイの例は当業者に既知であり、例えば、例えば実施例3に記載されているaPTT一段階アッセイである。好ましくは、介在する切断可能なリンカーを介して半減期延長部分に連結されている第IX因子バリアントポリペプチドを含む本発明の分子は、切断可能なリンカーを含まない対応する分子と比較して少なくとも50%高いモル比活性を有し、より好ましくは少なくとも100%高いモル比活性を有する。
【0116】
第IX因子活性
第IX因子活性を、任意の適切なアッセイを使用して決定し得る。第IX因子活性は、一般的には、比活性(本明細書ではモル比活性とも称される)と当該技術分野では称される。モル比活性は、目的のポリペプチドの1モル当たりの活性(例えばnモル)と定義される。モル比活性の算出により、異なるポリペプチドの活性を直接比較し得る。モル比活性は、異なるポリペプチドの異なる分子量または光学密度による影響を受けない。モル比活性は、参考文献1の表2で例示されているように算出され得る。
【0117】
様々な第IX因子活性アッセイは、当業者に周知であり、例えば、一段階アッセイ(例えばaPTTアッセイ)および発色アッセイである。
【0118】
例えば、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)アッセイは、周知の第IX因子アッセイである。したがって、好ましい実施形態では、第IX因子活性は、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して決定される。そのような例示的アッセイを、下記の実施例3で記載する。これは市販されている(例えば、Pathromtin(登録商標)SL,Siemens Healthcare)。最適量のリン脂質および表面活性化剤を含む試験血漿(例えば、対象、細胞培養上清、または精製済の第IX因子ポリペプチドに由来するサンプルのある量を含む第IX因子枯渇血漿)のインキュベーションにより、内因性凝固系の因子が活性化される。カルシウムイオンの添加により凝固プロセスが誘発され、フィブリン塊が形成されるまでの時間を測定する。WHO International FIX concentrate Standardに対して校正された内部サブ標準を、基準として使用し得る。
【0119】
しかしながら、他の既知の第IX因子活性アッセイも使用して、第IX因子ポリペプチドの比活性を決定し得る。
【0120】
コントロールと比較した比活性の「増加」は、そのような増加が少なくとも1つの第IX因子活性アッセイで観察される場合(例えば、例えば実施例3に記載されているようにインビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して第IX因子活性を測定する場合でのaPTT値の減少)に起こる。
【0121】
核酸
本発明はまた、例えば、例えば血友病Bの予防または処置における遺伝子治療における使用のための、本発明の第IX因子バリアントをコードするかまたはこの第IX因子バリアントを含む分子をコードする核酸も提供する。
【0122】
この核酸は、DNA(例えばcDNA)であり得る。この核酸は、RNA(例えばmRNA)であり得る。この核酸は、単離核酸として提供される場合がある。この用語は、DNAに適用される場合には、DNA分子であって、このDN分子が由来する生物の天然に存在するゲノム中においてすぐに連続する(5’方向および3’方向)配列から分離されているDNA分子を指す。例えば、「単離核酸」は、ベクター、例えば、プラスミドベクターもしくはウイルスベクターに挿入されたかまたは原核生物もしくは真核生物のDNAに挿入されたDNA分子もしくはcDNA分子を含み得る。本発明のRNA分子に関して、用語「単離核酸」は、上記で定義された単離DNA分子によりコードされるRNA分子を主に指す。あるいは、この用語は、自然な状態(即ち、細胞中または組織中)では付随するであろうRNA分子から十分に分離されており、その結果、「実質的に純粋な」形態で存在するRNA分子を指し得る。
【0123】
ベクター
本発明はまた、この核酸を含むベクターも提供する。適切な例示的ベクターは、当業者に既知であり、アデノウイスルベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、レトロウイルスベクター、プラスミド、およびレンチウイルスベクターからなる群から選択される。
【0124】
用語「ベクター」は、例えば発現されるおよび/または複製される宿主細胞への導入のために核酸配列が挿入される担体核酸分子(例えばRNAまたはDNA)を指す。この用語は、プラスミドを含む。「発現ベクター」は、宿主細胞中での発現に必要な必須の制御領域を有する遺伝子または核酸配列を含む特殊なベクターである。
【0125】
用語「作動可能に連結されている」は、コード配列の発現に必須の制御配列が、このコード配列の発現を生じさせるように、このコード配列に対して適切な位置でDNA分子中に配置されていることを意味する。この同じ定義は、発現ベクターにおけるコード配列と転写調節エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、および終結エレメント)の配置に適用される場合がある。この定義はまた、第1の核酸分子の核酸配列および第2の核酸分子の核酸配列の配置にも適用される場合があり、ハイブリッド核酸分子が生成される。
【0126】
本発明の特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。本発明で使用される、組織特異的プロモーター/エンハンサーを有するかまたは有しないウイルベクターとして下記が挙げられるが、これらに限定されない:アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、AAV12、AAVrh10、または他の誘導体および/もしくは代替血清型)、ならびにハイブリッドAAVベクター(例えば、2種、3種、4種、5種、またはより多い血清型のコンビナトリアルハイブリッド)、レンチウイルスベクターおよび疑似型レンチウイルスベクター(例えば、エボラウイルス、水疱性口内炎ウイルス(VSV)、およびネコ免疫不全ウイルス(FIV))、単純ヘルペスウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、ならびにレトロウイルスベクター。AAVは、異なるAAVからのカプシドタンパク質(例えば、AAV血清型1~12等の内のいずれか1種またはそれ以上)およびゲノム(例えばAAV血清型2)を有するハイブリッドAAVベクターであり得る。AAVベクターが好ましく、特にAAV5が好ましい。特に好ましいのは、肝指向性ベクター(例えば、肝指向性AAVベクター)であるが、筋肉指向性ベクターも有用であり得る。
【0127】
本発明の特定の実施形態では、第IX因子バリアントポリペプチド(もしくはこれを含む分子)またはこの機能的断片をコードする核酸配列を含むウイルスベクターの投与のための方法が提供される。本明細書に記載されているように、そのようなアデノウイルスベクターの投与後のバリアントポリペプチドの発現は、第IX因子活性を改善し得る。
【0128】
細胞
本発明の別の態様は、本発明の核酸またはベクターを含む細胞を含む。
【0129】
この細胞は、ヒト起源であり得る。この細胞は、血小板、T細胞、または造血細胞等であり得る。この細胞は、処置される対象に対して自家または同種であり得る。この細胞は、例えば、この細胞内で本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを発現させるようにプロモーター配列と作動可能に連結されているゲノム位置に核酸を組み込むことにより、エクスビボで改変される。この目的のために、AAVベクターを使用し得る。この細胞をまた、インビトロでも培養し得る(増殖させ得る)。適切な方法は、当業者に既知である。
【0130】
医薬組成物
本発明は、上に記載されている第IX因子バリアントポリペプチド、これを含む分子、核酸、ベクター、または細胞を含む医薬組成物を提供する。この組成物は、対象、例えば動物、典型的にはヒト対象への投与用であり得る。
【0131】
この組成物は薬学的に許容され、典型的には適切な担体を含む。薬学的に許容される担体の詳細な議論は、参考文献21で利用可能である。この組成物は、この組成物は、無菌であり、パイロジェンおよび/または防腐剤フリーである。
【0132】
この組成物中の第IX因子バリアントポリペプチドは、凍結乾燥される。凍結乾燥されたポリペプチドは、液体希釈液(例えば、注射用の無菌水)による再構築用であり得る。凍結乾燥された第IX因子バリアントポリペプチドを含む組成物中の典型的な添加剤として、クエン酸三ナトリウム二水和物、ポリソルベート80、マンニトール、スクロース、および/またはHClが挙げられる。
【0133】
凍結乾燥されていない第IX因子バリアントポリペプチドは、場合により安定剤および/または増量剤を含む緩衝液の形態、例えばクエン酸緩衝液で提供される。
【0134】
この組成物は、静脈内投与用である。他の投与経路として、筋肉内経路、経口経路、局所経路、または非経口経路が挙げられる。
【0135】
組成物は、(出血を予防するために)予防的であり得るか、または(出血を処置するために)治療的であり得る。
【0136】
処置方法
本発明はまた、薬物としての使用のための、本明細書に記載されている第IX因子バリアント、これを含む分子、核酸、ベクター、細胞、または医薬組成物も提供する。
【0137】
例えば、本発明は、それを必要とする患者における対象の血液凝固障害の処置または予防の方法であって、この対象に、第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)の治療有効量を投与することを含む方法を提供する。
【0138】
この血液凝固障害は、第IX因子欠乏症であり得、例えば、血友病Bであり得る。
【0139】
そのような方法は、(例えば、出血を予防するために、減少させるために、または阻害するために)凝固促進剤が必要とされ、かつ血友病、特に血友病Bが挙げられるがこれに限定されない障害の予防または処置で有効である。したがって、本発明は、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病B(先天性第IX因子欠乏症)の患者における出血の処置または予防の方法を提供する。
【0140】
「治療有効量」は、(例えば、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドの)この量の単回用量でのまたは一連の一部としての個体への投与が、処置または予防に有効であることを意味する。
【0141】
本発明はまた、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病Bの患者における出血の処置または予防における使用のための第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)も提供する。
【0142】
同様に提供されるのは、対象の血液凝固障害の処置または予防、特に、血友病Bの患者における出血の処置または予防のための薬物の製造のための第IX因子バリアント(または第IX因子バリアントを含む分子、第IX因子バリアントをコードする核酸分子等)の使用である。
【0143】
より一般的には、本発明から利益を得ることができる障害は、下記が挙げられる出血性障害である:血友病(血友病A、血友病B、阻害抗体を有する血友病AおよびB患者;特に血友病B)、少なくとも1種の凝固因子(例えば、第VII因子、第IX因子、第X因子、第XI因子、第V因子、第XII因子、第II因子、および/またはフォンヴィレブランド因子;特に第IX因子)の欠乏症、複合FV/FVIII欠乏症、ビタミンKエポキシドレダクターゼCI欠乏症、ガンマ-カルボキシラーゼ欠乏症、外傷、損傷、血栓症、血小板減少症、脳卒中、凝固障害(凝固性低下)、播種性血管内凝固(DIC)と関連する出血;ヘパリン、低分子量ヘパリン、ペンタサッカリド、ワルファリン、低分子抗血栓剤(即ちFXa阻害剤)と関連する過剰抗凝固;ならびに血小板障害、例えば、ベルナール・スーリエ症候群、グランツマン血小板無力症、および貯蔵プール欠乏症。
【0144】
特定の実施形態では、この障害は、血友病Bである。
【0145】
用語「処置」、「治療」、および「処置する」は、別途指示されない限り、予防を含み得る。障害は、対象(例えば、血友病B等の第IX因子欠乏症を有するヒト)への本発明の化合物または組成物(例えば第IX因子バリアントポリペプチド)の投与により、治療効果または予防効果が得られる場合には、処置されるかまたは予防される。このことは、少なくとも1種の第IX因子アッセイで測定した場合に、対象での第IX因子活性の血漿レベルが処置後に少なくとも一時的に上昇することを意味する。第IX因子活性は、典型的には、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法(例えば実施例3に記載されている)を使用して決定される。この上昇は、臨床的な意義、例えば、出血事象の頻度または強度の低下がある場合がある。
【0146】
血漿中の第IX因子活性を表す1つの方法は、正常なヒト血漿に対する割合である。血漿中の第IX因子活性を表す別の方法は、血漿中の第IX因子に関する国際基準に対する国際単位(IU)である。1IUの第IX因子活性は、1mlの正常なヒト血漿中の第IX因子の量に相当する。
【0147】
予防または処置の有効性を確認する1つの方法は、予防または処置の後の対象での血漿第IX因子活性を測定し、予防または処置の前のこの対象での血漿第IX因子活性と比較することである。予防または処置の後の第IX因子活性の増加(例えば、正常なヒト血漿の<1%、または1%~5%、または5~40%から例えば正常なヒト血漿の>40%、>50%、または>60%のピークレベルへの上昇)は、予防効果または治療効果を示す。予防中に出血のコントロールを達成するために、臨床試験では、正常なヒト血清の5~10%の第IX因子レベルが目標とされている。
【0148】
予防効果または治療効果はまた、予防または処置の後の第IX因子活性が、出血を予防するのに、減少させるのに、または阻害するのに十分である場合にも達成される
【0149】
予防または処置の後の第IX因子活性は、病理学的範囲外となる場合がある(例えば、正常なヒト血清の>40%のピークレベル)。予防または処置の後の第IX因子活性は、正常なヒト血漿中の第IX因子活性と同等であり得る。
【0150】
第IX因子活性を、当業者に既知の任意の第IX因子活性アッセイを使用して(例えばaPTTアッセイを使用して)測定し得る(aPTT値の低下は、第IX因子活性の増加を示す)。したがって、好ましい実施形態では、第IX因子活性を、例えば実施例3に記載されている、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して決定する。
【0151】
本発明に係る第IX因子バリアントポリペプチドは、対応する野生型第IX因子ポリペプチドと比べて、対象にインビボで投与された場合に高い比モル活性を有し得る。例えば、血漿第IX因子活性の増加の%(例えば、インビトロでのaPTTベースの凝固一段法を使用して測定する)は、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを使用する場合に、対応する野生型第IX因子ポリペプチドの同一のモル量の使用と比較して高くなり得る。このことを説明する別の方法は、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを使用する場合のaPTT時間が、対応する野生型第IX因子ポリペプチドの同一のモル量の使用と比較した場合に短いことである。
【0152】
第IX因子バリアントポリペプチドの有効な初期用量を確立し得る。オンデマンド処置に必要な用量を、下記式:
必要な用量(国際単位、IU)=体重(kg)×所望の第IX因子の上昇値(正常の%、IU/dl)×{観察された回復値の逆数(IU/dl当たりのIU/kg)}
予測される第IX因子上昇値(IU/dlまたは正常の%)=用量(IU)×回復値(IU/kg当たりのIU/dl)/体重(kg)
を使用して決定する。
【0153】
初期用量を、患者の臨床状態および反応に基づいて調整する。
【0154】
適切な維持用量の決定のために、第IX因子バリアントポリペプチドの半減期の任意の延長が検討される。血友病Bの患者における出血を予防するための日常的な予防の典型的なレジメンは、週1回の35~50IU/kgである。週1回のレジメンで良好にコントロールされている一部の患者は、10日または14日の間隔にて最高75IU/kgで処置される。
【0155】
正確な投与量および処置期間は、第IX因子欠乏症の重症度、出血の位置および程度、ならびに対象の臨床状態、年齢、および第IX因子の回復に依存するであろう。
【0156】
本明細書に記載されている処置または予防の方法は、例えば遺伝子治療における使用のための、第IX因子バリアントポリペプチド(またはこれを含む分子)をコードする核酸配列を含むウイルスベクターの投与を含む。好ましいベクターは、アデノウイルス随伴ベクター(例えばAAV5)である。レンチウイルスベクターも使用し得る。
【0157】
処置または予防はまた、遺伝子編集アプローチ(例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼまたはCRISPR(例えばCRISPR/Cas9))を使用しても達成される。そのようなアプローチは、当業者に既知の方法を使用して、不完全な第IX因子遺伝子を、本発明の機能性第IX因子バリアントポリペプチドをコードする核酸に置き換え得る(例えば参考文献22)。別のアプローチは、当該技術分野で既知の方法を使用して、肝細胞の細胞分裂にもかかわらず第IX因子の長期にわたる発現を確保するために、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドをコードする核酸をアルブミン遺伝子座に挿入することである(例えば、参考文献23、24、または25)。
【0158】
本明細書に記載されている処置または予防の方法はまた、対象への細胞(例えば、血小板、T細胞、造血細胞等)の投与であって、この細胞は、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを発現するか、またはこの細胞は、本発明の第IX因子バリアントポリペプチドを含む分子を発現する、投与も含む。この細胞は、処置される対象に対して自家または同種であり得る。
【0159】
総則
本発明の実施は、別途指示されない限り、当該技術分野のスキル内の、化学、生化学、分子生物学、免疫学、および薬理学の従来の方法を採用するであろう。そのような技術は、文献で十分に説明されている。例えば、参考文献26~32等を参照されたい。
【0160】
用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」および「からなる(consisting)」を包含し、例えば、Xを「含む(comprising)」組成物は、Xのみからなり得るか、または追加のものを含み得る(例えばX+Y)。
【0161】
数値xに関する用語「約」は任意的であり、例えばx±10%を意味する。
【0162】
2つのアミノ酸配列の間の配列同一性の百分率への言及は、アラインされた場合に、このアミノ酸の百分率が、これら2つの配列の比較において同一であることを意味する。このアラインメント、および相同性または配列同一性の割合を、当該技術分野で既知のソフトウェアプログラム、例えば、参考文献33の7.7.18節に記載されているものを使用して決定し得る。好ましいアラインメントは、ギャップオープンペナルティが12であり、かつギャップ伸長ペナルティが2であり、BLOSUMマトリックスが62であるアフィンギャップ検索を使用するSmith-Waterman相同性検索アルゴリズムにより決定される。Smith-Waterman相同性検索アルゴリズムは、参考文献34に開示されている。
【0163】
単語「実質的」は、「完全」を排除せず、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まない場合がある。必要に応じて、単語「実質的」は、本発明の定義から省略される。
【0164】
本明細書で開示されている全ての刊行物、特許、および特許出願は、各個々の刊行物、特許、または特許出願が、参照により組み入れられることが明確にかつ個々に示された場合と同じ程度まで、参照により組み入れられる。
【0165】
下記の実施例は、本発明の様々な実施形態を説明するために提供される。この実施例は例証であり、本発明を限定することは決して意図されていない。
【実施例
【0166】
一連の例示的な組換え第IX因子バリアントポリペプチドを、切断可能なリンカー(IDELVION(登録商標)/アルブトレペノナコグアルファ、配列番号10)を介して組換え成熟ヒトアルブミンと融合したヒト野生型第IX因子ポリペプチド(配列番号1)中での1箇所または2箇所のアミノ酸位置を変異させることにより製造した。この組換え第IX因子バリアントをHEK細胞中で発現させ、細胞培養上清または精製済みのタンパク質を、活性および抗原に関して試験した。抗原に対する活性の比率を、野生型第IX因子を構成する対応するポリペプチドと比較した。野生型第IX因子の410位および338位である特定の変異を有する第IX因子バリアントは、下記で実証されるように、驚くほど高い活性を示した。
【実施例1】
【0167】
プラスミドDNAの生成、細胞トランスフェクション、およびタンパク質発現
野生型第IX因子またはバリアント第IX因子のいずれかを含む第IX因子または第IX因子-アルブミン融合ポリペプチド(FIX-FP)をコードするプラスミドDNAを、当該技術分野での標準的な技術に従って生成した。成熟した野生型第IX因子ポリペプチド配列を、配列番号1に示す。例示的な第IX因子バリアントポリペプチド配列を、配列番号11~14に示す。具体的には、野生型第IX因子(配列番号1)の410位でのE(グルタミン酸)は、H(ヒスチジン)もしくはK(リシン)で置換され、および/または野生型第IX因子(配列番号1)の338位でのR(アルギニン)は、V(バリン)、W(トリプトファン)、T(スレオニン)、もしくはL(リシン)で置換された。338位および/または410位での変異を有する単一変異体および二重変異体を生成した。第IX因子-FPのリンカーおよびアルブミンはそれぞれ、配列番号8および9で定義された通りであった。しかしながら、他のリンカーおよび半減期延長部分を(例えば参考文献1に記載されているように)使用し得るか、または省略し得る。
【0168】
プラスミドDNAをpcDNA3.1ベクターにクローニングし、大腸菌(E.coli)XL-10 Gold Ultracompetent Cells(Agiland Technologies カタログ番号200315)で増幅させた。プラスミドDNAを、標準的なプロトコル(QIAGEN Plasmid Plus Purification カタログ番号12945,Hilden,Germany)を使用して精製した。
【0169】
ポリペプチドの一過性産生を、Expi293F発現キット(カタログ番号A14635,ThermoFisher)により250mlスケールで開始させた。指数増殖期の生Expi293TM細胞を回収し、適宜再懸濁させて、2Lの振盪フラスコ(Corning,Lowell,MA)中において2.5×10個の細胞/mlの開始細胞密度を得た。これとは別に、プラスミドDNA(125μg)およびExpifectaminTM 293試薬(675μl)を、Opti-MEM(登録商標)I低血清培地12.5mlで希釈した。希釈されたExpifectaminTM 293試薬およびプラスミドDNAを、等量で混合した。この複合体を、Expi293TM Expression培地中の合計で62.5×10個の生細胞 225mlに添加した。発現培地に、50μg/mlのMenadione K3(Sigma Aldrich,Steinheim,Germany)を補充した。培養物を、37℃(8%CO、150rpm)にて軌道振盪インキュベーター中でインキュベートした。17~20時間後、この培養物に、Expi293 Expressionキットの一部であるEnhancer I(1.25ml)およびEnhancer II(12.5ml)を添加した。96時間の総培養時間の後、培養上清を、適切な無菌フィルターを使用して収集した。次いで、第IX因子タンパク質を、実施例2で説明されているように精製した。
【0170】
細胞培養上清を使用して第IX因子活性等を測定する実験のために、培養量が50mlであり、かつトランスフェクトされた細胞の培養上清を48時間で回収したことを除いて、FIX-FP野生型ポリペプチドおよびFIXーFPバリアントポリペプチドを、上記で記載したように発現させた。下(実施例3および4)で記載するように、第IX因子活性を一段階第IX因子特異的凝固アッセイで評価し、抗原レベルを第IX因子特異的ELISAで決定した。
【実施例2】
【0171】
タンパク質の精製
上の実施例1で記載した、第IX因子アルブミン融合ポリペプチド、それぞれの第IXポリペプチドを含む細胞培養上清を、20mMのHepes、50mMのNaCl、および12mmolのEDTA緩衝液pH6.2で予め平衡化したPoros 50HQカラムに適用した。その後、このカラムを、20mMのHepes、100mMのNaCl pH6.2を含む緩衝液で洗浄した。この洗浄緩衝液にCaCl 10mmolを添加することにより、結合している第IX因子融合ポリペプチドを溶出させた。
【実施例3】
【0172】
第IX因子活性および抗原の決定
第IX因子活性を、市販のaPTT試薬(Pathromtin(登録商標)SLおよびFIX枯渇血漿,Siemens Healthcare)を使用して、凝固活性または血液凝固活性(FIX:C)として決定した。WHO International FIX concentrate Standardに対して校正された内部サブ標準を、基準として使用した。
【0173】
第IX因子抗原(FIX:Ag)を、当業者に既知の標準的なプロトコルに従うELISAにより決定した。簡潔に説明すると、マイクロタイタープレートを、周囲温度で一晩、1つのウェル当たり捕捉抗体(Factor IX ELISA用のペア抗体(CL20041K)、Cedarlane、しかしながら、他の適切な抗体源も適用し得る)100μLと共にインキュベートした。プレートを洗浄緩衝液B(Sigma T9039)で3回洗浄した後、各ウェルを、周囲温度で1時間にわたり、ブロッキング緩衝液C(Sigma P3688)200μLと共にインキュベートした。緩衝液Bによるさらなる3回の洗浄工程後、緩衝液Bによる試験サンプルの連続希釈液、および緩衝液Bによるサブ標準物質(SHP)の連続希釈液(1つのウェル当たりの体積:100μL)を、周囲温度で90分にわたりインキュベートした。緩衝液Bによる3回の洗浄工程後、緩衝液Bによる検出抗体(Factor IX ELISA用のペア抗体、ペルオキシダーゼ標識済、Cedarlane)の1:200希釈液100mLを各ウェルに添加し、周囲温度でさらに90分にわたりインキュベートした。緩衝液Bによる3回の洗浄工程後、1つのウェル当たり基質溶液(TMB,Siemens Healthcare,OUVF)100μLを添加し、暗所にて周囲温度で30分にわたりインキュベートした。未希釈の停止溶液(Siemens Healthcare,OSFA)100μLを添加して、450nmの波長での適切なマイクロプレートリーダーによる読み取り用のサンプルを製造した。次いで、試験サンプルの濃度を、基準としての標準ヒト血漿による標準曲線を使用して算出した。
【実施例4】
【0174】
野生型に対する第IX因子バリアントの第IX因子活性/第IX因子-抗原比の比較
第IX因子活性および抗原を、上の実施例3に記載されているように実施した。第IX因子バリアントの比活性を、実験変動に関して制御するために、抗第IX因子ELISAにより測定した第IX因子抗原レベル(FIX:C対FIX:Agの比)に対して正規化し、それにより、様々な構築物のモル比活性に直接比例する測定値が表される。
【0175】
野生型第IX因子(このサンプルの場合、IDELVION(登録商標)、配列番号10)の得られた活性に、値「1」を割り当てた。IDELVION(登録商標)に基づく第IX因子バリアントの活性は、野生型第IX因子(IDELVION(登録商標))の活性と比較して示される。
【0176】
下記の表1および2は、組換えにより発現されたタンパク質(表1)を含む細胞培養上清を使用するかまたは精製済タンパク質(表2、3、および4)を使用して測定した、野生型FIX-FPと比較した様々なFIX-FPバリアントの比活性を示す。
【0177】
【表1】
【0178】
【表2】
【0179】
表1および表2は、野生型第IX因子の338位および/または410位である特定の変異を有するFIX-FPバリアントが、野生型FIX-FPと比べて高い比活性を生じたことを示す。さらに、野生型第IX因子の338位および410位である特定の変異を有する二重変異体(例えば、R338V+E410H、R338V+E410T)は、野生型FIX-FPと、各単一変異体(例えば、R338V、R338T、E410H)のそれぞれとの両方と比べて高い比活性を生じた。実際に、二重変異体の活性は、各単一変異体と比較して相加的(相乗的)を超え得る。加えて、R338V+E410H二重変異体、R338T+E410H二重変異体、およびR338W+E410H二重変異体の比活性は、第IX因子「Padua」変異体、R338Lに相当するバリアントの活性と比べて高かった。参考文献35を参照されたい。さらに、R338V+E410H二重変異体およびR338T+E410H二重変異体の比活性は、「Padua」R338L+E410K二重変異体に相当するバリアントの活性と比べて高かった。
【0180】
さらなる実験では、上で記載したように製造されたR338L+E410K二重変異体およびR338L+E410H二重変異体の比活性を決定し、対応するR338L単一変異体の活性と比較した。下記の表3は、R338L+E410H二重変異体が、R338L単一変異体と比べて高い比活性を有し、R338L単一変異体は、(上記の表1および表2に示すように)これ自体が野生型と比較して高い比活性を有することを示す。したがって、R338L+E410H二重変異体は、別の有用な第IX因子バリアントである。
【0181】
【表3】
【0182】
さらに、表3は、E410H変異が、二重変異体に組み込まれた場合に、同一の二重変異体でのE410K変異と比べて全体的に高い活性を生じることを示す。
【0183】
本発明は例示としてのみ説明されており、本発明の範囲および趣旨内のままで改変を行ない得ることが、当業者に理解されるであろう。
【0184】
【表4】
【0185】
表4は、アルブミンと融合していない第IX因子として発現される二重変異体R338V+E410HおよびR338T+E410Hの比活性も第IX因子野生型コントロールと比べて高いことを示す。そのため、本発明の第IX因子変異の比活性の改善は、アルブミン融合とは無関係である。
【0186】
参考文献
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[35] Simioni et al. (2009) N Engl J Med. Oct 22; 361(17):1671-1675
【0187】
配列表
配列番号1
>ヒト野生型FIXポリペプチド
【化2】
【0188】
配列番号2
>ヒト野生型FIXポリペプチドのコード配列
ATGTATAATTCAGGTAAATTGGAAGAGTTTGTTCAAGGGAACCTTGAGAGAGAATGTATGGAAGAAAAGTGTAGTTTTGAAGAAGCACGAGAAGTTTTTGAAAACACTGAAAGAACAACTGAATTTTGGAAGCAGTATGTTGATGGAGATCAGTGTGAGTCCAATCCATGTTTAAATGGCGGCAGTTGCAAGGATGACATTAATTCCTATGAATGTTGGTGTCCCTTTGGATTTGAAGGAAAGAACTGTGAATTAGATGTAACATGTAACATTAAGAATGGCAGATGCGAGCAGTTTTGTAAAAATAGTGCTGATAACAAGGTGGTTTGCTCCTGTACTGAGGGATATCGACTTGCAGAAAACCAGAAGTCCTGTGAACCAGCAGTGCCATTTCCATGTGGAAGAGTTTCTGTTTCACAAACTTCTAAGCTCACCCGTGCTGAGACTGTTTTTCCTGATGTGGACTATGTAAATTCTACTGAAGCTGAAACCATTTTGGATAACATCACTCAAAGCACCCAATCATTTAATGACTTCACTCGGGTTGTTGGTGGAGAAGATGCCAAACCAGGTCAATTCCCTTGGCAGGTTGTTTTGAATGGTAAAGTTGATGCATTCTGTGGAGGCTCTATCGTTAATGAAAAATGGATTGTAACTGCTGCCCACTGTGTTGAAACTGGTGTTAAAATTACAGTTGTCGCAGGTGAACATAATATTGAGGAGACAGAACATACAGAGCAAAAGCGAAATGTGATTCGAATTATTCCTCACCACAACTACAATGCAGCTATTAATAAGTACAACCATGACATTGCCCTTCTGGAACTGGACGAACCCTTAGTGCTAAACAGCTACGTTACACCTATTTGCATTGCTGACAAGGAATACACGAACATCTTCCTCAAATTTGGATCTGGCTATGTAAGTGGCTGGGGAAGAGTCTTCCACAAAGGGAGATCAGCTTTAGTTCTTCAGTACCTTAGAGTTCCACTTGTTGACCGAGCCACATGTCTTCGATCTACAAAGTTCACCATCTATAACAACATGTTCTGTGCTGGCTTCCATGAAGGAGGTAGAGATTCATGTCAAGGAGATAGTGGGGGACCCCATGTTACTGAAGTGGAAGGGACCAGTTTCTTAACTGGAATTATTAGCTGGGGTGAAGAGTGTGCAATGAAAGGCAAATATGGAATATATACCAAGGTATCCCGGTATGTCAACTGGATTAAGGAAAAAACAAAGCTCACTTAA
【0189】
配列番号3
>シグナルペプチドおよびプロペプチドを含むヒト野生型FIXポリペプチド
【化3】
【0190】
配列番号4
>シグナルペプチドおよびプロペプチドを含むヒト野生型FIXポリペプチドのコード配列
ATGCAGCGCGTGAACATGATCATGGCAGAATCACCAGGCCTCATCACCATCTGCCTTTTAGGATATCTACTCAGTGCTGAATGTACAGTTTTTCTTGATCATGAAAACGCCAACAAAATTCTGAATCGGCCAAAGAGGTATAATTCAGGTAAATTGGAAGAGTTTGTTCAAGGGAACCTTGAGAGAGAATGTATGGAAGAAAAGTGTAGTTTTGAAGAAGCACGAGAAGTTTTTGAAAACACTGAAAGAACAACTGAATTTTGGAAGCAGTATGTTGATGGAGATCAGTGTGAGTCCAATCCATGTTTAAATGGCGGCAGTTGCAAGGATGACATTAATTCCTATGAATGTTGGTGTCCCTTTGGATTTGAAGGAAAGAACTGTGAATTAGATGTAACATGTAACATTAAGAATGGCAGATGCGAGCAGTTTTGTAAAAATAGTGCTGATAACAAGGTGGTTTGCTCCTGTACTGAGGGATATCGACTTGCAGAAAACCAGAAGTCCTGTGAACCAGCAGTGCCATTTCCATGTGGAAGAGTTTCTGTTTCACAAACTTCTAAGCTCACCCGTGCTGAGACTGTTTTTCCTGATGTGGACTATGTAAATTCTACTGAAGCTGAAACCATTTTGGATAACATCACTCAAAGCACCCAATCATTTAATGACTTCACTCGGGTTGTTGGTGGAGAAGATGCCAAACCAGGTCAATTCCCTTGGCAGGTTGTTTTGAATGGTAAAGTTGATGCATTCTGTGGAGGCTCTATCGTTAATGAAAAATGGATTGTAACTGCTGCCCACTGTGTTGAAACTGGTGTTAAAATTACAGTTGTCGCAGGTGAACATAATATTGAGGAGACAGAACATACAGAGCAAAAGCGAAATGTGATTCGAATTATTCCTCACCACAACTACAATGCAGCTATTAATAAGTACAACCATGACATTGCCCTTCTGGAACTGGACGAACCCTTAGTGCTAAACAGCTACGTTACACCTATTTGCATTGCTGACAAGGAATACACGAACATCTTCCTCAAATTTGGATCTGGCTATGTAAGTGGCTGGGGAAGAGTCTTCCACAAAGGGAGATCAGCTTTAGTTCTTCAGTACCTTAGAGTTCCACTTGTTGACCGAGCCACATGTCTTCGATCTACAAAGTTCACCATCTATAACAACATGTTCTGTGCTGGCTTCCATGAAGGAGGTAGAGATTCATGTCAAGGAGATAGTGGGGGACCCCATGTTACTGAAGTGGAAGGGACCAGTTTCTTAACTGGAATTATTAGCTGGGGTGAAGAGTGTGCAATGAAAGGCAAATATGGAATATATACCAAGGTATCCCGGTATGTCAACTGGATTAAGGAAAAAACAAAGCTCACTTAA
【0191】
配列番号5
>ヒト野生型FIXa軽鎖ポリペプチド
YNSGKLEEFVQGNLERECMEEKCSFEEAREVFENTERTTEFWKQYVDGDQCESNPCLNGGSCKDDINSYECWCPFGFEGKNCELDVTCNIKNGRCEQFCKNSADNKVVCSCTEGYRLAENQKSCEPAVPFPCGRVSVSQTSKLTR
【0192】
配列番号6
>ヒト野生型FIXa重鎖ポリペプチド
【化4】
【0193】
配列番号7
>ヒト野生型FIXポリペプチドT148A多型バリアント
【化5】
【0194】
配列番号8
>リンカー
PVSQTSKLTRAETVFPDV
【0195】
配列番号9
>成熟ヒトアルブミン
DAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
【0196】
配列番号10
>FIX(野生型)アルブミン融合体
YNSGKLEEFVQGNLERECMEEKCSFEEAREVFENTERTTEFWKQYVDGDQCESNPCLNGGSCKDDINSYECWCPFGFEGKNCELDVTCNIKNGRCEQFCKNSADNKVVCSCTEGYRLAENQKSCEPAVPFPCGRVSVSQTSKLTRAETVFPDVDYVNSTEAETILDNITQSTQSFNDFTRVVGGEDAKPGQFPWQVVLNGKVDAFCGGSIVNEKWIVTAAHCVETGVKITVVAGEHNIEETEHTEQKRNVIRIIPHHNYNAAINKYNHDIALLELDEPLVLNSYVTPICIADKEYTNIFLKFGSGYVSGWGRVFHKGRSALVLQYLRVPLVDRATCLRSTKFTIYNNMFCAGFHEGGRDSCQGDSGGPHVTEVEGTSFLTGIISWGEECAMKGKYGIYTKVSRYVNWIKEKTKLTPVSQTSKLTRAETVFPDVDAHKSEVAHRFKDLGEENFKALVLIAFAQYLQQCPFEDHVKLVNEVTEFAKTCVADESAENCDKSLHTLFGDKLCTVATLRETYGEMADCCAKQEPERNECFLQHKDDNPNLPRLVRPEVDVMCTAFHDNEETFLKKYLYEIARRHPYFYAPELLFFAKRYKAAFTECCQAADKAACLLPKLDELRDEGKASSAKQRLKCASLQKFGERAFKAWAVARLSQRFPKAEFAEVSKLVTDLTKVHTECCHGDLLECADDRADLAKYICENQDSISSKLKECCEKPLLEKSHCIAEVENDEMPADLPSLAADFVESKDVCKNYAEAKDVFLGMFLYEYARRHPDYSVVLLLRLAKTYETTLEKCCAAADPHECYAKVFDEFKPLVEEPQNLIKQNCELFEQLGEYKFQNALLVRYTKKVPQVSTPTLVEVSRNLGKVGSKCCKHPEAKRMPCAEDYLSVVLNQLCVLHEKTPVSDRVTKCCTESLVNRRPCFSALEVDETYVPKEFNAETFTFHADICTLSEKERQIKKQTALVELVKHKPKATKEQLKAVMDDFAAFVEKCCKADDKETCFAEEGKKLVAASQAALGL
【0197】
配列番号11
>FIXバリアントR338V/E410H
【化6】
【0198】
配列番号12
>FIXバリアントR338T/E410H
【化7】
【0199】
配列番号13
>FIXバリアントR338W/E410H
【化8】
【0200】
配列番号14
>FIXバリアントR338L/E410H
【化9】
【0201】
配列番号15
>FIXバリアントR338V/E410Hアルブミン融合体
【化10】
【0202】
配列番号16
>ヒトIgG1 Fc
EPKSCDKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0203】
配列番号17
>ヒトIgG1 Fc
DKTHTCPPCPAPELLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVKFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQYNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKALPAPIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSRDELTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPG
【0204】
配列番号18
>CTP配列
SSSSKAPPPS
【0205】
配列番号19
>CTP配列
DPRFQDSSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPIL
【0206】
配列番号20
>CTP配列
SSSSKAPPPSLPSPSRLPGPSDTPILPQ
【0207】
配列番号21
>XTEN人工配列
GAPTSESATPESGPGSEPATSGSETPGTSESATPESGPGSEPATSGSETPGTSESATPESGPGTSTEPSEGSAPGASS
【0208】
配列番号22
>XTEN人工配列
GAPGSPAGSPTSTEEGTSESATPESGPGSEPATSGSETPASS
【配列表】
0007576039000001.app