(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】エンジン及び/又は集合体カプセル
(51)【国際特許分類】
G10K 11/16 20060101AFI20241023BHJP
C08G 18/54 20060101ALI20241023BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20241023BHJP
C08G 18/63 20060101ALI20241023BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20241023BHJP
B32B 1/00 20240101ALI20241023BHJP
B32B 5/20 20060101ALI20241023BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20241023BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20241023BHJP
C08G 101/00 20060101ALN20241023BHJP
【FI】
G10K11/16 150
C08G18/54
C08G18/48
C08G18/63
B32B7/022
B32B1/00 Z
B32B5/20
B60R13/08
G10K11/168
C08G101:00
(21)【出願番号】P 2021562986
(86)(22)【出願日】2020-04-21
(86)【国際出願番号】 EP2020061090
(87)【国際公開番号】W WO2020216743
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】102019110463.7
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513044337
【氏名又は名称】アドラー ペルツァー ホルディング ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Adler Pelzer Holding GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リーデラー、フランク
(72)【発明者】
【氏名】カルチ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シュルツェ、フォルクマー
(72)【発明者】
【氏名】キアシュ、フォルカー
(72)【発明者】
【氏名】ハルト、アンドレアス
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-175483(JP,A)
【文献】特開昭63-192997(JP,A)
【文献】特開昭61-273943(JP,A)
【文献】国際公開第2017/159646(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/10-13/00
C08G 18/00-18/87
B32B 1/00-43/00
B60R 13/01-13/08
C08G 101/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンフォーム材料(3)で背面発泡される遮音キャリア層(2)で構成され、ヒンジ(4)及び閉じタブ(5)を有している、完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)であって、
前記キャリア層(2)は、60~95の範囲のショア(A)硬度を有する可撓性化合物で構成され、その厚さは、1.2~4mmの範囲であり;
面積当たりの重量が、一方では、1.2~3.0g/cm
3の範囲の化合物密度に応じ、他方では、全領域(被覆領域)における要件に関連して異なるキャリア層の厚さ(6、6.1)からもたらされ;
前記
ポリウレタンフォーム(3)は、以下の特性:
45~105g/
lの範囲の密度、
20~250kN/
m
2
の範囲の貯蔵弾性率、及び
0.3~0.
8の損失係数
を備え、
ポリウレタンフォーム配合物は、
ポリウレタンフォーム
(3)を作製するために、
a)ヒドロキシル官能性が3であり、ヒドロキシル価が160~240mgKOH/gの範囲であるノボラックポリオール、
b)ヒドロキシル官能性が3であり、ヒドロキシル価が20~40mgKOH/gの範囲であるポリエーテルポリオール、
c)ヒドロキシル価が25~45mgKOH/gの範囲であるブロック/コポリマー、
及び
d)触媒添加剤と安定化添加剤との組合せ
を含むことを特徴とする完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)。
【請求項2】
前記キャリア層(2)は、一方では、全領域(被覆領域)における射出成形ツールの異なるギャップ幅によって実現され、他方では、全領域(被覆領域)における一部分に配置される交換可能なインサートによって実現される要件の結果としての全領域(被覆領域)における異なるキャリア層の厚さ(6、6.1)を有することを特徴とする請求項1に記載の完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)。
【請求項3】
熱管理を行うための流体搬送用導通部が、前記
ポリウレタンフォーム(3)に発泡形成されていることを特徴とする請求項1に記載の完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)。
【請求項4】
前記ヒンジ(4)が存在せず、前記カプセル(1)は2つの半シェルを含むことを特徴とする請求項1に記載の完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、エンジン及び/又は集合体を完全に包囲する音響的及び熱的に効果的なカプセルであり、ポリウレタンフォームで背面発泡された遮音キャリア層からなり、ヒンジ及び閉じタブを有し、ケーブルなどの接続用の開口部がフォームで囲まれているものである。
【背景技術】
【0002】
機械、電気機械、又は電気装置が発する騒音を低減するために、その筺体は遮音カプセルで囲まれている。このカプセル又はスリーブは、吸音性複合材料の壁を有し、この壁は、重層としてのプラスチックキャリア層と、機械の筐体と接触する内層としての吸音層とを備えている。このようなスリーブ又はカプセルは、例えば、自動車の電気モーター、ギアボックス、コンプレッサーなどの防音用として知られている。
【0003】
機械の筐体の周りに配置された後、既知のスリーブ又はカプセルは、特に、拡大リベット、ネジ、プラグイン接続、スナップファスナー、フッククランプ、ベルクロ(登録商標)や接着テープなどの手段で一体に、または所定の位置に保持される。このような遮音材の組み立ては比較的複雑であり、その結果、追加の組み立て作業の増加やコストの増加につながる。
【0004】
従来の技術では、1つ又は複数のパーツで構成され、通常は異なる材料の組み合わせで構成される封止材が知られている。表皮に近い位置でのカプセル化(近距離型カプセル化)と、表皮から遠い位置でのカプセル化(中距離型カプセル化)と、さらには車体の輪郭に沿ったカプセル化(車体型カプセル化)とが区別されることが多く、例えば、ドイツ特許出願公開第102006027230号明細書、及びドイツ特許出願公開第102012106644号明細書を挙げることができる。
【0005】
近距離でのカプセル化の場合は、トップカバー、コールド(吸気)側、ドライブベルト(チェーン)側、オイルパン側、ギアボックス側、ホット(排気)側とさらに区別されている。
【0006】
トップカバーは、例えば、国際公開公報第2016/166196号明細書、国際公開第2016/166217号明細書、国際公開第2016/166218号明細書に、材料面から記載されている。
【0007】
ドイツ特許出願公開第102004022895号明細書は、自動車のエンジン及び/又は排気システムをシールドするための、少なくとも部分的に中空体として形成された熱可塑性材料製の外装要素を開示している。
【0008】
ドイツ特許出願公開第102015108583号明細書は、部品を封入するための、PURフォーム、特にいわゆるインテグラルスキンフォーム製の筐体を開示している。
【0009】
ドイツ特許出願公開第102015217100号明細書及びドイツ特許出願公開第102015205746号明細書は、自動車用機能部品で、異なる層が発泡接着剤によって接着された熱絶縁及び/又は遮音絶縁部品を開示している。
【0010】
熱音響モーターのカプセル化に関する一般的な情報は、Mantovani M.et al. ATZ 01/2010,pp.20-25、及びBurgin, T.et al, ATZ 03/2014,pp.34-39に記載されている。
【0011】
軟質弾性及び粘弾性ポリウレタン成形フォームは、車両音響の分野で広く使用されている。一般的な軟質弾性フォームは、一般的に「高弾性」型に分類され、自発的又は急速な回復挙動を示す顕著なバネ特性を示す。これに対して、粘弾性フォームは、軟質弾性フォーム型とは本質的に異なる特徴として、圧力変形後の遅れた回復挙動を特徴とする。「高弾性」フォームと比較して、粘弾性フォームは一般的に著しく良好な減衰特性を達成する。
【0012】
また、軽量のフォーム、通常はカットされたフォームやメラミン樹脂フォームも使用される。
【0013】
これらのフォームの典型的な材料特性は、主に、使用するポリオールの種類と添加剤、それらの量分布、架橋度、及び選択された密度によって決まる。自動車の音響的に有効なバネ質量カプセル化のために意図される使用に関して、早期のエージングや加水分解物質の分解さえをもしばしばもたらす湿度条件と組み合わせた高温を考慮して、ポリエステル又はポリエーテルポリオールのいずれかが使用される。現在の用途では、主に標準フォーム(FIRフォーム)が使用されている。さらに、これらの標準的なフォーム(従来のポリエーテル系に基づく)は、ポリエステル系タイプよりも加水分解の影響を受けにくいが、上記の厳しく変更されたエージング条件に耐えるほど十分に安定ではない。基本的に、高温は、早期の材料老化につながり、乾燥状態は脆さにつながり、加水分解状態(高温と湿度の組み合わせによる)は、軟化効果、機械的・音響的特性の損失、さらには材料の完全な永久劣化につながる。
【0014】
まだ未公開のDE102018130184では、粘弾性特性を有する軟質弾性PUR成形フォームの製造のための(特にそれをベースにしたフォームによる防音のための)、それ自体は従来のポリエーテルポリオール及びノボラックポリオールに、特にMDIを加えたポリウレタンフォーム配合物が記載されている。
【0015】
これまで、自動車のエンジンやトランスミッション用の既知のカプセル化の耐加水分解性にはほとんど注意が払われていなかった。新しい成形フォームの開発において、既知の成形フォームの経年劣化の弱点が発見された。既知の粘弾性成形フォームは、圧縮永久歪みに関して、典型的な弱点がある。さらに、圧縮永久歪みは、特に加水分解プロセスによって引き起こされる材料の老化の指標としてしばしば使用される。さらに、加水分解条件は、引張強度、破断伸び、圧縮荷重などの機械的特性の大幅な低下に代表される一般的な変性をもたらす。
【0016】
まだ未公開のDE102018133366では、スリーブと、合成材料キャリア層を備えた吸音複合材料の壁からなる、機械の防音用デバイスが記載されている。これは、新規のフラップ封鎖を主な特徴とする、非完全包囲型/完全包囲型の「スリーブ」である。
【0017】
背面発泡粘弾性PURフォームを備えた絶縁キャリア層からなる完全包囲型のエンジン又は集合体のカプセル化を記載したカプセル化は、先行技術では知られていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の先行技術と比較した場合の本発明の課題は、エンジン又は集合体を完全に包囲するエンジン/集合体カプセルの提供することであり;ケーブルなどの接続用の開口部が発泡/密閉され、個々のカプセル要素の重なりが防音になるように設計/成形されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)の一実施形態を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)の一実施形態を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)における、ケーブルやその他の接続用の開口部が、フォーム(3)で発泡/密封されていることを示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)のエッジ/オーバーラップ設計(プラグイン接続)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1の実施形態では、本発明の目的は、PURフォーム(3)で背面発泡される遮音キャリア層(2)で構成され、ヒンジ(4)及び閉じタブ(5)を有している、完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)であって、
前記キャリア層(2)は、60~95の範囲のショア(A)硬度を有する可撓性化合物で構成され、その厚さは、1.2~4mmの範囲であり;
面積当たりの重量が、一方では、1.2~3.0g/cm
3の範囲の化合物密度に応じ、他方では、全領域(被覆領域)における要件に関連して異なるキャリア層の厚さ(6、6.1)からもたらされ;
前記PURフォーム(3)は、以下の特性:
45~105g/l、特には55~85g/lの範囲の密度、
20~250kN/m
2、特には40~100kN/m
2の範囲の貯蔵弾性率、及び
0.3~0.8、特には0.33~0.50の損失係数
を備え、
前記ポリウレタンフォーム配合物は、粘弾性PUR成形フォームを作製するために、
a)ヒドロキシル官能性が3であり、ヒドロキシル価が160~240mgKOH/gの範囲であるノボラックポリオール、
b)ヒドロキシル官能性が3であり、ヒドロキシル価が20~40mgKOH/gの範囲であるポリエーテルポリオール、
c)ヒドロキシル価が25~45mgKOH/gの範囲であるブロック/コポリマー、及び
d)触媒添加剤と安定化添加剤(それ自体既知)との組合せ
を含む、ことを特徴とする完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)である(特に
図1参照)。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、前記キャリア層(2)が、一方では、全領域(被覆領域)における射出成形ツールの異なるギャップ幅によって実現され、他方では、全領域(被覆領域)における一部分に配置される交換可能なインサートによって実現される、全領域(被覆領域)における異なるキャリア層の厚さ(6、6.1)を有することを特徴とする完全包囲型のエンジン又は集合体カプセル(1)を含む(特に
図2参照)。
【0022】
さらなる実施形態は、熱管理を行うための流体搬送用導通部が、前記PURフォーム(3)に発泡形成されていることを特徴とする。
【0023】
完全包囲型のモーター及び/又は集合体カプセル(1)のケーブルやその他の接続用の開口部は、フォーム(3)で発泡/密封されている(特に
図4参照)。
【0024】
図5は、本発明の完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセル(1)のエッジ/オーバーラップ設計(プラグイン接続)を示している。
【0025】
用途によっては、キャリア層(2)を背面発泡させた後に、フォーム(3)を巻き上げることが有効な場合がある。これにより、フォームのセルが破壊され、フォーム(3)の音響効率が向上し、またより柔らかくなる。
【0026】
本発明のポリウレタンフォーム配合物は、基本的な粘弾性音響要件を満たし、加水分解老化に関して新たに定義された基準にも適合する成形フォームを可能にする特定の材料組成物に基づいている。ベースとなるポリエーテルポリオールは、従来のフォーム組成物と同様に、基本的に柔らかくフレキシブルなフォーム製品を可能にする。粘弾性特性と、大幅に改善された耐熱性と耐加水分解性の要求される組み合わせは、高芳香族ノボラック型ポリオールを使用することで達成される。このポリオールの分子構造は、ハードセグメントに適した構成要素を提供するとともに、耐熱性と耐加水分解性を強力にサポートする。ノボラック型ポリオールの実際の適用分野は硬質ポリウレタンであるため、本発明にはノボラック型ポリオールの配合が不可欠である。
【0027】
閉じた設計とオーバーラップ設計が一体となっているキャリア層は、柔軟性(曲げやわらかさ)を備える必要がある。この点で、プラスチックキャリア層が、ショア(A)硬度が60~95の範囲、特に70~85の範囲にある材料からなると有利である。キャリア層(重層)に適したプラスチック材料は、例えば、EVA/PE、PE、PP、EPDM、TPE、TPO、及び用途に特有な化合物である。
【0028】
本発明の核心は、音響的にも熱的にも効果的で、完全包囲型のエンジン及び/又は集合体カプセルを提供することであり、このカプセルでは、耐加水分解性粘弾性PURフォームと組み合わせて、要求に応じて異なる設計のキャリア層領域上の面積あたりの重量と、防音カプセル要素のオーバーラップ設計が密接に関連している。
【0029】
本発明の利点は、オーバーラップ機構と閉じた機構が一体化したキャリア層と、キャリア層が要求に応じた面積当たりの重量を持つことができるフォームシステムとの組み合わせであり、フォームシステムが音響的に非常に効果的で、特に加水分解にも耐性があり、完全包囲されたカプセルの開口部が、カプセル要素/シェルの(形状に合わせた)エッジ/オーバーラップ設計のように、音響的な漏れポイントにならないことである。
【0030】
実施形態の例:
PP系化合物を用いて、射出成形により、坪量3.00kg/m2、全域で均一、ショア(A)硬度72のキャリア層を作製した。これを、密度85g/l、貯蔵弾性率95kN/m2、損失係数0.5の軟質接着性PURフォームで背面発泡させた。このカプセルを集合体の周りに適用した後、テストスタンドで測定した(Micro-flownプローブによるスキャン&ペイント強度測定)。
【0031】
図3はその測定結果で、音響効果がはっきりと確認できる。
Scan&Paint測定では、Microflown PUプローブを用いて測定対象物をスキャンする。測定値から音響の強さのレベルを算出し、色分けして表示することができる(赤=高レベル、青=低レベル)。写真は、1/3オクターブの中心周波数の例を示す。
【符号の説明】
【0032】
リファレンスリスト
1 カプセル
2 キャリア層
3 フォーム
4 ヒンジ
5 閉じタブ
6 キャリア層の厚み
7 集合体壁