(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】射出成形機システム、および金型、ならびに成形品の成形方法
(51)【国際特許分類】
B29C 45/14 20060101AFI20241023BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20241023BHJP
B29C 45/26 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
B29C45/14
B29C45/17
B29C45/26
(21)【出願番号】P 2022001178
(22)【出願日】2022-01-06
【審査請求日】2024-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(72)【発明者】
【氏名】中山 清貴
(72)【発明者】
【氏名】内藤 章弘
(72)【発明者】
【氏名】上村 孝志
(72)【発明者】
【氏名】須佐 圭呉
(72)【発明者】
【氏名】松崎 孝治
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆貴
(72)【発明者】
【氏名】西田 正三
【審査官】久慈 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-008399(JP,A)
【文献】特開2008-221575(JP,A)
【文献】特開2015-116712(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/14
B29C 45/17
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機と、
前記射出成形機に設けられている金型と、
加熱手段と、
押圧手段と、を備え、
前記金型は、型閉じあるいは型締めすると少なくとも2個以上の1次成形用キャビティと、
少なくとも1個以上の2次成形用キャビティと、が形成されるようになっており、
前記1次成形用キャビティは、射出成形により接合端面を有する1次成形品を成形するためのものであり、
前記2次成形用キャビティは、前記1次成形用キャビティから取り出された一対の前記1次成形品が入れられ、前記金型の型閉じあるいは型締めによって一対の前記1次成形品から成形品を成形するためものであり、
前記加熱手段は、前記2次成形用キャビティに入れられた一対の前記1次成形品の前記接合端面を溶融するためのものであり、
前記押圧手段は、前記金型を型閉じあるいは型締めした状態において、前記接合端面が溶融された一対の前記1次成形品同士を押圧して融着し成形品を得るためのものである、射出成形機システム。
【請求項2】
前記射出成形機システムは搬送手段を備え、前記搬送手段は前記1次成形用キャビティにおいて成形された前記1次成形品を前記2次成形用キャビティに搬送するようになっている、請求項1に記載の射出成形機システム。
【請求項3】
前記加熱手段は赤外線を照射して前記接合端面を非接触的に溶融するヒータからなる、請求項1または2に記載の射出成形機システム。
【請求項4】
前記2次成形用キャビティはスライドコアを備え、前記押圧手段により前記スライドコアが前記金型のパーティングラインと垂直な方向に駆動されるようになっている、請求項1~3のいずれかの項に記載の射出成形機システム。
【請求項5】
前記押圧手段は前記金型のパーティングラインと平行にスライドするスライド部材を備え、前記スライドコアの背面と前記スライド部材の表面はそれぞれテーパ面に形成されていると共に前記テーパ面同士が摺動的に接している、請求項4に記載の射出成形機システム。
【請求項6】
前記押圧手段はエジェクタロッドからなり、前記スライドコアは前記エジェクタロッドによって駆動される、請求項4に記載の射出成形機システム。
【請求項7】
前記射出成形機は、互いに型締めされる複数個の型盤を備え、
前記金型は複数個の前記型盤に設けられていると共に複数面のパーティングラインを備え、型閉じあるいは型締めすると前記複数面のパーティングラインのそれぞれに2個以上の前記1次成形用キャビティと1個以上の前記2次成形用キャビティとが形成されるようになっている、請求項1~6のいずれかの項に記載の射出成形機システム。
【請求項8】
前記金型は複数面のパーティングラインを備えたスタックモールドからなり、型閉じあるいは型締めすると前記複数面のパーティングラインのそれぞれに、2個以上の前記1次成形用キャビティと1個以上の前記2次成形用キャビティとが形成されるようになっている、請求項1~6のいずれかの項に記載の射出成形機システム。
【請求項9】
前記射出成形機システムは制御部を備え、前記制御部は前記金型を型締めして前記1次成形用キャビティに射出して前記1次成形品を成形する射出工程と、
前記金型を型開きして一対の前記1次成形品を取り出して前記2次成形用キャビティに挿入して前記加熱手段により前記接合端面を溶融する溶融工程と、
前記金型を型閉じあるいは型締めして、前記押圧手段により一対の前記1次成形品同士を押圧して溶着により成形品を得る溶着工程と、を実施する、請求項1~8のいずれかの項に記載の射出成形機システム。
【請求項10】
前記射出成形機システムは、前記射出工程と前記溶着工程とを並行して実質的に同時に実施するようにし、前記成形品を得るとき、次回に溶着する一対の前記1次成形品を成形するようにする、請求項9に記載の射出成形機システム。
【請求項11】
型閉じあるいは型締めすると、少なくとも2個以上の1次成形用キャビティと、
少なくとも1個以上の2次成形用キャビティと、を備え、
前記1次成形用キャビティは、射出成形により1次成形品を成形するためのものであり、
前記2次成形用キャビティは、パーティングラインと垂直な方向に駆動されるようになっているスライドコアを備えていると共に前記1次成形用キャビティから取り出された一対の前記1次成形品が入れられるようになっている、金型。
【請求項12】
射出成形機と、
前記射出成形機に設けられている金型と、
加熱手段と、
押圧手段と、を備え、
前記金型は、型閉じあるいは型締めすると少なくとも2個以上の1次成形用キャビティと、
少なくとも1個以上の2次成形用キャビティと、が形成されるようになっている、射出成形機システムにおいて成形品を成形する成形方法であって、
前記成形方法は、前記金型を型締めして2個以上の前記1次成形用キャビティに射出材料を射出して接合端面を有する2個以上の1次成形品を成形する射出成形工程と、
前記金型を型開きする型開工程と、
2個以上の前記1次成形用キャビティから前記1次成形品を取り出して一対の前記1次成形品として前記2次成形用キャビティに挿入する搬送工程と、
前記2次成形用キャビティに入れられた一対の前記1次成形品のそれぞれの前記接合端面間に前記加熱手段を挿入し、前記接合端面を溶融する溶融工程と、
前記加熱手段を退避して前記金型を型閉じあるいは型締めする金型閉鎖工程と、
前記押圧手段により、前記2次成形用キャビティの中において前記接合端面が溶融された一対の前記1次成形品同士を押圧して融着し成形品を得る、押圧融着工程と、を備える成形品の成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形により1次成形品を2個以上成形し、1次成形品を一対にしてそれらの接合端面を溶融して融着し成形品を成形するようになっている射出成形機システム、および金型、ならびに成形品の成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
接合端面を有する1次成形品を一対、射出成形により成形する。そして一対の1次成形品についてそれぞれの接合端面を溶融し、接合端面を融着すると1個の成形品が得られる。特許文献1には、このような成形品の製造方法を実施する射出成形機システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1に記載の射出成形機システムは、いわゆる対向2頭式の射出成形機と、ハロゲンヒータまたはカーボンヒータからなるヒータとを備えている。対向2頭式の射出成形機は、型締装置と2個の射出装置とからなる。型締装置は、ベッドに固定されている固定盤と、ベッドをスライドする可動盤と、固定盤と可動盤の間に回転可能に設けられベッドをスライドする中間盤とを備えている。固定盤と中間盤と可動盤にはそれぞれ金型が設けられ、型締めすると固定盤の金型と中間盤の金型とが、そして中間盤の金型と可動盤の金型とが、それぞれ型締めされる。つまり複数の金型が型締めされるとき、2面のパーティングラインにおいてキャビティが形成される。固定盤と可動盤のそれぞれに設けられている射出装置から樹脂を射出すると、固定盤と中間盤の間に1個、可動盤と中間盤の間に1個、それぞれ1次成形品が成形される。
【0005】
型開きする。そうすると、1個の1次成形品は固定盤の金型に、他の1個の1次成形品は中間盤の金型にそれぞれ残った状態で型開きされる。中間盤を回転する。つまり反転する。そうすると2個の1次成形品が対向する。固定盤と中間盤の型開き量を小さくし、2個の1次成形品の間に非接触的にヒータを挿入し、加熱する。2個の1次成形品には接合端面が形成されており、これら接合端面が溶融する。ヒータを退避して、固定盤と中間盤とを型締めする。そうすると、2個の1次成形品が接合端面同士で溶着し、成形品が得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の射出成形機システムでは、効率よく成形品を成形でき優れている。しかしながら、型締めによって2個の1次成形品同士を確実に融着するには、1次成形品について高い寸法精度が要求される。2個の1次成形品の寸法が許容範囲より小さいと、型締めしても融着が不十分になるからである。一方、2個の1次成形品の寸法が許容範囲より大きい場合には、2個の1次成形品をそれらの接合端面を溶融した後に金型を型締めするとき、溶融した一部の樹脂が金型のパーティングラインに漏れて金型を痛める可能性がある。
【0007】
本開示において、一対の1次成形品から成形品を成形するとき確実に融着させることができ金型を痛める虞がない射出成形機システム、および金型、ならびに成形品の成形方法を提供する。
【0008】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、射出成形機と、金型と、加熱手段と、押圧手段と、を備えた射出成形機システムとして構成する。金型は、型閉じあるいは型締めすると少なくとも2個以上の1次成形用キャビティと、少なくとも1個以上の2次成形用キャビティと、が形成されるようになっている。射出成形により1次成形用キャビティに射出すると接合端面を有する2個以上の1次成形品が成形される。2次成形用キャビティに一対の1次成形品を入れ、加熱手段によりそれぞれの接合端面を溶融し、型閉じあるいは型締めする。ついでこれら接合端面が溶融された一対の1次成形品同士を押圧手段により押圧すると互いに融着し成形品が形成される。
【発明の効果】
【0010】
本開示は、押圧手段により一対の1次成形品同士を押圧するので1次成形品と金型の寸法において許容範囲が大きくなり一対の1次成形品を確実に融着させて成形品を得ることができ、金型を痛める虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る射出成形機システムを示す上面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る射出成形機の一部と、金型と、押圧手段とを示す正面図である。
【
図3A】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3B】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3C】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3D】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3E】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3F】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図3G】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を実施している、射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る成形品の成形方法を示すフローチャートである。
【
図5A】第2の実施の形態に係る成形品の製造方法を実施している、本実施の形態に係る射出成形機の一部と金型と示す正面断面図である。
【
図5B】第2の実施形態に係る成形品の製造方法を実施している、射出成形機の一部と金型と示す正面断面図である。
【
図6】第3の実施形態に係る射出成形機システムの一部を示す上面図である。
【
図7】第3の実施形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図8】第4の実施形態に係る射出成形機システムを示す上面図である。
【
図9】第4の実施形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図10】第5の実施形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【
図11】第6の実施形態に係る射出成形機の一部と金型とを示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下の実施の形態に限定される訳ではない。説明を明確にするため、以下の記載及び図面は、適宜簡略化されている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。また、図面が煩雑にならないように、ハッチングが省略されている部分がある。
【0013】
[第1の実施形態]
<射出成形機システム>
第1の実施形態に係る射出成形機システム1は、
図1に示されているように、射出成形機2と、射出成形機2に近接して設けられている加熱手段であるヒータ装置3と、同様に射出成形機2に近接して設けられている搬送装置5と、を備えている。射出成形機2には金型4が設けられ、この金型4に関連して押圧手段6が設けられている。
【0014】
<射出成形機>
第1の実施形態に係る射出成形機2は、ベッドBDに設けられている型締装置7と射出装置9とから構成されている。
【0015】
<型締装置>
型締装置7は、ベッドBD上に固定されている固定盤12と、ベッドBD上をスライド自在に設けられている型締ハウジング13と、固定盤12と型締ハウジング13の間においてベッドBD上をスライド自在に設けられている可動盤14と、を備えている。固定盤12と型締ハウジング13は複数本のタイバー16、16、…により連結されており、タイバー16、16、…は可動盤14を貫通している。型締ハウジング13と可動盤14の間には型締機構であるトグル機構18が設けられている。したがって、トグル機構18を駆動すると可動盤14が駆動されるようになっている。なお、型締機構には型締シリンダ等の他の機構を採用することもできる。
【0016】
<射出装置>
射出装置9は、加熱シリンダ20と、この加熱シリンダ20内に入れられているスクリュ21とを備えている。加熱シリンダ20の先端には射出ノズル22が設けられ、次に詳しく説明する金型4に所定のタッチ力でタッチしている。
【0017】
<金型>
第1の実施形態に係る金型4は、
図2に示されているように、固定盤12に設けられている第1金型24と、可動盤14に設けられている第2金型25と、からなる。第1金型24には、第1の凸部27と、第1の凹部28と、第2の凹部29とが形成されている。第1金型24にはランナ30が設けられ、射出装置9から射出される射出材料が流れるようになっている。第2金型25には、第3の凹部32と、第2の凸部33とが形成されている。後で説明するように、金型4が型閉じ、あるいは型締めされると第1の凸部27と第3の凹部32とから、そして第1の凹部28と第2の凸部33とから、それぞれ1次成形用キャビティが構成されるようになっている。
【0018】
第2金型25には、第1金型24の第2の凹部29に対向する位置に、本実施の形態において特徴的な構造が設けられている。すなわち、第2金型25にはコア収納穴35が形成され、このコア収納穴35にスライド自在にスライドコア36が入れられている。スライドコア36には第4の凹部38が形成されている。したがって、後で説明するように金型4が型閉じあるいは型締めされると、第2の凹部29と第4の凹部38とから2次成形用キャビティが構成されるようになっている。スライドコア36の背面側にはテーパ面39が形成されている。次に説明する押圧手段6によってこのテーパ面39が押され、スライドコア36が駆動されることになる。
【0019】
<押圧手段>
第1の実施形態において押圧手段6は、第2金型25に設けられている油圧シリンダ42と、油圧シリンダ42によって駆動されるスライド部材44と、から構成されている。スライド部材44は、第2金型25に挿入されるようになっている。つまり第2金型25にはコア収納穴35に連通する挿入口45が開けられており、スライド部材44はこの挿入口45から挿入され、その一部がコア収納穴35に達している。スライド部材44にはテーパ面46が形成されており、このテーパ面46がスライドコア36のテーパ面39と摺動的に接している。スライド部材44は油圧シリンダ42によって駆動され、パーティングラインPと平行にスライドするようになっている。スライド部材44が駆動されると、テーパ面39、46同士の作用により、スライドコア36がパーティングラインPに対して垂直な方向に駆動されることになる。
【0020】
<ヒータ装置>
第1の実施形態に係るヒータ装置3は、
図1に示されているように、固定盤12の近傍に設けられている。ヒータ装置3はヒータ47と、このヒータ47を前後にスライド的に駆動する駆動部48とから構成されている。ヒータ47はカーボンヒータ、あるいはハロゲンヒータからなる。ヒータ47は、図示されない電力供給部から電流が供給されるようになっており、通電後数秒で1000℃以上に達する。したがって、短時間で非接触的に近傍の樹脂を溶融することができる。つまり本実施の形態に係るヒータ装置3は単なる加熱手段であるだけでなく非接触加熱手段になっている。
【0021】
<搬送装置>
第1の実施形態において搬送装置5は、
図1に示されているように、ロボットアームからなり、後で説明するように、射出成形された1次成形品を1次成形用キャビティから取出して2次成形用キャビティに搬送する搬送手段になっている。
【0022】
<成形品の成形方法>
射出成形機システム1(
図1、2参照)を使用して成形品を成形する成形方法を説明する。まず、
図4に示されているように、射出成形工程S1を実施する。射出成形機2において型締装置7を駆動し金型4を型締めする。型締めされると、
図3Aに示されているように、第1の凸部27と第3の凹部32とから第1の1次成形用キャビティ50が、そして第1の凹部28と第2の凸部33とから第2の1次成形用キャビティ51がそれぞれ形成される。射出装置9から射出材料を射出して第1、2の1次成形用キャビティ50、51に充填し、第1、2の1次成形品52、53すなわち一対の1次成形品52、53を成形する。
【0023】
一対の1次成形品52、53が冷却固化したら、
図4に示されているように型開工程S2を実施する。すなわち、型締装置7を駆動して金型4を型開きする。
図3Bに示されているように、第1の1次成形品52は第2金型25の第3の凹部32に、そして第2の1次成形品53は第1金型24の第1の凹部28に残された状態になる。第1、2の1次成形品52、53には、それぞれ接合端面52s、53sが形成されている。
【0024】
ついで、
図4に示されているように搬送工程S3を実施する。すなわち、搬送装置5(
図1参照)により、第1の1次成形品52を第3の凹部32から取り出してスライドコア36の第4の凹部38に挿入し、第2の1次成形品53を第1の凹部28から取り出して第2の凹部29に挿入する。一対の1次成形品52、53が第4の凹部38と第1の凹部28とに挿入された状態が
図3Cに示されている。これら一対の1次成形品52、53はそれぞれの接合端面52s、53sが対向した状態になる。
【0025】
図4に示されているように溶融工程S4を実施する。まず、型締装置7(
図1参照)を駆動して、
図3Dに示されているように、一対の1次成形品52、53のそれぞれの接合端面52s、53s同士を近づける。ヒータ装置3を駆動してヒータ47を接合端面52s、53sの間に非接触的に挿入する。ヒータ47に通電して、接合端面52s、53sを非接触的に溶融する。あるいは、最初にヒータ装置3を駆動して接合端面52s、53sの間に位置するようにしておき、次いで型締装置7を駆動して接合端面52s、53sとヒータ47とを近接させるようにしてもよい。ヒータ47により接合端面52s、53sが溶融したら、ヒータ装置3を駆動してヒータ47を退避させる。
【0026】
図4に示されているように、押圧融着工程S5を実施する。すなわち、型締装置7を駆動して金型4を型閉じする。あるいは型締めする。そうすると
図3Eに示されているように、第1の1次成形品52が入れられたスライドコア36の第4の凹部38と、第2の1次成形品53が入れられた第2の凹部29とからキャビティが構成される。すなわち2次成形用キャビティ55が構成される。このとき、一対の1次成形品52、53のそれぞれの接合端面52s、53sはわずかに離間した状態になっている。離間した状態になっているので、溶融した接合端面52s、53sから樹脂が側方に押し出されてパーティングラインPに漏れ出すことはない。
【0027】
図3Fに示されているように、押圧手段6を駆動する。すなわち油圧シリンダ42を駆動してスライド部材44を下方にスライドさせる。そうするとテーパ面39、46同士の作用によりスライドコア36がパーティングラインPと垂直な方向に駆動される。これによって一対の1次成形品52、53同士を押圧し、接合端面52s、53s同士が融着する。成形品56が成形される。押圧手段6により押圧するので、一対の1次成形品52、53は確実に融着させることができる。つまり1次成形品52、53に要求される寸法精度は比較的ゆるやかであり、安定的に成形することができる。
【0028】
型締装置7を駆動して金型4を型開きすると、
図3Gに示されているように成形品56が得られる。このとき、押圧手段6の油圧シリンダ42を駆動してスライド部材44を上方にスライドさせる。図には示されていないが、スライドコア36には例えばバネ等が設けられコア収納穴35の奥に向かって付勢されている。スライド部材44が上方にスライドすると、スライドコア36はコア収納穴35の奥にスライドする。すなわち次の成形サイクルに備える。以下、同様にして成形サイクルを繰り返す。
【0029】
[第2の実施形態]
<射出成形機システム>
第2の実施形態に係る射出成形機システムの構成は、第1の実施形態に係る射出成形機システム1の構成と同じである。
【0030】
<成形品の成形方法>
第2の実施形態に係る成形品の成形方法は、第1の実施形態に係る成形品の成形方法の変形である。端的に説明すると
図4のフローチャートにおいて、押圧融着工程S5を実施しているとき、次の成形サイクルの射出成形工程S1を実質的に同時に実施して、効率よく成形品を得る成形方法である。
【0031】
まず、第1の実施の形態に係る成形品の成形方法と同様にして、
図3A~
図3Dに示されているように、射出成形工程S1、型開工程S2、搬送工程S3、および溶融工程S4を順次実施する。ついで、
図5Aに示されているように、押圧融着工程S5と、次の射出成形工程S1とを並行して実施する。ところで、第1の実施形態に係る成形品の製造方法においては、第4の凹部38と第2の凹部29とから2次成形用キャビティ55を構成するとき、金型4を型締めではなく、型閉じしても構わないように説明した。しかしながら第2の実施の形態に係る成形品の成形方法では、金型4を型締めして型締力を発生させる。射出成形工程S1に備えるためである。押圧手段6により一対の1次成形品52、53同士を押圧して成形品56を成形する。並行して射出装置9から射出材料を射出して、第1、2の1次成形用キャビティ50、51から第1、2の1次成形品52、53を成形する。
【0032】
成形品56が得られたら、
図5Bに示されているように、型締装置7を駆動して金型4を型開きして成形品56を取り出す。射出成形により成形された第1の1次成形品52は第2金型25の第3の凹部32に、そして第2の1次成形品53は第1金型24の第1の凹部28に残された状態になる。第1の実施の形態において説明したように、搬送工程S3、溶融工程S4(
図4参照)を実施する。以下同様にして成形する。第2の実施の形態は、金型4を型締めする毎に成形品56を得ることができ、効率が高い。
【0033】
[第3の実施形態]
<射出成形機システム>
第3の実施形態に係る射出成形機システム1Aは、
図6に示されている。第3の実施の形態に係る射出成形機システム1Aは、いわゆる2頭式の射出成形機2Aと、2台のヒータ装置3A、3aと、搬送装置5と、射出成形機2Aに設けられている金型4Aと、2台の押圧手段6A、6aとから構成されている。
【0034】
<射出成形機>
第3の実施形態に係る射出成形機2Aは、ベッドBDに設けられている型締装置7Aと2台の射出装置9A、9aとから構成されている。型締装置7Aは、3個の型盤を備えている。すなわち、ベッドBDに固定されている固定盤12Aと、ベッドBD上をスライド可能な可動盤58と、固定盤12Aと可動盤58の間に設けられてベッドBDをスライド可能な中間盤59とを備えている。図に示されていない型締機構を駆動すると、固定盤12Aと中間盤59と可動盤58が互いに型締めされる。2台の射出装置9A、9aの一方が固定盤12Aに、そして他方が可動盤58側に設けられ、それぞれから射出材料を射出するようになっている。
【0035】
<金型>
第3の実施形態に係る射出成形機2Aには、
図6と
図7に示されているように、4個からなる金型4Aが設けられている。具体的には、
図2において第1の実施の形態として説明した第1金型24と第2金型25とからなる金型4と同じ構造の金型が2組設けられている。つまり、
図7に示されているように1組目の金型は、固定盤12Aに設けられている第1金型24Aと中間盤59に設けられている第2金型25Aである。2組目の金型は、可動盤58に設けられている第1金型24aと中間盤59に設けられている第2金型25aである。つまり第3の実施の形態において、金型4Aはこれら4個の金型24A、25A、24a、25aから構成されている。したがって、型閉じあるいは型締めすると、パーティングラインP、Pが2面形成され、それぞれのパーティングラインP、Pにおいて2個の1次成形用キャビティと、1個の2次成形用キャビティが構成されることになる。
【0036】
第3の実施形態においては、第1金型24A、24aと第2金型25A、25aが2組設けられ、型締装置7Aを型締めすると型締力を同時に作用させることができ効率が良い。さらに、2台の射出装置9A、9aによって射出成形をすることができ、2台のヒータ装置3A、3aと2台の押圧手段6A、6aを備えているので、効率よく成形品を成形することができる。なお、搬送装置5は
図6に示されているように1台であるように説明したが、2台設けるようにしてもよい。
【0037】
[第4の実施形態]
<射出成形機システム>
図8には、第4の実施形態に係る射出成形機システム1Bが示されている。この射出成形機システム1Bの射出成形機2は、第1の実施の形態における射出成形機2と同じ構成になっている。射出成形機2に設けられている金型4Bは、いわゆるスタックモールドからなり、次に説明するように2面のパーティングラインP、Pを備えている。この金型4Bに対応するように、固定盤12と可動盤14のそれぞれに押圧手段6B、6bが設けられている。すなわち2台の押圧手段6B、6bが設けられている。第4の実施形態に係る射出成形機システム1Bには、ヒータ装置3B、3bも2台設けられている。
【0038】
<金型>
第4の実施形態に係る金型4Bは、
図9に示されている。金型4Bは、固定盤12に取り付けられる固定側取付板62と、可動盤14に取り付けられる可動側取付板63と、中間板64とを備えている。第4の実施の形態において金型4Bは、
図2において第1の実施の形態として説明した第1金型24と第2金型25とからなる金型4と同じ構造の金型が2組設けられた構成になっている。つまり、1組目の金型に相当する第1金型24Bと第2金型25Bは、それぞれ中間板64と固定側取付板62とに設けられている。そして2組目の金型に相当する第1金型24bと第2金型25bは、それぞれ中間板64と可動側取付板63とに設けられている。
【0039】
固定側取付板62には複数本のガイドロッド66、66が設けられており、中間板64はこれらガイドロッド66、66によってスライド自在に設けられている。すなわち、中間板64は固定側取付板62に対して接近方向、離間方向にスライドするようになっている。
【0040】
金型4Bは、ラックピニオン機構68を備えている。ラックピニオン機構68は、中間板64に回転自在に設けられているピニオン69と、固定側取付板62に固定されている第1のラック71と、可動側取付板63に固定されている第2のラック72とからなる。第1、2のラック71、72はピニオン69と係合している。したがって、可動盤14が駆動されて可動側取付板63がスライドすると、連動して中間板64がスライドする。すなわち、2組の第1、2金型24B、24b、25B、25bは同時に型開閉される。すなわち金型4Bは、同時に型締めされるパーティングラインP、Pが2面ある。
【0041】
なお、この実施の形態において押圧手段6B、6bは、油圧シリンダ42、42が第2金型25B、25bではなく、固定盤12と可動盤14とに設けられている。すなわち固定盤12と可動盤14とには、それぞれブラケット41、41が設けられ、これらブラケット41、41に油圧シリンダ42、42が設けられている。これら油圧シリンダ42、42は、第1の実施の形態と同様にスライド部材44、44を駆動して、スライドコア36、36をスライドするようになっている。
【0042】
第4の実施形態も第3の実施形態と同様に、第1金型24B、24bと第2金型25B、25bが2組設けられ、型締装置7を型締めすると型締力を同時に作用させることができ効率が良い。そして2面のパーティングラインP、Pのそれぞれにおいて射出成形により一対の1次成形品を成形することができる。そして、2台のヒータ装置3B、3b(
図8参照)と2台の押圧手段6B、6bを備えているので、効率よく成形品を成形することができる。なお、搬送装置5は
図8に示されているように1台であるように説明したが、2台設けるようにしてもよい。
【0043】
[第5の実施形態]
<射出成形機システム>
第5の実施形態に係る射出成形機システム1Cの一部が
図10に示されている。第5の実施形態に係る射出成形機システム1Cの構成は、第1の実施形態に係る射出成形機システム1(
図1、
図2参照)の構成に対して押圧手段6Cが変形されている。すなわち、押圧手段6Cは可動盤14に設けられた油圧シリンダ75から構成され、そのピストンロッド76は可動盤14を貫通して金型4Cのスライドコア36Cに接続されている。第5の実施形態においてスライドコア36Cはピストンロッド76によって直接駆動されるので、スライドコア36Cの背面はテーパ面に形成する必要はない。この第5の実施形態に係る射出成形機システム1Cによっても、第1の実施形態に係る射出成形機システム1と同様にして成形品を成形することができる。
【0044】
[第6の実施形態]
<射出成形機システム>
第6の実施形態に係る射出成形機システム1Dの一部が
図11に示されている。第6の実施形態に係る射出成形機システム1Dの構成は、第1の実施形態に係る射出成形機システム1(
図1、
図2参照)の構成に対して、金型4Dと押圧手段6Dとが変形されている。金型4Dは第1金型24と第2金型25Dとからなり、第1金型24は第1の実施形態に係る金型4(
図2参照)と同様に構成されているが、第2金型25Dは変形されている。具体的には、第2金型25Dにスライドコアは設けられておらず、第4の凹部38Dは第2金型25Dに形成されている。
【0045】
この第6の実施形態において、押圧手段6Dはエジェクタ装置78のエジェクタロッド79から構成されている。エジェクタロッド79は、第2金型25Dにおいて第4の凹部38Dに連通するように開けられているロッド孔80に挿入されている。第4の凹部38Dに入れられる1次成形品は、押圧融着工程S5(
図4参照)において、エジェクタロッド79によって直接押圧されるようになっている。
【0046】
<他の変形例>
第1~6の実施形態に係る射出成形機システム1、1A、…や、成形品の成形方法は色々な変形が可能である。例えば、第3の実施形態に係る射出成形機システム1A(
図6、
図7参照)において互いに型締めされる型盤を4個以上にして、同時に型締めされる金型4AのパーティングラインP、P、…を3面以上にすることもできる。同様に、第4の実施形態に係る射出成形機システム1B(
図8、
図9参照)において、スタックモールドからなる金型4Bを変形して、パーティングラインP、P、…を3面以上にすることができる。このようにパーティングラインP、P、…の面数を増やして、それぞれのパーティングラインP、P、…において一対の1次成形品を成形すると共に、1個の2次成形品を成形するようにすれば効率が高い。あるいは、第1の実施形態に係る射出成形機システム1(
図1、
図2参照)において、金型4の形状を変形して、キャビティの個数を増やせば、同様に1回の型締毎に製造できる成形品の個数を増やすことができる。
【0047】
また、第3の実施形態において、金型24Aと25Bにおいて成形する成形品と、金型24aと25bにおいて成形する成形品は異なっていてもよい。この場合、2種類の形状の異なる成形品が溶着されることとなる。ところで、第1、2の1次成形品52、53の成形は必ずしも1回の射出によって成形する必要はない。例えば、第1の1次成形品52と、第2の2次成形品53と射出容量が大きくことなる場合に射出を2回に分けることがある。すなわち、ホットランナーバルブゲートシステムなどを用いて1回目の射出により第1の1次成形品52を成形し、2回目の射出により第2の1次成形品53を成形する。このように射出を分けると、バリ、ヒケ等の成形不良を防止することができる。
【0048】
押圧手段6を変形することもできる。例えば第5の実施形態に係る射出成形機システム1C(
図10参照)において押圧手段6Cは油圧シリンダ75から構成し、ピストンロッド76によってスライドコア36Cを駆動するように説明した。この押圧手段6Cを
図11に示されているようなエジェクタ装置78のエジェクタロッド79から構成してもよい。つまり、スライドコア36をエジェクタロッド79によって駆動するようにしてもよい。第4の実施形態におけるラックピニオン機構68も変形できる。すなわちラックピニオン機構68を同等の機能を有する他の機構で代替できる。代替手段の一例として、リンク機構などを挙げることができる。
【0049】
加熱手段も変形することができる。加熱手段は、赤外線により非接触的に加熱するヒータ47からなるように説明したが、例えば加熱金属板等からヒータを構成し、接触させて加熱するようにすることもできる。この場合、1次成形品52、53(
図3D参照)のそれぞれの接合端面52s、53sにヒータを接触させ、直接溶融することになる。
【0050】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。以上で説明した複数の例は、適宜組み合わせて実施されることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 射出成形機システム 2 射出成形機
3 ヒータ装置 4 金型
5 搬送装置 6 押圧手段
7 型締装置 9 射出装置
12 固定盤 13 型締ハウジング
14 可動盤 16 タイバー
18 トグル機構 20 加熱シリンダ
21 スクリュ 22 射出ノズル
24 第1金型 25 第2金型
27 第1の凸部 28 第1の凹部
29 第2の凹部 30 ランナ
32 第3の凹部 33 第2の凸部
35 コア収納穴 36 スライドコア
38 第4の凹部 39 テーパ面
41 ブラケット 42 油圧シリンダ
44 スライド部材 45 挿入口
46 テーパ面 47 ヒータ
48 駆動部 50 第1の1次成形用キャビティ
51 第2の1次成形用キャビティ
52 第1の1次成形品 53 第2の1次成形品
55 2次成形用キャビティ 56 成形品
58 可動盤 59 中間盤
62 固定側取付板 63 可動側取付板
64 中間板 66 ガイドロッド
68 ラックピニオン機構 69 ピニオン
71 第1のラック 72 第2のラック
75 油圧シリンダ 76 ピストンロッド
78 エジェクタ装置 79 エジェクタロッド
80 ロッド孔
BD ベッド
P パーティングライン