(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】無線装置
(51)【国際特許分類】
H04W 40/14 20090101AFI20241023BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20241023BHJP
H04W 40/34 20090101ALI20241023BHJP
H04W 84/18 20090101ALI20241023BHJP
【FI】
H04W40/14
H04W4/38
H04W40/34
H04W84/18
(21)【出願番号】P 2022080609
(22)【出願日】2022-05-17
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】391040788
【氏名又は名称】三菱電機システムサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋里 翼
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 淳一
【審査官】桑江 晃
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-207587(JP,A)
【文献】特開2010-35068(JP,A)
【文献】国際公開第2013/133211(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、
前記無線機が形成する複数通りの通信経路のうちの1つであるアクティブ通信経路に従って、前記アクティブ通信経路上の無線端末との間で通信を行い、
前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ通信経路についての経路評価情報を求め、
前記経路評価情報に基づいて、前記アクティブ通信経路とする前記通信経路を他の前記通信経路に変更し、
前記通信経路は、
前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であ
り、
前記無線装置が前記アクティブ通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線機は、前記無線装置にアクノリッジパケットを送信し、前記下りパケットを受信した前記無線端末は、前記アクティブ通信経路を介して前記無線装置に応答パケットを送信し、
前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた経路評価値を反映して得られた値を前記経路評価情報として求め、
前記経路評価値には、
前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記アクノリッジパケットを受信しなかった通信状況に対する第1経路評価値と、
前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記応答パケットを受信しなかった通信状況に対する第2経路評価値とが、少なくとも定められており、
前記第1経路評価値は、前記第2経路評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする無線装置。
【請求項2】
請求項1に記載の無線装置であって、
前記経路評価値には、さらに、
前記無線装置がキャリアセンスを実行したことによって前記通信シーケンスが失敗となったことに対する第3経路評価値が定められており、
前記第1経路評価値および前記第2経路評価値はいずれも、前記第3経路評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする無線装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の無線装置であって、
前記アクティブ通信経路で使用される複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記アクティブ通信経路上の前記無線端末との間で通信を行い、
前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルについての周波数評価情報を求め、
前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更することを特徴とする無線装置。
【請求項4】
請求項
3に記載の無線装置であって、
前記周波数評価情報は、
過去に前記無線機との間で行われた各無線通信であって、前記アクティブ周波数チャネルを用いた各無線通信に対し、通信状況の良好度に応じて決定された評価値に基づく値であることを特徴とする無線装置。
【請求項5】
無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、
複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記無線機が形成する通信経路上の無線端末との間で通信を行い、
前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数についての周波数評価情報を求め、
前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更し、
前記通信経路は、
前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であ
り、
前記無線装置が前記通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線機は、前記無線装置にアクノリッジパケットを送信し、
前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた周波数評価値を反映して得られた値を前記周波数評価情報として求め、
前記周波数評価値には、
前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記アクノリッジパケットを受信しなかった通信状況に対する第1周波数評価値と、
前記無線装置がキャリアセンスを実行したことによって前記通信シーケンスが失敗となったことに対する第2周波数評価値と、が少なくとも定められており、
前記第2周波数評価値は、前記第1周波数評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする無線装置。
【請求項6】
無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、
複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記無線機が形成する通信経路上の無線端末との間で通信を行い、
前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数についての周波数評価情報を求め、
前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更し、
前記通信経路は、
前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であり、
前記無線装置が前記通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線端末は、前記通信経路を介して前記無線装置に応答パケットを送信し、
前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた周波数評価値を反映して得られた値を前記周波数評価情報として求め、
前記周波数評価値には、
前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記応答パケットを受信しなかった通信状況に対するA周波数評価値と、
前記無線装置がキャリアセンスを実行したことによって前記通信シーケンスが失敗となったB周波数評価値と、が少なくとも定められており、
前記B周波数評価値は、前記A周波数評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする無線装置。
【請求項7】
請求項6に記載の無線装置であって、
前記通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線機は、前記無線装置にアクノリッジパケットを送信し、
前記周波数評価値には、さらに、
前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記アクノリッジパケットを受信しなかった通信状況に対するC周波数評価値が定められており、
前記B周波数評価値は、前記C周波数評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする無線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線装置に関し、特に、通信条件を変更する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの無線機の間で中継機を介して通信が行われる無線通信システムがある。無線通信システムは1つまたは複数の中継機を備えており、一方の無線機から他方の無線機に至るまでの通信経路が形成される。以下の特許文献1には、無線通信端末間での無線通信データパケットの伝達が他の無線通信端末によって中継される無線通信システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、複数の中継機を備える無線通信システムには複数通りの通信経路があり、複数通りの通信経路からいずれかを通信状況に応じて選択して通信が行われる。また、無線通信システムでは、複数の周波数チャネルのいずれかを選択して通信が行われる。このような通信経路や周波数チャネル等の通信条件の選択は、簡単な処理によって行われることが期待されている。
【0005】
本発明は、複数通りの通信条件が定められている無線通信システムについて、通信条件の選択を簡単な処理によって行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、前記無線機が形成する複数通りの通信経路のうちの1つであるアクティブ通信経路に従って、前記アクティブ通信経路上の無線端末との間で通信を行い、前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ通信経路についての経路評価情報を求め、前記経路評価情報に基づいて、前記アクティブ通信経路とする前記通信経路を他の前記通信経路に変更し、前記通信経路は、前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であり、前記無線装置が前記アクティブ通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線機は、前記無線装置にアクノリッジパケットを送信し、前記下りパケットを受信した前記無線端末は、前記アクティブ通信経路を介して前記無線装置に応答パケットを送信し、前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた経路評価値を反映して得られた値を前記経路評価情報として求め、前記経路評価値には、前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記アクノリッジパケットを受信しなかった通信状況に対する第1経路評価値と、前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記応答パケットを受信しなかった通信状況に対する第2経路評価値とが、少なくとも定められており、前記第1経路評価値は、前記第2経路評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする。
【0007】
望ましくは、前記アクティブ通信経路で使用される複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記アクティブ通信経路上の前記無線端末との間で通信を行い、前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルについての周波数評価情報を求め、前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更する。
【0008】
望ましくは、前記周波数評価情報は、過去に前記無線機との間で行われた各無線通信であって、前記アクティブ周波数チャネルを用いた各無線通信に対し、通信状況の良好度に応じて決定された評価値に基づく値である。
【0009】
望ましくは、前記経路評価情報は、過去に前記無線機との間で行われた各無線通信であって、前記アクティブ通信経路に従った各通信に対し、通信状況の良好度に応じて決定された評価値に基づく値である。
【0010】
また、本発明は、無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記無線機が形成する通信経路上の無線端末との間で通信を行い、前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数についての周波数評価情報を求め、前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更し、前記通信経路は、前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であり、前記無線装置が前記通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線機は、前記無線装置にアクノリッジパケットを送信し、前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた周波数評価値を反映して得られた値を前記周波数評価情報として求め、前記周波数評価値には、前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記アクノリッジパケットを受信しなかった通信状況に対する第1周波数評価値と、前記無線装置がキャリアセンスを実行したことによって前記通信シーケンスが失敗となったことに対する第2周波数評価値と、が少なくとも定められており、前記第2周波数評価値は、前記第1周波数評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、無線機との間で直接無線通信を行う無線装置であって、複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、前記無線機が形成する通信経路上の無線端末との間で通信を行い、前記無線機との間で行われた無線通信に基づいて、前記アクティブ周波数についての周波数評価情報を求め、前記周波数評価情報に基づいて、前記アクティブ周波数チャネルとする前記周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更し、前記通信経路は、前記無線機を初段の中継機とし、1回または複数回の中継によって前記無線端末に至る経路、または、前記無線機が前記無線端末である経路であり、前記無線装置が前記通信経路を介して前記無線端末に下りパケットを送信する通信シーケンスについて、前記下りパケットを受信した前記無線端末は、前記通信経路を介して前記無線装置に応答パケットを送信し、前記通信シーケンスが複数回に亘って実行された場合に、失敗となった1回または複数回の前記通信シーケンスについて、通信状況に応じて定められた周波数評価値を反映して得られた値を前記周波数評価情報として求め、前記周波数評価値には、前記無線装置が前記下りパケットを送信した後に、前記無線装置が前記応答パケットを受信しなかった通信状況に対するA周波数評価値と、前記無線装置がキャリアセンスを実行したことによって前記通信シーケンスが失敗となったB周波数評価値と、が少なくとも定められており、前記B周波数評価値は、前記A周波数評価値に比べて、通信状況が良好でないことを示す値に定められていることを特徴とする。望ましくは、前記周波数評価情報は、過去に前記無線機との間で行われた各無線通信であって、前記アクティブ周波数チャネルを用いた各通信に対し、通信状況の良好度に応じて付された評価値に基づく値である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数通りの通信条件が定められている無線通信システムについて、通信条件の選択を簡単な処理によって行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図3】下りパケットを再送する場合の動作を示す図である。
【
図4】親機が下りパケットの送信を3回に亘って失敗した場合の動作を示す図である。
【
図5】子機が応答パケットの送信を3回に亘って失敗した場合の動作を示す図である。
【
図6】各通信状況に対応する通信経路評価値の例を示す図である。
【
図7】各通信状況に対応する周波数評価値の例を示す図である。
【
図8】親機のハードウエアの構成例を示す図である。
【
図9】子機のハードウエアの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1には、本発明の実施形態に係る無線通信システム100の構成が示されている。無線通信システム100は、各通信拠点(ノード)を構成する無線機として、親機10、中継機12-1~12-4および子機14を備えている。
図1に示されている例では、無線通信システム100に3つの通信経路16-1~16-3が形成されている。通信経路16-1は、親機10から送信されたパケットが中継機12-1で中継され、子機14で受信される通信経路である。通信経路16-2は、親機10から送信されたパケットが、中継機12-2および12-3によって2段階で中継され、子機14で受信される通信経路である。通信経路16-3は、親機10から送信されたパケットが中継機12-4で中継され、子機14で受信される通信経路である。通信経路は、
図1に示されたものに限られず、中継機の台数に応じた数の通信経路が形成され得る。また、通信経路には、親機10が子機14と直接無線通信を行うものがある。
【0015】
無線通信システム100で伝送されるパケットには、通信経路を特定する経路情報が含まれている。経路情報には様々なものが考えられるが、例えば、通信経路を構成する無線機のIDを中継順に列挙した情報と同等のものであってよい。また、パケットには、中継の1段手前(1ホップ手前)の送信元を特定する情報として送信元IDが含まれている。
【0016】
各中継機は、受信したパケットが、そのパケットに含まれる経路情報によって定められた特定の無線機から送信されたときのみ、そのパケットを中継する。例えば、中継機12-1および12-4は、送信元IDが親機10のIDである場合、および送信元IDが子機14のIDである場合に、その受信したパケットを中継する。また、中継機12-2は、送信元IDが親機10のIDである場合、および送信元IDが中継機12-3のIDである場合に、その受信したパケットを中継する。中継機12-3は、送信元IDが中継機12-2のIDである場合、および送信元IDが子機14のIDである場合に、その受信したパケットを中継する。
【0017】
本実施形態に係る無線通信システム100では、無線装置としての親機10が、通信経路16-1~16-3のうちの1つをアクティブ通信経路として決定し、アクティブ通信経路を示す経路情報を含む下りパケットを、アクティブ通信経路を介して子機14に送信する。子機14は、受信した下りパケットに含まれていた経路情報と同一の経路情報を含む応答パケットをアクティブ通信経路を介して親機10に送信する。子機14は、子機14が備える各種センサの計測値等を応答パケットに含ませてよい。応答パケットを受信した親機10は、応答パケットから計測値等を取得する。
【0018】
通信経路16-1がアクティブ通信経路である場合における無線通信システム100の各動作について
図2~
図5を参照して説明する。
図2には、通信が成功した場合の無線通信システム100の動作が示されている。親機10は、中継機12-1に向けて下りパケットaを送信する。下りパケットaを受信した中継機12-1は、下りパケットaを子機14に向けて中継し、子機14は下りパケットaを受信する。
【0019】
中継機12-1は、下りパケットaを子機14に向けて中継すると共に、アクノリッジパケットb(以下、ACKパケットという)を親機10に向けて送信する。親機10はACKパケットbを受信することで、下りパケットaが中継機12-1で受信されたことを認識する。また、子機14は、下りパケットaを受信すると共に、ACKパケットcを中継機12-1に向けて送信する。中継機12-1は、ACKパケットcを受信することで下りパケットaが子機14で受信されたことを認識する。
【0020】
下りパケットaを受信した子機14は、応答データを含む応答パケットdを中継機12-1に向けて送信する。応答データは、例えば、子機14が備える各種センサの計測値が含まれるデータであってよい。応答パケットdを受信した中継機12-1は、応答パケットdを親機10に向けて送信する。親機10は応答パケットdを受信し、応答パケットdから応答データを抽出する。中継機12-1は、応答パケットdを親機10に向けて中継すると共に、ACKパケットeを子機14に向けて送信する。子機14はACKパケットeを受信することで、応答パケットdが中継機12-1で受信されたことを認識する。
【0021】
親機10は、下りパケットaを送信したことに対し、応答パケットdが受信されたことで、子機14との間の通信が成功したことを認識する。
【0022】
無線通信システム100では、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサ、水位センサ等のセンサが子機14に搭載され、センサの計測値を親機10が回収するシステムであってよい。また、無線通信システム100は、子機14がガスメータや電力量計等の計測器の計測値を取得し、親機10が計測値を回収するシステムであってもよい。
【0023】
図3~
図5には、通信が失敗した場合の無線通信システム100の動作が示されている。
図3には、親機10が下りパケットαを中継機12-1に向けて送信した後、所定時間が経過してもACKパケットを受信せず、下りパケットaを送信した場合の動作が示されている。親機10が下りパケットaを送信してから、応答パケットdを受信するまでの処理は、
図1に示される動作と同様である。
【0024】
図4には、親機10が下りパケットの送信を3回に亘って失敗した場合の動作が示されている。すなわち、親機10が下りパケットα1を送信した後、所定時間が経過してもACKパケットを受信しなかったため、下りパケットα2を送信し、親機10が下りパケットα2を送信した後、所定時間が経過してもACKパケットを受信しなかったため、下りパケットα3を送信した動作が示されている。
【0025】
図5には、中継機12-1から送信された下りパケットaを子機14が受信し、ACKパケットcを中継機12-1に向けて送信した後、子機14が応答パケットの送信を3回に亘って失敗した場合の動作が示されている。すなわち、子機14が応答パケットβ1を送信した後、所定時間が経過してもACKパケットを受信しなかったため、応答パケットβ2を送信し、子機14が応答パケットβ2を送信した後、所定時間が経過してもACKパケットを受信しなかったため、子機14が応答パケットβ3を送信した動作が示されている。
【0026】
無線通信システム100のノードを構成する無線機としての親機10、中継機12-1および子機14は、複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルでパケットの送信および受信を行う。すなわち、親機10は、アクティブ周波数で下りパケットaを送信する。中継機12-1は、複数の周波数チャネルで下りパケットを受信可能である。中継機12-1は、下りパケットaが受信された周波数チャネルと同一の周波数チャネルで下りパケットaを子機14に向けて中継し、ACKパケットcを親機10に向けて送信する。これによって、中継機12-1は、アクティブ周波数チャネルで下りパケットaを中継し、アクティブ周波数チャネルでACKパケットcを送信する。
【0027】
子機14は、複数の周波数チャネルで下りパケットを受信可能である。子機14は、下りパケットaが受信された周波数チャネルと同一の周波数チャネルで、ACKパケットcおよび応答パケットdを中継機12-1に向けて送信する。これによって、子機14は、アクティブ周波数チャネルでACKパケットcおよび応答パケットdを送信する。中継機12-1は、応答パケットdが受信された周波数チャネルと同一の周波数チャネルで応答パケットdを親機10に向けて中継し、ACKパケットeを子機14に向けて送信する。これによって、中継機12-1はアクティブ周波数チャネルで応答パケットdを中継し、ACKパケットeを送信する。
【0028】
無線通信システム100のノードを構成する無線機としての親機10、中継機12-1および子機14は、パケットを送信する際にキャリアセンスを実行する。キャリアセンスとは、パケットを送信しようとする周波数チャネルで、他の無線通信機器によって無線通信が行われているか否かを判定し、無線通信が行われているときは、その無線通信が終了した後に、その周波数チャネルでパケットを送信する処理をいう。
【0029】
親機10は、下りパケットを送信することに伴う通信を1通信シーケンスとして、各通信シーケンスごとに通信経路評価値を決定する。通信経路評価値は、通信状況の良好度を示し、値が大きい程、通信状況が良好でない。
図6には各通信状況に対応する通信経路評価値の例が示されている。通信成功には、ACKパケットが受信されないことによる下りパケットの再送を行った再送ありの場合と、そのような再送を行わなかった再送なしの場合がある。再送なしの場合、通信経路評価値は0であり、再送ありの場合、通信経路評価値は0.2である。
【0030】
このように、再送ありの場合には、通信経路評価値は0でない値とされる。
【0031】
通信失敗には、ACKパケットを受信しないACKパケット未受信の場合、応答パケットを受信しない応答なしの場合、そして、キャリアセンスの実行によって下りパケットが送信されなかったキャリアセンス実行の場合がある。
図6に示される例では、ACK未受信の場合、通信経路評価値は2である。応答なしの場合、通信経路評価値は1である。そして、キャリアセンス実行の場合、通信経路評価値は0である。
【0032】
親機10は、所定回数(例えば10回)の通信シーケンスについて、通信経路評価値を加算合計して、経路評価情報としての評価値を求める。親機10は、評価値が所定値(例えば4)を超える場合には、アクティブ通信経路を他の通信経路に変更する。なお、所定回数(例えば3回)以上、通信失敗となったときもアクティブ通信経路を他の通信経路に変更してよい。親機10は、通信経路の変更を、下りパケットに含ませる経路情報を変更することで行ってよい。変更先の通信経路は、複数の通信経路のうち、評価値が最小のものであってよい。
【0033】
このように、過去における所定回数の通信シーケンスについて求められた経路評価値に基づいて、親機10は、アクティブ通信経路を変更する。これによって、過去の通信品質に基づく演算という簡単な処理によって、複数の通信経路のうち通信状況が良好な経路を用いた通信が行われる。
【0034】
上記のように、ACK未受信の場合には、応答なしの場合よりも通信経路評価値が大きい。そして、応答なしの場合には、再送ありの場合よりも通信経路評価値が大きい。また、ACK未受信の場合については、通信経路評価値が最も大きい値とされている。これは、直接無線通信を行う中継機との間の通信状況が良好でない可能性が高く、アクティブ通信経路を変更することで、通信品質が向上する可能性があるためである。また、キャリアセンス実行の場合について経路評価値が0とされている。これは、他の無線通信機器がアクティブ周波数チャネルで無線通信を行っている状況で、アクティブ周波数チャネルを変更せずに通信経路のみを変更したとしても、通信品質が向上する可能性は低いためである。
【0035】
図7には周波数評価値の例が示されている。周波数評価値は、通信状況の良好度を示し、値が大きい程、通信状況が良好でない。送信成功のうちの再送なしの場合、周波数評価値は0であり、再送ありの場合、周波数評価値は0.2である。このように、再送ありの場合には、周波数評価値は0でない値とされる。
【0036】
図7に示されている例では、送信失敗のうち、ACK未受信の場合、周波数評価値は1である。応答なしの場合、周波数評価値は1である。そして、キャリアセンス実行の場合、周波数評価値は3である。
【0037】
親機10は、所定回数(例えば10回)の通信シーケンスについて、周波数評価値を加算合計して周波数評価情報としての評価値を求める。親機10は、評価値が所定値(例えば4)を超える場合には、アクティブ周波数チャネルを他の周波数チャネルに変更する。なお、所定回数(例えば3回)以上、通信失敗となったときもアクティブ周波数チャネルを他の周波数チャネルに変更してよい。変更先のアクティブ周波数チャネルは、複数の周波数チャネルのうち、評価値が最小のものであってよい。
【0038】
このように、過去における所定回数の通信シーケンスについて求められた周波数評価値に基づいて、親機10は、アクティブ周波数チャネルを変更する。これによって、過去の通信品質に基づく演算という簡単な処理によって、複数の周波数チャネルのうち通信状況が良好な周波数チャネルを用いた通信が行われる。
【0039】
上記のように、ACK未受信の場合の周波数評価値は、応答なしの場合と同等である。そして、ACK未受信の場合および応答なしの場合には、いずれも再送ありの場合よりも周波数評価値が大きい。また、キャリアセンス実行の場合について、周波数評価値が最も大きい値とされている。これは、アクティブ周波数チャネルとされている周波数チャネルが他の無線通信機器によって使用されている可能性があり、アクティブ周波数チャネルを変更することで、通信品質が向上する可能性があるためである。
【0040】
図8には、親機10のハードウエアの構成例が示されている。親機10は、親機制御部30、親機無線部32および記憶部34を備えている。親機制御部30は、予め自らに記憶されたプログラム、または、記憶部34に記憶されたプログラムを実行するプロセッサであってよい。親機制御部30は、演算処理の途中で得られたデータを記憶部34に一時的に記憶させてもよい。親機制御部30は親機無線部32を制御する。親機無線部32は、親機制御部30の制御に従って、パケットを送信または受信する。具体的には、親機無線部32は、親機制御部30から出力された下りパケットを送信する。また、応答パケットやACKパケットを受信し、親機制御部30に出力する。
【0041】
上記の実施形態において、親機無線部32は、通信経路の初段の中継機(無線機)との間で直接無線通信を行う。親機無線部32は、無線端末としての子機14(無線機)との間で直接無線通信を行ってもよい。親機制御部30は、中継機および子機14が形成する複数通りの通信経路のうちの1つであるアクティブ通信経路に従って、子機14との間で通信を行う処理を、親機無線部32と共に実行する。
【0042】
親機無線部32は、無線機との間で行われた通信シーケンス(通信)に基づいて、アクティブ通信経路についての経路評価情報を求める。そして、経路評価情報に基づいて、アクティブ通信経路とする通信経路を他の通信経路に変更する。通信経路は、1つまたは複数の中継機による1回または複数回の中継によって子機14に至る経路、または、親機無線部32が子機14との間で直接無線通信を行う経路(無線機が無線端末である経路)である。
【0043】
また、親機制御部30は、アクティブ通信経路で使用される複数の周波数チャネルのうちの1つであるアクティブ周波数チャネルを用いて、子機14(アクティブ通信経路上の無線端末)との間で通信を行う処理を親機無線部32と共に実行する。親機制御部30は、無線機との間で行われた通信シーケンスに基づいて、アクティブ周波数チャネルについての周波数評価情報を求め、周波数評価情報に基づいて、アクティブ周波数チャネルとする周波数チャネルを他の前記周波数チャネルに変更する。
【0044】
図9には、子機14のハードウエアの構成例が示されている。子機14は、子機制御部40、記憶部42、センサ44および子機無線部46を備えている。
【0045】
子機制御部40は、予め自らに記憶されたプログラム、または、記憶部42に記憶されたプログラムを実行するプロセッサであってよい。子機制御部40は、演算処理の途中で得られたデータを記憶部26に一時的に記憶させてもよい。
【0046】
センサ44は、温度センサ、湿度センサ、照度センサ、振動センサ、水位センサ等であってよい。センサ44は計測値を子機制御部40に出力する。子機制御部20は、計測値に基づいて応答データを生成し、応答データを含む応答パケットを生成する。
【0047】
子機制御部40は子機無線部46を制御する。子機無線部46は、子機制御部40の制御に従って、パケットを送信または受信する。具体的には、子機無線部46は、子機制御部40から出力された応答パケットを送信する。また、下りパケットやACKパケットを受信し、子機制御部40に出力する。
【符号の説明】
【0048】
10 親機、12-1~12-4 中継機、14 子機、16-1~16-3 通信経路、30 親機制御部、32 親機無線部、34,42 記憶部、40 子機制御部、44 センサ、46 子機無線部、100 無線通信システム。