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特許7576082ハロゲン置換のフェニルエーテル系化合物及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ハロゲン置換のフェニルエーテル系化合物及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/12 20060101AFI20241023BHJP
   C07D 253/075 20060101ALI20241023BHJP
   A61K 31/53 20060101ALI20241023BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20241023BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20241023BHJP
   A61P 5/14 20060101ALI20241023BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C07D403/12 CSP
C07D253/075
A61K31/53
A61P1/16
A61P3/06
A61P5/14
A61P43/00 111
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022510891
(86)(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-27
(86)【国際出願番号】 CN2020110252
(87)【国際公開番号】W WO2021032161
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2023-06-19
(31)【優先権主張番号】201910774991.1
(32)【優先日】2019-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515329931
【氏名又は名称】ヒノバ ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ドゥー ウー
(72)【発明者】
【氏名】リー ユー
(72)【発明者】
【氏名】リー ハイボー
(72)【発明者】
【氏名】チェン ユエンウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン チョンジー
(72)【発明者】
【氏名】リー シンハイ
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-501759(JP,A)
【文献】国際公開第2019/144835(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/169069(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/073974(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/240938(WO,A1)
【文献】特開2001-114768(JP,A)
【文献】Journal of Medicinal Chemistry,2014年,Vol.57,pp.3912-3923
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(II)に示す化合物又はその光学異性体、塩、水和物又は非水溶媒和物であって、
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、A、Bはそれぞれ独立してN、CH、CDから選択されることを特徴とする化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。
【請求項2】
(IV)に示す化合物又はその光学異性体、塩、水和物又は非水溶媒和物であって、
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはN、CH、CDから選択されことを特徴とする化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。
【請求項3】
(III)に示す化合物又はその光学異性体、塩、水和物又は非水溶媒和物であって、
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、A、Bはそれぞれ独立してN、CH、CDから選択されることを特徴とする化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。
【請求項4】
(V)に示す化合物又はその光学異性体、塩、水和物又は非水溶媒和物であって、
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはN、CH、CDから選択されことを特徴とする化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。
【請求項5】
(VI)に示す化合物又はその光学異性体、塩、水和物又は非水溶媒和物であって、
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、X、Yはそれぞれ独立してF、Cl、Br、Iから選択され、X、Yは同時にはClでなく、X、Yは同時にはBrでないことを特徴とする化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。
【請求項6】
前記化合物は以下の化合物から選択される1つであることを特徴とする、請求項1からのいずれか1つに記載の化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物。

【請求項7】
請求項1~のいずれか1つに記載の化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物の、THR-βアゴニスト剤の調製における使用であって、
記THR-βアゴニスト剤がコレステロールを低下させ、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝疾患を治療する薬物あることを特徴とする、使用。
【請求項8】
請求項1~のいずれか1つに記載の化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物の、THR-αアゴニスト剤の調製における使用であって、記THR-αアゴニスト剤がびまん性中毒性甲状腺腫を治療するための薬物であることを特徴とする、使用。
【請求項9】
コレステロールを低下させ、脂質異常症を治療し、非アルコール性脂肪肝を治療する薬物であって、請求項1~のいずれか1項に記載の化合物又はその光学異性体、塩水和物又は非水溶媒和物を活性成分とし、さらに薬学的に許容可能な補助材料を加えて製造された製剤であることを特徴とする、薬物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物製造の分野に属し、具体的には、ハロゲン置換のフェニルエーテル系化合物及びその使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MGL-3196は塩素原子で置換されたフェニルエーテル系化合物であり、高度に選択的な甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)アゴニスト剤であって、EC50値は0.21μM、構造式は
である。現在、後期臨床試験が行われており、脂質異常症、高コレステロール血症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に対する治療効果が現れている。
【0003】
研究により、MGL-3196は、甲状腺ホルモン受容体βアゴニスト剤として、体内での薬物動態特性及びアゴニスト活性に改善の余地があることが分かっている。そのため、MGL-3196に対して構造改変を行い、より優れた性能を有する薬物を開発することが研究の焦点の一つとなっている。
【0004】
しかしながら、化学的改変では、化合物の構造が変化する程度は様々であるため、化合物の物理的及び化学的特性も様々な程度で変化し、化合物の薬学的特性に予測できない影響を与えてしまう。そのため、より優れた性能を持つ薬物を得るための化学的改変方法の選択が、この分野の課題となっている。
【0005】
重水素化は、一般的に用いられる改変方法である。重水素化薬物とは、薬物分子中の一部の水素原子が重水素に置き換わったものを指す。重水素は、薬物分子において形状及び体積が水素に近いことから、重水素化薬物は、通常、元の薬物の生物活性及び選択性を保っている。C-D結合はC-H結合よりも安定しているため、重水素化薬物の化学反応の過程で、C-D結合が切断されにくく、その半減期が延長される可能性がある。
【0006】
しかし、生物システムにおける代謝の過程は複雑であるため、薬物の生体内での薬物動態特性は複数の要因による影響を受け、薬物はそれに応じて複雑になる。重水素化薬物の薬物動態特性は、対応する非重水素化薬物と比較して、極めて大きな偶然性と予測不能性をもって変化する。特定部位の重水素化は、半減期を延長することができないばかりか、逆に短縮させてしまうおそれがあり(Scott L.Harbeson,Roger D.Tung.Deuterium in Drug Discovery and Development,P405-406)、薬物動態特性の低下をまねく。また、薬物分子上の特定部位の水素は、立体障害等によっても重水素化されにくくなるため、狙ったとおりに重水素化することができず、重水素置換が可能な部位も予測ができない。
【0007】
本発明は、適切な化学的改変によって、活性が増強され、薬物動態特性が改善された薬物の獲得を期待するものである。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、活性が高く、薬物動態特性が良好で、毒性と副作用が少なく、代謝安定性が良い薬物を提供することを目的とする。
【0009】
本発明は、式(I)に示す化合物又はその光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物を提供するものである。
【0010】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、A、Bはそれぞれ独立してN、CH、CDから選択され、X、Yはそれぞれ独立してF、Cl、Br、Iから選択され、
BがNであり、AがCH又はCDである場合、X、Yは同時にはClでない。
【0011】
さらに、前記化合物が式(II)に示す構造を有し、
【0012】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、A、Bはそれぞれ独立してN、CH、CDから選択される。
【0013】
さらに、前記化合物が式(III)に示す構造を有し、
【0014】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、A、Bはそれぞれ独立してN、CH、CDから選択される。さらに、前記化合物が式(IV)に示す構造を有し、
【0015】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはN、CH、CDから選択され、
好ましくは、R、R、R10はそれぞれ独立してHから選択され、R~Rはそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはCH、CDから選択される。
【0016】
さらに、前記化合物が式(V)に示す構造を有し、
【0017】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはN、CH、CDから選択され、
好ましくは、R、R、R10はそれぞれ独立してHから選択され、R~Rはそれぞれ独立してH、Dから選択され、AはCH、CDから選択される。
【0018】
さらに、前記化合物が式(VI)に示す構造を有し、
【0019】
~R、R、R10はそれぞれ独立してH、Dから選択され、X、Yはそれぞれ独立してF、Cl、Br、Iから選択され、好ましくは、X、Yはそれぞれ独立してCl又はBrから選択される。
【0020】
さらに、前記化合物は以下の化合物から選択される1つである。




【0021】
本発明はまた、上記化合物又はその光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物の、THR-βアゴニスト剤の調製における使用を提供する。
【0022】
さらに、前記THR-βアゴニスト剤はコレステロールを低下させ、脂質異常症、非アルコール性脂肪肝疾患を治療する薬物である。
【0023】
さらに、THR-βアゴニスト剤は家族性高コレステロール血症、非アルコール性脂肪肝炎を治療するための薬物である。
【0024】
本発明はまた、上記の化合物又はその光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物の、THR-αアゴニスト剤の調製における使用を提供し、前記THR-αアゴニスト剤はびまん性中毒性甲状腺腫を治療するための薬物である。
【0025】
本発明はまた、コレステロールを低下させ、脂質異常症を治療し、非アルコール性脂肪肝を治療する薬物を提供し、該薬物は、上記の化合物又はその光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物を活性成分とし、さらに薬学的に許容可能な補助材料を加えて製造された製剤である。
【0026】
本明細書で使用される「重水素化」とは、化合物又は基の1つ以上の水素が重水素で置換されていることを意味する。重水素化は、一置換、二置換、多置換又は完全置換であってよい。別の好ましい例では、重水素の重水素置換位置における重水素同位体含有量は、自然界の重水素同位体含有量(0.015%)よりも多く、より好ましくは50%よりも多く、より好ましくは75%よりも多く、より好ましくは95%よりも多く、より好ましくは97%よりも多く、より好ましくは99%よりも多く、より好ましくは99.5%よりも多い。
【0027】
本発明で使用する用語「本発明の化合物」とは、式(I)に示す化合物を意味する。この用語には、式(I)の化合物の各種光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物がさらに含まれる。
【0028】
本明細書で述べる活性成分とは、薬品の製造において使用される、疾患の診断、治療、症状緩和、処置もしくは予防において薬理活性又はその他の直接的な効果を有する、又は身体の機能もしくは構造に影響を及ぼすあらゆる物質又は物質の混合物を意味する。
【0029】
前記薬学的に許容可能な補助材料は、一定の生理活性を有するが、当該成分の添加により上記薬物組成物の疾患治療過程における優位性が変化することはなく、補助効果を発揮するのみであり、これらの補助効果は当該成分の既知の活性を利用しているに過ぎず、上記は医薬分野で常用される補助的な治療方法である。上記補助成分を本発明の薬物組成物と組み合わせて使用する場合も、本発明の保護範囲に属するものとする。
【0030】
「非水溶媒和物」とは、水和物以外の溶媒和物を意味する。
【0031】
実験により、本発明の特定の置換位置及び特定の置換型により得られた式(I)に示す化合物は、対照化合物MGL-3196と比較して、甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)及び甲状腺ホルモン受容体α(THR-α)のいずれに対してもより優れたアゴニスト活性を有し、特にTHR-βに対しては、本発明の化合物のアゴニスト活性及びアゴニスト選択性が著しく向上したことが証明された。また、本発明の化合物は、著しく向上した薬物動態特性をさらに有する。本発明の化合物は、THR-βアゴニスト剤、及びTHR-βアゴニスト剤が適用される適応症(脂質異常症、高コレステロール血症、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)など)を治療するための薬物の調製において、有望である。
【0032】
当然ながら、本発明の上記内容に基づき、当分野の一般的な技術的知識や慣用的手段に照らし、本発明の上記基本的な技術的思想を逸脱しないという前提において、他の様々な形態の修正、置換又は変更を行うことができる。
【0033】
以下、実施例という形の具体的な実施形態によって、本発明の上記内容をさらに詳細に説明する。但し、これをもって、本発明の上記主題の範囲が以下の実施例に限定されると理解してはならない。本発明の上記内容に基づいて実現される技術は、いずれも本発明の範囲に属する。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明に使用される原料や機器は全て従来製品であり、市販の製品を購入したものである。
【0035】
実施例1 化合物2の合成
【0036】
(1)化合物3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3-イル)オキシ)アニリン(化合物2-1)の合成
【0037】
3,6-ジクロロ-4-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)ピリダジン(化合物A)を合成した。
【0038】
文献の方法(Canadian Journal of Chemistry,2014,92,305)を用いて、2-トリジュウテロメチル-3,3,3-トリジュウテロプロピオン酸A-4を調製した。2-トリジュウテロメチル-3,3,3-トリジュウテロプロピオン酸(1.4g,15mmol)を秤量して100mLの三つ口丸底フラスコに入れ、さらにそこに20mLの水を加え、室温で撹拌し、透明になるまで溶解させた。次いで、系に3,6-ジクロロピリダジン(2.2g,15mmol)を加え、室温で撹拌した。次に、系に硝酸銀(2.5g,15mmol)を加え、加えた後、系を油浴に移して昇温・加熱しながら撹拌し反応させた。系内の温度が50℃に上昇したところで、系に濃硫酸(3.5mL)を滴下し、滴下完了後、その温度で保温しながら10min撹拌した。その後、系内の温度が60℃に上昇したところで、過硫酸アンモニウム(10.3g,45mmol)を溶解させた水溶液6mLを系に滴下した。系内の温度が70℃に上昇したところで、その温度で保温しながら30min撹拌し反応させた。加熱を停止し、系を自然に室温まで冷却した。さらに系を氷水浴に移して降温・冷却しながら撹拌し、15min後、系にNaOH(6.0M)溶液を滴下して系のPH値を8前後に調整した。系に酢酸エチル(20mL)を加えて激しく撹拌し、静置して層分離させ、水相を酢酸エチル(10mL×3)で逆抽出し、有機相を合わせ、水(10mL×3)、飽和食塩水(20mL)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧濃縮し、粗生成物を得て、カラムクロマトグラフィで分離して、類白色の固体3,6-ジクロロ-4-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)ピリダジン(化合物A)1.7gを得た。収率:58%。MS(ESI)m/e197.2(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ7.98(d,J=0.8Hz,1H),3.12(s,1H)。
【0039】
3-ブロモ-5-クロロ-4-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン(A,450mg,2.28mmol)を秤量して100mLの三つ口丸底フラスコに入れ、さらにそこに10mLのジメチルスルホキシドを加え、室温で撹拌し、透明になるまで溶解させた。系に対してアルゴンガス置換を10回繰り返して行い、系内の不活性ガス雰囲気を確保した。その後、系に、4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノール(508.0mg,2.28mmol)、無水炭酸カリウム(1.3g,9.12mmol)を順に加えた。加えた後、系を90℃の油浴に移し、一晩昇温・加熱・撹拌し、反応させた。24h後、原料が完全に消費されたことを確認した。加熱を停止し、系を自然に室温まで冷却した。系に酢酸エチル(20mL)と水(20mL)を加えて激しく撹拌し、その後静置して層分離させ、水相を酢酸エチル(20mL*3)で逆抽出し、有機相を合わせ、水(10mL*3)、飽和食塩水(20mL)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で濃縮し溶媒を除去して粗生成物を得た後、カラムクロマトグラフィで分離して、淡黄褐色の固体である3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3-yl)オキシ)アニリン(2-1,463.0mg)を得た。収率:52.9%。MS(ESI)m/e382.0(M+H)
【0040】
(2)化合物6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3(2H)-オン(化合物2-2)の合成
【0041】
3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3-yl)オキシ)アニリン(341.0mg,0.89mmol)を秤量して50mLの三つ口丸底フラスコに入れ、そこに氷酢酸(10mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に無水酢酸ナトリウム(256.0mg,3.12mmol)を加えた。加えた後、系を105℃の油浴に移し、撹拌し、還流させ、反応させた。24h後、加熱を停止し、系を自然に室温まで冷却した。回転蒸発により溶媒を除去し、系に水(50mL)を加え、その後系を氷水浴に移して、降温・冷却しながら撹拌した。系内の温度が5℃に低下したところで、系に水酸化ナトリウム(1.0M)溶液を滴下し、系のPH値を9程度に調整した。そして、系に酢酸エチル(30mL)を加えて激しく撹拌し、その後静置して層分離させ、水相を酢酸エチル(25mL*2)で逆抽出し、有機相を合わせ、水(20mL)、飽和食塩水(20mL)それぞれで1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して淡黄色の固体を得た。この固体を入れた100mLの三つ口丸底フラスコに、メタノール(10mL)、NaOH(1.0M)溶液(10mL)を順に加え、加えた後、系を105℃の油浴に移して還流させ、反応させた。16h後、加熱を停止し、油浴を外して、系を室温に戻した。回転蒸発により溶媒を除去し、酢酸エチル(60mL)及び水(40mL)を加え、激しく撹拌し、静置して層分離させ、水層を酢酸エチル(25mL*2)で逆抽出し、有機層を合わせ、水(20mL*2)、飽和食塩水(20mL)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発により溶媒を除去して粗生成物を得た後、カラムクロマトグラフィで分離して、淡黄色の固体である6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3(2H)-オン(2-2,200.0mg)を得た。収率:61.5%。MS(ESI)m/e364.2(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ12.13(s,1H),7.26(s,1H),6.82(d,J=4.0Hz,1H),6.70(d,J=4.0Hz,1H),5.60(s,2H),2.99(s,1H)。
【0042】
(3)化合物エチル(2-シアノ-2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジ(トリジュウテロメチル)メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)アセチル)カルバメート(化合物2-3)の合成
【0043】
6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-ジ(トリジュウテロメチル)メチルピリダジン-3(2H)-オン(153mg,0.42mmol)を秤量して25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに水(5.6mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に濃塩酸(2.8mL)を加えた。加えた後、系を氷水浴に移し、降温・冷却しながら撹拌した。系内の温度が0℃に低下したところで、亜硝酸ナトリウム(36.5mg,0.53mmol)を溶解させた水溶液0.4mLを系に滴下した。滴下完了後、系の保温・撹拌・反応を30min続けた。N-シアノアセチルウレタン(72.0mg,0.46mmol)を秤量して25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに水(9.4mL)、ピリジン(2.8mL)を加え、室温で撹拌し、透明になるまで溶解させ、その後系を氷水浴に移して、降温・冷却・撹拌を30min続けた。N-シアノアセチルウレタンを溶解させた系に、ジアゾ化反応液を、系内の温度が5℃を超えないように滴下速度を制御しながら、ゆっくりと滴下した。滴下完了後、系を氷水浴内で保温しながら撹拌し反応させた。1h後、TLCモニタリングにより反応が終了したことを確認した。系を減圧濾過し、濾過ケーキに対して水を少量ずつ用いて複数回溶出を行い、さらにn-ヘキサンを用いて複数回溶出を行い、乾燥させて、赤みがかったオレンジ色の固体であるエチル(2-シアノ-2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジ(トリジュウテロメチル)メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)アセチル)カルバメート(2-3,153.0mg)を得た。さらなる精製はせず、次の反応にそのままこれを使用した。収率:68.6%。MS(ESI)m/e531.1(M+H)
【0044】
(4)化合物2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジジュウテロメチルメチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物2)の合成
【0045】
エチル(2-シアノ-2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジ(トリジュウテロメチル)メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)アセチル)カルバメート(153mg,0.29mmol)を秤量し、25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに氷酢酸(5mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に無水酢酸ナトリウム(118mg,1.44mmol)を加えた。加えた後、系を120℃の油浴に移し、昇温・加熱しながら撹拌し反応させた。1.5h後、TLCモニタリングにより、原料が完全に消費されたことを確認した。加熱を停止し、室温まで冷却した後、氷水浴に入れ、降温・冷却・撹拌を続け、系内の温度が5℃まで下がったところで、系に氷水を加え、20min激しく撹拌した。その後、これを減圧濾過し、濾過ケーキに対して水を少量ずつ用いて複数回溶出を行い、さらに酢酸エチルに溶解させ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発により溶媒を除去して粗生成物を得て、Pre-TLCにより分離精製して、薄い赤みがかったオレンジ色の固体である2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジ(トリジュウテロメチル)メチル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物2,54.0mg)を得た。収率:38.6%。MS(ESI)m/e485.0(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ13.29(s,1H),12.24(s,1H),7.90(d,J=4.0Hz,1H),7.82(d,J=4.0Hz,1H),7.45(s,1H),3.02(s,1H)。
【0046】
実施例2 2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((4-ジュウテロ-5-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピラジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-シアン(化合物3)の合成
【0047】
(1)化合物3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)ピラジン-3-イル-4-ジュウテロ)オキシ)アニリンの合成
【0048】
3,6-ジクロロ-4-ジュウテロ-5-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)ピリダジン(化合物B)を合成した。
【0049】
化合物2,3-ジクロロマレイン酸無水物B-1(8.35g,50mmol)を秤量し、100mlの丸底フラスコに入れ、水40mlを加え、ヒドラジン水和物(2.5g,50mmol)を加えて、還流するまで加熱し、保温しながら4h反応させ、室温まで冷却し、氷水浴に30min入れ、濾過し、濾過ケーキに対して水100mlを用いて溶出を行い、乾燥させて、4,5-ジクロロマレイン酸ヒドラジド(B-2)5.0gを得た。収率:55.3%、MS(ESI)m/e181.0(M+H)
【0050】
4,5-ジジュウテロ-マレイン酸ヒドラジド(B-3)の合成:方法1:4,5-ジクロロマレイン酸ヒドラジド(2.0g,11.05mmol)を秤量して100mlの一口丸底フラスコに入れ、50mlの重水素化メタノールを加え、10mlの重水を加え、200mgのPd/Cを加え、重水素ガスで3回置換し、室温で40h反応させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮乾燥させ、6mlのメタノールを加えてスラリー化し、濾過し、濾過ケーキを乾燥させて、化合物4,5-ジジュウテロマレイン酸ヒドラジド1.0gを得た。収率:79%、MS(ESI)m/e115.2(M+H)13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ156.76,130.50。方法2:マレイン酸ヒドラジド(5.6g,50mmol)を丸底フラスコに入れ、重水80mlを加え、500mgのPd/Cを加え、水素ガスで3回置換し、水素雰囲気下で72h加熱し還流させ、室温まで冷却して、濾過し、濾過ケーキを丸底フラスコに入れて上記の操作を繰り返した。反応終了後、濾過し、濾過ケーキに100mlのメタノールを加え、30min還流させ、濾過し、濾液を減圧下で濃縮乾燥させて、4,5-ジジュウテロ-マレイン酸ヒドラジド2.5gを得た。収率:43.87%。
【0051】
4,5-ジジュウテロ-3,6-ジクロロピリダジン(B-4)の合成
4,5-ジジュウテロマレイン酸ヒドラジド(1.0g,8.74mmol)を秤量して100mlの丸底フラスコに入れ、15mlのオキシ塩化リンを加え、115℃で4h還流させ、減圧下で濃縮乾燥させ、氷水浴で冷却し、20mlの氷水を加え、アンモニア水でpH=9.0に調整し、30mlのジクロロメタンを加えて抽出し、水層を20mlのジクロロメタンで1回再抽出し、有機層を合わせ、有機層を水、飽和食塩水それぞれで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾燥させて、1.2gの化合物4,5-ジジュウテロ-3,6-ジクロロピリダジンを得た。収率:90.9%。13C NMR(101MHz,DMSO-d)δ156.3,131.9(t,J=27Hz)。MS(ESI)m/e151(M+H)
【0052】
化合物3,6-ジクロロ-4,5-ジジュウテロピリダジンB-4(604mg,4.0mmol)を10mlの水に加え、化合物A-4(372mg,4.0mmol)を加え、撹拌しながらAgNO(680mg,4mmol)を加え、50℃に昇温させ、1mlの濃硫酸をゆっくりと滴下し、滴下完了後、60℃に昇温させ、保温しながら10min反応させた。過硫酸アンモニウム(2.74g,12mmol)を6mlの水に溶解させ、反応系に滴下し、滴下完了後、70℃に昇温させ、保温しながら30min反応させ、TLCで反応をモニターし、原料が完全に反応したところで加熱を停止し、氷水浴で冷却し、6NのNaOH水溶液でpH=8.0に調整し、30mlの酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾燥させ、カラムクロマトグラフィで分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=10:1)、化合物B(500mg)を得た。収率:63.1%、MS(ESI)m/e198.1(M+H)
【0053】
3,6-ジクロロ-4-ジ(トリジュウテロメチル)メチル-5-ジュウテロピリダジンB(285.0mg,1.44mmol)を秤量して25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに8mLのジメチルスルホキシドを加え、室温で撹拌して、透明になるまで溶解させた。その後、系に、4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノール(320.0mg,1.44mmol)、無水炭酸カリウム995.0mg,7.20mmol)を順に加えた。加えた後、系に対してアルゴンガス置換を10回繰り返して行い、系内の不活性ガス雰囲気を確保した。そして、系を90℃の油浴に移し、一晩昇温・加熱・撹拌し、反応させた。4h後、TLCモニタリングにより、原料が完全に消費されたことを確認した。加熱を停止し、系を自然に室温まで冷却した。系に酢酸エチル(20mL)と水(20mL)を加えて激しく撹拌し、その後静置して層分離させ、水相を酢酸エチル(30mL*3)で逆抽出し、有機相を合わせ、水(20mL*3)、飽和食塩水(20mL)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧下で濃縮し溶媒を除去して粗生成物を得た後、カラムクロマトグラフィで分離して、類白色の固体である3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)ピラジン-3-イル-4-ジュウテロ)オキシ)アニリン(3-1,293.0mg)を得た。収率:53.0%。MS(ESI)m/e383.0(M+H)
【0054】
(2)化合物6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)ピラジン-3(ジヒドロ)-オン-5-ジュウテロ(3-2)の合成
【0055】
3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-クロロ-5-ジジュウテロメチルメチル-4-ジュウテロピリダジン-3-yl)オキシ)アニリン(230.0mg,0.60mmol)を秤量して50mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに氷酢酸(10mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に無水酢酸ナトリウム(172.0mg,2.10mmol)を加えた。加えた後、系を105℃の油浴に移し、撹拌し、還流させ、反応させた。22h後、加熱を停止し、系を自然に室温まで冷却した。回転蒸発により溶媒を除去し、系に水(50mL)を加え、その後系を氷水浴に移して、降温・冷却しながら撹拌した。系内の温度が5℃に低下したところで、系に水酸化ナトリウム(1.0M)溶液を滴下し、系のPH値を9程度に調整した。そして、系に酢酸エチル(50mL)を加えて激しく撹拌し、その後静置して層分離させ、水相を酢酸エチル(25mL*2)で逆抽出し、有機相を合わせ、水(20mL)、飽和食塩水(20mL)それぞれで1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して淡黄色の固体を得た。この固体を入れた100mLの三つ口丸底フラスコに、メタノール(10mL)、NaOH(1.0M)溶液(10mL)を順に加え、加えた後、系を105℃の油浴に移して還流させ、反応させた。11h後、加熱を停止し、油浴を外して、系を室温に戻した。回転蒸発により溶媒を除去し、酢酸エチル(80mL)及び水(50mL)を加え、激しく撹拌し、静置して層分離させ、水層を酢酸エチル(25mL*2)で逆抽出し、有機層を合わせ、水(20mL*2)、飽和食塩水(20mL)で順に洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発により溶媒を除去して粗生成物を得た後、カラムクロマトグラフィで分離して、淡黄色の固体である6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-ジジュウテロメチルメチル-5-ジュウテロピリダジン-3(2H)-オン(3-2,115.0mg)を得た。収率:52.5%。MS(ESI)m/e365.1(M+H)
【0056】
(3)化合物エチル(2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((6-オキシ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)-1,6-ジヒドロピラジン-3-イル-4-ジュウテロ)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)-2-シアノアセチル)カルバメート(3-3)の合成
【0057】
6-(4-アミノ-2-ブロモ-6-クロロフェノキシ)-4-ジジュウテロメチルメチル-5-ジュウテロピリダジン-3(2H)-オン(100.0mg,0.27mmol)を秤量して25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに水(3.7mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に濃塩酸(1.9mL)を加えた。加えた後、系を氷水浴に移し、降温・冷却しながら撹拌した。系内の温度が0℃に低下したところで、亜硝酸ナトリウム(24.0mg,0.34mmol)を溶解させた水溶液0.5mLを系に滴下した。滴下完了後、系の保温・撹拌・反応を30min続けた。N-シアノアセチルウレタン(47.0mg,0.30mmol)を別途秤量して50mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに水(6.3mL)、ピリジン(1.9mL)を加え、室温で撹拌し、透明になるまで溶解させ、その後系を氷水浴に移して、降温・冷却・撹拌を30min続けた。N-シアノアセチルウレタンを溶解させた系に、ジアゾ化反応液を、系内の温度が5℃を超えないように滴下速度を制御しながら、ゆっくりと滴下した。滴下完了後、系を氷水浴内で保温しながら撹拌し反応させた。1h後、TLCモニタリングにより反応が終了したことを確認した。系を減圧濾過し、濾過ケーキに対して水を少量ずつ用いて複数回溶出を行い、さらにn-ヘキサンを用いて複数回溶出を行い、乾燥させて、エチル(2-シアノ-2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジジュウテロメチルメチル-4-ジュウテロ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)アセチル)カルバメート(3-3,104.0mg)を得た。さらなる精製はせず、次の反応にそのままこれを使用した。収率:71.7%。MS(ESI)m/e532.1(M+H)
【0058】
(4)化合物2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((4-ジュウテロ-5-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピラジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-シアン(化合物3)の合成
【0059】
エチル(2-シアノ-2-(2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-ジジュウテロメチルメチル-4-ジュウテロ-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)シアノアセチル)カルバメート(104.0mg,0.20mmol)を秤量し、25mLの一口丸底フラスコに入れ、そこに氷酢酸(5mL)を加えて、室温で撹拌した。次いで、系に無水酢酸ナトリウム(82.0mg,1.00mmol)を加えた。加えた後、系を120℃の油浴に移し、昇温・加熱しながら撹拌し反応させた。2h後、TLCモニタリングにより、原料が完全に消費されたことを確認した。
【0060】
加熱を停止し、室温まで冷却した後、氷水浴に入れ、降温・冷却・撹拌を続け、系内の温度が5℃まで下がったところで、系に氷水を加え、30min激しく撹拌した。その後、これを減圧濾過し、濾過ケーキに対して水を少量ずつ用いて複数回溶出を行い、さらに酢酸エチルに溶解させ、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、回転蒸発により溶媒を除去して粗生成物を得て、Pre-TLCにより分離精製して、薄いオレンジ色の固体である2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((4-ジュウテロ-5-(1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロプロパン-2-イル)-6-オキソ-1,6-ジヒドロピラジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-シアン(化合物3,68.0mg)を得た。収率:71.6%。MS(ESI)m/e486.2(M+H)H NMR(400MHz,DMSO-d)δ13.22(s,1H),12.24(s,1H),7.89(d,J=4.0Hz,1H),7.82(d,J=4.0Hz,1H),3.02(s,1H)。
【0061】
実施例3 2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)-1,6-ジヒドロピラジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-シアン(化合物14)の合成
【0062】
(1)3,5-ジブロモ-4-((6-クロロ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)ピリダジン-3-イル)オキシ)アニリンの合成:
【0063】
化合物3,6-ジクロロ-4-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-ヘキサジュウテロ)ピリダジンA(330mg,1.67mmol)を5mlのDMSOに溶解させ、化合物4-アミノ-2,6-ジブロモフェノール(559mg,2.09mmol)を加え,撹拌しながらKCO(923mg,6.68mmol)を加え、Arで3回置換し、90℃に昇温させて、3h反応させ、冷却し、水を加え、酢酸エチルで抽出し、有機層を水、飽和食塩水それぞれで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾燥させ、カラムクロマトグラフィで分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=5:1)、化合物3,5-ジブロモ-4-((6-クロロ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)ピリダジン-3-イル)オキシ)アニリン(14-2,210mg)を得た。収率:30%、MS(ESI)m/e426.0.0(M+H)
【0064】
(2) 6-(4-アミノ-2,6-ジブロモフェノキシ)-4-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)ピリダジン-3(2H)-オンの合成
【0065】
化合物3,5-ジブロモ-4-((6-クロロ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)ピリダジン-3-イル)オキシ)アニリン(185mg,0.43mmol)を5mlの酢酸に溶解させ、撹拌しながら無水酢酸ナトリウム(142mg,1.7mmol)を加え、105℃で一晩反応させ、室温まで冷却し、減圧下で濃縮乾燥させ、6NのNaOH溶液でPh=9に調整し、20mlの酢酸エチルで抽出し,水層をさらに15mlの酢酸エチルで一回逆抽出し、有機層を合わせ、水、飽和食塩水それぞれで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧濃縮して乾燥させた。10mlのメタノールを加え、10mlの1N NaOH水溶液を加え、105℃で一晩反応させ、冷却し、減圧下で濃縮して大部分のメタノールを除去し、20mlの酢酸エチルを加えて抽出し、有機層を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、減圧下で濃縮乾燥させ、カラムクロマトグラフィで分離精製して(石油エーテル/酢酸エチル=3:2)、化合物6-(4-アミノ-2,6-ジブロモフェノキシ)-4-(プロパン2イル-1,1,1,3,3,3-d6)ピリダジン-3(2H)-オン(14-3,130mg)を得た。収率:73.9%、MS(ESI)m/e408.0(M+H)
【0066】
(3)エチル-(2-シアノ-2-(2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl-4-d)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)エチル)カルバメートの合成
【0067】
化合物6-(4-アミノ-2,6-ジブロモフェノキシ)-4-(プロパン2イル-1,1,1,3,3,3-d6)ピリダジン-3(2H)-オン(125mg,0.31mmol)を丸底フラスコに入れ、4.6mlの水を加え、2.2mlの濃塩酸を加えて、氷水浴に30min入れた。N-シアノアセチルウレタン(52mg,0.33mmol)を丸底フラスコに入れ、8mlの水を加え、2.2mlのピリジンを加えて、氷水浴に30min入れた。前のステップの反応液を反応系に滴下し、滴下完了後、30min保温しながら撹拌し、濾過し、濾過ケーキに対して30mlの水で溶出を行い、乾燥させ、赤紫色の固体である生成物エチル-(2-シアノ-2-(2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-yl-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl-4-d)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)エチル)カルバメート(14-4,130mg)を得た。収率:72.8%、MS(ESI)m/e576.1(M+H)
【0068】
(4)2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-yl-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリルの合成
【0069】
化合物エチル-(2-シアノ-2-(2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-yl-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl-4-d)オキシ)フェニル)ヒドラゾノ)エチル)カルバメート(125mg,0.22mmol)を5mlの酢酸に溶解させ、酢酸ナトリウム(73mg,0.88mmol)を加え、125℃で2h還流させ、氷水浴で冷却し、30mlの水を加え、20min撹拌し、濾過し、濾過ケーキに対して水で3回溶出を行い、乾燥させ、得られた固体を3mlの酢酸エチルに加え、30minスラリー化し、濾過し、濾過ケーキを減圧下で濃縮乾燥させ、化合物2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-yl-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-yl)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物14,95mg)を得た。収率:81.4%、MS(ESI)m/e529.0(M+H) H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.44-13.12(m,1H),12.23(s,1H),7.92(s,2H),7.44(s,1H),3.02(s,1H)。
【0070】
実施例4 化合物1の合成
化合物2-(3-ブロモ-5-クロロ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキソ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物1)
【0071】
公知化合物である3,6-ジクロロ-4-イソプロピルピペラジン(PCT Int.Appl.,2013045519)を原料として、実施例1の方法に従って化合物1を製造した。
【0072】
LC/MS(ESI)calcd for C1712BrClN(M+H)m/z,477.98;found,479.0,481.0。
【0073】
H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.29(s,1H),12.22(s,1H),7.88(d,J=2.4Hz,1H),7.81(d,J=2.4Hz,1H),7.44(s,1H),3.05(dt,J=13.8,6.9Hz,1H),1.20(d,J=6.9Hz,6H)。
【0074】
実施例5 化合物13の合成
2-(3,5-ジブロモ-4-((5-イソプロピル-6-オキソ-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物13)
【0075】
公知化合物である3,6-ジクロロ-4-イソプロピルピペラジン(PCT Int.Appl., 2013045519)を原料として、実施例3の方法に従って化合物13を製造した。
【0076】
LC/MS(ESI)calcd for C1712Br(M+H)m/z,524.13;found,523.1,525.1。
【0077】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ12.16(s,1H),7.91(s,2H),7.42(s,1H),3.06(dt,J=13.7,6.9Hz,1H),1.20(d,J=6.8Hz,6H)。
【0078】
実施例6 化合物15の合成
2-(3,5-ジブロモ-4-((6-オキソ-5-(プロパン-2-イル-1,1,1,3,3,3-d6)-1,6-ジヒドロピリダジン-3-イル-4-d)オキシ)フェニル)-3,5-ジオキシ-2,3,4,5-テトラヒドロ-1,2,4-トリアジン-6-カルボニトリル(化合物15)
【0079】
上記化合物を原料として、実施例3の方法に従って化合物15を製造した。
【0080】
LC/MS(ESI)calcd for C17Br(M+H)m/z,531.17;found,530.0,532.0。
【0081】
1H NMR(400MHz,DMSO-d6)δ13.28(s,1H),12.23(s,1H),7.92(s,2H),3.02(s,1H)。
【0082】
以下、本発明の有益な効果を、試験例によって説明する。
【0083】
試験例1 本発明の化合物のTHR-βに対するアゴニスト活性の実験
1)実験方法
化合物のTHR-βに対するアゴニスト活性を、文献(J.Med.Chem.2014,57,3912)と類似の方法で測定した。
【0084】
DMSOで100Xの参照化合物又は化合物を調製し、さらに1:3の等比希釈を行った。100X段階希釈した参照化合物又は化合物を、1Xの反応緩衝液で4Xに希釈して、アッセイプレートに添加した。1Xの反応緩衝液で4XのTRα-LBD又はTRβ-LBDと4XのRXRαとの混合溶液を調製して、アッセイプレートに添加した。1Xの反応緩衝液で2Xのbiotin-SRC2-2、2XのEu-anti-GST、2Xのstreptavidin-d2の混合溶液を調製して、アッセイプレートに添加した。1000rpmで1min遠心分離し、さらに室温かつ遮光の条件下で4時間インキュベートした。EnVision 2104プレートリーダーで665nmと615nmの蛍光シグナル値を読み取って、Ratio665nm/615nmを算出した。THR-β EC50(nM)を算出した。
【0085】
本発明の化合物の甲状腺ホルモン受容体α(THR-α)に対するアゴニスト活性を上記と類似の方法で測定し、THR-αのEC50(nM)を算出した。さらに、本発明の化合物のアゴニスト選択性THR-β/THR-αを算出した。
【0086】
選択性THR-β/THR-α=THR-α EC50÷THR-β EC50。
【0087】
2)実験結果
【0088】
【表1】
【0089】
結果は表1に示すとおりである。本発明の化合物1、2、3、13、14、15は、対照化合物MGL-3196と比較して、THR-β及びTHR-αに対するアゴニスト活性がいずれも有意に向上しており、特にTHR-βに対して、本発明の化合物のアゴニスト活性が著しく向上していることが分かる。また、本発明の化合物は、対照化合物MGL-3196と比較して、THR-β及びTHR-αのうちTHR-βに対するアゴニスト選択性も著しく向上している。
【0090】
試験例2 本発明の化合物のマウスにおける薬物動態試験
1)実験材料及び機器
ポリエチレングリコール400(PEG400)、製造元:成都市科竜化学工業試薬廠。ヒドロキシプロピルβシクロデキストリン(HP-β-CD)、製造元:上海笛柏化学品技術有限公司。HPC LF、製造元:成都元諾天成科技有限公司。ヘパリンナトリウム、製造元:成都市科龍化学工業試薬廠。
【0091】
実験動物:ICRマウス(成都達碩実験動物有限公司)。
【0092】
2)実験方法
測定対象サンプルの調製:
IV群:測定対象のサンプル1.15mgを精密に秤量し、まずDMA 0.228mlを加えて溶解させ、次にPEG400 1.139ml、0.1Mリン酸緩衝液5.012mlを順に加え、最後に40%HP-B-CDを最終体積が11.39mlになるまで加えて、超音波、ボルテックスで均一に混合し、0.1mg/mlの透明な清澄液に調製した。
【0093】
PO群:測定対象のサンプル5.06mgを精密に秤量し、2%HPC LF(0.1%Tween-80含有)を最終体積が20.04mlになるまで加え、超音波、ボルテックスで均一に混合し、0.25mg/mlの均一な懸濁液に調製した。
【0094】
実験手順:
健康な成体ICRマウス9匹(各時点で3匹)を一晩絶食させた(摂水自由)後、それぞれ尾静脈及び胃内に投与した。IV群は、それぞれ投与後5min、15min、0.5h、1h、2h、4h、8h、12h、24hに、顎下静脈から0.1ml採血し、4℃で5min遠心分離して血漿を分離し、-20℃で保存して測定対象とした。PO群は、投与前、及び投与後0.5、1、2、4、6、8、12、24hに、顎下静脈から0.1ml採血した。処理方法は静脈注射群と同様。
【0095】
LC/MS/MS法を確立して未変化体薬物の血漿中濃度を測定し、血中濃度-時間曲線をプロットし、WinNonlin6.3ソフトウェアを用いて、主な薬物動態パラメータを算出した(表2参照)。
【0096】
3)実験結果
【0097】
【表2】
【0098】
表2から分かるように、本発明の化合物は、マウスでは2mg/kgの投与量でMGL-3196 5mg/kgの投与量での暴露量を達成することができ、且つ、本発明の化合物2は、より少ない投与量でMGL-3196よりも長い半減期を有する。本発明の化合物は、MGL-3196よりも良好な薬物動態特性を有することが証明された。
【0099】
以上のように、本発明は式(I)に示す化合物又はその光学異性体、塩、プロドラッグ、水和物又は非水溶媒和物を提供するものである。本発明の特定の置換位置及び特定の置換タイプにより得られた式(I)に示す化合物は、対照化合物MGL-3196と比較して、甲状腺ホルモン受容体β(THR-β)及び甲状腺ホルモン受容体α(THR-α)のいずれに対してもより優れたアゴニスト活性を有し、特にTHR-βに対しては、本発明の化合物のアゴニスト活性及びアゴニスト選択性が著しく向上している。また、本発明の化合物は、著しく向上した薬物動態特性をさらに有する。本発明の化合物は、THR-βアゴニスト剤、及びTHR-βアゴニスト剤が適用される適応症(脂質異常症、高コレステロール血症、非アルコール性脂肪肝炎、非アルコール性脂肪性肝疾患など)を治療するための薬物の調製において、有望である。