(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】音響膜アレイの最適化
(51)【国際特許分類】
G10K 11/34 20060101AFI20241023BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G10K11/34 130
H04R1/40 310
H04R1/40 330
(21)【出願番号】P 2022512879
(86)(22)【出願日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 NL2020050529
(87)【国際公開番号】W WO2021040521
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-08-02
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502015784
【氏名又は名称】ネーデルランドセ オルガニサティエ フォール トエゲパスト-ナトールヴェテンシャッペリク オンデルゾエク ティエヌオー
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【氏名又は名称】松井 光夫
(74)【代理人】
【識別番号】100118599
【氏名又は名称】村上 博司
(72)【発明者】
【氏名】アッカーマン,ヒルケ ブルール
(72)【発明者】
【氏名】ファン ネール,ポール ルイ マリア ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フォルケル,アルノ ウィレム フレデリック
【審査官】川▲崎▼ 博章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/015882(WO,A1)
【文献】特表2001-513619(JP,A)
【文献】特開昭62-271600(JP,A)
【文献】特開2012-109800(JP,A)
【文献】特開2012-216897(JP,A)
【文献】特表2018-523936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/34
H04R 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響デバイス(100)であって、
箔(10)の上に形成された音響膜(1、2、3、4)のアレイ、及び
それぞれ音響波(W1、W2、W3、W4)を生成する為に、該音響膜(1、2、3、4)を各自の共振周波数(Fr)で振動させるそれぞれの駆動信号を生成するように構成されたコントローラ(50)
を備えており、
該アレイの少なくとも第1のサブセットが、該コントローラ(50)から同じ駆動信号(S1)を受け取るように接続された隣接する複数の音響膜(1、2)の同相ペアによって形成されており、各同相ペアは、それぞれの第1の音響膜(1)と、隣接する第2の音響膜(2)とを備えており、該第1の音響膜(1)は、該第2の音響膜(2)から、両者の間の該箔(10)の第1の中間区間(10i)だけ距離があけられており、
該第1の音響膜(1)と該第2の音響膜(2)との間の該第1の中間区間(10i)の第1の距離(X12)は、第1の整数(N12)に10分の1未満である第1の分数(d12)を足すか又は引いた値に、該共振周波数(Fr)で該音響膜(1、2)によって生成されて該隣接する複数の音響膜(1、2)間の該中間区間(10i)を通って進むラム波(Ws)の所定のラム波長(λs)を掛けた値である、前記音響デバイス(100)。
【請求項2】
該アレイの少なくとも第2のサブセットが、該コントローラ(50)から位相遅延された駆動信号(S1、S2)を受け取るように接続された隣接する複数の音響膜(3、4)の複数の位相遅延ペアによって形成されており、各位相遅延ペアは、第3の音響膜(3)と、隣接する第4の音響膜(4)とを備えており、該第3の音響膜(3)は、該第4の音響膜(4)から、両者の間の該箔(10)の第2の中間区間(10j)だけ距離があけられており、
該第3の音響膜及び該第4の音響膜(3、4)間の該第2の中間区間(10j)の第2の距離(X34)は、第2の整数(N34)に非ゼロの第2の分数(d34)を足すか又は引いた値に、該共振周波数(Fr)で該音響膜(3、4)によって生成されて該隣接する複数の音響膜(3、4)間の該中間区間(10i)を通って進むラム波(Ws)の所定のラム波長(λs)を掛けた値であり、該第2の分数(d34)は、該第3の音響膜及び該第4の音響膜(3、4)間の位相遅延(φ34)に従って予め決定される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
音響膜(1、2;3、4)のそれぞれのペアの間のゼロ又は非ゼロの位相遅延(φ12、φ34)は、該音響膜(1、2、3、4)によって生成されたそれぞれ音響波(W1、W2、W3、W4)が該アレイ上方の焦点(C)で積極的に干渉するように、決定される、請求項1又は2に記載のデバイス。
【請求項4】
隣接する複数の膜のそれぞれの位相遅延ペアを形成する複数の音響膜(3、4)が、該箔(10)上方の共通の焦点(C)からそれぞれの距離Z3及びZ4に配設され、
該距離Z3及びZ4が、
Z
3=(N
3+ΔΦ
3/2π)・λ
a及びZ
4=(N
4+ΔΦ
4/2π)・λ
a
として決定され、ここで、λaは、該膜(3、4)によって生成される音響波の波長であり、N3及びN4は、該それぞれの膜と該焦点との間に収まる全波長の数によって決定される整数値であり、ΔΦ3及びΔΦ4は、各該膜のそれぞれの位相であり、
膜(3、4)の該位相遅延ペアの間の距離X34が、
X
34=(N
34+ΔΦ
34/2π)・λ
s
によって決定され、ここで、λsはラム波長(λs)であり、N34は、それぞれのトランスデューサと該焦点との間に収まる全波長の数によって決定される整数値であり、ΔΦ34は、膜(3、4)の該それぞれの位相遅延ペアの間の位相差であり、
該距離X34が、
(ΔΦ
34/2π)=|(ΔΦ
3/2π)-(ΔΦ
4/2π)|±d
34
となるように選択され、ここで、d34は、10分の1未満の値を有する、最大の許容される分数位相差である、請求項1~3のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項5】
該駆動信号(S1、S2、S3)の各々が、該膜の該共振周波数(Fr)に対応するそれぞれの駆動周波数を備えている、請求項1~4のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項6】
該音響膜が、同心円(R1、R2、R3、R4)のパターンに沿って配置されており、
同じ円(R1)にある隣接する複数の膜(1、2;2、3)のうちの少なくとも一つのサブセットが、同じ位相で振動するように構成された同相ペアを形成し、各同相ペアは、箔の中間区間を通って第1の距離(X12、X23)を進み隣接する同相膜に到達するラム波の積極的干渉をもたらすように、該ペアの間にそれぞれの上記第1の距離(X12、X23)を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項7】
隣り合う複数の円(R1、R2)にある隣接する複数の膜(2、4;3、4)のうちの少なくとも一つのサブセットが、所定の位相差を伴って振動するように構成された位相遅延ペアを形成し、各位相遅延ペアは、箔の中間区間を通って第2の距離(X24、X34)を進み隣接する位相遅延された膜に到達するラム波の積極的干渉をもたらすように、該ペアの間にそれぞれの上記第2の距離(X24、X34)を有する、請求項1~6のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項8】
隣り合う複数の円(R1、R2)にある少なくとも幾つかの隣接する複数の膜(3、4;3、5)が、それらの間に異なる複数の距離(X34、X35)を有する複数の位相遅延ペアを形成し、該距離同士は、波長の整数倍だけ異なる、請求項1~7のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項9】
該音響膜(1、2、3、4)が、該箔(10)の一体部分として形成されており、該音響膜(1、2、3、4)の作動される表面が、該箔の層(10b)を備えている、請求項1~8のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項10】
該共振周波数(Fr)が、該音響膜の膜材料特性及び直径のうちの1以上によって決定され、該ラム波長(λs)が、該ラム波(Ws)が生成される該共振周波数(Fr)と、該箔(10)の該中間区間(10i、10j)の材料特性及び厚さと、によって決定され、該箔(10)の該中間区間(10i、10j)は、1ミリメートル未満の合計厚さを有し、該音響膜は、該箔(10)の該中間区間(10i、10j)の該厚さの少なくとも2分の1未満である合計厚さを有する、請求項1~9のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項11】
音響デバイス(100)を製造する方法であって、
箔(10)の上に形成された音響膜(1、2、3、4)のアレイのレイアウトを決定すること、ここで、該音響膜(1、2、3、4)の各々が、それぞれ音響波(W1、W2、W3、W4)を生成する為に該音響膜(1、2、3、4)の共振周波数(Fr)で振動するように構成される、
該音響波(W1、W2、W3、W4)の間に所定の干渉パターン(C)を生成する為に該音響膜(1、2、4、5)が作動されるべき相対位相(ΔΦ12、ΔΦ34)を決定すること、
該アレイ内の隣接する複数の音響膜(1、2;3、4)の間の該箔(10)の中間区間(10i、10j)を通って進む、該共振周波数(Fr)におけるラム波(Ws)のラム波長(λs)を決定すること
を含み、
ここで、該レイアウトにおける該隣接する複数の音響膜(1、2;3、4)間の該中間区間(10i、10j)の距離(X12、X34)が、該相対位相(ΔΦ12、ΔΦ34)と、隣接する複数の音響膜の該ペアの第1の音響膜(1、3)を作動させることによって生成されそれぞれの該中間区間(10i、10j)を通って進む該ラム波(Ws)を、隣接する複数の音響膜の該ペアの第2の音響膜(2、4)と同相で到達させる為の該ラム波長(λs)とに従って決定される、前記方法。
【請求項12】
該アレイの少なくとも第1のサブセットが、隣接する複数の音響膜(1、2)の同相ペアによって形成され、各同相ペアは、それぞれの第1の音響膜(1)と、隣接する第2の音響膜(2)とを備えており、該第1の音響膜(1)は、該第2の音響膜(2)から、両者の間の該箔(10)の第1の中間区間(10i)だけ距離があけられており、該第1の音響膜(1)と該第2の音響膜(2)との間の該第1の中間区間(10i)の第1の距離(X12)は、第1の整数(N12)に10分の1未満である第1の分数(d12)を足すか又は引いた値に、該共振周波数(Fr)で該音響膜(1、2)によって生成されて該隣接する複数の音響膜(1、2)間の該中間区間(10i)を通って進むラム波(Ws)の所定のラム波長(λs)を掛けた値である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
該アレイの少なくとも第2のサブセットが、隣接する複数の音響膜(3、4)の複数の位相遅延ペアによって形成され、各位相遅延ペアは、第3の音響膜(3)と、隣接する第4の音響膜(4)とを備えており、該第3の音響膜(3)は、該第4の音響膜(4)から、両者の間の該箔(10)の第2の中間区間(10j)だけ距離があけられており、該第3の音響膜及び該第4の音響膜(3、4)間の該第2の中間区間(10j)の第2の距離(X34)は、第2の整数(N34)に非ゼロの第2の分数(d34)を足すか又は引いた値に、該共振周波数(Fr)で該音響膜(3、4)によって生成されて該隣接する複数の音響膜(3、4)間の該中間区間(10i)を通って進むラム波(Ws)の所定のラム波長(λs)を掛けた値であり、該第2の分数(d34)は、該第3の音響膜及び該第4の音響膜(3、4)の位相遅延(φ34)に従って予め決定される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
音響膜のそれぞれのペアの間の箔の中間区間の厚さが、それぞれのペアの一方の音響膜によって生成されたラム波が該それぞれのペアの隣接する複数の音響膜と同相で到達するように、ラム波(Ws)の伝搬に影響を与える為に変動される、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
該アレイ内の該音響膜が、螺旋パターンに沿って配置される、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、音響膜のアレイを備えた音響デバイスに、並びにそのようなデバイスの設計及び製造を最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多要素音響アレイ、例えば医学診断、非破壊検査、空中触覚、及び他の用途で使用される超音波トランスデューサ向けの多要素音響アレイ、の構築及び小型化に対する関心がある。音響アレイの設計及び作製における重要な観点の一つは、全ての要素、例えば膜、が、最適な合焦を実現する為に、それらが振動するときの事前に定められた位相を有することである。しかしながら、例えば1つの基本トランスデューサの作動が隣接するトランスデューサにも影響することができる為、該アレイの該要素の要素間の機械的クロストークが性能を低下させることができる。クロストークを回避する一つの方法は、該トランスデューサ間にさらなる音響絶縁を追加することである。しかしながら、これは、作製コストを増し、よりかさばった設計につながりうる。クロストークを回避する別の方法は、トランスデューサ間の距離を増すことである。しかしながら、これは同時に、所与の表面に収まることのできるトランスデューサの数を減らす。
【0003】
音響アレイの設計及び製造のさらなる改良、例えば、相対的に薄い(柔軟な)基板、例えば箔、の上に密に搭載された音響膜のアレイを可能にすること、に対する要望が依然として存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
理論に束縛されることなく、本発明者等は、相対的に薄い基板又は箔上の隣接する複数の音響膜間の機械的なクロストークの主要な発生源は、そのような基板の中間区間を通って進む反対称ラム波まで遡られることができることを認識する。本開示の観点は、該膜の共振周波数で生成されて該基板の該中間区間を通って進むラム波が、隣接する複数の膜と同相で到達するように、隣接する複数の音響膜の各ペア間の中間距離が予め決定される音響アレイの設計を目的とする。同じ位相で振動するように構成される隣接する(同相の)膜のペアについて、それらの間の距離は好ましくは、ラム波長の整数倍である(任意的に、小さいわずかな逸脱を許容する)。このようにすると、該基板を通って進む音響波は、該隣接するトランスデューサの作動を実際に向上させうる。追加的又は代替的には、一部の音響トランスデューサのペアは、特定の位相差を伴って振動するように実際に設計されうる。例えば、集束アレイにおいて、音響波の焦点により近いトランスデューサが、該焦点からより遠いトランスデューサと比べて位相遅延を伴って作動されることが望まれることができる。相対位相差を伴って振動するように構成された隣接する(位相遅延された)膜のペアの場合、それらの間の距離は好ましくは、ある整数に該ラム波長の所定の分数倍を足した値である。この場合、該分数は、特定の位相差に従って選択される。例えば、該波長の該分数は、該位相差の分数周期に対応しうる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実装において、膜トランスデューサアレイの設計は、その材料特性を決定する為にキャリア基板又は箔を特徴付けることを包含する。該膜トランスデューサは好ましくは、特定の膜共振周波数を使用する為、必要とされる周波数に関連する該箔のラム波分散曲線が、例えば実験又は計算から、決定されることができる。例えば、該位相差は、分散性のラム波の位相速度及び個々の振動膜間の距離によって決定されることができる。例えば、特定の周波数(該膜の共振)における該位相速度は、例えば該箔の箔厚及び材料特性(密度、ポアソン比、及びヤング係数)に基づいて、決定されることができる。追加的又は代替的には、該箔中での該位相速度及び/又はラム波長も、実験により決定されることができる。次に、該アレイは、該ラム波が、同相で、隣接する振動膜の間で(意図される位相に基づいて)到達して、破壊的干渉を回避するように設計されることができる。
【0006】
本開示の装置、システム及び方法のこれら及び他の特徴、観点及び利点は、以下の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】
図1Aは、箔の上に形成された音響膜のアレイを備えている音響デバイスの上面図を示す。
【
図1B】
図1Bは、トランスデューサの同相ペアの断面図を示す。
【
図1C】
図1Cは、所定の位相差を有するトランスデューサの位相遅延ペアの断面図を示す。
【
図2】
図2は、所定の場所で積極的(constructively)に干渉するように構成された音響膜のアレイを有するデバイスを示す。
【
図4A】
図4Aは、同心円のパターンに沿って配置された膜の上面図を示す。
【
図4B】
図4Bは、同様のパターンをもつ実際のデバイスの写真を示す。
【
図5A】
図5Aは、螺旋を描くパターンに沿って膜が分散された音響デバイスを示す。
【
図5B】
図5Bは、焦点を形成するように音響波を生成する該デバイスの対応する等角図を示す。
【
図6A】
図6Aは、膜アレイを構築する為に使用される典型的な基板(箔)のラム波分散曲線を示す。
【
図6B】
図6Bは、トランスデューサ間の様々な距離に対して周波数の関数としてトランスデューサのアレイによって発生される音圧レベルのグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
特定の実施態様を説明する為に使用される用語は、本発明を制限することは意図されない。本明細書において使用される場合、文脈が明らかに別途示すのでない限り、単数形の「一つ(a)」、「一つ(an)」及び「前記(the)」は複数形も包含することが意図される。語「及び/又は」は、関連する列挙された項目の1以上の任意の全ての組み合わせを包含する。語「~を備えている(comprises)」及び/又は「~を備えている(comprising)」は、述べられる特徴の存在を明示するが、1以上の他の特徴の存在又は追加を除外するものではないことが理解されよう。さらに、方法の特定のステップが別のステップの後に続くと参照される場合、別途断りがない限り、それは上記他のステップのすぐ後に続くことができ、又は該特定のステップを実施する前に1以上の中間ステップが実施されうることが理解されよう。同様に、構造又は構成要素間の接続が説明されるとき、別途断りがない限り、この接続は、直接確立されるか、又は中間構造若しくは構成要素を通じて確立されうることが理解されよう。
【0009】
本発明は、本発明の実施態様が示されている添付図面を参照しながら以後でより完全に説明される。該図面において、システム、構成要素、層、及び領域の絶対的及び相対的な大きさは、明瞭性の為に誇張されうる。実施態様は、場合によっては理想化された本発明の実施態様及び中間構造の概略図及び/又は断面図を参照して説明されうる。説明及び図面において、同様の番号は、全体を通じて同様の要素を指す。関係を表す語並びにその派生形は、そのとき論じられている図面に記載又は図示されている向きを基準とするものと解釈されるべきである。そのような関係を表す語は、説明の便宜の為であり、別途断りがない限り、システムが特定の向きで構築又は動作されることは必要としない。
【0010】
図1Aは、箔10の上に形成された音響膜1、2、3、4のアレイを備えている音響デバイス100の上面図を示す。
図1Bは、トランスデューサ1、2の同相ペアの断面図を示す。
図1Cは、所定の位相差ΔΦ13を有するトランスデューサ3、4の位相遅延ペアの断面図を示す。
【0011】
本開示の幾つかの観点は、箔10の上に形成された音響膜1、2、3、4のアレイを備えている音響デバイス100に関する。好ましい実施態様において、該音響膜1、2、3、4の各々は、それぞれ音響波W1、W2、W3、W4を生成する為に該音響膜1、2、3、4の共振周波数Frで振動するように構成される。
【0012】
幾つかの実施態様において、該アレイの少なくとも第1のサブセットが、隣接する複数の音響膜1、2の同相ペアによって形成される。例えば、各同相ペアは、それぞれの第1の音響膜1と、隣接する第2の音響膜2とを備える。一つの実施態様において、例えば図示されているように、該第1の音響膜1は、該第2の音響膜2から、両者の間の該箔10の第1の中間区間10iだけ距離があけられている。好ましくは、該第1の音響膜1と該第2の音響膜2との間の該第1の中間区間10iの第1の距離X12は、第1の整数N12に、該共振周波数Frで該音響膜1、2によって生成され該隣接する複数の音響膜1、2同士の間の該中間区間10iを通って進むラム波Wsの所定のラム波長λsを掛けた値である。
【0013】
幾つかの実施態様において、小さい逸脱が許容されることができる。例えば、該距離X12は、該ラム波長(λs)の整数倍数に、該ラム波長(λs)の10分の1未満である第1の分数d12を足すか又は引いた値であることができる。これは、X12=(N12±d12)・λsと表されることができる。隣接する複数の膜1、2の該同相ペア間のクロストーク干渉を最小にする為に、好ましくは、該分数d12は、相対的に小さく、例えば、5分の1未満(<0.2)、10分の1未満(<0.1)、12分の1未満(<0.05)、15分の1未満(<0.02)、又はさらには100分の1未満(<0.01)、である。最も好ましくは、該分数d12は、可能な限り低い、すなわちゼロである(測定又は製造誤差以内で)。該分数d12が小さくなるほど、該ペア間の破壊的干渉の影響が少なくなる。
【0014】
幾つかの実施態様において、該アレイの少なくとも第2のサブセットが、隣接する複数の音響膜3、4の位相遅延ペアによって形成される。例えば、各位相遅延ペアは、第3の音響膜3と、隣接する第4の音響膜4とを備える。一つの実施態様において、例えば図示されているように、該第3の音響膜3は、該第4の音響膜4から、両者の間の該箔10の第2の中間区間10jだけ距離があけられている。好ましくは、該第3の音響膜3と該第4の音響膜4との間の該第2の中間区間10jの第2の距離X34は、第2の整数N34に非ゼロの第2の分数d34を足すか又は引いた値に、該共振周波数Frで該音響膜3、4によって生成されて該隣接する複数の音響膜3、4の間の該中間区間10iを通って進むラム波Wsの所定のラム波長λsを掛けた値である。これは、X34=(N45±d34)・λsと表されることができる。好ましくは、該第2の分数d34は、該第3の音響膜と該第4の音響膜4との間の位相遅延φ34に従って予め決定される。
【0015】
原理上、該膜同士の間に収まるラム波長の数を数える該整数N12、N34は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10等の値を有することができる。ただし好ましくは、該トランスデューサ間の該距離X12又はX34は、相対的に小さく保たれる。例えば、該第1の整数N12及び/又は該第2の整数N34は好ましくは、3以下、2以下、又はさらには1である。該トランスデューサ間の該距離が小さくなるほど、該箔10の表面積当たり、より多くが収まることができる。特に相対的に小さい距離の場合、本教示は、望ましくないクロストークを回避することにおいて利益を提供できることが認識されよう。幾つかの実施態様において、該トランスデューサ間の少なくともいくらかの分離を可能にする為に、それらの間に十分な距離及び材料を有することが望ましいことがありうる。その為、該整数を少なくとも1又は2に設定することが望ましいことがありうる。
【0016】
原理上、該膜は異なる共振振動に対応可能でありうるが、好ましくは、最も低い共振周波数を伴う基本モード(u01、1s)が、該音響波を効率的に生成する為に使用される。典型的に、該共振周波数Frは、例えば該音響膜の膜材料特性及び直径のうちの1以上により、決定される。また、他の又はさらなるパラメータ、例えば密度、ポアソン比、及びヤング係数、が使用されることができる。幾つかの実施態様において、基本周波数Fr(Hz)は、膜張力T(N/m)、密度σ(kg/m2)、直径D(m)を使用して、
【0017】
【数1】
として表されることができる。代替的には又は追加的に、該膜の基本周波数は、任意の他の分析モデリング又は数値モデリングによって決定されることができる。該ラム波長は、例えば該箔の片を該共振周波数で作動させ、波を記録することにより、実験によって決定されることもできる。一つの実施態様において、特定の共振周波数Frは、該膜の張力及び密度との関係で特定の直径Dを設定することによって決定される。例えば、該直径Dは、該膜の中を進んで定常波を発生させる波の共振周波数における波長の半分に相当しうる。
【0018】
典型的に、該ラム波長λsは、例えば該ラム波Wsが生成される周波数(例えば該膜の該共振周波数Fr)、並びに該中間区間10iの材料特性及び厚さによって、決定される。また、他の又は同様のパラメータ、例えば該箔(基部箔及び存在する場合にはさらなる層を含む)の密度、ポアソン比、及びヤング係数、が使用されることができる。例えば、該波長は、(該共振周波数での)該ラム波の位相速度を該共振周波数で割った値の関数として決定されることができる。代替的には又は追加的に、該膜の該基本周波数は、任意の他の分析モデリング又は数値モデリングによって決定されることができる。好ましくは、最も近い隣り合う膜の間の該中間区間の距離は、該膜の直径の半分~2倍であり、本明細書に記載されているように相対位相の仕様に従って微調整される。
【0019】
好ましい実施態様において、該音響膜1、2、3、4は、該箔10の一体部分として形成される。例えば、該音響膜1、2、3、4の作動される表面は、該箔の層10bを備える。例えば、該膜同士の間の該箔の中間区間10i、10jは、該音響膜の縁部の画定を与える為、及び/又は該膜同士の間に少なくともいくらかの音響絶縁を与える為に、1以上のさらなる層10aを設けられることができる。幾つかの実施態様において、該音響膜自体が、さらなる層(図示せず)、例えば、各自の下部電極層と上部電極層との間に挟まれた圧電層、を備えうる。例えば該電極間に電圧を印加することにより、該圧電層に通電することによって、該圧電層及び膜が変形しうる。例えば、AC電圧信号が該電極に印加されることができ、該信号は、該共振周波数Frに応じた周波数成分を含む。該膜の作動はまた、他の方法、例えば別個のトランスデューサ、によって提供されることができる。
【0020】
典型的に、該箔10は相対的に薄い。原理上、該箔は、例えば(該トランスデューサによって)当該材料内で生成されることができる圧縮/せん断波の波長よりも小さいか又はそれと同程度の厚さを有する、固体材料の任意の薄片によって形成されうる。好ましくは、該膜同士の間の箔の該中間区間は、2ミリメートル未満、1ミリメートル未満、又はさらには2分の1ミリメートル未満、の合計厚さ(ある場合にはさらなる層10a、10bを含めて)を有する。それぞれの音響トランスデューサを形成する膜は、さらに薄い、例えば箔の該中間区間の80パーセント未満、好ましくは60パーセント未満、又はさらに薄い、例えば少なくとも2分の1又は3分の1の薄さ、であることができる。幾つかの実施態様において、該箔10は相対的に柔軟であることができ、それにより、例えば、該音響デバイス100が基本的な(電気的/音響的)機能を失うことなく、該箔(膜を含む)が、20センチメートル未満、10センチメートル未満、又はさらには5センチメートル未満の半径にわたって曲げられることを可能にする。
【0021】
幾つかの実施態様において、該箔10の該中間区間10i、10jの厚さは、例えばラム波が該隣りの膜と同相で到達するように、該ラム波の伝搬に影響を与える為に変動されうる。また、所望の距離に設定されることができず、そうでなければ互いと破壊的に干渉することになる、該トランスデューサの少なくとも幾つかの間の中間区間に、さらなる厚さ又は音響絶縁を追加することも構想されることができる。また、組み合わせが可能であり、例えば、共通の半径又は円に沿った膜が、該ラム波同士を積極的に干渉させる距離のところに設定され、一方、複数の異なる円の膜は、追加の材料又はそれらの間の該箔の締め付けによって互いから絶縁される。
【0022】
本明細書に記載されているように、該アレイ内の該膜は好ましくは、隣接する複数の膜間の破壊的干渉を回避する為に所定のレイアウトで分散され、例えば、分離距離は、該ラム波が振動する膜と同相で到達するように決定される。その為、本開示の観点は、本明細書に記載されているように音響デバイスを製造する方法として、又は他のものとして実施されることができる。
【0023】
幾つかの実施態様は、箔10の上に形成された音響膜1、2、3、4のアレイのレイアウトを決定することを含み、該音響膜1、2、3、4の各々は、それぞれ音響波W1、W2、W3、W4を生成する為に該音響膜1、2、3、4の共振周波数Frで振動するように構成される。他の又はさらなる実施態様は、該音響波W1、W2、W3、W4間に所定の干渉パターンCを生成する為に該音響膜1、2、4、5が作動されるべき相対位相ΔΦ12、ΔΦ34を決定することを含む。他の又はさらなる実施態様は、該アレイ内の隣接する複数の音響膜1、2;3、4の間の該箔10の中間区間10i、10jを通って進む、該共振周波数Frにおけるラム波Wsのラム波長λsを決定することを含む。
【0024】
好ましくは、該レイアウトにおける該隣接する複数の音響膜1、2;3、4間の該中間区間10i、10jの距離X12、X34は、該相対位相ΔΦ12、ΔΦ34と、隣接する複数の音響膜の該ペアの第1の音響膜1、3を作動させることによって生成され、それぞれの該中間区間10i、10jを通って進むラム波Wsを、隣接する複数の音響膜の該ペアの第2の音響膜2、4と同相で到達させる為の該ラム波長λsと、に従って決定される。その為、該音響デバイスは、決められたレイアウトを使用して製造されることができる。一つの実施態様において、該膜同士の間の最適化された距離は、該ラム波が該膜の各々について正確に同相で到達する場合と、当初のレイアウトとの間の位相差を最小にするように該膜の場所を変えることによって得られる。例えば、ミニマイザ・ルーチンが使用されることができる。
【0025】
図2は、所定の場所で積極的に干渉するように構成された音響膜のアレイを有するデバイスを示す。
【0026】
幾つかの実施態様において、該箔の上方(又は下方)の1以上の特定の場所で積極的に干渉するそれぞれの位相を有する音響波を生成する為に、該音響膜の全て又は少なくとも一つのサブセットが作動される。例えば、全ての膜の該音響波が、焦点C又は焦線(図示せず)において積極的に干渉する為の各自の位相と共に生成される。例えば、該音響デバイス100は触覚フィードバックデバイスを形成し、そこでは、該膜は、異なる膜によって発せられる音響波W間の積極的干渉によって、該デバイス上方の空中に触れることのできる点を作り出すように構成される。
【0027】
幾つかの実施態様において、それぞれの音響膜のペア1、2;3、4(例えば
図1B及び
図1Cに示される)の間のゼロ又は非ゼロの位相遅延φ12、φ34は、少なくとも幾つかの、好ましくは全ての、該音響膜1、2、3、4によって生成されたそれぞれ音響波W1、W2、W3、W4が該アレイ上方の焦点Cで積極的に干渉するように決定される。他の又はさらなる実施態様において、該それぞれのトランスデューサ3、4の該相対位相は、該焦点Cまでのそれぞれの距離Z3、Z4に基づいて決定されることができる。例えば、該第1のトランスデューサ3と該焦点Cとの間の第1の合計距離Z3は、(例えば空気中での)該音響波長λaに整数N3を掛けた値に残りの分数波長を足した和として表されることができる。該残りの分数は、該位相差ΔΦ3を、例えば2パイラジアン(2π rad)として表された、全周期で割った比として表されることができる。
【0028】
一つの実施態様において、例えば図示されているように、隣接する複数の膜のそれぞれの位相遅延ペアを形成する複数の音響膜3、4の少なくとも一部、好ましくは大半、又はさらには全てが、該箔10(例えばそれが平らに置かれたとき)の上方の共通の焦点Cから特定のそれぞれの距離Z3及びZ4に(例えば中心で)配設される。例えば、該距離Z3及びZ4は、
Z3=N3+ΔΦ3/2π・λa及びZ4=N4+ΔΦ4/2π・λa
として決定され、ここで、λaは、該膜3、4によって生成される音響波の波長であり、N3及びN4は、該それぞれの膜と該焦点との間に収まる全波長の数(a number of full wavelengths)によって決定される整数値であり、ΔΦ3及びΔΦ4は、該膜のそれぞれの位相(単位:ラジアン)である。
【0029】
別の又はさらなる実施態様において、膜3、4の該位相遅延ペアの間の距離X34は、
X34=N34+ΔΦ34/2π・λs
によって決定され、ここで、λsは該ラム波長λsであり、N34は、該それぞれのトランスデューサと該焦点との間に収まる全波長の数によって決定される整数値であり、ΔΦ34は、膜3、4の該それぞれの位相遅延ペアの間の位相差(a phase difference)(単位:ラジアン)である。
【0030】
好ましくは、該距離X34は、以下の該相対位相の式が成立するように選択され、
ΔΦ34/2π=|ΔΦ3/2π-ΔΦ4/2π|±d34
ここで、d34は、膜3、4の該位相遅延ペアの一方によって生成されて膜3、4の該位相遅延ペアの他方に到達するラム波間の最大の許容される分数位相差である。好ましくは、該最大の許容される分数位相差d34は、最小の破壊的干渉を有するように、5分の1未満、好ましくは10分の1未満、又は可能な限り低い、例えばゼロ、である。
【0031】
該点Cまでの該距離Z3、Z4にわたる該位相遅延が全周期(2π)よりも大きい事例では、整数が加算又は減算され得、例えば後者では位相差の和、又は該整数N3、N4が、例えば最大に、調整されることができることが理解されよう。また、該焦点までの距離が等しいトランスデューサ1、2の同相ペア(ここでは図示せず)に対して同様の式が自明に成立しうることが留意されうる。例えば、これは、
ΔΦ12/2π=|ΔΦ1/2π-ΔΦ2/2π|±d12=0
として表されることができ、ここでd12は、該第1の分数又は最大の許容される分数位相差である。
【0032】
幾つかの実施態様において、例えば図示されているように、該音響デバイス100は、該アレイ内の該音響膜を作動させるそれぞれの駆動信号S1、S2、S3を生成するように構成されたコントローラ50を備える。例えば、該コントローラは、該音響膜上の圧電材料を駆動する為の交流電圧を生成するように構成された信号生成器を含みうる。一つの実施態様において、該駆動信号S1、S2、S3の各々は、該膜の該共振周波数Frに対応するそれぞれの駆動周波数を備える。別の又はさらなる実施態様において、該膜のそれぞれの同相ペアの音響膜1、2は、同じ駆動信号S1を受け取るように接続される。別の又はさらなる実施態様において、それぞれの位相遅延ペアの音響膜3、4は、位相遅延された駆動信号S1、S2を受け取るように接続される。
【0033】
該膜は好ましくは、該共振周波数Frの又はその近傍の駆動周波数で作動されるが、他の又はさらなる駆動周波数がまた使用されることができる。幾つかの実施態様において、該駆動信号は、該膜の該共振周波数Frに対応するキャリア周波数Fc(可能な限り最良のもの)と、用途に応じた包絡線又は変調周波数Fmと、を含む複数の周波数を備える。例えば、触覚フィードバックデバイスは、200Hzの変調周波数によって変調された振幅である40kHzのキャリア周波数を使用しうる。また、3つ以上の周波数、又はさらには、例えば該それぞれのトランスデューサの共振周波数を含む、ある帯域幅の周波数を使用することがまた構想されることができる。
【0034】
幾つかの実施態様において、該駆動信号は、10kHzを上回る、例えば数十又は数百kHz、のキャリア周波数を、少なくとも10分の1の低さ、例えば800Hzより低い、の変調と共に備える。理論によって束縛されることなく、線形の意味で(すなわち800Hzより低い音周波数を直接使用して)触覚フィードバックを誘起させる為に必要とされる音強度は、難聴につながりうるほど高くなることが留意される。また、音の波長はそのような低い周波数で大きくなる(6.8m(50Hz)~0.4m(800Hz))為、そのことは、該音を効率的に生成する為に非常に大きいトランスデューサ(多数の波長の大きさ)が必要となることを意味する。また、トランスデューサのアレイを用いてそれらの周波数を発生させるには、焦点の大きさは最良でも1波長のオーダになり、これは横幅が0.4~6.8mであることを意味する。よって、身体のどの部分が励振されるかの選択性はほとんどない。
【0035】
図3Aは、同相の音響膜のみを備えるアレイの上面図を示す。
図3Bは、アレイのそれぞれの列に沿った同相音響膜の混合と、該列同士の間の位相遅延された膜とを備えるアレイの上面図を示す。幾つかの実施態様において、隣接する(最も近い)膜のペアの各々が互いと同相で振動するように設計される、音響膜のアレイが提供される。例えば、図示されている構成において、該膜の各々は、該(最も近い)隣接する複数の膜から所定の距離Xiにあることができ、該距離は、図示されているように同じ距離であるか、又は可変の距離、例えば、該列間とは異なる1列中の波長の整数倍(図示せず)、でありうる。他の又はさらなる実施態様において、例えば図示されているように、該音響膜は六角形パターンに構成され、該六角形の各隅が一つの膜によって占められ、該六角形の中心に一つの膜が配設される。これは、該膜が三角形の各隅に配設される三角形パターンと描写されることがまたできる。典型的に、該三角形は二等辺三角形であり、例えば、1つの膜から少なくとも2つの隣接する各膜までの距離(例えばXo)が同じである(例えば同じ位相差をもたらす)。これは
図3A及び
図3Bの両方に該当する。特殊なケースとして、例えば
図3Aに示されるように、該膜は、等辺六角形又は等辺三角形のパターンで配設されることができる。また、以下で説明されるように、他のパターンが可能である。
【0036】
図4Aは、同心円R1、R2、R3、R4のパターンに沿って配置された膜の上面図を示す。
図4Bは、同様のパターンをもつ実際のデバイスの写真を示す。
【0037】
好ましい実施態様において、該音響膜は、同心円R1、R2、R3、R4のパターンに沿って配置される。幾つかの実施態様において、同じ円R1にある隣接する複数の膜1、2;2、3のうちの少なくとも一つのサブセット、好ましくは全て、が、同じ位相で振動するように構成された同相ペアを形成する。例えば、各同相ペアは、箔の中間区間を通って上記第1の距離を進み隣接する同相膜に到達するラム波の積極的干渉をもたらすように、該ペアの間にそれぞれの第1の距離X12、X23を有する。他の又はさらなる実施態様において、隣り合う複数の円R1、R2にある隣接する複数の膜2、4;3、4のうちの少なくとも一つのサブセット、好ましくは全て、が、所定の位相差を伴って振動するように構成された複数の位相遅延ペアを形成する。例えば、各位相遅延ペアは、箔の中間区間を通って上記第2の距離を進み隣接する位相遅延された膜に到達するラム波の積極的干渉をもたらすように、該ペアの間にそれぞれの第2の距離X24、X34を有する。
【0038】
幾つかの実施態様において、例えば図示されているように、該隣り合う複数の円R1、R2にある少なくとも幾つかの隣接する複数の膜3、4及び3、5は、それらの間に異なる複数の距離X34及びX35を有する複数の位相遅延ペアを形成する。例えば、該距離同士は、波長の整数倍だけ異なる。一つの実施態様において、第1の円R1にある該膜1、2、3の各々は、第1の位相で振動するように構成される。別の又はさらなる実施態様において、該第1の円R1に隣接する第2の円R2にある該膜4、5の各々は、異なる第2の位相で振動するように構成される。別の又はさらなる実施態様において、該第2の円R2に隣接する第3の円R3にある該膜6、7の各々は、第3の位相で振動するように構成される。幾つかの実施態様において、該第1の位相と該第2の位相との間の位相遅延は、該第2の位相と該第3の位相との間の位相遅延と異なる。例えば、該位相遅延は、例えば
図2を参照して説明されたように、それぞれの遅延が、共通の焦点Cまでの(空気を通る)異なる距離を補償するように、決定されることができる。
【0039】
先に説明されたように、幾つかの実施態様において、波長の整数倍という理想的なケースから小さい分数差、例えば、先に示されたように該分数d12を足す又は引く、が許容されうる。例えば、10分の1未満の分数d12は、わずか最小の破壊的干渉に対応しうる。一方において、該分数d12が小さくなるほど、隣接するペア間の望ましくないクロストーク/破壊的干渉が少なくなる。他方において、小さい分数d12を許容することは、種々の構成のより高い設計自由度をもたらしうる。
【0040】
好ましい実施態様において、例えば図示されているように、該音響膜は、規則的なパターンを形成する。一つの実施態様において、例えば図示されているように、該同心円R1~R4は各々、それぞれの円の周りに等距離に分散された6の整数倍個の膜を備えている。例えば、該第1の円は6個の膜を備えており、該第2の円は12個の膜を備えており、該第3の円は18個の膜を備えている等である。また、図示されているように、中心に配設された単一の膜があることがまたできる。無論、他のパターンがまた可能であり、例えば、6以外の倍数が使用されることができ、特定の場所で膜が省かれ得(次の図に示されているように)、又は全く異なるパターンが構想されることができる。
【0041】
図5Aは、螺旋を描くパターンに沿って膜が分散された音響デバイス100を示す。
図5Bは、焦点Cを形成するように音響波Wを生成する該デバイスの対応する等角図を示す。一つの実施態様において、例えば図示されているように、該アレイの該膜は、螺旋パターンに沿って配置される。有利には、固定された又は可変の距離X12が、該螺旋に沿った後続の膜の各々の間で使用されることができる。例えば、該距離X12は、共通の焦点Cまでのそれぞれの経路長に差がある為、該後続の膜間の位相差に従って選択されうる。例えば、該経路長の差は、半径R1、R2の差及び軸方向距離Zから、例えばピタゴラスの定理を使用して、計算されることができる。幾つかの実施態様において、該螺旋パターンは、後続の巻き同士の間の距離DRが一定であるアルキメデスの螺旋に従って決定されることができる。他の又はさらなる実施態様において、該距離DRは、例えば後続の巻き同士の間の所望の位相遅延に従って、変動されうる。
【0042】
図6Aは、膜アレイを構築する為に使用される典型的な基板(箔)のラム波分散曲線を示す。例えば、Fr=40kHzの典型的な共振周波数において、該基板内でのラム波速度はVs=70m/sである。この場合、該基板内での該ラム波長はλs=1.75mmである。
【0043】
図6Bは、トランスデューサ間の様々な距離X12に対して周波数(F)の関数としてトランスデューサのアレイによって発生される音圧レベル(SPL)のグラフを示す。40kHzの共振周波数では、d12=±0.01の分数以内で、距離X12=1.01・λs、すなわち、ここではN12=1である波長の整数倍に近い、を使用して、最適な音圧レベルが得られることができることが観察されうる。スケールがデシベル(dB)単位である、すなわち対数である、ことに留意されたい。本発明の知識がないと、より高いトランスデューサ密度、例えばより小さい距離X12=0.71・λs、に対してより低いピークSPLが得られると分かることは驚くべきことであろう。X12=0.91・λsでは、SPLピークは、ごくわずかに強度が低くなるが、性能になお負の影響を与えることができるさらなる影響がありうる。
【0044】
幾つかの実施態様において、例えば図示されているように、X12の値を逸脱させる(すなわち、理想的な波長の整数倍でない)為の該SPLピークは、より小さいだけでなく、周波数がシフトされることがまたできることが留意されうる。例えば、X12<λsに対するピークは、該膜の実際の共振周波数(Fr)から離れてより高い周波数にシフトされる。理論に束縛されることなく、該より高い(共振を外れた)周波数に対応するより低い波長は、該トランスデューサ間の距離によりよく適合しうる。意図される共振周波数から離れる周波数の望ましくないシフトは、さらなる問題につながることができる。例えば、異なるトランスデューサが異なる周波数で振動する場合、これは周期的な破壊的干渉につながることができる。その為、全てのトランスデューサが同じ共振周波数Frを有すること、及び/又は該トランスデューサが同期性を失う前に該トランスデューサの位相を周期的にリセットする為の措置が取られることが最も好ましい。
【0045】
明瞭性及び簡潔な説明の目的で、特徴は、同じ又は別個の実施態様の一部として本明細書に記載されている。しかしながら、本発明の範囲は、記載されている該特徴の全て又は一部の組み合わせを有する実施態様を包含しうることが認識されよう。本明細書に記載されている幾つかの実施態様は、単一の焦点を形成するように構成されたデバイスを参照するが、他の形状、例えば焦点の直線又は曲線、が生成されることがまたできる。また、該駆動信号の各自の位相に応じて、可変の焦点、線、又は他の形状を提供することが構想されることがまたできる。該音響膜又は箔の要素は、1以上の代替の構成要素に組み合わせられる又は分割されうる。論じられ、図示された実施態様の様々な要素は、一定の利点、例えば音響アレイの向上した効率、をもたらす。無論、設計及び利点を見出し、合致させることにおいてさらなる改良を提供する為に、上記の実施態様又はプロセスの任意の1つが、1以上の他の実施態様又はプロセスと組み合わされうることが認識されるべきである。本開示は、相対的に薄い、例えば柔軟な、箔又は基板の上又は中に形成された音響膜のアレイに特に利点を提供し、また一般的に、基板の上に又はその他の形で形成されたアレイの音響トランスデューサ間のクロストークを低減する為の任意の用途に適用されることができることが認識される。
【0046】
添付の特許請求の範囲を解釈する際に、単語「~を備えている」は、所与の請求項に列挙される以外の他の要素又は動作の存在を除外せず、要素の前にある単語「一つ(a)」又は「一つ(an)」は、複数のそのような要素の存在を除外せず、請求項中に参照符号がある場合、それは請求項の範囲を制限せず、数個の「手段」が、同じ若しくは異なる項目によって表される又は構造若しくは機能が実施され得、明確に別途述べられない限り、開示されるデバイス又はその一部のいずれかが、さらなる部分と一緒に組み合わせられる又は分離されうることが理解されるべきである。1つの請求項が別の請求項を参照する場合、これは、各自の特徴の組み合わせによって実現される相乗的な利点を示しうる。しかし、特定の手段が、互いに異なる請求項に記載されているという単なる事実は、それら手段の組み合わせがまた有利に使用されることができないことを示さない。よって、本発明の実施態様は、請求項の全ての有効な組み合わせを包含し得、各請求項は、原理上、文脈によって明らかに除外されない限り、いずれかの先行請求項がまた参照されることができる。