(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】可視化可能な基材、当該基質の製造方法および使用方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/36 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
B41M5/36
(21)【出願番号】P 2022517716
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 US2020051451
(87)【国際公開番号】W WO2021055719
(87)【国際公開日】2021-03-25
【審査請求日】2023-08-31
(32)【優先日】2019-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518418201
【氏名又は名称】バーチャル グラフィックス エル・エル・シー
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】グッゾ・ジョン・ブイ
【審査官】中澤 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-512290(JP,A)
【文献】特開2011-168045(JP,A)
【文献】特表2019-524514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0245524(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/26-5/52
B41M 5/035
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱および/または圧力により可視化する基材であって、
不透明化材料の層、および
前記不透明化材料の層の第1の側面に付与された色材
を有し、
前記不透明化材料の層は、前記色材を覆い、
前記不透明化材料は、不透明状態にあるとき、複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子を含有し、当該複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子は
前記不透明ポリマー粒子間に空隙を規定し、異なる形状および/または大きさを有し、
前記不透明化材料は、十分な温度および/または圧力を加えられた際に、
前記空隙が除去されるかまたは消失することにより前記不透明状態から透明状態へ変化し、前記不透明化材料の下にある前記色材を可視化するように構成されている、
可視化する基材。
【請求項2】
前記色材に合わせられた基材裏打ちをさらに含み、
前記色材は、前記基材裏打ちと前記不透明化材料の層の間に配置されている、
請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項3】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の融点および/またはガラス転移温度が
、105℃以下である、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項4】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子が、スチレンおよびアクリレートからなるポリマーの群から選択される少なくとも一つのポリマーを含む、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項5】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子が、水性エマルジョンの形態で与えられる、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項6】
前記水性エマルジョンが、スチレンアクリルエマルジョンである、請求項5に記載の可視化する基材。
【請求項7】
前記不透明化材料が、下記:
ワックス、
増感剤、
光学的増白剤、
バインダーまたは樹脂、および
添加剤
からなる群から選択される少なくとも一つの要素をさらに含む、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項8】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の平均粒子径が、最大1,500nmである、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項9】
前記平均粒子径が
、1,000nm未満である、請求項
8に記載の可視化する基材。
【請求項10】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の平均粒子径が
、1,000nm以
上1,500nm以下である、請求項1に記載の可視化する基材。
【請求項11】
不透明状態にある不透明化材料の層で覆われた色材を、前記
不透明化材料が当該
不透明化材料を介して前記色材を見ることを妨げるような状態で付与し、
前記不透明化材料の層の少なくとも一部を不透明状態から透明状態へ変化させて、前記不透明化材料の下にある前記色材を可視化することを含み、
前記不透明化材料の層は、不透明状態にあるとき、複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子を含有し、当該複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子は
前記不透明ポリマー粒子間に空隙を規定し、異なる形状および/または大きさを有している、
方法。
【請求項12】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の間の空隙のうち少なくとも一つの空隙にインクを印刷することをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子を誘導して前記不透明化材料を不透明状態から透明状態へ変化させることをさらに含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項14】
前記色材が、当該色材上に水性エマルジョンを塗布することにより前記不透明化材料に覆われる、請求項
11に記載の方法。
【請求項15】
前記水性エマルジョンが、スチレンアクリルエマルジョンである、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記スチレンアクリルエマルジョンを乾燥して、前記色材を覆う前記不透明化材料を得ることをさらに含む、請求項
15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の平均粒子径が、最
大1,500nmである、請求項
11に記載の方法。
【請求項18】
前記平均粒子径が
、1,000nm未満である、請求項
17に記載の方法。
【請求項19】
前記複数の不規則および/または異形の不透明ポリマー粒子の平均粒子径が
、1,000nm以
上1,500nm以下である、請求項
11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本非仮出願は、2019年9月19日に出願された米国仮特許出願第62/902,593号に基づく優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示の技術分野
本開示は、印刷および印刷可能な基材の分野に関するものであり、米国特許第8,054,323号(以降「323特許」)に記載された印刷基材および方法を改善するものである。より詳細には、本開示は、新規な印刷基材、当該基材を製造および/または使用する方法、ならびに当該基材の不透明層であって、複数の不規則または異形のポリマー粒子により規定される空隙によって与えられる不透明層に関する。前記基材の不透明化層は、透明になってその下にある色材(例えば、インク)を可視化するように誘導されてもよい。例えば、サーマルプリントヘッドは、熱エネルギーを基材の一部に伝達して、その部分において不透明化層を透明にし、その部分において不透明化層の下にある色を可視化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、可視化可能な基材、ならびに当該基材を製造および/または使用する方法に関するものである。さらに、本開示は、透明になるように誘導されて不透明化材料の下にある色を可視化する不透明層または不透明化層を有する、可視化可能な基材に関する。不透明層は、熱、圧力、光エネルギー、および/または化学反応により誘導されて透明になり、その下に存在する色材(例えばインク)を可視化し得る。不透明化層は、光、熱エネルギーまたは熱、化学物質、および/または圧力に感応して、光、熱、化学、および/または圧力に感応する基材を定義することができる。不透明層は、光の周波数および/またはエネルギー(以下、「光エネルギー」と称する)に曝されること、高温または昇温(すなわち、周囲温度または他の閾値よりも高い温度)されること、加圧される(すなわち、大気圧を超える)こと、化学的に反応または変化すること、および/または他の透明性誘導方法によって透明になるよう誘導することができる。十分な光エネルギーの適用、加熱、加圧、および/または化学変化の結果として、可視化可能な基材の不透明層は透明になる。より具体的には、不透明化層は、その間に空隙を規定する複数の不規則または異形のポリマー粒子を含み、不透明状態から透明状態に移行するために、不透明化層の構造を少なくとも部分的に崩壊させて空隙を減少または除去し、それによって不透明化層が入射光を内部反射せずに透過させるようになる。
【0005】
いくつかの構成では、可視化可能な基材の第1の側表面は、第1の側表面全体または第1の側表面の少なくとも一部を実質的に縁取りおよび/または覆う、インクなどの色材を有する。色材(例えば、インク)は、所望により任意の色または複数色であってよい。さらに、可視化可能な基材は、可視化可能な基材の第1の側表面の色材(例えば、インク)を覆う不透明化材料および/または層(以下、「不透明化層」と称する)を有してもよい。その結果、不透明化層は、任意の誘導された透明化の前に見た場合には、第1の側表面の色材(例えば、インク)を不明瞭にし、遮断し、および/または覆っている。不透明化層は、可視化可能な基材の第2の側表面を提供し、これは、例えば白色であってもよい不透明な色としてのみ示されるか、または現れる。加熱および/または加圧(あるいは他の刺激)によって初めて、第1の側表面の色材(例えば、インク)が可視化され、および/または見ることができるようになる。本開示の不透明化層は、異なる形状および/または大きさを有し得る複数の不規則および/または異形のポリマー粒子を含有する。いくつかの実施態様では、不透明化層は、不透明な色を有していてもいなくてもよい一つ以上の非球形ポリマー粒子を含む。いくつかのそのような実施態様では、一つ以上の非球形ポリマー粒子は、透明になるように誘導され得る不透明な色を有していてもよい。他の実施形態では、一つまたは複数の非球形ポリマー粒子は、一つまたは複数のロッド状粒子、一つまたは複数のフレーク状粒子、またはロッド状粒子およびフレーク状粒子の組み合わせであるか、これを含有してもよい。
【0006】
一つ以上の実施形態において、不規則および/または異形のポリマー粒子は、光エネルギー、熱、圧力および/または化学変化の付与に感応し、光周波数への曝露、所定の温度への加熱、所定の圧力の付与および/または化学変化により、不透明化層は透明および/またはクリアになる。透明および/またはクリアになる結果、不透明化層は、入射光を透過させて、可視化可能な基材の第1の側表面上または不透明化層および/または複数の不規則および/または異形のポリマー粒子の下にある色材(例えば、インク)を可視化することができる。
【0007】
本開示は、添付の図を参照することにより、以下の詳細な説明から最もよく理解される。当技術分野の標準的な慣行に従って、様々な特徴は縮尺通りに描かれていないことが強調される。実際、さまざまな特徴の寸法は、議論を明確にするために任意に拡大または縮小され得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】323特許の開示による可視化可能な基材の斜視図である。
【0009】
【
図2】323特許の開示に従ってサーマルプリント工程を施された後に形成された感熱性基材の上面図である。
【0010】
【
図3】既知の球状エマルジョン粒子にかかる第1の充填配置の側平面図である。
【0011】
【
図4】本開示の一つまたは複数の実施形態にかかる本発明の不規則および/または異形のポリマー粒子の第2の充填配置の側平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下で請求される主題の例示的な例を開示する。明確化のために、実際の実装の全ての特徴を本明細書で説明することはしない。任意のそのような実際の実装の開発において、システム関連およびビジネス関連の制約への準拠など、開発者の特定の目標を達成するために、多数の実装固有の決定がなされる可能性があり、それは実装ごとに異なるであろうことが理解される。さらに、そのような開発努力は、たとえ複雑で時間がかかるとしても、本開示の利益を享受する当業者にとって通常の試行錯誤の範囲であることが理解される。
【0013】
さらに、本明細書で使用される場合、冠詞「a」は特許技術における通常の意味、すなわち「一つ以上」の意味を有することが意図される。ここで、値に適用される場合の用語「約」は、一般に、値を生成するために使用される装置の許容範囲内を意味し、いくつかの例では、特に明示的に指定しない限り、プラスまたはマイナス10%、あるいはプラスまたはマイナス5%、あるいはプラスまたはマイナス1%を意味する。さらに、本明細書において、「実質的に」という用語は、例えば、過半数、またはほぼすべて、あるいはすべて、または約51%~約100%の範囲を有する量を意味する。さらに、本明細書における実施例は、例示のみを意図しており、議論のために提示されており、限定するためのものでない。
【0014】
ここで図面を参照すると、本開示の熱、光エネルギー、化学、および/または圧力により可視化する基材は、一般に数字10の参照符号を付与される。本開示の一実施形態は、透明になるように(すなわち、不透明状態から透明状態に移行するように)誘導され得る不透明化材料または層11を有する、光エネルギー、熱、圧力および/または化学感応性を有する基材または層12(以降「感応性基材12」と称する)を含む、熱、光エネルギー、化学、および圧力により可視化する基材10(以降「基材10」と称する)に関する。例えば、不透明化材料11は、光エネルギーに曝露され、高温で加熱され、加圧され、および/または化学的に反応もしくは変化させられることによって、透明になるように誘導され得る。その結果、不透明化材料11は、
図2の領域13に描かれているように、透明および/またはクリアになり、色材14を可視化する。
【0015】
不透明化材料11は、複数の不規則および/または異形のポリマー粒子(以降、「ポリマー粒子」と称する)を含む。不透明化材料11の不透明度は、ポリマー粒子間の間隔および/または空隙に依存し得る。ポリマー粒子は、非球状であってもよく、および/または、異なる形状および/または異なる大きさを有していてもよい。不透明化材料11は、光エネルギーの照射、高温での加熱、加圧、および/または化学的反応もしくは変化により、透明になるように誘導され得る。その結果、ポリマー粒子は溶融および/または形状を変化させ、ポリマー粒子間の間隔および/または空隙が除去されるかまたは消失し、不透明化材料が透明および/またはクリアになり、色材14を可視化する。
【0016】
いくつかの実施形態では、不透明化材料11のポリマー粒子は、サーマルイメージングおよびインクジェット印刷工程および/または方法の両方に対して二重の目的を提供する。より具体的には、ポリマー粒子は、改善されたサーマルイメージング品質またはシャープネスと、改善されたインクジェット受容性とを提供する。さらに、ポリマー粒子によって提供される改善されたサーマルイメージング品質は、従来のサーマルプリント機構よりも有利である。不透明化材料11のポリマー粒子は、ロイコ染料、増感剤、および/または発色剤を必要としないかまたは不要であるため、本開示の不透明化材料11は、コンプライアンスおよび/または増加した健康および/または環境法および規制に適合し、有利である。例えば、不透明化材料11の実施形態は、ロイコ染料、増感剤、および/または発色剤を全く含まないか、または少なくとも実質的に含まないものであってもよい。
【0017】
いくつかの実施形態では、ポリマー粒子は、ポリマー粒子の少なくとも一つの第1の部分およびポリマー粒子の少なくとも一つの第2の部分を含み、それぞれが異なる大きさおよび/または異なる形状を有している。ポリマー粒子の少なくとも一つの第1の部分は、第1の大きさおよび/または第1の形状を有してもよく、ポリマー粒子の少なくとも一つの第2の部分は、第2の大きさおよび/または第2の形状を有してもよい。いくつかの構成では、第1の大きさは第2の大きさと同様であり、第1の形状は第2の形状とは異なり;第1の大きさは第2の大きさとは異なり、第1の形状は第2の形状と同様であり;または第1の大きさは第2の大きさとは異なり、第1の形状は第2の形状とは異なる。少なくとも一つの第1の部分のポリマー粒子間の間隔および/または空隙は、少なくとも一つの第2の部分のポリマー粒子間の間隔および/または空隙と同じであってもよく、異なっていてもよく、または実質的に類似していてもよい。いくつかの実施形態では、第2の部分(複数であってもよい)に対する第1の部分(複数であってもよい)のそれぞれの表面積および/または質量の比は、約1:1、約1:1より大きい、または約1:1より小さくてもよい。例えば、第2の部分(複数であってもよい)に対する第1の部分(複数であってもよい)のそれぞれの表面積または質量の比は、約1:1~約10:1;約3:1~約8:1、または約4:1~約6:1であってもよい。
【0018】
図3に示すように、既知の球状エマルジョン粒子は、より大きな六角形充填、より規則的な配置、および第1の平均粒子径Xを有する第1の充填配置を実現している。これに対し、本発明のポリマー粒子の第2の充填配置は、
図4に示すように、第1の充填配置と比較して六角形充填がないかまたは少なく、第1の充填配置と比較して規則的な配置がないかまたは少なく、第2の平均粒子径Yを有している。本発明のポリマー粒子の第2の平均粒子径Yは、既知の球状エマルジョン粒子の第1の平均粒子径Xより小さくてもよく、大きくてもよく、ほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、本発明のポリマー粒子の第2の平均粒子径Yは、少なくとも約50nm、少なくとも約100nm、少なくとも約150nm、少なくとも約250nm、約1,000nm未満、約500nm未満、約450nm未満、約400nm未満、または約350nm未満の平均粒子径であり得る。他の実施形態では、本発明のポリマー粒子の第2の平均粒子径Yは、最大約1,000nmまでまたは最大約1,500nmまでの平均粒子径を有していてもよい。一つ以上の実施形態において、本発明のポリマー粒子の第2の平均粒子径Yは、約1,000nm以上約1,500nm以下の平均粒子径を有していてもよい。
【0019】
実施形態において、ポリマー粒子は、(例えば、球状粒子と比較して)基材10に高いまたは改善された不透明度、良好または改善された再溶解性、および/または良好または改善された耐水性および耐摩擦性を付与し得る。ポリマー粒子間の間隔および/または空隙は、基材10のインクジェットカラー印刷のためのインク、印刷色、および/または印刷表示を受領してもよい。不透明化材料の層の少なくとも一部は、例えば、基材10の直接熱印刷に伴って、ポリマー粒子の下にある色材(例えば、インク)を可視化するように透明化され得る。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子の一つまたは複数は、透明状態または条件にあるとき、その透明性によって不透明化材料11の下の色材を明確に可視化するように整列されていてもよい。その結果、基材10のサーマルイメージングは、基材10の熱印刷のための改善された画像密度および/または改善されたシャープさを達成し得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、感応性基材12は、不透明化剤および/または白色顔料のような微粒子状の二酸化チタンなどの一つまたは複数の不透明化剤を含んでもよい。ポリマー組成物およびそれから形成される製品において不透明化剤として使用するための微粒子状の二酸化チタンは広く入手可能であり、酸化チタン、炭酸カルシウム、白亜鉛、白鉛、リトポン、アルミナホワイト、ホワイトカーボン、酸化ジルコニウム、酸化スズ、硫酸バリウム、炭酸バリウム、またはそれらの組み合わせが含まれてもよい。
【0021】
不透明化材料11のポリマー粒子は、過冷却溶融物が冷却された結果として、結晶性材料、例えば等方性固体材料の特性に類似した特性をもたらすガラス状の構造および特性を有する擬似的二次相転移を規定する熱溶融および/または転移特性または適切なガラス転移状態(以降「Tg」とも称する)を有してもよい。Tgは、一般的なガラスやプラスチック(すなわち、ポリマー粒子)などの全体的または部分的に非晶質の固体に適用することができる。不透明化材料のポリマー粒子の熱溶融温度および/またはTgは、約120℃未満、約110℃未満、約105℃未満、約95℃未満、および約85℃未満であってもよい。いくつかの実施形態では、ポリマー粒子の熱溶融温度および/またはTgは、約80℃から約130℃、90℃から約120℃、約100℃から約110℃、または約100℃から約105℃の間の範囲であってよい。他の実施形態では、ポリマー粒子の熱溶融温度および/またはTgは、約70℃より高く、約80℃より高く、約95℃より高く、または約100℃より高くてもよい。
【0022】
実施形態において、不透明化材料11のポリマー粒子は、スチレンおよびアクリレートの少なくとも一方を含んでいてもよく、および/または、懸濁液中および/または担体と共に提供されてもよい。懸濁液は、水性エマルジョンの形態であってもよい。実施形態において、水性エマルジョンは、アクリルエマルジョンまたはスチレンアクリルエマルジョンであってもよい。水性エマルジョンは、非皮膜形成性エマルジョンであってもよいし、皮膜形成性エマルジョンであってもよい。水性エマルジョンは、25℃におけるpHが、約8.5未満、約8.0未満、約7.5未満、約6.5より高く、約7.0より高く、または約7.5であってよい。水性エマルジョンは、25℃における粘度が、約100cps未満、少なくとも約200cps、少なくとも約300cps、少なくとも約400cps、約2200cpcs未満、約2100cps未満、または約2000cps未満であってよい。水性エマルジョンは、分子量(以降「Mw」とも称する)が、約150,000より大きく、約175,000より大きく、約200,000より大きく、約250,000未満、約230,000未満、または約210,000未満であってもよい。水性エマルジョンは、25℃における密度が、約1.12g/cm3未満、約1.10g/cm3未満、約1.06g/cm3未満、約1.02g/cm3より大きく、約1.04g/cm3より大きく、または約1.06g/cm3より大きくてよい。
【0023】
ポリマー粒子に加えて、不透明化材料11は、少なくとも一つのワックス、少なくとも一つの任意の増感剤、少なくとも一つの光学的増白剤、少なくとも一つのバインダーまたは樹脂、および/または少なくとも一つの任意の添加剤をさらに含んでいてもよい。実施形態において、任意の添加剤は、以下の成分:粘土、消泡剤、界面活性剤、殺生物剤、粘度調整剤、および/またはレオロジー調整剤からなる群から選択される一つ以上の成分を含んでいてもよい。他の実施形態では、任意の添加剤は、以下:乳化剤、界面活性剤、潤滑剤、凝集剤、可塑剤、凍結防止剤、硬化剤、緩衝剤、中和剤、増粘剤、レオロジー調整剤、保湿剤、湿潤剤、殺生物剤、可塑剤、消泡剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、光または熱安定剤、殺生物剤、キレート剤、分散剤、着色剤、撥水剤、抗酸化剤およびそれらの1以上の組合せからなる成分の群から選択される少なくとも1つの成分を含んでいてもよい。
【0024】
実施形態において、ポリマー粒子は、不透明化材料11中に、少なくとも約5重量%、少なくとも約10重量%、少なくとも約20重量%、少なくとも約25重量%、少なくとも約40重量%、少なくとも約50重量%、または約50重量%より大きい濃度で存在してもよい。他の実施形態では、ポリマー粒子は、不透明化材料中に、約55重量%未満、約45重量%未満、約30重量%未満、約20重量%未満、約15重量%未満、または約8重量%未満の濃度で存在してもよい。重量によるすべての濃度は、不透明化材料11の総重量に対して計算される。
【0025】
少なくとも一つのワックスは、懸濁液中および/または少なくとも一つの担体と共に提供されてもよい。実施形態において、少なくとも一つのワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナウバワックス、メチロールステアロアミド、ポリエチレンワックス、ポリスチレンワックス、脂肪酸アミド系ワックス、またはこれらの組み合わせから選択される少なくとも一つであってよい。他の実施形態では、一つのワックスは、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも一つを含んでよい。
【0026】
少なくとも一つの任意の増感剤は、ポリマー粒子の融点および/またはTg温度を下げるように構成されてもよい。例えば、少なくとも一つの任意の増感剤は、2-ベンジルオキシナフタレン、シュウ酸ジメチルベンジル、m-ターフェニル、エチレングリコールトリルエーテル、p-ベンジルビフェニル、1,2-ジフェノキシメチルベンゼン、1,2-ジフェノキシエタン、ジフェニルスルホン、脂肪族モノアミド、脂肪族ビスアミド、ステアリルウレア、ジ(2-メチルフェノキシ)エタン、ジ(2-メトキシフェノキシ)エタン、β-ナフトール-(p-メチルベンジル)エーテル、α-ナフチルベンジルエーテル、1,4-ブタンジオール-p-メチルフェニルエーテル、1,4-ブタンジオール-p-イソプロピルフェニルエーテル、1,4-ブタンジオール-p-tert-オクチルフェニルエーテル、1-フェノキシ-2-(4-エチルフェノキシ)エタン、1-フェノキシ-2-(クロロフェノキシ)エタン、1,4-ブタンジオールフェニルエーテル、ジエチレングリコールビス(4-メトキシフェニル)エーテル、および1,4-ビス(フェノキシメチル)ベンゼンの中から選択され得る。これらの任意の増感剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。実施形態において、不透明化材料11は、任意の増感剤の含有が低減または排除されるように配合され、調整され、および/または構成されてもよい。例えば、不透明化材料11のいくつかの実施形態は、任意の増感剤を完全に含まないか、または少なくとも実質的に含まないものであってよい。
【0027】
少なくとも一つの光学的増白剤は、一つ以上の光学的白化剤、一つ以上の蛍光増白剤、一つ以上の蛍光白化剤、またはこれらの組み合わせを含有してもよい。実施形態では、少なくとも一つの光学的増白剤は、電磁スペクトルの紫外領域および紫色領域の光を吸収してもよく、および/または蛍光によって青色領域の光を再放出してもよい。例えば、少なくとも一つの光学的増白剤は、一つ以上のスチルベンを含んでもよい。
【0028】
少なくとも一つのバインダーまたは樹脂は、一つまたは複数の熱可塑性樹脂および/または架橋性樹脂を含んでよい。実施形態において、少なくとも一つのバインダーまたは樹脂は、ポリビニルアルコール、例えばカゼイン、デンプン、ゼラチンのようなタンパク質、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのコポリマー、スチレンとアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのコポリマー、スチレンとアクリル酸のコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、酢酸ビニルと他のアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルとのコポリマー、およびこれらの一つ以上の組み合わせから選ばれる1または2以上であり得る。
【0029】
実施形態において、本明細書に開示されるポリマー粒子を含有する不透明化材料11は、基材10上に配置され、および/または基材10と共に利用されてもよく、また本明細書に開示される本方法において利用されてもよい。他の実施形態では、本明細書に開示されるポリマー粒子を含有する不透明化材料11は、米国特許出願公開第2019/0111719号および米国特許第9,757,968号および同第10,384,484号に記載のシステムおよび方法と共に利用されてもよい。これらは全て、中空微小球によって覆われた一つまたは複数の色を可視化するために不透明化中空微小球によって覆われたカラーマトリックス基材に関するものである。
【0030】
図1に示すように、基材12の第1の側表面15は、第1の側表面15の少なくとも一部、または実質的に全体を覆う、インクなどの色材14を含むか、またはこれによりコーティングされていてもよい。色材14は、任意の所望の色または複数の色であってよい。感応性基材12が不透明化材料11を有することにより、サーマルプリントヘッド20などによる任意の熱圧力印加の前に第2の側表面16から見た場合、色材14を見ることができない。不透明化材料11は、感応性基材12の物理的組成の一部であってもよいし、別個のおよび/または独立した層または複数の層であってもよい。実施形態において、これは、熱、圧力、またはそれらの組み合わせの少なくとも一つを適用するまで白色または不透明に見え得る、本明細書に開示されるポリマー粒子を提供することによって達成され得る。したがって、第2の側表面16は、例えば白色であってもよい不透明な色のみを示していてもよい。高温の熱および/または圧力を加えて初めて、第1の側表面15上の黒または一つ以上の他の色などの色材14が可視化され、または見えるようになる。
【0031】
ポリマー粒子を含有する不透明化材料11は、表面上に塗布されると、見る人の目には白または不透明に見え、色面または透明面に塗布されたか否かにかかわらず、見える面を白くするものである。プリントヘッド20を介して所定の圧力を加えるか、所定の熱を加えると、ポリマー粒子は不透明ではなくなり、プリントヘッド20が適用された領域13は透明化され、その下にある色材14が可視化する。
【0032】
実施形態では、その上にインク14を有する第1の側表面15に関して反対の側表面に、感圧接着剤などの接着剤18を付与して、例えば、感応性基材12が製品パッケージなどの別の表面に接着されることを可能にしてもよい。接着剤18には、剥離基材17が付与されてもよい。剥離基材17の代わりに、任意で紙で作られた基材17を接着剤18に付与し、基材10用の感熱および/または感圧可視化基材の複合体を形成してもよい。紙で作られた基材17は、感応性基材12と合わせて、それらの間またはそれらの一部として色材14が含まれていてもよい。PSAまたは他の接着剤を採用して、剥離基材または紙基材の裏打ち17と感応性基材12との間の結合を達成してもよい。基板裏打ち17は、例えば、色紙、フィルム、またはボードを含み得る。
【0033】
感応性基材12は、本明細書に開示されたポリマー粒子を含有することによって、ポリマー粒子における光散乱特性および/または不透明化材料11によるさらなる白色外観を実現してもよい。感応性基材12は、本明細書に開示される一つ以上の印刷方法および/または用途のために、熱溶融温度またはTgを、約80℃から約120℃の範囲に有していてもよい。例えば、特定の実施形態では、ポリマー粒子の融点またはガラス転移温度の範囲は、約80℃から120℃、90℃から110℃、または95℃から105℃である。
【0034】
さらに、感応性基材12は、不透明化材料11を保護するための保護要素(いわゆるオーバープリントラッカー)として、ワニスなどの別の塗膜19を含んでもよい。塗膜19は、変性スチレンアクリルポリマーのようなポリマー材料であってもよく、本質的に透明またはクリアであり、不透明化材料11のポリマー粒子よりも高い融点を有し、通常のユーザーの取り扱いおよび太陽や熱の要素への暴露に対して、下にある不透明化材料11の保護バリアとして機能するが、本明細書において説明されるような印刷を効果的に行うための不透明化材料11のポリマー粒子の溶融および/または加圧を許容するものである。
【0035】
熱および/または圧力プリントヘッド20は、不透明化材料11のポリマー粒子を不透明から半透明に転移させるために溶融または加圧を行うために利用され得る。これは、感応性基材12の選択された部分において実施されてもよい。熱および/または圧力プリントヘッド20は、感応性基材12の溶融または加圧による転移をもたらすのに十分な温度または圧力を提供するように装備され得る。いくつかの用途では、架橋度が低い技術を採用することによって、感応性基材12の転移状態を低くすることがより好適であることが見いだされ得る。適切なポリマー粒子を選択することによって、融点は、約110℃未満、約105℃未満、約100℃未満、約90℃未満、または約80℃未満となり得る。ポリマー粒子のグレードは、室温で溶融しない耐薬品性を有していてもよい。
【0036】
実施形態では、感応性基材12は、白色に見え、サーマルプリントヘッド20との安全な使用のための適切な融点を有する材料を含み得る。したがって、基材10は、第1の側表面15から見たとき、白色または色材14を見ることを妨げる明るい色に見え得る。不透明化材料11のポリマー粒子の転移状態に影響を与えるために加熱すると、ガラス状の外観が得られ、不透明化材料は、使用可能な方法で色材14を可視化する量に調整される。
【0037】
他の先行技術の熱活性紙とは異なり、本発明のポリマー粒子は、その後の紫外線、蛍光灯、手や指の汗、およびわずかな摩擦または他の溶媒への曝露に対する感度が低くてもよい。ところで、本明細書に開示された基材10は、上述した様々な困難のうちの一つ以上を解決し得る優れた基材である。色が可視化された画像は、例えば、黒、赤、暗紫色、青、および/または、そのような一つまたは複数の様々な色のいずれであってもよい。本開示において従来の発色反応材料を採用することができると考えられるが、本明細書に開示される基材10は、より確実で、より簡単で、より安価な製品を提供する。いくつかの実施形態では、基材10によって、または基材10から提供、生産、および/または製造される製品は、直接型サーマルイメージング製品および/または感圧製品であり得る。例えば、基材10は、感圧ラベル、タグ、チケット、POS文書、またはレシート、あるいはこれらの一つ以上の組合せであってもよい。他の実施形態では、基材10は、一つ以上の薄層、一つ以上のフィルム、またはこれらの組み合わせであってもよく、またはこれらを含んでもよい。
【0038】
形成された製品が典型的な周囲温度においてより安定であることに加えて、本明細書に開示される基材10は、HIPPAラベルの用途などにおいては、そこに印刷された機密情報を破壊するための迅速かつ簡便な手段を提供することもできる。この点に関して、ラベルを単に加熱されたプラテンまたは圧力ローラーニップを通過させることによって、機密情報を読取不能にすることができる。ラベルを形成する場合、接着剤18を着色材料14および表側面15の上に直接塗布するか、あるいは、接着剤21を紙基材の裏打ち17の裏面22に塗布してもよい。
【0039】
ここに開示される基材10は、取り扱い容易性および良好な外観・触感を示し、および/または有することができる。基材10のさらなる特徴によれば、感応性基材12は、経時変化を抑制し、長期間にわたって高い安定性を提供するだけでなく、熱により可視化された画像のコントラストを向上して、そのような画像の読み取り難さを解決することができる。
【0040】
したがって、ポリエチレンの完全透明フィルムのような透明度の高い基材を使用した場合でも、塗布後の製品は、熱により可視化された画像とのコントラストを明確にし得る白色の外観を有する。不透明化材料11の量は、加熱または加圧時に半透明効果を達成しつつ、熱および/または圧力プリントヘッド20により加熱および/または加圧される前の着色材料14をマスクできるような量であることが好ましい。このように、本明細書に開示される基材10は、先に述べた理由のうちの一つ以上から背景の自然発色(変色)を受ける従来の感熱シート材を改善することに成功したものである。また、基材10は、感応性基材12と不透明化材料11とによる優れたカラーコントラストを提供し、領域13を介して明瞭な画像を提供することができる。
【0041】
本発明を限定するものではないが、説明するための例として、色紙の基材上に塗布される不透明化材料11中にはポリマー粒子が約25重量%含まれる。不透明化材料11のポリマー粒子の融点範囲を超える融点範囲を有し、耐熱性がより高いスチレン-アクリル共重合体を有する保護オーバープリントワニスを採用することができ、当該保護オーバープリントワニスを通して熱を放射しつつもプリントヘッド20に溶融しないようにすることができる。
【0042】
上述の説明では、説明のために、本開示を十分に理解できるように特定の命名法を使用した。しかし、当業者には、本明細書に記載されたシステムおよび方法を実践するために、特定の詳細な事項が必要でないことは明らかであろう。上述の特定の実施例の説明は、例示および説明の目的で提示されたものである。それらは、本開示を網羅すること、または記載された正確な形態に限定することを意図していない。明らかに、上述の教示に鑑みて、多くの変形および改定が可能である。実施例は、本開示の原理および実際の応用を最もよく説明し、それによって当業者が、意図される特定の用途に適するように様々な変形を加えて本開示および様々な実施例を最もよく利用できるようにするために示され、説明されるものである。本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることが意図される。