(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電磁場画像化用フォトニック結晶蒸気セル
(51)【国際特許分類】
G01R 29/08 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
G01R29/08 F
(21)【出願番号】P 2022523861
(86)(22)【出願日】2020-09-23
(86)【国際出願番号】 CA2020051269
(87)【国際公開番号】W WO2021102554
(87)【国際公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-06-08
(32)【優先日】2019-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521266918
【氏名又は名称】クオンタム ヴァリー アイデアズ ラボラトリーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】アマルロー ハーディ
(72)【発明者】
【氏名】ラミレス-セラーノ ジェイミー
(72)【発明者】
【氏名】シェーファー ジェームズ ピー
【審査官】小川 浩史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0187198(US,A1)
【文献】特開2011-232277(JP,A)
【文献】特開2012-183290(JP,A)
【文献】特開2015-53452(JP,A)
【文献】特開2015-154297(JP,A)
【文献】米国特許第10605840(US,B1)
【文献】特表2018-515012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152773(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0028866(US,A1)
【文献】特表2022-508388(JP,A)
【文献】特開2009-283526(JP,A)
【文献】特開2013-164388(JP,A)
【文献】特開2016-213285(JP,A)
【文献】特表2023-502861(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109142891(CN,A)
【文献】VENKATARAMAN,Vivek ; LONDERO, Pablo ;BHAGWAT, Amar R. ; SLEPKOV, Aaron D. ; GAETA , Alexander L.,“All-optical modulation of four-wave mixing in an Rb-filled photonic bandgap fiber”,OPTICS LETTERS,2010年07月01日,Vol. 35, No. 13,pp. 2287-2289,DOI:https://doi.org/10.1364/OL.35.002287
【文献】EPPLE, G. ; KLEINBACH, K.S.; EUSER, T.G. ; JOLY, N.Y. ; PFAU, T. ; RUSSELL, P. St. J. ; LOEW, R.,“Rydberg atoms in hollow-core photonic crystal fibres”,NATURE COMMUNICATIONS,2014年06月19日,Vol. 5, Article number: 4132,pp. 1-5,DOI: 10.1038/ncomms5132
【文献】LIEW, Li-Anne ; KNAPPE, Svenja ; MORELAND, John ; ROBINSON, Hugh ; HOLLBERG, Leo ; KITCHING, John,“Microfabricated alkali atom vapor cells”,Applied Physics Letters,2004年04月01日,Vol. 84, No. 14,pp. 2694-2696,DOI: https://doi.org/10.1063/1.1691490
【文献】LIEW, Li-Anne ; MORELAND, John ; GERGINOV, Vladislav,“Wafer-level filling of microfabricated atomic vapor cells based on thin-film deposition and photolysis of cesium azide”,Applied Physics Letters,2007年03月15日,Vol. 90, No. 11,pp. 114106-1~114106-3,DOI: https://doi.org/10.1063/1.2712501
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 29/08-29/10
G01R 33/00-33/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表面および前記第1の表面の反対側の第2の表面を有する誘電体を得ることと、
前記誘電体から材料を除去して前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する複数の空洞を形成することであって、前記複数の空洞は前記誘電体内に周期的に配置されて前記誘電体にフォトニック結晶構造を形成しており、各空洞は前記第1の表面によって画定される第1の開口部および前記第2の表面によって画定される第2の開口部を有し、前記フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを画定する、形成することと、
光学窓の表面を前記誘電体の前記第1の表面に接合して、前記第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、前記光学窓は前記複数の空洞の前記第1の開口部を覆っている、形成することと、
前記複数の空洞の各々の中に、蒸気または前記蒸気の供給源を配設することと、
を含む、蒸気セルを製造する方法
であって、
前記蒸気セルは標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されており、
前記標的周波数範囲は前記フォトニックバンドギャップ内にあるかまたは前記フォトニックバンドギャップと重なり、
前記フォトニックバンドギャップは前記電磁放射のTMモードと関連付けられるバンドギャップを含み、
前記フォトニックバンドギャップは前記電磁放射のTEモードと関連付けられるバンドギャップを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記誘電体から材料を除去することは、レーザビームを前記誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記誘電体から材料を除去することは、前記誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誘電体から材料を除去することは、前記複数の空洞を分離している各壁を貫通する通路を形成することを含み、前記通路は前記壁によって分離されている隣り合う空洞を流体連通している、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記誘電体を得ることは、前記誘電体から材料を除去して前記第1および第2の表面を形成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記光学窓は第1の光学窓であり、
前記方法は、前記誘電体の前記第2の表面に第2の光学窓の表面を接合して、前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することを含み、
蒸気または前記蒸気の供給源を配設することは、前記第2の光学窓の前記表面を接合することの前に行われ、
前記第2の光学窓の前記表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に前記蒸気または前記蒸気の前記供給源を閉じ込めることを含む、
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記光学窓は第1の光学窓であり、
前記方法は、前記誘電体の前記第2の表面に第2の光学窓の表面を接合して、前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することを含み、
前記誘電体から材料を除去することは、前記誘電体の周囲壁を貫通して前記複数の空洞のうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含み、
蒸気または前記蒸気の供給源を配設することは、前記穴を通して蒸気を流すことを含み、
前記方法は、前記複数の空洞内に前記蒸気を封止するために前記穴を閉塞することを含む、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記周囲壁に前記穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
前記穴を閉塞することは、前記複数の空洞内に前記蒸気を封止するために前記管の端部を閉じることを含む、
請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
前記方法は、前記光学窓を貫通する穴を形成することであって、前記穴は、前記光学窓の前記表面が前記誘電体の前記第1の表面に接合されるときに、前記複数の空洞のうちの少なくとも1つを前記光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる、形成することを含み、
蒸気または前記蒸気の供給源を配設することは、前記穴を通して蒸気を流すことを含み、
前記方法は、前記複数の空洞内に前記蒸気を封止するために前記穴を閉塞することを含む、
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記光学窓に前記穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
前記穴を閉塞することは、前記複数の空洞内に前記蒸気を封止するために前記管の端部を閉じることを含む、
請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記光学窓は第1の光学窓であること、および
請求項1または請求項2~5のいずれか1項に記載の方法であって、
前記方法は、
第2の光学窓の表面を前記誘電体の前記第2の表面に接合して、前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、前記第2の光学窓は前記複数の空洞の前記第2の開口部を覆って前記複数の空洞の各々の中に前記蒸気または前記蒸気の前記供給源を閉じ込める、形成することと、を含むこと、を含む方法。
【請求項12】
誘電体であって、
第1の表面、
前記第1の表面の反対側の第2の表面、ならびに
前記誘電体にフォトニック結晶構造を形成するように周期的に秩序化されている、前記第1の表面から前記第2の表面まで延在する複数の空洞であり、各空洞は前記第1の表面によって画定される第1の開口部および前記第2の表面によって画定される第2の開口部を有し、前記フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを有する、空洞、を備える、誘電体と、
前記複数の空洞の各々の中にある蒸気または前記蒸気の供給源と、
前記第1の開口部を覆い、かつ前記誘電体の前記第1の表面に接合されて前記第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第1の光学窓と、
前記第2の開口部を覆い、かつ前記誘電体の前記第2の表面に接合されて前記第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第2の光学窓と、
を備える、蒸気セル
であって、
前記蒸気セルは標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されており、
前記標的周波数範囲は前記フォトニックバンドギャップ内にあるかまたは前記フォトニックバンドギャップと重なり、
前記フォトニックバンドギャップは前記電磁放射のTMモードと関連付けられるバンドギャップを含み、
前記フォトニックバンドギャップは前記電磁放射のTEモードと関連付けられるバンドギャップを含む、
前記蒸気セル。
【請求項13】
前記蒸気セルは標的電磁放射を検出するように構成されており、
前記複数の空洞の各々は前記標的電磁放射の波長以下の最大寸法を有する、
請求項1
2に記載の蒸気セル。
【請求項14】
前記蒸気セルは標的電磁放射を検出するように構成されており、
前記フォトニックバンドギャップは前記標的電磁放射の帯域幅以上である、
請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項15】
前記誘電体の前記第1および第2の表面は互いに平行な平面状の表面である、請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項16】
前記複数の空洞は二次元格子に従って秩序化されている、請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項17】
前記複数の空洞は二次元格子に従って秩序化されており、
前記二次元格子は第1の格子サイトと第2の格子サイトとを備え、前記第1の格子サイトは同一の形状およびサイズを有する第1の空洞と関連付けられており、前記第2の格子サイトは前記二次元格子の欠陥と関連付けられている、
請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項18】
前記欠陥は前記第1の空洞よりもサイズの大きい第2の空洞を含む、請求項
17に記載の蒸気セル。
【請求項19】
前記欠陥は前記第1の空洞よりもサイズの小さい第2の空洞を含む、請求項
17に記載の蒸気セル。
【請求項20】
前記欠陥は前記第1の空洞とは異なる形状を有する第2の空洞を含む、請求項
17に記載の蒸気セル。
【請求項21】
前記誘電体は、
前記複数の空洞を分離している各壁を貫通して配設されている通路を備え、前記通路は前記壁によって分離されている隣り合う空洞を流体連通している、請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項22】
前記第1の光学窓は誘電体ミラーを備える、請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【請求項23】
前記誘電体ミラーは前記誘電体の前記第1の表面に接合されている前記第1の光学窓の前記表面に沿って配設されている、請求項2
2に記載の蒸気セル。
【請求項24】
前記第2の光学窓は反射防止コーティングを備える、請求項1
2または請求項1
3に記載の蒸気セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は2019年11月27日に出願された「Photonic-Crystal Vapor Cells for Imaging of Electromagnetic Fields」と題する米国仮出願第62/941,591号に対する優先権を主張する。本出願はまた2020年8月18日に出願された「Photonic-Crystal Vapor Cells for Imaging of Electromagnetic Fields」と題する米国出願第16/996,663号に対する優先権を主張する。これらの出願の開示を参照によって本明細書に組み込む。
【背景技術】
【0002】
以下の記載は、電磁場画像化用フォトニック結晶蒸気セルに関する。
【発明の概要】
【0003】
Over-the-air(OTA)試験は、情報を取得および通信するために電磁放射を利用する多くのシステム(例えば、レーダシステム、医用画像化システム、セルラーシステム、等)にとって重要である。また更に、規制への準拠を保証するために、そのようなシステムの設計、製造、および配備中のそれらの試験も重要である。そのような試験の困難さは、システムが利用する電磁周波数がより高い周波数(例えば30GHz超)へとスケーリングするにつれて、および、システムの複数の構成要素間の統合の結合がより緊密になるにつれて、大きくなる。高周波電子機器のシステム統合の例は、アンテナと送受信機システムおよび増幅器との融合である。特にmm波のレジームにおける、そのような高度に統合され精緻化されたシステムの試験は、自動車および輸送、レーダ、ならびに電気通信の業界にとって、迫り来る問題として広く認識されている。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】フォトニック結晶構造を画定する空洞を有するフレームを含む、例示の蒸気セルの概略図である。
【
図1B】
図1Aの例示の蒸気セルの上面図および部分側面図を提示する図である。
【
図2A】複数の空洞を含む蒸気セルの例示のフォトニック結晶フレームの概略図である。
【
図2B】例示のフォトニック結晶フレームの二次元格子を画定する単位セルを示す、
図2Aの例示のフォトニック結晶フレームの一部の拡大図である。
【
図2C】一部が光学窓の役割を果たす、
図2Aの例示のフォトニック結晶フレームの概略図である。
【
図2D】
図2Cの例示のフォトニック結晶フレームの一部の拡大図である。
【
図3A】45GHzの電磁放射の平面波で照射した後の、例示の蒸気セルにおける電磁場パターンの等高線グラフである。
【
図3B】48GHzの電磁放射の平面波で照射した後の、例示の蒸気セルにおける電磁場パターンの等高線グラフである。
【
図3C】55GHzの電磁放射の平面波で照射した後の、例示の蒸気セルにおける電磁場パターンの等高線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一般的な態様において、電磁放射を画像化するための蒸気セルが開示され、そのような蒸気セルを製造するための方法も含まれる。蒸気セルは、周期配列を形成する複数の空洞を含むフォトニック結晶フレームを含む。周期配列は欠陥を含む場合がある。複数の空洞は、二次元格子に沿って配設されて周期配列を形成し得る。多くの変形形態において、複数の周期的な空洞の各々は構成が同一(例えば、同一の形状、サイズ、等)である。ただし他の変形形態では、複数の空洞は、同一の構成の空洞を各々有する空洞の下位グループを含む。空洞の下位グループは二次元格子の対応する下位格子上に配置されて、周期配列を形成し得る。この製造方法によって、リュードベリ原子電位計を使用して電磁場を画像化するために使用できる、フォトニック結晶フレームを有する薄い蒸気セルの製作が可能になり得る。蒸気セルにわたる位相分解能は、標的放射場の波長と比較したその厚さと、原子を準備しそれらの反応を読み出すために使用される光学場の空間分解能とによって決定される。
【0006】
蒸気セルは、フォトニック結晶フレームを作り出すこと、および次いで、原子を準備しそれらを読み出すために使用される光学的な場または信号(例えばレーザビーム)を反射できる薄い誘電体ミラー(例えばブラッグ反射器)を有する光学窓をフレームに接合することによって、製作され得る。ただし、いくつかの変形形態では、誘電体ミラーが存在せず、蒸気セルを伝導に使用されるように構成している。フォトニック結晶フレーム上に、頂部光学窓であり得る第1の光学窓が接合される。第1の光学窓は誘電体ミラーを含み得る。誘電体ミラーは薄型となるように構成され得る。場合によっては、誘電体ミラーを第1の光学窓の表面上に堆積させてもよい。また場合によっては、誘電体ミラーは、(例えば、接着剤または糊着剤を介して)第1の光学窓の表面に取り付けられる。
【0007】
原子サンプルの純度を維持するべく第2の光学窓(例えば底部光学窓)を蒸気セルに封止するために、低温接触接合が使用され得る。ただし、他のタイプの接合(例えば、陽極接合、フリット接合、等)も使用され得る。フォトニック結晶フレームは、原子または分子蒸気で充填されているフォトニック結晶フレームの空洞からの光を画像化することによって高い空間分解能での入射電磁場の画像化が可能になるように、光学窓が大気圧下で歪まないようにすることができる。例えば、蒸気セルの表面に沿った異なるエリア間のクロストークが最小化され、このことによって空間分解能が改善される。いくつかの変形形態では、フォトニック結晶フレームは、蒸気セルの平面内で、特定の標的場周波数範囲について、フォトニック結晶の表面と直交する方向に関する横磁気(TM)放射および横電気(TE)放射のいずれかまたは両方に対してバンドギャップを有するように設計されている。この設計によって、反射が測定に干渉するのを防止することができる。いくつかの変形形態では、複数の空洞(または欠陥)は、表面上に、表面に沿った特定の地点の電磁場を増幅するように設計される。多くの変形形態において、複数の空洞は通路(例えば、間隙、チャネル、ノッチ、等)によって流体連通されており、蒸気セル内部の蒸気、例えばアルカリ原子の蒸気を、蒸気セルの全体に均一に分散させることができるようになっている。通路は、複数の空洞を確定するフォトニック結晶フレームの壁に形成され得る。
【0008】
蒸気セルは蒸気セル磁気測定にも使用され得る。例えば、室温付近で封止接合が行われるケースでは、スピンに関する統合時間(integration time)を長くするために、蒸気セルにパラフィンなどのスピン緩和防止コーティングを適用することができる。蒸気セルは、自由空間を通してまたは光ファイバ束などの導波路によって、光学的に結合することができる。蒸気セルは、電磁場の振幅および位相を正確に測定するように、ならびに場合によっては更に電磁場の振幅および位相を画像化するように構成され得る。
【0009】
電位計にリュードベリ原子を使用することによって、高周波電場(HFE)の正確な絶対測定が実現されてきた。この技術によって従来技術が進歩する見込みのかなり高いアンテナ測定用途が、いくつか存在する。しかしながら、特定の(大小両方の)範囲のアンテナサイズにおいておよび高出力において、課題が存在する。これらの課題は、今日使用されているいずれのものよりも電磁透過性の高い、導電体不使用のHFEプローブによって軽減され得る。誘電性プローブの使用によって、コストを劇的に下げる手段を提供しつつ、これらの測定において到達し得るエラーフロアを押し下げることができ、この結果新しい用途領域が開かれる。高周波電子機器のOver the air(OTA)試験はこれらのデバイスの統合が進むにつれてますます重要になっているが、それらを従来の方法を使用して試験することは非常に困難になっている。プローブから望ましくない材料をほぼ完全に除去することによって、被試験装置(DUT)から放射される電磁場の決定にとって重要な、並外れて高い正確度の測定を実現できる。本開示で提示する技術によって、蒸気セルの電場画像化デバイス、例えばHFE用のCCDの構築および運用が可能になる。原子ベースの電場感知を使用すると、得られる空間および位相分解能によって、DUTに近い平面内で位相および振幅の両方を画像化することが可能になる。蒸気セルセンサの平面にわたる振幅および位相の情報は、フレネル理論などのよく知られている手順を使用して電場を別の場所に伝播するために使用され得る。
【0010】
アンテナ設計のエンジニアリング科学を検証するために、および、アンテナがそれらの所与の用途で意図したように動作することを保証するために、多くの場合、アンテナ放射パターンの正確な測定が必要になる。試験には、他のタイプのデバイスからの電磁放射、例えば、増幅器などの他のHFEデバイスからのEMIも重要である。アンテナパターン測定に対する従来技術の手法は通常は導電性アンテナである電場プローブを利用し、このときプローブおよび被試験アンテナ(AUT)はいずれも大型の電波暗室によって包囲される。これらの暗室は通常、あらゆる放射を吸収するフォームで内側をコーティングされた、封止された大型の金属性の箱である。最も基本的な測定を行うためにさえも、AUTとプローブの間に金属ケーブルを配線しなければならない。位置決め装置中の金属構造体は環境の複雑さを更に高め、エラー源となっている。
【0011】
より柔軟なリュードベリ原子ベースの技術を用いれば、個々の用途に合わせた電波暗室のサイズの調整がより容易になり、暗室の性能に対するコストが軽減され得る。電気的に小型のアンテナ - 寸法がそれらの動作波長に対して小さいもの - の場合、過剰な金属構造体の存在は、それらの放射の所望の方向以外の全ての方向での十分な吸収を保証するという困難な課題を更に悪化させる。電力のみのパターン測定のためには、リュードベリ原子電位計はアンテナとプローブの間の同期を必要とせず、これにより統合発振器によってAUTに電波供給を行うことが可能になり、ケーブルの必要性が完全に排除される。
【0012】
いくつかの実装形態では、本明細書に記載する蒸気セルによって、アンテナなどの高周波電子デバイスによって生成される電磁場の振幅および位相を画像化するための、複数電磁場点画像化デバイス(multiple field point imaging device)を実現できる。そのような画像化デバイスは軽量かつ携帯可能であり得、実地でのまたは組立てライン上でのアンテナの非常に正確な較正を可能にする。そのような特徴は、通信、自動車レーダ、電子機器、気象レーダ、および軍用レーダにおける多くの用途にとって、非常に有益であり得る。本明細書に記載する蒸気セルに基づく画像化デバイスは、Over the air試験(OTA)のためにDUTから発する電磁場を画像化するのに適している。OTAは、DUTを試験するための非侵襲的かつ非破壊的な方法を可能にするので重要である。いくつかの実装形態では、蒸気セルによって以下の利点が可能になる:[1]誘電性の性質、[2]薄さ(位相分解能を与える)、[3]構造の完全性、[4]電磁場を捉えるための広い面積、[5]応答の均一性、[6]光学的に読み出された場を画像化するための反射性バッキング、[7]反射を最小化するためのフォトニックバンドギャップの使用、[8]蒸気セル上の特定の地点の電磁場を増幅するためのフォトニック結晶構造の使用、および[9]様々なサイズの様々な周波数の電磁放射用の蒸気セルを工業規模で製造する能力。他の利点が可能である。これらの特性を単一の蒸気セルに組み込むことにより、原子ベースの電場感知を使用する電場画像化にその蒸気セルを使用することが可能になり得る。
【0013】
図1Aは、フォトニック結晶構造を画定する空洞を有するフレームを含む、例示の蒸気セルの概略図を示す。
図1Bは、
図1Aの例示の蒸気セルの上面図および部分側面図を提示している。例示の蒸気セルはまた、フレームに接合された2つの光学窓も含む。フレームは誘電体に相当し、2つの光学窓の間に配設される。シリコンまたはガラスから形成され得る誘電体に空洞を形成するために、フレームにレーザ切削、エッチング、または機械加工する(あるいはこれらを任意に組み合わせる)ことができる。ただし他の誘電体材料(例えばサファイア)が可能である。フレームは、フレームの内部容積を複数の空洞へと区画する接続壁を含む。空洞はサイズおよび形状が均一であってもよく、フレーム内に周期配列に従って配設されてもよい。特に、空洞はフレーム内に周期的に配置されて、フォトニック結晶構造を形成し得る。空洞内に標的放射を検出するための蒸気もしくは気体(またはこれらの供給源)が存在する。
図2A~
図2Dおよび
図3A~
図3Cに関連して、フォトニック結晶構造の特徴について更に詳細に記載する。
【0014】
レーザ切断によって、例示の蒸気セルの製造が大量生産により適したものになる。多くの変形形態において、蒸気セルの一方側(底部)にある光学窓は、蒸気セル内の原子の初期化および読み出しに使用される光学信号(または光線)のうちの1つまたは複数を反射するのに最適化されている、多層ブラッグ反射器(または誘電体ミラー)を含む。ブラッグ反射器は、SiO2およびTiO2の交互の層で製作され得る。ただし他の変形形態が可能である。いくつかの変形形態では、ブラッグ反射器の最後の層はSiO2で形成される。他の変形形態では、ブラッグ反射器の最後の層はTiO2で形成される。フレームへのブラッグ反射器の接触接合が容易になるように、最後の層の選択を行ってもよい。
【0015】
ブラッグ反射器がSiO2ではなく別の材料で製作されている場合、ブラッグ反射器の表面上にSiO2接着層を設置することが更に可能である。SiO2接着層は、接触接合可能な表面を形成し得るかまたは含み得る。他の材料も可能である。例えば、ブラッグ反射器の表面上にTiO2接着層を設置してもよい。この層は、接触接合可能な表面を形成し得るかまたは含み得る。反射器は、測定の対象である入射場の散乱を低減するために、誘電性を有しかつ薄型であり得る。頂部光学窓を、陽極接合またはガラスフリット接合などの高温および/または高電圧を利用可能な接合技法を使用して、フレームに取り付ける。フレームがガラスで製作される場合、陽極接合用の接着層として、薄いSiの層をフレーム材料上に堆積させることができる。光学窓とフレームがいずれもガラスから形成されている場合、それらを接触接合することも可能である。
【0016】
ここで
図2A~
図2Bを参照すると、複数の空洞202を含む蒸気セルの例示のフォトニック結晶フレーム(または誘電体)200の概略図が提示されている。
図2Bは、例示のフォトニック結晶フレーム200の二次元格子を画定する単位セル204を示す、
図2Aの例示のフォトニック結晶フレーム200の一部の拡大図を提示している。例示のフォトニック結晶フレーム200は、
図1A~
図1Bに関連して記載するフレームと類似している。複数の空洞202は二次元格子に沿って配設されて周期配列を形成する。周期配列は、いくつかの変形形態において欠陥を含む場合がある(例えば、フレーム上のいくつかの箇所で空洞がより大きい)。
図2A~
図2Bでは、例示の二次元格子は、寸法a(または格子定数a)の菱面体晶単位セル204によって画定されている。ただし他のタイプの単位セル(例えば、正方形、矩形、六角形、三角形、等)が可能である。周期配列によって、複数の空洞202を、フォトニックバンドギャップをもたらすパターンへと編成することが可能になる。このフォトニックバンドギャップは、構造中を表面と平行に伝播するモードに関する電磁場のTEモードおよびTMモードの一方または両方に適用可能であり得る。格子定数aは対象とする周波数範囲に基づいて選ぶことができる。例えば、シリコンにおける三角形の格子について、フォトニックバンドギャップの周波数範囲は約0.25c/a~0.33c/aであり得、ここでcは真空中の光の速さである。隣り合う空洞はスロットまたは溝によって流体接続されており、それらによって、例示のフォトニック結晶フレームが蒸気セルにわたり均一な蒸気圧を維持することが可能にする。
【0017】
例示のフォトニック結晶フレームは蒸気セルの一部であり得る。例えば、多くの実装形態において、蒸気セルは、フォトニック結晶フレーム200を形成する誘電体201を含む。誘電体201は、第1の表面206と、第1の表面206の反対側に配設される第2の表面208と、を有する。場合によっては、第1の表面206および第2の表面208は平面状である。場合によっては、第1の表面206と第2の表面208は互いに平行である。示されている例では、第1の表面206から第2の表面208まで複数の空洞が延在し、これらの空洞は、誘電体201にフォトニック結晶構造を形成するように周期的に秩序化されている。空洞202の各々は、第1の表面206によって画定される第1の開口部210と、第2の表面208によって画定される第2の開口部212と、を有する。フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを有する。いくつかの変形形態では、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップを含む。いくつかの変形形態では、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップを含む。ただし、フォトニック結晶構造の構成に応じて他のタイプのバンドギャップが可能であり得る。
【0018】
誘電体201は、蒸気セルによって測定される電場(または電磁放射)が透過する材料で形成され得る。材料は高い抵抗率、例えば、ρ>103Ω・cmを有する絶縁材料であってもよく、単結晶、多結晶セラミクス、または非晶質ガラスに相当し得る。例えば、誘電体201はシリコンで形成され得る。別の例では、誘電体201は、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)を含むガラス、例えば石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、またはアルミノケイ酸塩ガラスで形成され得る。場合によっては、誘電体201の材料は、例えば酸化マグネシウム(例えばMgO)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、二酸化シリコン(例えばSiO2)、二酸化チタン(例えばTiO2)、二酸化ジルコニウム、(例えばZrO2)、酸化イットリウム(例えばY2O3)、酸化ランタン(例えばLa2O3)などの、酸化物材料である。酸化物材料は不定比性(例えばSiOx)であってもよく、また、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、等)の組合せであってもよい。また場合によっては、誘電体201の材料は、例えばシリコン(Si)、ダイヤモンド(C)、窒化ガリウム(GaN)、フッ化カルシウム(CaF)などの、非酸化物材料である。
【0019】
蒸気セルは、
図1A~
図1Bに関連して記載するような第1の光学窓と第2の光学窓とを含み得る。第1の光学窓は第1の開口部210を覆っており、誘電体201の第1の表面206に接合されて第1の開口部210の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する。第2の光学窓は第2の開口部212を覆っており、誘電体201の第2の表面208に接合されて第2の開口部212の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する。第1の光学窓および第2の光学窓はこのようにして、複数の空洞202内に蒸気(または蒸気の供給源)を閉じ込めることができる。いくつかの変形形態では、第1の光学窓は、誘電体ミラー、このようなブラッグ反射器を含む。誘電体ミラーは、誘電体201の第1の表面206に接合されている、第1の光学窓の表面に沿って配設され得る。いくつかの変形形態では、第2の光学窓は反射防止コーティングを含む。
【0020】
第1の光学窓および第2の光学窓は、誘電体201の複数の空洞202内に封止されている蒸気を探査するために使用される電磁放射(例えばレーザ光)を透過する材料で形成され得る。例えば、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、電磁放射の赤外波長(例えば700~5000nm)、電磁放射の可視波長(例えば400~700nm)、または電磁放射の紫外波長(例えば10~400nm)が透過するものであり得る。また更に、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、高い抵抗率、例えばρ>103Ω・cmを有する絶縁材料であってもよく、単結晶、多結晶セラミクス、または非晶質ガラスにも相当し得る。例えば、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、石英、石英ガラス、またはホウケイ酸塩ガラスなどに見られる、酸化シリコン(例えば、SiO2、SiOx、等)を含み得る。別の例では、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、サファイアまたはアルミノケイ酸塩ガラスに見られるような、酸化アルミニウム(例えば、Al2O3、AlxOy、等)を含み得る。場合によっては、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、例えば酸化マグネシウム(例えばMgO)、酸化アルミニウム(例えばAl2O3)、二酸化シリコン(例えばSiO2)、二酸化チタン(例えばTiO2)、二酸化ジルコニウム、(例えばZrO2)、酸化イットリウム(例えばY2O3)、酸化ランタン(例えばLa2O3)などの、酸化物材料である。酸化物材料は不定比性(例えばSiOx)であってもよく、また、1つまたは複数の二元酸化物(例えば、Y:ZrO2、LaAlO3、等)の組合せであってもよい。また場合によっては、第1の光学窓および第2の光学窓の材料は、例えばダイヤモンド(C)、フッ化カルシウム(CaF)などの、非酸化物材料である。
【0021】
いくつかの実装形態では、第1の光学窓および第2の光学窓の一方は、誘電体201と一体である。これらの実装形態では、誘電体201の一部は光学窓の役割を果たす。例えば、
図2Cは、誘電体201の一部が第2の光学窓226の役割を果たす、
図2Aの誘電体201の概略図を提示している。
図2Dは、
図2Cの例示のフォトニック結晶フレームの一部の拡大図を提示している。
図2Cでは、複数の空洞202は第1の表面206から誘電体201内へと部分的に延在する。蒸気セルを組み立てるときに、第1の光学窓はその場合、各空洞202を、それらの対応する第1の開口部210の周囲に封止部を形成するときに閉じ込める。
図2Cの誘電体201を製造するために、誘電体201の第1の表面206に、複数の空洞202の形状を画定する穴を含む、パターン形成した層を適用してもよい。穴を通して露出される第1の表面206の部分を、次いで化学エッチャントと接触させてもよい。しかしながら、他の製造方法が可能である。
【0022】
ここで
図2A~
図2Dを参照すると、例示の蒸気セルは、複数の空洞202の各々の中に、蒸気または蒸気の供給源を含む。蒸気は、アルカリ金属原子の気体、希ガス、気体の二原子ハロゲン分子、または有機分子の気体などの構成成分を含み得る。例えば、蒸気は、アルカリ金属原子(例えば、K、Rb、Cs、等)の気体、希ガス(例えば、He、Ne、Ar、Kr、等)、または両方を含み得る。他の例では、蒸気は二原子ハロゲン分子(例えば、F
2、Cl
2、Br
2、等)の気体、希ガス、または両方を含み得る。更に別の例では、蒸気は、有機分子(例えばアセチレン)の気体、希ガス、または両方を含み得る。他の構成成分を含む、蒸気に関する他の組合せが可能である。蒸気の供給源は、例えば熱、紫外放射への曝露などのエネルギー刺激に反応して、蒸気を生成し得る。例えば、蒸気はアルカリ金属原子の気体に相当し得、蒸気の供給源は、複数の空洞202内へと配設されるときに固相または液相となるように十分に冷却された、アルカリ金属の集合体に相当し得る。いくつかの実装形態では、蒸気の供給源は1つまたは複数の空洞202内に存在し、蒸気の供給源は、加熱されるとアルカリ金属原子の気体を生成するように構成されている、アルカリ金属原子の液体または固体供給源(例えば、アルカリ金属原子を含むアジド化合物、またはパラフィンに封入したCsの液滴)を含む。
【0023】
多くの実装形態において、複数の空洞202を分離している各壁216を貫通して通路214(例えば、チャネル、溝、ノッチ、等)が配設されており、これらの通路214は、壁216によって分離されている隣り合う空洞202を流体連通している。通路214によって、複数の空洞202の間を蒸気が流れることが可能になり、そうであることで、蒸気セルが複数の空洞202全体にわたる蒸気の均等な分布(例えば、セル216間の等しい圧力、各セル216内の蒸気の等しい濃度、など)を維持することが可能になり得る。製造中、全体としての通路214によって、複数の空洞202に蒸気を充填することが可能になり得る。蒸気の充填は、誘電体201にある充填穴、第1の光学窓および第2の光学窓の一方もしくは両方にある充填穴、またはこれらの何らかの組合せを通して蒸気を導入することによって行うことができる。そのような充填はまた、1つまたは複数の複数の空洞202内に配設されている蒸気の供給源を、エネルギー(例えば熱)で刺激することによっても行われ得る。
【0024】
多くの実装形態において、誘電体201は薄い物体に相当し得る。これらの実装形態では、誘電体201は、第1の表面206と第2の表面208の間の距離よって画定される高さ、および、この高さに対して垂直な方向に沿った最大寸法によって定められる幅を有し得る。いくつかの変形形態では、高さは幅の10パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の8パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の6パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の4パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の2パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の1パーセント以下である。いくつかの変形形態では、高さは幅の0.5パーセント以下である。
【0025】
いくつかの実装形態では、誘電体201の複数の空洞は、二次元格子に従って秩序化される。二次元格子は、同等である格子サイトを含み得る。別法として、二次元格子は、第1の格子サイトと第2の格子サイトとを含み得る。第1の格子サイトは、同一の形状およびサイズを有する第1の空洞と関連付けられ得る。第2の格子サイトは、フォトニック格子の欠陥と関連付けられ得る。場合によっては、欠陥は、第1の空洞よりもサイズの大きい第2の空洞を含む。場合によっては、欠陥は、第1の空洞よりもサイズの小さい第2の空洞を含む。場合によっては、欠陥は、第1の空洞とは異なる形状を有する第2の空洞を含み得る。いくつかの変形形態では、二次元格子は、各々が空洞または欠陥の別々のグループと関連付けられる、3つ以上の格子サイトを含む。
【0026】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは標的電磁放射を検出するように構成されている。これらの実装形態の特定のものでは、誘電体201の複数の空洞の各々202は、は標的電磁放射の波長以下の最大寸法を有する。これらの実装形態の特定のものでは、フォトニック結晶構造のフォトニックバンドギャップは、標的電磁放射の帯域幅以上である。
【0027】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは、標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されている。標的周波数範囲はフォトニックバンドギャップ内にあるか、またはフォトニックバンドギャップと重なる。これらの実装形態のうちのいくつかでは、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップを含む。これらの実装形態のうちのいくつかでは、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップを含む。これらの実装形態のうちのいくつかでは、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横磁気(TM)モードおよび横電気(TE)モードの両方と関連付けられるバンドギャップを含む。多くの場合において、横電気(TE)モードおよび横磁気(TM)モードは混合されたもの(例えば混合モード)である。これらの例では、用語「横電気(TE)」および「横磁気(TM)」は、混合されたものまたは混合モードの、支配的な特性を指す。
【0028】
図3A~
図3Cは、45GHz、48GHz、55GHzの電磁放射の平面波で照射した後の、例示の蒸気セルにおけるそれぞれの電磁場パターンの等高線グラフを提示している。例示の蒸気セルは、
図2A~
図2B(または
図2C~
図2D)に関連して記載するようなフォトニック結晶フレームを含む。48GHz平面波は蒸気セルのフォトニックバンドギャップ内に収まり、したがって対応する電磁場パターンは蒸気セルにわたって比較的均一である。対照的に、45GHzおよび55GHzの平面波はフォトニックバンドギャップの外にあり、対応する電磁場パターンは顕著に非均一である。
【0029】
多くの実装形態において、蒸気セルは、シリコンまたはガラスからレーザ切削、エッチング、もしくは機械加工される(またはこれらの任意の組合せによる)、フォトニック結晶フレームを含む。ただし他の材料(例えばサファイア)が可能である。レーザ切断によって、これらの蒸気セルの製造が大量生産により適したものになる。多くの変形形態において、蒸気セルの一方側(例えば頂部または底部)にある光学窓は、蒸気セル内の原子の初期化および読み出しに使用される光学信号(または光線)のうちの1つまたは複数を反射するように最適化またはそれ以外でそのように構成されている、多層ブラッグ反射器(または誘電体ミラー)を含む。ブラッグ反射器は誘電体ミラーに相当し得、SiO2およびTiO2の交互の層で製作され得る。ただし他の実装形態が可能である。いくつかの変形形態では、ブラッグ反射器の最後の層は、フレームへのブラッグ反射器の接触接合を容易にするために、SiO2または別の酸化物材料(例えばTiO2)で形成される。
【0030】
ブラッグ反射器がSiO2で製作されておらず代わりに別の材料で製作されている場合、ブラッグ反射器の表面上にSiO2接着層を設置することが更に可能である。反射器は、測定の対象である入射場の散乱を低減するために、誘電性でありかつ薄型である必要がある。光学窓を、陽極接合またはガラスフリット接合などの高温および/または高電圧を利用可能な接合技法を使用して、フレームに取り付けることができる。フレームがガラスで製作される場合、陽極接合用の接着層として、薄いSiの層をフレーム材料上に堆積させることができる。頂部光学窓とフレームがいずれもガラスから形成されている場合、それらを接触接合することも可能である。
【0031】
蒸気セルの別の特徴は、少なくともいくつかの例において、フォトニック結晶フレームは光学窓に対する支持を提供し得る。この支持によって大気圧に起因する光学窓の歪みに抵抗する、または、この歪みが排除され得る。この結果、蒸気セルの平面にわたる光学場の画像化が可能になるように、光学窓の動きを最小限にすることができる。試験下の場(FUT)の散乱を低減するために、光学窓は薄型である。この構成によって、蒸気セルのある領域を通過する光線がそれぞれ入射電磁場(mm波RF)、すなわちFUTについての空間情報を担持することが可能になる。いくつかのケースでは、光学画像化の空間分解能によって、入射電磁場(FUT)の空間分解能の測定が決定され得る。蒸気セルのフォトニック結晶フレームの空洞は、全ての空洞に蒸気(例えば、Cs原子の蒸気)が均一に充填されるように、それらを流体接続する通路(例えば小さいチャネル)を有し得る。
【0032】
いくつかの実装形態では、蒸気セルから外向きに延在する軸部(例えば、蒸気セルの側面から外向きに延在する軸部)を介して、蒸気セルを充填することが可能であり得る。軸部は、蒸気セルの充填後に溶融などによって封止可能な管状構造体に相当し得る。いくつかの実装形態では、光学窓のうちの1つまたは蒸気セルの側面に位置する小さな穴を通して蒸気セルを充填することが最適であり得る。この小さな穴(または充填穴)に接触接合を行うことで、蒸気セルを封止することができる。この場合、より大きい窓は、高温および/または高電圧の手法を使用して封止することができる。充填穴は典型的には、初期構造を脱気するのに、およびほとんどのケースでは蒸気セルを充填するのに、十分な大きさでさえあればよい。いくつかの変形形態では、充填穴は、蒸気セルを脱気するおよびそれをポンプ作用によって所望の圧力まで下げるのに十分な大きさでさえあればよい。この後者の方法は、化学反応による充填のための方法、例えば、充填するための、蒸気セル内のゲッタ源、別の化学物質放出機構、または熱活性化による方法が実施され得る場合に、使用されることになる。
【0033】
電力の測定を、遷移双極子モーメントおよび基本定数を介して原子の特性と関連付けることができる。いくつかのケースでは、本明細書に記載するように蒸気セルを使用すると、管理された実験室環境内で電力を高精度に測定することができ、蒸気セルは電磁場の自己較正絶対測定を実現し得る。DUTからの電磁放射の測定時、蒸気セルは、DUTから放出される電力の自己較正絶対測定を実現することもでき、これを参照ビーム測定と共に使用して、電磁放射の位相を抽出することができる。測定はDUTごとの標準として機能し得る。また更に、参照ビームを用いるホログラフィ装置で蒸気セルが使用される場合、この装置は完全に自己較正される測定を行うことができるが、その理由は、フィードバックループを使用してリュードベリ原子ベースの電力センサ(または蒸気セル)を基準として用いることで、参照波電力を較正し安定させることができるからである。蒸気セルの幾何形状は、蒸気セルフレームをレーザ切削することまたは蒸気セル構造をエッチングすることによって、10μm以下の精度まで把握することができる。OTA試験は、電気通信キャリア、電子機器製造者、および規制機関を含む、多くの異なる関係者から必要とされている。OTA試験は規格と関連付けられている場合があり、政府規制への準拠の保証、およびコストのかかる設計ミスの回避に寄与することができる。準拠および試験は、高周波電子機器産業が厳しい世界市場のスケジュールおよび技術仕様に対応するのに役立ち得る。
【0034】
いくつかの実装形態では、蒸気セルを製造する方法は、第1の表面と第1の表面の反対側の第2の表面とを有する誘電体を得ることを含む。誘電体を得ることは任意選択的に、誘電体から材料を除去して第1および第2の表面を形成することを含み得る。方法はまた、誘電体から材料を除去して第1の表面から第2の表面まで延在する複数の空洞を形成することも含む。複数の空洞は誘電体内に周期的に配置されて、誘電体にフォトニック結晶構造を形成する。各空洞は、第1の表面によって画定される第1の開口部と、第2の表面によって画定される第2の開口部と、を有する。また更に、フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを画定する。方法は、光学窓の表面を誘電体の第1の表面に接合して、第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成することを更に含む。光学窓は複数の空洞の第1の開口部を覆う。
【0035】
いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、レーザビームを誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む。いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む。いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、複数の空洞を分離している各壁を貫通する通路を形成することを含む。これらの実装形態では、この通路によって、壁によって分離された隣り合う空洞が流体連通している。
【0036】
いくつかの実装形態では、蒸気セルは、標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されている。これらの実装形態では、標的周波数範囲はフォトニックバンドギャップ内にあるか、またはフォトニックバンドギャップと重なる。フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップを含み得る。フォトニックバンドギャップはまた、電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップも含み得る。いくつかの変形形態では、フォトニックバンドギャップは、電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップと、電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップと、を含む(例えばハイブリッドモード)。
【0037】
いくつかの実装形態では、方法は、接合前に、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含む。これらの実装形態では、光学窓の表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込めることを含む。
【0038】
いくつかの実装形態では、誘電体から材料を除去することは、誘電体の周囲壁を貫通して複数の空洞のうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含む。そのような実装形態では、方法は、穴を通して蒸気を流すこと、および複数の空洞内に蒸気を封止するために穴を閉塞することを含む。更なる実装形態では、方法は、周囲壁に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含む。次いで穴を閉塞することは、複数の空洞内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む。
【0039】
いくつかの実装形態では、方法は、光学窓を貫通する穴を形成することを含む。穴は、光学窓の表面が誘電体の第1の表面に接合されるときに、複数の空洞のうちの少なくとも1つを光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる。方法はまた、穴を通して蒸気を流すこと、および複数の空洞内に蒸気を封止するために穴を閉塞することも含む。更なる実装形態では、方法は、光学窓に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含む。次いで穴を閉塞することは、複数の空洞内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む。
【0040】
いくつかの実装形態では、光学窓は第1の光学窓である。これらの実装形態では、方法は、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含む。方法はまた、第2の光学窓の表面を誘電体の第2の表面に接合して、第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することも含む。第2の光学窓は、複数の空洞の第2の開口部を覆って、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込める。
【実施例】
【0041】
いくつかのケースでは、蒸気セルを製造する方法は、以下の実施例に従って実施され得る。ただし、実施例は例示のみを目的としている。材料および方法のいずれの修正も、本開示の範囲から逸脱することなく実行され得る。
(実施例1)
【0042】
両面を研磨した方位<100>のp型シリコンウエハを入手した。このシリコンウエハは直径が4インチであり、厚さが500μmであり、表面粗さRaはどの面も1nm以下であった。シリコンウエハの電気特性には104Ω・cmの抵抗率が含まれていた。Schottからホウケイ酸塩ガラスで形成されたガラスウエハも入手した。ガラスウエハは直径4インチ、厚さ300μmの、MEMpax(登録商標)ウエハであった。表面粗さは0.5nm未満であった。
【0043】
接触陽極接合の準備としてシリコンおよびガラスウエハを検査した。特に、チップ、マイクロクラック、およびスクラッチがないか、ウエハを視認検査した。ウエハが1nm未満の表面粗さを有することも検証した。酸化炉内で湿式成長プロセスを用い、シリコンウエハの両面上でSiO2の500nm保護層を成長させた。酸化炉の温度は約1100℃に設定し、シリコンウエハの処理時間は約40分であった。(SiO2層を有する)シリコンウエハの厚さ均一性について、その4インチの直径エリアにわたって500±6nm以内であることを検証した。表面粗さが1nm未満であることも検証した。
【0044】
シリコンウエハの材料を機械加工するためにProtolaser U4 マイクロレーザツールまたはProtolaser R マイクロレーザツールのいずれかを使用して、シリコンウエハをシリコンフレームへと形成した。シリコンフレームは、3枚の小葉を有するクローバーの葉の形状で各々画定された、複数の空洞を含んでいた。複数の空洞をシリコンフレームにわたって周期的に配置した。シリコンフレームの壁にノッチを形成して、複数の空洞の間に通路を画定した。シリコンフレームを、機械加工中に生じた可能性のあるクラックまたはチップがないか、5×および10×倍率のルーペで視認検査した。シリコンフレームの表面欠陥がゼロまたは最小限であった場合、そのフレームを選択して続く蒸気セル製作へと進めた。
【0045】
次いでシリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。次にシリコンフレームを、10:1の体積比および室温で55nm/分のエッチ速度を有する緩衝酸化物エッチ(BOE)溶液中に浸漬した。緩衝酸化物エッチ溶液は、フッ化アンモニウムで緩衝したフッ酸を含んでいた。シリコンフレームを少なくとも11分間浸漬して、シリコンフレームの各側の表面からSiO2の500nm保護層を除去した。緩衝酸化物エッチから取り出した後で、シリコンフレームを視認検査した。シリコンフレーム上に機械加工プロセス由来の埋まった物質が見つかった場合、そのシリコンフレームは廃棄した。SiO2の領域がシリコンフレーム上に残っている場合、シリコンフレームを再び緩衝酸化物エッチ溶液中に浸漬し、取り出し、その後再検査した。シリコンフレームのどちらの面にもSiO2の500nmの保護層がない場合、そのシリコンフレームを選択して、最終洗浄へと進めた。
【0046】
次いでシリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで洗浄した。超音波クリーナを任意選択的に使用して、シリコンフレームを浸漬したアセトンまたはイソプロパノールの槽を撹拌することで洗浄プロセスを補助した。次いでシリコンフレームの1つの面上にSiO2の100nm層をスパッタリングした。1nm以下の表面粗さを有するSiO2の100nm層をスパッタリングするために、サンプルの温度を600℃に設定した。100nmのSiO2層の厚さ均一性について、シリコンフレームのエリアにわたって100±6nm以内であることを検証した。シリコンフレームがこの均一性基準を満たさない場合、そのシリコンフレームは廃棄した。
【0047】
次いで100nmのSiO2層を有するシリコンフレームを綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄し、その表面上の(例えば取り回しに起因するような)緩く付着した残渣を除去した。続いてシリコンフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで入念に洗浄した。1回目の視認検査用の入念な洗浄プロセス中には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査用には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。シリコンフレームが2回目の視認検査に合格した場合、そのシリコンフレームをアセトンの槽内に設置して、(例えばBranson Ultrasonic Cleaner CPX-952-117Rで)40kHzで超音波洗浄した。例えば、シリコンフレームをアセトンのガラスビーカ内に設置して、室温で20分間超音波洗浄してもよい。超音波洗浄後、シリコンフレームを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0048】
別途、ガラスウエハを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。必要に応じて、ガラスウエハをアセトンのガラスビーカ内に設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、ガラスウエハを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、その後接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0049】
次いで1つのシリコンフレームおよび1つのガラスウエハを、陽極接合用のアセンブリ内に設置した。シリコンフレームの場合、SiO2の100nm層よって画定される平面状の表面の反対側の平面状の表面が陽極接合プロセスに関与した。このアセンブリにおいて、シリコンフレームの平面状の表面とガラスウエハを接触させて接合面を形成し、この接合面を視認検査して光学縞が存在することを確認した。次いでシリコンフレームを約400℃の温度まで加熱した。この温度に達した後で、シリコンフレームおよびガラスウエハに600Vを約15分間印加し、これにより陽極接合の形成を促進させた。陽極接合が完了したことを示す光学縞の消失を確認するために、接合面を再び検査した。次に、欠陥(例えば、泡、マイクロクラック、未接合のエリア、等)がないか、陽極接合を検査した。空洞の周囲の面積の80%以上に欠陥がない場合には、(例えば、穴から環境への、穴から別の穴への、等の)開いたチャネルがないか、陽極接合を更に検査した。開いたチャネルが発見された場合、その陽極接合は漏れがないと見なされないため、その陽極接合体は廃棄した。
【0050】
漏れのない陽極接合によって接合されたシリコンおよびガラス体を、アセトンおよびメタノール中で洗浄した。この洗浄プロセス中、シリコンフレームの未接合の表面を綿棒および光学用薄葉紙を使用してアセトンおよびメタノールで洗浄し、あらゆる残渣(例えば、陽極接合を形成するために使用されるアセンブリのグラファイトプレートからの残渣)を除去した。次いで、すぐに形成されることになる接触接合を損ない得る欠陥(例えば、掻き傷、ピッチング、等)が存在しないことを保証するために、シリコンフレームの未接合の表面を視認検査した。次いで陽極接合体を個々に洗浄した。特に、陽極接合体をアセトンのガラスビーカ内に設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、陽極接合体を、粒子を含まない圧縮空気で乾燥させた。陽極接合体の1回目の視認検査には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。1回目および2回目の視認検査を利用して、陽極接合体上に目に見える残渣または沈着物が残っていないことを確実にした。
【0051】
次いで、陽極接合体 - および第2のガラスウエハ - を、接触接合を行うためにクリーンルーム環境(例えばクラス1000以上)内に入れた。陽極接合体のシリコンフレーム上のSiO2の100nm層によって画定される平面状の表面、および第2のガラスウエハの平面状の表面を光学用の紙とアセトンで拭って、それらから肉眼で見える沈着物または異物を取り除いた。次いでこの対をアセトン槽(例えば、アセトンを入れたビーカ)内に浸漬し、超音波洗浄によって15分間洗浄した。続いてこの対をアセトン槽から取り出し、イソプロパノールですすぎ(例えば、イソプロパノール槽内に浸漬し)、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。
【0052】
次いでこの対をYES-CV200RFSプラズマシステム内に設置し、窒素プラズマを使用して45秒間活性化させた。特に、シリコンフレーム上のSiO2の100nm層によって画定される平面状の表面、およびガラスウエハの平面状の表面をプラズマによって活性化させた。プラズマシステムのRF電力は約75Wに設定し、内圧は約150ミリトールに維持した。プラズマシステム内に窒素ガスを約20sccmの体積流量で導入した。プラズマによる活性化後、この対をYES-CV200RFSプラズマシステムから取り出し、脱イオン水中で5分間すすいだ。このすすぎのプロセスは活性化した表面をヒドロキシル化する役割を果たした。いくつかの変形形態では、塩基性水溶液(例えば、水酸化アンモニウムの水溶液)を用いて、すすぎのプロセスを実行した。この部品を取り扱う際に、ヒドロキシル化し活性化した表面を汚染しないように、またはそれらが接触して一体にならないように注意した。
【0053】
次に、この対を真空チャンバ内に移し、パラフィンに封入したCsのサンプルをこの構造体に挿入し、この構造体を「押圧指」を有する固定具内に取り付けた。固定具によって第2のガラスウエハを、間隙が画定されるように陽極接合体のシリコンフレームの隣に保持した。ガラスウエハの活性化およびヒドロキシル化された表面をシリコンフレームの活性化およびヒドロキシル化されたSiO2表面に対面させた。次いで真空チャンバを封止し、ポンプ作用によって低い圧力(例えば10-3トール未満)へと下げた。
【0054】
この対が標的圧力に達したら、固定具を作動させて、ガラスウエハの活性化およびヒドロキシル化された表面を、シリコンフレームの活性化およびヒドロキシル化されたSiO2表面に接触させた。「押圧指」を使用して接触した表面を一体にして20分間保持し、このことにより接触接合の形成を促進した。いくつかの変形形態では、「押圧指」を使用して、標的圧力(例えば約2MPa)を20分間継続して加えた。固定具をチャンバから取り出し、固定具の中のサンプルをオーブン内で90Cでアニーリングして接合を強化した。
【0055】
(実施例2)
Howard Glass Co., Inc.から厚さ1mm、直径4インチの厚いガラスウエハを入手した。厚いガラスウエハの表面粗さRaは、どちらの面も1nm以下であった。Schottからホウケイ酸塩ガラスで形成された薄いガラスウエハも入手した。薄いガラスウエハは直径4インチ、厚さ300μmの、MEMpax(登録商標)ウエハであった。表面粗さは0.5nm未満であった。接触陽極接合の準備として厚いガラスウエハおよび薄いガラスウエハを検査した。特に、チップ、マイクロクラック、およびスクラッチがないか、ガラスウエハを視認検査した。ウエハが1nm未満の表面粗さを有することも検証した。
【0056】
単一の面上に500nmのSiO2の層を有する100μmのSiウエハを、厚いガラスウエハの各面にSiO2層が表面に露出するように陽極接合した。100μmのSiウエハによって厚いガラスウエハ上にSiの層を形成した。別法として、Siの層を厚いガラス層の各面上に堆積させてもよく、SiO2を露出した表面上にスパッタリングしてもよい。例えば、厚いガラスウエハの両面上にプラズマ促進化学蒸気堆積法(PECVD)を用いて厚さ1μm以下のSi層を堆積させてもよく、積層したフレームの各面上にSiO2の500nm保護層をスパッタリングしてもよい。
【0057】
次に、ガラスウエハの材料を機械加工するためにProtolaser U4 マイクロレーザツールまたはProtolaser R マイクロレーザツールのいずれかを使用して、厚いガラスウエハからSi層およびSiO2層を有するガラスフレームを切り出した。ガラスフレームは、3枚の小葉を有するクローバーの葉の形状で各々画定された、複数の空洞を含んでいた。複数の空洞をシリコンフレームにわたって周期的に配置した。ガラスフレームの壁にノッチを形成して、複数の空洞の間に通路を画定した。ガラスフレームを、機械加工中に生じた可能性のあるクラックまたはチップがないか、5×および10×倍率のルーペで視認検査した。ガラスフレームの表面欠陥がゼロまたは最小限であった場合、そのフレームを選択して続く蒸気セル製作へと進めた。
【0058】
次いでガラスフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。次にSi層およびSiO2層を有するガラスフレームの表面を、10:1の体積比および室温で55nm/分のエッチ速度を有する緩衝酸化物エッチ(BOE)溶液と接触させた(例えば、その中に浸漬した)。緩衝酸化物エッチ溶液は、フッ化アンモニウムで緩衝したフッ酸を含んでいた。表面を少なくとも11分間接触させてSiO2の500nm保護層を除去し、この結果ガラスフレーム上にはSiの層が残った。緩衝酸化物エッチから取り出した後で、ガラスフレームを視認検査した。ガラスフレーム上に機械加工プロセス由来の埋まった物質が見つかった場合、そのガラスフレームは廃棄した。SiO2の領域がガラスフレーム上に残っている場合、ガラスフレームを再び緩衝酸化物エッチ溶液と接触させ、取り出し、その後再検査した。ガラスフレームの表面にSiO2の500nm保護層がない場合、そのガラスフレームを選択して最終洗浄へと進めた。
【0059】
次いでガラスフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで洗浄した。超音波クリーナを任意選択的に使用して、ガラスフレームを浸漬したアセトンまたはイソプロパノールの槽を撹拌することで洗浄プロセスを補助した。
【0060】
次いでガラスフレームを綿棒および光学用薄葉紙を使用してメタノールおよびイソプロパノールで洗浄し、それらの表面上の(例えば取り回しに起因するような)緩く付着した残渣を除去した。続いてガラスフレームを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、アセトンおよびイソプロパノールで入念に洗浄した。1回目の視認検査用の入念な洗浄プロセスには低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査用には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。ガラスフレームが2回目の視認検査に合格した場合、そのガラスフレームをアセトンの槽内に設置して、(例えばBranson Ultrasonic Cleaner CPX-952-117Rで)40kHzで超音波洗浄した。例えば、ガラスフレームをアセトンのガラスビーカ内に設置して、室温で20分間超音波洗浄してもよい。超音波洗浄後、ガラスフレームを粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0061】
ガラスウエハを選択し、ガラスフレームのクローバーの葉の形状の穴のうちの1つと穴を位置合わせされるように、少なくとも3mmの直径を有する充填穴(例えば、Csを蒸気セル内に入れるための充填穴)を、Protolaserを使用して窓に切削した。別途、第2の薄いガラスウエハおよび充填穴を有するウエハを、綿棒および光学用薄葉紙を使用して、メタノールおよびイソプロパノールで洗浄した。必要に応じて、薄いガラス窓をアセトンのガラスビーカ内に設置し、室温で20分間超音波洗浄した。超音波洗浄後、薄いガラス窓を粒子を含まない圧縮空気で乾燥させ、その後接合で必要になるまで気密容器内で保管した。
【0062】
次いで(Siの層を有する)ガラスフレームおよび1つの薄いガラスウエハを、陽極接合用のアセンブリ内に設置した。ガラスフレームの場合、平面状のSi表面うちの1つが陽極接合プロセスに関与した。このアセンブリにおいて、ガラスフレームの平面状の表面とガラスウエハを接触させて接合面を形成し、この接合面を視認検査して光学縞が存在することを確認した。次いでガラスウエハを約400℃の温度まで加熱した。この温度に達した後で、接触させたガラス体に600Vを約15分間印加し、これにより陽極接合の形成を促進させた。陽極接合が完了したことを示す光学縞の消失を確認するために、接合面を再び検査した。次に、欠陥(例えば、泡、マイクロクラック、未接合のエリア、等)がないか、陽極接合を検査した。空洞の周囲の面積の80%以上に欠陥がない場合には、(例えば、穴から環境への、穴から別の穴への、等の)開いたチャネルがないか、陽極接合を更に検査した。開いたチャネルが発見された場合、その陽極接合は気密性を有すると見なされないため、その陽極接合体は廃棄した。同じプロセスをガラスフレームまたは構造体の他方の面および第2の光学窓にも繰り返した。
【0063】
陽極接合されたガラス体をアセトンおよびメタノール中で洗浄した。この洗浄プロセス中、ガラスフレームの未接合の表面を綿棒および光学用薄葉紙を使用してアセトンおよびメタノールで洗浄し、あらゆる残渣(例えば、陽極接合を形成するために使用されるアセンブリのグラファイトプレートからの残渣)を除去した。次いで、すぐに形成されることになる接触接合を損ない得る欠陥(例えば、掻き傷、ピッチング、等)が存在しないことを保証するために、充填穴を有するガラス構造体の表面を視認検査した。陽極接合体の1回目の視認検査には低倍率のルーペ(例えば10×)を使用し、続く2回目の視認検査には高倍率顕微鏡(例えば50×~200×)を使用した。1回目および2回目の視認検査を利用して、陽極接合体上に目に見える残渣または沈着物が残っていないことを確実にした。5mm平方の寸法以上のガラスウエハを同様に洗浄して、これを接触接合を使用して充填穴を封止するように準備した。
【0064】
次いで、陽極接合体 - および充填穴を封止するように切断されたガラス片 - を、接触接合を行うためにクリーンルーム環境(例えばクラス1000以上)内に入れた。この対に対して、充填穴を有する接合した構造体の平面状の表面、および充填穴を封止するためのガラス片の平面状の表面を光学用の紙とアセトンで拭って、それらから肉眼で見える沈着物または異物を取り除いた。続いてこの対をアセトン槽から取り出し、イソプロパノールですすぎ、乾燥窒素ガスを吹き付けて乾燥させた。このプロセスを両方の表面が光学ループを使用して目で見てきれいになるまで繰り返した。
【0065】
次いでこの接合した構造体および窓をYES-CV200RFSプラズマシステム内に設置し、窒素プラズマを使用して45秒間洗浄した。特に、充填穴を有する窓およびガラス構造体の平面状のガラスカバーを、プラズマによって活性化した。プラズマシステムのRF電力は約75Wに設定し、内圧は約150ミリトールに維持した。プラズマシステム内に窒素ガスを約20sccmの体積流量で導入した。プラズマによる活性化後、この対をYES-CV200RFSプラズマシステムから取り出し、脱イオン水中で5分間すすいだ。接合した構造体を、脱イオン水と、空洞が水で充填されないように慎重に接触させた。このすすぎのプロセスは活性化した表面をヒドロキシル化する役割を果たした。いくつかの変形形態では、塩基性水溶液(例えば、水酸化アンモニウムの水溶液)を用いて、すすぎのプロセスを実行した。2つのヒドロキシル化および活性化された表面が接触して一体にならないように注意した。
【0066】
次に、この対を真空チャンバ内に移し、パラフィンに封入したCsサンプルを3mm充填穴の下にある空洞に挿入し、この構造体を「押圧指」を有する固定具内に取り付けた。固定具によってガラス穴カバーを、間隙が画定されるように陽極接合体のガラス窓に隣り合わせて保持した。ガラス穴カバーの活性化およびヒドロキシル化された表面をガラスフレームの活性化およびヒドロキシル化された表面に対面させた。次いで真空チャンバを封止し、ポンプ作用によってより低い圧力(例えば10-3トール未満)へと下げて、陽極接合体のセルを充填するために使用されるセシウム原子の蒸気と反応する可能性のある揮発性種(例えば水蒸気)を除去した。
【0067】
真空チャンバが所望の圧力に達したら、固定具を作動させて、ガラス穴カバーの活性化およびヒドロキシル化された表面を、陽極接合した構造体の活性化およびヒドロキシル化された表面に接触させた。「押圧指」を使用して接触した表面を一体にして20分間保持し、このことにより接触接合の形成を促進した。いくつかの変形形態では、「押圧指」を使用して、標的圧力(例えば約2MPa)を20分間継続して加えた。固定具をチャンバから取り出し、固定具の中のサンプルをオーブン内で90℃で8時間アニーリングして接合を強化した。
【0068】
記載されているもののいくつかの態様では、蒸気セルを製造する方法が以下の実施例によって更に記載され得る。
(実施例1)
第1の表面および第1の表面の反対側の第2の表面を有する誘電体を得ることと、
誘電体から材料を除去して第1の表面から第2の表面まで延在する複数の空洞を形成することであって、複数の空洞は誘電体内に周期的に配置されて誘電体にフォトニック結晶構造を形成しており、各空洞は第1の表面によって画定される第1の開口部および第2の表面によって画定される第2の開口部を有し、フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを画定する、形成することと、
光学窓の表面を誘電体の第1の表面に接合して、第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、光学窓は複数の空洞の第1の開口部を覆っている、形成することと、
を含む、蒸気セルを製造する方法。
(実施例2)
誘電体から材料を除去することは、レーザビームを誘電体上に収束させてその材料を機械加工することを含む、実施例1に記載の方法。
(実施例3)
誘電体から材料を除去することは、誘電体を化学物質に曝露してそこから材料をエッチングすることを含む、実施例1または実施例2に記載の方法。
(実施例4)
誘電体から材料を除去することは、複数の空洞を分離している各壁を貫通する通路を形成することを含み、通路は壁によって分離されている隣り合う空洞を流体連通している、実施例1または実施例2~3のいずれか1つに記載の方法。
(実施例5)
誘電体を得ることは、誘電体から材料を除去して第1および第2の表面を形成することを含む、実施例1または実施例2~4のいずれか1つに記載の方法。
(実施例6)
蒸気セルは標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されており、
標的周波数範囲はフォトニックバンドギャップ内にあるかまたはフォトニックバンドギャップと重なる、
実施例1または実施例2~5のいずれか1つに記載の方法。
(実施例7)
フォトニックバンドギャップは電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップを含む、実施例6に記載の方法。
(実施例8)
フォトニックバンドギャップは電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップを含む、実施例6または実施例7に記載の方法。
(実施例9)
接合前に、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することを含み、
光学窓の表面を接合することは、複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込めることを含む、
実施例1または実施例2~8のいずれか1つに記載の方法。
(実施例10)
誘電体から材料を除去することは、誘電体の周囲壁を貫通して複数の空洞のうちの少なくとも1つに至る穴を形成することを含む、
実施例1または実施例2~9のいずれか1つに記載の方法であって、
方法は、
穴を通して蒸気を流すことと、
複数の空洞内に蒸気を封止するために穴を閉塞することと、を含む、方法。
(実施例11)
周囲壁に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
穴を閉塞することは、複数の空洞内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む、
実施例10に記載の方法。
(実施例12)
光学窓を貫通する穴を形成することであって、穴は、光学窓の表面が誘電体の第1の表面に接合されるときに、複数の空洞のうちの少なくとも1つを光学窓の外部に流体連通させるように位置付けられる、形成することと、
穴を通して蒸気を流すことと、
複数の空洞内に蒸気を封止するために穴を閉塞することと、
を含む、実施例1または実施例2~9のいずれか1つに記載の方法。
(実施例13)
光学窓に穴によって画定される通路を延長するための管を取り付けることを含み、
穴を閉塞することは、複数の空洞内に蒸気を封止するために管の端部を閉じることを含む、
実施例12に記載の方法。
(実施例14)
光学窓は第1の光学窓であること、および
実施例1または実施例2~14のいずれか1つに記載の方法であって、
方法は、
複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を配設することと、
第2の光学窓の表面を誘電体の第2の表面に接合して、第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成することであって、第2の光学窓は複数の空洞の第2の開口部を覆って複数の空洞の各々の中に蒸気または蒸気の供給源を閉じ込める、形成することと、を含むこと、を含む方法。
【0069】
記載されているもののいくつかの態様では、蒸気セルが以下の実施例によって更に記載され得る。
(実施例1)
誘電体であって、
第1の表面、
第1の表面の反対側の第2の表面、ならびに
誘電体にフォトニック結晶構造を形成するように周期的に秩序化されている、第1の表面から第2の表面まで延在する複数の空洞であり、各空洞は第1の表面によって画定される第1の開口部および第2の表面によって画定される第2の開口部を有し、フォトニック結晶構造はフォトニックバンドギャップを有する、空洞、を備える、誘電体と、
複数の空洞の各々の中にある蒸気または蒸気の供給源と、
第1の開口部を覆い、かつ誘電体の第1の表面に接合されて第1の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第1の光学窓と、
第2の開口部を覆い、かつ誘電体の第2の表面に接合されて第2の開口部の各々の周囲に封止部を形成している表面を有する、第2の光学窓と、
を備える、蒸気セル。
(実施例2)
蒸気セルは標的電磁放射を検出するように構成されており、
複数の空洞の各々は標的電磁放射の波長以下の最大寸法を有する、
実施例1に記載の蒸気セル。
(実施例3)
蒸気セルは標的電磁放射を検出するように構成されており、
フォトニックバンドギャップは標的電磁放射の帯域幅以上である、
実施例1または実施例2に記載の蒸気セル。
(実施例4)
蒸気セルは標的周波数範囲内の電磁放射を検出するように構成されており、
標的周波数範囲はフォトニックバンドギャップ内にあるかまたはフォトニックバンドギャップと重なる、
実施例1または実施例2~3のいずれか1つに記載の方法。
(実施例5)
フォトニックバンドギャップは電磁放射の横磁気(TM)モードと関連付けられるバンドギャップを含む、実施例4に記載の蒸気セル。
(実施例6)
フォトニックバンドギャップは電磁放射の横電気(TE)モードと関連付けられるバンドギャップを含む、実施例4または実施例5に記載の蒸気セル。
(実施例7)
誘電体の第1および第2の表面は互いに平行な平面状の表面である、実施例1または実施例2~6のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例8)
複数の空洞は二次元格子に従って秩序化されている、実施例1または実施例2~7のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例9)
複数の空洞は二次元格子に従って秩序化されており、
二次元格子は第1の格子サイトと第2の格子サイトとを備え、第1の格子サイトは同一の形状およびサイズを有する第1の空洞と関連付けられており、第2の格子サイトはフォトニック格子の欠陥と関連付けられている、
実施例1または実施例2~7のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例10)
欠陥は第1の空洞よりもサイズの大きい第2の空洞を含む、実施例9に記載の蒸気セル。
(実施例11)
欠陥は第1の空洞よりもサイズの小さい第2の空洞を含む、実施例9または実施例10に記載の蒸気セル。
(実施例12)
欠陥は第1の空洞とは異なる形状を有する第2の空洞を含む、実施例9または実施例10~11のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例13)
誘電体は、
複数の空洞を分離している各壁を貫通して配設されている通路を備え、通路は壁によって分離されている隣り合う空洞を流体連通している、実施例1または実施例2~12のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例14)
第1の光学窓は誘電体ミラーを備える、実施例1または実施例2~13のいずれか1つに記載の蒸気セル。
(実施例15)
誘電体ミラーは誘電体の第1の表面に接合されている第1の光学窓の表面に沿って配設されている、実施例14に記載の蒸気セル。
(実施例16)
第2の光学窓は反射防止コーティングを備える、実施例1または実施例2~15のいずれか1つに記載の蒸気セル。
【0070】
本明細書は多くの詳細を包含しているが、これらは特許請求され得る内容の範囲を限定するものとしてではなく、特定の例に特有の特徴の記載として理解されるべきである。別個の実装形態の文脈で本明細書に記載されているかまたは図面に示されている特定の特徴を組み合わせることもできる。逆に、単一の実装形態の文脈で記載されているかまたは示されている様々な特徴を、複数の実施形態において別々に、または任意の好適な下位組合せで、実施することもできる。
【0071】
同様に、図面では操作が特定の順序で描かれているが、このことは、望ましい結果を達成するために、そのような操作をその示された特定の順序でもしくは連続的に行うこと、または示されている全ての操作を行うことを要求するものと理解されるべきではない。特定の状況では、マルチタスク処理および並列処理が有利であり得る。また更に、上記した実装形態における様々なシステム構成要素の分離は、そのような分離が全ての実装形態において必要であるものと理解されるべきではなく、記載されたプログラム構成要素およびシステムを、全体的に単一の製品において1つに統合できるか、または複数の製品へとパッケージングできることが理解されるべきである。
【0072】
いくつかの実施形態を記載した。ただし、様々な修正を行い得ることが理解されるであろう。したがって、以下の特許請求の範囲の範囲内には他の実施形態が含まれる。