(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】無針注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/30 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
A61M5/30
(21)【出願番号】P 2022528470
(86)(22)【出願日】2021-04-14
(86)【国際出願番号】 JP2021015393
(87)【国際公開番号】W WO2021246061
(87)【国際公開日】2021-12-09
【審査請求日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2020098730
(32)【優先日】2020-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇将
【審査官】星名 真幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-005407(JP,A)
【文献】特表2001-501571(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0245859(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103961768(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射針を介することなく注射目的物質を対象領域に射出する無針注射器であって、
注射器本体と、
前記注射目的物質が収容される収容空間を有するとともに該注射目的物質が前記対象領域に対して射出口から射出されるように流路を画定する収容部と、
前記収容部を前記注射器本体に取り付ける取付部と、
前記注射器本体に設けられ、前記注射目的物質を射出するための射出エネルギーを付与する駆動部と、
前記注射器本体と前記収容部との内部に跨るように設けられた所定領域を前記射出口の方向に移動可能に配置され、前記射出エネルギーが付与されることで、前記収容空間に収容されている前記注射目的物質を加圧する加圧部と、
を備え、
前記取付部は、前記収容空間に前記流路が連通している連通部分が位置する前記収容部の先端側の内表面に対応する、該収容部の先端側外表面を、前記加圧部の前記射出口への移動方向とは反対方向に押圧した状態で、前記収容部を前記注射器本体に取り付
け、
前記収容部は、基端面を含み前記取付部が該収容部に対して締結される基端部と、前記先端側外表面を含む先端部と、該基端部と該先端部とを接続する胴部とを有し、
前記収容部に対して前記取付部が締結されることで、前記先端部の前記先端側外表面に前記取付部が接触しつつ押圧し、
前記収容部が締結された前記取付部が前記注射器本体へ締結されることにより、該収容部が前記注射器本体に取り付けられる、
無針注射器。
【請求項2】
前記先端部は、前記射出口側の前記流路の一部を内部に含む突出部と、該突出部と前記胴部とを接続し、且つ、前記注射器本体の長手方向の中心軸に対して傾斜する前記先端側外表面を含むテーパ部を有し、
前記取付部は、前記射出口が開放されるように前記突出部を通す開口を形成し、前記先端側外表面のうち前記テーパ部と前記胴部との接続部分から所定幅の領域に接触する接触部を有する、
請求項
1に記載の無針注射器。
【請求項3】
前記胴部の断面積に対する前記開口の面積の比率が、0.10~0.74である、
請求項
2に記載の無針注射器。
【請求項4】
前記取付部の引張強度が前記収容部の引張強度以上である、
請求項1から請求項
3の何れか1項に記載の無針注射器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射針を介することなく注射目的物質を対象領域に射出する無針注射器に関する。
【背景技術】
【0002】
生体等の対象領域に薬液等の注射目的物質を射出する装置として注射針を有しない無針注射器が例示できるが、近年、取り扱いの容易さや衛生面等からも着目されその開発が行われている。一般に、無針注射器では、圧縮ガスやバネ等の駆動源により加圧された薬液を対象領域に向かって射出し、その薬液が有する運動エネルギーを利用して対象領域の内部に薬液が射出される構成が実用化されている。
【0003】
ここで、無針注射器では注射目的物質を射出するために、該注射目的物質に対して比較的大きな射出エネルギーを付与する必要がある。そのため、エネルギー付与前に注射目的物質を収容する収容部に対しても比較的大きな荷重が掛かるため、該収容部の強度を十分に確保する必要がある。例えば、特許文献1に示す技術では、内容物を収容するガラス無針注射器カプセルの側面をサポートする筒状のスリーブが配置された構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
注射目的物質を加圧し射出することで無針注射器として機能させるためには、その加圧力を比較的大きくする必要があるが、安全な無針注射器の使用を実現するためには、加圧時に無針注射器が破損、変形することを好適に回避しなければならない。従来技術では、加圧対象の内容物を収容するガラス製のカプセルの側面がスリーブで補強されているが、このような補強構成では、カプセルの破損等を十分に抑制することが困難であることが判明した。
【0006】
そこで、本願の開示は、上記した問題に鑑み、無針注射器における注射目的物質への加圧を行う際に、無針注射器の破損等を好適に回避し得る補強技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願開示の無針注射器では、射出のために加圧される注射目的物質を収容する収容部を、注射目的物質の加圧方向と反対方向に押圧した状態で注射器本体に取り付ける構成を採用した。このような収容部の取付構成によれば、注射目的物質の加圧時における収容部の変形を好適に抑制でき、以てその破損等を回避することが可能となる。
【0008】
具体的には、本願開示は、注射針を介することなく注射目的物質を対象領域に射出する無針注射器であって、注射器本体と、前記注射目的物質が収容される収容空間を有するとともに該注射目的物質が前記対象領域に対して射出口から射出されるように流路を画定する収容部と、前記収容部を前記注射器本体に取り付ける取付部と、前記注射器本体に設けられ、前記注射目的物質を射出するための射出エネルギーを付与する駆動部と、前記注射器本体と前記収容部との内部に跨るように設けられた所定領域を前記射出口の方向に移動可能に配置され、前記射出エネルギーが付与されることで、前記収容空間に収容されている前記注射目的物質を加圧する加圧部と、を備える。そして、前記取付部は、前記収容空間に前記流路が連通している連通部分が位置する該収容部の先端側の内表面に対応する、該収容部の先端側外表面を、前記加圧部の前記射出口への移動方向とは反対方向に押圧した状態で、前記収容部を前記注射器本体に取り付ける。
【0009】
上記の無針注射器において、注射目的物質を対象領域に対して射出するために、駆動部が射出エネルギーの付与を行う。本願における「射出」は、駆動部による射出エネルギーを利用して加圧部により収容部内の注射目的物質が加圧されることで、その注射目的物質が収容部の流路を流れることで実現される。また、無針注射器において先端側とは相対的に射出口に近い側を言い、基端側とは無針注射器の長手方向において先端側とは反対の側を言う。
【0010】
ここで、無針注射器で射出される注射目的物質としては、対象領域内で効能が期待される成分や対象領域内で所定の機能の発揮が期待される成分を含む所定物質が例示できる。そのため、少なくとも上記の射出エネルギーによる射出が可能であれば、注射目的物質の物理的形態は問わない。例えば、注射目的物質が液体内に溶解した状態で存在してもよく、又は液体に溶解せずに単に混合された状態であってもよい。一例を挙げれば、送りこむべき所定物質として、抗体増強のためのワクチン、美容のためのタンパク質、毛髪再生用の培養細胞等があり、これらが射出可能となるように、液体の媒体に含まれることで注射目的物質が形成される。なお、上記媒体としては、対象領域内部に注入された状態において所定物質の上記効能や機能を阻害するものでない媒体が好ましい。別法として、上記媒体は、対象領域内部に注入された状態において、所定物質とともに作用することで上記効能や機能が発揮される媒体であってもよい。
【0011】
また、無針注射器から注射目的物質を対象領域に向けて射出し、その内部に送り込むためには、対象領域の表面を射出された注射目的物質で貫通する必要がある。そのため、射出初期では注射目的物質を比較的高速に対象領域に向けて射出する必要がある。この点を考慮すると、一例として、駆動部は、点火薬の燃焼により放出される燃焼生成物を利用して射出エネルギーを付与するのが好ましい。なお、前記点火薬として、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬、アルミニウムと酸化銅を含む火薬、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬のうち何れか一つの火薬、又はこれらのうち複数の組み合わせからなる火薬の何れかを採用できる。上記点火薬の特徴としては、その燃焼生成物が高温状態では気体であっても常温では気体成分を含まないため、点火後燃焼生成物が直ちに凝縮を行う結果、駆動部は、極めて短期間に射出エネルギーの付与を行うことができる。また、駆動部は、点火薬の燃焼による射出エネルギーに代えて、圧電素子等の電気的エネルギーやばね等の機械的エネルギーを射出エネルギーとして利用してもよく、これらの形態のエネルギーを適宜組み合わせることで射出エネルギーを生成するようにしてもよい。
【0012】
上記無針注射器では、収容部内の収容空間に注射目的物質が収容され、加圧部が射出口の方向に移動することでその収容されている注射目的物質に対して加圧される。そして、当該収容部は注射器本体に対して取付部を介して取り付けられる。取付部により取り付けられている状態では、収容部の先端側外表面が加圧部の移動方向とは反対となる方向に押圧された状態となる。加圧部の移動により荷重が加えられると、収容部が最初にその移動方向に変形し当該変形を起点として収容部全体が破損等することを本願出願人は新たな知見として見出した。本願明細書では、当該変形を「初期変形」と称する。そして、上記のような取付構成を採用することで、射出エネルギーの付与により加圧部が所定領域を射出口に向かって移動する際に注射目的物質に対して加えられる荷重に対して、収容部が加圧部の移動方向に沿って支持されることになり、以て、収容部全体の破損等のトリガーとなる初期変形を好適に抑制することができる。
【0013】
なお、収容部の先端側外表面は、流路が収容空間に連通している連通部分が位置する先端側の収容部の内表面に対応する収容部の外表面、すなわち、当該収容部の内表面を含む収容部の壁を挟んで相対する外表面として定義される。先端側外表面の形状は特定の形状に限定されず、必ずしも上記の収容部の内表面と平行である必要は無い。
【0014】
上記の無針注射器は、このような取付部による収容部の取付構成を採用することで、加圧時の収容部の初期変形を好適に抑制でき、無針注射器の安全な使用を十分に確保することができる。また、取付部による収容部の補強は、先端側外表面における補強を含みさえすればよく、収容部の側面の補強は必ずしも必要とするものではない。なお、このことは、収容部の側面の補強を排除することを意味するものではない。また、取付部による先端側外表面における補強の観点から、前記取付部の引張強度が前記収容部の引張強度以上であるのが好ましい。これにより、上記の初期変形をより的確に抑制することができる。
【0015】
ここで、上記の無針注射器のより具体的な形態に言及する。第1の形態では、前記収容部は、基端面を含み半径方向に拡径した基端部と、前記先端側外表面を含む先端部と、該基端部と該先端部とを接続する胴部とを有してもよく、その場合、前記取付部が前記注射器本体へ締結されることにより、該取付部が該注射器本体との間に前記基端部を挟むことで、前記収容部において前記射出口が設けられる先端面とは反対側の、該収容部の基端面を、前記注射器本体の表面のうち前記所定領域と交差する所定端面に接触させた状態で、且つ、該収容部の先端側外表面を押圧した状態で、該収容部が前記注射器本体に取り付けられるように無針注射器が構成されてもよい。当該注射器本体における所定端面は、加圧部が移動する所定領域と交差する注射器本体の表面の一部である。すなわち、所定領域が注射器本体と収容部との内部に跨るように位置するために互いに接触する注射器本体側の表面と収容部側の表面のうち、注射器本体側の表面が所定端面となる。また、第2の形態では、前記収容部は、基端面を含み前記取付部が該収容部に対して締結される基端部と、前記先端側外表面を含む先端部と、該基端部と該先端部とを接続する胴部とを有してもよく、その場合、前記収容部に対して前記取付部が締結されることで、前記先端部の前記先端側外表面に前記取付部が接触しつつ押圧し、そして、前記収容部が締結された前記取付部が前記注射器本体へ締結されることにより、該収容部が前記注射器本体に取り付けられるように無針注射器が構成されてもよい。
【0016】
これらの形態においては、収容部の先端側外表面の押圧が的確に実現されることで、上述の初期変形を好適に抑制することができる。なお注射器本体と取付部との締結の形態や収容部と取付部との締結の形態として任意の形態が採用でき、例えば、螺合、スナップ式の締結、ボルトを利用した締結等が例示できる。また、収容部の形状も上記の2つの形態に係る形状には限られず、取付部による注射器本体への取り付けが可能な構成を有するものであれば、収容部は、上記形状以外の形状を有するものであってもよい。
【0017】
また、上記の無針注射器において、前記先端部は、前記射出口側の前記流路の一部を内部に含む突出部と、該突出部と前記胴部とを接続し、且つ、前記注射器本体の長手方向の中心軸に対して傾斜する前記先端側外表面を含むテーパ部を有してもよく、その場合、前記取付部は、前記射出口が開放されるように前記突出部を通す開口を形成し、前記先端側外表面のうち前記テーパ部と前記胴部との接続部分から所定幅の領域に接触する接触部を有してもよい。当該所定幅は、先端側外表面の全部を覆う幅でもよくその一部を覆う幅であってもよい。先端部にテーパ部を設けることで、先端側外表面の押圧に必要な、基端部から先端部の一部(上記接続部分から所定幅の領域)に至る距離を短くでき、取付部の小型化や軽量化を図ることができる。
【0018】
また、上記の無針注射器において、前記胴部の断面積に対する前記開口の面積の比率が、0.10~0.74であってもよい。このような形態では、加圧時の収容部の破損等を好適に回避でき、当該形態は、無針注射器の安全な使用に資するものである。
【発明の効果】
【0019】
本願の開示によれば、無針注射器における注射目的物質への加圧を行う際に、無針注射器の破損等を好適に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】無針注射器に組み込まれるアクチュエータの概略構成を示す図である。
【
図3】無針注射器に組み込まれるアタッチメントの概略構成を示す図である。
【
図4】無針注射器における、注射器本体に対するコンテナの取り付けの第1形態を示す図である。
【
図5】無針注射器における、コンテナとコンテナホルダの寸法関係を説明するための図である。
【
図6】第1形態に関連する、コンテナホルダの変形例を示す図である。
【
図7】無針注射器における、注射器本体に対するコンテナの取り付けの第2形態を示す図である。
【
図8】第2形態に関連する、コンテナホルダの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、図面を参照して本願開示の投与装置の一例としての、注射針のない無針注射器1(以下、単に「注射器1」という)を例に挙げて説明する。なお、本願に示す各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は、一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本開示は、実施形態によって限定されることはなく、請求の範囲によってのみ限定される。
【0022】
<第1の実施形態>
注射器1は、火薬の燃焼エネルギーを利用して、本願の注射目的物質に相当する射出液を対象領域に射出する無針注射器、すなわち、注射針を介することなく、射出液を対象領域に射出して注射を行う装置である。本実施形態では、注射器1においてその長手方向における相対的な位置関係を表す用語として、「先端側」及び「基端側」を用いる。当該「先端側」は、後述する注射器1の先端寄り、すなわち射出口77寄りの位置を表し、当該「基端側」は、注射器1の長手方向において「先端側」とは反対側の方向、すなわちアクチュエータ20における点火器22側の方向を表している。
【0023】
ここで、
図1は、注射器1の概略構成を示すための注射器1の断面図である。注射器1は、アクチュエータ20、アタッチメント30、コンテナ70、プランジャ80等を含む。
図2は注射器1に装着されるアクチュエータ20の概略構成を示すその断面図である。
図3はアタッチメント30の概略構成を示す図である。注射器1に含まれるコンテナ70においてプランジャ80との間に形成される収容空間75には、注射器1の作動前である準備段階において射出液が充填される。本願の以降の記載においては、注射器1により対象領域に射出される射出液は、当該対象領域で期待される効能や機能を発揮する所定物質が液体の媒体に含有されることで形成されている。その射出液において、所定物質は媒体である液体に溶解した状態となっていてもよく、また、溶解されずに単に混合された状態となっていてもよい。
【0024】
射出液に含まれる所定物質としては、例えば生体である対象領域に対して射出可能な生体由来物質や所望の生理活性を発する物質が例示でき、例えば、生体由来物質としては、DNA、RNA、核酸、抗体、細胞等が挙げられ、生理活性を発する物質としては、低分子や、蛋白、ペプチド等からなる医薬、ワクチン、温熱療法や放射線療法のための金属粒子等の無機物質、キャリアとなる担体を含む各種の薬理・治療効果を有する物質等が挙げられる。また、射出液の媒体である液体としては、これらの所定物質を対象領域内に投与するために好適な物質であればよく、水性、油性の如何は問われない。また、所定物質を注射器1にて射出可能であれば、媒体である液体の粘性についても特段に限定されるものではない。
【0025】
注射器1においては、外部の電源から点火器22に着火電流が供給されることで、点火器22が作動し注射器1による射出液の射出が行われる。点火器22への着火電流の供給形態は、様々な形態を採用することができる。例えば、点火器22を作動させるための電力は不図示の電源ケーブルを介して外部から供給されてもよい。別法としてアクチュエータ20の内部に、当該電力供給のためのバッテリが設けられてもよい。
【0026】
ここで、アクチュエータ20について
図2に基づいて説明する。アクチュエータ20は、そのボディ21が筒状に形成されている。ボディ21は、その中央に中央部21aを有し、その先端側に先端部21bを有し、その基端側に基端部21cを有している。ボディ21において、先端部21b、中央部21a、基端部21cは、それぞれの内部空間が連通しており、更に、先端部21bの先端側において開口部27が設けられている。ここで、ボディ21の基端部21cには、点火薬22aを燃焼させて射出のためのエネルギーを発生させる電気式点火器である点火器22がキャップ23を介して取り付けられている。点火器22は外部から着火電流が供給される点火ピン22bを有している。また、点火器22が作動することで生成される燃焼生成物が、ボディ21の中央部21a側に放出されるようにボディ21に対する点火器22の取付状態が決定されている。すなわち、燃焼生成物の放出面22cが中央部21a側に向くように、点火器22はボディ21の基端部21cに取り付けられている。
【0027】
ここで、点火器22において用いられる点火薬22aの燃焼エネルギーは、注射器1が射出液を対象領域に射出するためのエネルギーとなる。なお、当該点火薬としては、好ましくは、ジルコニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(ZPP)、水素化チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(THPP)、チタンと過塩素酸カリウムを含む火薬(TiPP)、アルミニウムと過塩素酸カリウムを含む火薬(APP)、アルミニウムと酸化ビスマスを含む火薬(ABO)、アルミニウムと酸化モリブデンを含む火薬(AMO)、アルミニウムと酸化銅を含む火薬(ACO)、アルミニウムと酸化鉄を含む火薬(AFO)、もしくはこれらの火薬のうちの複数の組合せからなる火薬が挙げられる。これらの火薬は、点火直後の燃焼時には高温高圧のプラズマを発生させるが、常温となり燃焼生成物が凝縮すると気体成分を含まないために発生圧力が急激に低下する特性を示す。適切な射出液の射出が可能な限りにおいて、これら以外の火薬を点火薬として用いても構わない。
【0028】
ここで、点火器22から燃焼生成物が放出される、ボディ21の中央部21aの内部空間は燃焼室20aとされる。更に、中央部21aの外表面の一部には雄ネジ部26が形成されている。雄ネジ部26はアタッチメント30の雌ネジ部32と螺合するように構成され、両者の間に必要な締結力を確保できるように雄ネジ部26と雌ネジ部32の有効長が決定される。そして、中央部21aに隣接する先端部21bの内部空間は円筒状に形成され、そこをピストン40がスライド可能となるようにシール部材であるOリング25とともに配置されている。アクチュエータ20の作動前においてピストン40が先端部21bの内部空間に配置されている状態では、点火器22からの燃焼生成物による受圧面となる、ピストン40の基端側のフランジ面が燃焼室20a側に露出した状態となるとともに、ピストン40の先端は開口部27に収まった状態となっている。
【0029】
そして、点火器22が作動して燃焼生成物が燃焼室20aに放出され、そこの圧力が上昇するとピストン40の基端側のフランジ面が当該圧力を受けピストン40が先端側にスライドしていくことになる。すなわち、アクチュエータ20は、点火器22を作動源としピストン40を出力部とする機構を有している。なお、ピストン40が有する拡径したフランジ面の直径は開口部27の直径より大きいため、ピストン40のスライド量は制限され、以て、ピストン40がボディ21の先端部21bの先端面から突出する量も限られた量となる。なお、ピストン40は樹脂製でもよく、その場合、耐熱性や耐圧性が要求される部分は金属を併用してもよい。
【0030】
また、ピストン40に掛かる圧力を調整するための別法として、アクチュエータ20の燃焼室20aに、点火器22からの燃焼生成物によって燃焼しガスを発生させるガス発生剤を更に配置してもよい。その配置場所は、点火器22からの燃焼生成物に晒され得る場所である。また、別法としてガス発生剤を、国際公開公報01-031282号や特開2003-25950号公報等に開示されているように、点火器22内に配置してもよい。ガス発生剤の一例としては、ニトロセルロース98質量%、ジフェニルアミン0.8質量%、硫酸カリウム1.2質量%からなるシングルベース無煙火薬が挙げられる。また、エアバッグ用ガス発生器やシートベルトプリテンショナ用ガス発生器に使用されている各種ガス発生剤を用いることも可能である。燃焼室20a等に配置されるときのガス発生剤の寸法や大きさ、形状、特に表面形状を調整することで、該ガス発生剤の燃焼完了時間を変化させることが可能であり、これによりピストン40に掛かる圧力を所望の圧力となるように調整することができる。
【0031】
次に、
図3に基づいてアタッチメント30について説明する。なお、
図3の左図(a)はアタッチメント30の断面図であり、右図(b)はアタッチメント30の外観図である。アタッチメント30は、
図1に示すようにアクチュエータ20、プランジャ80、コンテナ70等が取り付けられる、注射器1の本体となる構成物である。アタッチメント30のボディ31には、例えば、公知のナイロン6-12、ポリアリレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンサルファイド又は液晶ポリマー等が使用できる。また、これら樹脂にガラス繊維やガラスフィラー等の充填物を含ませてもよく、ポリブチレンテレフタレートにおいては20~80質量%のガラス繊維を、ポリフェニレンサルファイドにおいては20~80質量%のガラス繊維を、また液晶ポリマーにおいては20~80質量%のミネラルを含ませることができる。
【0032】
ボディ31の内部空間のうち基端側から中央にかけての第1領域33は、
図1に示すようにアクチュエータ20が配置される領域である。そして、第1領域33の基端側の領域33aには、概ねアクチュエータ20の基端部21cが位置し、第1領域33の先端側であって領域33aより直径が小さい領域33bには、概ねアクチュエータ20の中央部21a及び先端部21bが位置する。また、領域33bのうち領域33aに近い部位の内壁面には雌ネジ部32が配置され、雌ネジ部32は上記の通りアクチュエータ20の中央部21aに設けられている雄ネジ部26と螺合するように形成されている。
【0033】
更に、ボディ31の内部空間においては第1領域33に連通する第2領域34が形成される。第2領域34は、
図1に示すように概ねプランジャ80が配置される領域であり、ボディ31の長手方向に沿って円筒状に形成される中空領域である。第2領域34の一方の端部は、第1領域33の領域33bに連通している。第2領域34の直径は、領域33bの直径よりも細くなって、プランジャ80が摺動可能な直径となっている。プランジャ80は、ピストン40から受けたエネルギーによって射出液を加圧する部材であり、その基端側にピストン40から力を受けるプランジャロッド50と、その先端側にゴム等の弾性部材で形成され射出液を押圧するストッパ部60を有する。なお、ボディ31には、アタッチメント30の側方の外表面から第2領域34まで貫通している貫通孔37が形成されている。ユーザは、この貫通孔37を通して、注射器1内のプランジャ80の状況(例えば、注射器1が作動前か作動後か等)を外部から確認することができる。
【0034】
更に、ボディ31の内部空間においては第2領域34に連通して第3領域35が形成される。第3領域35は、
図1に示すように概ねコンテナ70の一部が配置される領域であり、その一端が第2領域34に連通するとともにその他端がアタッチメント30の先端面に開口している。具体的には、第3領域35は、アタッチメント30の一部である壁部38と、端面35aとに囲まれることで画定される。端面35aは、プランジャ80が配置され摺動する第2領域34と交差する、アタッチメント30の表面の一部である。また、アタッチメント30の壁部38の内壁には、コンテナ70を取り付けるための雌ネジ部36が形成されている。コンテナ70は、後述するコンテナホルダ71を用いて雌ネジ部36を介して、アタッチメント30に対して取り付けられる。
【0035】
次に、コンテナホルダ71を用いた、アタッチメント30に対するコンテナ70の取り付けについて、
図4及び
図5に基づいて説明する。なお、
図4は、アタッチメント30の第3領域に35における、コンテナ70の取り付け状態を示す図である。
図5は、コンテナ70とコンテナホルダ71の寸法関係を説明するための図である。コンテナ70は、プランジャ80によって加圧される射出液を収容するとともに、その加圧された射出液を対象領域に対して射出口から射出するための流路を画定する部材であり、収容部に相当する。その点を考慮して、コンテナ70を形成する樹脂材料を採用でき、例えばアタッチメント30と同種の樹脂材料を使用できる。
【0036】
コンテナ70は、射出液を収容可能な空間であってプランジャ80のストッパ部60が推進可能に形成された収容空間75を有し、収容空間75とコンテナ70の外部に面する射出口77とを接続する流路76を有している。具体的には、コンテナ70は、収容空間75を画定する、中空の筒状の形状を有する胴部70aと、胴部70aの基端側で接続され胴部70aの径よりも拡径された基端部70bと、胴部70aの先端側で接続され流路76を画定する先端部70cとを有している。更に、先端部70cは、射出口77側の流路76の一部を内部に含む突出部70c2と、突出部70c2と胴部70aとを接続し、且つ、アタッチメント30の長手方向の中心軸に対して傾斜する先端側外表面70c3を含むテーパ部70c1を有するように構成されている。突出部70c2の外周は柱状に形成されている。また、先端側外表面70c3は、収容空間75に流路76が連通している連通部分が位置するコンテナ70の先端側の内表面75aに対応する、テーパ部70c1の外表面である、先端側外表面70c3は、アタッチメント30の長手方向において収容空間75よりも先端側に位置している。
【0037】
このように形成されるコンテナ70自体は、アタッチメント30の壁部38に形成されている雌ネジ部36と螺合する雄ネジ部は有していない。そこで、コンテナ70のアタッチメント30に対する取り付けは、コンテナホルダ71によって実現される。コンテナホルダ71は、コンテナ70を内包する空間を画定する胴部71aと、胴部71aの基端側に接続され雌ネジ部36と螺合する雄ネジが形成された螺合部71bと、胴部71aの先端側に接続され、コンテナ70の先端側外表面70c3に対して面接触する内表面71c1(
図5を参照)を有する接触部71cとを有している。また、
図5に示すように、接触部71cには、コンテナ70の突出部70c2が通過可能な開口71c2が設けられている。ここで、コンテナ70の胴部70aの断面積をA1(A1は、コンテナ70の軸方向に垂直な平面に対して胴部70aの外郭を投影したときの領域面積とも言うことができる。なお、本明細書では以降、単に「断面積A1」と称する。)とし、開口71c2の面積をA2とする。
【0038】
このような構成を有するコンテナホルダ71に対して、突出部70c2が開口71c2に通るようにコンテナ70を収容する。このときコンテナ70には注射目的物質が収容空間75に充填されるとともにプランジャ80も装填されている状態である。そして、このように収容した状態で、先端側ではコンテナ70の先端側外表面70c3とコンテナホルダ71の内表面71c1が面接触し、且つ、基端側ではコンテナ70の基端部70bとコンテナホルダ71の螺合部71bとが接触した状態となっている。そして、コンテナホルダ71にコンテナ70を収容した状態のまま、コンテナホルダ71の螺合部71bに形成されている雄ネジと、アタッチメント30の雌ネジ部36とを、コンテナ70の基端部70bの基端側の端面が、アタッチメント30の第3領域35の端面35aに接触するまで螺合させていく。その結果、当該螺合による締結力で、コンテナ70の先端側外表面70c3が、コンテナホルダ71によって先端側から基端側に向かって、すなわちプランジャ80の移動方向とは反対方向に押圧された状態で、コンテナ70がアタッチメント30に取り付けられる。また、このとき、プランジャ80がコンテナ70内の収容空間75とアタッチメント30内の第2領域34とに跨って配置された状態となる。
【0039】
このようにコンテナホルダ71によってコンテナ70がアタッチメント30に取り付けられた状態が
図1に示す状態である。この状態から、アクチュエータ20の点火器22が作動すると、そこで生じた燃焼生成物によりピストン40が加圧されるとともにプランジャ80が第2領域34を摺動する。その結果、収容空間75に収容されている射出液が加圧されて、流路76を通って射出口77より射出されることになる。また、コンテナ70に設けられた流路76の内径は、収容空間75の内径よりも細く形成されている。このような構成により、高圧に加圧された射出液が射出口77から外部に射出されることになる。
【0040】
なお、プランジャ80のストッパ部60の先端側の輪郭は、収容空間75と流路76とが接続する部位(収容空間75の最奥部)近傍の内表面75aの輪郭に概ね一致する形状となっている。これにより、射出液の射出時にプランジャ80が摺動し、収容空間75の最奥部に到達したときに、ストッパ部60とコンテナ70の内表面75aとの間に形成される隙間を可及的に小さくでき、射出液が収容空間75内に残り無駄となることを抑制することができる。ただし、ストッパ部60の形状は、本実施形態の注射器1において所望の効果が得られる限りにおいて、特定の形状に限定されるものではない。
【0041】
このような射出液の射出が行われるとき、極めて短時間にプランジャ80によって射出液の加圧が行われるため、コンテナ70に比較的大きな荷重が掛かる。しかし、本実施形態のコンテナ70の取付形態では、基端部70bの端面がアタッチメント30の端面35aに面接触して支持され、且つ、先端部70cの先端側外表面70c3がコンテナホルダ71の内表面71c1に面接触して押圧支持されている。そのため、コンテナ70の初期変形(プランジャ80の移動方向に沿った変形)を抑えることができ、以てコンテナ70の破損等を的確に回避できる。
【0042】
また、コンテナ70の初期変形抑制の観点から、好ましくは、コンテナホルダ71を形成する材料の引張強度は、コンテナ70を形成する材料の引張強度以上であることが好ましい。引張強度は、JIS等の所定の規格に従った引張試験を経て得られる、材料固有の破断強度を示すパラメータである。
【0043】
<変形例>
本願開示の注射器1におけるコンテナ70とコンテナホルダ71との相関に関連して、本実施形態の変形例について、
図6に基づいて説明する。
図6の上段(a)は、コンテナ70がコンテナホルダ71に収容される前の状態を表し、下段(b)はコンテナ70がコンテナホルダ71に収容された状態を表している。
図6に示す変形例では、下段(b)に示すように、コンテナホルダ71の接触部71cは、先端側外表面70c3の全部ではなく、テーパ部70c1と胴部70aとの接続部分から、コンテナ70の先端側外表面70c3の一部となる所定幅の領域に接触している。このようなコンテナ70とコンテナホルダ71との相関であっても、上述したようにコンテナホルダ71をアタッチメント30に螺合したときに接触部71cが先端側外表面70c3を好適に押圧し、点火器22の作動時におけるコンテナ70の初期変形を抑制することが可能となる。
【0044】
<第2の実施形態>
コンテナホルダ71を用いた、アタッチメント30に対するコンテナ70の取り付けの第2の実施形態について、
図7に基づいて説明する。
図7は、
図4と同様に、アタッチメント30の第3領域に35における、コンテナ70の取り付け状態を示す図であり、
図7に示す構成のうち
図4に示す構成と実質的に同一のものについては、同一の参照番号を付し、その詳細な説明を割愛する。
【0045】
図7に示すコンテナ70は、収容空間75を画定する、中空の筒状の形状を有する胴部70aと、胴部70aの基端側で接続された基端部70eと、胴部70aの先端側で接続され流路76を画定する先端部70cとを有している。そして、基端部70eには、後述するコンテナホルダ71の螺合部71dが有する雌ネジと螺合する雄ネジ部70fが形成されている。先端部70cの構成は、
図4に示す先端部70cと実質的に同じである。なお、コンテナ70の雄ネジ部70fは、アタッチメント30の雌ネジ部36とは螺合しない。一方で、コンテナホルダ71は、コンテナ70を内包する空間を画定する胴部71aと、胴部71aの基端側に接続され、アタッチメント30の雌ネジ部36と螺合する雄ネジとコンテナ70の雄ネジ部70fと螺合する雌ネジとが形成された螺合部71dと、胴部71aの先端側に接続され、コンテナ70の先端側外表面70c3に対して面接触する内表面71c1を有する接触部71cとを有している。接触部71cの構成は、
図4に示す接触部71cと実質的に同じである。
【0046】
本実施形態でも、コンテナホルダ71に対して、コンテナ70の突出部70c2がコンテナホルダ71に設けられている開口を通るようにコンテナ70を収容するが、このときにコンテナ70の雄ネジ部70fとコンテナホルダ71の螺合部71dの雌ネジとを螺合させて両者を締結する。これによりコンテナ70の先端側外表面70c3が、コンテナホルダ71の接触部71cの内表面71c1と接触し押圧された状態で、コンテナ70とコンテナホルダ71が一体化される。このときプランジャ80は、ストッパ部60がコンテナ70に収容された状態でコンテナ70に組み込まれている。そして、この状態のまま、コンテナホルダ71の螺合部71dの雄ネジと、アタッチメント30の雌ネジ部36とを螺合させていく。その結果、コンテナ70の先端側外表面70c3が、コンテナホルダ71によって先端側から基端側に向かって、すなわちプランジャ80の移動方向とは反対方向に押圧された状態で、コンテナ70がアタッチメント30に取り付けられる。
【0047】
このようなコンテナ70の取付形態においても、先端部70cの先端側外表面70c3がコンテナホルダ71の内表面71c1に面接触して押圧支持されている。そのため、点火器22の作動時のコンテナ70の初期変形を抑えることができ、以てコンテナ70の破損等を的確に回避できる。なお、本実施形態でも、コンテナホルダ71の接触部71cは、
図6に示すように、コンテナ70の先端側外表面70c3の一部と接触するように形成されてもよい。
【0048】
<変形例>
コンテナホルダ71の形状に関連して本実施形態の変形例について、
図8に基づいて説明する。
図8は、
図7と同様に、アタッチメント30の第3領域に35における、コンテナ70の取り付け状態を示す図であり、
図8に示す構成のうち
図7に示す構成と実質的に同一のものについては、同一の参照番号を付し、その詳細な説明を割愛する。
図8に示すコンテナホルダ71は、
図7に示すコンテナホルダ71と比べて、胴部710aと接触部710cの形状が異なる。
【0049】
本変形例においては、コンテナホルダ71の胴部710aは、コンテナ70を内包する空間を画定するものの胴部710aの内表面は、コンテナ70の胴部70aの外表面とは接触しておらず、所定の隙間が形成されている。また、接触部710cは、コンテナ70の先端側外表面70c3の一部である所定領域、すなわち胴部70aと先端部70cとの接続部分から先端側外表面70c3の全部を覆わない所定幅の領域と接触するように形成されている。
【0050】
このようなコンテナホルダ71を用いたコンテナ70の取付形態においても、先端部70cの先端側外表面70c3がコンテナホルダ710cの内表面に面接触して押圧支持されている。そのため、点火器22の作動時のコンテナ70の初期変形を抑えることができ、以てコンテナ70の破損等を的確に回避できる。
【0051】
<実施例>
ここで、好適なコンテナ70の初期変形抑制を実現するための、コンテナ70とコンテナホルダ71の具体的な寸法関係について説明する。コンテナ70に関して着目すべきパラメータが、胴部70aの断面積A1であり、コンテナホルダ71に関して着目すべきパラメータが、開口71c2の面積A2である。そして、本願の発明者は、断面積A1に対する面積A2の比率(以下、「面積比率A2/A1」と称する)が、所定の範囲に属する場合に、コンテナ70の初期変形が好適に抑制されることを見出した。
【0052】
具体的には、面積比率A2/A1が、0.10~0.74の範囲に属する数値であるのが好ましい。好ましくは、面積比率A2/A1が、0.15~0.67の範囲に属する数値であるのが好ましい。一方で、従来技術のように、コンテナホルダ71によってコンテナ70の胴部71aの側面のみを補強し、コンテナ70の先端側外表面70c3を押圧補強しない場合、換言すれば、コンテナホルダ71に内表面71c1を設けず面積比率A2/A1が実質的に1となる場合には、コンテナ70の破損等を十分に抑制することが困難であることも併せて確認された。
【0053】
本願の明細書に開示された各々の態様は、明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 :注射器(無針注射器)
20 :アクチュエータ
22 :点火器
30 :アタッチメント
33 :第1領域
34 :第2領域
35 :第3領域
35a :端面
40 :ピストン
70 :コンテナ
70a :胴部
70b :基端部
70c :先端部
70c1 :テーパ部
70c2 :突出部
70c3 :先端側外表面
70e :基端部
70f :雄ネジ部
71 :コンテナホルダ
71a :胴部
71b :螺合部
71c :接触部
71c2 :開口
71d :螺合部
710a :胴部
710c :接触部
75 :収容空間
76 :流路
77 :射出口
80 :プランジャ