(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ガラス組成物、ガラスフィラーとその製造方法、及びガラスフィラーを含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C03C 13/00 20060101AFI20241023BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20241023BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20241023BHJP
C03C 12/00 20060101ALI20241023BHJP
C03C 13/02 20060101ALI20241023BHJP
C03C 4/16 20060101ALI20241023BHJP
C03C 3/097 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C03C13/00
C03C3/091
C03C3/093
C03C12/00
C03C13/02
C03C4/16
C03C3/097
(21)【出願番号】P 2022530591
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 JP2021021815
(87)【国際公開番号】W WO2021251399
(87)【国際公開日】2021-12-16
【審査請求日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2020100720
(32)【優先日】2020-06-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004008
【氏名又は名称】日本板硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004314
【氏名又は名称】弁理士法人青藍国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100107641
【氏名又は名称】鎌田 耕一
(72)【発明者】
【氏名】藤原 浩輔
【審査官】若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093959(JP,A)
【文献】特開昭59-009992(JP,A)
【文献】特開2004-107112(JP,A)
【文献】特開平09-268025(JP,A)
【文献】特開2003-137590(JP,A)
【文献】特開平09-002839(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017694(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で表示して、
50≦SiO
2≦65
20≦B
2O
3≦30
5≦Al
2O
3≦12.68
を含み、
MgO及びCaOからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
Li
2O、Na
2O及びK
2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
を更に含み、
0.1≦(MgO+CaO)≦4
0.7≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、及び
0.80≦MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立
し、
BaOの含有率が0.5%以下である、ガラス組成物。
【請求項2】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
55≦SiO
2≦65
20≦B
2O
3≦30
5≦Al
2O
3≦12.68
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)≦4
0.7≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、及び
0.80≦MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項3】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
50≦SiO
2≦65
20≦B
2O
3≦30
5≦Al
2O
3≦12.68
0≦F
2≦0.5
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)≦4
0.7≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、及び
0.80≦MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項4】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
50≦SiO
2≦65
20≦B
2O
3≦30
5≦Al
2O
3≦12.68
0.1≦TiO
2≦5
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)≦4
0.1≦(MgO+CaO+ZnO)≦6
0.7≦(Li
2O+Na
2O+K
2O)≦4、及び
0.80≦MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する、請求項1に記載のガラス組成物。
【請求項5】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0.1≦Li
2O≦4
を含む、請求項1~
4のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項6】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0.18≦Li
2O≦4
を含む、請求項
5に記載のガラス組成物。
【請求項7】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦T-Fe
2O
3≦1.5、
を更に含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、T-Fe
2O
3は、Fe
2O
3に換算した全酸化鉄である。
【請求項8】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦P
2O
5≦5、
を更に含む、請求項1~
7のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項9】
前記ガラス組成物がF
2を実質的に含まない、請求項1~
8のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項10】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦ZnO≦5、
を更に含む、請求項1~
9のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項11】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦BaO≦
0.1、
を更に含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項12】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦SrO≦5、
を更に含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項13】
前記ガラス組成物が、質量%で表示して、
0≦ZrO
2≦5、
を更に含む、請求項1~
12のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項14】
前記ガラス組成物の周波数1GHzにおける誘電率が4.6以下である、請求項1~
13のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項15】
前記ガラス組成物の作業温度が1450℃以下である、請求項1~
14のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、前記作業温度は、前記ガラス組成物の粘度が1000dPa・secとなる温度である。
【請求項16】
前記ガラス組成物について、作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが0℃以上である、請求項1~
15のいずれか1項に記載のガラス組成物。
ただし、前記作業温度は、前記ガラス組成物の粘度が1000dPa・secとなる温度である。
【請求項17】
JIS R3502:1995に定められたアルカリ溶出試験に準拠して測定した前記ガラス組成物のアルカリ溶出量が0.001~0.40mgである、請求項1~
16のいずれか1項に記載のガラス組成物。
【請求項18】
請求項1~
17のいずれか1項に記載のガラス組成物を含む、ガラスフィラー。
【請求項19】
鱗片状ガラス、チョップドストランド、ミルドファイバー、ガラス粉末、ガラスビーズ、フラットファイバー、及びファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種に該当する、請求項
18に記載のガラスフィラー。
【請求項20】
鱗片状ガラスである、請求項
18に記載のガラスフィラー。
【請求項21】
チョップドストランドである、請求項
18に記載のガラスフィラー。
【請求項22】
ミルドファイバーである、請求項
18に記載のガラスフィラー。
【請求項23】
ファインフレークである、請求項
18に記載のガラスフィラー。
【請求項24】
請求項
18~
23のいずれか1項に記載のガラスフィラーと、熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物。
【請求項25】
請求項1~
17のいずれか1項に記載のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含む、
ガラスフィラーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス組成物に関する。また、本発明は、ガラスフィラー、ガラスフィラーの製造方法、及びガラスフィラーを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器が備える各種部品には、電気絶縁部材及び機構部材として、樹脂組成物が広く使用されている。電気絶縁部材の例は、SMT(surface mount technology)、FPC(flexible printed circuits)、ボード間、CPU(central processing unit)ソケット、メモリカード、カードエッジ、光コネクタ等に用いるコネクタハウジング;LCD(liquid crystal display)バックライト、コイル、フラット、トランス、磁気ヘッド等に用いるリアクタンス用ボビン;リレーケース、リレーベーススイッチ、リフローディップスイッチ、タクトスイッチ等に用いる開閉器;センサーケース、コンデンサケーシング、ボリュームケーシング、トリマーケーシングである。機構部品の例は、光ピックアップ用のレンズホルダ及びピックアップベース、マイクロモータ用の絶縁体及び端子、並びにレーザプリンタ用ドラムである。樹脂組成物は、FPC用ベースフィルム、銅張積層板用ベースフィルム等のフィルムとしても使用されている。また、電子機器が備えるプリント回路板(printed circuit board)の一種にも、樹脂組成物から構成される基板がある。電子部品が実装される前のプリント配線板(printed wiring board)にも、樹脂組成物から構成される基板がある。以下、本明細書では、プリント回路板及びプリント配線板の双方を合わせて、「プリント基板(printed board)」と記載する。
【0003】
上記の樹脂組成物は、通常、熱可塑性樹脂と無機充填材とを含み、必要に応じ、硬化剤、改質剤等を更に含む。無機充填材としては、ガラスフィラーが使用されることがある。代表的なガラスフィラーは鱗片状ガラスである。近年、電子機器の小型化の要求と、高機能化を目的とした薄型化の要求と、に応えるため、樹脂組成物及びその構成材料には低誘電率化が求められている。
【0004】
プリント基板にはガラス繊維が更に含まれることがある。このガラス繊維にも低誘電率化が求められている。特許文献1~3には、低誘電率のガラス組成物から構成されたガラス繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開昭62-226839号公報
【文献】国際公開第2017/187471号
【文献】国際公開第2018/216637号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無機充填材として使用されるガラスフィラーには、低誘電率であると共に、優れた耐水性が求められている。しかし、低誘電率のガラス組成物について、耐水性の向上は容易ではない。また、特許文献1~3では、耐水性について考慮されていない。
【0007】
以上に鑑み、本発明は、低誘電率であると共に優れた耐水性を示しうるガラスフィラーの製造に適したガラス組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
質量%で表示して、
50≦SiO2≦65
20≦B2O3≦30
5≦Al2O3≦20
を含み、
MgO及びCaOからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
Li2O、Na2O及びK2Oからなる群から選ばれる少なくとも1種と、
を更に含み、
0.1≦(MgO+CaO)<5
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、及び
0.50<MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する、ガラス組成物、
を提供する。
【0009】
本発明は、別の側面から、
上記本発明のガラス組成物を含む、ガラスフィラー、
を提供する。
【0010】
本発明は、別の側面から、
上記本発明のガラスフィラーと、熱可塑性樹脂とを含む樹脂組成物、
を提供する。
【0011】
本発明は、別の側面から、
上記本発明のガラス組成物を熔融する工程と、熔融した前記ガラス組成物をガラスフィラーへと成形する工程と、を含む、ガラスフィラーの製造方法、
を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、低誘電率であると共に優れた耐水性を示しうるガラスフィラーの製造に適したガラス組成物を提供できる。本発明のガラス組成物によれば、例えば、樹脂組成物の誘電率を低く抑えながら、配合により樹脂組成物の諸特性を改善することに適したガラスフィラーを製造できる。上記諸特性の改善は、例えば、強度、耐熱性、寸法安定性の向上;線熱膨張係数の低下及び異方性の低減;成形時の収縮率の異方性の低減である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】
図1Aは、本発明のガラスフィラーの1種である鱗片状ガラスの一例を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図2は、鱗片状ガラスを製造する装置及び方法の一例を説明するための模式図である。
【
図3】
図3は、鱗片状ガラスを製造する装置及び方法の別の一例を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、チョップドストランドの製造に使用できる紡糸装置の一例を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、
図4の紡糸装置で得られたストランド巻体からチョップドストランドを製造する装置の一例を説明するための模式図である。
【
図6】
図6は、フラットファイバーの一例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、フラットファイバーの別の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において各成分の含有率を示す「%」表示は、全て質量%である。「実質的に含まれない」とは、含有率が0.1質量%未満、好ましくは0.07質量%未満、更に好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満、最も好ましくは0.005質量%未満を意味する。上記文言における「実質的に」とは、上記を限度として工業原料、ガラス製造装置及びガラス成形体の製造装置等から不可避的に混入する不純物を許容する趣旨である。各成分の含有率、特性及びその他の好ましい範囲は、以下において個別に記載する上限及び下限を任意に組み合わせて把握できる。
【0015】
誘電率は、厳密には比誘電率を意味するが、本明細書では慣用に従って、単に誘電率と表記する。誘電率は、室温(25℃)での値である。
【0016】
以下の説明は、本発明を限定する趣旨ではなく、その好適な形態を示す意味で提示されている。
【0017】
[ガラス組成物の成分]
(SiO2)
SiO2は、ガラスの骨格を形成する成分であり、主成分(含有率が最も大きい成分)である。SiO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有すると共に、ガラスの誘電率を下げる作用を有する。SiO2の含有率が50%以上65%以下では、ガラスフィラーの製造が難しくなるような失透温度の上昇が抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内に誘電率を調整できる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。SiO2の含有率の下限は、51%以上、52%以上、53%以上、54%以上、55%以上、更には55%超であってもよい。SiO2の含有率の上限は、64%未満、63%以下、62%以下、62%未満、61%以下、60%以下、59%以下、更には58%以下であってもよい。
【0018】
(B2O3)
B2O3は、ガラスの骨格を形成する成分である。B2O3は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有すると共に、ガラスの誘電率を下げる作用を有する。一方で、B2O3は、ガラスの熔融時に揮発しやすく、その含有率が過大となると、ガラスとして十分な均質性が得られ難くなる。また、過度のB2O3の含有は、ガラスの耐水性を低下させる。B2O3の含有率が20%以上30%以下では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇が抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内に誘電率を調整できる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。更に、上記範囲では、ガラスの耐水性が高くなる。B2O3の含有率の下限は、20%超、21%以上、22%以上、23%以上、24%以上、25%以上、26%以上、更には26%超であってもよい。B2O3の含有率の上限は、30%未満、29.5%以下、29%以下、28.5%以下、更には28%以下であってもよい。
【0019】
(SiO2-B2O3)
誘電率がより低く耐水性がより高いガラス組成物を得るために、SiO2の含有率からB2O3の含有率を差し引いた値であるSiO2-B2O3を、26%以上、27%以上、28%以上、29%以上、更には30%以上に調整してもよい。
【0020】
(Al2O3)
Al2O3は、ガラスの骨格を形成する成分である。Al2O3は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有すると共に、ガラスの耐水性を向上させる作用を有する。また、Al2O3は、ガラスの誘電率を調整する成分である。Al2O3の含有率が5%以上20%以下では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇が抑えられると共に、ガラスの耐水性が高くなる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。Al2O3の含有率の下限は、6%以上、8%以上、9%以上、更には10%以上であってもよい。Al2O3の含有率の上限は、18%以下、16%以下、15.5%以下、15.3%以下、15%以下、14.5%以下、14%以下、13.5%以下、更には13%以下であってもよい。失透温度を下げたい場合、又は作業温度と失透温度との温度差ΔTを確実に大きくしたい場合に適したAl2O3の含有率は、13%以下である。なお、温度差ΔTが大きいほど、ガラスフィラーの成形性が向上する。
【0021】
(MgO、CaO)
MgO及びCaOは、ガラスの耐熱性を維持しつつ、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有する。また、MgO及びCaOは、ガラスの耐水性を向上させる作用を有すると共に、ガラスの誘電率を調整する成分である。
【0022】
ガラスフィラーの誘電率及び耐水性の制御を重視する場合、MgO及びCaOの含有率の和であるMgO+CaOが重要である。MgO+CaOが0.1%以上5%未満では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇が抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内に誘電率を調整できる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。更に、上記範囲では、ガラスの耐水性が高くなる。MgO+CaOの下限は、0.5%以上、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.2%以上、2.4%以上、2.5%以上、2.8%以上、2.9%以上、3%以上、3.2%以上、3.5%以上、更には3.5%超であってもよい。MgO+CaOの上限は、4.5%以下、更には4%以下であってもよい。
【0023】
誘電率の低減の観点からは、CaOよりもMgOの添加が有利である。また、耐水性の向上の観点からも、CaOよりもMgOの添加が有利である。このため、MgO+CaOに対するMgOの割合(質量基準)であるMgO/(MgO+CaO)は、0.50超1.00以下とする。MgO/(MgO+CaO)が0.50超では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇が抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内に誘電率を調整できる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることがなく、原料を熔融する際の均一性が増す。更に、上記範囲では、ガラスの耐水性が高くなる。MgO/(MgO+CaO)の下限は、0.55以上、0.60以上、0.65以上、0.70以上、0.75以上、0.80以上、更には0.85以上であってもよい。MgO/(MgO+CaO)の上限は、0.99以下、更には0.95以下であってもよい。低い誘電率を維持しながらガラスの耐水性を確実に向上させたい場合に適したMgO/(MgO+CaO)の範囲は、0.85以上であり、0.90以上であってもよい。
【0024】
MgOについて、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させる。MgOの含有率は、例えば、0.1%以上5%未満である。上記範囲では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇がより確実に抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内への誘電率の調整がより確実となる。また、上記範囲では、ガラスの融点が過度に高くなることが抑えられ、原料を熔融する際の均一性をより確実に向上できる。更に、上記範囲では、ガラスの耐水性をより確実に向上できる。MgOの含有率の下限は、1%以上、1.5%以上、1.8%以上、2%以上、2.1%以上、2.3%以上、2.5%以上、2.7%以上、更には3%以上であってもよい。MgOの含有率の上限は、4.5%以下、4%以下、更には3.5%以下であってもよい。
【0025】
CaOについて、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させる。CaOの含有率の下限は、0.1%以上、更には0.2%以上であってもよい。CaOの含有率の上限は、2.5%未満、2%以下、1.5%以下、1.2%以下、1%以下、0.75%以下、0.7%以下、更には0.5%以下であってもよい。低い誘電率を維持しながらガラスの耐水性を確実に向上させたい場合に適したCaOの含有率は、0.5%以下である。
【0026】
(SrO)
ガラス組成物は、SrOを含むことができる。SrOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有しうる。一方で、過度のSrOの含有はガラスの誘電率を上昇させる。SrOの含有率の上限は、5%以下、3.5%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、0.5%未満、更には0.1%以下であってもよい。SrOは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0027】
(BaO)
ガラス組成物は、BaOを含むことができる。BaOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有しうる。一方で、過度のBaOの含有はガラスの誘電率を上昇させる。BaOの含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%以下、1%未満、0.5%以下、更には0.1%以下であってもよい。BaOは、実質的に含まれていなくてもよい。ガラス原料の均一な熔融及びガラス組成物の安定的な製造を特に重要視する場合は、BaOの含有率の下限を0.1%以上としてもよい。
【0028】
(ZnO)
ガラス組成物は、ZnOを含むことができる。ZnOは、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有しうる。また、ZnOは、ガラスの誘電率を調整する作用を有しうる。一方で、過度のZnOの含有はガラスの誘電率を上昇させる。ZnOの含有率の下限は、0.1%以上であってもよい。ZnOの含有率の上限は、5%以下、4%以下、3.5%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、1%未満、0.5%以下、更には0.1%以下であってもよい。ZnOは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0029】
(MgO+CaO+ZnO)
ZnOが含まれる場合、ガラスフィラーの誘電率を重視する観点からは、MgO、CaO及びZnOの含有率の和であるMgO+CaO+ZnOを制御してもよい。MgO+CaO+ZnOは、0.1%以上6%以下であってもよい。上記範囲では、ガラスフィラーの製造が難しくなるようなガラスの失透温度の上昇がより確実に抑えられると共に、樹脂組成物への配合に適した範囲内への誘電率の調整がより確実となる。また、上記範囲ではガラスの融点が過度に高くなることが抑えられ、原料を熔融する際の均一性をより確実に向上できる。MgO+CaO+ZnOの下限は、1%以上、1.5%以上、2%以上、2.5%以上、2.8%以上、2.9%以上、3%以上、3.2%以上、3.3%以上、更には3.5%以上であってもよい。MgO+CaO+ZnOの上限は、6%以下、5.5%以下、5%未満、4.5%以下、更には4%以下であってもよい。
【0030】
(Li2O、Na2O、K2O)
アルカリ金属酸化物であるLi2O、Na2O及びK2Oは、ガラスの耐熱性を維持しつつ、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有する。一方で、アルカリ金属酸化物の過度の含有は、ガラスの誘電率を上昇させ、耐水性を低下させる。このため、アルカリ金属酸化物の含有率の合計Li2O+Na2O+K2Oは、0%以上4%以下とする。Li2O+Na2O+K2Oの下限は、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、0.5%以上、0.5%超、0.6%以上、0.7%以上、更には0.7%超であってもよい。Li2O+Na2O+K2Oの上限は、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、更には0.9%以下であってもよい。
【0031】
Li2Oについて、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させると共に、耐水性を低下させる。Li2Oの含有率の下限は、0.1%以上、0.2%以上、0.3%以上、0.4%以上、更には0.5%以上であってもよい。Li2Oの含有率の上限は、4%以下、3%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、更には0.9%以下であってもよい。
【0032】
Na2Oについて、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させると共に、耐水性を低下させる。また、Na2Oによる誘電率の上昇は、Li2Oに比べて大きい。Na2Oの含有率の上限は、4%以下、2%以下、1.5%以下、1%以下、0.5%以下、0.3%以下、更には0.2%以下であってもよい。
【0033】
K2Oについて、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させると共に、耐水性を低下させる。また、K2Oによる誘電率の上昇は、Li2Oに比べて大きい。K2Oの含有率の上限は、4%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、更には0.1%未満であってもよい。K2Oは、実質的に含まれていなくてもよい。
【0034】
(TiO2)
ガラス組成物は、TiO2を含むことができる。TiO2は、ガラスの熔融性及び化学的耐久性を向上させると共に、ガラスの紫外線吸収特性を向上させる作用を有しうる。一方で、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させる。TiO2の含有率の下限は、0.1%以上であってもよい。TiO2の含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%未満、0.9%以下、0.8%以下、0.7%以下、0.5%未満、0.4%以下、0.3%以下、0.2%以下、更には0.1%以下であってもよい。上記範囲において、TiO2の含有に起因する、ガラスフィラーの製造に影響を与えるような熔融ガラスの失透温度の上昇を抑制できる。TiO2は、実質的に含まれていなくてもよい。
【0035】
(ZrO2)
ガラス組成物は、ZrO2を含むことができる。ZrO2は、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有しうる。一方で、過度の含有はガラスの誘電率を上昇させる。ZrO2の含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%未満、0.5%未満、0.2%以下、更には0.1%以下であってもよい。上記範囲において、ZrO2の含有に起因する、ガラスフィラーの製造に影響を与えるような熔融ガラスの失透温度の上昇を抑制できる。ZrO2の含有率の下限は、0.1%以上、更には0.15%以上であってもよい。ZrO2は、実質的に含まれていなくてもよい。
【0036】
(Fe)
ガラス組成物は、Feを含むことができる。ガラス中のFeは、通常、Fe2+及び/又はFe3+の状態で存在する。Fe3+はガラスの紫外線吸収特性を高める作用を有しうる。Fe2+はガラスの熱線吸収特性を高める作用を有しうる。Feは、意図的に含ませなくとも、工業用原料により不可避的に混入する場合がある。Feの含有が少なければ、ガラスの着色を防止できる。Feの含有率の上限は、T-Fe2O3(T-Fe2O3は、Fe2O3に換算した全酸化鉄)により表示して、5%以下、2%以下、1.8%未満、1.5%以下、1%未満、0.5%未満、更には0.2%以下であってもよい。Feの含有率の下限は、T-Fe2O3により表示して、0.1%以上であってもよい。Feは、T-Fe2O3により表示して、実質的に含まれていなくてもよい。
【0037】
(P2O5)
ガラス組成物は、P2O5を含むことができる。P2O5は、ガラスの骨格を形成する成分であると共に、ガラス形成時の失透温度及び粘度を調整する作用を有しうる。また、P2O5は、ガラスの誘電率を調整する作用を有しうる。ただし、一般に、P2O5の含有率が2%を超えると、ガラスを熔融する際に熔融窯及び蓄熱窯の炉壁が浸食され、窯の寿命が著しく低下するとされる。P2O5の含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%未満、0.5%未満、0.3%以下、0.2%以下、更には0.1%未満であってもよい。P2O5は、実質的に含まれていなくてもよい。
【0038】
(F2、Cl2)
ガラス組成物は、F2及び/又はCl2を含むことができる。F2及びCl2は、ガラス組成物に含まれることで、ガラスの融点を過度に高めることなく、原料の熔融時におけるガラスの均一性を向上させる。ただし、F2及びCl2は、揮発し易いため、熔融時に飛散する可能性があると共に、ガラス中の含有量を管理し難いという問題もある。F2の含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、更には0.1%以下であってもよい。F2は、実質的に含まれていなくてもよい。Cl2の含有率の上限は、5%以下、2%以下、1%以下、0.5%以下、0.2%以下、更には0.1%以下であってもよい。Cl2は、実質的に含まれていなくてもよい。
【0039】
(その他の成分)
ガラス組成物は、その他の成分として、La2O3、WO3、Nb2O5、Y2O3、MoO3、Ta2O5、MnO2及びCr2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種を、それぞれ0%以上5%以下の範囲で含むことができる。各成分について許容される含有率の上限は、2%未満、1%未満、0.5%未満、更には0.1%以下であってもよい。各成分の含有率の合計について許容される上限は、5%以下、2%未満、1%未満、0.5%未満、更には0.1%以下であってもよい。上記群から選ばれる任意の一成分は、実質的に含まれていなくてもよい。また、上記群から選ばれる二以上の成分は、任意の組み合わせで、実質的に含まれていなくてもよい。
【0040】
ガラス組成物は、添加物として、Br2、I2、SnO2、CeO2、As2O3及びSb2O3からなる群から選ばれる少なくとも1種を、それぞれ0%以上1%以下の範囲で含むことができる。各成分について許容される含有率の上限は、0.5%未満、0.2%未満、更には0.1%未満であってもよい。各成分の含有率の合計について許容される上限は、1%以下、0.5%未満、0.2%未満、更には0.1%未満であってもよい。上記群から選ばれる任意の一成分は、実質的に含まれていなくてもよい。また、上記群から選ばれる二以上の成分は、任意の組み合わせで、実質的に含まれていなくてもよい。
【0041】
ガラス組成物は、H2O、OH、H2、CO2、CO、He、Ne、Ar及びN2からなる群から選ばれる少なくとも1種を、それぞれ0%以上0.1%以下の範囲で含むことができる。各成分について許容される含有率の上限は、0.05%未満、0.03%未満、更には0.01%未満であってもよい。各成分の含有率の合計について許容される上限は、0.1%以下、0.05%未満、0.03%未満、更には0.01%未満であってもよい。上記群から選ばれる任意の一成分は、実質的に含まれていなくてもよい。また、上記群から選ばれる二以上の成分は、任意の組み合わせで、実質的に含まれていなくてもよい。
【0042】
ガラス組成物は、微量の貴金属元素を含むことができる。貴金属元素の例は、Pt、Rh、Au及びOsである。貴金属元素の含有率は、それぞれ、0%以上0.1%以下である。各成分について許容される含有率の上限は、0.1%未満、0.05%未満、0.03%未満、更には0.01%未満であってもよい。各成分の含有率の合計について許容される上限は、0.1%未満、0.05%未満、0.03%未満、更には0.01%未満であってもよい。各成分は、実質的に含まれていなくてもよい。
【0043】
ガラス組成物は、上述した成分及び含有率の任意の組み合わせから実質的になってもよい。「実質的になる」における「実質的に」とは、含有率が0.1質量%未満、好ましくは0.07質量%未満、更に好ましくは0.05質量%未満、特に好ましくは0.01質量%未満、最も好ましくは0.005質量%未満の不純物の含有を許容する趣旨である。
【0044】
(好ましい組成の例示)
好ましい一形態におけるガラス組成物は、
質量%で表示して、
55≦SiO2≦65
20≦B2O3≦30
5≦Al2O3≦20
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)<5
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、及び
0.75≦MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する。
【0045】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、
質量%で表示して、
50≦SiO2≦65
20≦B2O3≦30
5≦Al2O3≦20
0≦F2≦0.5
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)<5
0.1≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、及び
0.50<MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する。
【0046】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、
質量%で表示して、
50≦SiO2≦65
20≦B2O3≦30
5≦Al2O3≦15
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)<5
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、及び
0.50<MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する。
【0047】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、
質量%で表示して、
50≦SiO2≦65
20≦B2O3≦30
5≦Al2O3≦20
0.1≦TiO2≦5
を含み、
0.1≦(MgO+CaO)<5
0.1≦(MgO+CaO+ZnO)≦6
0≦(Li2O+Na2O+K2O)≦4、及び
0.50<MgO/(MgO+CaO)≦1.00
が成立する。
【0048】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0.1≦Li2O≦4を含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0049】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0≦P2O5≦5を更に含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0050】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、F2を実質的に含まない。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0051】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0≦ZnO≦5を更に含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0052】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0≦BaO≦5を更に含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0053】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0≦SrO≦5を更に含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0054】
好ましい別の一形態におけるガラス組成物は、質量%で表示して、0≦ZrO2≦5を更に含む。本形態のガラス組成物は、上記好ましい各形態のガラス組成物であってもよい。
【0055】
[ガラス組成物の特性]
本発明のガラス組成物がとりうる特性について説明する。本発明のガラス組成物を含むガラスフィラーは、以下に示す各特性を有しうる。
【0056】
(誘電率)
ガラスフィラーを樹脂組成物に配合させる場合、ガラスフィラーを構成するガラス組成物の周波数1GHzにおける誘電率が4.6以下であれば、樹脂組成物の誘電特性の損失を抑制できる。好ましい一形態において、ガラス組成物の周波数1GHzにおける誘電率は、4.6以下、4.5以下、4.4以下、更には4.3以下であってもよい。周波数1GHzにおける誘電率の下限は、3.5以上、3.8以上、3.9以上、更には4.0以上であってもよい。周波数1GHzにおける誘電率が3.5以上であれば、ガラス組成の調整が比較的容易となる。
【0057】
(熔融特性)
熔融ガラスの粘度が1000dPa・sec(1000poise)となるときの温度は、作業温度と呼ばれ、ガラスの成形に最も適する温度である。ガラスフィラーとして鱗片状ガラス又はガラス繊維を製造する場合、ガラスの作業温度が1100℃以上であれば、鱗片状ガラスの厚さ又はガラス繊維径のばらつきを小さくできる。作業温度が1450℃以下であれば、ガラスを熔融する際の燃料費を低減でき、ガラス製造装置が熱による腐食を受け難くなり、装置寿命が延びる。好ましい一形態において、ガラス組成物の作業温度の下限は、1100℃以上、1150℃以上、1200℃以上、1250℃以上、1300℃以上、更には1320℃以上であってもよい。作業温度の上限は、1450℃以下、1420℃以下、1410℃以下、1400℃以下、1390℃以下、更には1380℃以下であってもよい。
【0058】
作業温度から失透温度を差し引いた温度差ΔTが大きいほど、ガラス成形時に失透が生じ難く、均質なガラスフィラーを高い歩留りで製造できる。言い換えると、温度差ΔTが大きいほど、ガラスフィラーの成形性(量産性)が向上する。好ましい一形態において、ガラス組成物のΔTは0℃以上、17℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、75℃以上、80℃以上、90℃以上、100℃以上、125℃以上、150℃以上、170℃以上、190℃以上、更には200℃以上であってもよい。一方、ΔTが500℃以下であれば、ガラス組成の調整が比較的容易となる。ΔTは500℃以下、400℃以下、300℃以下、250℃以下、更には200℃以下であってもよい。
【0059】
(耐水性)
耐水性の指標としてアルカリ溶出量を採用できる。アルカリ溶出量が小さいほど、ガラスの耐水性は高くなる。ガラスフィラーを樹脂組成物に配合させる場合、ガラス組成物のアルカリ溶出量が0.40mg以下であれば、水による樹脂組成物の強度低下が抑制される。好ましい一形態において、ガラス組成物のアルカリ溶出量の上限は、0.40mg以下、0.37mg以下、0.35mg以下、0.34mg以下、更には0.33mg以下であってもよい。アルカリ溶出量の下限は、通常、0.001mg程度であり、0.01mg以上、更には0.03mg以上であってもよい。
【0060】
[ガラスフィラー]
本発明のガラスフィラーは、本発明のガラス組成物を含む。ガラスフィラーの形態の例は、鱗片状ガラス、チョップドストランド、ミルドファイバー、ガラス粉末、ガラスビーズ、フラットファイバー及びファインフレークからなる群から選ばれる少なくとも1種である。ただし、ガラスフィラーの形態は、上記例に限定されない。また、上記各形態は、互いに厳密に区別されるものではない。互いに異なる形態を有する2種以上のガラスフィラーを組み合わせて、例えば混合物を、フィラーとして用いてもよい。以下、各形態について説明する。
【0061】
鱗片状ガラスは、典型的には、平均厚さtが0.1μm以上15μm以下、平均粒子径aが0.2μm以上15000μm以下、アスペクト比(平均粒子径a/平均厚さt)が2以上1000以下の薄片状の粒子である(
図1A及び
図1B参照;
図1A及び
図1Bには、鱗片状ガラス1の一例が示されている)。鱗片状ガラスの平均厚さtは、少なくとも100枚の鱗片状ガラスを抜き出し、抜き出した各々の鱗片状ガラスについて走査型電子顕微鏡(SEM)等の拡大観察手段を用いて厚さを測定し、測定した厚さの平均値を算出して評価できる。鱗片状ガラスの平均粒子径aは、レーザー回折散乱法により測定された粒度分布において累積体積百分率が50%に相当する粒子径(D50)により定めることができる。
【0062】
鱗片状ガラスは、公知のブロー法、カップ法等により得ることができる。ブロー法を用いる製造装置を
図2に示す。この装置では、耐火窯槽12において熔融された所定の組成を有するガラス素地11がブローノズル15に送り込まれたガスによって風船状に膨張し、中空状ガラス膜16となる。この中空状ガラス膜16を一対の押圧ロール17で粉砕することにより、鱗片状ガラス1が得られる。
【0063】
カップ法を用いる製造装置を
図3に示す。この装置では、ノズル21から回転カップ22に流し込まれた熔融状態にあるガラス素地11が、回転カップ22の回転により生じた遠心力によって回転カップ22の上縁部から放射状に流出する。流出した素地11は、上下に配置された環状プレート23,23を通して、空気流により吸引され、環状サイクロン型捕集機24に導入される。環状プレート23,23を通過する間にガラスが薄膜として冷却、固化し、さらに微小片に破砕されて、鱗片状ガラス1が得られる。
【0064】
チョップドストランドは、ガラス繊維を短く切断した形状を有する。チョップドストランドの繊維径は、例えば1~50μmであり、そのアスペクト比は、例えば2~1000である。チョップドストランドの断面の形状は円形であってもなくてもよく、例えば扁平状の断面であってもよい。チョップドストランドの繊維径は、当該ストランドの断面と同じ面積を有する円の直径として定められる。チョップドストランドのアスペクト比は、繊維長さを繊維径で除して求めることができる。チョップドストランドは、例えば、
図4及び
図5に示す装置を用いて製造できる。
【0065】
図4に示すように、耐火窯槽内で熔融され、所定の組成を有するガラス素地は、底部に多数(例えば2400本)のノズルを有するブッシング30から引き出され、多数のガラスフィラメント31として引き出される。ガラスフィラメント31には、冷却水が吹きかけられた後、バインダアプリケータ32の塗布ローラ33により、バインダー(集束剤)34が塗布される。バインダー34が塗布された多数のガラスフィラメント31は、補強パッド35により、各々が例えば800本程度のガラスフィラメント31からなる3本のストランド36として集束される。各ストランド36は、トラバースフィンガ37で綾振りされつつコレット38に嵌められた円筒チューブ39に巻き取られる。ストランド36が巻き取られた円筒チューブ39をコレット38から外して、ケーキ(ストランド巻体)40が得られる。
【0066】
次に、
図5に示すように、クリル41にケーキ40を収容し、ケーキ40からストランド36を引き出して、集束ガイド42によりストランド束43として束ねられる。ストランド束43に、噴霧装置44より水又は処理液が噴霧される。ストランド束43を切断装置45の回転刃46で切断し、チョップドストランド47が得られる。
【0067】
ミルドファイバーは、ガラス繊維を粉末状に切断した形状を有する。ミルドファイバーの繊維径は、例えば1~50μmであり、アスペクト比は、例えば2~500である。ミルドファイバーの断面の形状は円形であってもなくてもよく、例えば扁平状の断面であってもよい。ミルドファイバーの繊維径は、当該ストランドの断面と同じ面積を有する円の直径として定められる。ミルドファイバーのアスペクト比は、繊維長さを繊維径で除して求めることができる。ミルドファイバーは、公知の方法により得ることができる。
【0068】
ガラス粉末は、ガラスを粉砕して製造できる。ガラス粉末の平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラス粉末の粒子径は、ガラス粉末の粒子と同じ体積を有する球体の直径として定められる。ガラス粉末の平均粒子径は、少なくとも0.1gのガラス粉末についてレーザー回折散乱法による粒度分布測定により評価したD50(累積体積百分率が50%に相当する粒子径)により定めることができる。ガラス粉末は、公知の方法により得ることができる。
【0069】
ガラスビーズは、球形又は略球形の形状を有する。ガラスビーズの平均粒子径は、例えば1~500μmである。ガラスビーズの粒子径は、ガラスビーズの粒子と同体積の球体の直径として定められる。ガラスビーズの平均粒子径は、少なくとも0.1gのガラスビーズについてレーザー回折散乱法による粒度分布測定により評価したD50(累積体積百分率が50%に相当する粒子径)により定めることができる。ガラスビーズは、公知の方法により得ることができる。
【0070】
フラットファイバーは、断面が楕円等の偏平な形状であるガラス繊維を切断した形状を有する。
図6に示すように、フラットファイバー50の断面の短径D1に対して長径D2は大きく、D2/D1は、例えば1.2以上である。短径D1は、例えば0.5~25μmである。長径D2は、例えば0.6~300μmである。フラットファイバーの長さLは、例えば10~1000μmである。
図7に示すように、フラットファイバー60の断面は、中央が括れた形状であってもよい。言い換えると、フラットファイバー60の断面形状は、長径D2に沿って延びる表面が端部よりも中央部において後退した凹形状を有していてもよい。この断面は、長径D2に沿った方向の中央部が両側から後退した略瓢箪形又は略砂時計形である。
【0071】
ファインフレークは、厚さが薄い鱗片状ガラスである。ファインフレークは、例えば、平均厚さ0.1~2.0μmの鱗片状ガラスで構成されていてもよく、また例えば、厚さ0.01~2.0μmの範囲にある鱗片状ガラスを90質量%以上の割合で含有していてもよい。この程度に平均厚さが薄く、厚さのバラツキが小さいファインフレークは、樹脂を補強する効果が高く、樹脂の成形収縮率を低減する効果にも優れている。ファインフレークは、上述の方法により得ることができる。
【0072】
ガラスフィラーは、上述したガラス組成物を熔融する工程と、熔融したガラス組成物を所望のガラスフィラーへと成形する工程と、を含む方法により製造できる。ガラス組成物を熔融する温度は、例えば1400℃以上である。
【0073】
[ガラスフィラーの顆粒化]
ガラスフィラーは、少なくともその一部が顆粒化されていてもよい。顆粒化は、ガラスフィラーにバインダー処理を施し、個々のガラスフィラーをバインダーによって互いに結びつけて造粒する処理である。顆粒状のガラスフィラーは、飛散性が低いために作業性に優れ、樹脂中での分散性にも優れている。顆粒状のガラスフィラーを用いると、フィード性が向上し、より確実な定量的フィードが可能となる。以下、顆粒化に用いるバインダーについて説明する。
【0074】
バインダーは、界面活性剤及び結合成分を含むことが好ましい。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性及び非イオン性のいずれであってもよい。ただし、結合成分がエポキシ樹脂又はウレタン樹脂を含む場合には、非イオン性の界面活性剤の使用が好ましい。バインダーの凝集を抑制して安定化させることができるからである。アニオン性界面活性剤の例は、ジオクチルスルフォコハク酸ナトリウム、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルアリル硫酸エステル塩、及びスルホコハク酸エステル塩である。カチオン性界面活性剤の例は、高級アミンハロゲン酸塩、ハロゲン化アルキルピリジニウム、及び第4級アンモニウム塩である。両性界面活性剤の例は、ラウリルアミノプロピオン酸塩、及びラウリルジメチルベタインである。非イオン性界面活性剤の例は、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレングリコールアルキルエーテル類、ポリエチレングリコールモノステアレート等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート等のソルビタン脂肪酸エステル類、グリコールモノステアレート等のグリコール脂肪酸エステル類、脂肪酸モノグリセリド類である。これらを2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0075】
バインダーの結合成分は、特に限定されず、有機系又は無機系の成分を使用できる。有機系の結合成分としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、澱粉、カルボキシメチルスターチ、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、シランカップリング剤、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、酢酸ビニル、ウレタン樹脂等が挙げられる。無機系の結合成分としては、水ガラス、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、アミノシラン等が挙げられる。結合成分は、シランカップリング剤、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂から選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。シランカップリング剤は、分子中に2種以上の反応基を有し、その1つがガラスフィラーの表面と反応し、他の1つが有機系の結合成分及び熱可塑性樹脂と反応するため、ガラスフィラーと熱可塑性樹脂との馴染みが改善する。エポキシ樹脂及びウレタン樹脂は、シランカップリング剤及び熱可塑性樹脂との馴染みがよい。
【0076】
バインダーは、水又はアルコールを溶媒として、ガラスフィラーの表面に各成分が均一に存在しうるようにその濃度を調整することが好ましい。バインダーの濃度は、全固形分濃度で表して1~10質量%が好ましい。バインダーは、例えば、常温大気圧下において結合成分、界面活性剤等を溶媒中に適宜添加し、均一になるまで撹拌することにより製造することができる。
【0077】
顆粒化したガラスフィラーにおけるバインダーの比率、言い換えるとバインダーの付着率は、例えば、固形分質量比で0.1~2質量%である。0.1質量%以上の付着率は、ガラスフィラーの飛散性の十分な抑制に適している。2質量%以下の付着率は、樹脂組成物の押し出し成形時のガスの発生や樹脂組成物の変色の抑制に適している。
【0078】
ガラスフィラーの顆粒化の方法は、特に限定されず、例えば、撹拌造粒法、流動層造粒法、噴射造粒法、回転造粒法等を利用できる。具体的には、スプレー等によりバインダーを適量付着させたガラスフィラーを回転ドラム中又は振動するトレイ上に拡げ、加熱して溶媒を蒸発させつつ、造粒する方法を適用できる。回転ドラムの回転速度又は振動トレイの振動周波数、さらには溶媒の蒸発速度を適宜調整することにより、所望の大きさの顆粒状のガラスフィラーを製造できる。
【0079】
ガラスフィラーは、表面処理剤によってその表面が処理されたものであってもよい。この処理により、ガラスフィラーの補強効果が向上することがある。表面処理剤としては、例えば、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のシリコン系カップリング剤、チタン系カップリング剤等が挙げられる。表面処理剤の使用量は、例えば、ガラスフィラーの0.05~0.20質量%である。
【0080】
[樹脂組成物]
本発明による樹脂組成物は、本発明によるガラスフィラーと共に熱可塑性樹脂を含む。熱可塑性樹脂は、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタレート、これらの共重合体等である。ポリブチレンテレフタレートを用いると、ガラスフィラーとの混合による成形品の反り抑制や寸法安定性の改善効果が大きくなる。
【0081】
樹脂組成物中における鱗片状ガラス等のガラスフィラーの含有率は、5~70質量%が好ましい。5質量%以上とすることにより、ガラスフィラーの補強材としての機能が十分に発揮されやすくなる。70質量%以下とすることにより、樹脂組成物中にガラスフィラーを均一に分散させることが容易になる。成形収縮率を十分抑えるためには、ガラスフィラーの含有率を30質量%以上とすることがより好ましい。
【0082】
樹脂組成物には、ガラスフィラー以外の補強材を適宜含有させてもよい。例えば高い強度が要求される用途では、ガラス繊維を含有させてもよい。この場合、ガラス繊維は、ガラスフィラーと同程度の含有率で添加してもよい。
【0083】
鱗片状ガラス、フラットファイバー及びファインフレークは、比表面積が相対的に大きく、熱可塑性樹脂との間の接合力の確保に適している。この観点から、
図7に示したフラットファイバーは、凹型の表面形状が比表面積の拡大に寄与していて好ましい。
【0084】
本発明による樹脂組成物は、誘電率が低く、かつ強度、耐熱性、寸法安定性の向上、線熱膨張係数の低下及び異方性の低減、成形時の収縮率の異方性の低減等といった諸特性の改善に適したものとなる。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。本発明は以下の実施例に限定されない。なお、実施例2、5~8、11~14、16~20、22、23、25~31、33~36、38、40、41、43~47及び50は、参考例である。
【0086】
(実施例1~53及び比較例1~6)
表1~12に示す各組成(成分の含有率の単位は質量%)となるように珪砂等の一般的なガラス原料を秤量し、均質な状態となるように混合して、ガラス原料混合バッチを作製した。次に、作製した混合バッチを電気炉を用いて1500~1600℃で熔融させ、組成が均一になるまで約4時間そのまま維持した。その後、得られた熔融ガラス(ガラス熔融物)の一部を鉄板上に流し出し、電気炉中で室温まで徐冷して、評価に使用するバルクのガラス組成物試料(板状)を得た。
【0087】
このように作製したガラス試料について、作業温度、失透温度、温度差ΔT、アルカリ溶出量、及び周波数1GHzにおける誘電率を評価した。評価方法は下記のとおりである。
【0088】
[作業温度]
白金球引き上げ法により粘度を測定し、測定した粘度が1000dPa・secとなる温度を作業温度とした。白金球引き上げ法とは、熔融ガラス中に白金球を浸し、浸した白金球を等速運動で引き上げる際の負荷荷重(抵抗)と、白金球に働く重力及び浮力等との関係を、微小の粒子が流体中を沈降する際の粘度と落下速度との関係を示すストークス(Stokes)の法則にあてはめることにより、熔融ガラスの粘度を測定する方法である。
【0089】
[失透温度及び温度差ΔT]
粒子径1.0~2.8mmのサイズに粉砕したガラス試料25gを白金ボート(長方形で蓋のない白金製の器)に収容し、温度勾配(800~1400℃)を設けた電気炉中で2時間保持した後に炉から取り出し、ガラス内部に結晶が観察された位置に対応する電気炉の最高温度を失透温度とした。上記粒子径の範囲は、ふるい分け法による。具体的には、ガラス試料を粉砕し、目開き2.8mmの篩(網ふるい、篩について以下同じ)を通過し、目開き1.0mmの篩に残る粒子をふるい分けた。作業温度から失透温度を差し引いた値を温度差ΔTとした。
【0090】
[アルカリ溶出量]
JIS R3502:1995「化学分析用ガラス器具の試験方法」に定められたアルカリ溶出試験に準拠して、アルカリ溶出量を測定した。具体的には、下記のとおりである。ガラス試料を粉砕し、目開き420μmの篩を通過し、目開き250μmの篩に残る粒子をふるい分けた。次に、ふるい分けた粒子から、ガラス試料の比重と同じ質量の粒子を秤り取った。秤取した粒子を100℃の蒸留水50mLに1時間浸漬した後、浸漬後の水に含まれるアルカリ成分を濃度0.01Nの硫酸で滴定した。滴定に要した硫酸のミリリットル数に0.31を乗じることにより、Na2Oに換算したアルカリ成分のミリグラム数を求め、これをアルカリ溶出量とした。アルカリ溶出量が小さいほど、ガラス試料の耐水性は高い。
【0091】
[誘電率]
周波数1GHzにおける誘電率は、空洞共振器摂動法による誘電率測定装置を用いて測定した。測定温度は25℃、測定用サンプルの寸法は、底面が1辺1.5mmの正方形である高さ100mmの直方体とした。
【0092】
評価結果を表1~12に示す。
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
実施例1~53について、作業温度は1340~1441℃、温度差ΔT(=作業温度-失透温度)は39~408℃、アルカリ溶出量は0.03~0.33mg、周波数1GHzにおける誘電率は4.1~4.5であった。
【0106】
これに対して、従来のEガラスに相当するガラス組成を有する比較例1は、6.0を超える高い誘電率を示した。
【0107】
従来のDガラスに相当するガラス組成を有する比較例2は、実施例1~53に比べて高いアルカリ溶出量を示した。
【0108】
比較例3では、SiO2及びB2O3の含有率が本発明において定められた範囲の外にあった。比較例3は、1.0mgを超える高いアルカリ溶出量を示した。
【0109】
比較例4は、MgO及びCaOを含まず、1.0mgを超える高いアルカリ溶出量を示した。
【0110】
比較例5では、MgO/(MgO+CaO)が本発明において定められた範囲外にあった。比較例5は、実施例1~53に比べて高いアルカリ溶出量を示した。
【0111】
比較例6では、Li2O+Na2O+K2Oが本発明において定められた範囲外にあった。比較例6は、1.0mgを超える高いアルカリ溶出量を示した。
【0112】
(実施例54~106)
実施例1~53で作製した各ガラス組成物を用いて、鱗片状ガラスを作製した。具体的には、各ガラス組成物を電気炉で再熔融した後、冷却しながらペレットに成形した。得られたペレットを熔融炉に投入して、平均厚さ1~2μm及び平均粒子径100~500μmの鱗片状ガラスを作製した。
【0113】
(実施例107~159)
実施例1~53で作製した各ガラス組成物を用いて、ガラスフィラーとして使用できるチョップドストランドを作製した。具体的には、各ガラス組成物を電気炉で再熔融した後、冷却しながらペレットに成形した。得られたペレットを
図4及び
図5に示す製造装置に投入し、平均繊維径10~20μm及び長さが3mmのチョップドストランドを作製した。
【0114】
(実施例160~212)
実施例107~159で作製したチョップドストランドを用いて、ミルドファイバーを作製した。具体的には、平均繊維径10~20μm及び長さ3mmのチョップドストランドをアルミナ製のボールミルで粉砕し、平均繊維径10~20μm及び平均長さ50~100μmのミルドファイバーを作製した。
【0115】
(実施例213~265)
実施例1~53で作製した各ガラス組成物を用いて、ファインフレークを作製した。具体的には、各ガラス組成物を電気炉で再熔融した後、冷却しながらペレットに成形した。得られたペレットを熔融炉に投入し、平均厚さ0.5~1μm及び平均粒子径100~300μmのファインフレークを作製した。
【産業上の利用可能性】
【0116】
本発明のガラス組成物は、例えば、ガラスフィラーの製造に使用できる。本発明のガラスフィラーは、従来のガラスフィラーと同様の用途に使用できる。