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特許7576115油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料、並びに油脂含有飴、飴被覆食品、及びこれらの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料、並びに油脂含有飴、飴被覆食品、及びこれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 3/42 20060101AFI20241023BHJP
   A23G 3/34 20060101ALI20241023BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20241023BHJP
   A23L 19/10 20160101ALI20241023BHJP
【FI】
A23G3/42
A23G3/34 101
A23G3/34 109
A23G3/54
A23L19/10
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023038524
(22)【出願日】2023-03-13
(62)【分割の表示】P 2019070048の分割
【原出願日】2019-04-01
(65)【公開番号】P2023060356
(43)【公開日】2023-04-27
【審査請求日】2023-03-13
(73)【特許権者】
【識別番号】321006774
【氏名又は名称】DM三井製糖株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100201226
【弁理士】
【氏名又は名称】水木 佐綾子
(72)【発明者】
【氏名】塩見 和世
(72)【発明者】
【氏名】手塚 裕美子
(72)【発明者】
【氏名】永井 幸枝
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-314157(JP,A)
【文献】揚げ油に砂糖をどばっと入れて飴を作る☆外はカリカリ中はほっくり中華ポテト, [online],2013年11月09日,[検索日 2024年5月8日], Retrieved from the internet:<URL: https://snapdish.jp/d/P8mbma>
【文献】中華風バナナの飴がけ, クックパッド,[online],2014年04月24日,[検索日 2024年5月8日], Retrieved from the Internet:<URL: https://cookpad.com/recipe/2599060>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖を含む組成物を、加熱した油脂に融解させて油脂含有飴を得る工程を備える、油脂含有飴の製造方法。
【請求項2】
ソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖を含む組成物を、加熱した油脂に融解させて得られる油脂含有飴により、食品組成物を被覆する工程を備える、飴被覆食品の製造方法。
【請求項3】
前記食品組成物がイモ類である、請求項2に記載の飴被覆食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料、並びに油脂含有飴、油脂含有飴被覆食品、及びこれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大学イモは、従来、蒸煮又はフライにより加熱したサツマイモを、糖類、水、及び水飴を含む糖液、いわゆる「たれ」に絡めることにより調製されている。大学イモは調製直後においてはパリパリとした食感を有するため好まれているが、イモが糖液中の水分を吸収するため製造直後からパリパリ感がなくなるという課題があった。また、大学イモ同士が結着してしまうという課題があった。近年では、大学イモを冷凍食品として流通させる場合もあり、この場合には、解凍後においても大学イモのパリパリ感が持続し、個々の大学イモが結着しないことが求められている。
【0003】
そのため、大学イモのパリパリとした食感が失われない方法が検討されている。例えば、特許文献1には、カットした原料イモを蒸煮又はフライし、このイモを、糖を含む水溶液に浸漬してからフライして、糖及び水飴を含む飴液に絡める大学イモの製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、デンプン、キサンタンガム等の糊材を飴に添加することにより、飴が解凍後も溶けださない、飴で被覆された冷凍食品が記載されている。特許文献3には、イモ等の食品に水又は水溶液を塗布し、膨潤させた後、熱水溶解性の粉粒体甘味料を付着させた食品が記載されており、喫食前に加熱調理することにより甘味料を溶解させることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-163926号公報
【文献】特開昭63-79571号公報
【文献】特開平6-253752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の大学イモの製造方法は、イモに絡める飴液に水分が含まれている。そのため、大学イモに含まれる水分によってパリパリとした食感が損なわれ、また、表面にべたつきが生じる場合があり、従来の製造方法においては未だ改善の余地がある。パリパリとした食感は、冷凍保存後に解凍した場合において特に失われやすい。このような問題は、大学イモに限らず、糖を含む被膜によって覆われた食品組成物(例えば、飴被覆食品)全般に生じうる。
【0007】
本発明の一側面は、パリパリとした好ましい食感を有し、また、保存後も好ましい食感を持続することが可能な飴被覆食品を提供するための材料、この材料を含有する飴及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、第1の側面として、イソマルツロース及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖を有効成分として含有する、油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料を提供する。
【0009】
本発明は、第2の側面として、上記の材料と、油脂と、を含有する、油脂含有飴を提供する。
【0010】
第2の側面において、油脂含有飴を固体状にしたときの破断強度は、好ましくは40N以上である。破断強度は、後述する実施例の方法によって測定した値を意味する。
【0011】
本発明は、第3の側面として、上記の油脂含有飴により、食品組成物が被覆されてなる、飴被覆食品を提供する。
【0012】
本発明は、第4の側面として、スクロース、イソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖と、油脂とを含む組成物を融解させて油脂含有飴を得る工程を備える、油脂含有飴の製造方法を提供する。
【0013】
本発明は、第5の側面として、スクロース、イソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖と、油脂とを含む組成物を融解させて得られる油脂含有飴により、食品組成物を被覆する工程を備える、飴被覆食品の製造方法を提供する。
【0014】
第3の側面及び第5の側面において、食品組成物はイモ類であってよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一側面によれば、パリパリとした好ましい食感を有し、また、保存後も好ましい食感を持続することが可能な飴被覆食品を提供するための材料、この材料を含有する飴及びその製造方法を提供することができる。この飴被覆食品は、調製後及び長期間の保存後において、表面のべたつきが少なく、飴の溶け出しも少ない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例に係る、冷凍した大学イモを解凍した直後の様子を示す写真である。
図2】実施例に係る、冷凍した大学イモの解凍を開始してから6時間経過後の様子を示す写真である。
図3】実施例に係る大学イモにおける飴の破断強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において、「飴」とは、糖が融解し冷却してガラス化した状態のものを意味する。本明細書における「飴」には、融解した直後の流動性のある状態のものも含まれる。「油脂含有飴」とは、油脂を含有する飴を意味する。「飴被覆食品」とは、飴により表面の一部又は全部が覆われた食品組成物を意味する。
【0018】
本発明における「油脂含有飴」においては、好ましくは、水の含有量が油脂含有飴全量基準で20質量%以下である。油脂含有飴における水の含有量は、15質量%以下、10質量%以下、5質量%以下、又は1質量%以下であってもよい。油脂含有飴は水を含有しなくてもよい。
【0019】
[油脂含有飴の製造方法]
一実施形態に係る油脂含有飴の製造方法は、スクロース、イソマルツロース、又は還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖と、油脂とを含む組成物を融解させて油脂含有飴を得る工程(以下、「融解工程」ともいう。)を備える。
【0020】
スクロースは、グルコースとフルクトースが1,2-グルコシド結合した二糖類である。スクロースとしては、天然由来のものを用いてもよく、人工的に合成されたものを用いてもよい。
【0021】
スクロースは、スクロース単体として用いてもよく、スクロースを主成分として含む甘味料である、グラニュ糖、上白糖、三温糖、ザラメ、粉糖、ブラウンシュガー等として用いてもよい。スクロースとしては市販品を用いてもよい。
【0022】
イソマルツロースは、グルコースとフルクトースとがα-1,6結合した二糖類であり、スクロースの構造異性体である。イソマルツロースは、例えば、天然の蜂蜜中に見出される。工業的には、イソマルツロースは、プロタミノバクター・ルブラム(Protaminobacter rubrum)、セラチア・プリムチカ(Serratia plymuthica)等の細菌に由来するα-グルコシルトランスフェラーゼをショ糖に作用させることにより製造される。
【0023】
イソマルツロースは、パラチノース(palatinose)とも称される。なお、「パラチノース/PALATINOSE」は、三井製糖株式会社の登録商標である。
【0024】
イソマルツロースとしては、天然由来のものを用いてもよく、酵素作用等により合成されたものを用いてもよい。また、イソマルツロースとしては、市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、結晶パラチノース(商品名「結晶パラチノースIC」、三井製糖株式会社製)、結晶パラチノース(商品名「結晶パラチノースPST-N」、Beneo社製)、粉末パラチノース(商品名「粉末パラチノースICP」、三井製糖株式会社製)、パラチノースシロップ(商品名「パラチノースシロップ-ISN」、「パラチノースシロップ-TN」、三井製糖株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
還元イソマルツロースは、イソマルツロースを水素添加等することにより還元したものである。還元イソマルツロースは、還元パラチノース(三井製糖株式会社の登録商標)ともいう。還元イソマルツロースは、主にα-D-グルコピラノシル-1,1-マンニトール(以下、GPMともいう)とα-D-グルコピラノシル-1,6-ソルビトール(以下、GPSともいう)との混合物である。
【0026】
GPMとGPSとは水に対する溶解度に差がある。この二成分の溶解度の違いを利用して上記混合比を調整することができる(例えば、特開平10-310595参照)。すなわち、溶解平衡は温度依存性であるため、還元イソマルツロースの水溶液の温度を制御することにより、二成分の濃度比を調整することができる。溶解平衡に調整した後、温度変化の速度を定めて還元イソマルツロース中のGPM及びGPSの濃度を制御することができる。
【0027】
還元イソマルツロースは、顆粒状のものであってもよい。顆粒状の還元イソマルツロースは、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、還元イソマルツロースの溶液を減圧下で加熱して濃縮液を得る。次いで、減圧下でゆっくりと回転するドラムの内壁にこの濃縮液を吹き付け、内壁面に付着した還元イソマルツロースを攪拌器で掻き取り、さらに掻き取られた還元イソマルツロースをドラムの回転により顆粒状に造粒することで顆粒状とすることができる。
【0028】
還元イソマルツロースとしては、市販されているものを用いてもよい。市販品としては、例えば、パラチニットPN(三井製糖株式会社)、粉末パラチニットPNP(三井製糖株式会社)、パラチニットGS(三井製糖株式会社)、粉末パラチニットGSP(三井製糖株式会社)、パラチニットST-F(三井製糖株式会社)等が挙げられる。
【0029】
糖としては、スクロース、イソマルツロース、又は還元イソマルツロースのいずれかを含有してもよく、これらの2以上を併用してもよい。油脂含有飴が冷えて固まる前に対象物へ付着させやすくする観点から、糖と油脂とを含む組成物は、スクロースと、イソマルツロース又は還元イソマルツロースのいずれかと、を含有することが好ましい。同様の観点から、糖と油脂とを含む組成物は、スクロースと、イソマルツロースと、還元イソマルツロースとを含有してもよい。
【0030】
糖と油脂とを含む組成物が、糖としてスクロース及びイソマルツロースを含有する場合、スクロースの含有量に対するイソマルツロースの含有量の質量比(イソマルツロース/スクロース)は、油脂含有飴のパリパリ感を更に向上させ、保存後のパリパリ感を持続させやすくする観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上であってよい。スクロースの含有量に対するイソマルツロースの含有量の質量比は、油脂含有飴が冷えて固まる前に対象物へ付着させやすくする観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは50/50以下である。
【0031】
糖と油脂とを含む組成物が、糖としてスクロース及び還元イソマルツロースを含有する場合、スクロースの含有量に対する還元イソマルツロースの含有量の質量比(還元イソマルツロース/スクロース)は、油脂含有飴のパリパリ感を更に向上させ、保存後のパリパリ感を持続させやすくする観点から、好ましくは3/97以上、より好ましくは5/95以上、更に好ましくは10/90以上であってよい。スクロースの含有量に対する還元イソマルツロースの含有量の質量比は、油脂含有飴が冷えて固まる前に対象物へ付着させやすくする観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは70/30以下、更に好ましくは50/50以下である。
【0032】
糖と油脂とを含む組成物は、糖として、スクロース、イソマルツロース及び還元イソマルツロース以外の糖を含有してもよい。組成物に含まれる糖のうち、スクロース、イソマルツロース及び還元イソマルツロースの含有量は、糖全量基準で80質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。糖と油脂とを含む組成物は、糖として、スクロース、イソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種のみを含んでもよい。
【0033】
油脂含有飴に含まれる油脂は、食用油であってよい。油脂としては、大豆油、コーン油、ベニバナ油、ごま油、キャノーラ油、サラダ油、及びオリーブ油等の植物性油脂、ラード、ヘット、及びバター等の動物性油脂、ショートニング及びマーガリン等の加工油脂が挙げられる。
【0034】
糖と油脂とを含む組成物は、糖と油脂のみからなっていてよく、糖と油脂以外の成分を含有してもよい。他の成分は、例えば、水飴であってよい。糖と油脂とを含む組成物は、水を含有しなくてもよい。
【0035】
融解工程では、上記の糖と、油脂とを含む組成物を融解させる。融解工程は、糖と油脂を混合してから加熱して融解させる方法であってもよいし、加熱した油脂に糖を含む組成物を投入して融解させる工程であってもよい。加熱温度は糖の種類又は組成物の組成により適宜設定してよいが、例えば、140℃以上であってよく、200℃以下であってよい。
【0036】
融解工程における、油脂の添加量に対する糖の添加量の質量比は、糖1質量部に対して、油脂が1質量部以上、3質量部以上、又は4質量部以上であってよく、糖1質量部に対して、油脂が0.5質量部以下、又は0.1質量部以下であってよい。
【0037】
融解工程により、流動性のある状態の油脂含有飴を得ることができる。流動性のある状態の油脂含有飴を冷却することにより、油脂含有飴が固体状となり、パリパリとした食感を有する油脂含有飴を得ることができる。
【0038】
油脂含有飴においては、好ましいパリパリ感を感じられる硬さを有する観点から、破断強度が40N以上であることが好ましく、70N以上であることがより好ましく、90N以上であることが更に好ましい。本明細書における破断強度は、油脂含有飴が固体状のとき(冷却されて固まった後)に、下記の条件によって測定された破断強度を意味し、クリープメータ(RHEONERII/(株)山電)により測定することができる。
(条件)
試料の大きさ:直径約30mm円状×厚み約5mm
プランジャー:直径3mm、尖形
ロードセル:200N
測定速度:1mm/秒
【0039】
[飴被覆食品の製造方法]
上述した油脂含有飴を用いて、油脂含有飴で被覆された飴被覆食品(以下、単に「飴被覆食品」という。)を得ることができる。飴被覆食品は、上述した油脂含有飴により食品組成物が被覆されてなる。すなわち、一実施形態に係る油脂含有飴で被覆された飴被覆食品は、スクロース、イソマルツロース、及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖と、油脂とを含む組成物を融解させて得られる油脂含有飴により、食品組成物を被覆する工程(以下、「被覆工程」ともいう。)を備える。油脂含有飴の態様は上述した態様と同様である。
【0040】
食品組成物は特に限定されないが、例えば、サツマイモ、ジャガイモ等のイモ類、栗、その他の野菜類、りんご等の果実、大豆、インゲン豆、そら豆等の豆類、かりんとう等の揚げ菓子、小魚類などであってよい。
【0041】
食品組成物がサツマイモである場合、上述した油脂含有飴によってサツマイモを被覆することにより、大学イモを得ることができる。
【0042】
油脂含有飴により食品組成物を被覆する方法は、例えば、上述した油脂含有飴の製造方法により得られる、流動性のある状態の油脂含有飴を食品組成物に付着させる方法であってよい。付着させる方法は、当該油脂含有飴を入れた容器(鍋等)に食品組成物を投入して混ぜ合わせること、当該油脂含有飴を食品組成物に振りかけること等により、行うことができる。
【0043】
本実施形態に係る油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造方法においては、被覆工程の後、流動性のある状態の油脂含有飴を冷却、又は乾燥させることにより、油脂含有飴を固化させる工程を備えてもよい。
【0044】
上述した飴被覆食品の製造方法により、パリパリとした好ましい食感を有する飴被覆食品を得ることができる。すなわち、一実施形態に係る飴被覆食品は、上述した油脂含有飴により、食品組成物が被覆されてなるものである。
【0045】
一実施形態に係る飴被覆食品の製造方法としては、より具体的には、油脂を、炒め油のように少量、例えば飴を被覆させる食品組成物の3質量%~10質量%をフライパン又は鍋で加熱し、そこに糖及び他の成分を入れ、糖を加熱融解させて飴を製造し、被覆したい食品組成物を添加し絡めることができる。また、揚げ油のように被覆させる食品の質量に対して1倍~20倍質量の油脂を鍋で加熱し、そこに糖及び他の成分を入れ、糖を融解させて飴を製造し、被覆したい食品組成物を添加し絡めることができる。油脂存在下で糖を融解させ飴を製造することにより、食品に被覆した飴の表面が油脂で覆われ、飴同士の接着を防ぐことができる。また、飴を製造する際に水分を添加していないこと、油脂加熱中に水分が抜けることから、表面がパリパリした安定した飴被覆製品を製造することができる。
【0046】
[油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料]
本発明は、イソマルツロース及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖に関して、油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料としての用途を提供するということができる。すなわち、一実施形態に係る油脂含有飴で被覆された飴被覆食品の製造用材料は、イソマルツロース及び還元イソマルツロースからなる群より選ばれる少なくとも1種の糖を有効成分として含有する。イソマルツロース及び還元イソマルツロースの態様は、上述した態様と同様であるため説明を省略する。
【実施例
【0047】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0048】
以下の試験において、用いた原料は以下のとおりである(全て三井製糖株式会社製)。
「グラニュ糖GN」:グラニュ糖
「パラチノースPST-N」:イソマルツロース
「パラチニットPN」:還元イソマルツロース(GPS/GPM=40/60以上60/40未満(質量比))
「パラチニットGS」:還元イソマルツロース(GPS/GPM=60/40以上99/1以下(質量比))
【0049】
<試験例1>
揚げ物用の鍋にサラダ油200gを入れ、170℃まで加熱してから、カットされ冷凍されたサツマイモを投入して6分間揚げた。サツマイモを取り出した後のサラダ油に、表1に示す組成の糖を入れ、サラダ油に糖を融解させることにより飴(油脂含有飴)を得た。糖が融解した後、火力を弱めて、揚げたサツマイモ125gを投入した。そして、2分間加熱しながらサツマイモに飴を絡めて大学イモとした。大学イモをオーブンシート上に取り出し、30分間風乾させた。
【0050】
[作業性の評価]
実施例3~6の飴について、作業性(飴の泡立ちの程度及びサツマイモへの付着のしやすさ)を評価した。その結果、実施例3~6はいずれも飴の泡立ちが少なく、サツマイモへ付着しやすかった。
【0051】
【表1】
【0052】
[食感の評価]
調製直後の大学イモを食したときの食感を評価した。結果を表2に示す。表2に示すとおり、グラニュ糖を用いた場合の大学イモはパリパリ感を有していたが、パラチニットGS又はパラチニットPNを用いた大学イモではパリパリ感がより強く感じられた。
【0053】
【表2】
【0054】
[飴の溶け出しの評価]
実施例1~6の大学イモを冷凍し、5日後に常温にて解凍した。解凍直後、及び解凍を開始してから6時間経過後の飴の溶け出しの様子を観察し、結果を図1図2に示す。図1は解凍直後の様子、図2は解凍を開始してから6時間経過後の様子である。解凍直後はいずれの大学イモにおいても飴の溶け出しは観察されなかった。一方、解凍6時間後では、実施例1では飴の溶け出しが観察されなかったが、実施例3、及び実施例5では、わずかに飴の溶け出しが観察された。実施例4、及び実施例6では、飴の溶け出しが観察された。
【0055】
[飴の破断強度評価]
実施例1~6の大学イモにおける飴の破断強度を測定した。表1に示す組成の糖を用いて、上記の方法によりサラダ油に糖を融解させて、飴を調製した。冷却後の飴について、レオメーター(山電RHEONERII、破断強度解析使用、ロードセル200N、プランジャー(直径3mm、尖形)、測定歪率80%、格納ピッチ0.02秒、測定速度1mm/秒)を用いて、それぞれの飴について破断強度を測定した。破断強度はそれぞれ3回測定し、その平均値を図3に示す。グラニュ糖を使用した実施例6においても破断強度は40N以上であり、十分な破断強度を有していたが、還元イソマルツロースを使用した実施例1~5の方が破断強度はより大きく、還元イソマルツロースの含有量が多いほど破断強度は更に大きくなった。
【0056】
<試験例2>
揚げ物用の鍋にサラダ油を入れ、170℃まで加熱してから、カットされ冷凍されたサツマイモを投入して6分間揚げた。別鍋に新たなサラダ油150gを入れ、150℃まで加熱した後、表2に示す組成の糖を入れた。火力を調節しながら、この混合物を180℃まで加熱し、サラダ油に糖を融解させることにより飴(油脂含有飴)を得た。糖が融解した後、火力を弱めて、揚げたサツマイモ150gを投入した。そして、加熱しながらサツマイモに飴を絡めて大学イモとした。大学イモをオーブンシート上に取り出し、10分間風乾させた。
【0057】
[常温保存後のべたつき評価]
調製した大学イモを常温で保存し、表2に示す保存時間が経過した後の大学イモを触ったときのべたつきを官能評価した。評価基準としては、全くべたつかないときを0点、非常にべたつくときを6点とした6段階とした。評価基準において、「非常にべたつく」(6点)とは、ペーパータオルに水飴を染み込ませたときのべたつきと同程度である。官能評価は4人のパネルにより実施され、得られた評価点の平均値を表3に示す。
【0058】
【表3】
【0059】
<試験例3>
表4に示す組成の糖を用いて、試験例2と同様の方法により大学イモを調製した。調製した大学イモは、風乾してから30分経過後に冷凍し、10日間保存した。
【0060】
[冷凍保存後の品質評価]
10日間冷凍保存された大学イモを常温にて解凍した。解凍開始から30分経過後、1.5時間経過後に、飴がイモに付着している程度、触ったときの飴のべたつき(糸を引くか否か)、及び喫食した際のパリパリ感を下記の評価基準に基づいて評価した。結果を表4に示す。
(飴の付着)
A:全体的に飴が残っている
B:全体的に薄く飴が残っている
C:部分的に飴が残っている
D:大部分で飴が取れている
(べたつき)
A:べたつかない
B:ややべたつく
C:べたつく(やや糸を引く)
D:非常にべたつく(糸を引く)
(パリパリ感)
A:全体的にパリパリしている
B:全体的にややパリパリしている
C:部分的にパリパリしている
D:パリパリしていない
【0061】
【表4】
図1
図2
図3