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特許7576133炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/04 20060101AFI20241023BHJP
   C10B 43/00 20060101ALI20241023BHJP
   C10B 45/00 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
G01N1/04 S
C10B43/00
C10B45/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023125377
(22)【出願日】2023-08-01
【審査請求日】2023-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000156961
【氏名又は名称】関西熱化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕紀
(72)【発明者】
【氏名】北尾 政人
【審査官】外川 敬之
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-111487(JP,A)
【文献】特開2003-277757(JP,A)
【文献】特開2009-121822(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0117475(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/04
C10B 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭をコークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集するための容器であって、
煉瓦で構成されており、
円形板状の底部と、前記底部上に配置された中空円柱状の石炭焼成部と、前記石炭焼成部上に配置され、前記石炭焼成部と内径及び外径が等しい中空円柱状の炉壁カーボン付着部と、前記炉壁カーボン付着部上に配置された円形板状の蓋部とからなる密閉容器と、
前記密閉容器内に封入された円柱状のスペーサ部と
を備え、
前記石炭焼成部、及び、前記炉壁カーボン付着部の外径が20mm以上52mm以下であり、
前記石炭焼成部、及び、前記炉壁カーボン付着部の壁の厚さが1mm以上5mm以下であり、
前記石炭焼成部の高さが30mm以上50mm以下であり、
前記炉壁カーボン付着部の高さが30mm以上50mm以下であり、
前記スペーサ部の外壁と、前記石炭焼成部及び前記炉壁カーボン付着部の内壁との隙間が1mm以上5mm以下であり、
前記スペーサ部の高さが35mm以上55mm以下であることを特徴とする炉壁カーボン収集用容器。
【請求項2】
請求項1に記載の炉壁カーボン収集用容器を用いた炉壁カーボンの収集方法であって、
前記炉壁カーボン収集用容器の前記底部と前記スペーサ部との間に石炭を配置する工程Aと、
前記工程Aの後、石炭が内部に配置された前記炉壁カーボン収集用容器を、700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器に装入する工程Bと、
前記工程Bの後、前記炉壁カーボン収集用容器を前記加熱器から取り出し、前記炉壁カーボン付着部に付着した炉壁カーボンを得る工程Cと
を有することを特徴とする炉壁カーボンの収集方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭をコークス炉炭化室に装入し乾留すると、石炭からの発生ガスがカーボンとして析出し炭化室の炉壁に付着する。乾留を繰り返すことで、このカーボンは成長していくが、コークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量が過大になると、押出電力に代表されるようにコークス押出時の抵抗が増大し、押し詰まりを引き起こしたり、炉壁損傷の原因になったりする。
【0003】
特許文献1には、石炭試料を設置する試料部、該試料を加熱し乾留する加熱部、乾留された試料からのカーボンを付着採取する採取部を有する石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量評価装置であって、前記加熱部が、前記試料部を加熱する第1加熱部と前記採取部を加熱する第2加熱部および両者の中間に設けられた断熱部から構成され、第2加熱部を乾留温度に加熱した状態で、第1加熱部を非加熱状態から前記乾留温度まで昇温し、付着採取されたカーボン量のデータから石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量を評価するカーボン付着量評価装置(請求項1)が開示されている。
また、特許文献1には、試料部に設置された石炭試料を加熱し、乾留された該試料からのカーボンを採取部で付着採取し、付着採取されたカーボン量のデータから、石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量を評価するカーボン付着量評価方法であって、(a)前記試料部に石炭試料を設置するステップ、(b)前記採取部を乾留温度まで加熱するステップ、(c)前記試料部を非加熱状態から前記乾留温度まで昇温するステップ、(d)前記採取部に付着採取されたカーボン量を測定するステップ、を有し、予め(a)~(d)のステップによって、該試料に係るカーボン量のデータを得、カーボン付着量の推定に必要となる推定式の係数を確定するカーボン付着量評価方法(請求項4)が開示されている。
また、特許文献1には、試料部を非加熱状態から乾留温度まで昇温し、付着採取されたカーボン量のデータから、石炭乾留時のコークス炉炭化室の炉壁へのカーボン付着量を評価することによって、従前にない指標を用いた精度の高い本装置固有の推定式の設定が可能となったことが開示されている(段落[0013])
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-063213号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の通り、コークス炉炭化室の炉壁に付着するカーボン(以下、「炉壁カーボン」ともいう)は、コークス炉の操業に大きく影響する。そのため、石炭をコークス化する際に石炭から発生する炉壁カーボンだけを収集して、評価を行いたい要望がある。
【0006】
特許文献1に記載のカーボン付着量評価装置、及び、カーボン付着量評価方法を用いれば、石炭をコークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集することはできる。すなわち、評価対象の石炭(石炭試料)ごとに、コークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集することはできる。しかしながら、特許文献1に記載のカーボン付着量評価装置、及び、カーボン付着量評価方法では、炉壁カーボン収集にかかる時間がある程度必要となることや、収量が少ない点で改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することを可能とする炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法について鋭意研究を行った。その結果、下記構成を採用することにより、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、以下を提供する。
[1]石炭をコークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集するための容器であって、
煉瓦で構成されており、
円形板状の底部と、前記底部上に配置された中空円柱状の石炭焼成部と、前記石炭焼成部上に配置され、前記石炭焼成部と内径及び外径が等しい中空円柱状の炉壁カーボン付着部と、前記炉壁カーボン付着部上に配置された円形板状の蓋部とからなる密閉容器と、
前記密閉容器内に封入された円柱状のスペーサ部と
を備え、
前記石炭焼成部、及び、前記炉壁カーボン付着部の外径が20mm以上52mm以下であり、
前記石炭焼成部、及び、前記炉壁カーボン付着部の壁の厚さが1mm以上5mm以下であり、
前記石炭焼成部の高さが30mm以上50mm以下であり、
前記炉壁カーボン付着部の高さが30mm以上50mm以下であり、
前記スペーサ部の外壁と、前記石炭焼成部及び前記炉壁カーボン付着部の内壁との隙間が1mm以上5mm以下であり、
前記スペーサ部の高さが35mm以上55mm以下であることを特徴とする炉壁カーボン収集用容器。
【0010】
通常、コークス炉の炉壁は煉瓦で構成されている。前記構成によれば、炉壁カーボン収集用容器が煉瓦で構成されているため、より実炉(コークス炉)と同様の環境とすることができる。
【0011】
また、前記構成によれば、炉壁カーボン収集用容器として上記のように比較的全体の寸法が小さいものを使用している。従って、短時間で石炭を乾留することができる。その結果、短時間で炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0012】
また、前記構成によれば、前記石炭焼成部、及び、前記炉壁カーボン付着部の壁の厚さが1mm以上5mm以下であり、比較的薄いため、乾留の際に外部の温度を内部に伝えやすい。結果、短時間で石炭を乾留することが可能となる。
【0013】
また、前記構成によれば、石炭焼成部の高さが30mm以上50mm以下であるため、石炭焼成部内に、比較的多くの石炭を配置することができる。その結果、多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。また、石炭焼成部の高さが30mm以上50mm以下であるため、この石炭焼成部にコークス粉が付着することになり、炉壁カーボン付着部にコークス粉が付着することを抑制することができる。
【0014】
また、前記構成によれば、前記炉壁カーボン付着部の高さが30mm以上50mm以下であり、この部分に炉壁カーボンが付着する。このことは、実施例からも明らかである。その結果、多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0015】
ここで、炉壁カーボンに関して、本発明者らは、石炭が軟化溶融(350~500℃付近)した際に発生する一次熱分解ガスが高温の炉壁に接触し、加熱されることで二次熱分解が起こり、カーボンが炉壁に付着するとの知見を得た。その結果、多くの炉壁カーボンを収集するには、一次熱分解ガスの発生と同時に当該一次熱分解ガスを高温物に接触させることが効率的であることを見出した。
そこで、前記スペーサ部の外壁と、前記石炭焼成部及び前記炉壁カーボン付着部の内壁との隙間を1mm以上5mm以下とした。その結果、石炭の一次熱分解ガスの発生と同時に当該一次熱分解ガスを高温の石炭焼成部及び炉壁カーボン付着部に接触させることができ、効率的に炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0016】
また、前記構成によれば、スペーサ部を備えているため、石炭・コークスの舞い上がりを防止することができる。
また、前記スペーサ部の高さが35mm以上であるため、前記石炭焼成部及び前記炉壁カーボン付着部の内壁との隙間を1mm以上5mm以下とすることができ、一次熱分解ガスを高温の石炭焼成部及び炉壁カーボン付着部に接触させることができ、効率的に炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0017】
以上より、前記構成の炉壁カーボン収集用容器によれば、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0018】
さらに、本発明は、以下を提供する。
【0019】
[2]前記[1]の炉壁カーボン収集用容器を用いた炉壁カーボンの収集方法であって、
前記炉壁カーボン収集用容器の前記底部と前記スペーサ部との間に石炭を配置する工程Aと、
前記工程Aの後、石炭が内部に配置された前記炉壁カーボン収集用容器を、700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器に装入する工程Bと、
前記工程Bの後、前記炉壁カーボン収集用容器を前記加熱器から取り出し、前記炉壁カーボン付着部に付着した炉壁カーボンを得る工程Cと
を有することを特徴とする炉壁カーボンの収集方法。
【0020】
前記構成によれば、炉壁カーボン収集用容器を低温(例えば300℃程度)から昇温しているのではなく(すなわち、半冷間装入するのではなく)、予め700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器に装入する(熱間装入する)ため、より短時間で、炉壁カーボンを収集することが可能となる。
また、前記構成によれば、前記炉壁カーボン収集用容器を用いるため、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能とする炉壁カーボン収集用容器、及び、炉壁カーボンの収集方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る炉壁カーボン収集用容器を説明するための模式図である。
図2】本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法を説明するための模式図である。
図3】炉壁カーボン収集用容器を石英ガラス製試験管に装入してからの経過時間(実施例1)又は試験管を炉に装入してからの経過時間(比較例1)と、石炭サンプルの温度(炭芯温度)との関係を示すグラフである。
図4】乾留(焼成)回数とカーボン付着量(累積)との関係を示すグラフである。
図5】乾留(焼成)回数と炉壁カーボン付着部の面積あたりのカーボン付着量(累積)との関係を示すグラフである。
図6】比較例1の装置の模式図である。
図7】実施例1、比較例1で得られたカーボンのX線回折スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本実施形態に係る炉壁カーボン収集用容器10について説明する。
図1は、本実施形態に係る炉壁カーボン収集用容器を説明するための模式図である。炉壁カーボン収集用容器10は、石炭をコークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集するための容器である。具体的に、炉壁カーボン収集用容器10は、後述する炉壁カーボンの収集方法において好適に使用することが可能である。
【0024】
炉壁カーボン収集用容器10は、煉瓦で構成されている。炉壁カーボン収集用容器10が煉瓦で構成されているため、より実炉(コークス炉)と同様の環境とすることができる。煉瓦としては、1100℃程度に曝されても溶けたり過度に膨張することがなければ、特に限定されず、珪石煉瓦、磁性容器、セラミック容器等が挙げられる。珪石煉瓦は、コークス炉の炉壁に用いられることが多いことから、なかでも珪石煉瓦が好ましい。つまり、煉瓦の種類によって、カーボンの付着量や結晶の発達が異なるとされているため(「燃料学会誌」第54巻第576号(1975)p.250-256)、実際にコークス炉に使用している硅石煉瓦が好ましい。
【0025】
図1に示すように、炉壁カーボン収集用容器10は、密閉容器20と、密閉容器内20に封入された円柱状のスペーサ部22とを備える。
【0026】
密閉容器20は、円形板状の底部12と、底部12上に配置された中空円柱状の石炭焼成部14と、石炭焼成部14上に配置され、石炭焼成部14と内径及び外径が等しい中空円柱状の炉壁カーボン付着部16と、炉壁カーボン付着部16上に配置された円形板状の蓋部18とで構成されている。
【0027】
石炭焼成部14、及び、炉壁カーボン付着部16は、中空円柱状であり、外径が20mm以上52mm以下である。前記外径は、好ましくは25mm以上50mm以下、より好ましくは30mm以上50mm以下である。石炭焼成部14、及び、炉壁カーボン付着部16の外径が20mm以上52mm以下であり、比較的寸法が小さいため、短時間で石炭を乾留することができる。その結果、短時間で炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0028】
石炭焼成部14、及び、炉壁カーボン付着部16は、壁の厚さが1mm以上5mm以下である。前記壁の厚さは、好ましくは1mm以上4mm以下、より好ましくは1mm以上3mm以下である。前記壁の厚さが1mm以上5mm以下であり、比較的薄いため、乾留の際に外部の温度を内部に伝えやすい。結果、短時間で石炭を乾留することが可能となる。
なお、石炭焼成部14、及び、炉壁カーボン付着部16の内径は、外径から壁の厚さを差し引いた値となる。
【0029】
石炭焼成部14は、高さが30mm以上50mm以下であり、好ましくは30mm以上48mm以下、より好ましくは30mm以上45mm以下である。石炭焼成部14の高さが30mm以上50mm以下であるため、石炭焼成部14内に、比較的多くの石炭を配置することができる。その結果、多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。また、石炭焼成部14の高さが30mm以上50mm以下であるため、この石炭焼成部14にコークス粉が付着することになり、炉壁カーボン付着部16にコークス粉が付着することを抑制することができる。
【0030】
炉壁カーボン付着部16は、高さが30mm以上50mm以下であり、好ましくは30mm以上45mm以下、より好ましくは30mm以上40mm以下である。炉壁カーボン付着部16の高さが30mm以上50mm以下であり、この部分に炉壁カーボンが付着する。このことは、実施例からも明らかである。その結果、多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
なお、石炭焼成部14の高さと炉壁カーボン付着部16の高さとは、同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0031】
底部12は、円形板状である。底部12の外径(平面視での外径)は、石炭焼成部14及び炉壁カーボン付着部16の外径と同じか石炭焼成部14の外径よりも大きければ、特に限定されないが、例えば、20mm以上52mm以下等とすることができる。
【0032】
底部12の厚さは、特に限定されないが、例えば、5mm以上25mm以下等とすることができる。ただし、本実施形態では、底部12から内部に熱が伝わりにくいことが好ましいことから、10mm以上とすることが好ましい。なお、底部12から熱が伝わりにくくするために、底部12と加熱器50との間に、断熱材42(図2参照)を設けてもよい。底部12と加熱器50との間に断熱材42を設けた場合、炉壁カーボン収集用容器10を後述する石英ガラス製試験管40に熱間装入する際に、装入の衝撃で石英ガラス製試験管40が割れることを防止することもできる。底部12と加熱器40との間に、断熱材42を設ける場合、底部12の厚さは薄くても(例えば、20mm以上50mm以下)構わない。
【0033】
蓋部18は、円形板状である。蓋部18の外径(平面視での外径)は、石炭焼成部14及び炉壁カーボン付着部16の外径と同じか石炭焼成部14の外径よりも大きければ、特に限定されないが、例えば、20mm以上52mm以等とすることができる。
【0034】
蓋部18の厚さは、特に限定されないが、例えば、5mm以上25mm以下等とすることができる。ただし、本実施形態では、蓋部18から熱が伝わりにくいことが好ましいことから、10mm以上とすることが好ましい。
【0035】
蓋部18には、小さい貫通孔(図示せず)が設けられていることが好ましい。前記貫通孔の大きさは、外径1mm以上5mm以下が好ましく、1mm以上3mm以下がより好ましい。前記貫通孔の位置は特に限定されないが、例えば、平面視で円形の中心とすることができる。前記貫通孔を設けることにより、前記貫通孔からガスを抜くことができ、内圧が過度に高くならないようにすることができる。
【0036】
スペーサ部22は、円柱状であり、外径としては、スペーサ部22の外壁と、石炭焼成部14及び炉壁カーボン付着部16の内壁との隙間が1mm以上5mm以下となる範囲であれば、特に限定されない。スペーサ部22の外壁と、石炭焼成部14及び炉壁カーボン付着部16の内壁との隙間は、好ましくは1mm以上5mm以下であり、より好ましくは1mm以上3mm以下である。例えば、石炭焼成部14及び炉壁カーボン付着部16の内壁(内径)が43mmであれば、スペーサ部22の外径は、33mm以上41mm以下である。
ここで、炉壁カーボンに関して、本発明者らは、石炭が軟化溶融(350~500℃付近)した際に発生する一次熱分解ガスが高温の炉壁に接触し、加熱されることで二次熱分解が起こり、カーボンが炉壁に付着するとの知見を得た。その結果、多くの炉壁カーボンを収集するには、一次熱分解ガスの発生と同時に当該一次熱分解ガスを高温物に接触させることが効率的であることを見出した。
そこで、スペーサ部22の外壁と、石炭焼成部12及び炉壁カーボン付着部14の内壁との隙間を1mm以上5mm以下とした。その結果、石炭の一次熱分解ガスの発生と同時に当該一次熱分解ガスを高温の石炭焼成部12及び炉壁カーボン付着部14に接触させることができ、効率的に炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0037】
スペーサ部22は、高さが35mm以上55mm以下であり、好ましくは35mm以上45mm以下、より好ましくは35mm以上40mm以下である。炉壁カーボン付着部16の高さが30mm以上50mm以下であり、この部分に炉壁カーボンが付着する。このことは、実施例からも明らかである。その結果、多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0038】
以上、炉壁カーボン収集用容器10によれば、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0039】
次に、本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法について説明する。図2は、本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法を説明するための模式図である。
【0040】
本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法は、
炉壁カーボン収集用容器10を用いた炉壁カーボンの収集方法であって、
炉壁カーボン収集用容器10の底部12とスペーサ部22との間に石炭を配置する工程Aと、
前記工程Aの後、石炭が内部に配置された炉壁カーボン収集用容器10を、700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器50に装入する工程Bと、
前記工程Bの後、炉壁カーボン収集用容器10を加熱器50から取り出し、炉壁カーボン付着部16に付着した炉壁カーボンを得る工程Cとを有する。
【0041】
<工程A>
本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法においては、まず、炉壁カーボン収集用容器10の底部12とスペーサ部22との間に石炭30を配置する。石炭30は、炉壁カーボンの収集対象となる石炭である。すなわち、本実施形態における炉壁カーボンの収集方法では、石炭30から発生する炉壁カーボンを収集する。石炭30は、炉壁カーボンの収集の目的(例えば、当該石炭から発生する炉壁カーボンの組成の調査等)に応じて、適宜、選択する。
【0042】
<工程B>
前記工程Aの後、石炭30が内部に配置された炉壁カーボン収集用容器10を、700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器50に装入する。加熱器50への装入は、炉壁カーボン収集用容器10をそのまま加熱器50へ投入してもよいが、好ましくは、炉壁カーボン収集用容器10の外径よりも内径が一回り大きい石英ガラス製試験管40を加熱器50内に予め配置しておき、この石英ガラス製試験管40に炉壁カーボン収集用容器10を装入することが好ましい。また、石英ガラス製試験管40を用いる場合、石英ガラス製試験管40の底に断熱材42を配置することが好ましい。多くの炉壁カーボンを収集するには、一次熱分解ガスの発生と同時に当該一次熱分解ガスを高温の炉壁カーボン付着部16に接触させることが効率的であるため、炉壁カーボン収集用容器10の底部ではなく、炉壁カーボン付着部16付近で多くの一次熱分解ガスを発生させるためである。
【0043】
断熱材42の材質としては、特に限定されないが、例えば、高温断熱ボード等が挙げられる。断熱材42の厚さは、特に限定されないが、例えば、20mm以上50mm以下、20mm以上40mm以下等とすることができる。断熱材42は、炉壁カーボン収集用容器10を石英ガラス製試験管40に熱間装入する際に、装入の衝撃で石英ガラス製試験管40が割れることを防止する緩衝材としての役割が大きいため、高温に耐えることができれば、特に限定されない。例えば、新日本サーマルセラミックス株式会社製、製品名:スーパーウールを用いることができる。
【0044】
加熱器50としては、700℃以上1200℃以下の温度範囲に調整可能であり、炉壁カーボン収集用容器10や石英ガラス製試験管40を収容可能であれば、特に限定されない。
【0045】
その後、700℃以上1200℃以下の温度範囲内で、乾留を行う。前記乾留の温度は、好ましくは1000℃以上1150℃以下、より好ましくは1100℃以上1150℃以下である。乾留の時間としては、石炭30の温度(炭芯温度)が所定の温度(前記乾留の温度内)に到達してから、3分以上10分以内が好ましく、3分以上5分以内がより好ましい。前記温度範囲、及び、乾留時間とすることにより、石炭30から好適に一次熱分解ガスを発生させることができ、炉壁カーボンを好適に収集することが可能となる。
【0046】
<工程C>
前記工程Bの後、炉壁カーボン収集用容器10を加熱器50から取り出し、炉壁カーボン付着部16に付着した炉壁カーボンを得る。
【0047】
なお、炉壁カーボン収集用容器10全体、又は、炉壁カーボン付着部16のみを使い回しし、工程A~工程Cを複数回繰り返し行ってもよい。これにより、より多くの炉壁カーボンを収集することができる。なお、炉壁カーボン付着部16のみを使い回しする場合、たの部材については、新しいものを用いればよい。
【0048】
以上、本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法によれば、炉壁カーボン収集用容器10を低温(例えば300℃程度)から昇温しているのではなく(すなわち、半冷間装入するのではなく)、予め900℃以上1200℃以下の温度範囲に調整された加熱器50に装入する(熱間装入する)ため、より短時間で、炉壁カーボンを収集することが可能となる。
また、本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法によれば、炉壁カーボン収集用容器10を用いるため、より短時間で、より多くの炉壁カーボンを収集することが可能となる。
【0049】
以上、本実施形態に係る炉壁カーボンの収集方法について説明した。
【実施例
【0050】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
(実施例1)
<炉壁カーボン収集用容器の準備>
まず、珪石煉瓦で構成された炉壁カーボン収集用容器を準備した。準備した炉壁カーボン収集用容器の寸法は以下の通りである。
【0052】
底部:円形板状、外径50mm、高さ(厚さ)10mm
石炭焼成部:中空円柱状、外径50mm、内径43mm、高さ45mm
炉壁カーボン付着部:中空円柱状、外径50mm、内径43mm、高さ30mm
蓋部:円形板状、外径50mm、高さ(厚さ)10mm、平面視における中心に外径2.5mmの貫通孔
スペーサ部:円柱状、外径40mm、高さ40mm
【0053】
なお、前記炉壁カーボン収集用容器は以下のように製造した。
まず、ボール盤[切削ジグ:マルトー社製、ダイヤモンドコアビット]を用いて、硅石煉瓦(ヨータイ社製、耐火煉瓦476AK/476BK)を中空円柱状(外径50mm、内径43mm)にくり抜いた。その後、くり抜いた中空円柱状の部材を、切断機[リファインテック社製リファインカッターRCA-237]を用いて、高さ30mm(炉壁カーボン付着部用)と高さ45mm(石炭焼成部用)にカットした。
また、その際に発生した廃材から外径50mm、厚さ10mmの底部と、外径50mm、厚さ10mmの蓋部と、外径40mm、高さ40mmの円柱状のスペーサ部とを作成した。
蓋部には、コンクリート用ドリルビットを用いて円形板状の中心(平面視での中心)に外径2.5mmの貫通孔を設けた。
【0054】
<炉壁カーボンの収集>
まず、炉壁カーボン付着部の煉瓦重量を計量した。次に、底部の外周と石炭焼成部の外周とが一致するように、底部上に石炭焼成部を配置し、底部と石炭焼成部とをセロハンテープ(登録商標)で固定した。次に、石炭焼成部内に38gの石炭サンプルをかさ密度(BD)0.94dry-g/cmになるように充填した。容器内での石炭の高さは約30mmとなった。
石炭サンプルとしては下記の性状のものを使用した。
(石炭サンプルの性状)
ASH:8.8%
VM:35.8%
TS:0.42%
ギーセラーIST:398℃
ギーセラーMFT:436℃
ギーセラーMFD:271ddpm
ギーセラーlogMF:2.43logddpm
ギーセラーST:464℃
Ro:0.74%
TI:16.9%
【0055】
次に、石炭サンプルの上にスペーサ部を載せた。次に、石炭焼成部の外周と炉壁カーボン付着部の外周とが一致するように、石炭焼成部上に炉壁カーボン付着部を配置し、石炭焼成部と炉壁カーボン付着部とをセロハンテープ(登録商標)で固定した。さらに、炉壁カーボン付着部の外周と蓋部の外周とが一致するように、炉壁カーボン付着部上に蓋部を配置し、炉壁カーボン付着部と蓋部とをセロハンテープ(登録商標)で固定した。
【0056】
内径50mmの石英ガラス製試験管の底に厚さ40mmの断熱材(日本サーマルセラミックス株式会社製、製品名:スーパーウール)を入れた。この石英ガラス製試験管を試験管炉(大阪精工社製)に入れ、1000℃に加熱保温した。なお、試験管炉は、本発明の加熱器に相当する。
【0057】
次に、石炭サンプル入りの炉壁カーボン収集用容器を石英ガラス製試験管に装入(熱間装入)し、20分乾留させた。その後、石英ガラス製試験管内にNガスを流入させながら炉壁カーボン収集用容器を試験管炉(加熱炉)から取り出し、150℃になるまで放冷を行った。なお、放冷は、蓋部の貫通孔から炉壁カーボン収集用容器内にNガスを流入させながら行った。
なお、セロハンテープ(登録商標)は、炉壁カーボン収集用容器を石英ガラス製試験管に装入するまでに各部(各部材)を互いに固定するために使用しており、1000℃の加熱により炭化して剥がれることとなるが、炉壁カーボンの収集に影響はない。
【0058】
150℃にまで放冷した後、炉壁カーボン付着部の煉瓦重量を計量し、乾留前の炉壁カーボン付着部の重量との差から、付着したカーボン重量を算出した。
【0059】
なお、上記乾留試験は、石炭サンプルに熱電対を挿入し、石炭サンプルの中心部分の温度をモニターしながら行った。図3は、炉壁カーボン収集用容器を石英ガラス製試験管に装入してからの経過時間と石炭サンプルの温度(炭芯温度)との関係を示すグラフである(「実施例」と表示されたグラフ)。
【0060】
上記にて使用した炉壁カーボン収集用容器(カーボンが付着したままの炉壁カーボン収集用容器)を用いて、同様の操作を繰り返し行った。
すなわち、底部と石炭焼成部とをセロハンテープ(登録商標)で固定した石炭焼成部内に38gの石炭サンプルを充填し、石炭サンプルの上にスペーサ部を載せ、石炭焼成部上に1回目の乾留のカーボンが付着したままの炉壁カーボン付着部を配置し、炉壁カーボン付着部上に蓋部を配置し、石炭サンプル入りの炉壁カーボン収集用容器を1000℃に保温された石英ガラス製試験管に装入(熱間装入)し、20分乾留させ、150℃になるまで放冷を行った。
本実施例では、合計3回の乾留を行った。
【0061】
3回の乾留でのカーボン付着量の合計を表1に示す。また、表1には、炉壁カーボン付着部の面積あたりのカーボン付着量、及び、仕込んだ石炭サンプルあたりのカーボン付着量も合わせて示す。さらに、図4に、乾留(焼成)回数と、カーボン付着量(累積)との関係のグラフを示す。図5に、乾留(焼成)回数と、炉壁カーボン付着部の面積あたりのカーボン付着量(累積)との関係のグラフを示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、実施例では、3回の乾留の合計で519.8mgの炉壁カーボンが得られた。また、炉壁カーボン付着部の面積は、内径43mm×3.14×高さ30mm=40.506cmであるので、得られたカーボンの、炉壁カーボン付着部の面積あたりのカーボン量は、519.8mg/40.506cm=約12.8mg/cmとなった。また、3回の乾留で石炭サンプルの仕込み量の合計は38g×3=114gであるので、519.8mg/114g=約4.6mg/石炭サンプル1グラムあたり、となった。
【0064】
(結果)
実施例1では、炉壁カーボン収集用容器として上記のように比較的全体の寸法が小さいものを使用しており、且つ、すでに1000℃に加温された石英ガラス製試験管に炉壁カーボン収集用容器を装入(熱間装入)しているため、炭芯温度が短時間で1000℃付近に到達している。そのため、図3からも分かるように、開始から約20分程度で乾留が完了し、放冷時間も含めて60分程度で1サイクルの操作を完了することができた。後述する比較例1では、1サイクルが約200分であることから、短時間で炉壁カーボンを収集することができたといえる。
また、後述する比較例1と比較して、多くの炉壁カーボンを収集できた。具体的に、実施例1では、3回の乾留で519.8mgのカーボンを収集できた。これは、比較例1の12.4mgと比較して、より多くのカーボンが収集できたといえる。
【0065】
(比較例1)
<炉壁カーボンの収集>
実施例1と同じ石炭サンプルを用い、特許文献1(特開2012-063213号公報)に記載の方法で、炉壁カーボンを収集した。具体的には、以下のようにして炉壁カーボンを収集した。
図6に示す装置を用い、試料部1と採取部2を構成する内径15mmの試験管に0.25mm以下に粉砕した石炭サンプルS1.3gをかさ密度(BD)約0.73g/cmで充填し、その上部に硅石煉瓦片Pを吊り下げた。下段ヒータHaを300℃、上段ヒータHbを900℃の設定温度に保持した炉にこの試験管を装填し、上段の硅石煉瓦片Pの温度が設定温度に達した後、試料部1である下段の温度を850℃まで5℃/minで昇温させ10分間乾留後取出した。窒素気流中室温まで自然放冷させ、煉瓦片Pを取り出し、重量の測定を行った。この操作を5回繰り返し行い、煉瓦片Pの1回毎の重量変化を記録した。
なお、硅石煉瓦片Pは、矩形板状であり、縦20mm×横10mm×厚さ1mmである。
【0066】
なお、上記乾留試験は、石炭サンプルに熱電対を挿入し、石炭サンプルの中心部分の温度をモニターしながら行った。図3は、試験管を炉に装入してからの経過時間と石炭サンプルの温度(炭芯温度)との関係を示すグラフである(比較例と表示されたグラフ)。
【0067】
5回の乾留のうち、3回のカーボン付着量の合計を表1に示す。表1には、硅石煉瓦片Pの面積あたりのカーボン付着量、及び、仕込んだ石炭サンプルあたりのカーボン付着量も合わせて示す。また、実施例1と同様に、比較例1についても、図4に、乾留(焼成)回数と、カーボン付着量(累積)との関係のグラフを、図5に、乾留(焼成)回数と、硅石煉瓦片Pの面積あたりのカーボン付着量(累積)との関係のグラフを、図6に、乾留(焼成)回数と、仕込んだ石炭サンプルあたりのカーボン付着量(累積)との関係のグラフを示す。
【0068】
(結果)
比較例1では、300℃から850℃まで5℃/minで昇温させている、すなわち、半冷間装入であるため、図3からも分かるように、乾留の1サイクルが完了するまで約200分かかった。また、3回の乾留で収集できたカーボンは12.4mgであった。
【0069】
<定性評価>
実施例1で得られたカーボンと、比較例1で得られたカーボンについて、X線回折装置(PANalytical社製、製品名:X’Pert PRO MRD)を用い、X線回折スペクトルを得た。測定条件は下記の通りとした。図8に得られたX線回折スペクトルを示す。
<測定条件>
測定装置:X線回折装置(PANalytical社製、製品名:X’Pert PRO MRD)
線源:CuKα線源
管電圧:45kV
管電流:40mA
走査速度:2θ=5~90°:38°/分
【0070】
図7の一番下のスペクトルは、珪石煉瓦のスペクトルである。図7の下から2番のスペクトルは、コークス炉(実炉)から採取した炉壁カーボンのスペクトルである。図7の下から3番のスペクトルは、煤のスペクトルである。図7の下から4番のスペクトルは、比較例1のカーボンのスペクトルである。図7の一番上のスペクトルは、実施例1のカーボンのスペクトルである。
コークス炉から採取した炉壁カーボンのスペクトルでは、2θ=20~24°にブロードなピークが見られ、さらに、2θ=25~30°にブロードなピークが見られた。また、煤のスペクトルでは、2θ=20~24°には、ブロードなピークが見られたが、2θ=25~30°にはブロードなピークが見られなかった。これらのことから、2θ=20~24°のブロードなピークは、煤に由来するピークと理解でき、2θ=25~30°のブロードなピークは、カーボンに由来するピークと理解できる。
ここで、実施例1では、2θ=20~24°にはブロードなピークは見られなかったが、2θ=25~30°にブロードなピークが見られた。一方、比較例1では、2θ=20~24°にブロードなピークが見られ、さらに、2θ=25~30°にブロードなピークが見られた。これらのことから、実施例1では、煤が少なく、カーボンが多く得られていることが分かった。
【0071】
ここで、燃料協会誌 Vol.48(1969) No.510 p.732によれば、炉壁カーボンは、層状であり、縞状にクラックの入った組織である一方、天井カーボンは、泡粒状、煤状であるとの報告がある。本発明者らは、SEM(走査電子顕微鏡)、及び、光学顕微鏡で、実施例1、及び、比較例1のカーボンを観察したところ、実施例1のカーボンは、層状であり、縞状にクラックの入った組織であった。一方、比較例1のカーボンは、泡粒状であった。これからのことから、実施例1では、天井カーボンは少なく、炉壁カーボンが多く含まれているものと考えられる。従って、実施例1の炉壁カーボンの収集方法によれば、炉壁カーボンだけを選択的に、高純度で収集することができる。このように、高純度で収集された炉壁カーボンは、実炉の操業に最適な石炭を選択する等の目的のために、好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0072】
10 炉壁カーボン収集用容器
12 底部
14 石炭焼成部
16 炉壁カーボン付着部
18 蓋部
20 密閉容器
22 スペーサ部
30 石炭
40 石英ガラス製試験管
42 断熱材
50 加熱器
【要約】
【課題】 より短時間でより多くの炉壁カーボンを収集することを可能とする炉壁カーボン収集用容器を提供すること。
【解決手段】 石炭をコークス化する際に発生する炉壁カーボンを収集するための容器であって、煉瓦で構成され、底部上に配置された中空円柱状の石炭焼成部と、石炭焼成部上に配置された中空円柱状の炉壁カーボン付着部と、蓋部とからなる密閉容器と、密閉容器内に封入された円柱状のスペーサ部とを備え、石炭焼成部及び炉壁カーボン付着部の外径が20mm以上52mm以下、石炭焼成部及び炉壁カーボン付着部の壁の厚さが1mm以上5mm以下、石炭焼成部の高さが30mm以上50mm以下、炉壁カーボン付着部の高さが30mm以上50mm以下、スペーサ部の外壁と、石炭焼成部及び炉壁カーボン付着部の内壁との隙間が1mm以上5mm以下、スペーサ部の高さが35mm以上55mm以下である炉壁カーボン収集用容器。
【選択図】 図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7