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特許7576160フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/32 20060101AFI20241023BHJP
【FI】
H01G4/32 511A
H01G4/32 544
H01G4/32 510
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2023511037
(86)(22)【出願日】2022-03-22
(86)【国際出願番号】 JP2022013293
(87)【国際公開番号】W WO2022210130
(87)【国際公開日】2022-10-06
【審査請求日】2023-09-22
(31)【優先権主張番号】P 2021058525
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075557
【弁理士】
【氏名又は名称】西教 圭一郎
(72)【発明者】
【氏名】神垣 耕世
【審査官】田中 晃洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/049380(WO,A1)
【文献】国際公開第2021/024565(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/097753(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/190437(WO,A1)
【文献】特開2017-014312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に第1金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する第1共通金属層および第2共通金属層がそれぞれ設けられた第1誘電体フィルムと、
一面に第2金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する前記第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた第2誘電体フィルムとが、
前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように複数枚積層された直方体状のフィルム積層体と、
前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記第1金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極を含み、
前記第1金属電極および前記第2金属電極に電気的に接続される前記第1金属層は、前記第1の方向に延びて、前記第1共通金属層および前記第2共通金属層にそれぞれ電気的に接続される複数の第1帯状金属層および第2帯状金属層を有し、
前記第2金属層は、前記第1の方向に延びて前記第1共通金属層および前記第2共通金属層と電気的に接続されない第1電極膜と第2電極膜とを有し、
平面透視して、前記第1帯状金属層と前記第1電極膜とが重なり、前記第2帯状金属層と前記第2電極膜とが重なるように配置されており、
前記第2帯状金属層は、前記第1帯状金属層よりも厚みが厚く、
前記第1電極膜は、前記第2電極膜よりも厚みが薄い、
フィルムコンデンサ。
【請求項2】
前記第1帯状金属層および前記第1電極膜は、少なくとも2つ以上に分割され、ヒューズ電極にて接続されている請求項1に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項3】
前記第1帯状金属層および前記第1電極膜の面積は同じである、請求項2に記載のフィルムコンデンサ。
【請求項4】
複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備え、
前記フィルムコンデンサが、請求項1~3のいずれか1つに記載のフィルムコンデンサを含む、連結型コンデンサ。
【請求項5】
スイッチング素子により構成されたブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備え、
前記容量部が、請求項1~3のいずれか1つに記載のフィルムコンデンサを含む、インバータ。
【請求項6】
電源と、該電源に接続されたインバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備え、
前記インバータが、請求項5に記載のインバータである、電動車輌。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルムコンデンサ、連結型コンデンサ、インバータおよび電動車輌に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術の一例は、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-95604号公報
【発明の概要】
【0004】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に第1金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する第1共通金属層および第2共通金属層がそれぞれ設けられた第1誘電体フィルムと、一面に第2金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する前記第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた第2誘電体フィルムとが、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように複数枚積層された直方体状のフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記第1金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極を含む。前記第1金属電極および前記第2金属電極に電気的に接続される前記第1金属層は、前記第1の方向に延びて、前記第1共通金属層および前記第2共通金属層にそれぞれ電気的に接続される複数の第1帯状金属層および第2帯状金属層を有し、前記第2金属層は、前記第1の方向に延びて前記第1共通金属層および前記第2共通金属層と電気的に接続されない第1電極膜と第2電極膜とを有し、平面透視して、前記第1帯状金属層と前記第1電極膜とが重なり、前記第2帯状金属層と前記第2電極膜とが重なるように配置されており、
前記第2帯状金属層は、前記第1帯状金属層よりも厚みが厚く、前記第1電極膜は、前記第2電極膜よりも厚みが薄い。
【0005】
本開示の連結型コンデンサは、複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備えている連結型コンデンサであって、前記フィルムコンデンサが、上記のいずれかに記載のフィルムコンデンサである。
【0006】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備えているインバータであって、前記容量部が上記のいずれかに記載のフィルムコンデンサである。
【0007】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記インバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図1B】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図1C】第1実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
図2】誘電体フィルムおよび電極膜の積層構造を示す拡大断面図である。
図3A】第2実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図3B】第2実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの平面図である。
図3C】第2実施形態のフィルムコンデンサの構成を示す図であり、誘電体フィルムの積層状態を示す断面模式図である。
図4】誘電体フィルムおよび電極膜の積層構造を示す拡大断面図である。
図5】フィルムコンデンサの変形例を示す、一部が切り欠かれた斜視図である。
図6】連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。
図7】インバータの構成を説明するための電気回路図である。
図8】電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
【0010】
本開示のフィルムコンデンサの基礎となる構成のフィルムコンデンサは、金属箔を電極に用いるものと、誘電体フィルム上に設けた蒸着金属を電極に用いるものとに大別される。そして、なかでも蒸着金属を電極(以下、蒸着電極)とする金属化フィルムコンデンサは、金属箔のものに比べて電極の占める体積が小さく、小型軽量化が図れることと、蒸着電極特有の自己回復性能(絶縁欠陥部で短絡が生じた場合に、短絡のエネルギーで絶縁欠陥部周辺の蒸着電極が蒸発・飛散して絶縁化し、コンデンサの機能が回復する性能)により絶縁破壊に対する信頼性が高いことから、従来から広く用いられている。
【0011】
しかしながら、フィルムコンデンサの課題の一つとして、電極膜の陽極酸化による静電容量の減少(失活)があった。従来は、環境からの湿分の侵入を抑制するために、モールド樹脂による封止や、電極膜の材料を通常のアルミニウムに加えて、より酸化しにくいマグネシウムが導入されている。また、酸化の影響を低減するために特定の膜厚を厚くすることがある。
【0012】
陽極側の電極を厚くする(シート抵抗を小さくする)ことにより、高温高湿下での寿命は伸びるが、コンデンサの特定の層にショートが発生した場合に、電極が飛散して電気的オープンとなる自己回復機能が低下して、ショート故障が発生することがある。
【0013】
本開示は、電極膜の陽極酸化による寿命低下を抑制することができ、安定した自己回復性能を有するフィルムコンデンサを提供することを目的とする。
【0014】
本開示の第1実施形態のフィルムコンデンサ11について説明する。図1は、第1実施形態のフィルムコンデンサ11の構成を示す図である。図1A図1Bは誘電体フィルム1,2の平面図、図1Cは誘電体フィルム1,2の積層状態を示す断面模式図である。図2は、誘電体フィルム1,2および金属層3A,3B,8の積層構造を示す拡大断面図である。本実施形態のフィルムコンデンサ11は、フィルム積層体4の両端面に第1メタリコン5Aおよび第2メタリコン5Bが形成されている。フィルム積層体4は、図1Aに示すような、ベースフィルムの一面に、第1金属層3A,3Bを有する誘電体フィルム(第1誘電体フィルム)1と、図1Bに示すような、ベースフィルムの一面に、第2金属層8を有する誘電体フィルム(第2誘電体フィルム)2とを、交互に積層して構成される。
【0015】
金属化フィルムは、誘電体フィルム1,2と、絶縁マージンが残るように誘電体フィルム1,2の上面に形成された第1金属層3A,3B,第2金属層8とを有している。各々の絶縁マージンSは、各々の誘電体フィルム1,2の幅方向において、誘電体フィルム1,2の長さ方向に延在するものである。
【0016】
ここで、誘電体フィルム1,2のフィルム幅方向(以下、単に幅方向と称する)とは、第1メタリコン5A,第2メタリコン5Bの対向方向である。
【0017】
次に、金属化フィルムを構成する誘電体フィルム1,2および第1金属層3A,3B,第2金属層8について詳しく説明する。
【0018】
誘電体フィルム1,2は、第1メタリコン5A,第2メタリコン5Bと接続されるフィルムであり、例えばポリプロピレン製である。誘電体フィルム1,2の厚さは、例えば2.8μmとされる。なお、誘電体フィルム1,2の材質または厚さはこれに限られるものではない。
【0019】
第1金属層3A,3B,第2金属層8は、例えば、アルミニウムが用いられている。
【0020】
誘電体フィルム1の第1金属層3Aは、第1共通金属層3Acと、第1共通金属層3Acに接続される第1帯状金属層3Aaとを含む。第1金属層3Bは、第2共通金属層3Bcと、第2共通金属層3Bcに接続される第2帯状金属層3Baとを含む。第1帯状金属層3Aaおよび第2帯状金属層3Baは、第1の方向に延びている。第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcは、誘電体フィルム1の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部において、それぞれ第2の方向に延びて設けられている。第1共通金属層3Acは、第1メタリコン5Aと電気的に接続し、第2共通金属層3Bcは、第2メタリコン5Bと電気的に接続する。本実施形態では、第1メタリコン5A側の第1帯状金属層3Aaと、第2メタリコン5B側の第2帯状金属層3Baとの間は、フィルム面が露出しており、電気的に絶縁された状態となっている。この露出したフィルム面は、誘電体フィルム1の第1の方向の中央部において、第2の方向に沿って連続する中央部絶縁領域Tcとなっている。
【0021】
誘電体フィルム2の第2金属層8は、いわゆるベタパターンの1つの面状金属層である。誘電体フィルム2の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部には、第2の方向に連続する縁部絶縁領域Tが設けられ、この縁部絶縁領域Tによって第2金属層8は、第1メタリコン5Aおよび第2メタリコン5Bと電気的に絶縁された状態となっている。
【0022】
第2金属層8は、第1電極膜15および第2電極膜16を有しており、第1電極膜15および第2電極膜16の間には、接続層71を有している。平面透視して、第1帯状金属層3Aaと第2電極膜16とが重なり、第2帯状金属層3Baと第1電極膜15とが重なるように配置されている。第2帯状金属層3Baは、第1電極膜15よりも厚みが厚い。第1電極膜15は、第2電極膜16よりも厚みが薄い。第1帯状金属層3Aaは、第2帯状金属層3Baよりも厚みが薄く、第2電極膜16よりも厚みが薄い。
【0023】
フィルム積層体4は、平面視で、第1金属層3Aの第1帯状金属層3Aaと、第2金属層8の第2電極膜16とが重なるように積層され、第1金属層3Bの第2帯状金属層3Baと、第2金属層8の第1電極膜15とが重なるように積層されている。フィルムコンデンサ11は、第1メタリコン5A側の第1共通金属層3Ac、第1帯状金属層3Aaと、第2電極膜16とによる積層型コンデンサと、第2メタリコン5B側の第2共通金属層3Bc、第2帯状金属層3Baと、第1電極膜15とによる積層型コンデンサとが、第2金属層8によって直列接続される。本実施形態のフィルムコンデンサ11は、シリーズコンデンサとすることで、高耐圧化を実現できる。
【0024】
本実施形態では、例えば、平面視で、複数の第1帯状金属層3Aa,第2帯状金属層3Baと第2金属層8とが重なっており、第2金属層8は、第1共通金属層3Acおよび第2共通金属層3Bcとは重なっていない。第2金属層8は、複数の面状金属層を含んでいてもよく、各面状金属層が、それぞれ平面視で第1帯状金属層3Aa、第2帯状金属層3Baと重なっていればよい。
【0025】
本開示の第2実施形態のフィルムコンデンサ11では、対向する第1帯状金属層3Aaと第2電極膜16とのうち少なくとも一方および対向する第2帯状金属層3Baと第1電極膜15とのうち少なくとも一方を薄くすることで、破壊発生時に、破壊箇所の電極膜を過渡的な大きな電流により飛散させることができる。これによって、自己回復性を得ることができる。
【0026】
本開示の第2実施形態のフィルムコンデンサ61について説明する。図3A図3Bは誘電体フィルム1,2の平面図、図3Cは誘電体フィルム1,2の積層状態を示す断面模式図である。図4は、誘電体フィルム1,2および金属層3A,3B,8の積層構造を示す拡大断面図である。第1実施形態の説明と重複する部分については説明を省略し、同一の参照符を用いることとする。第2帯状金属層3Baよりも厚みが薄い第1帯状金属層3Aaは、それぞれ2つ以上に分割された状態で、ヒューズ67によって接続されており、第2電極膜16よりも厚みが薄い第1電極膜15は、2つ以上に分割された状態で、ヒューズ68によって接続されている。
【0027】
本実施形態においては、ヒューズ67が、対向する第1帯状金属層3Aaと第2電極膜16とのうちの薄い方の第1帯状金属層3Aaに設けており、ヒューズ68が、対向する第2帯状金属層3Baと第1電極膜15とのうちの薄い方の第1電極膜15に設けている。これによって、金属膜の自己回復性が不十分な場合においても、ヒューズが切れて破壊箇所を切り離すことが出来る。
【0028】
各第1帯状金属層3Aaが2つ以上に分割された各小セルの面積の和に、各誘電体フィルム1に形成される第1帯状金属層3Aaの個数を乗じて得られる面積と、各誘電体フィルム2に形成される第1電極膜15が2つ以上に分割された各小セルの面積の和とを等しくする。たとえば、第1帯状金属層3Aaが小セル3Aa1,3Aa2の2つの小セルに分割されており、第1電極膜15が2つの小セル151,152に分割されている場合には、各小セル3Aa1,3Aa2の面積の和に、各誘電体フィルム1に形成される第1帯状金属層3Aaの個数を乗じて得られる面積と、各誘電体フィルム2に形成される小セル151,152の面積の和とを等しくする。
【0029】
本実施形態のフィルムコンデンサ61は、前述のフィルムコンデンサ11と同様にシリーズコンデンサとなっている。各小セルの面積を上記のようにすることで、直列接続された二つのコンデンサの容量が等しくなる。シリーズコンデンサにおいては、直列接続されるコンデンサにかかる電圧は各セルの容量比に依存する。本実施形態のように直列接続された二つのコンデンサの容量が同じ場合、電圧Vを印加すると、各コンデンサにかかる電圧は等しく(1/2)Vとなる。直列接続された二つのコンデンサの容量が異なる場合、一方のコンデンサの負荷が大きくなり、寿命が短くなる。シリーズコンデンサで構成する一方のコンデンサが破壊すると残りのコンデンサにかかる負荷が大きくなり、雪崩式に破壊が進み、短寿命のコンデンサになってしまう。
【0030】
本実施形態のフィルムコンデンサ61は、シリーズコンデンサを構成する二つのコンデンサにかかる負荷を均一にすることができ、長寿命で高信頼性な高耐電圧コンデンサを実現できる。
【0031】
図5は、フィルムコンデンサの変形例を示す、一部が切り欠かれた斜視図である。フィルムコンデンサAは、絶縁性および耐環境性の点から、フィルムコンデンサ11を外装部材7で被覆したものである。第1メタリコン5A,第2メタリコン5Bには、外部接続用のリード線6が設けられている。図5においては、外装部材7の一部を取り除いた状態を示しており、外装部材7の取り除かれた部分を破線で示している。
【0032】
図6は、連結型コンデンサの構成を模式的に示した斜視図である。図6においては構成を分かりやすくするために、ケースおよびモールド用の樹脂を省略して記載している。連結型コンデンサBは、複数個のフィルムコンデンサAが一対のバスバー21、23により並列接続された構成となっている。バスバー21、23は、端子部21a、23aと、引出端子部21b、23bと、により構成されている。端子部21a、23aは外部接続用であり、引出端子部21b、23bは、フィルムコンデンサAの外部電極である第1メタリコン5A、第2メタリコン5Bにそれぞれ接続される。
【0033】
図7は、インバータの構成を説明するための電気回路図である。図7には、整流後の直流から交流を作り出すインバータCの例を示している。本実施形態のインバータCは、図7に示すように、ブリッジ回路31と、容量部33を備えている。ブリッジ回路31は、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)のようなスイッチング素子と、ダイオードにより構成される。容量部33は、ブリッジ回路31の入力端子間に配置され、電圧を安定化する。インバータCは、容量部33として、上記のフィルムコンデンサ11,Aまたは連結型コンデンサBを含んでよい。
【0034】
なお、このインバータCの入力は、直流電源の電圧を昇圧する昇圧回路35に接続される場合と、直流電源に接続される場合がある。一方、ブリッジ回路31は駆動源となるモータジェネレータ(モータM)に接続される。
【0035】
図8は、電動車輌の構成を説明するための概略構成図である。図8には、電動車輌Dとしてハイブリッド自動車(HEV)の例を示している。
【0036】
図8における電動車輌Dは、駆動用のモータ41、エンジン43、トランスミッション45、インバータ47、電源(電池)49、前輪51aおよび後輪51bを備えている。
【0037】
この電動車輌Dは、駆動源としてモータ41またはエンジン43、もしくはその両方を備えている。駆動源の出力は、トランスミッション45を介して左右一対の前輪51aに伝達される。電源49は、インバータ47に接続され、インバータ47はモータ41に接続されている。
【0038】
また、図8に示した電動車輌Dは、車輌ECU53およびエンジンECU57を備えている。車輌ECU53は電動車輌D全体の統括的な制御を行う。エンジンECU57は、エンジン43の回転数を制御し電動車輌Dを駆動する。電動車輌Dは、さらに運転者等に操作されるイグニッションキー55、図示しないアクセルペダル、及びブレーキ等の運転装置を備えている。車輌ECUには、運転者等による運転装置の操作に応じた駆動信号が入力される。この車輌ECU53は、その駆動信号に基づいて指示信号をエンジンECU57、電源49、および負荷としてのインバータ47に出力する。エンジンECU57は、指示信号に応答してエンジン43の回転数を制御し、電動車輌Eを駆動する。本実施形態のフィルムコンデンサA,10または連結型コンデンサBを容量部33として適用したインバータCを、図8に示すような電動車輌Dに搭載することができる。
【0039】
なお、本実施形態のインバータCは、上記のハイブリッド自動車(HEV)のみならず、電気自動車(EV)または電動自転車、発電機、太陽電池など種々の電力変換応用製品に適用できる。
【0040】
本開示は次の実施の形態が可能である。
【0041】
本開示のフィルムコンデンサは、一面に第1金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する第2の方向に連続する第1共通金属層および第2共通金属層がそれぞれ設けられた第1誘電体フィルムと、一面に第2金属層が配設され、該一面の第1の方向の第1の縁部および第2の縁部に、前記第1の方向に直交する前記第2の方向に連続する縁部絶縁領域が設けられた第2誘電体フィルムとが、前記縁部絶縁領域の平面視位置が1枚おきに重なるように複数枚積層された直方体状のフィルム積層体と、前記フィルム積層体の前記第1の方向の一対の端面のそれぞれに形成され、前記第1金属層に電気的に接続される第1金属電極および第2金属電極を含む。前記第1金属電極および前記第2金属電極に電気的に接続される前記第1金属層は、前記第1の方向に延びて、前記第1共通金属層および前記第2共通金属層にそれぞれ電気的に接続される複数の第1帯状金属層および第2帯状金属層を有する。前記第2金属層は、前記第1の方向に延びて前記第1共通金属層および前記第2共通金属層と電気的に接続されない第1電極膜と第2電極膜とを有する。平面透視して、前記第1帯状金属層と前記第1電極膜とが重なり、前記第2帯状金属層と前記第2電極膜とが重なるように配置されている。前記第2帯状金属層は、前記第1帯状金属層よりも厚みが厚く、前記第1電極膜は、前記第2電極膜よりも厚みが薄い。
【0042】
本開示の連結型コンデンサは、複数のフィルムコンデンサと、該複数のフィルムコンデンサを接続するバスバーと、を備えている連結型コンデンサであって、前記フィルムコンデンサが、上記のいずれかに記載のフィルムコンデンサである。
【0043】
本開示のインバータは、スイッチング素子により構成されるブリッジ回路と、該ブリッジ回路に接続された容量部とを備えているインバータであって、前記容量部が上記のいずれかに記載のフィルムコンデンサである。
【0044】
本開示の電動車輌は、電源と、該電源に接続された上記インバータと、該インバータに接続されたモータと、該モータにより駆動する車輪と、を備えている。
【符号の説明】
【0045】
1 誘電体フィルム(第1誘電体フィルム)
2 誘電体フィルム(第2誘電体フィルム)
3A 金属層(第1金属層)
3B 金属層(第1金属層)
3Aa 第1帯状金属層
3Aa1、3Aa2,151,152 小セル
3Ba 第2帯状金属層
3Ac 第1共通金属層
3Bc 第2共通金属層
4 フィルム積層体
5A 第1メタリコン(第1金属電極)
5B 第2メタリコン(第2金属電極)
6 リード線
7 外装部材
8 第2金属層
11,61 フィルムコンデンサ
15 第1電極膜
16 第2電極膜
21,23 バスバー
21a 端子部
21b 引出端子部
23a 端子部
23b 引出端子部
31 ブリッジ回路
33 容量部
35 昇圧回路
41 モータ
43 エンジン
45 トランスミッション
47 インバータ
49 電源
51a 前輪
51b 後輪
53 車輌ECU
55 イグニッションキー
57 エンジンECU
67,68 ヒューズ
71 接続部
A フィルムコンデンサ
B 連結型コンデンサ
C インバータ
D 電動車輌
E 電動車輌
M モータ
S 絶縁マージン
T 縁部絶縁領域
Tc 中央部絶縁領域
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7
図8