(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】セル、電池及び電池パック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/54 20210101AFI20241023BHJP
【FI】
H01M50/54
(21)【出願番号】P 2023513945
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 CN2021114102
(87)【国際公開番号】W WO2022042493
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】202010898785.4
(32)【優先日】2020-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510177809
【氏名又は名称】ビーワイディー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BYD Company Limited
【住所又は居所原語表記】No. 3009, BYD Road, Pingshan, Shenzhen, Guangdong 518118, P. R. China
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】王信月
(72)【発明者】
【氏名】段平安
(72)【発明者】
【氏名】程▲はん▼
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0148705(US,A1)
【文献】特開2018-006114(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0072065(KR,A)
【文献】特開平10-188944(JP,A)
【文献】特開2002-298825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの電極体であって、各電極体が複数のタブを有し、複数の前記タブが集束された後にタブ端部段差領域、タブ溶接領域、予備溶接圧着領域を順に形成し、複数の前記タブの前記電極体から露出した部分がタブ露出領域を形成し、前記タブ露出領域内の前記電極体から露出した露出タブの長さが、前記タブ端部段差領域の幅、前記タブ溶接領域の幅、前記予備溶接圧着領域の幅、前記電極体の厚さ、前記タブのタブ折り曲げ角に基づいて決定される、少なくとも1つの電極体を含
み、
前記タブ端部段差領域の幅は、d
1
であり、前記タブ溶接領域にタブ保護片が配置され、前記タブ保護片の幅は、d
2
であり、前記予備溶接圧着領域の幅は、d
3
であり、前記電極体の厚さは、Dであり、複数の前記タブのうちのいずれか1つの前記タブのタブ折り曲げ角は、Aであり、前記タブ露出領域内の前記露出タブの長さは、Lであり、L=d
1
+d
2
+d
3
+D/2×tanAという関係式を満たす、ことを特徴とするセル。
【請求項2】
Aは、45°≦A≦135°という関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1に記載のセル。
【請求項3】
d
2とd
1の比の値は、Bであり、4<B<10という関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1に記載のセル。
【請求項4】
d
2とd
3の比の値は、Cであり、4<C<24という関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1又は3に記載のセル。
【請求項5】
0mm<d
1<8mmという関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1、3又は4に記載のセル。
【請求項6】
8mm≦d
2≦12mmという関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1又は3~5のいずれか一項に記載のセル。
【請求項7】
0.5mm≦d
3≦2mmという関係式を満たす、ことを特徴とする請求項
1又は3~6のいずれか一項に記載のセル。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか一項に記載のセルを含む、ことを特徴とする電池。
【請求項9】
請求項
8に記載の電池を含む、ことを特徴とする電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、ビーワイディー カンパニー リミテッドが2020年8月31日に提出した、発明の名称が「セル、電池及び電池パック」である中国特許出願第「202010898785.4」号の優先権を主張するものである。
【0002】
本願は、電池の分野に関し、特に、セル、電池及び電池パックに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術では、電極体の複数のタブが集束された後に一体に溶接され、複数のタブの電極体から露出した部分によってタブ露出領域が形成され、タブ露出領域の設計長さが長すぎる場合、タブの可動長さを増加させることになり、タブを収容するより大きな折り曲げ空間を必要とするが、より大きな折り曲げ空間を設計すると、セルの容量損失を引き起こし、折り曲げ空間を増大させないと、タブが押圧されることになり、正負極の接触を容易に引き起こし、セルが安全上のリスクを有する。
【0004】
タブ露出領域の設計長さが短すぎる場合、タブが折り曲げられた後に容易に引っ張られ、タブの断裂を引き起こし、タブの断裂は、一部の電極片が電気的な引き出しを行うことができないことにつながり、セルの容量損失を引き起こす。
【発明の概要】
【0005】
本願は、従来技術における技術的課題の1つを少なくとも解決することを目的とする。このため、本願は、タブが折り曲げられた後に引っ張られることを回避し、容量損失を回避することができるだけでなく、タブが押圧されることを防止することにより、電池の使用安全性を向上させることができるセルを提供する。
【0006】
本願は、電池を更に提供する。
【0007】
本願は、電池パックを更に提供する。
【0008】
本願に係るセルは、少なくとも1つの電極体であって、各前記電極体が複数のタブを有し、複数の前記タブが集束された後にタブ端部段差領域、タブ溶接領域、予備溶接圧着領域が順に形成され、複数の前記タブの前記電極体から露出した部分によってタブ露出領域が形成され、前記タブ露出領域内の前記電極体から露出した露出タブの長さが前記タブ端部段差領域の幅、前記タブ溶接領域の幅、前記予備溶接圧着領域の幅、前記電極体の厚さ、前記タブのタブ折り曲げ角に基づいて決定される、少なくとも1つの電極体を含む。
【0009】
本願のセルによれば、タブ露出領域内の電極体から露出した露出タブの長さをより適切にし、タブが折り曲げられた後に引っ張られることを回避し、断裂を防止することにより、セルの容量損失を回避することができ、かつ、タブの可動長さを適切にし、折り曲げ空間を適切にすることにより、セルの容量損失を回避するとともに、タブが押圧されることを防止することができ、これにより、セルの使用安全性を向上させることができる。
【0010】
本願のいくつかの実施例では、前記タブ端部段差領域の幅は、d1であり、前記タブ溶接領域にタブ保護片が配設され、前記タブ保護片の幅は、d2であり、前記予備溶接圧着領域の幅は、d3であり、前記電極体の厚さは、Dであり、複数の前記タブのうちのいずれか1つの前記タブのタブ折り曲げ角は、Aであり、前記タブ露出領域内の前記露出タブの長さは、Lであり、L=d1+d2+d3+D/2×tanAという関係式を満たす。
【0011】
本願のいくつかの実施例では、Aは、45°≦A≦135°という関係式を満たす。
【0012】
本願のいくつかの実施例では、d2とd1の比の値は、Bであり、4<B<10という関係式を満たす。
【0013】
本願のいくつかの実施例では、d2とd3の比の値は、Cであり、4<C<24という関係式を満たす。
【0014】
本願のいくつかの実施例では、0mm<d1<8mmという関係式を満たす。
【0015】
本願のいくつかの実施例では、8mm≦d2≦12mmという関係式を満たす。
【0016】
本願のいくつかの実施例では、0.5mm≦d3≦2mmという関係式を満たす。
【0017】
本願に係る電池は、上記セルを含む。
【0018】
本願に係る電池パックは、上記電池を含む。
【0019】
本願の追加の態様及び利点は、一部が以下の説明において示され、一部が以下の説明において明らかになるか又は本願の実施により理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本願の実施例に係るセルの電極体のタブが集束された後に折り曲げられる前の概略図である。
【
図3】本願の実施例に係るセルの電極体のタブが集束された後に折り曲げられる前の別の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本願の実施例を詳細に説明し、上記実施例の例は、図面に示され、全体を通して同一又は類似の符号は、同一又は類似の部品、或いは同一又は類似の機能を有する部品を示す。以下、図面を参照して説明される実施例は、例示的なものであり、本願を解釈するためのものに過ぎず、本願を限定するためのものであると理解すべきではない。
【0022】
以下、
図1~
図3を参照して、本願の実施例に係るセル10を説明する。
【0023】
図1~
図3に示すように、本願の実施例に係るセル10は、少なくとも1つの電極体20であって、各電極体20が複数のタブ201を有し、複数のタブ201が集束された後にタブ端部段差領域203、タブ溶接領域204、予備溶接圧着領域205が順に形成される、少なくとも1つの電極体20を含み、なお、タブ端部段差領域203は、各タブ201が集束されるときに湾曲する弧度が異なり、複数のタブ201が集束された後に複数のタブ201の自由端によって一体に形成されたタブ端部段差領域203を指す。予備溶接圧着領域205は、複数のタブ201が集束された後、集束部に超音波溶接又は他の溶接方式で集束された複数のタブ201を一体に圧着することにより形成された領域を指し、この領域を予備溶接圧着領域205と呼ぶ。タブ溶接領域204は、予備溶接圧着領域205内に、タブ201とタブ引き出し片をレーザ溶接又は他の溶接方式によって一体に溶接されて形成された領域を指す。複数のタブ201の電極体20から露出した部分によってタブ露出領域206が形成され、タブ201の延在方向、すなわち
図2における左右方向において、タブ露出領域206内の電極体
20から露出した露出タブの長さは、タブ端部段差領域203の幅、タブ溶接領域204の幅、予備溶接圧着領域205の幅、電極体20の厚さ、タブ201のタブ折り曲げ角に基づいて決定される。
【0024】
本願のいくつかの実施例では、タブ端部段差領域203の幅方向、タブ溶接領域204の幅方向、予備溶接圧着領域205の幅方向は、いずれも
図2における左右方向であり、電極体20の厚さ方向は、
図2における上下方向であり、電極体20のタブ201が集束された後に折り曲げられる前は、露出タブは、
図2における左右方向に延在する。各電極体20は、複数のセパレータ202を有し、複数のタブ201のセパレータ202から露出した部分によってタブ露出領域206が形成される。
【0025】
タブ露出領域206の長さをタブ端部段差領域203の幅、タブ溶接領域204の幅、予備溶接圧着領域205の幅、電極体20の厚さ、タブ201のタブ折り曲げ角に基づいて決定することにより、タブ露出領域206内の電極体20から露出した露出タブの長さをより適切にし、タブ201が折り曲げられた後に引っ張られることを回避し、タブ201の断裂を防止することができることにより、一部の電極片が電気的な引き出しを行うことができないことを回避し、更にセル10の容量損失を回避することができる。かつ、タブ201の可動長さを適切にし、タブ201を収容する折り曲げ空間を適切にすることにより、セル10の容量損失を回避するとともに、タブ201が押圧されることを防止することができ、これにより、セル10の正負極の接触を防止し、セル10の短絡を防止し、更にセル10の使用安全性を向上させることができる。
【0026】
本願のいくつかの実施例では、
図2に示すように、タブ端部段差領域203の幅は、d
1であり、タブ溶接領域204にタブ保護片207が配設され、タブ保護片207の幅は、d
2であり、タブ保護片207の幅方向は、
図2における左右方向であり、予備溶接圧着領域205の幅は、d
3であり、電極体20の厚さは、Dであり、複数のタブ201のうちのいずれか1つのタブ201のタブ折り曲げ角は、Aであり、タブ露出領域206内の露出タブの長さは、Lであり、L=d
1+d
2+d
3+D/2×tanAという関係式を満たし、このように配設することにより、タブ露出領域206内の電極体20から露出した露出タブの長さがより適切であることを保証し、タブ201が折り曲げられた後に引っ張られることを更に回避し、タブ201の断裂を更に防止することができることにより、一部の電極片が電気的な引き出しを行うことができないことを回避し、更にセル10の容量損失を回避することができる。かつ、タブ201の可動長さがより適切であることを保証することができ、タブ201を収容する折り曲げ空間をより適切にすることにより、セル10の容量損失を更に回避するとともに、タブ201が押圧されることを更に防止することができ、これにより、セル10の正負極の接触を更に防止し、セル10の短絡をよりよく防止し、更に電池100の使用安全性を更に向上させることができる。
【0027】
本願のいくつかの実施例では、Aは、45°≦A≦135°という関係式を満たし、好ましくは、60°≦A≦120°という関係式を満たし、このように配設することにより、タブ201の折り曲げ角をより適切にし、タブ露出領域206内の電極体20から露出した露出タブの長さ寸法を合理的にすることができ、セパレータ202を押圧することを防止することもでき、これにより、セル10の正負極の接触を更に防止することができ、更にセル10の短絡をよりよく防止することができる。
【0028】
本願のいくつかの実施例では、d2とd1の比の値は、Bであり、4<B<10という関係式を満たし、更に、d2とd3の比の値は、Cであり、4<C<24という関係式を満たす。このように配設することにより、d2とd1、d2とd3の比率関係を適切にし、電極体20の生産及び製造を有利にすることができ、かつ、タブ溶接領域204の溶接幅を適切にし、複数のタブ201を一体に確実に溶接することを保証することができ、これにより、セル10の使用過程における信頼性を向上させることができる。
【0029】
本願のいくつかの実施例では、0mm<d1<8mmという関係式を満たし、好ましくは、d1が4mmであり、このように配設することにより、タブ端部段差領域203の幅を適切にし、タブ端部段差領域203の幅が広すぎることを回避することができ、これにより、タブ露出領域206の長さをより適切にすることができる。
【0030】
本願のいくつかの実施例では、8mm≦d2≦12mmという関係式を満たし、好ましくは、d2が10mmであり、このように配設することにより、タブ保護片207の幅を適切にし、タブ溶接領域204の溶接幅を保証することができ、これにより、タブ露出領域206の長さを適切にし、電極体20の生産及び製造をより有利にすることができる。
【0031】
本願のいくつかの実施例では、0.5mm≦d3≦2mmという関係式を満たし、好ましくは、d3が1.5mmであり、複数のタブ201を溶接する場合、d3を1.5mmに設定することにより、予備溶接圧着領域205の幅を適切にし、予備溶接押圧ブロックが複数のタブ201を押圧することができ、これにより、複数のタブ201の溶接品質を保証し、更にセル10の生産品質を保証することができる。
【0032】
本願の実施例に係る電池100は、上記実施例のセル10を含み、セル10を電池100に配設することにより、タブ露出領域206内の電極体20から露出した露出タブの長さをより適切にし、タブ201が折り曲げられた後に引っ張られることを回避し、断裂を防止することにより、セル10の容量損失を回避することができ、更に電池100の容量損失を回避することができ、かつ、タブ201の可動長さを適切にし、折り曲げ空間を適切にすることにより、セル10の容量損失を回避し、タブ201が押圧されることを防止することができ、これにより、セル10の使用安全性を向上させることができ、更に電池100の使用安全性を向上させることができる。
【0033】
本願の実施例に係る電池パックは、上記実施例の電池100を含み、電池100を電池パック内に配設することにより、電池パックの容量損失を回避することができ、電池パックの使用安全性を向上させることもできる。
【0034】
本明細書の説明では、「一実施例」、「いくつかの実施例」、「例示的な実施例」、「例」、「具体的な例」又は「いくつかの実施例」などの参照を表す語句は、該実施例又は例を組み合わせて説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性が本願の少なくとも1つの実施例又は例に含まれることを意味する。本明細書では、上記語句に対する例示的な言及は、必ず同じ実施例又は例に限定されるわけではないということを意味する。また、説明された具体的な特徴、構造、材料又は特性は、いずれか1つ又は複数の実施例又は例において適切に組み合わせることができる。
【0035】
本願の実施例を例示して説明したが、当業者であれば理解できるように、本願の原理及び趣旨から逸脱しない場合、これらの実施例に対して、様々な変更、修正、置換及び変形を行うことができ、本願の範囲が特許請求の範囲及びその均等物によって限定される。