(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】多孔質ポリマー基体内に階層的かつナノ多孔質金属を含む複合材料
(51)【国際特許分類】
C08J 9/40 20060101AFI20241023BHJP
B82Y 30/00 20110101ALI20241023BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20241023BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
C08J9/40 CES
C08J9/40 CEW
B82Y30/00
C08K3/08
C08L27/18
(21)【出願番号】P 2023564162
(86)(22)【出願日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 US2022024869
(87)【国際公開番号】W WO2022225790
(87)【国際公開日】2022-10-27
【審査請求日】2023-11-15
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2022-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391028362
【氏名又は名称】ダブリュ.エル.ゴア アンド アソシエイツ,インコーポレイティド
【氏名又は名称原語表記】W.L. GORE & ASSOCIATES, INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】マーク ディー.エドマンドソン
(72)【発明者】
【氏名】プーオン キュー.ホア
(72)【発明者】
【氏名】コーリー エー.エイブラムズ
(72)【発明者】
【氏名】ロチタ アール.ネイサン
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】特表2021-522092(JP,A)
【文献】特表2024-515105(JP,A)
【文献】特表2017-519619(JP,A)
【文献】特開2018-090767(JP,A)
【文献】特開2008-214462(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第112300529(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 44/00-44/60
B29C 67/20
C08J 9/00-9/42
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
C08J 9/40
B82Y 30/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料であって、
多孔質ポリマー基体と、
前記多孔質ポリマー基体内部に存在し、そして個数基準ナノ孔径分布と容積基準ナノ孔径分布とを含むナノ多孔質金属であって、前記容積基準
ナノ孔径分布の平均が、前記個数基準ナノ孔径分布の平均よりも少なくとも200%大きい、ナノ多孔質金属と、
を含む複合材料。
【請求項2】
前記多孔質ポリマー基体が、複数の相互接続型孔を画定するように協働する複数のノードと複数のフィブリルとを含み、前記ナノ多孔質金属が、前記ノード及び前記フィブリルの間の孔内に少なくとも部分的に含有されている、請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
前記ナノ多孔質金属が、サイズ
で10nm
~200nmのナノ孔を含む、請求項1又は2に記載の複合材料。
【請求項4】
前記多孔質ポリマー基体がフルオロポリマー又はポリオレフィンを含む、請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項5】
前記多孔質ポリマー基体が、延伸ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリエチレンを含む、請求項4に記載の複合材料。
【請求項6】
前記ナノ多孔質金属が白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル、又はこれらの組み合わせ又は合金を含む、請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項7】
前記ナノ多孔質金属が平均直径
で1nm
~500nmのナノ孔を含み、
前記多孔質ポリマー基体が、前記ナノ多孔質金属のナノ孔よりも大きいマイクロ孔を含む、
請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項8】
前記容積基準
ナノ孔径分布の平均が、前記個数基準ナノ孔径分布の平均よりも少なくとも500%大きい、請求項1
又は2に記載の複合材料。
【請求項9】
前記個数基準ナノ孔径分布が単峰性且つ右歪曲型である、請求項8に記載の複合材料。
【請求項10】
複合材料であって、
複数の相互接続型マイクロ孔を含むマイクロ多孔質ポリマー基体と、
前記マイクロ多孔質ポリマー基体のマイクロ孔内に少なくとも部分的に含有され、且つギャップを画定するように前記マイクロ多孔質ポリマー基体から分離されたナノ多孔質金属と
を含む複合材料。
【請求項11】
前記マイクロ多孔質ポリマー基体が、メンブレン、チューブ、及び繊維のうちの1つである、請求項10に記載の複合材料。
【請求項12】
前記マイクロ多孔質ポリマー基体がフルオロポリマー又はポリオレフィンを含む、請求項10又は11に記載の複合材料。
【請求項13】
前記マイクロ多孔質ポリマー基体が、延伸ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリエチレンを含む、請求項12に記載の複合材料。
【請求項14】
前記ナノ多孔質金属が、単峰性且つ右歪曲型である個数基準ナノ孔径分布を有している、請求項10
又は11に記載の複合材料。
【請求項15】
前記ナノ多孔質金属が、サイズ
で10nm
~200nmのナノ孔を含む、請求項10
又は11に記載の複合材料。
【請求項16】
前記ギャップが前記複合材料の表面でz方向にアクセス可能であり、そして前記ナノ多孔質金属が少なくともx-y方向に導電性を提供する、請求項10
又は11に記載の複合材料。
【請求項17】
複合材料であって、
複数の相互接続型マイクロ孔を有するマイクロ多孔質ポリマーを含む第1の連続的な網状構造と、
ナノ多孔質金属を含む第2のほぼ連続的な網状構造であって、前記第2のほぼ連続的な網状構造が、前記第1の連続的な網状構造に貫入しており、前記複合材料のポロシティが少なくとも30vol%である、第2のほぼ連続的な網状構造と、
を含む複合材料。
【請求項18】
前記第1の連続的な網状構造が、金属化されておらず且つ第2のほぼ連続的な網状構造とは異なる界面領域を含む、請求項17に記載の複合材料。
【請求項19】
前記界面領域が前記第1の連続的な網状構造の、非積層型の一体部分である、請求項18に記載の複合材料。
【請求項20】
前記ナノ多孔質金属が、ギャップを画定するように前記マイクロ多孔質ポリマーから分離されている、請求項17
又は18に記載の複合材料。
【請求項21】
前記ナノ多孔質金属の少なくとも99重量%が、湿潤屈曲粒子化試験から1日後に前記複合材料内に保持されている、請求項17
又は18に記載の複合材料。
【請求項22】
前記ナノ多孔質金属の少なくとも99.9wt%が、湿潤屈曲粒子化試験から1日後に前記複合材料内に保持されている、請求項17
又は18に記載の複合材料。
【請求項23】
前記ナノ多孔質金属が、前記複合材料の40vol%未満を占める、請求項17
又は18に記載の複合材料。
【請求項24】
請求項1
、2、10、11、17又は18に記載の複合材料を含む電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年4月19日付けで出願された仮出願第63/176,669号の利益を主張し、また2022年4月1日付けで出願された仮出願第63/326,593号の利益を主張する。これらはあらゆる目的のために全体を参照することにより本明細書中に援用される。
【0002】
本開示は大まかに言えば、多孔質ポリマー基体(基体または基材)内部の階層的且つナノ多孔質の金属相を含む複合材料、及びこのような材料を製造し使用する関連方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ナノ多孔質金属が、酵素系バイオセンサ及びバイオ燃料電池を含む広範な用途のために幅広く研究されている。このような関心は、導電性、高い金属表面積、及びナノスケール孔を含む特性の組み合わせによって駆り立てられている。まとめて言うならば、これらの特性によって、ナノ多孔質金属は実験室規模のベンチトップ又はin vivo試験において電極に転換されると優れたものになり得た。これらの電極は金属箔と比較して非常に高い電気化学的表面積を呈し、また、(例えばセンサに関して)より高い信号応答、又は(例えばバイオ燃料電池に関して)幾何学的面積に対して正規化されたより高い電流密度を呈している。これらはまた、生物付着剤、例えばアルブミン及びフィブリノゲンの存在において、電気化学的信号のより大きい保持を示した。この現象は一般には「耐生物付着性」と呼ばれ、ナノスケール孔による生物付着物質のサイズ排除に起因している。しかしながら、強い関心及び10年を超える開発にもかかわらず、ナノ多孔質金属は、大規模な商業化を妨げる制約をいまだに呈している。
【0004】
伝統的なナノ多孔質金属の第1の制約は、これらの比較的乏しい機械特性である。ナノ多孔質金属は脆弱であり、裂けやすく、このことは取り扱い及び処理を難しくする。これらの脆弱性はまた、目標用途の長期間の耐久性に関する懸念を高める。これらの機械特性は、これらの材料を、キャリアフィルム、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)上に置かねばならなくなる前に、いかに薄く形成し得るか、その薄さ(典型的にはおよそ100μm)を制限することがある。これらのキャリアフィルムの使用は多くの場合、望ましいものではない。なぜならば、これらのキャリアフィルムはナノ多孔質金属の1つの側への、そして1つの側からの質量移動を遮断するからである。キャリアフィルムは、目標用途、具体的にはin vivo用途、又は高温又は困難な化学的環境への暴露を必要とする用途における安定性の問題を引き起こすおそれもある。
【0005】
伝統的なナノ多孔質金属の第2の制約は、これらが典型的に製造される際の厄介で無駄の多いプロセスである。標準的なプロセスは、金属箔を脱合金することを含む。これは典型的には有害な化学物質、例えば強鉱酸の使用を伴う。これは、本質的にはサブトラクティブ法であり、したがって無駄が多い。脱合金はまた結果として、箔の著しい体積収縮を招く。体積収縮は、箔を多層複合体と一緒に使用することを困難にする。なぜならば、これは界面応力を増大させ、これにより層間剥離及び/又は撓みがもたらされるおそれがあるからである。さらに、センサのような用途においてしばしば望まれる複雑な形状を製造するために箔を切断することもやはりサブトラクティブ法であり、したがって無駄が多い。
【0006】
伝統的なナノ多孔質金属の最後の制約は、ナノ孔それ自体の孔径である。この孔径はいくつかの文脈において有利ではあるものの、他の文脈では極めて制限的である。例えば、ナノスケール孔内への質量移動が著しく制限されることがあり、電気化学反応の活性部位のために、内部表面積を利用することを難しくする。別の例としては、ナノスケール孔は、いくつかのin vivo用途において望ましいことがある組織の内部成長及び血管新生を許すにはあまりにも小さいのが典型的である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、多孔質ポリマー基体と、前記多孔質ポリマー基体内部に存在するナノ多孔質金属とを含む複合材料を提供する。ナノ多孔質金属は階層構造を有してよい。ナノ多孔質金属は、単峰性且つ右歪曲型である個数基準ナノ孔径分布を有してよい。多孔質ポリマー基体はある特定の用途において、組織統合及び/又は組織内方成長を支持してよい。複合材料は、電気化学的被分析物バイオセンサ及び他の用途において使用されてよい。本開示は、多孔質ポリマー基体を使用した伝統的なナノ多孔質金属の制約のうちの1つ又は2つ以上に対処する。
【0008】
本開示の模範的実施態様によれば、複合材料であって、多孔質ポリマー基体と、前記多孔質ポリマー基体内部に存在し、そして個数基準ナノ孔径分布と容積基準ナノ孔径分布とを含むナノ多孔質金属であって、前記容積基準孔径分布の平均が、前記個数基準ナノ孔径分布の平均よりも少なくとも200%大きい、ナノ多孔質金属と、を含む複合材料が開示される。
【0009】
本開示の別の模範的実施態様によれば、複合材料であって、複数の相互接続型マイクロ孔を含むマイクロ多孔質ポリマー基体と、前記マイクロ多孔質ポリマー基体のマイクロ孔内に少なくとも部分的に含有され、且つギャップを画定するように前記マイクロ多孔質ポリマー基体から分離されたナノ多孔質金属とを含む複合材料が開示される。
【0010】
本開示のさらに別の模範的実施態様によれば、複合材料であって、複数の相互接続型マイクロ孔を有するマイクロ多孔質ポリマーを含む第1の連続的な網状構造と、ナノ多孔質金属を含む第2のほぼ連続的な網状構造であって、前記第2のほぼ連続的な網状構造が、前記第1の連続的な網状構造に貫入しており、前記複合材料のポロシティが少なくとも30vol%である、第2のほぼ連続的な網状構造と、を含む複合材料が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
添付の図面は、本開示のさらなる理解のために含まれ、そして本明細書中に組み込まれ、且つ本明細書の一部を構成し、実施態様を例示し、そして記載内容と一緒に、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【0012】
【
図1】
図1は、本開示の複合材料を示す断面図である。
【0013】
【
図2】
図2は、試料のシート抵抗を測定するために使用される装置を示す概略図である。
【0014】
【
図3A】
図3Aは、実施例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合物のマイクロアーキテクチャを示す走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図3B】
図3Bは、実施例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合物のマイクロアーキテクチャを示す走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【
図3C】
図3Cは、実施例1のナノ多孔質金(NPG)/延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合物のマイクロアーキテクチャを示す走査電子顕微鏡写真(SEM)画像である。
【0015】
【
図4A】
図4Aは、実施例1のNPG/ePTFE複合体を示す別の断面SEM画像である。
【
図4B】
図4Bは、ナノ孔径分析のために処理された同じ画像である。
【
図4C】
図4Cは、ナノ孔が分離された時点での同じ画像である。
【0016】
【
図5】
図5は、実施例1のNPG/ePTFE複合体の金属相内部のナノ孔径分布を示すヒストグラムである。
【0017】
【
図6】
図6は、実施例1のNPG/ePTFE複合体の金属相内部の孔の最小フェレに対する短軸の比を示すヒストグラムである。
【0018】
【
図7】
図7は、実施例1のNPG/ePTFE複合体の金属相内部の孔の最大フェレに対する長軸の比を示すヒストグラムである。
【0019】
【
図8A】
図8Aは、実施例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合物のマイクロアーキテクチャを示すSEM画像である。
【
図8B】
図8Bは、実施例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合物のマイクロアーキテクチャを示すSEM画像である。
【
図8C】
図8Cは、実施例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合物のマイクロアーキテクチャを示すSEM画像である。
【
図8D】
図8Dは、実施例3のコンフォーマル金(CG)/ePTFE複合物のマイクロアーキテクチャを示すSEM画像である。
【0020】
【
図9】
図9は、実施例6のNPG/ePTFE作業電極/銀インバイビング処理型疑似参照電極のサイクリック・ボルタモグラムを示すグラフである。
【0021】
【
図10】
図10A及び10Bは、実施例9のNPG/ePTFE材料を含むGOx系グルコースセンサのグルコース反応を示すグラフである。
【0022】
【
図11】
図11A及び11Bは、実施例9のCG/ePTFE材料を含むGOx系グルコースセンサのグルコース反応を示すグラフである。
【0023】
【
図12】
図12は、実施例10の電解質溶媒表面張力に対する電気化学的表面積の依存性を示すグラフである。
【0024】
【
図13】
図13は、湿潤屈曲粒子化耐久性試験法を示す図である。
【
図14】
図14は、湿潤屈曲粒子化耐久性試験法を示す図である。
【
図15】
図15は、湿潤屈曲粒子化耐久性試験法を示す図である。
【0025】
【
図16】
図16は、実施例11の毛管流動ポリメトリのデータを示すグラフである。
【0026】
【
図17】
図17は、電気化学的表面積(ECSA)試験のための電気化学セルの構成を示す概略図である。
【0027】
【
図18】
図18は、実施例1のNPG/ePTFE複合体を、実施例14の稠密銀/ePTFE(CPS/ePTFE)複合体と比較して、2000倍の倍率で示す断面SEM画像を含む。
【0028】
【
図19】
図19は、実施例1のNPG/ePTFE複合体を、実施例14のCPS/ePTFE複合体と比較して、20000倍の倍率で示す断面SEM画像を含み、そしてまた、ナノ孔径分析のために対応画像から分離されたナノ孔相を示す。
【0029】
【
図20】
図20は、実施例1のNPG/ePTFE複合体、及び実施例14のCPS/ePTFE複合体の金属相内部の個数基準ナノ孔径分布及び容積基準ナノ孔径分布を比較したヒストグラムを含む。
【発明を実施するための形態】
【0030】
定義
本開示は、限定的に読まれるようには意図されない。例えば、本出願において使用される用語は、当業者がこのような用語を帰属させるであろう意味に照らして幅広く読まれるべきである。
【0031】
不正確を表す用語に関しては、表明された測定値を含み、そしてまた表明された測定値にかなり近い任意の測定値をも含む測定値を意味するために、「約(about)」及び「ほぼ(approximately)」という用語を互いに置き換え可能に用いることがある。表明された測定値にかなり近い測定値は、当業者によって理解され容易に突き止められるようなかなり僅かな量だけ、表明された測定値から逸脱している。このような逸脱は、例えば測定誤差、測定及び/又は製造設備較正の差、測定値の読み出し及び/又は設定に際してのヒューマンエラー、他の構成部分と関連する測定値の差を考慮した性能及び/又は構造パラメータ、特定の実施シナリオを最適化するために行われる微調整、人又は機械による物体の不正確な調整及び/又は操作、及び/又はこれに類するものに帰することができる。当業者がこのようなかなり僅かな差の値を容易には突き止められないと判断される場合には、「約(about)」及び「ほぼ(approximately)」という用語は、表明された値のプラス又はマイナス10%を意味するものと理解することができる。
【0032】
本明細書中に使用される「組織統合(tissue integration)」は、所期使用期間にわたるデバイスの所期性能を損ない得る周囲組織の有害な反応、例えば炎症及び被包を最小限に抑えながら、デバイスを周囲組織に暴露すること意味する。本質的には、また理論に縛られたくはないが、デバイスは周囲組織内で生体適合性の静穏状態に達する。
【0033】
本明細書中に使用される「組織内方成長」という表現は、組織、細胞、毛細血管、及び/又は他の身体構成部分が、多孔質材料の全厚又は部分厚内へ成長することを意味する。
【0034】
本明細書中に使用される「マイクロ多孔質(microporous)」という用語は、単一孔径又は孔径分布を有する孔を含む材料を意味する。平均孔径は約0.1μm~約50μmであってよい。言うまでもなく、マイクロ多孔質材料は、いくつかのマクロ孔を含む、この平均径範囲から外れた個別の孔を含んでよい。マイクロ多孔質材料は下記のように、泡立ち点分析又は別の適宜の試験によって特徴付けられる特徴的な孔径又は公称孔径を有してよい。メンブレンの平均孔径は例えば、毛管流動ポロメトリ(capillary flow porometry)によって判定される平均流動孔径(mean flow pore size)によって特徴付けられてよい。
【0035】
本明細書中に使用される「ナノ多孔質(nanoporous)」という用語は、単一孔径又は孔径分布を有する孔を含む材料を意味する。個数基準平均孔径は約1nm~約500nmであってよい。前記分布は約1nm直径~約10nm、約10nm~約100nm、又は約100nm~約500nmの範囲の異なるサイズを有する複数の孔集合体を含むことができる。言うまでもなく、ナノ多孔質材料は、いくつかのマイクロ孔を含む、これらの範囲から外れた個別の孔を含んでよい。孔径は下記のように、定量画像分析によって特徴付けられてよい。
【0036】
本明細書中に使用される「コンフォーマル(conformal)」という用語は、下側の多孔質基体の内部表面を被覆する被覆層を意味する。被覆層が導電性材料を含む実施態様では、コンフォーマル被膜は、被覆層の表面を通る、そしてこの表面に沿った導電性を達成し得る。
【0037】
本明細書中に使用される「インバイビング処理される(imbibed)」という用語は、流体キャリアを使用して多孔質基体の孔内部に堆積される材料を意味するが、しかしこの材料は、多孔質基体のマトリックス内へはほとんど取り込まれることがないので、多孔質基体はほとんど無傷のままである。
【0038】
本明細書中に使用される「導電性」という表現は、当該材料の電気抵抗が材料を所期用途における使用にとって不適当なものにしないように、低い抵抗で電子を輸送する材料を意味する。実際には、この表現は典型的には、約1x10-3オーム x cm未満の抵抗率を意味する。
【0039】
本明細書中に使用される「非導電性材料(electrically non-conductive material)」及び「電気絶縁材料(electrically insulating material)」は、当該材料の電気伝導度が材料を所期用途における使用にとって不適当なものにしないように、高い抵抗を有する材料を意味する。実際には、この表現は典型的には、約1x108オーム x cm超の抵抗率を意味する。
【0040】
詳細な説明
複合材料
最初に
図1を参照すると、金属領域220を有する多孔質ポリマー基体210を含む複合材料200の実施態様が示されている。金属領域220は、
図1に示されているように、多孔質ポリマー基体210の部分厚に及んでよく、或いは多孔質ポリマー基体210の全厚に及んでもよい。金属領域220は、多孔質ポリマー基体210の厚さを超えて、他の層内へ延びていてもよい。金属領域220は、多孔質ポリマー基体210内部に存在するナノ多孔質金属224を含む。以下にさらに論じるように、金属領域220は、複合材料200を通して導電性を提供し得る。
【0041】
複合材料200は、一例としては電気化学的被分析物バイオセンサを含む、広範な用途のために使用されてよい。本明細書中に記載され、実施例で実証されるように、複合材料200は、伝統的なナノ多孔質金属を凌ぐある特定の利益を有し得る。まず、多孔質ポリマー基体210は、ナノ多孔質金属224を支持又は強化することにより、伝統的なキャリアフィルムなしでその機械特性を向上させ得る。また、多孔質ポリマー基体210は、足場として役立つことにより、アディティブ製造法を容易にし得る。さらに、多孔質ポリマー基体210は、制御可能な、そしてナノ多孔質金属224よりも大きな平均孔径を有し得るので、ナノ多孔質金属224のナノ孔はポリマー基体210の孔内部に実質的に収まる。これらの利益はまた、複合材料200のより幅広い用途を支援し得る。
【0042】
複合材料200は、1つ又は2つ以上の階層フィーチャを含んでよい。例えば、複合材料200は、金属領域220とは異なる界面領域217を有することにより、金属領域220を保護し、生体界面の調整を可能にし得る。ある特定の実施態様では、界面領域217は、多孔質ポリマー基体210の統一された、一体的な非積層型部分であってよい。別の例としては、複合材料200は、ナノ多孔質金属224と多孔質ポリマー基体210との間にギャップ226を有することにより、金属領域220の導電性を維持しつつ、組織内方成長及び/又は質量輸送を促進し得る。さらに別の例としては、複合材料200の金属領域220は、小型及び大型のナノ孔を含む孔径分布を有してよい。理論に縛られたくはないが、孔径のこの混合状態は、複合材料200の表面積及び質量移動のバランスを取ることができる。これらの階層フィーチャについて以下に説明する。
【0043】
複合材料200のポロシティは、少なくとも30vol%、40vol%、50vol%、60vol%、70vol%、80vol%、又はこれ以上であってよい。ポリマー基体210のポリマーは、複合材料200の30vol%未満、20vol%未満、又は10vol%未満を占めてよい。金属領域220の金属は、複合材料200の40vol%未満、30vol%未満、20vol%未満、又は10vol%を占めてよい。その高いポロシティ及び低い金属含有率にもかかわらず、複合材料200は良好な導電率を有し得る。
【0044】
複合材料200の各エレメントについて以下にさらに説明する。
【0045】
多孔質ポリマー基体
複合材料200の多孔質ポリマー基体210は、生体適合性、可撓性、化学的に不活性の材料であってよい。ある特定の実施態様では、多孔質ポリマー基体210は、フルオロポリマー、例えば延伸(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリオレフィン、例えば延伸(膨張、エキスパンデッド、延伸又は発泡)ポリエチレン(ePE)、又は別の適宜のポリマーを含んでよい。多孔質ポリマー基体210の可撓性(又は曲げ剛性)は、例えばKawabata Pure Bending Testerを使用して測定することができる。
【0046】
図1に示されているように、多孔質ポリマー基体210は第1(すなわち
図1では上側)表面212と、第2(すなわち
図1では下側)表面214と、第1表面212及び第2表面214の間の複数の相互接続型孔216とを有している。多孔質ポリマー基体210は第1表面212及び/又は第2表面214に、1つ又は2つ以上の界面領域217を含んでもよい。界面領域217は金属領域220とは異なっていてよく、そして導電性材料を含有しなくてよい(例えば金属化されていなくてもよく、或いは裸であってよい)。複合材料200が生体と関連するある特定の用途では、界面領域217は、組織界面領域として役立ってよい。組織界面領域は、組織T(実例としては毛細血管)が第1及び/又は第2表面212,214を通って孔216内へ統合及び/又は内方成長するのを支援する。組織Tのこのような統合及び/又は内方成長は、複合材料200の生体適合性を高め、そして周囲組織における有害な反応、例えば線維性被包又は慢性炎症を最小化し得る。組織Tのこのような統合及び/又は内方成長を促進するために、界面領域217が1種又は2種以上の生物活性剤を含むことも本開示の範囲に含まれる。前記治療薬は、当業者に知られた手段によって界面領域217に物理的に結合、共有結合、物理吸着、又は化学吸着されてよい。他の用途では、界面領域217は保護層として役立ってよい。保護層は金属領域220を損傷(例えば摩耗)又はファウリングから保護する。界面領域217は、多孔質ポリマー基体210の一体的な非積層部分であってよい。
【0047】
多孔質ポリマー基体210は、孔216を画定するように協働する相互接続フィブリル219を有するノード218のマイクロ構造を有してよい。孔は上で定義されたマイクロ孔を含んでよい。多孔質ポリマー基体210が、孔216を画定するように協働する相互接続フィブリル219の「ノードなしの(nodeless)」マイクロ構造を有することも、本開示の範囲に含まれる。フィブリル219は長さが約0.1μm~約1000μmで、そして直径が約0.002μm~約100μmで変化してよいが、しかしこれらの寸法は種々様々であってよい。多孔質ポリマー基体210は、当業者に知られた技術、例えば下記泡立ち点試験法を用いて測定された特徴的な孔径又は公称孔径を有してよい。このような技術は、特定サイズの粒子を濾過し、又は流体流に抵抗する多孔質ポリマー基体210の能力に基づくものであり、必ずしも孔216自体の径又は形状に基づくものではない。
【0048】
ある特定の実施態様では、多孔質ポリマー基体210は、より小さい孔216とより大きい孔216との両方の組み合わせを含んでよい。より大きい孔216は、第1及び/又は第2表面212,214の近くで外方へ向かって位置決めすることにより、組織Tの統合及び/又は内方成長を促す一方、より小さい孔216は、多孔質ポリマー基体210の中心の近くで内方へ向かって位置決めされてよい。これは金属領域220に隣接し得る。
【0049】
多孔質ポリマー基体210自体は疎水性でも親水性でもよい。親水性の実施態様では、多孔質ポリマー基体210は、水、又は極性生体液、例えば血液を含む他の極性液体と混合するか、又はこれによって湿潤される傾向があり得る。
【0050】
多孔質ポリマー基体210は、複合材料200の所期の形状及び寸法に到達するように成形され寸法設定されてよい。例えば多孔質ポリマー基体210を、メンブレン、フィルム、繊維、チューブ、又は別の所期形状として成形することにより、同様に成形された複合材料200を製造することができる。多孔質ポリマー基体210に曲げ、微細皺加工、伸張、巻き、折り曲げ、切断、又は他の物理的な操作を施すことにより、周囲環境に基づく複合材料200の所期の形状及びコンプライアンスに到達することもできる。ある特定の実施態様では、多孔質ポリマー基体210のコンプライアンスが、周囲組織のコンプライアンスに適合又は接近することが望ましい場合がある。
【0051】
金属領域
金属領域220は、多孔質ポリマー基体210のマトリックス内へ実質的に組み込まれることなしに、多孔質ポリマー基体210の相互接続型孔216内部に少なくとも部分的に含有されたナノ多孔質金属224を含む。この配置関係において、多孔質ポリマー基体210のノード218及びフィブリル219は、第1の連続的な網状構造を画定し、そして金属領域220は、ポリマー網状構造に貫入する第2のほぼ連続的な、導電性金属網状構造を画定してよい。このように、多孔質ポリマー基体210のポリマー網状構造と、金属領域220の金属網状構造とは、少なくとも金属領域220内部で実質的に共連続的且つ相互貫入性であり得る。一例において、ナノ多孔質金属224はナノ多孔質金(NPG)であってよい。他の非限定的例では、ナノ多孔質金属224は白金、イリジウム、パラジウム、銀、銅、ニッケル、又はこれらの組み合わせ又は合金である。
【0052】
金属網状構造は階層フィーチャを含んでよい。例えば、コンフォーマル被膜とは異なり、ナノ多孔質金属224は、多孔質ポリマー基体210から隔たっていてよく、多孔質ポリマー基体210、特に多孔質ポリマー基体210のノード218との著しい接触を回避し得る。ナノ多孔質金属224とノード218との間のこれらのギャップ226はマイクロ孔であってよい。マイクロ孔は、金属領域220の金属網状構造を破壊することなしに、そしてまた多孔質ポリマー基体210からの機械的強化を維持しつつ、多孔質ポリマー基体210を通って組織が内方成長及び/又は質量輸送するのを促進する。これらのギャップ226を複合材料200の表面で(例えば
図3Bの厚さ又はz方向で)露出させることにより、(例えば
図3Bの少なくとも平面内又はx-y方向で)導電性を維持しながらこのような組織内方成長を可能にし得る。
【0053】
階層フィーチャの別の例では、本開示のナノ多孔質金属224は単峰性且つ右歪曲型の個数基準ナノ孔径分布を、ある特定の実施態様において含んでよい。当業者に知られたナノ多孔質金属のいくつかの典型的な調製に際しては、個数基準ナノ孔径分布は単峰性且つ単分散であり、又は換言すれば、平均ナノ孔径は、ほぼモード・ナノ孔径である(例えばA Pastre, “Porous Gold Films Fabricated by Wet-Chemistry Processes(湿式化学プロセスによって製作された多孔質金フィルム)”, J Nanomater, vol 2016, article ID 3536153, 2016)。当業者に知られたナノ多孔質金属の他の典型的な調製に際しては、ナノ孔径分布は多峰性且つ複雑であり、換言すれば、1超のモード・ナノ孔径が存在する(例えばY. Ding, “Nanoporous Metals with Controlled Multimodal Pore Size Distribution(制御された多峰性孔径分布を有するナノ多孔質金属)”, J Am Chem Soc, vol 125, p 7772, 2003)。しかしながら、本発明の実施態様では、ナノ多孔質金属224の個数基準ナノ孔径分布は単峰性且つ右歪曲型であり、換言すれば、平均個数基準ナノ孔径は、単峰性個数基準ナノ孔径よりも著しく大きく(例えば少なくとも75%、100%、125%、150%、175%、200%、225%、又は250%大きい)、これは、多数のナノ孔が単一モードよりも大きく、そして少数のナノ孔だけが単一モードよりも小さいことを示唆している(
図5及び下記実施例1及び14参照)。ナノ多孔質金属224の単峰性且つ右歪曲型の個数基準ナノ孔径分布は、困難な環境、例えば高表面張力液環境、生物付着環境、又は組織統合環境における性能に関して利益をもたらし得る。例えば、ナノ孔径分布は複合材料200全体にわたる表面積と質量移動とのバランスをとり得る。
【0054】
右歪曲型の個数基準ナノ孔径分布は、平均孔径が孔径中央値よりも著しく大きい(例えば少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は70%大きい)ことを特徴とし得る。
【0055】
本発明のナノ多孔質金属224は、モードが個数基準孔径分布のモードよりも著しく大きい(例えば少なくとも200%、500%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、又は4000%大きい)容積基準孔径分布を含んでよい。
【0056】
本発明のナノ多孔質金属224は、平均が個数基準孔径分布の平均よりも著しく大きい(例えば少なくとも150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、又は600%大きい)容積基準孔径分布を含んでよい。
【0057】
多孔質ポリマー基体210にナノ多孔質金属224を装入するために、インバイビング処理プロセスを実施してよい。このプロセスは、(1)非水性溶媒中の金属前駆体(例えば塩)を含む非水性湿潤溶液を製造し、(2)多孔質ポリマー基体210を非水性湿潤溶液でインバイビング処理し、そして(3)インバイビング処理済み構造を加熱することにより、非水性湿潤溶液の要素を除去し、金属前駆体を還元して金属状態にし、金属を焼結し、そしてナノ多孔質金属224を残す、ことを伴ってよい。非水性湿潤溶液は、多孔質ポリマー基体210を十分に湿潤するように調整されてよい。疎水性のePTFE多孔質ポリマー基体210の場合には、例えば非水性湿潤溶液は、米国特許第9,018,264号明細書の教示内容に基づいて、実質的に水不溶性のアルコールと界面活性剤とから成る湿潤パッケージを含んでよい。加熱工程は、最大数時間の適宜の時間にわたって、最大約300℃以上の1つ又は2つ以上の温度で、構造を加熱することを伴ってよい。ある特定の実施態様では、インバイビング処理プロセスは、ナノ多孔質金属224が多孔質ポリマー基体210内へ所期パターンを成して装入されるように制御されてよい。この所期パターンは、インクジェット印刷又は当業者に知られた他の印刷手段又はリソグラフィと同様に、多孔質ポリマー基体210内への金属前駆体の送達を制御することにより、多孔質ポリマー基体210のある特定のエリアをマスキングすることにより、又は他の適宜の技術により、達成されてよい。
【0058】
電気化学的被分析物バイオセンサの作業電極としての用途
複合材料200の1つの潜在的な用途は、電気化学的被分析物バイオセンサの作業電極としての用途である。電気化学的被分析物バイオセンサは、生体受容体(例えば酵素、アプタマー、エクソーム、触媒抗体、触媒リボ核酸、触媒多糖類、及びこれに類するもの)と、被分析物(例えばグルコース、ラクテート、ビルベート、グリセロール、グルタメート、グルタミン、ペプチド、ホルモン、心臓特異的酵素、オピオイド/麻酔薬、及び化学治療薬)との間の相互作用を、少なくとも部分的に電気化学的プロセスを介して、電気信号に変換することにより、被分析物、例えばその濃度に関する情報を含有する信号を生成する。複合材料200は、1つ又は2つ以上の拡散バリア領域と、1つ又は2つ以上の固定化生体受容体領域とをさらに含んでよい。使用中、金属領域220のナノ多孔質金属224はその表面を通して、そしてその表面に沿って導電性を提供し得る。したがって、金属領域220は、目標被分析物を検出し、そして対応する電気信号を電子プロセッサ(図示せず)へ伝達することができる。電気化学的被分析物バイオセンサ用途における複合材料200の使用に関するさらなる詳細は、本出願と同日付で出願された、同時係属中の米国特許第63/176,653号(出願人参照番号1862US01)に開示されている。
【0059】
本開示のナノ多孔質金属224は、周囲生体液の表面張力とは無関係に、不変の電気化学的表面積を呈し得る。植え込まれたバイオセンサの十分な機能のために、電極表面積全体が被分析物検知のために活性であり得るように、電極の表面及びマイクロ構造の全体を生体液によって接触させ湿潤させなければならないことが、当業者に知られている。マイクロ構造を湿潤させる液体の能力はその表面張力に関連するので、高い表面張力(約50mN/m超)を有する流体、例えば生理食塩水(約72mN/m)及び血液(約50mN/m)は、疎水性基体を湿潤させる傾向がより低い。反対に、低い表面張力(約30mN/m未満)を有する流体、例えばイソプロパノール(約23mN/m)及び50:50生理食塩水:イソプロパノール混合物(約25mN/m)は、疎水性基体を湿潤させる傾向がより高い。本開示の複合材料200が疎水性の多孔質ポリマー基体210、例えばePTFEを含み得るので、高表面張力の生体液による接触又は湿潤が低減されると予測される。このことは、金属領域220の電気化学的表面積及び/又は被分析物検知活性をも低減することになる。疎水性多孔質ポリマー基体210の孔216内部にインバイビング処理されたナノ多孔質金属224が存在しても、これが複合材料200の疎水性を変化させるものとは予測されない。なぜならば疎水性の多孔質ポリマー基体210は、第1及び第2表面212,214に沿ったものを含めて過剰に存在するからである。換言すれば、ナノ多孔質金属224でインバイビング処理された疎水性の多孔質ポリマー基体210を含む複合材料200はそれ自体が疎水性となり、ひいては高い表面張力の生体液による接触又は湿潤が低減されることになると予測される。しかしながら、本発明者らは驚くべきことに、インバイビング処理されたナノ多孔質金属224を有する複合材料200の電気化学的表面積が、液体の表面張力による湿潤に強くは依存せず、ひいては複合材料200が低い又は高い表面張力の生体液中で機能するのを可能にすることを発見した。例えば、インバイビング処理されたナノ多孔質金属224を有する複合材料200の電気化学的表面積の、低い表面張力の生体液と高い表面張力の生体液との間の変化率は、約50%以下、約25%以下、又は約10%以下であってよい(
図12及び下記実施例10参照)。このような予期せぬ湿潤挙動を利用して、インバイビング処理されたナノ多孔質金属224の高い表面積を活用することができる。
【0060】
当業者には明らかなように、所期機能を発揮するように構成された任意の数の方法及び装置によって、本開示の種々の態様を実現することができる。なお、本明細書中に言及される添付の図面は必ずしも原寸に比例するものではなく、本開示の種々の態様を例示するために誇張されることもある。その点において、図面は制限的なものと解釈されるべきではない。
【0061】
試験法
言うまでもなく、ある特定の方法及び設備を以下に説明するが、当業者によって適切であると判断された他の方法又は設備も代わりに利用されてよい。
【0062】
非接触厚
下記技術を用いて、レーザーマイクロメータ(ベルギー国Mechelen 在、Keyence Model No.LS-7010)を使用して、非接触厚を測定した。レーザーマイクロメータ源とレーザーマイクロメータ・レシーバとの間に金属シリンダを整列させることにより、シリンダの頂部の第1の影がレシーバ上へ投射されるようにした。第1の影の位置を次いでレーザーマイクロメータの「ゼロ」読み取り値として設定した。次いで単一の試験物品層を、オーバーラップなし、且つ皺なしに金属シリンダの表面上にドレープ状にかけた。これはレシーバ上に第2の影を投射した。次いで、レーザーマイクロメータは、試料の厚さとして、第1の影と第2の影との間の位置の変化を示した。各厚さを3回測定し、試料毎に平均した。
【0063】
面積当たり質量
規格ASTM D 3776(ファブリックの単位面積当たり質量(重量)のための標準試験法(Standard Test Methods for Mass Per Unit Area (Weight) of Fabric)、試験法オプションC)にしたがって、試料の面積当たり質量を測定した。
【0064】
泡立ち点
毛管流動ポロメータ(Capillary Flow Porometer)(フロリダ州Boynton Beach在、Quantachrome InstrumentsのModel 3Gzh)を使用して、ASTM F31 6-03にしたがって、そしてSilwickシリコーン流体(20.1ダイン/cm、Porous Materials Inc.)を用いて、泡立ち点圧力を測定した。泡立ち点圧力に関して示された値は、2つの測定値の平均である。
【0065】
シート抵抗
被験材料シートから、2.125” x 0.5”試料をダイカットした。試料をクローズドセル・シリコーン・スポンジ・シート(1/2インチ厚、Bellofoam #7704)上に平らに置いた。
図2に示された四点プローブを利用して、Keithley 2750 デジタル・マルチメータ(Digital Multimeter)によって抵抗を測定した。四点プローブを標準的な四点プローブ構成(すなわち最も内側の2つの端子に電圧検知リードを有し、そして最も外側の2つの端子に入力リードを有する)で、マルチメータに接続した。被測定試料上に四点プローブを静かに置いたあと、プローブの上部に330グラムの重りを置くことにより、プローブを試料と信頼性高く均一に接触させることを保証した。プローブと試料の導電相との十分な接触を保証するように注意した。重りをプラスチックシートで絶縁することにより、これがプローブを短絡させないことを保証した。Keithleyマルチメータを、「OCOMP」4ワイヤ・オフセット補償が可能にされた状態で、四点プローブモードで操作した。各測定毎に、抵抗値が記録される前のほぼ10秒間にわたって、システムを安定化させておいた。データを平方面積当たりのオームの単位で報告した。
【0066】
金属相内部の孔径を測定するための定量的画像分析
孔径分析用の画像を収集するために、ブロードビーム・イオン・ミル(米国、Gatan, Illon 2)によって各試料の断面を調製することにより、その構造を保存した。スパッタ・コータ(英国、Cressington, 208HR)を使用して、薄い導電性白金被膜を被着することにより、SEM画像形成中の電子ビーム下の試料安定性を改善した。解像度が少なくとも2560画素 x 1920画素の走査電子顕微鏡分析(日本国、日立、SEM: SU8200)によって、50,000Xの倍率で、構造の断面画像を撮影した(2.5μmの水平フィールド幅)。
【0067】
“Fiji” ImageJ 1.53ソフトウェアを用いた断面SEM画像の定量的分析を介して、金属相内部の孔径の分析を行った。下記表1に示された自動マクロを用いて、主観性を最小化し、データ分析の再現性を最大化した。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【表1-5】
【表1-6】
【表1-7】
【0068】
まず、上記表1の“Macro1_PreProcess”マクロを用いて、断面SEM画像を前処理することにより、導電性Pt被膜によって引き起こされるグレースケール変動を除去した。
【0069】
次に、前処理済み画像を手動でセンサリングすることにより、金属相、及び断面の平面内にあるその埋め込まれた孔を構成する領域を除くすべての領域を排除した。手動センサリングは、視覚的キュー、例えば表面テキスチャ及びパースペクティブを識別することを含んだ。手動センサリングは、上記表1の“Macro2_After_Segmenting_Support”及び“Macro3_After_Segmenting_Void”のマクロの支援によって実施した。
【0070】
最後に、上記表1の“Macro4_Analysis”マクロを使用して、前処理済み・手動センサリング済みの画像を分析した。このマクロは、画像を解析(parse)することにより、個々の孔を識別した。これは、複雑な孔空間をさらに分割して、のど部によって分離された個々の孔にすることを含んだ。このマクロはまた、2020年6月29日現在、
https://imagej.nih.gov/ij/docs/menus/analyze.html#setでアクセス可能なImageJドキュメンテーションにしたがって、それぞれの個別の孔毎に種々の測定値を表にしたデータファイルを生成した。具体的には、データファイルは、下記表2に示された孔径測定値を含んだ。
【表2】
【0071】
個々の孔の孔径は、最良適合楕円の主軸及び短軸の平均として定義された。孔径分布を示すために、データテーブル内のすべての孔の孔径がヒストグラムとしてプロットされた。孔が正しく解析されたことを保証するために、品質チェックも実施された。この品質チェックは、孔が過小解析(接続された複数の孔が単一孔として定義されたことを意味する)、又は過大解析(単一孔がさらに分割されて複数の孔にされたことを意味する)されなかったことを保証する。「フェレ径に対する主軸」及び「最小フェレに対する短軸」の比は、これらが0.5~1.2の範囲内にあったことを保証するためにチェックされた。このような範囲は1に近く、そしてデータが品質チェックされていることを裏付ける。このようにして、孔径分析のために、処理済み画像が生成された。
【0072】
個数を基準とした孔径分布を判定するために、下記手段によってヒストグラムを生成した。0nm~1500nmの間の3nm幅の群で孔をバケット化した(すなわち第1群は>0nm且つ<=3nmのすべての孔を含み、第2群は>3nm且つ<=6nmのすべての孔を含み、そして同様に、>1497nm且つ<=1500nmのすべての孔を含む最終群まで続く)。各群の「孔径」は、1ミクロンの位に切り捨てられた孔径範囲の平均であった(すなわち第1群は1nmであり、第2群の孔径は4nmであり、そして同様に径が1498nmである最終群まで続く)。各群における孔の頻度を、その群内の孔の個数を孔の総数で割り算することにより、判定した。個数を基準とした孔径分布をプロットするために、各群の孔の頻度をy軸に割り当て、そしてその群の孔径をx軸に割り当てた。
【0073】
次いで、個数を基準とした孔径分布を用いて、容積を基準とした孔径分布を計算した。各グループの単位孔容積を計算するために、各群における孔の個数基準頻度を、その群の「孔径」を三乗したもので掛け算した。各群の孔容積%を計算するために、各群の単位孔容積を、すべての群にわたる単位孔容積の和で割り算した。容積を基準とした孔径分布をプロットするために、各群の孔容積%をy軸に割り当て、そしてその群の孔径をx軸に割り当てた。
【0074】
各群の孔径を個数頻度によって加重することにより、個数加重平均孔径を計算した。各群の孔径を容積%によって加重することにより、容積加重平均孔径を計算した。分布におけるピークの最大値を求めることによって、各分布のモードを判定した。
【0075】
定量的画像分析試験法をさらに詳述するために、この試験法の設計の背後にある原理をより一般的な用語で記述する。この試験法を満たすために、孔相を代表する断面SEM画像を撮影し、断面平面内にナノ多孔質金属を示す画像部分を分離し、そして孔のサイズを定量化する。「センサリング(censoring)」と上で呼ばれる、画像アーティファクトを除去し、テキスチャ及びパースペクティブを含む分析に適した画像部分を分離するために必要とされる視覚的キューは、当業者には容易に明らかである。分析のために解析された孔相は、2つが視覚的に比較されると、SEM画像に対する優れた忠実度を明示するはずである(例えば
図7A~7C参照)。解像され得る最小フィーチャサイズは約5画素に相当する。直径対フェレ比を用いると、個々の径を判定するための孔の解析が正しく行われることを保証するための実際的なチェックが可能になる。
【0076】
グルコース・アンペロメトリック・ベンチトップ試験
下記システムを使用して、アンペロメトリック・ベンチトップ試験を行った。完成電極(直径4mmを含む)をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)及び磁気攪拌棒を含有する20mLビーカー内へ、Ag/AgCl参照電極(Gamry)と並んだ状態で、そして0.25mm白金ワイヤ対電極(Alfa Aesar)と並んだ状態で浸漬した。電極は、設定電位0.6~0.7V及びオーバーサンプリング率5Hzのポテンショスタットシステム(Digi-Ivy #DY211、又はGamry Reference 600)に接続された。作業電極電圧を、参照(又は疑似参照)電極に対して報告する。システムを300rpmで磁気撹拌しながら、60分間にわたって平衡化させておいた。変動するマイクロリットル体積の試験溶液(D-(+)-グルコース、脱イオン水中0.4g/mL)を、50~500秒毎にPBSへピペッティングすることにより、グルコースの濃度を連続的に高め、そして電流を時間の関数として測定した。
【0077】
疑似参照電極試験
試験を実施するために、Gamry Instruments Echem Analyst Software及びGamry Instruments Framework(登録商標) Data Acquisition Softwareと併せて、ポテンショスタット(Gamry Reference 600)を使用した。三電極式電気化学セルの2つの変更形を組み立てた。電解質溶液は1M塩化カリウム(Sigma Aldrich)を、1mMフェリシアン化カリウム(Sigma Aldrich)とともに、脱イオン水(>18M-オーム)中に含んだ。
【0078】
第1変更形(当該技術分野において伝統的に使用される変更形を意味する)は、液絡Ag/AgCl参照電極(Gamry)と、対電極としての白金ワイヤ(99.9%)と、作業電極としての3mm直径の平坦金電極(Alfa Aesar)と、電解質溶液とから成った。作業電極と参照電極とを、約1cmの距離だけ物理的に分離させた。
【0079】
第2変更形は、疑似参照電極としての、ePTFE銀インバイブ処理型フィルムと、対電極としての白金ワイヤ(99.9%)と、作業電極としてのNPG/ePTFEメンブレン(3mm直径開口を有するPTFE電気化学セル内に収納されている)と、電解質溶液とから成った。疑似参照電極と作業電極とを、約1cmの距離だけ物理的に分離させた。
【0080】
基準(又は疑似基準)電極に対して0.5Vの初期電極を使用して、変更形においてサイクリック・ボルタモグラムを生成し、0.1Vまで走査するのに続いて、走査速度50mV/sで0.5Vまで逆走査した。
【0081】
耐生物付着性試験
一般的な生物付着媒体、例えばウシ血清アルブミン(BSA)の存在において、試料電極の電気化学的性能を評価するために、生物付着試験を開発した。特に断りのない限り、溶液は水溶性である。
【0082】
電気化学的性能を特徴付けるための小分子レドックス発生剤として、フェリシアン化カリウム・ストック溶液(0.1M KCl溶液中2mM)を採用した。フェリシアン化カリウム・ストック溶液中にBSAを2mg/mL、6mg/mL、10mg/mL、15mg/mL、及び25mg/mLで溶解することにより、一組のBSA生物付着試験溶液を調製した。
【0083】
試料電極の表面を3~5秒間にわたって、70%イソプロパノールで濯ぎ、次いで試料電極を、0.05M硫酸溶液を充填された20mLビーカー内へ、Ag/AgCl参照電極及び0.25mm白金ワイヤ対電極と並んだ状態で入れた。電極はポテンショスタットシステム(Digi-Ivy #DY211)に接続された。作業電極電圧を、参照(又は疑似参照)電極に対して報告する。清浄化CV走査(10サイクル、走査範囲:0~1.5V、走査速度:50mV/s)を実施することにより、作業電極を清浄化した。清浄化後、電極を硫酸試験セルから取り出し、そしてDI水で濯ぎ、次いでKimwipes(登録商標)ティッシュを使用して、残留水を吸収した。
【0084】
試料電極、Ag/AgCl参照電極、及び白金ワイヤ対電極を、フェリシアン化カリウムを充填された20mLビーカー内に浸漬した。連続的なCV走査(10~20サイクル、走査範囲:-0.2~0.6V、走査速度:100mV/s)を実施することにより、ベースラインCVデータを得た。次いで、電極をBSA生物付着試験溶液を充填された別の20mLビーカーへ移し、これに続いて連続的なCV走査(100サイクル、走査範囲:-0.2~0.6V、走査速度:100mV/s)を実施することにより、生物付着CVデータを得た。フェリシアン化カリウム・ストック溶液からのピーク電流を、BSA生物付着試験溶液からのピーク電流と比較することにより、生物付着媒体の存在における試料電極の電気化学的性能を評価した。
【0085】
毛管流動ポリメトリ(CFP)試験
Quantachrome Porometer 3G zHを使用して、測定を行った。湿潤流体は、公称表面張力19.78ダイン/cmを有するシリコーン油であった。圧力範囲は0.255psig~394psigであった。試料サイズは直径10mmであった。ランプ速度設定は「2x」であり、その結果ランタイムはほぼ28分間となった。「湿潤」曲線のデータだけが生成された(すなわち「乾燥」曲線のデータは収集されなかった)。測定可能な最大流量は10リットル/分であった。
【0086】
湿潤屈曲粒子化試験(Wet Flex Particulation Test)
この耐久性試験は、複合材料が粒子を落とす傾向を評価するために開発された。
試験が有効であるように、試料は、試験条件下で完全な屈曲動作を可能にするのに十分に低い曲げ剛性を有していなければならない。試験を実施するために、複合材料から2.125” x 0.5”試料を切り取った。
図13に示された形状にカットされたエンジニアリング・プラスチック片の間に試料をサンドイッチすることにより、試料を試験固定具内へ装入した。試料を制御された量の緩みとともに装入し、
図14に示されたOリングによって所定の位置に保持した。規模に関しては、試料の屈曲を許す窓のサイズは、24.5mm長 x 14.1mm幅 x 2.7mm厚である。次いで、試料を含有する試験固定具を、標準的な50mLの遠心分離管内へ装入した。遠心分離管に次いでイソプロパノールを40mLの線まで充填した。次いで、漏れを防止するために、遠心分離管をキャップ及びテープにより閉じた。次いで、
図15に示されているように、試験固定具の平面が回転軸に対して平行になるように、遠心分離管をIntelli-Mixer (#RM-2L)内へ装入した。この配向は試料の屈曲を可能にする。試料を所期の時間(典型的には1~7日間)にわたって20rpmで+/-99度揺動するように、Intelli-Mixerを設定した。試料が揺動されるたびに、試料も管内の流体動力学特性に基づき屈曲した。屈曲は、試験固定具の一方の側から他方の側へ切り換えられる試料中の緩みを意味する。所期の時間にわたる揺動後、管内の液体をピペットを用いて抜き取り、そしてICP-MSを使用して分析することにより、複合材料から落とされたかもしれない金属の存在をチェックした。
【0087】
電気化学的表面積(ECSA)試験
図17に示されているように、WonATech CCK05腐食電池キット(500mL)内で電気化学的試験を実施した。作業電極試料を11.28mm電極直径(1cm
2)のWonATech FSH2偏平試験片ホルダ内に保持した。対電極は、WonATech PFL5白金平板電極(活性面積5cm
2)又は10cm白金ワイヤ(Sigma Aldrichの1.5mm直径、≧99.9%の微量金属ベース、349399-3.8G)であった。参照電極はGamry 932-00018、Ag/AgClであり、この参照電極は飽和KCl溶液を充填され、この溶液中に保存されている。セルはLuggin毛管を利用して、参照電極を作業電極表面に接近させた。セルには500mLの硫酸(LabChem LC256801, 0.05M)を充填した。作業電極のための対照試料は金箔(Sigma Aldrich 326496-1.5G 厚さ0.127mm、99.99%微量金属ベース又は同等のもの)であった。少なくとも10分間にわたってガラスフリットを通して、窒素ガスを泡立てることにより、溶解された酸素を電解質から除去した(サイクリック・ボルタンメトリ測定中には窒素パージをオフにすることによって、電解質の撹拌を回避した)。
【0088】
試料を切り取るか又は打ち抜くことにより、直径15.5mm~22mmの円形ディスクにし、次いでこれらを偏平試験片ホルダ内へ装入した。試料の周りにイオン伝導性経路がないことを保証するために、すべてのOリング及び内部の部分を乾燥させるように、試料ホルダの挿入時には注意した。試料をイソプロパノールで湿潤し、次いで電解質中に沈めることにより、完全な湿潤を保証した。当業者によって理解されるように、サイクリック・ボルタンメトリ(CV)を用いて、作業電極が清浄であることを保証した。
【0089】
二重層容量を測定することにより、電気化学的表面積を判定した。なぜならばECSAは二重層容量に対して比例するからである。二重層容量を判定するために、以下の走査速度、すなわち100mV/s、50mV/s、20mV/s、及び10mV/sで、0mVから100mVまで(参照電極に対する)電位を走査することによって、代表的なサイクリック・ボルタンメトリ曲線を収集した。50mVにおける曲線の高さ(amps(h))を判定し、そして掃引速度(V/s)に対してプロットした。最良適合線の勾配から、二重層容量を判定した。幾何学的表面積に対する電気化学的表面積の比である粗さ係数を判定するために、試料の二重層容量を、平滑な金箔の二重層容量によって正規化した。平滑な金箔は、粗さ係数が1であると想定された。金属比表面積を計算するために、試料の粗さ係数を、試料の金属面積当たり質量によって割り算した。
【実施例】
【0090】
実施例1:NPG/ePTFE複合体の調製
この実施例では、ナノ多孔質金が組み込まれたePTFEメンブレン(「NPG/ePTFE」複合体)が記述される。
【0091】
ePTFEメンブレン(3~5g/m2質量/面積、1.5psi泡立ち点、92μm非接触厚、W.L. Gore & Associates)を4.5”直径の金属フープ内に拘束し、手で緊張させることにより、皺を除去した。米国特許第9,018,264号明細書の教示内容にしたがって、溶媒中の反応性金インク(部品 #LXPM-G2-1019, Liquid X, Inc.)を、1.0gのLXPM-G2-1019と、0.05gのTergito(登録商標)TMN-10 (Dow, Inc.)と、0.03gの1-ヘキサノールとから成る基体湿潤パッケージと混合した。混合物をメンブレンの表面上にピペッティングし、そしてこれがePTFEを通って湿潤するまで、使い捨てピペットバルブを使用して均一に広げた(約30秒間)。Kimwipe(登録商標)テッシュでePTFEメンブレンの表面を拭うことにより、余剰のインクを除去した。試料をヒートガンで乾燥させ、そして標準的な対流オーブン内で、155℃で20分間にわたって、次いで300℃で1時間にわたって加熱することにより、金相を還元して焼結し、そして残留インク溶媒と、還元剤と、残留基体湿潤パッケージとを除去した。その結果がNPG/ePTFE複合体であった。
【0092】
図3A~3Cは、NPG/ePTFE複合体の一例の代表的SEM画像を示す。
図3Aは複合体の断面を示し、
図3Bは表面画像を示し、そして
図3Cは、NPG相の断面のクローズアップを示している。
【0093】
NPG/ePTFE複合体は、金属相内部のナノ孔径分布が約10~200nmであるナノ多孔質の高表面積金マトリックスを含んだ。このNPGマトリックスは、ePTFEメンブレンの内部マイクロ構造の内部にインバイビング処理された。NPGは
図3A~3Cにおいて、ePTFEメンブレンのノード及びフィブリルの間の孔内の明色材料として、見ることができる。
図3A及び3Cに示されているように、NPGマトリックスは、ePTFEメンブレン、特にePTFEメンブレンのノードから離隔され、これとの実質的な接触を回避することにより、
図3Bに示されているように、NPG/ePTFE複合体の表面に沿って露出された約10μmのギャップを形成することが示された。また、NPGマトリックスは、積層界面の必要がないePTFEメンブレンの外面層(つまり裸の層)には存在していない。NPG/ePTFE複合体の測定されたシート抵抗は、
図2に示された上記の四点プローブ・シート抵抗試験によれば、約0.3~1オーム/□(スクエア)であった。
【0094】
NPG金属相のナノ孔径分析が
図4A~7に要約されている。
図4Aは、NPG/ePTFE複合体の実施例の別の代表的な断面SEM画像を示し、そして
図4Bは、ナノ孔径分析のために処理された同じ画像を示している。
図4Cは、NPG/ePTFE複合体の金属相内部の分離されたナノ孔を示している。
図5は、NPG/ePTFE複合体の金属相内部のナノ孔径分布を示している。
図6は、NPG/ePTFE複合体の金属相内部のナノ孔の最小フェレに対する最良適合楕円の短軸の比を示すヒストグラムである。
図7は、NPG/ePTFE複合体の金属相内部のナノ孔の最大フェレに対する最良適合楕円の長軸の比を示すヒストグラムである。
【0095】
実施例2:NPG/ePTFE裸電極の調製
この実施例では、NPG/ePTFE平坦ディスク裸電極(「NPG/ePTFE裸電極(NPG/ePTFE bare electrode)」)の調製が記述される。
【0096】
PTFE中空ロッド(1.5”長さ、0.5”外径、0.25”内径)に0.25”の近位開口と、3~4mmの遠位開口とを設けた。実施例1のNPG/ePTFE複合体を、近位開口を介して中空ロッド内へ挿入し、遠位開口に対して平らに置き、そしてePTFEガスケットでシールすることにより、NPG/ePTFE裸電極を製造した。
【0097】
実施例3:CG/ePTFE複合体の調製
この実施例では、コンフォーマル金被膜が組み込まれたePTFEメンブレン複合体(「CG/ePTFE複合体」)の調製が記述される。
【0098】
第1ePTFEメンブレン(「ターゲット・メンブレン」)(3~5g/m2質量/面積、1.5psi泡立ち点、92μm非接触厚、W.L. Gore & Associates)を4”直径の金属フープ内に拘束し、手で緊張させることにより、皺を除去した。第2ePTFEメンブレン(「ポータル・メンブレン」)(3~5g/m2質量/面積、40psi泡立ち点、18μm非接触厚、W.L. Gore & Associates)を6”直径の金属フープ内に拘束し、手で緊張させることにより、皺を除去した。ポータル・メンブレンをターゲット・メンブレンの上部に置くことにより、2つのメンブレンが物理的に接触してほぼ同心的になるようにした。0.75mLの金ナノ粒子インク(#UTDAu60X; UTDots, Inc.)をポータル・メンブレンの表面上へピペッティングし、そしてインバイビング処理溶液がポータル・メンブレン及びターゲット・メンブレンの両方を完全に湿潤するまで、使い捨てピペットバルブを使用して均一に広げた(<約30秒間)。糸くずの出ない布地でポータル・メンブレンの上面を拭うことにより、余剰のインクを除去した。次いで、それぞれのフープを分離することにより、インバイビング処理済みの2つのメンブレンを分離した。ポータル・メンブレンを廃棄した。次いで、200°Fに設定されたヒートガンを使用して、ターゲット・メンブレンを乾燥させ、次いで標準的な対流オーブン内で、300℃で1時間にわたって加熱した。その結果がCG/ePTFE複合体であった。
【0099】
CG/ePTFE複合体の質量/面積は46g/m
2であり、そしてシート抵抗は、
図2に示された上記の四点プローブ・シート抵抗試験によれば、約0.2~0.4オーム/スクエアであった。金属がターゲット・メンブレンの全厚全体を通してコンフォーマル被覆されたことを実証するために、複合体のシート抵抗は、測定された表面が上面であれ底面であれ、ほぼ同じ(具体的には抵抗の低い表面から約15%以内)であった。
【0100】
図8A~8Dは、CG/ePTFE複合体の実施例の代表的なSEM画像を示している。
図8Aは複合体断面を示し、
図8Bはそのノード断面を示し、そして
図8Cはそのフィブリル断面を示している。CGはePTFEメンブレンのノード及びフィブリルの周りに見ることができる。
図8Dは、厚さ又はz方向に沿ってコンフォーマル金被膜内にギャップを有する表面画像を示している。ギャップは、平面内又はx-y方向で導電性を維持しながら組織内方成長を可能にし得る。
【0101】
実施例4:銀インバイビング処理型ePTFE構造
この実施例では、銀インバイビング処理型ePTFE構造の調製が記述される。
【0102】
ポータル・メンブレンとターゲット・メンブレンとを上記実施例3におけるように調製した。5.7gの銀ナノ粒子インク(#UTDAg60x; UTDots, Inc.)を3.3gのキシレンで希釈し、そしてポータル・メンブレンの表面上へピペッティングし、均一に広げ、そして上記実施例3におけるようにメンブレンを完全に湿潤させておいた。ポータル・メンブレンを上記実施例3におけるように除去して廃棄し、そしてターゲット・メンブレンを上記実施例3におけるように加熱した。その結果が銀インバイビング処理型ePTFE構造であった。
【0103】
実施例5:CG/ePTFE裸電極の調製
この実施例では、CG/ePTFE平坦ディスク裸電極(「CG/ePTFE裸電極(CG/ePTFE bare electrode)」)の調製が記述される。
【0104】
PTFE中空ロッド(1.5”長さ、0.5”外径、0.25”内径)に0.25”の近位開口と、3~4mmの遠位開口とを設けた。実施例3のCG/ePTFE複合体を、近位開口を介して中空ロッド内へ挿入し、遠位開口に対して平らに置き、そしてePTFEガスケットでシールすることにより、CG/ePTFE裸電極を製造した。
【0105】
実施例6:NPG/ePTFE作業電極と銀インバイビング処理型ePTFE疑似参照電極とを有するバイオセンサの電気化学的挙動
この実施例では、作業電極としてのNPG/ePTFE裸電極と、疑似参照電極としての銀インバイビング処理型ePTFE構造とを含む三電極式電気化学セルの電気化学的挙動が記述される。
【0106】
上記の疑似参照電極試験法を用いて、作業電極としての実施例2のNPG/ePTFE裸電極と、疑似参照電極としての実施例4の銀インバイビング処理型ePTFE構造とを含む第1電気化学セルを構成した(「NPG//Agインバイビング処理型RE(NPG//Ag Imbibed RE)」)。比較のために、平坦金電極ディスク作業電極と、液絡Ag/AgCl参照電極とを含む第2電気化学セルを構成した(「金ディスク-Ag/Ag液絡RE(Gold Disk-Ag/Ag liquid junction RE)」)。
【0107】
図9は、NPG//Agインバイビング処理型RE電気化学セルのサイクリック・ボルタモグラムと、金ディスク-Ag/Ag液絡RE電気化学セルのサイクリック・ボルタモグラムとを重ね合わせた。データのこの重ね合わせから判るように、サイクリック・ボルタモグラムは、ほぼ同じ電位領域内に位置している。電位には僅かなシフトがある(166mV対124mV)。このシフトは、液絡参照電極が飽和塩化カリウムであるのに対して、疑似参照電極が電解質と直接に接触しているためと予想される。さらに明らかなことに、NPG//Agインバイビング処理型RE電気化学セルのボルタモグラムにおけるヒステリシスが、金ディスク-Ag/AgCl液絡REセルのものと比較してより狭く、そしてより高いゲインを有している。このことは、疑似参照電極を採用するNPG//Agインバイビング処理型REセルが、これらの規定された条件内で予想通りに作用することを明示している。換言すれば、ナノ多孔質金を有する作業電極基体としてのePTFEと、インバイビング処理銀を有する疑似参照電極基体としてのePTFEと、これらの間の物理的な分離とを用いた電極構成が、電気化学的被分析物バイオセンサとして機能することができる。
【0108】
実施例7:NPG/ePTFE裸電極の耐生物付着性
この実施例では、NPG/ePTFE裸電極の耐生物付着性が記述される。
【0109】
実施例2のNPG/ePTFE裸電極を、上記の耐生物付着性試験法にしたがって、耐生物付着性に関して試験した。加えて、研磨されていない金箔に同じ試験条件を施した。
【0110】
表3は、金箔試料と比較したNPG/ePTFE裸電極のピーク電流を、試料毎のベースラインに対して正規化して示している。NPG/ePTFE試料がBSA生物付着試験溶液中で示したピーク電流の低減は、最高BSA濃度においても、僅かにすぎなかった。比較において、金箔試料は低いBSA濃度においても、ピーク電流を著しく低減した。要約すると、NPG/ePTFE試料は、一般的な生物付着媒体の存在において高い電気化学的性能を呈した。
【表3】
【0111】
実施例8:NPG/ePTFE GOx完成電極及びCG/ePTFE GOx完
この実施例では、グルコースオキシダーゼ(GOx)を含む、酵素固定化型の完成電極の調製が記述される。特に断りのない限り、すべての溶液は水溶性である。
【0112】
実施例2のNPG/ePTFE裸電極、及び実施例5のCG/ePTFE裸電極のそれぞれの遠位端をイソプロパノール中に浸漬し、脱イオン水中に浸漬し、脱イオン水中で濯ぎ、ポリエチレンイミン(PEI)溶液(10mg/mLの水、10分間、Sigma)中に浸漬し、そして脱イオン水で濯いだ。GOx(50kU/g活性、Sigma)を500U/mLのリン酸緩衝液中に溶解し、10μLを、各電極の遠位開口を介してそのePTFEメンブレン表面上へピペッティングし、そして空気乾燥させた。各電極の遠位端をPEI溶液中に二度目に浸漬し、GOx溶液で二度目にピペッティングし、そして二度目に空気乾燥させた。4μL体積のナフィオン(Nafion)溶液(92wt%エタノール:8wt%水中2%w/v、Sigma)を各電極の遠位開口上へピペッティングし、空気乾燥させ、そして4℃で保存することにより、それぞれNPG/ePTFE GOx完成電極又はCG/ePTFE GOx完成電極を製造した。
【0113】
実施例9:NPG/ePTFE GOx完成電極及びCG/ePTFE GOx完成電極のグルコースに対する電気化学応答
この実施例では、実施例8のNPG/ePTFE GOx完成電極及びCG/ePTFE GOx完成電極のグルコースに対する電気化学応答が記述される。
【0114】
図10Aに示されているように、グルコースを連続的に添加するとすぐに、NPG/ePTFE GOx完成電極の測定された電流は急速に上昇し、そして素早く安定化した。
図10Bに示されているように、NPG/ePTFE GOx完成電極は、0~400mg/dLの広範囲のグルコース濃度に対して応答した。比較において、実施例8の手順にしたがって調製されたグルコースオキシダーゼで固定化された金箔は、グルコース濃度の関数として大幅に低減された信号を示した(図示せず)。
【0115】
図11Aに示されているように、グルコースを連続的に添加するとすぐに、CG/ePTFE GOx完成電極の測定された電流は急速に上昇し、そして素早く安定化した。
図11Bに示されているように、CG/ePTFE GOx完成電極は、0~400mg/dLの広範囲のグルコース濃度に対して応答した。比較において、実施例8の手順にしたがって調製されたグルコースオキシダーゼで固定化された金箔は、グルコース濃度の関数として大幅に低減された信号を示した(図示せず)。
【0116】
実施例10:電解質溶媒表面張力に対する電気化学的表面積の依存
この実施例では、電解質溶媒表面張力に対する電気化学的表面積の依存が記述される。
【0117】
実施例1のNPG/ePTFE複合体、実施例3のCG/ePTFE複合体、及び金箔のそれぞれを様々な比の生理食塩水とイソプロパノールとを含む一連の溶液中に浸漬した。生理食塩水は約72mN/mの高い表面張力を有し、イソプロパノールは約21mN/mのより低い表面張力を有し、そして生理食塩水:イソプロパノールとの混合物は、溶媒の比の関数として表面張力を有するので、50:50の生理食塩水:イソプロパノール混合物は、約25mN/mの低い表面張力を有し、そして90:10の生理食塩水:イソプロパノール混合物は、約50mN/mの、又は血液と同じ高い表面張力を有する。
【0118】
電解質を以下のように調製した。すべての希釈はDI水(>18メガオーム)を使用した。DI水中0.05Mの硫酸(H2SO4)、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4。1%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び0.5mLのイソプロパノール。5%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び2.5mLのイソプロパノール。10%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び5mLのイソプロパノール。20%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び10mLのイソプロパノール。30%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び15mLのイソプロパノール。50%イソプロパノール中0.05Mの硫酸、すなわち50mLに希釈された2.5mLの1M H2SO4及び25mLのイソプロパノール。
【0119】
それぞれの浸漬された試料の電気化学的表面積を測定し、そして測定された電気化学的表面積の絶対変化を下記等式にしたがって計算した。
【数1】
上記式中、
abs(n)は絶対値関数であり、
Lは、50:50の生理食塩水:イソプロパノールを含む低い表面張力約25mN/mの溶媒中の測定された電気化学表面積であり、
Hは、生理食塩水を含む高い表面張力約72mN/mの溶媒中の測定された電気化学表面積である。
【0120】
図12に示されているように、複合体は、電解質の組成に依存して著しい相違を示した。CG/ePTFE複合体は、純粋生理食塩水から50:50の生理食塩水:イソプロパノールまでの範囲にわたって電解質表面張力の減少に伴って増大する表面積結果を呈した。電気化学的表面積は、この範囲にわたって約0.005cm
2から約1.000cm
2へ増大した(又は絶対変化約19,900%)。比較において、NPG/ePTFE複合体は、その電気化学的表面積が、電解質表面張力にはほとんど依存しないことを実証し、そして純粋生理食塩水から50:50の生理食塩水:イソプロパノールまでの範囲にわたって比較的平坦な応答を生成した。電気化学的表面積は、この範囲にわたって約5cm
2から約2.5cm
2へ変化した(又は絶対変化約50%)。上述のように、NPG/ePTFEのこのような平坦な応答は、広い電解質表面張力範囲にわたって、比較的一定(すなわち約50%未満)であるとは予測されなかった。それというのも、ベースとなるePTFEフィルムが疎水性であり、ひいては、湿潤を制限し、結果として観察可能な電気化学的表面積を小さくすると予測されたからである。反対に、非疎水性である金箔は、純粋生理食塩水から50:50の生理食塩水:イソプロパノールまでの範囲にわたって、予測された比較的平坦な応答を示した。
【0121】
実施例11:NPG/ePTFE複合体の毛管流動ポリメトリ
この実施例では、上記のCFP試験法にしたがって、実施例1のNPG/ePTFE複合体の毛管流動ポリメトリ(CFP)データが記述される。実施例1において説明され、
図3A及び3Cに示されているように、NPGマトリックスとePTFEメンブレンとの間、特にePTFEメンブレンのノード間には、ギャップを見ることができる。CFPデータは
図16に示されている。極めて低い泡立ち点(すなわち流動の開始)はほぼ5psigである。これは、複合体の厚さを通って延びる、NPGマトリックスとePTFEメンブレンとの間のこれらのギャップの存在と一致する。
【0122】
実施例12:NPG/ePTFE複合体の耐久性
この実施例では、上記の湿潤屈曲粒子化試験にしたがって測定された、実施例1の教示内容にしたがって形成されたNPG/ePTFE複合体の耐久性データが記述される。24時間の湿潤屈曲粒子化試験の完了時には、試験液中に存在する金の量は、ICP検出限界を下回った。この結果は、NPG/ePTFE複合体からの金の損失がないことと一致し、金の少なくとも99.97wt.%が複合体中に保持されることを示した。
【0123】
実施例13:補強なしの薄いNPGの脆弱性
この実施例は、ポリマー基体で補強されない薄いNPGの取り扱いの難しさを示す。ほぼ1cm x 1cmのサイズの12Kホワイトゴールド純正金箔(Genuine Gold Leaf)(L.A. Gold Leaf、0.12μm厚、51%金/48%銀/1%Pd)片を、ピンセットを使用してペトリ皿内に入れた。70%HNO3(aq)を、NPGを完全に覆うのに十分な量でペトリ皿に添加した。NPGを製造するために銀がエッチングにより除去される時間を計算に入れるように、15分間にわたって金箔を室温でHNO3(aq)中に残した。エッチング後、試料はピンセットで軽く触れただけで容易に破断した。
【0124】
実施例14:CPS/ePTFE複合体の調製
“Flexible and Durable Printed Circuits on Stretchable and Non-Stretchable Substrates(伸張可能及び伸張不能の基体上の可撓性及び耐久性を有するプリント回路)”と題するW.L. Gore & Associates, Inc.の国際公開第2019/216885号パンフレットの実施例1の教示内容にしたがって、稠密(close-packed)銀/ePTFE複合体(CPS/ePTFE)を形成した。この材料の特性、及び実施例1に記載された手順にしたがって調製されたNPG/ePTFE複合体の特性を測定し、比較した。
【0125】
図18は、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの低倍率(2,000x)の断面SEM画像を比較することにより、NPG/ePTFEの裸のePTFE表面層を含む各試料の総厚を判定可能にする。
図19は、定量的画像分析によって判定された、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの金属相、並びにこれらの孔相のクローズアップを比較する。
図20は、個数を基準とした、そして容積を基準とした、NPG/ePTFE及びCPS/ePTFEの孔径分布を比較する。モード孔径が各グラフに示されており、そして個数基準グラフから容積基準グラフへのモードのシフトがブロック矢印で示されている。
【0126】
NPG/ePTFとCPS/ePTFEとを比較する数値データが表4~6に示されている。面積当たり容積及び容積%の値を判定するために、以下の密度、すなわち金は19.3g/cc、銀は10.5g/cc、PTFEは2.2g/ccを想定した。孔径分布におけるいくつかの重要なシフトが表7に示されている。
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
(態様)
(態様1)
複合材料であって、
多孔質ポリマー基体と、
前記多孔質ポリマー基体内部に存在し、そして個数基準ナノ孔径分布と容積基準ナノ孔径分布とを含むナノ多孔質金属であって、前記容積基準孔径分布の平均が、前記個数基準ナノ孔径分布の平均よりも少なくとも200%大きい、ナノ多孔質金属と、
を含む複合材料。
(態様2)
前記多孔質ポリマー基体が、複数の相互接続型孔を画定するように協働する複数のノードと複数のフィブリルとを含み、前記ナノ多孔質金属が、前記ノード及び前記フィブリルの間の孔内に少なくとも部分的に含有されている、態様1に記載の複合材料。
(態様3)
前記ナノ多孔質金属が、サイズで約10nm~約200nmのナノ孔を含む、態様1又は2に記載の複合材料。
(態様4)
前記多孔質ポリマー基体がフルオロポリマー又はポリオレフィンを含む、態様1~3のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様5)
前記多孔質ポリマー基体が、延伸ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリエチレンを含む、態様4に記載の複合材料。
(態様6)
前記ナノ多孔質金属が白金、イリジウム、パラジウム、金、銀、銅、ニッケル、又はこれらの組み合わせ又は合金を含む、態様1~5のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様7)
前記ナノ多孔質金属が平均直径で約1nm~約500nmのナノ孔を含み、
前記多孔質ポリマー基体が、前記ナノ多孔質金属のナノ孔よりも大きいマイクロ孔を含む、
態様1~6のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様8)
前記容積基準孔径分布の平均が、前記個数基準ナノ孔径分布の平均よりも少なくとも500%大きい、態様1~7のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様9)
前記個数基準ナノ孔径分布が単峰性且つ右歪曲型である、態様8に記載の複合材料。
(態様10)
複合材料であって、
複数の相互接続型マイクロ孔を含むマイクロ多孔質ポリマー基体と、
前記マイクロ多孔質ポリマー基体のマイクロ孔内に少なくとも部分的に含有され、且つギャップを画定するように前記マイクロ多孔質ポリマー基体から分離されたナノ多孔質金属と
を含む複合材料。
(態様11)
前記マイクロ多孔質ポリマー基体が、メンブレン、チューブ、及び繊維のうちの1つである、態様10に記載の複合材料。
(態様12)
前記マイクロ多孔質ポリマー基体がフルオロポリマー又はポリオレフィンを含む、態様10又は11に記載の複合材料。
(態様13)
前記マイクロ多孔質ポリマー基体が、延伸ポリテトラフルオロエチレン又は延伸ポリエチレンを含む、態様12に記載の複合材料。
(態様14)
前記ナノ多孔質金属が、単峰性且つ右歪曲型である個数基準ナノ孔径分布を有している、態様10~13のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様15)
前記ナノ多孔質金属が、サイズで約10nm~約200nmのナノ孔を含む、態様10から14のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様16)
前記ギャップが前記複合材料の表面でz方向にアクセス可能であり、そして前記ナノ多孔質金属が少なくともx-y方向に導電性を提供する、態様10~15のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様17)
複合材料であって、
複数の相互接続型マイクロ孔を有するマイクロ多孔質ポリマーを含む第1の連続的な網状構造と、
ナノ多孔質金属を含む第2のほぼ連続的な網状構造であって、前記第2のほぼ連続的な網状構造が、前記第1の連続的な網状構造に貫入しており、前記複合材料のポロシティが少なくとも30vol%である、第2のほぼ連続的な網状構造と、
を含む複合材料。
(態様18)
前記第1の連続的な網状構造が、金属化されておらず且つ第2のほぼ連続的な網状構造とは異なる界面領域を含む、態様17に記載の複合材料。
(態様19)
前記界面領域が前記第1の連続的な網状構造の、非積層型の一体部分である、態様18に記載の複合材料。
(態様20)
前記ナノ多孔質金属が、ギャップを画定するように前記マイクロ多孔質ポリマーから分離されている、態様17~19のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様21)
前記ナノ多孔質金属の少なくとも99重量%が、湿潤屈曲粒子化試験から1日後に前記複合材料内に保持されている、態様17~20のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様22)
前記ナノ多孔質金属の少なくとも99.9wt%が、湿潤屈曲粒子化試験から1日後に前記複合材料内に保持されている、態様17~21のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様23)
前記ナノ多孔質金属が、前記複合材料の40vol%未満を占める、態様17~22のいずれか1項に記載の複合材料。
(態様24)
態様1~23のいずれか1項に記載の複合材料を含む電気化学セル。