(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】開閉器
(51)【国際特許分類】
H01H 33/662 20060101AFI20241023BHJP
H01H 33/666 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H01H33/662 R
H01H33/666 L
(21)【出願番号】P 2023568853
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(86)【国際出願番号】 JP2021047439
(87)【国際公開番号】W WO2023119453
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2024-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】田村 幸三
(72)【発明者】
【氏名】小林 将人
(72)【発明者】
【氏名】白井 寛之
【審査官】内田 勝久
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-016889(JP,A)
【文献】特開2003-031091(JP,A)
【文献】特開2020-087593(JP,A)
【文献】特開2018-147642(JP,A)
【文献】特開2016-092871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 33/28 - 33/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定電極と該固定電極に対して接触または解離する可動電極とで構成される開閉部を備える真空インタラプタと、前記固定電極に接続され前記真空インタラプタの外に引き出された固定導体と電気的に接続されている第1のブッシング導体と、前記可動電極に接続され前記真空インタラプタの外に引き出された可動導体と電気的に接続されている第2のブッシング導体とから構成される主回路部と、
前記真空インタラプタの外に引き出された前記可動導体と直接連結され前記可動電極を可動させて前記開閉部の操作を行う操作器を有し、
前記操作器と前記主回路部が一体となって固体絶縁部材でモールド成型され、
前記操作器のメカ部と前記主回路部が前記固体絶縁部材でモールド成型され、
前記メカ部を駆動する駆動回路は、前記モールド成型の外に配置され、
前記操作器のメカ部以外のその他部品は、前記モールド成型の外に配置され、
前記その他部品は、非接触タイプの動作カウンタであることを特徴とする開閉器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂によりモールド成型された高電圧用開閉器に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧を扱う、真空遮断器、断路器、負荷開閉器等を含む開閉器は、機器周辺の高電界から周囲を保護し絶縁性能を高めるために樹脂によるモールド成型を行うものがある。
【0003】
本技術分野における先行技術文献として、例えば特許文献1がある。特許文献1では、固定電極と該固定電極に対して接触または解離する可動電極とを備える真空インタラプタと、可動電極に接続された可動導体と同軸に配置された絶縁操作ロッドと、真空インタラプタと絶縁操作ロッドの周囲を覆う固体絶縁物でモールドした真空開閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、高電位の開閉器部分である主回路部分と絶縁操作ロッドに接続される接地電位の操作器を連結するために、絶縁操作ロッドを使用している。そして、十分な絶縁性能を確保するためには、絶縁操作ロッドの寸法を長くして絶縁距離を確保する必要がある。そのため、小型化できないという課題があった。また、小型化のために、絶縁操作ロッド部分の空間を絶縁ガスや真空にするなど絶縁強度の高い媒質にすることで絶縁操作ロッドの寸法を短くして絶縁性能を確保することも可能であるが、十分ではなく高価となるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み、小型化が可能な開閉器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、その一例を挙げるならば、開閉器であって、固定電極と該固定電極に対して接触または解離する可動電極とで構成される開閉部を備える真空インタラプタと、固定電極に接続され真空インタラプタの外に引き出された固定導体と電気的に接続されている第1のブッシング導体と、可動電極に接続され真空インタラプタの外に引き出された可動導体と電気的に接続されている第2のブッシング導体とから構成される主回路部と、真空インタラプタの外に引き出された可動導体と直接連結され可動電極を可動させて開閉部の操作を行う操作器を有し、操作器と主回路部が一体となって固体絶縁部材でモールド成型されているように構成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化が可能な開閉器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例における真空遮断器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【
図2】実施例における真空遮断器の機能構成概略図である。
【
図3】実施例における真空遮断器の他の機能構成概略図である。
【
図4】従来の真空遮断器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【実施例】
【0011】
本実施例では、開閉器の1例として鉄道車両用の真空遮断器を用いて説明する。
図4は、本発明の前提となる従来の真空遮断器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
【0012】
例えば、鉄道車両は複数の車両で編成されており、これらの各車両の屋根上には高圧引き通しケーブルが配置され、この高圧引き通しケーブルに接続されたパンタグラフを経由して、鉄道車両は電線から電力を受電する。また、各車両の高圧引き通しケーブルは、直線ジョイントで車両間を接続され、T分岐ジョイントで車両床下方向に分岐されている。そして、T分岐ジョイントと直線ジョイントは一体の開閉器を構成する。この、開閉器は鉄道車両の固定部に装着して用いられる。
【0013】
図4において、真空遮断器70は、電気接続部10A、10B、10Cを有し、電気接続部10Bと10Cは真空遮断器70の内部で電気的に接続されており、電気接続部10Bと10CがT分岐ジョイントを構成する。また、電気接続部10Aと、10B及び10Cとの間には、真空遮断器70の内部で、後述する固定電極と可動電極で構成される開閉部を有しており、電気接続部10Aと、10B及び10Cで直線ジョイントを構成する。また、図示はしていないが、真空遮断器70は、T型ケーブルヘッドを電気接続部10A、10B、10Cに接続した状態で使用する。また、真空遮断器70はステー を介してベース71に固定した状態で、鉄道車両に装着される。
【0014】
また、真空遮断器70は、固定電極3と、固定電極3に対して接触または解離する可動電極5と、固定電極3及び可動電極5の周囲を覆うアークシールド6等から構成される真空インタラプタ1を備えている。真空インタラプタ1の外側容器は、内部を真空状態に維持している。真空遮断器70は、アークが真空中に急速に拡散するのを利用して真空容器内でアークを消弧する。この構成は、真空開閉器でも用いられ、高圧から特高で使用される。また、耐久性やメンテナンス性から高圧配電盤などでも用いられる。
【0015】
固定電極3は、固定導体に接続されており、固定導体は真空インタラプタ1の外に引き出され、固定導体側のブッシング導体12B、12Cと電気的に接続されている。可動電極5は、可動導体に接続されており、可動導体は真空インタラプタ1の外に引き出され、可動導体側のブッシング導体12Aと電気的に接続されている。
【0016】
ここで、固定電極と可動電極で構成される開閉部には、例えば25kvから30KVの高電圧がかかる。一方、可動電極を可動させ固定電極と可動電極で構成される開閉部の操作に必要な操作器40は接地電位であり、操作器40を構成する電気回路は例えば直流100Vの低圧回路である。
【0017】
そこで、高電位の開閉部と接地電位の操作器との絶縁を図るために、一方を可動導体と連結され、他方を操作器40と連結された絶縁操作ロッド30を設けている。操作器40により、絶縁操作ロッド30を操作することで、真空インタラプタ1の真空状態を維持したまま可動電極を可動させ固定電極と可動電極で構成される開閉部の操作を行う。操作器40は、例えば、バネに永久磁石と電磁石を組み合わせ、電磁石を構成するコイルへの通電をON/OFF切り換えることで駆動力を発生させる。
【0018】
なお、真空インタラプタ1や固定導体側のブッシング導体12B、12C、可動導体側のブッシング導体12Aなどから構成される主回路部20と、絶縁操作ロッド30の周辺の気中絶縁空間31は、エポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂製の固体絶縁部材15で外周部を覆うように一体化成形され、1点鎖線で示すモールド絶縁体50が形成される。
【0019】
このように、従来は、高電位の主回路部と接地電位の操作器を連結するために、絶縁操作ロッドを使用している。そのため、十分な絶縁性能を確保するためには、絶縁操作ロッドの寸法を長くして絶縁距離を確保する必要がある。そのため、小型化できないという課題があった。また、小型化のために、絶縁操作ロッド部分の空間を絶縁ガスや真空にするなど絶縁強度の高い媒質にすることで絶縁操作ロッドの寸法を短くして絶縁性能を確保することも可能であるが、十分ではなく高価となるという課題があった。
【0020】
そこで、本実施例では、操作器を主回路部と直接連結して樹脂によるモールド成型することで、気中絶縁空間31を不要にし、小型化する。以下、本実施例について詳細に説明する。
【0021】
図1は、本実施例における真空遮断器の中心軸を含む平面で切断した断面図である。
図1において、
図4と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図1において、
図4と異なる点は、絶縁操作ロッド30および気中絶縁空間31がなく、操作器40と主回路部20が直接連結されて樹脂製の固体絶縁部材15で全体が一体となってモールド成型されている点である。
【0022】
図1に示すように、本実施例における真空遮断器80は、主回路部20の真空インタラプタ1の外に引き出された可動導体と操作器40を接続し、操作器40を主回路部20と直接連結する。これにより、主回路部と操作部で絶縁距離が不要となり絶縁操作ロッド30および気中絶縁空間31が不要になるため、小型化が可能となる。なお、操作器40を主回路部20と直接連結することで、操作器40も主回路部20と同じ課電部になる。よって、通電経路ではないので電流は流れないが絶縁が必要となる。そのため、操作器40と主回路部20の全体をモールド成型しモールド絶縁体51として形成し、モールド絶縁体51を表面接地する。
【0023】
また、操作器は低圧回路で動かすことになるので、主回路部の高電圧部との混触を避ける必要がある。そのために、操作器から駆動回路や補助回路、その他部品を切り離してメカ部分だけモールドする。
【0024】
図2は、本実施例における真空遮断器の機能構成概略図である。
図2において、従来、操作器内の構成部品である、メカ部42、駆動コイルからなる電磁石等の駆動源43、開閉部接点の状態を監視する近接センサや磁気センサ等の補助回路44、動作カウンタや温度計等のその他部品45のうち、メカ部42以外は固体絶縁部材15の外に配置する。これにより、操作器を低圧回路で動作させても、電気回路部分はモールドの外なので主回路部の高電圧部との混触を避けることができる。なお、
図2において、メカ部42はケース41内に配置し、ケース41をモールド成型する際の型として使用し、その周囲をモールドする。また、ケース41、メカ部42は主回路部20で固定する。その固定構造としては、ねじ止めやピン構造とすればよい。
【0025】
図3は、本実施例における真空遮断器の他の機能構成概略図である。
図3において、
図2と同じ構成は同じ符号を付し、その説明は省略する。
図3において、
図2と異なる点は、駆動源43として電磁石46を有し、メカ部42として、プランジャ47と連結部品接圧ばね48と遮断ばね49を有している点である。
【0026】
主回路部の高電圧部との絶縁のために操作器内のメカ部以外はモールドの外に置く場合、操作器の電気回路部分はメカ部と物理的に接続できない。そのために、駆動源43として非接触タイプの電磁石46を使用し、メカ部42としてのプランジャ47を非接触で駆動することで、主回路部の開閉部の操作を行うことができる。また、近接センサや磁気センサ等の補助回路44や、動作カウンタや温度計等のその他部品45も非接触タイプのものを採用することで、モールド内の状態を検出することができる。
【0027】
なお、本実施例では主回路部とメカ部の全体をモールドで覆うため、通電時の発熱の影響が懸念される。そのため、ケース41を例えばアルミ鋳物として、ケース41で放熱させて導体部の発熱を抑える。
【0028】
また、主回路部20の真空インタラプタ1の外に引き出された可動導体とブッシング導体12Aとの接続方法としては、コーペル、編組線、マルチコンタクト等で接続する。
【0029】
また、主回路部とメカ部の全体をモールドで覆うため、モールド内のメカ部のメンテナンスが困難となる。これに対しては、軸受けに低摩擦の材料を使用しグリスレスとして、調整レスとすればよい。または、主回路部とメカ部のモールドを分割形式とし、一部のモールドを取り外してメンテナンスを行ってもよい。なお、分割形式とする際には、樹脂のつなぎ目で絶縁破壊が起きないように構成することが必要である。そのために、樹脂のつなぎ目での面圧が高くなるように、つなぎ目部分の距離を長くする構造、あるいは、つなぎ目部分を弾性体を介した嵌め合い構造にすればよい。さらには、つなぎ目の接合部に絶縁性のグリースやOリングなどの封止材を用いてもよい。
【0030】
また、モールド注型時の硬化温度は例えば140℃になるため、その硬化温度で操作器のメカ部が壊れることが懸念される。これに対しては、温度仕様を合わせた部品を選定することで対応可能である。
【0031】
さらに、モールド注型する前の全体の封止構造としては、メカ部をケースで覆い、ケースは主回路部の導体等との合わせ面でシールすることで、対応可能である。
【0032】
また、本実施例における真空遮断器は、絶縁操作ロッド30が不要であるので軽量化か可能であり、さらに、主回路部とメカ部の全体をモールドで覆うため、開閉部の動作時に発生する音がモールドで閉じ込められるので騒音低下か可能となる。
【0033】
以上説明したように、本実施例によれば、操作器を主回路部と直接連結して樹脂によるモールド成型することで、絶縁操作ロッドを不要にし、小型化が可能な真空遮断器を提供できる。
【0034】
なお、実施例について説明したが、本発明は、小型化を図ることで、使用材料の量を抑えることができる。そのため、炭素排出量を減らし、地球温暖化を防止することができ、SDGs(Sustainable Development Goals)を実現するための特に項目7のエネルギーに貢献する。
【0035】
また、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は、鉄道車両用の真空遮断器を例に説明したが、高電圧を扱う、断路器、負荷開閉器等を含む開閉器にも適用可能である。また、上記した実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1:真空インタラプタ、3:固定電極、5:可動電極、6:アークシールド、10A、10B、10C:電気接続部、12A、12B、12C:ブッシング導体、15:固体絶縁部材、20:主回路部、30:絶縁操作ロッド、31:気中絶縁空間、40:操作器、41:ケース、42:メカ部、43:駆動源、44:補助回路、45:その他部品、46:電磁石、47:プランジャ、48:連結部品接圧ばね、49:遮断ばね、50、51:モールド絶縁体、70、80:真空遮断器、71:ベース