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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】熱処理システム
(51)【国際特許分類】
   F27B 9/24 20060101AFI20241023BHJP
   C04B 35/64 20060101ALI20241023BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
F27B9/24 R
C04B35/64
C04B35/111
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024097351
(22)【出願日】2024-06-17
【審査請求日】2024-06-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青木 道郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 努
(72)【発明者】
【氏名】小牧 毅史
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-259996(JP,A)
【文献】特開2001-031476(JP,A)
【文献】特開2002-318077(JP,A)
【文献】特開2023-034757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の被焼成品を巻き出す巻き出し機構と、
各々が回転することにより、前記巻き出し機構により巻き出された前記被焼成品に接して前記被焼成品を搬送することが可能な複数のローラと、
前記複数のローラにより搬送される前記被焼成品を焼成するための焼成炉と、を備え、
前記複数のローラは、600℃~1400℃の温度域で使用可能な耐熱材料により形成されており、
前記巻き出し機構は、前記複数のローラが前記被焼成品を支持する位置よりも高い位置に設けられており、
前記複数のローラは、前記巻き出し機構から垂れ下がる前記被焼成品を支持しながら搬送する、熱処理システム。
【請求項2】
前記複数のローラの前記被焼成品と接する表面は平滑化されている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項3】
前記表面の表面粗さは、Ra6.3μm以下である、請求項2に記載の熱処理システム。
【請求項4】
前記複数のローラは、アルミナの含有率が50%~70%であるセラミックスにより形成されている、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項5】
前記焼成による前記被焼成品の収縮に対応して、前記複数のローラに含まれる少なくとも一部のローラによる搬送速度を変更することが可能なローラ駆動制御部をさらに備える、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項6】
前記焼成炉は、前記複数のローラによる搬送の上流から下流に向かって、炉内温度を上昇させる昇温域、前記昇温域により上昇した前記炉内温度を保持する保持域、および、前記炉内温度を下降させる冷却域を有し、
前記ローラ駆動制御部は、前記昇温域の所定位置より下流に位置する前記ローラについて、前記所定位置より上流に位置する前記ローラよりも、搬送速度を遅くする、請求項5に記載の熱処理システム。
【請求項7】
前記焼成炉により焼成された後の前記被焼成品を巻き取る巻き取り機構をさらに備える、請求項1に記載の熱処理システム。
【請求項8】
前記被焼成品は、ガラス、セラミックス、金属、またはこれらの混合物である、請求項1に記載の熱処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、熱処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、トンネル型の焼成炉と、焼成炉内を水平方向に貫通し、一定速度で駆動方向に駆動される無機繊維の無端ベルトと、を含む焼成装置が開示されている。この焼成装置によれば、未焼成シートロールから引き出された長手状の未焼成シートは、無端ベルト上に送り込まれ、無端ベルトに載せられた状態で焼成炉内を通過する。そして、加熱され生成されたセラミックシートが、セラミックシートロールにより巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-31476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1によれば、無機繊維の無端ベルトが、焼成炉内および焼成炉外を周回する。しかしながら、無機繊維製のベルトは、繰り返し屈曲させると破断し易く、そのため被焼成品の搬送手段としての実用性が低い。
【0005】
本明細書は、被焼成品を、その破損を抑制しながら搬送するために適した技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する熱処理システムは、帯状の被焼成品を巻き出す巻き出し機構と、各々が回転することにより、前記巻き出し機構により巻き出された前記被焼成品を搬送することが可能な複数のローラと、前記複数のローラにより搬送される前記被焼成品を焼成するための焼成炉と、を備える。前記複数のローラは、600℃~1400℃の温度域で使用可能な耐熱材料により形成されており、前記被焼成品に接して前記被焼成品を搬送する。
【0007】
前記構成によれば、巻き出し機構により巻き出された被焼成品は、600℃~1400℃といった高温の温度域で使用可能な耐熱材料による複数のローラへ直に載せられ、各ローラの回転により搬送されながら焼成炉により焼成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】熱処理システムの概略図。
図2】ローラ速度制御を説明するための図。
図3図1と異なる例の熱処理システムの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記しておく。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。
【0010】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記複数のローラの前記被焼成品と接する表面は平滑化されている、としてもよい。
前記構成によれば、各ローラにおける被焼成品と接する表面は平滑化されているため、各ローラが搬送中の被焼成品を傷つけることを、抑制することができる。また、各ローラにおける被焼成品と接する表面と、被焼成品との間である程度の滑りが生じるため、焼成中に被焼成品の長手方向に発生する引張応力を、緩和することができる。
【0011】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記表面の表面粗さは、Ra6.3μm以下である、としてもよい。
前記構成によれば、各ローラにおける被焼成品と接する表面は、研磨処理されることにより、表面粗さはRa6.3μm以下である。これにより、各ローラが被焼成品を傷つけることを、具体的に抑制することができる。
【0012】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記複数のローラは、アルミナの含有率が50%~70%であるセラミックスにより形成されている、としてもよい。
前記構成によれば、熱処理システムは、耐熱衝撃性に優れた組成の各ローラを用いて被焼成品を搬送することができる。
【0013】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記焼成による前記被焼成品の収縮に対応して、前記複数のローラに含まれる少なくとも一部のローラによる搬送速度を変更することが可能なローラ駆動制御部をさらに備える、としてもよい。
前記構成によれば、ローラ駆動制御部は、被焼成品の収縮に対応して、少なくとも一部のローラによる搬送速度を変更する。この結果、被焼成品に引張応力が生じることを、より的確に抑制することができる。
【0014】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記焼成炉は、前記複数のローラによる搬送の上流から下流に向かって、炉内温度を上昇させる昇温域、前記昇温域により上昇した前記炉内温度を保持する保持域、および、前記炉内温度を下降させる冷却域を有する。そして、前記ローラ駆動制御部は、前記昇温域の所定位置より下流に位置する前記ローラについて、前記所定位置より上流に位置する前記ローラよりも、搬送速度を遅くする、としてもよい。
前記構成によれば、ローラ駆動制御部は、焼成炉の昇温域を通過中の被焼成品に生じる熱収縮に対応させて、昇温域の所定位置より下流に位置するローラの搬送速度を遅くすることができる。これにより、被焼成品に引張応力が生じることを、具体的に抑制することができる。
【0015】
本明細書に開示する熱処理システムは、前記焼成炉により焼成された後の前記被焼成品を巻き取る巻き取り機構をさらに備える、としてもよい。
前記構成によれば、熱処理システムは、焼成炉により焼成された後の被焼成品を、巻き取り機構により容易に回収することができる。
【0016】
本明細書に開示する熱処理システムによれば、前記被焼成品は、ガラス、セラミックス、金属、またはこれらの混合物である、としてもよい。
前記構成によれば、熱処理システムは、ガラス、セラミックス、金属、またはこれらの混合物である被焼成品を搬送し、焼成したものを結果物として得ることができる。
【実施例
【0017】
図面を参照して、実施例を説明する。各図は例示に過ぎず、本実施例は図示した内容に限定されない。また、各図は例示であるため、一部が省略されていたりする。
【0018】
図1は、熱処理システム10を概略的に示している。熱処理システム10は、巻き出し機構20、焼成炉30を含む。巻き出し機構20には、長尺な被焼成品2がロール状に巻かれたロール体1が保持されている。被焼成品2は、帯状である。また、被焼成品2は、例えば、ガラス、セラミックス、金属、またはこれらの混合物である。帯状とは、繊維が編まれたものや不織布、フィルム状のもの、箔状のもの、等を含む。巻き出し機構20は、回転することにより、ロール体1から被焼成品2を巻き出す(繰り出す)。被焼成品2は、焼成炉30により焼成される前も焼成された後も、可撓性を有する。
【0019】
焼成炉30は、不図示のヒータが発熱することにより、炉内の被焼成品2を焼成する、即ち、熱処理する。焼成炉30は、所定の搬送方向D1に長尺な、略直方体形状の断熱構造体であり、搬送方向D1の上流側の一端に搬入口34を有し、搬送方向D1の下流側の他端に搬出口35を有する。以下では、搬送方向D1の上流、下流を、単に上流、下流と言う。
【0020】
複数のローラ51が搬送方向D1に沿って所定間隔で並ぶことにより構成されるローラ群50は、搬入口34および搬出口35を通じて、焼成炉30の内外を貫通するように設けられている。ローラ群50を、搬送機構と称してもよい。複数のローラ51の夫々は、回転軸が互いに平行であり、回転軸は搬送方向D1に対して直交する方向を向く。巻き出し機構20により巻き出された被焼成品2は、搬入口34よりも上流の位置において、ローラ51上に載る。つまり本実施例では、被焼成品2は、各ローラ51に対して直に載せられる。複数のローラ51は、各々が回転し、被焼成品2に接して被焼成品2を搬送方向D1へ搬送する。
【0021】
ローラ群50により搬送される被焼成品2は、搬入口34から焼成炉30内へ入り、焼成炉30の内部を搬送される期間に焼成される。ローラ群50により搬送されて搬出口35から焼成炉30外へ出た、焼成炉30による焼成後の被焼成品2は、搬出口35よりも下流の位置において、ローラ51から離間する。
【0022】
図1の例によれば、熱処理システム10において、搬出口35よりも下流には、切断装置70および格納装置80が設けられている。搬出口35から焼成炉30外へ出た被焼成品2は、ローラ群50により切断装置70へ搬送され、切断装置70が備えるカッタにより所定サイズに裁断される。そして、裁断後の被焼成品3は、回収され、格納装置80に格納される。
【0023】
図1から判るように、巻き出し機構20は、ローラ群50が被焼成品2を支持する位置よりも高い位置に設けられている。つまり本実施例では、巻き出し機構20から垂れ下がる被焼成品2を、ローラ群50が支持しながら搬送する構成を把握することができる。ローラ群50は、被焼成品2を水平あるいは略水平に支持すると解してよい。
【0024】
ローラ群50を構成する複数のローラ51は、焼成炉30の炉内温度の変化や最高温度に対しても安定した形状を保つことが可能な素材により形成されている。本実施例では、各ローラ51は、600℃~1400℃の温度域でも使用可能な耐熱材料により形成されている。より好ましくは、炉内の最高温度を1000℃~1300℃と想定し、各ローラ51は、1000℃~1300℃といった高温度域で使用可能な耐熱材料により形成されている、としてもよい。これら特定の温度域で使用可能ということは、これら特定の温度域に達しない温度域において使用可能であることを含む意味である。
【0025】
ローラ51の適切な組成の一例として、各ローラ51は、アルミナ(Al)の含有率が50%~70%であるセラミックスにより形成されている。このような比率でアルミナを含有するセラミックスの具体例として、ムライトが挙げられる。ムライトは、アルミナとシリカ(SiO)との化合物であり、アルミナと比較して熱膨張率が低く、耐熱衝撃性に優れている。
【0026】
本実施例では、各ローラ51の、被焼成品2と接する表面は平滑化されている。ローラ51の表面のうち、被焼成品2の搬送において被焼成品2と接しない範囲は、平滑化されていなくてもよい。平滑化されているとは、予め研磨処理が施されているということである。例えば、各ローラ51が上述のムライトにより形成されているとする。ムライトは、アルミナに比べると粒径が大きく、表面は粗いが、研磨処理を施すことにより、表面の平滑性を獲得することができる。各ローラ51の被焼成品2と接する表面における表面粗さは、例えば、Ra6.3μm以下である。表面粗さRaは、算術平均粗さである。各ローラ51の表面のうち、被焼成品2と接する表面、すなわち平滑化されている表面は、例えば、ローラ51の軸方向におけるローラ51の長さ範囲のうち、ローラ51の中央を含む80%以内の範囲であってもよい。この場合、例えば、ローラ51の軸方向におけるローラ51の両端部は、平滑化されていない。ただし、ローラ51の平滑化されている表面の範囲は、ローラ51の中央を基準にして、ローラ51の軸方向において対称であってもよいし、非対称であってもよい。
【0027】
このように本実施例によれば、熱処理システム10は、帯状の被焼成品2を巻き出す巻き出し機構20と、各々が回転することにより、巻き出し機構20により巻き出された被焼成品2を搬送することが可能な複数のローラ51と、複数のローラ51により搬送される被焼成品2を焼成するための焼成炉30と、を備える。そして、複数のローラ51は、600℃~1400℃の温度域で使用可能な耐熱材料により形成されており、被焼成品2に接して被焼成品2を搬送する。すなわち、無機繊維製のベルトを屈曲させながら焼成炉内および焼成炉外を繰り返し周回させるとベルトが破断し易く、実用性が低い、といった問題を、熱処理システム10は、被焼成品2の搬送手段として複数のローラ51を用いることにより解決する。被焼成品2が、複数のローラ51に直に載って搬送されることで、搬送中の被焼成品2の破損が抑制される。
【0028】
さらに本実施例によれば、各ローラ51の被焼成品2と接する表面は平滑化されている。表面粗さは、例えば、Ra6.3μm以下である。そのため、ローラ51による搬送時に被焼成品2が傷つくことを抑制することができる。また、各ローラ51の表面と被焼成品2との間である程度の滑りが生じるようになる。そのため、焼成中の熱収縮に応じて被焼成品2の長手方向に発生する引張応力が、緩和され、破損が抑制された良質な焼成後の被焼成品2が得られる。
【0029】
図2は、本実施例におけるローラ速度制御を説明するための図であり、焼成炉30の温度プロファイルを表したグラフ等を示している。図1に示すように、焼成炉30は、搬送方向D1において連通しつつある程度区切られた3つの領域31,32,33を有する。つまり、焼成炉30は、上流から下流に向かって、炉内温度を上昇させる昇温域31、昇温域31により上昇した炉内温度を保持する保持域32、炉内温度を下降させる冷却域33を、この順序で有する。従って、搬入口34は、昇温域31に対する搬入口と捉えることができ、搬出口35は、冷却域33からの搬出口と捉えることができる。
【0030】
図2のグラフでは、実線により温度プロファイルを例示している。当該グラフの横軸は、搬入口34を基準とした搬送方向D1における搬出口35へ向かう位置と捉えることができるし、搬送方向D1へ搬送される被焼成品2が搬入口34を発つ時点を基準とした時間経過と捉えることもできる。温度プロファイルは、昇温域31に対応する昇温プロファイルT1、保持域32に対応する保持プロファイルT2、冷却域33に対応する冷却プロファイルT3を有する。
【0031】
昇温域31では、搬送方向D1において、昇温プロファイルT1が示すように炉内温度が室温から所定の最高温度まで連続的に上昇するように、ヒータ出力が設定されている。保持域32では、保持プロファイルT2が示すように炉内温度が最高温度で略保持されるように、ヒータ出力が設定されている。冷却域33では、搬送方向D1において、冷却プロファイルT3が示すように炉内温度が最高温度から室温まで連続的に下降するように、ヒータ出力や冷却器が設定されている。
【0032】
このような構成において、本実施例では、熱処理システム10はローラ駆動制御部60をさらに備える。ローラ駆動制御部60は、焼成による被焼成品2の収縮に対応して、複数のローラ51に含まれる少なくとも一部のローラ51による搬送速度を変更することが可能である。ローラ駆動制御部60は、例えば、各ローラ51を回転させるための1つ以上のモータや、モータから各ローラ51へ動力を伝達するための伝達機構や、モータの駆動や伝達機構の切り替え等を制御するドライバ回路等を含んで構成される。
【0033】
図2のグラフでは、焼成炉30内を搬送される被焼成品2の膨張率を二点鎖線で例示している。図2によれば、被焼成品2の膨張率は、昇温域31に入ってから徐々に増加するが、ある時点を境に、減少に転ずる。そして、昇温域31を通過している最中において、被焼成品2の膨張率はマイナスに転じ、被焼成品2は、熱処理開始前と比べて収縮する。つまり図2によれば、被焼成品2は、昇温域31を通過している最中のある時点で熱収縮し、その後、保持域32を通過し終えるまでは、この状態がほぼ維持され、冷却域33へ進むとさらに熱収縮することが判る。
【0034】
このような被焼成品2の熱収縮パターンは、発明者が予め実験やシミュレーションにより把握した結果である。そこで、ローラ駆動制御部60は、このような熱収縮パターンに対応して、ローラ51による搬送速度、すなわちローラ51の回転速度を変更する。図2において、符号50a,50b,50cの夫々は、ローラ群50を構成する複数のローラ51のうち、焼成炉30内に配置された複数のローラ51を、さらに、それらの位置に応じてグループ(サブグループ)に分けた状況を示している。図2では、サブグループ50a,50b,50cを簡略化して矩形で示しているが、実際は、サブグループ50a,50b,50cは夫々が、複数のローラ51が搬送方向D1に並んで構成されている。
【0035】
第1サブグループ50aは、昇温域31に属する複数のローラ51のうちの一部からなり、概ね、搬入口34から上述したように被焼成品2の膨張率がマイナスに転じるあたりの所定位置までの範囲に属するローラ51からなる。第2サブグループ50bは、概ね、昇温域31に属する複数のローラ51のうち第1サブグループ50aに該当しないローラ51と、保持域32に属するローラ51と、からなる。第3サブグループ50cは、概ね、冷却域33に属するローラ51からなる。
【0036】
ローラ駆動制御部60は、これら第1~第3サブグループ50a,50b,50cのうち、第2サブグループ50bおよび第3サブグループ50cの各ローラ51による搬送速度を、第1サブグループ50aの各ローラ51による搬送速度よりも遅くなるように変更する。これは、昇温域31の所定位置より下流に位置するローラ51について、当該所定位置より上流に位置するローラ51よりも搬送速度を遅くする制御の一例である。
【0037】
図2において、第1~第3サブグループ50a,50b,50cの夫々にカッコ書きで記載された数値は、速度の違いを示している。一例として、ローラ駆動制御部60は、第1サブグループ50aの各ローラ51による搬送速度を100%としたとき、第2サブグループ50bの各ローラ51による搬送速度を95%とし、第3サブグループ50cの各ローラ51による搬送速度を90%とすることができる。このような、ローラ駆動制御部60が実行するローラ速度制御によれば、焼成炉30により焼成される被焼成品2に熱収縮が生じたとしても、前記所定位置より下流に位置するローラ51の搬送速度を遅くすることで、被焼成品2に生じる引張応力を、適切に抑制することができる。
【0038】
ローラ駆動制御部60によるローラ速度制御は、上述の具体例に限られない。例えば、図2の例では、焼成炉30内に配置された複数のローラ51を、互いの搬送速度が異なる3つのサブグループに分けたが、このようなサブグループの数は2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。また、焼成炉30内においてサブグループを区分する位置は、焼成炉30における温度制御や、熱処理の対象とする被焼成品2の特性に応じて、異ならせてもよい。
【0039】
図3は、図1とは異なる例にかかる熱処理システム10を示している。図3については、図1と異なる点を説明する。図3によれば、熱処理システム10は、搬出口35よりも下流において、切断装置70および格納装置80を備えず、巻き取り機構40を備える。焼成炉30により焼成された後の被焼成品2は、ローラ51から離間し、巻き取り機構40により巻き取られる。つまり巻き取り機構40は、回転することにより、焼成後の被焼成品2をロール状に巻き取って回収する。さらに、図3によれば、巻き出し機構20や巻き取り機構40と、ローラ群50との間では、被焼成品2が撓むことが許容されており、例えば、巻き出し機構20、巻き取り機構40およびローラ群50以外に、被焼成品2に対して張力を付与する構成は特に含まれていない。
【0040】
以上、本明細書に開示の技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0041】
1:ロール体
2:被焼成品
10:熱処理システム
20:巻き出し機構
30:焼成炉
31:昇温域
32:保持域
33:冷却域
34:搬入口
35:搬出口
40:巻き取り機構
50:ローラ群
51:ローラ
60:ローラ駆動制御部
70:切断装置
80:格納装置
D1:搬送方向
【要約】
【課題】被焼成品の搬送により適した技術を提供する。
【解決手段】熱処理システムは、帯状の被焼成品を巻き出す巻き出し機構と、各々が回転することにより、巻き出し機構により巻き出された被焼成品を搬送することが可能な複数のローラと、複数のローラにより搬送される被焼成品を焼成するための焼成炉と、を備える。複数のローラは、600℃~1400℃の温度域で使用可能な耐熱材料により形成されており、被焼成品に接して被焼成品を搬送する。
【選択図】図1
図1
図2
図3