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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】電気化学セル
(51)【国際特許分類】
   C25B 11/031 20210101AFI20241023BHJP
   C25B 1/23 20210101ALI20241023BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20241023BHJP
   C25B 9/63 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 4/86 20060101ALI20241023BHJP
   H01M 8/12 20160101ALI20241023BHJP
   C25B 1/042 20210101ALI20241023BHJP
   H01M 8/1226 20160101ALI20241023BHJP
【FI】
C25B11/031
C25B1/23
C25B9/00 A
C25B9/00 Z
C25B9/63
H01M4/86 U
H01M8/12 101
C25B1/042
H01M8/1226
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024507592
(86)(22)【出願日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 JP2023004783
(87)【国際公開番号】W WO2023176242
(87)【国際公開日】2023-09-21
【審査請求日】2024-06-05
(31)【優先権主張番号】P 2022039313
(32)【優先日】2022-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 玄太
(72)【発明者】
【氏名】杉江 明浩
(72)【発明者】
【氏名】中村 俊之
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-207088(JP,A)
【文献】特開2008-257885(JP,A)
【文献】特開2007-173243(JP,A)
【文献】特開2016-015308(JP,A)
【文献】特開2021-158026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0212258(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B 11/00 - 11/097
C25B 1/00 - 9/77
C25B 13/00 - 15/08
H01M 4/86 - 4/98
H01M 8/00 - 8/0297
H01M 8/08 - 8/2495
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極層、第2電極層、及び前記第1電極層と前記第2電極層との間に配置される電解質層、を有するセル本体部と、
第1主面、第2主面、及び貫通孔を有し、前記セル本体部を支持する金属板と、
を備え、
前記第1電極層は、前記金属板の第1主面上に配置される本体部と、前記貫通孔内に配置され且つ前記本体部と同じ材料によって構成される充填部と、前記本体部内に配置される少なくとも一つの第1気孔と、前記充填部内に配置される少なくとも一つの第2気孔と、を有し、
前記第2気孔のうち最も大きい最大第2気孔の円相当径は、前記第1気孔のうち最も大きい最大第1気孔の円相当径よりも大きい、
電気化学セル。
【請求項2】
前記最大第2気孔は、前記充填部内において、前記第2主面側に配置される、
請求項1に記載の電気化学セル。
【請求項3】
前記最大第2気孔は、前記貫通孔を画定する内壁面と間隔をあけて配置される、
請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項4】
前記最大第2気孔は、前記貫通孔を画定する内壁面に接触する、
請求項1又は2に記載の電気化学セル。
【請求項5】
前記最大第2気孔の円相当径は、前記最大第1気孔の円相当径の2倍以上である、
請求項1に記載の電気化学セル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルに関する。
【背景技術】
【0002】
電解セル又は燃料電池などの電気化学セルにおいて、金属板によってセル本体部を支持する構造が知られている。例えば、特許文献1に開示された電気化学セルは、金属板上に、電極層、電解質層、及び対極電極層がこの順で積層されている。金属板は、電極層へ気体を供給するために、貫通孔を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2018/181926号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、貫通孔が形成された金属板上に電極層を配置した構成にすると、貫通孔上では電極層は支持されていないため、電極層を薄く形成した場合に電極層に割れが発生するという問題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、金属板上に形成された電極層の割れを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある側面に係る電気化学セルは、セル本体部と、金属板とを備える。セル本体部は、第1電極層、第2電極層、及び電解質層を有する。電解質層は、第1電極層と第2電極層との間に配置される。金属板は、セル本体部を支持する。金属板は、第1主面、第2主面、及び貫通孔を有する。第1電極層は、本体部と、充填部と、少なくとも一つの第1気孔と、少なくとも一つの第2気孔とを有する。本体部は、金属板の第1主面上に配置される。充填部は、貫通孔内に配置される。第1気孔は、本体部内に配置される。第2気孔は、充填部内に配置される。第2気孔のうち最も大きい最大第2気孔の円相当径は、第1気孔のうち最も大きい最大第1気孔の円相当径よりも大きい。
【0007】
この構成によれば、第1電極層の充填部が金属板の貫通孔内に配置されているため、金属板上に形成された第1電極層の割れを抑制することができる。なお、このように充填部を配置すると、例えば還元過程において充填部が収縮する。この結果、充填部内にクラックが生じ、そのクラックが電解質層まで伸展し、電解質層を貫通してしまうおそれがある。これに対して、上記のように構成された電気化学セルでは、最大第1気孔よりも大きい最大第2気孔が充填部内に配置されている。このため、充填部内で生じたクラックの伸展が第2気孔によって止められる。この結果、クラックが伸展して電解質層を貫通することを抑制することができる。
【0008】
好ましくは、最大第2気孔は、充填部内において、第2主面側に配置される。
【0009】
好ましくは、最大第2気孔は、貫通孔を画定する内壁面と間隔をあけて配置される。
【0010】
好ましくは、最大第2気孔は、貫通孔を画定する内壁面に接触する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、金属板上に形成された電極層の割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】電解セルを示す断面図。
図2】金属板の平面図。
図3】電解セルの詳細を示す拡大断面図。
図4】変形例に係る電解セルの詳細を示す拡大断面図。
図5】変形例に係る電解セルの詳細を示す拡大断面図。
図6】変形例に係る電解セルの詳細を示す拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施形態に係る電解セル(電気化学セルの一例)について図面を参照しつつ説明する。なお、本実施形態では、電解セルの一例として固体酸化物形電解セル(SOEC)を用いて説明する。図1は電解セルを示す断面図である。以下の説明では、固体酸化物形電解セルを「セル」と略称する。
【0014】
図1に示すように、セル1は、セル本体部10と、金属板4とを備える。また、セル1は、流路部材3をさらに備えている。
【0015】
[流路部材3]
流路部材3は、金属板4に接合される。流路部材3は、流路31を有する。流路31は、流路部材3の金属板4と対向する面に形成されている。本実施形態では、流路部材3の上面に流路31が形成されている。流路31は、金属板4に向かって開口している。流路31は、図示しないマニホールドなどに繋がる。本実施形態では、流路31に原料ガスが供給される。
【0016】
流路部材3は、例えば、合金材料によって構成することができる。流路部材3は、金属板4と同様の材料によって形成されていてもよい。
【0017】
流路部材3は、枠体32及びインターコネクタ33を有する。枠体32は、流路31の側方を取り囲む環状部材である。枠体32は、金属板4に接合される。インターコネクタ33は、電解セル1を外部電源又は他の電解セルと電気的に直列に接続する板状部材である。インターコネクタ33は、枠体32に接合される。
【0018】
本実施形態に係る流路部材3では、枠体32及びインターコネクタ33が別部材となっているが、枠体32及びインターコネクタ33は1つの部材によって構成されていてもよい。
【0019】
[金属板4]
金属板4は、セル本体部10を支持する。本実施形態において、金属板4は、板状に形成されている。金属板4は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。金属板4は、セル1の強度を保つことができればよく、その厚みは特に制限されないが、例えば0.1mm以上2.0mm以下とすることができる。
【0020】
金属板4は、第1主面41、第2主面42、及び複数の貫通孔43を有している。金属板4の第1主面41は、セル本体部10を支持している。金属板4の第2主面42は、流路31と対向している。なお、本実施形態では、金属板4の上面が第1主面41であり、金属板4の下面が第2主面42である。金属板4の第2主面42に流路部材3の枠体32が接続されている。
【0021】
図2に示すように、金属板4は、平面視において矩形状である。なお、金属板4は、円形状など他の形状であってもよい。複数の貫通孔43は、金属板4の長手方向及び短手方向に沿って配列している。複数の貫通孔43は、金属板4のうち後述する水素極層5に接合される領域に形成されている。貫通孔43は、第1主面41に開口している。また、貫通孔43は、第2主面42にも開口している。すなわち、貫通孔43は、金属板4を厚さ方向に貫通している。貫通孔43は、流路部材3の流路31と連通している。
【0022】
貫通孔43は、平面視において略円形状である。平面視における貫通孔43の面積は、例えば、0.00005mm以上1mm以下とすることができる。また、貫通孔43の直径は、例えば、10μm以上1000μm以下とすることができる。なお、貫通孔43は、平面視において矩形状であってもよい。
【0023】
流路31を流れる原料ガスは、貫通孔43を介して、水素極層5に供給される。この貫通孔43内にセル本体部10の一部が入り込んでいる。詳細には、セル本体部10の水素極層5の一部が貫通孔43内に入り込んでいる。
【0024】
貫通孔43は、機械加工(例えば、パンチング加工)、レーザ加工、或いは、化学加工(例えば、エッチング加工)などによって形成することができる。金属板4は、ガス透過性を持たせるために、多孔質金属を用いることもできる。
【0025】
金属板4は、金属材料によって構成されている。例えば、金属板4は、Cr(クロム)を含有する合金材料によって構成される。このような金属材料としては、Fe-Cr系合金鋼(ステンレス鋼など)やNi-Cr系合金鋼などを用いることができる。金属板4におけるCrの含有率は特に制限されないが、4質量%以上30質量%以下とすることができる。
【0026】
金属板4は、Ti(チタン)やZr(ジルコニウム)を含有していてもよい。金属板4におけるTiの含有率は特に制限されないが、0.01mol%以上1.0mol%以下とすることができる。金属板4におけるZrの含有率は特に制限されないが、0.01mol%以上0.4mol%以下とすることができる。金属板4は、TiをTiO(チタニア)として含有していてもよいし、ZrをZr(ジルコニウム)として含有していてもよい。
【0027】
金属板4は、表面に酸化クロム膜を有していてもよい。酸化クロム膜は、金属板4の表面のうち少なくとも一部を覆う。酸化クロム膜は、金属板4の表面のうち少なくとも一部を覆っていればよいが、表面の略全面を覆っていてもよい。また、酸化クロム膜は、貫通孔43の内壁面を覆っていてもよい。
【0028】
酸化クロム膜は、酸化クロムを主成分として含有する。本実施形態において、組成物Xが物質Yを「主成分として含む」とは、組成物X全体のうち、物質Yが70重量%以上を占めることを意味する。酸化クロム膜の厚みは特に制限されないが、例えば0.1μm以上20μm以下とすることができる。
【0029】
[セル本体部10]
図1に示すように、セル本体部10は、金属板4の第1主面41上に配置されている。セル本体部10は、水素極層5(カソード)、電解質層7、反応防止層8、及び酸素極層9(アノード)を有する。水素極層5、電解質層7、反応防止層8、及び酸素極層9は、この順で金属板4側から積層されている。なお、セル本体部10は、反応防止層8を有していなくてもよい。また、水素極層5は、本発明の第1電極層の一例であり、酸素極層9は、本発明の第2電極層の一例である。
【0030】
[水素極層5]
水素極層5は、金属板4によって支持される。詳細には、水素極層5は、金属板4の第1主面41上に配置される。図2に示すように、水素極層5は、金属板4のうち複数の貫通孔43が設けられた領域を覆うように設けられる。
【0031】
図3に示すように、水素極層5は、本体部51と、複数の充填部52とを有している。本体部51は、金属板4の第1主面41上に配置されている。本体部51の厚さtは、例えば、1μm以上100μm以下とすることができる。本体部51は、金属板4よりも薄い。
【0032】
充填部52は、貫通孔43内に配置されている。充填部52は、図3に示すように貫通孔43全体に充填されていてもよいし、図4に示すように貫通孔43の一部のみに充填されていてもよい。また、図5に示すように、充填部52は、貫通孔43から第2主面42側にはみ出していてもよい。この場合、充填部52は、第2主面42と接合していてもよい。充填部52は、本体部51と一体的に形成されている。充填部52の直径は、貫通孔43の直径と実質的に同じである。
【0033】
図3に示すように、充填部52の高さhは、本体部51の厚さtよりも大きい。充填部52の高さhは、例えば、100μm以上1000μm以下とすることができる。なお、充填部52の高さhとは、図3の上下方向の寸法を意味する。
【0034】
水素極層5は、複数の第1気孔53と、複数の第2気孔54とを有している。第1気孔53は、本体部51内に配置される。すなわち、第1気孔53は、金属板4の第1主面41に対して、電解質層7側に配置されている。
【0035】
第2気孔54は、充填部52内に配置されている。すなわち、第2気孔54は、金属板4の貫通孔43内に配置されている。
【0036】
1つの充填部52内に複数の第2気孔54が配置されている。この1つの充填部52内に配置された複数の第2気孔54のうち、最も大きい第2気孔54を最大第2気孔54と言う。なお、1つの充填部52内に1つしか第2気孔54が形成されていない場合、その1つの第2気孔54が最大第2気孔54である。
【0037】
最大第2気孔54は、貫通孔43を画定する内壁面と間隔をあけて配置されている。また、最大第2気孔54は、充填部52内において、第2主面42側に配置されていることが好ましい。なお、最大第2気孔54は、充填部52内において、第1主面41側に配置されていてもよい。また、最大第2気孔54は、貫通孔43を画定する内壁面に接触していてもよい。
【0038】
また、本体部51内に複数の第1気孔53が配置されている。この本体部51内に配置された複数の第1気孔53のうち、最も大きい第1気孔53を最大第1気孔53と言う。
【0039】
最大第2気孔54の円相当径は、最大第1気孔53の円相当径よりも大きい。例えば、最大第2気孔54の円相当径は、最大第1気孔53の円相当径の2倍以上とすることができる。また、最大第2気孔54の円相当径は、最大第1気孔53の円相当径の80倍以下とすることができる。なお、好ましくは、1つの充填部52内に配置される複数の第2気孔54の円相当径の平均値は、第1気孔53の円相当径の平均値よりも大きい。
【0040】
最大第2気孔54の円相当径は、以下のようにして測定する。まず、図1のように、貫通孔43が確認できるように切断面を形成する。この切断面において、貫通孔43内をSEM(走査型電子顕微鏡)によって倍率200で撮影し、そのSEM写真を画像処理することで、充填部52内の各第2気孔54の面積を測定する。そして、最も面積の大きい第2気孔54を最大第2気孔54とし、その最大第2気孔54の面積と同じ面積を有する円の直径を最大第2気孔54の円相当径とする。
【0041】
また、最大第1気孔53の円相当径は、以下のようにして測定する。まず、セル本体部10を樹脂埋めし、中央部付近を切断する。機械研磨によって本体部51を鏡面状態にし、倍率1000でSEM写真を20枚撮影する。そして、各SEM写真を画像処理し、その中で最も大きい気孔を最大第1気孔53とする。そして、その最大第1気孔53の面積と同じ面積を有する円の直径を最大第1気孔53の円相当径とする。
【0042】
なお、複数の充填部52のうち、いずれかの充填部52内に形成された最大第2気孔54の円相当径が、最大第1気孔53の円相当径よりも大きければよい。すなわち、各充填部52内に形成された最大第2気孔54の円相当径の全てが、最大第1気孔53の円相当径よりも大きい必要はない。
【0043】
好ましくは、複数の充填部52のうち、10%以上の充填部52において、最大第2気孔54の円相当径が、最大第1気孔53の円相当径よりも大きい。なお、全ての充填部52において最大第2気孔54の円相当径を確認することは困難であるため、例えば、以下のようにして、上記の割合を確認する。まず、任意の100個の充填部52のそれぞれにおいて、最大第2気孔54の円相当径を測定する。そして、その100個の充填部52のうち、最大第1気孔53の円相当径よりも大きい円相当径の最大第2気孔54を有する充填部52の割合を確認する。この割合が、10%以上であることが好ましい。
【0044】
最大第2気孔54の円相当径は、貫通孔43の直径の10%以上70%以下とすることが好ましい。
【0045】
水素極層5は、多孔質であることが好ましい。水素極層5の気孔率は特に制限されないが、例えば20%以上70%以下とすることができる。
【0046】
水素極層5には、貫通孔43を介して、原料ガスが供給される。原料ガスは、CO及びHOを含む。水素極層5は、下記(1)式に示す共電解の電気化学反応に従って、原料ガスから、H、CO、及びO2-を生成する。
・水素極層5:CO+HO+4e→CO+H+2O2-・・・(1)
【0047】
水素極層5は、電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。水素極層5は、酸化物イオン伝導性を有していてよい。水素極層5は、例えば、8mol%イットリア安定化ジルコニア(8YSZ)、カルシア安定化ジルコニア(CSZ)、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)、ガドリニウムドープセリア(GDC)、サマリウムドープセリア(SDC)、(La,Sr)(Cr,Mn)O、(La,Sr)TiO、Sr(Fe,Mo)、(La,Sr)VO、(La,Sr)FeO、及びこれらのうち2つ以上を組み合わせた混合材料、或いは、これらのうち1以上とNiOとの複合物によって構成することができる。
【0048】
この水素極層5は、以下のようにして形成することができる。まず、本体部51用のペーストと、充填部52用のペーストを作製する。本体部51用のペーストは、上述したいずれかの材料と、有機成分を含有する造孔材と、を含む。充填部52用のペーストは、本体部51用のペーストと同様に作製する。なお、充填部52用のペーストに含まれる造孔材は、本体部51用のペーストに含まれる造孔剤よりも大きい。
【0049】
次に、充填部52用のペーストを金属板4の貫通孔43内にスクリーン印刷し、貫通孔43内へのペーストの押し込み、及び第1主面41上からのペーストの除去を兼ねてスキージングする。続いて、本体部51用のペーストをスクリーン印刷法によって、金属板4の第1主面41上に形成する。そして、電気炉で加熱することで造孔材を除去することで気孔を形成したのちに焼成する。以上により、金属板4上に水素極層5が形成される。
【0050】
[電解質層7]
図1に示すように、電解質層7は、水素極層5と酸素極層9との間に配置される。本実施形態では、セル本体部10が反応防止層8を有しているため、電解質層7は、水素極層5と反応防止層8との間に介挿されている。電解質層7の厚さは特に制限されないが、例えば3μm以上50μm以下とすることができる。
【0051】
本実施形態において、電解質層7は、水素極層5全体を覆うように配置されている。電解質層7の外周部は、金属板4の第1主面41に接合されている。これにより、水素極層5側と酸素極層9側との間の気密性を確保できるため、金属板4と電解質層7との間を別途封止する必要がない。
【0052】
電解質層7は、水素極層5において生成されたO2-を酸素極層9に伝達させる。電解質層7は、酸化物イオン伝導性を有する。電解質層7は、緻密質材料によって構成される。電解質層7の気孔率は、0%以上7%以下程度である。電解質層7は、イオン伝導性を有し且つ電子伝導性を有さない緻密な材料から構成される焼成体である。電解質層7は、例えば、8YSZ、GDC、ScSZ、SDC、LSGM(ランタンガレート)などによって構成することができる。
【0053】
電解質層7の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0054】
[反応防止層8]
反応防止層8は、電解質層7上に配置される。反応防止層8は、電解質層7と酸素極層9との間に介挿される。反応防止層8の厚さは特に制限されないが、例えば3μm以上50μm以下とすることができる。反応防止層8は、酸素極層9の構成材料と電解質層7の構成材料とが反応して電気抵抗の大きい反応層が形成されることを抑制する。
【0055】
反応防止層8は、酸化物イオン伝導性を有する材料によって構成される。反応防止層8は、GDC、SDCなどのセリア系材料によって構成することができる。反応防止層8の気孔率は特に制限されないが、例えば0%以上50%以下とすることができる。反応防止層8の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0056】
[酸素極層9]
酸素極層9は、電解質層7を基準として、水素極層5の反対側に配置される。本実施形態では、セル1が反応防止層8を有しているため、酸素極層9は、反応防止層8上に配置される。
【0057】
酸素極層9は、多孔質であることが好ましい。酸素極層9の気孔率は特に制限されないが、例えば20%以上70%以下とすることができる。酸素極層9の厚さは特に制限されないが、例えば10μm以上100μm以下とすることができる。
【0058】
酸素極層9は、酸化物イオン伝導性及び電子伝導性を有する多孔質材料によって構成される。酸素極層9は、例えば(La,Sr)(Co,Fe)O、(La,Sr)FeO、La(Ni,Fe)O、(La,Sr)CoO、及び(Sm,Sr)CoOのうち1以上と酸化物イオン伝導材料(GDCなど)との複合物によって構成することができる。
【0059】
酸素極層9の形成方法は特に制限されず、焼成法、スプレーコーティング法、PVD法、CVD法などにより形成することができる。
【0060】
酸素極層9は、下記(2)式の化学反応に従って、水素極層5から電解質層7を介して伝達されるO2-からOを生成する。
・酸素極層9:2O2-→O+4e・・・(2)
【0061】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0062】
(a)上記実施形態では、第1電極層の一例として水素極層5、第2電極層の一例として酸素極層9を説明したが、逆であってもよい。すなわち、図6に示すように、第1電極層が酸素極層9であり、第2電極層が水素極層5であってもよい。この場合、酸素極層9が金属板4上に配置される。また、酸素極層9が、本体部91、充填部92、第1気孔93、及び第2気孔94を有する。また、酸素極層9と電解質層7との間に、反応防止層8を配置する。
【0063】
(b)上記実施形態では、電気化学セルの一例として、電解セル1を説明したが、電気化学セルは電解セル以外であってもよい。例えば、固体酸化物系燃料電池などの燃料電池セルであってもよい。この場合、第1電極層を燃料極(アノード)とし、第2電極層を空気極(カソード)とすることができる。
【符号の説明】
【0064】
1 :セル
4 :金属板
41 :第1主面
42 :第2主面
43 :貫通孔
5 :水素極層
51 :本体部
52 :充填部
53 :第1気孔
54 :第2気孔
7 :電解質層
9 :酸素極層
10 :セル本体部
図1
図2
図3
図4
図5
図6