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特許7576210ブロアハウジング、ブロア配線構造及びブロア
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-22
(45)【発行日】2024-10-30
(54)【発明の名称】ブロアハウジング、ブロア配線構造及びブロア
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20241023BHJP
   H02K 5/04 20060101ALI20241023BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20241023BHJP
【FI】
H02K7/14 A
H02K5/04
H02K5/22
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024543461
(86)(22)【出願日】2024-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2024004196
【審査請求日】2024-08-19
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000113791
【氏名又は名称】マブチモーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003649
【氏名又は名称】弁理士法人真田特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100186875
【弁理士】
【氏名又は名称】海老澤 知則
(72)【発明者】
【氏名】山形 泰浩
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 明子
【審査官】三澤 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-017227(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0262664(US,A1)
【文献】中国実用新案第212343474(CN,U)
【文献】中国実用新案第207819599(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
H02K 5/04
H02K 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを有するブロアのケース体をなすブロアハウジングであって、
前記モータのステータを収容するための開口部と、
前記開口部に対して径方向の外側において前記ステータの外周を囲繞するように形成され、前記ステータの巻線と前記巻線を含む導線をはんだ付けしたはんだ部とを収容するための収容部と、を備え、
前記収容部は、前記導線及び前記はんだ部を配置する面をなす底面部と、前記底面部における前記径方向の内側の縁から前記ステータの軸方向の第一方向へ向かって配置された内側壁部と、を有し、
前記底面部は、前記導線が配置される第一部分と、前記はんだ部が配置される第二部分と、を含み、
前記第二部分は、前記第一部分よりも前記軸方向の第二方向における深い位置まで凹設されるとともに、
前記第一部分から前記内側壁部の上面までの前記軸方向の寸法は、前記導線の前記軸方向の厚みよりも長く且つ前記はんだ部の前記軸方向の厚みよりも短く設定され、
前記第二部分から前記内側壁部の前記上面までの前記軸方向の寸法は、前記はんだ部の前記軸方向の厚みよりも長く設定される
ことを特徴とする、ブロアハウジング。
【請求項2】
前記収容部は、前記底面部における前記径方向の外側の縁から前記第一方向へ向かって配置された外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との前記径方向の間隔を狭めるように形成され前記導線が固定される固定部と、を有する
ことを特徴とする、請求項1に記載のブロアハウジング。
【請求項3】
前記第一部分及び前記第二部分は、前記収容部の周方向において傾斜面を介して接続されている
ことを特徴とする、請求項2に記載のブロアハウジング。
【請求項4】
前記固定部及び前記傾斜面は、前記軸方向から見た時に少なくとも一部が重なる位置に配置されている
ことを特徴とする、請求項3に記載のブロアハウジング。
【請求項5】
前記底面部は、複数の前記第二部分を含み、
各々の前記第二部分に対して、前記はんだ部が一つずつ配置される
ことを特徴とする、請求項1に記載のブロアハウジング。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載のブロアハウジングと、
前記ブロアハウジングに収容されたステータと、を含み、
前記ステータの巻線と前記巻線を含む導線をはんだ付けしたはんだ部とが前記ブロアハウジングの収容部に収容された
ことを特徴とする、ブロア配線構造。
【請求項7】
モータの回転軸に固定されたインペラと、
請求項6に記載のブロア配線構造と、を備えた
ことを特徴とする、ブロア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件は、モータの回転軸に固定されたインペラを有するブロアのケース体をなすブロアハウジング、このブロアハウジングが適用されたブロア配線構造、及び、このブロア配線構造が適用されたブロアに関する。
【背景技術】
【0002】
インペラとインペラの駆動源に用いるモータとを有するブロアにおいて、ブロアのケース体をなすブロアハウジング(以下、「ハウジング」とも称する)にモータが内蔵された構造が知られている。このようなモータ内蔵式のハウジングにおいて、モータのステータに巻回された巻線と巻線に電力を供給するためのリード線との接続部を、ハウジング内に収容するための構造が提案されている。例えば、特許文献1には、巻線の端末とリード線とをはんだ付けした接続部を、巻線の上方に配設された取り付け台の上面に載置する構造が開示されている。この構造では、取り付け台の上面からモータの軸方向に沿って隔壁が立設されており、接続部を電気的に絶縁して収容できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-245093号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の特許文献1のように、取り付け台の上面に接続部を載置する構造では、取り付け台の上面に設ける隔壁の高さを、接続部の外径よりも大きくする(すなわち、接続部の絶縁が確保される高さに設定する)必要がある。そのため、このような構造を採用したハウジングでは、隔壁の高さ分だけ軸方向に大型化することを避けられない。
よって、従来の技術では、ハウジングを軸方向に薄型化(小型化)するうえで、改善の余地がある。
【0005】
本件のブロアハウジング及びブロア配線構造は、このような課題に鑑み案出されたもので、ブロアハウジングを軸方向に薄型化(小型化)することを目的の一つとする。また、本件のブロアは、ブロアハウジングを軸方向に薄型化(小型化)することによりブロア自体も軸方向に薄型化(小型化)することを目的の一つとする。なお、これらの目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本件の他の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示のブロアハウジング、ブロア配線構造、及び、ブロアは、以下に開示する態様(適用例)として実現でき、上記の課題の少なくとも一部を解決する。態様2~5は、いずれもが付加的に適宜選択されうる態様であって、いずれもが省略可能な態様である。態様2~5の各態様は、いずれもが本件にとって必要不可欠な態様や構成を開示するものではない。
【0007】
態様1.開示のブロアハウジングは、モータを有するブロアのケース体をなすブロアハウジングであって、前記モータのステータを収容するための開口部と、前記開口部に対して径方向の外側において前記ステータの外周を囲繞するように形成され、前記ステータの巻線と前記巻線を含む導線をはんだ付けしたはんだ部とを収容するための収容部と、を備える。前記収容部は、前記導線及び前記はんだ部を配置する面をなす底面部と、前記底面部における前記径方向の内側の縁から前記ステータの軸方向の第一方向へ向かって配置された内側壁部と、を有する。前記底面部は、前記導線が配置される第一部分と、前記はんだ部が配置される第二部分と、を含み、前記第二部分は、前記第一部分よりも前記軸方向の第二方向における深い位置まで凹設されるとともに、前記第一部分から前記内側壁部の上面までの前記軸方向の寸法は、前記導線の前記軸方向の厚みよりも長く且つ前記はんだ部の前記軸方向の厚みよりも短く設定され、前記第二部分から前記内側壁部の前記上面までの前記軸方向の寸法は、前記はんだ部の前記軸方向の厚みよりも長く設定される。
【0008】
態様2.上記の態様1において、前記収容部は、前記底面部における前記径方向の外側の縁から前記第一方向へ向かって配置された外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との前記径方向の間隔を狭めるように形成され前記導線が固定される固定部と、を有することが好ましい。
態様3.上記の態様1又は2において、前記第一部分及び前記第二部分は、前記収容部の周方向において傾斜面を介して接続されていることが好ましい。
【0009】
態様4.上記の態様3において、前記固定部及び前記傾斜面は、前記軸方向から見た時に少なくとも一部が重なる位置に配置されていることが好ましい。
態様5.上記の態様1~4のいずれか一つにおいて、前記底面部は、複数の前記第二部分を含み、各々の前記第二部分に対して、前記はんだ部が一つずつ配置されることが好ましい。
【0010】
態様6.開示のブロア配線構造は、上記の態様1~5のいずれか一つに記載のブロアハウジングと、前記ブロアハウジングに収容されたステータとを含み、前記ステータの巻線と前記巻線を含む導線をはんだ付けしたはんだ部とが前記ブロアハウジングの収容部に収容される。
態様7.開示のブロアは、モータの回転軸に固定されたインペラと、上記の態様6に記載のブロア配線構造と、を備える。
【発明の効果】
【0011】
開示のブロアハウジング及びブロア配線構造によれば、ブロアハウジングを軸方向に薄型化(小型化)することができる。また、開示のブロアによれば、ブロアハウジングを軸方向に薄型化(小型化)することができるため、ブロア自体も軸方向に薄型化(小型化)することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係るブロアを説明するための斜視図である。
図2図1のブロアに適用されたブロアハウジングを説明する断面図である。
図3図2のブロアハウジングの収容部を拡大した斜視図である。
図4図3の収容部を周方向に沿う切断面で示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、実施形態としてのブロアハウジング、ブロア配線構造及びブロアについて説明する。以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、以下の実施形態で明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。本実施形態の各構成は、それらの趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。また、必要に応じて取捨選択することができ、あるいは適宜組み合わせることができる。
【0014】
実施形態のブロアは、モータを有する送風機である。詳しくは、このブロアは、モータの回転軸に固定されたインペラを有し、インペラの回転によって気体(例えば空気)を送る送風機である。以下の説明では、回転軸が延びる方向(回転軸方向)を軸方向と定義し、軸方向に直交する方向であって回転軸から離れる方向及び回転軸に向かう方向を径方向と定義する。また、径方向において、回転軸側を径方向内側とし、これと反対側(回転軸から離れる側)を径方向外側と定義する。軸方向に直交する方向であって回転軸回りに周回する方向を周方向と定義する。
【0015】
[1.構成]
図1は、本実施形態に係るブロア1の構成を説明するための外観斜視図であり、内部構造がわかるようエンドベル12(図2参照)を省略して示す。図2は、図1のA-A矢視断面図である。図1及び図2に示すように、本実施形態のブロア1は、インペラ2(図2参照)の回転により空気を送る送風機である。
【0016】
ブロア1には、インペラ2と、インペラ2の駆動源としてのモータ10と、インペラ2及びモータ10を収容するケース体をなすブロアハウジング11(以下、単に「ハウジング11」という)とが含まれる。モータ10は、インナーロータ型のブラシレスモータであり、回転中心X(図2参照)を持つシャフト21(回転軸)と一体回転するロータ20と、ロータ20の径方向外側(以下、単に「外側」ともいう)に位置するステータ30とが、ハウジング11に内蔵されて構成される。
【0017】
図2に示すように、ロータ20は、シャフト21に固定されたマグネット22と、マグネット22を軸方向から挟む二つのバランサ23とを有し、軸受24によりハウジング11及びエンドベル12に対して回転自在に固定される。ステータ30は、ハウジング11の内周面に固定されるステータコア31と、ステータコア31に対してインシュレータ32を介して巻回されたコイル35とを有する。本実施形態では、周方向に等間隔で配置された六個のコイル35を有するステータ30を例に挙げる。
【0018】
コイル35を形成する巻線35aの端部(巻き始め又は巻き終わり)には、巻線35aに電力を供給するためのリード線14がはんだ付けにより接続される。また、リード線14が接続されない側の巻線35aの端部(巻き終わり又は巻き始め)は、巻線35aの端部同士ではんだ付けにより接続される。以下、巻線35aの端部と巻線35aを含む導線とがはんだ付けされた部分を、「はんだ部16」と称する。なお、巻線35a及びリード線14はいずれも、請求の範囲でいう「導線」に含まれる要素である。
【0019】
シャフト21の一端部には、インペラ2が固定されている。インペラ2は、送風用の羽根車であり、例えば、シャフト21に固定された円盤状のベース部とベース部の盤面に放射状に立設された複数のフィンとを含んで構成される。モータ10が作動してシャフト21が回転すると、シャフト21と一体になってインペラ2が回転する。
【0020】
ハウジング11は、インペラ2とモータ10とを収容するための部位として、有底の筒状部11Aと、環状部11Bとを有する。筒状部11Aは、モータ10(すなわちロータ20及びステータ30)の配置空間をその内部に形成する部位であり、環状部11Bは、筒状部11Aの外部であって図示しないカバー部材との間にインペラ2の配置空間を形成する部位である。環状部11Bは、筒状部11Aの側壁部11cの外周面から外側へ連続して形成される。環状部11Bの上端部は、側壁部11cから外側へ延在するフランジ部11fとして機能する。
【0021】
筒状部11Aの内部、すなわち、側壁部11cと底部11dとで囲まれた空間がロータ20及びステータ30の配置空間である。以下、便宜上、軸方向において、ハウジング11に対してエンドベル12が配置される側を「第一方向」とし、これとは逆側を「第二方向」とする。また、軸方向を上下方向と仮定した場合、第一方向側を「上」、第二方向側を「下」と称する。
【0022】
ハウジング11は、モータ10のステータ30を収容するための開口部15を備える。具体的には、開口部15は、ステータ30を軸方向から収容するものである。開口部15は、筒状部11Aの上端において、側壁部11cの上端縁で囲まれた部位であり、ロータ20及びステータ30を筒状部11A内に配置するための開口を形成する。開口部15は、第一方向からみて、略円形の輪郭を有する。なお、略円形とは、真円(円形)に限らず円形と看做し得る形状を含む。例えば、開口部15は、第一方向から視て円形と看做し得る多角形状であってもよい。筒状部11Aの開口部15は、図2中に二点鎖線で模式的に示すように、エンドベル12により覆われる。エンドベル12は、ハウジング11に組み合わされる蓋部材である。本実施形態では、エンドベル12の外周端部12aがハウジング11のフランジ部11fに載置されて、ハウジング11に対してエンドベル12が固定される。
【0023】
また、本実施形態のハウジング11では、筒状部11Aの底部11dに、シャフト21が挿通される貫通孔と、軸受24及びOリング25が固定される段部11eとが設けられる。図2に示すように、シャフト21の下端部は、貫通孔からハウジング11の下面側へ突き出ており、この下端部にインペラ2が固定される。ハウジング11の下面側には、カバー部材が取り付けられる。
【0024】
本実施形態では、図2に示すように、ハウジング11に、エンドベル12とカバー部材とが組み合わせられて、ブロア1のケース体が形成される。言い換えると、ハウジング11は、ケース体を構成する部品の一つである。このケース体は、軸方向からみて略円形の外観を有しており、内部にインペラ2とモータ10とが配置(収容)される。ブロア1のケース体の寸法は、少なくともインペラ2とモータ10とを内蔵し得るように設定されている。
【0025】
図1に示すように、ハウジング11の上面側には、複数本(ここでは五本)のリード線14のそれぞれを、ハウジング11及びエンドベル12の内部から外方へ引き出せるように、溝部14Aが形成されている。溝部14Aの個数とリード線14の本数とは同数であり、各溝部14Aに各リード線14を配置することにより、ハウジング11の内部から外方へリード線14を適切に配索できるようになっている。本実施形態では、五本のリード線14のうち三本が巻線35aに接続され、残り二本は、例えば温度センサなどの巻線35a以外の電子機器に接続される。なお、リード線14の本数や接続対象物はこれに限られない。
【0026】
ハウジング11は、上記のはんだ部16を収容するための収容部40を備える。収容部40は、開口部15に対して径方向の外側においてステータ30の外周を囲繞するように形成された部位である。本実施形態の収容部40は、ステータ30の外周を囲繞するように開口部15の周囲に形成される、言い換えれば、ステータ30の外周を環状に囲繞するように形成されるとともに、ハウジング11の上面側に設けられており、ステータ30が配置されたハウジング11とエンドベル12との間においてはんだ部16を収容する。
【0027】
収容部40には、基本的な性能として、はんだ部16を所定位置に収容する収容性と、はんだ部16とステータ30とを電気的に絶縁する絶縁性とが要求される。本実施形態の収容部40は、この基本的な性能を満足したうえで、ハウジング11を小型化(軸方向の薄型化)できるように構成されている。
【0028】
収容部40に収容されるはんだ部16は、上記の通り、巻線35aの端部と導線とをはんだ付けした部分である。具体的には、巻線35aの端部とリード線14とをはんだ付けした第一のはんだ部16と、巻線35aの端部同士(例えば三相の各巻線35aの端部をひとまとめにして)をはんだ付けした第二のはんだ部16との二種類のはんだ部16が含まれる。すなわち、「導線」には、巻線35aの端部に接続されるリード線14、及び、或る巻線35aの端部に接続される別の巻線35aの端部が含まれる。なお、収容部40には複数のはんだ部16が収容され得るが、図では、一つのはんだ部16のみを図示して他を省略している。
【0029】
図3は、収容部40の拡大図である。図4は、図3のB-B矢視断面図であり、収容部40を周方向に沿う切断面で示している。図1図4に示すように、収容部40は、少なくとも、導線(巻線35a及び/又はリード線14)及びはんだ部16が配置される面をなす底面部41と、底面部41における径方向内側の縁41A(以下、内側縁41Aと称する)から第一方向へ向かって配置(例えば立設)された内側壁部42とを有する。
【0030】
底面部41は、収容部40の底面であり、第一方向から見て環状(本実施形態では円環状)となっている。本実施形態の収容部40は、内側壁部42よりも径方向外側に位置する外側壁部43をさらに有する。内側縁41Aは、底面部41における開口部15側の内縁と言える。外側壁部43は、底面部41における径方向外側の縁41B(以下、外側縁41Bと称する)から第一方向へ向かって配置(例えば立設)される。外側縁41Bは、底面部41における内縁と逆側の外縁と言える。
【0031】
本実施形態の内側壁部42及び外側壁部43はいずれも、ハウジング11の上面側から上方(軸方向の第一方向)へ向かって立設される。内側壁部42及び外側壁部43はいずれも、第一方向から見て環状(本実施形態では円環状)となっている。すなわち、内側壁部42と外側壁部43との間に底面部41が設けられているとも言える。なお、底面部41の径方向の寸法(内側壁部42と外側壁部43との径方向の間隔)は、導線やはんだ部16の配置スペースが十分に確保される長さに設定される。
【0032】
図1図3及び図4に示すように、底面部41には、導線が配置される第一部分44と、はんだ部16が配置される第二部分45とが含まれている。第一部分44及び第二部分45はそれぞれ、底面部41の一部であり、収容部40の周方向の位置が互いに異なるとともに、軸方向の位置が互いに異なる。具体的に言えば、図3及び図4に示すように、第二部分45は、底面部41のうち第一部分44よりも下方の深い位置(軸方向の第二方向側の位置)まで凹設された部分である。第一部分44は、底面部41のうち第二部分45以外の部分とも言える。第一部分44には、はんだ部16は配置されない。
【0033】
本実施形態において、第一部分44及び第二部分45は、周方向において傾斜面46を介して接続される。一つの第二部分45に着目すると、第二部分45の周方向の両端部に、それぞれ上りの傾斜面46が連続して形成される。そして、各傾斜面46における、第二部分45とは逆側の端縁(すなわち、傾斜を上り切った上縁)に連続して第一部分44が形成される。言い換えれば、第一部分44及び第二部分45は、周方向において傾斜面46を挟んで互いに隣接配置される。
【0034】
傾斜面46は、第一部分44及び第二部分45の間を滑らかに繋ぐ傾斜状に形成された部分である。傾斜面46は、底面部41の一部であって、第一部分44とも第二部分45とも別の部分である。この傾斜面46には、導線が配置されてもよいし、はんだ部16が配置されてもよい。なお、はんだ部16の配置箇所はあくまでも第二部分45であることから、ここでいう「傾斜面46にはんだ部16が配置される」とは、第二部分45に配置されたはんだ部16の一部が傾斜面46にも配置されることを意味する。
【0035】
図1に示すように、収容部40の底面部41は、周方向において互いに離隔した複数(ここでは四つ)の第二部分45を有する。図1では省略しているが、各第二部分45に対して、はんだ部16が一つずつ配置される。詳しくは、四つの第二部分45のうち三つには、上記の第一のはんだ部16が一つずつ配置され、残り一つの第二部分45には、上記の第二のはんだ部16が一つ配置される。
【0036】
各第二部分45の周方向の寸法は、全て共通であってもよいし、全て或いは一部が異なっていてもよい。例えば、第一のはんだ部16と第二のはんだ部16とでは、周方向の寸法が異なる場合がありうる。そのため、第一のはんだ部16を配置するための第二部分45の周方向の寸法と、第二のはんだ部16を配置するための第二部分45の周方向の寸法とを変えてもよい。なお、各第一部分44に配置される導線の種類や本数は特に限られず、例えば、一本以上の巻線35aが配置されてもよいし、一本のリード線14、又は、巻線35a及びリード線14が配置されてもよい。
【0037】
内側壁部42は、第二部分45に収容されたはんだ部16と筒状部11A内のステータ30とを、機械的に隔絶するとともに電気的に絶縁するための隔壁として機能する。この隔壁としての機能を確保する観点から、内側壁部42の軸方向の寸法(すなわち、壁の高さ)は長く設定されることが好ましい。一方で、内側壁部42の軸方向の寸法が長すぎるとハウジング11の軸方向の寸法(厚さ)が増大するため、ハウジング11を小型化(軸方向の薄型化を実現)する観点からは、内側壁部42の軸方向の寸法を抑制することが好ましい。なお、内側壁部42の軸方向の寸法とは、図4に示す通り、底面部41から内側壁部42の上面42Aまでの軸方向長さ(高さ)である。上面42Aとは、内側壁部42で上側(第一方向側)に位置する端面である。
【0038】
上記の隔壁としての機能の確保と薄型化との両方の観点から、内側壁部42の軸方向の寸法は、以下の条件1及び条件2を共に満足するように設定される。
条件1:第一部分44から内側壁部42の上面42Aまでの軸方向の寸法T1が、第一部分44に配置される導線の軸方向の厚みよりも長く、且つ、はんだ部16の軸方向の厚みも短い。
条件2:第二部分45から内側壁部42の上面42Aまでの軸方向の寸法T2が、はんだ部16の軸方向の厚みよりも長い。
【0039】
条件1は、内側壁部42によって、導線をステータ30から隔絶した状態で第一部分44に配置しうる最低限の寸法を確保(すなわち、収容性を確保)したうえで、寸法T1をできるだけ抑制する条件として設定されている。第一部分44にはんだ部16が配置された状態は想定されていないが、寸法T1を制限する基準としてはんだ部16の軸方向の厚みを用いている。なお、ここでいう「はんだ部16の軸方向の厚み」とは、はんだ部16を略円柱形状だとみなしたときの外径に相当する部分の長さである。実際には、はんだ部16の形状は必ずしも略円柱形状とはならないことから、「はんだ部16の軸方向の厚み」は、はんだ部16を底面部41に載置したときの軸方向の寸法(高さ)とも言える。
【0040】
上述の通り、第一部分44には、一本以上の巻線35a、一本のリード線14、又は、巻線35a及びリード線14が配置され得るため、導線の軸方向の厚みは、一本の巻線35aの外径又は一本のリード線14の外径、若しくは、軸方向に重なって配置された複数本の導線全体での軸方向の厚み、の何れかであり得る。
【0041】
第一部分44に一本の巻線35a又は一本のリード線14のみが配置される場合、「導線の軸方向の厚み」とは、一本の巻線35aの外径、又は、一本のリード線14の外径である。また、第一部分44に二本以上の巻線35aが配置される場合、又は、巻線35a及びリード線14が配置される場合には、複数本の導線が軸方向に重なって配置される可能性がある。そのため、これらの場合には、「導線の軸方向の厚み」とは、軸方向に重なって配置された複数本の導線全体における導線の軸方向の厚みを意味する。
【0042】
条件2は、内側壁部42によって、はんだ部16をステータ30から隔絶しうる最低限の寸法を、寸法T2として確保(すなわち、収容性を確保)するための条件として設定されている。内側壁部42の軸方向の寸法は、上記の条件1により上限が制限されるので、寸法T2は、内側壁部42の上面42Aの軸方向位置と第二部分45を凹設する深さとの双方を考慮して実現される。
【0043】
「はんだ部16の軸方向の厚み」は、上記の定義の通りである。寸法T2がはんだ部16の軸方向の厚みよりも短い場合、内側壁部42によってはんだ部16をステータ30から隔絶できずに、電気的絶縁が不十分となるおそれがある。言い換えると、条件2は、十分な電気的絶縁を確保するためのものである。なお、巻線35a及びリード線14は、はんだ部16を除き絶縁性材料で被覆されているため、はんだ部16以外の部分では、内側壁部42により隔絶されていなくても、電気的絶縁性が確保され得る。
【0044】
上記のように導線の軸方向の厚みは、一本の巻線35a又は一本のリード線14の外径である場合と、軸方向に重なって配置された複数本の導線全体における導線の軸方向の厚みである場合とで異なる。また、はんだ部16の軸方向の厚みについてもばらつきが生じ得る。そのため、寸法T1及び寸法T2は、導線の軸方向の厚み、及び、はんだ部16の軸方向の厚みとして想定される寸法に基づいて、上記の条件1及び条件2を共に満足するように適宜に設定され得る。一例として、寸法T1及び寸法T2は、導線の軸方向の厚み、及び、はんだ部16の軸方向の厚みとして想定される最大の寸法に基づいて、設定されてよい。
【0045】
図1図4に示すように、内側壁部42には、上端側を切り欠いて形成された切り欠き部42Bが複数設けられる。切り欠き部42Bは、巻線35aを径方向内側から内側壁部42の外側へ引き出しやすくするために、内側壁部42の軸方向の寸法をあえて短くした(高さを抑えた)部位である。本実施形態では、複数の切り欠き部42Bが収容部40の周方向に間隔を空けて設けられる。各切り欠き部42Bの周方向の位置は、第一部分44に対応する位置(第一部分44の周方向の位置と部分的又は全体的に同じ位置)に設定されることが好ましい。なお、第一部分44にははんだ部16が配置されないことから、切り欠き部42Bにより内側壁部42の軸方向の寸法が短くなっていても、電気的絶縁性は保たれる。
【0046】
また、図1図3に示すように、収容部40は、収容部40に配置された導線が固定(例えば圧入)される固定部(ここでは圧入部47)を有する。底面部41に配置された導線やはんだ部16のうち、圧入部47に配置された導線が、収容部40に固定される。言い換えると、収容部40における圧入部47以外の部分に位置する導線やはんだ部16は、固定されていない(載置のみされたフリーな)状態となっている。
【0047】
圧入部47は、内側壁部42と外側壁部43との径方向の間隔を狭めるように形成されている。本実施形態の圧入部47は、外側壁部43の径方向内側を向いた面から、内側へ向かって突出した部位として設けられている。圧入部47が外側壁部43から内側へ突出する寸法の分だけ、内側壁部42と外側壁部43との径方向の間隔が狭められる。なお、圧入部47が外側壁部43から内側へ突出する寸法は、導線を圧入し得る適宜の寸法に設定される。
【0048】
圧入部47は、導線を圧入する部位であることから、第一方向からみて第一部分44と重複する位置に形成される。図3に示すように、本実施形態のハウジング11では、傾斜面46及び圧入部47が、軸方向から見た時に少なくとも一部が重なる位置に配置されていることが好ましい。例えば、図3の傾斜面46及び圧入部47では、周方向において第二部分45に近接する端部とは反対側の端部46A,47Aが、周方向において同じ位置に配置されている。
【0049】
なお、上述した図1図4のハウジング11を組み立てる手順について付言する。ハウジング11を組み立てる場合、先ずハウジング11の筒状部11A内にロータ20及びステータ30を配置する。次に、巻線35aと導線とをはんだ付けする。それから、はんだ部16と導線とを収容部40に配置するとともに、圧入部47に配置された導線を圧入する。その後、ハウジング11にエンドベル12を組み合わせて、開口部15を覆う。
【0050】
最後に、ブロア配線構造を説明する。ブロア配線構造は、ブロア1に備えられる配線構造であり、具体的には、上述したハウジング11と、ハウジング11に収容されたステータ30とを含む。このブロア配線構造は、ステータ30の巻線35aと上記の導線をはんだ付けしたはんだ部16とが、上述したハウジング11の収容部40に収容された構造そのものを指す。
なお、本実施形態のブロア1は、このブロア配線構造と、モータ10のシャフト21(回転軸)に固定されたインペラ2とを含んで構成される。
【0051】
[2.効果]
(1)上述したハウジング11では、モータ10のステータ30を収容するための開口部15に対して径方向の外側において、ステータ30の外周を囲繞するように形成された収容部40が設けられる。この収容部40は、底面部41のうちはんだ部16が配置される第二部分45が、導線(巻線35a及び/又はリード線14)が配置される第一部分44よりも下方の深い位置まで凹設されている。これにより、導線とはんだ部16とが軸方向の同じ位置に収容される従来の構造に比べて、内側壁部42の軸方向の寸法を抑制することができる。そのため、はんだ部16を所定位置に収容する収容性と、はんだ部16とステータ30とを電気的に絶縁する絶縁性という基本的な性能を満足したうえで、ハウジング11を軸方向に薄型化(小型化)することができる。
【0052】
(2)上述したハウジング11における収容部40は、内側壁部42と外側壁部43との径方向の間隔を狭めるように形成され導線が固定される固定部(ここでは圧入部47)を有してもよい。この場合、固定部に配置された導線を固定することができるので、はんだ部16が収容部40内に収容された状態を保持する保持性を高めることができる。
【0053】
(3)また、上述したハウジング11における収容部40では、底面部41の第一部分44及び第二部分45が、収容部40の周方向において傾斜面46を介して接続されてもよい。傾斜面46により、第一部分44から第二部分45へ向かって斜め下方へ、導線を方向付けすることができるので、導線及びはんだ部16を第二部分45側へ導きやすい。よって、はんだ部16を第二部分45に配置しやすくなる。
なお、樹脂による一体成形などにより、傾斜面46の周方向の一方から他方にかけて傾斜面46の軸方向の肉厚を漸次増大させるように収容部40が形成されてもよい。これにより、傾斜面46を介さずに第一部分44及び第二部分45を階段状に接続する場合と比較して肉厚をより確保することができるため、ハウジング11の剛性を向上させることができる。
【0054】
(4)さらに、上述したハウジング11において、圧入部47及び傾斜面46は、軸方向から見た時に少なくとも一部が重なる位置に配置されていてもよい。圧入部47及び傾斜面46が、軸方向から見た時に少なくとも一部が重なる位置に配置されていることで、導線を圧入部47で圧入するときに、導線が傾斜面46に沿って配置された状態が維持されやすくなる(導線が浮き上がりにくくなる)。そのため、導線及びはんだ部16を第二部分45側へ導きやすくなり、はんだ部16を第二部分45に安定して配置しやすくなる。
【0055】
(5)また、上述したハウジング11において、底面部41は複数の第二部分45を含み、各々の第二部分45に対して、はんだ部16が一つずつ配置されてもよい。これにより、複数のはんだ部16を個別に第二部分45に配置できるので、収容性と絶縁性とを確保しやすくなる。
【0056】
(6)上述したハウジング11と、このハウジング11に収容されたステータ30とを含み、導線(巻線35a及び/又はリード線14)及びはんだ部16がハウジング11の収容部40に収容されたブロア配線構造によれば、少なくとも上記の(1)でハウジング11について述べた効果と同様の効果が得られる。また、上記の(2)~(5)に記載の構成を持つハウジング11を含むブロア配線構造であれば、上記の(2)~(5)に記載の効果と同様の効果も得ることができる。
【0057】
(7)さらに、上述したハウジング11を含むブロア配線構造と、モータ10のシャフト21に固定されたインペラ2とを含むブロア1によれば、少なくとも上記の(1)でハウジング11について述べた効果と同様の効果が得られる。すなわち、ハウジング11を軸方向に薄型化(小型化)することができるため、ブロア1自体も軸方向に薄型化(小型化)することができる。なお、ブロア1が、上記の(2)~(5)に記載の構成を持つハウジング11を含むブロア配線構造を備えることにより、上記の(2)~(5)に記載の効果と同様の効果も得ることができる。
【0058】
[3.その他]
上述したハウジング11、ブロア配線構造及びブロア1は一例であって、上述した構成に限られない。
例えば、収容部40が外側壁部43と圧入部47とを有さない構造であってもよい。この場合も、内側壁部42の軸方向の寸法を短く形成して、ハウジング11を軸方向に薄型化(小型化)する効果が得られる。また、底面部41に傾斜面46が含まれていない、すなわち、第一部分44及び第二部分45が傾斜面46を挟まずに互いに隣接配置されていてもよい。
【0059】
また、圧入部47の端部47A及び傾斜面46の端部46Aが周方向で異なる位置に設定されてもよい。この場合も、圧入部47に配置された導線を固定することで、はんだ部16の保持性を高めることができ、また、傾斜面46により導線を方向付けすることができるので、導線及びはんだ部16を第二部分45側へ導きやすいという効果が得られる。
さらに、底面部41が一つの第二部分45のみ含んでもよい。この場合、一つの第二部分45に複数のはんだ部16が配置されてもよい。
【0060】
また、モータの種類はインナーロータ型ブラシレスモータに限られず、アウターロータ型のモータに適用してもよいし、リード線が用いられる場合にはブラシ付きモータに適用してもよい。
上述した収容部40を有するハウジング11の適用対象はブロアに限らず、ハウジングを軸方向に薄型化(小型化)することが要求され、且つ、任意の機器に適用可能である。
収容部を有するハウジングを適用可能なブロア以外の対象物の一例として、樹脂ギアボックスがある。
【符号の説明】
【0061】
1 ブロア
2 インペラ
10 モータ
11 ハウジング(ブロアハウジング)
14 リード線(導線)
15 開口部
16 はんだ部
21 シャフト
30 ステータ
35 コイル
35a 巻線
40 収容部
41 底面部
41A 内側縁(内側の縁)
41B 外側縁(外側の縁)
42 内側壁部
42A 上面
43 外側壁部
44 第一部分
45 第二部分
46 傾斜面
47 圧入部(固定部)
【要約】
モータ(10)を有するブロア(1)のブロアハウジング(11)は、モータ(10)のステータ(30)を収容する開口部(15)に対して径方向の外側にステータ(30)の巻線(35)とはんだ部(16)とを収容するための収容部(40)を備える。収容部(40)は、底面部(41)及び内側壁部(42)を有し、底面部(41)は、導線が配置される第一部分(44)と、はんだ部(16)が配置される第二部分(45)と、を含み、第二部分(45)は、第一部分(44)よりも深い位置まで凹設されるとともに、第一部分(44)から内側壁部(42)の上面までの軸方向の寸法は、導線の軸方向の厚みよりも長く且つはんだ部(16)の軸方向の厚みよりも短く設定され、第二部分(45)から内側壁部(42)の上面までの軸方向の寸法は、はんだ部(16)の軸方向の厚みよりも長く設定される。
図1
図2
図3
図4