(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】ドライバ支援方法およびその管理装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20241024BHJP
G08G 1/0969 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/0969
(21)【出願番号】P 2021018930
(22)【出願日】2021-02-09
【審査請求日】2023-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080768
【氏名又は名称】村田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100166327
【氏名又は名称】舟瀬 芳孝
(74)【代理人】
【識別番号】100106644
【氏名又は名称】戸塚 清貴
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 誠一
(72)【発明者】
【氏名】岡村 雅
(72)【発明者】
【氏名】前田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】古川 優史
(72)【発明者】
【氏名】栃岡 孝宏
(72)【発明者】
【氏名】佃 厚典
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-237828(JP,A)
【文献】特開2018-013440(JP,A)
【文献】特開2015-064675(JP,A)
【文献】特開2017-204071(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047176(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G08G 1/0969
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両のユーザが希望する出発地点から終了地点に向かうための走行経路を走行中に、他の交通参加者との間で互助行動が生じたときの状況を記憶しておくステップと、
自車両が前記走行経路を走行した後に、前記記憶されている他の交通参加者との間で生じた互助行動に関する運転振り返り用の情報を自車両のユーザに提示するステップと、
を備
え、
前記互助行動に関する運転振り返り用の情報の提示が、所定期間に所定回数以上走行された経路を走行する日常モードでは実行されない一方、該日常モードとなる経路以外の経路を走行するハッピーモードのときには実行される、
ことを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記走行経路について、他の交通参加者との関係でリスクのある場所を提示するステップと、
前記リスクのある場所に関する注意喚起の情報を、自車両が少なくとも該リスクのある場所を走行する前にユーザに提示するステップと、
をさらに備
え、
前記リスクのある場所の提示および該リスクのある場所に関する注意喚起の情報の提示が、前記日常モードでは実行されない一方、前記ハッピーモードのときには実行される、
ことを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項3】
請求項2において、
自車両および多数の他車両が走行中にあらかじめ設定したリスク発生条件を満足したときに、該リスク発生条件を満足した場所をリスクの分類と共に記憶しておくステップと、
前記記憶されているリスク発生条件を満足したときの場所のうちリスクの分類が同一とされた場所の数が、所定の条件を満足する多数であるときに、前記リスクのある場所として新たに追加するステップと、
をさらに有していることを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項4】
請求項2または請求項3において、
前記リスクのある場所として、局所エリアと広域エリアとが設定され、
前記局所エリアに存在する局所リスクに関する情報が、該局所エリアを走行する直前にユーザに提示され、
前記広域エリアに存在する広域リスクに関する情報が、前記走行経路の走行開始前にユーザに提示される、
ことを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれか1項において、
前記記憶される互助行動として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況との両方を含んでおり、
前記運転振り返り用の情報として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況に関する情報と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況に関する情報との両方を含んでいる、
ことを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれか1項において、
自車両が前記走行経路を走行中に、自車両の前方を撮影した動画を記憶するステップをさらに有し、
前記運転振り返り用の情報として、前記記憶されている動画のうち前記互助行動が生じたときの動画が自車両のユーザに提示される、
ことを特徴とするドライバ支援方法。
【請求項7】
ナビゲーション装置を備えた自車両と自車両のユーザにより操作される携帯端末との少なくとも一方に対して通信可能なコンピュータからなる管理装置であって、
自車両のユーザが希望する出発地点から終了地点に向かうための走行経路を走行中に、他の交通参加者との間で互助行動が生じたときの情報を自車両から受信して記憶しておく機能と、
自車両が前記走行経路を走行した後に、前記記憶されている他の交通参加者との間で生じた互助行動に関する情報を、運転振り返り用の情報として自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
を有
し、
前記互助行動に関する運転振り返り用の情報の送信が、所定期間に所定回数以上走行された経路を走行する日常モードでは実行されない一方、該日常モードとなる経路以外の経路を走行するハッピーモードのときには実行される、
ことを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【請求項8】
請求項7において、
前記リスクのある場所をリスクの分類と対応づけて記憶している記憶手段を有し、
前記走行経路を前記記憶手段に照合して、他の交通参加者との関係でリスクのある場所を自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
前記リスクのある場所に関する注意喚起の情報を、自車両が少なくとも該リスクのある場所を走行する前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
をさらに備
え、
前記リスクのある場所の送信および該リスクのある場所に関する注意喚起の情報の送信が、前記日常モードでは実行されない一方、前記ハッピーモードのときには実行される、
ことを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【請求項9】
請求項8において、
自車両および多数の他車両から、リスク発生の場所とリスクの分類に関する情報を受信して記憶しておく機能と、
前記記憶されているリスク発生場所のうちリスクの分類が同一とされた場所の数が所定の条件を満足する多数であるときに、該リスク発生場所をリスクの分類と共に前記記憶手段に追加して記憶させる機能と、
をさらに有していることを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9において、
前記リスクのある場所として、局所エリアと広域エリアとが設定され、
前記局所エリアに存在する局所リスクに関する情報が、該局所エリアを走行する直前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信され、
前記広域エリアに存在する広域リスクに関する情報が、前記走行経路の走行開始前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信される、
ことを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれか1項において、
前記記憶される互助行動として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況との両方を含んでおり、
前記運転振り返り用の情報として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況に関する情報と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況に関する情報との両方を含んでいる、
ことを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【請求項12】
請求項7ないし請求項11のいずれか1項において、
自車両が前記走行経路を走行中に、自車両の前方を撮影した動画を受信して記憶しておく機能をさらに有し、
前記運転振り返り用の情報として、前記記憶されている動画のうち前記互助行動が生じたときの動画が自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信される、
ことを特徴とするドライバ支援用の管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバ支援方法およびその管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、安全運転しているか否かなどの利用者(ドライバ)の特徴から道路の質を評価して、質が低い箇所を回避した経路を案内経路として設定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、走行における安心と日常生活や旅先における安心とは異なるものではあるが、走行における安心を通じて日常生活や旅先における安心を得ることができれば、自車両のユーザは安心してドライブに出かけられるだけでなく、車両から降りたあとの日常生活や旅先もより自信をもって積極的に活動できるようになり、ユーザの人生がより充実していくと考えられる。
【0005】
走行における安心と日常生活や旅先での安心との共通項を探したところ、それは「他者との良好な関係」であると考えた。
【0006】
安心できる交通環境とは、交通参加者同士の良好な関係、つまり譲り合いや互いに配慮した行動によって形成される良好な関係によって成り立つものである。本出願でいう交通参加者は、道路を使用する移動体の全てを含み、代表的には、車両(自動車、オートバイ、自転車)や歩行者等である。
【0007】
しかしながら、交通参加者が利己的な行動をとったり、他者からプレッシャーを感じたりすると、危険が生まれるものである。車両の運転では、車室内というプライベートな空間に居るが故に、他者を軽視したり、誤解したりしがちである。特に、現代では、スマートフォンに夢中になるなどして、上記の軽視や誤解を助長させる傾向が強くなっており、交通参加者との良好な関係を築くことが難しくなっている。
【0008】
本発明は以上のような事情を勘案してなされたもので、その目的は、車両の運転行動を通じて、他の交通参加者と良好な関係を築くことに貢献できるようにしたドライバ支援方法およびその管理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明によるドライバ支援方法にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
自車両のユーザが希望する出発地点から終了地点に向かうための走行経路を走行中に、他の交通参加者との間で互助行動が生じたときの状況を記憶しておくステップと、
自車両が前記走行経路を走行した後に、前記記憶されている他の交通参加者との間で生じた互助行動に関する運転振り返り用の情報を自車両のユーザに提示するステップと、
を備え、
前記互助行動に関する運転振り返り用の情報の提示が、所定期間に所定回数以上走行された経路を走行する日常モードでは実行されない一方、該日常モードとなる経路以外の経路を走行するハッピーモードのときには実行される、
ようにしてある(請求項1対応)。
【0010】
上記解決手法によれば、走行後、走行中に行われた他の交通参加者との間での互助行動を振り返ることができるので、互助行動を促進して、交通参加者同士の良好な関係を構築して、交通環境の改善や交通参加者の安心感を向上させる上で好ましいものとなる。その結果、日常生活についての安心感向上へと繋げる上でも好ましいものとなる。
【0011】
本発明によるドライバ支援方法にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記走行経路について、他の交通参加者との関係でリスクのある場所を提示するステップと、
前記リスクのある場所に関する注意喚起の情報を、自車両が少なくとも該リスクのある場所を走行する前にユーザに提示するステップと、
をさらに備え、
前記リスクのある場所の提示および該リスクのある場所に関する注意喚起の情報の提示が、前記日常モードでは実行されない一方、前記ハッピーモードのときには実行される、
ようにしてある(請求項2対応)。この場合、他の交通参加者との関係でリスクのある場所つまり互助行動が要求される場所を事前に知ることができるので、今回の走行について安心感が得られる他、積極的な互助行動を促すという点でも好ましいものとなる。
【0012】
自車両および多数の他車両が走行中にあらかじめ設定したリスク発生条件を満足したときに、該リスク発生条件を満足した場所をリスクの分類と共に記憶しておくステップと、
前記記憶されているリスク発生条件を満足したときの場所のうちリスクの分類が同一とされた場所の数が、所定の条件を満足する多数であるときに、前記リスクのある場所として新たに追加するステップと、
をさらに有している、ようにしてある(請求項3対応)。この場合、多数の車両の走行を有効に利用して、リスクのある未知の場所をその分類と共に随時追加することができる。
【0013】
前記リスクのある場所として、局所エリアと広域エリアとが設定され、
前記局所エリアに存在する局所リスクに関する情報が、該局所エリアを走行する直前にユーザに提示され、
前記広域エリアに存在する広域リスクに関する情報が、前記走行経路の走行開始前にユーザに提示される、
ようにしてある(請求項4対応)。この場合、リスクが広い範囲に亘って存在する広域リスクに関しては、今回のドライブで特に留意すべき注意事項として、ユーザに強く認識させることができる。また、単発的な局所リスクについては、その直前にユーザに認識させることができる。特に、多くの情報を一気に提示することによってユーザが混乱してしまう事態を防止する上でも好ましいものとなる。
【0014】
前記記憶される互助行動として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況との両方を含んでおり、
前記運転振り返り用の情報として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況に関する情報と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況に関する情報との両方を含んでいる、
ようにしてある(請求項5対応)。この場合、ユーザ自身が行った互助行動と、ユーザが他の交通参加者に行ってもらった互助行動との両方をユーザは知ることでき、互助行動を積極的に促す上で好ましいものとなる。
【0015】
自車両が前記走行経路を走行中に、自車両の前方を撮影した動画を記憶するステップをさらに有し、
前記運転振り返り用の情報として、前記記憶されている動画のうち前記互助行動が生じたときの動画が自車両のユーザに提示される、
ようにしてある(請求項6対応)。この場合、動画という映像によって実際に互助がどのように行われたかのが視覚的に把握されて、より鮮明に脳裏に刻まれることになり、互助行動についての関心がより高まるものとなる
前記目的を達成するため、本発明によるドライバ支援用の管理装置にあっては次のような解決手法を採択してある。すなわち、
ナビゲーション装置を備えた自車両と自車両のユーザにより操作される携帯端末との少なくとも一方に対して通信可能なコンピュータからなる管理装置であって、
自車両のユーザが希望する出発地点から終了地点に向かうための走行経路を走行中に、他の交通参加者との間で互助行動が生じたときの情報を自車両から受信して記憶しておく機能と、
自車両が前記走行経路を走行した後に、前記記憶されている他の交通参加者との間で生じた互助行動に関する情報を、運転振り返り用の情報として自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
を有し、
前記互助行動に関する運転振り返り用の情報の送信が、所定期間に所定回数以上走行された経路を走行する日常モードでは実行されない一方、該日常モードとなる経路以外の経路を走行するハッピーモードのときには実行される、
ようにしてある(請求項7対応)。上記解決手法によれば、請求項1のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【0016】
本発明によるドライバ支援用の管理装置にあっては、次のような態様を採択することができる。すなわち、
前記リスクのある場所をリスクの分類と対応づけて記憶している記憶手段を有し、
前記走行経路を前記記憶手段に照合して、他の交通参加者との関係でリスクのある場所を自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
前記リスクのある場所に関する注意喚起の情報を、自車両が少なくとも該リスクのある場所を走行する前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信する機能と、
をさらに備え、
前記リスクのある場所の送信および該リスクのある場所に関する注意喚起の情報の送信が、前記日常モードでは実行されない一方、前記ハッピーモードのときには実行される、
ようにしてある(請求項8対応)。この場合、請求項2のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【0017】
自車両および多数の他車両から、リスク発生の場所とリスクの分類に関する情報を受信して記憶しておく機能と、
前記記憶されているリスク発生場所のうちリスクの分類が同一とされた場所の数が所定の条件を満足する多数であるときに、該リスク発生場所をリスクの分類と共に前記記憶手段に追加して記憶させる機能と、
をさらに有しているようにしてある(請求項9対応)。この場合、請求項3に記載のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【0018】
前記リスクのある場所として、局所エリアと広域エリアとが設定され、
前記局所エリアに存在する局所リスクに関する情報が、該局所エリアを走行する直前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信され、
前記広域エリアに存在する広域リスクに関する情報が、前記走行経路の走行開始前に自車両または携帯端末の少なくとも一方に送信される、
ようにしてある(請求項10対応)。この場合、請求項4に記載のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【0019】
前記記憶される互助行動として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況との両方を含んでおり、
前記運転振り返り用の情報として、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した状況に関する情報と、自車両が他の交通参加者に譲られたあるいは配慮された状況に関する情報との両方を含んでいる、
ようにしてある(請求項11対応)。この場合、請求項5に記載のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【0020】
自車両が前記走行経路を走行中に、自車両の前方を撮影した動画を受信して記憶しておく機能をさらに有し、
前記運転振り返り用の情報として、前記記憶されている動画のうち前記互助行動が生じたときの動画が自車両または前記携帯端末の少なくとも一方に送信される、
ようにしてある(請求項12対応)。この場合、請求項6に記載のドライバ支援方法に用いる管理装置が提供される。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、車両の運転行動を通じて、他の交通参加者と良好な関係を築くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図2】管理装置でのデータ記憶部分と車両と携帯端末との通信関係を示す図。
【
図5】リスクのある場所とリスクの分類の表示例を示す図。
【
図6】
図5に示すリスクのある場所とリスクの分類を区間、エリア毎に示す図。
【
図7】車両と携帯端末と管理装置との間での情報授受を時系列的に示す図。
【
図10】管理装置においてリスクのある場所を追加するための制御例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
(1)全体の概要について。
【0024】
まず、本出願において、他の交通参加者との関係でリスクのある場所とは、他の交通参加者との良好な関係を脅かす他の交通参加者との相互作用を意味している。そして、互助行動は、交通参加者同士の相互作用から生まれるリスクを回避あるいは低減する行動である。互助行動には、自車両が他の交通参加者から譲ってもらうあるいは配慮してもらう場合と、自車両が他の交通参加者に譲るあるいは配慮する場合の両方がある。実施形態では、他の交通参加者との関係でリスクのある場所を、車間距離が短い車両が多い場所、歩行者や車両の飛び出しが多い場所、右折待ちで後方車両を待たせてしまうことが多い場所、急な車線変更が多い場所の4分類(4種類)設定してあるが、これに限るものではない。
【0025】
図3は、本発明による制御例を簡便にまとめて示すもので、他の交通参加者との関係でリスクがある場所とその分類(種類)とが、少なくとも当該リスクのある場所を走行する前の段階で確認可能とされる。走行中は、実行された互助行動に関する情報が後述する管理装置で収集される。そして、走行後に、互助行動に関する運転振り帰り用の情報がユーザに提示される。
図3に示すリスクのうち、「車間距離が短い」というリスクに関しては、運転振り返り用として提示される情報が、例えば「車間距離を確保できた」というものとされる。また、
図3に示すリスクのうち「車線変更が多い」というリスクに関しては、運転振り返り用として提示される情報が、例えば「進路を譲ってもらった」というものとされる。なお、上述した制御の詳細については、後述する。
【0026】
以上のことを前提として、
図1を参照しつつ、全体システムの概要について説明する。この
図1において、1はユーザ(ドライバ)の車両(自車両で、実施形態では自動車)、20は車両1のユーザが使用する情報処理装置としての携帯端末(スマートフォン等)である。また、30は、サーバ装置によって構成された管理装置である。
【0027】
管理装置30は、各種処理を行うためのプログラムを記憶したメモリ、上記プログラムにしたがって各種処理を実行するプロセッサ、通信回路、入出力装置、表示装置等を含むコンピュータ装置によって構成されている。管理装置30は、後述するようにビッグデータを扱うことから、大容量のデータベースを保有するものとなっている(このため大容量のHDDやフラッシュメモリを有している)。
【0028】
車両1および携帯端末20は、無線通信の形態で、通信回線としてのインターネット40を介して管理装置30と通信可能とされている。また、車両1と携帯端末20とは、例えばブルートゥース(登録商標)等によって近距離無線通信が可能とされている。
図1では車両1およびこれに対応した携帯端末20が1組のみ表示されているが、実際には、多数の他車両分についてその携帯端末と共にインターネット40を介して管理装置30と通信可能とされている。
【0029】
管理装置30は、道路の所定単位距離(例えば100m~200m)毎に区分けされた区間単位でもって、他の交通参加者との関係でリスクを含む区間とリスクの分類(種類)とを記憶している。1区間の長さ(距離)は、同一(略同一を含む)とすることもできるが、例えば同じような状況が長く続く道路の場合は1区間の長さを長く設定し、道路状況の変化が大きい複雑な道路については1つの区間の長さを短く設定するのが好ましい。ある1つの走行経路は、多数の区間を連続したものとなる。本出願では、リスクのある区間を局所エリアと称し、その区間におけるリスクを局所リスクと称する。
【0030】
また、管理装置30は、走行経路およびその周囲を含む所定の地域単位でもって、他の交通参加者との関係でリスクを含む地域とリスクの分類(種類)とを記憶している。上記地域は、実施形態では、市、町、村など行政単位でもって設定されているが、これに限るものではない。本出願では、リスクのある地域を広域エリアと称し、その地域におけるリスクを広域リスクと称する。広域エリアは、そこに含まれる全経路の区間数に対して、同じ種類のリスクを有する区間数の割合が所定値以上の場合に設定される。広域エリア(広域リスク)を設定したのでは、地域によってはある特有のリスクが地域全般に広く存在することを考慮したものであり、特に注意を行う必要性が高いことを考慮したものである。
【0031】
携帯端末20から、少なくとも出発地点と終了地点(目的地)とが管理装置3に送信される。管理装置30は、受信した出発地点と終了地点に基づいて、走行経路(案内経路)を設定する。また、管理装置30は、走行経路上のリスクのある場所(区間や地域)を決定する。決定された走行経路と、該走行経路上の区間あるいは地域に存在するリスクとその分類を示すリスクマップとが、車両(自車両)1(のナビゲーション装置)あるいは携帯端末20に送信される。
【0032】
自車両1のナビゲーション画面あるいは携帯端末20の表示画面には、受信した上記走行経路とリスクのある場所とリスクの分類とが、例えば
図5に示すように表示され、
図5におけるリスクのある場所となる区間とエリア(広域エリア)が
図6に示される。
図5、
図6の例では、リスクのある場所として、出発地点から終了地点(目的地)まで順次、右折待ちが多い場所(区間a対応)、車線変更(急な車線変更)が多い場所(区間bとc対応)、飛び出しが多い場所(区間d対応)、車間距離が短い場所(エリアa対応)とされている。
図6の区間a、b、c、dはそれぞれ局所リスクのある場所である。エリアaは、広域エリアであって、広域リスクを有する場所であり、
図5ではハッチングを付して示される。
【0033】
区間b、cは同じ種類のリスクのある場所が連続していることから、
図5では1つにまとめて表示される。また、広域エリアは、「車間距離が短い車両が多い」という同じ分類の局所エリアが多数存在していることから、個々の局所エリアを表示することなく、広域エリアとして1つにまとめて表示される。
【0034】
車両1が走行経路を走行開始する前にあらかじめ、広域リスクに関する注意喚起が行われる。この注意喚起は、例えば車両1のナビゲーション装置における表示画面での表示and/orスピーカからの音声案内によって行うことができる(以下、別の注意喚起の仕方についても同じ)。上記注意喚起の表示例としては、例えば
図5に示すように、リスクマップに隣接させて、「今回のドライブでは、車間距離に余裕をもって走行するようにしましょう。」というような表示内容とされる。広域リスクに関する情報提示を走行開始前に行うことにより、今回のドライブにおいて常時留意しておくべき情報であることをユーザに強く認識させることができる。
【0035】
車両1が走行経路を走行中に、局所エリアに近づく直前の時点(例えば100m~200m手前の時点)で、局所エリアについての注意喚起が行われる。例えば、区間b、cでの車線変更が多い局所エリアに対する注意喚起が、例えば、「急な車線変更をする車両に備えて、周囲の車両に注意して走行しましょう。」というような内容とされる。
【0036】
車両1は、少なくとも車外(特に前方)を撮影するカメラを備えて、撮影された映像(動画)が、管理装置30に常時送信されて記憶される。また、車両1の状況を示す多数の情報が管理装置30に常時送信されて記憶される。なお、車両1から管理装置30に送信される情報については後述する。
【0037】
車両1は、他の交通参加者との間で互助関係を生じた毎に、例えば、車両1が他車両に対して車線を譲ったときとか、逆に他車両に車線を譲ってもらったときという状況が発生する毎に、互助行動フラグが発生される。この互助行動フラグは、互助行動の内容と共に、管理装置30に送信される。
【0038】
車両1が走行経路を走行して終了地点(目的地)に到達した後は、管理装置30から車両1または携帯端末20に対して、互助行動が行われた状況に関する情報が送信されて、車両1のナビゲーション装置や携帯端末20での表示画面に表示される(音声による報知とすることもできる)。特に、互助行動に関する提示情報は、互助が行われたときの動画、より具体的には自車両の前方を撮影した動画を合わせて提示するのが好ましい。動画という映像によって実際に互助がどのように行われたかのが視覚的に把握されて、より鮮明に脳裏に刻まれることになり、互助行動についての関心がより高まるものとなる。提示される互助行動に関する情報は、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した場合と、自車両が他の交通参加者から譲ってもらったあるいは配慮してもらった場合とがある。
【0039】
以上のように、走行中に生じた他の交通参加者との間での互助行動を、走行後に積極的にユーザに知らせることにより、今後の走行において互助行動を積極的に促して、他の交通参加者と良好な関係を構築することが促されることになる。また、交通参加者同士の相互作用によって安心やリスクが生まれることをユーザの一人一人に認識させる上でも好ましいものとなる。多くのユーザが、互助行動を通して車両での移動における安心感が向上されて、結果として日常生活における安心感の向上へと繋がる。
(2)車両側でのデータ収集と、管理装置30におけるデータ処理(記憶)について。
【0040】
図2を参照しつつ、車両側でのデータ収集と、管理装置30におけるデータ処理(特にデータベース関係)に着目して説明する。なお、
図2においては、管理装置30のうちデータベースの記憶に関する部位が抽出して記載されている。
【0041】
車両1側においては、撮像手段としてのカメラS1と、各種センサS2と、入力装置S3と、表示装置S4と、を有する。カメラS1は、少なくとも車両前方を撮影する車外カメラを含むものとされ、実施形態では車外カメラは全方位を撮影可能とされている(例えば複数のカメラによって構成)。
【0042】
各種センサS2に含まれるセンサとしては、次のようなものとされている。まず、車両挙動の状態を取得するために、車速センサ、前後方向および左右方向の加速度センサ、ヨーレートセンサ、エンジン回転数センサ等を含んでいる。また、運転操作の状態を取得するために、アクセル開度センサ、ブレーキセンサ、舵角センサ等を含んでいる。車両の位置情報を取得するために、GPSやGNSS等の測位センサを含んでいる。さらに、前方物体を検出する前方レーダ、後方物体を検出する後方レーダを含んでいる。
【0043】
入力装置S3は、各種のスイッチやボタン、タッチパネル等を含んでいる。
【0044】
表示装置S4は、乗員(ユーザ)に対して各種情報を報知するもので、実施形態ではナビゲーション装置の表示画面によって構成してある。なお、ナビゲーション装置用の表示画面とは別個の表示画面を設定することもできる。
【0045】
上記S1~S4は、制御手段としての演算装置15と接続されている。演算装着15は、次のような処理を行う。まず、ウインカ、ヘッドランプ等の操作ログ、運転支援などの各種機能の動作ログを収集する。収集される運転支援などの各種機能の動作ログは、例えば、緊急ブレーキ(自動ブレーキ)の作動、死角支援モニタの作動、ABS装置の作動、電子制御4WDの作動、車線維持制御の作動等がある。
【0046】
演算装置15は、ユーザ認証を行う。この認証は、車内カメラや映像を用いた顔認証や、携帯端末20との接続を利用したID認証等によって行うことができる。
【0047】
さらに又、演算装置15は、ハッピーモードか否かの識別を行う。ハッピーモードは、通勤や買い物等の日常走行(日常モード)と余暇のドライブとを区別するためのもので、余暇のドライブを楽しむときにハッピーモードとされる。例えば、直近の所定期間(例えば6ヶ月~1年間)に所定回数(例えば10~20回)以上走行された区間は日常モードの区間とされ、それ以外の区間はハッピーモードの区間とされる。実施形態では、ユーザの要望に応じて管理装置30で設定された走行経路(トリップルート)を走行しているときは、ハッピーモードされる。特に、ハッピーモードでの走行は、ユーザにとって未知のリスクに遭遇する可能性が高いものとなり、互助行動が強く望まれる状況となる。ユーザが経路案内のために走行経路を設定したときは、走り慣れていない道路であるか、少なくとも走り慣れていない道路の割合が高いときであり、ハッピーモードとするのが好ましいものである。
【0048】
リスクのある場所およびその分類の提示や、実行された互助行動に関する情報提示は、ハッピーモードのときにのみ行うことができる(日常モードでは上記提示を行わない)。なお、日常モードとハッピーモードとの区別を行わないようにすることもできる。
【0049】
車両1に搭載された通信装置16と管理装置30の通信装置31とが通信可能とされている。演算装置15で処理された各種情報が、この通信装置16、31を介して管理装置30へ送信される。また、管理装置30からの情報が、通信装置31、16を介して車両1へ送信される。演算装置15は、カメラS1、センサS2、入力装置S3からの情報を、ユーザ毎の情報として、ユーザ毎に紐付けされた状態で管理装置30へ送信する。
【0050】
管理装置30は、データベースDB1~DB3を有する。カメラS1、センサS2、入力装置S3からの情報は、データベースDB1に格納(記憶)される。データベースDB2は、ユーザ毎の個人に関する情報(例えばユーザIDや、ユーザが使用する車両のID等)を記憶している。
【0051】
管理装置30は、処理部32を有する。処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、1回の走行(トリップ)毎に、トリップルート情報を取得する。取得されたトリップルート情報は、データベースDB3に格納される。各トリップルート情報には、ルートID(識別符号)が付される。トリップルート情報としてデータベースDB3に記憶される情報は、走行経路の出発地点、終了地点、走行ルート(通過した多数の区間)とされる。
【0052】
処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、上述したトリップルートが入力される毎に、ドライブIDを付与して、走行ログ情報を取得する。トリップルートが入力されていないときは、イグニッションスイッチがオンされる毎にドライブIDを付与して、走行ログ情報を取得する。取得した走行ログは、データベースDB3に格納される。取得される走行ログ情報は、車両情報としてのシリアル番号、位置情報、車両操作系の操作情報、車両挙動、互助行動フラグ、後述するリスクフラグ、イグニッションスイッチのON、OFF情報、ハッピーモードの有無とされる。
【0053】
上記互助行動フラグは、自車両が他の交通参加者に譲ったあるいは配慮した場合と、自車両が他の交通参加者から譲ってもらったあるいは配慮してもらった場合に発生される。互助行動フラグは、互助行動の分類と共に管理装置30に送信される。リスクフラグは、他の交通参加者との関係でリスクが発生したときに、リスクの分類と共に管理装置30に送信される。このリスクフラグを利用して、後述するように、未知のリスクのある場所をその分類と共に新たに設定することが可能となる(集合知によるリスク場所とその分類の収集)。
【0054】
処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、各区間毎にIDを付与して、区間情報を取得する。取得される区間情報は、データベースDB3に格納される。区間情報としては、始点位置情報、終点位置情報、リスクの分類(局所リスクの分類)とされる。また、処理部32は、データベースDB1の格納情報に基づいて、各地域(エリア)毎にIDを付与して、地域情報を取得する。取得される地域情報は、データベースDB3に格納される。地域情報としては、地域の境界位置情報、およびリスクの分類(広域リスクの分類)とされる。
【0055】
携帯端末20は、管理装置30の通信装置31を介して、データベースDB3にアクセス可能とされている。データベースDB3へのアクセスにより、例えば、ユーザがある走行経路を走行した後に、この走行に関する種々の情報、特に互助行動に関する情報を入手することができる。
(3)リスクのある場所および互助行動について
他の交通参加者との間でのリスクのある場所の例につて、説明するが、実施形態では、以下のリスク1~リスク4の4種類設定されている。リスク1は「車間距離が短い車両が多い」というものである。リスク2は「歩行者は車両の飛び出しが多い」というものである。リスク3は「右折待ちで後方車両を待たせてしまうことが多い」というものである(左側通行を想定)。リスク4は「急な車線変更が多い」というものである。なお、リスクの種類はこれに限るものではない。以下、リスク1~リスク4について詳述する。
【0056】
上記リスク1~リスク4の存在する場所(区間および地域)とその分類は、あらかじめ管理装置30のデータベースDB3に記憶されている。そして、後述するように、自車両としての車両1や多数の他車両からのリスク発生情報にもとづいて、リスクのある場所とその分類とが上記データベースDB3に新たに追加される。
【0057】
まず、リスク1について説明する。「車間距離が短い車両が多い」というリスク1の検出は、レーダが用いられる。判定基準は、「前方車両or後方車両との車間距離が、車速に応じて決まる所定距離以下の状態が区間内の所定割合以上続く」というものである。なお、自車両が前方車両に対して車間距離を確保していない状況と、後方車両が自車両に対して車間距離を確保していない場合とがある。
【0058】
リスク1について、アドバイス(注意報知)は、例えば「車間距離に余裕を持って走行しましょう」というものとされる。
【0059】
リスク1について、自車両が他の交通参加者に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「車間距離を確保して走行したことで、前方車両に安心感を与えることができました」というような内容とされる。上記互助行動の情報は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「前方車両との車間距離が、車速に応じて決まる所定距離以上の状態が区間内の所定割合以上続く」という条件を満足したときとされる(互助行動フラグの送信)。
【0060】
リスク1について、他の交通参加者が自車両に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「後方車両が車間距離を確保してくれました」というような内容とされる。上記互助行動の情報は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「後方車両との車間距離が、車速に応じて決まる所定距離以上の状態が区間内の所定割合以上続く」という条件を満足したときとされる(互助行動フラグの送信)。
【0061】
リスク2について説明する。「歩行者や車両の飛び出しが多い」というリスク2の検出は、例えば、車両挙動や、カメラand/orレーダとされる。判定基準は、交差点への進入速度が所定速度以上である車両や歩行者等を検出した場合である。
【0062】
リスク2について、アドバイスは、例えば「車両や歩行者の飛び出しに注意しつつ、安全な速度で走行しましょう」というものとされる。
【0063】
リスク2について、自車両が他の交通参加者に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「交差点に徐行して進入したことで、リスクを低減することができました」というような内容とされる。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば信号機のない交差点への自車両の進入速度が、前記所定速度未満である場合のときに行われる(互助行動フラグの送信)。また、互助行動を自車両のユーザに提示する場合に、「歩行者に道を譲りました」というような内容とされる場合もあり、このときの互助行動の管理装置30への送信は、「立ち止まっている歩行者の手前で自車両が停止して、歩行者が自車両の前を横切った場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0064】
リスク2について、他の交通参加者が自車両に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「交差点で相手車両が徐行してくれたおかげで、安全に走行できました」というような内容とされる。この互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば、信号機のない交差点への相手車両の進入速度が前記所定速度未満のときに行われる(互助行動フラグの送信)。
【0065】
リスク3について説明する。「右折待ちで後方車両を待たせてしまうことが多い」というリスク3の検出は、カメラが用いられる。判定基準は、「前方所定距離以内に右折信号がない状態で、右ウインカ作動で停車中(以下右折待ちと称す)に、後方所定距離以内に停車車両が存在する状態が所定時間秒以上続く場合」というものである。なお、実施形態では、左側通行を想定したものとなっている。
【0066】
リスク3について、アドバイスは、例えば「右折待ちするときは、余裕を持って、急ぐことなく待ちましょう」というものとされる。
【0067】
リスク3について、自車両が他の交通参加者に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「右折待ちの車両に道を譲ったことで、対向車線の流れを円滑にすることができました」というような内容とされる。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「自車両が減速あるいはパッシングして、対向車が自車両の前を横切った場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0068】
リスク3について、他の交通参加者が自車両に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「右折待ちをしていたときに、対向車両が道を譲ってくれました」というような内容とされる。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「対向車両が減速あるいはパッシングしたのをカメラで検知して、自車両が右折した場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0069】
リスク4について説明する。「急な車線変更が多い」というリスク4の検出は、カメラのみ、またはカメラに加えて車両操作状態と車両挙動とが用いられる。判定基準は、「ウインカが非作動状態で車線を跨いだり、ウインカの作動開始から所定の短時間内に車線を跨ぐ車両数が、車線を跨いだ所定数以上の全車両数に対して所定割合以上の場合」である。
【0070】
リスク4について、アドバイスは、例えば「急な車線変更する車両に備えて、周囲の車両に注意して走行しましょう」というものとされる。
【0071】
リスク4について、自車両が他の交通参加者に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「車線変更前に余裕をもってウインカを作動させたことで、周囲の車両に安心感を与えることができました」というような内容とされる。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「車線を跨ぐ所定時間前からウインカを作動させている場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0072】
また、上記提示内容として「車線変更車両に道を譲りました」というような内容の場合もある。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「斜め前方の車両がウインカを点灯後、自車両が斜め前方車両の側方スペースを空けた場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0073】
リスク4について、他の交通参加者が自車両に対して行った互助行動を自車両のユーザに提示する場合は、例えば「車線変更車両が余裕を持ってウインカを作動させことで、安全に走行できました」というような内容とされる。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「斜め前方車両が、車線を跨ぐ所定時間前からウインカを作動させた場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0074】
また、上記互助行動の提示として、例えば「車線変更時に、周囲の車両が道を譲ってくれました」というような場合もある。このような互助行動は、管理装置30へ送信されて記憶されるが、この送信は、例えば「自車両がウインカを作動させた後に、斜め後方車両が、自車両側方スペースを空けてくれた場合」に行われる(互助行動フラグの送信)。
【0075】
車両1側において、前述したリスク1~リスク4のある状況をセンシングすると(前述した各リスクに対応した判定基準が満足されると)、リスクフラグが立てられる。このリスクフラグは、上記センシングされた場所(区間)を示す情報と、リスクの分類(種類)を示す情報と共に、管理装置30に送信されて記憶される。管理装置30は、同一のリスクの分類について、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける全車両数に対して、リスクフラグを送信した車両数の割合が所定値以上のとき、当該区間をリスクのある場所(区間)としてその分類と共に記憶(追加)する。なお、上記全車両数は、少なくとも所定台数(例えば20~30台)以上とされる。
【0076】
走行中に行われた互助行動に関する表示画面での表示例が、
図4に示される。
図4に示す例では、自身が行った互助行動であることを示すべく「あなたが周囲の人を助けた行動」という表示と共に、具体的に行われた互助行動の内容として、「車間距離を確保したことで、前方車両に安心感を与えることができました。」という表示と、「歩行者に道を譲りました。」という表示が行われる。上記表示に代えてあるいは加えて、上記互助行動が行われた際の状況を示す動画(自車両が撮影した動画)を提示してもよい。提示される動画は、互助行動フラグが立った地点を基準として、この基準の地点を含む区間についての動画、または基準の地点の前後所定時間あるいは前後所定距離の動画を抽出したものとされる。
【0077】
図4の例では、他の交通参加者が行った互助行動であることを示すべく、「周囲の人に助けられたこと」という表示と共に、具体的に行われた互助行動の内容として、「交差点で相手車両が徐行してくれたおかげで、安全に走行できました。」という表示と、「右折待ちをしているとき、対向車が道を譲ってくれました。」という表示が行われる。上記表示に代えてあるいは加えて、上記互助行動が行われた際の状況を示す動画(自車両が撮影した動画)を合わせて提示してもよい。
(4)車両1と携帯端末20と管理装置30との間での情報授受について。
【0078】
図7~
図9は、車両1と携帯端末20と管理装置30との間で行われる情報授受を時系列的に示すものである。なお、以下の説明で、Pは車両1側での処理を示すステップであり、Qは携帯端末20での処理を示すステップであり、Rは管理装置30での処理を示すステップである。
【0079】
まず、図のQ1において、携帯端末20でのログインが行われる。管理装置30との間で認証が成立すると、Q2において、安心マップサービスとして名称づけられたアプリケーションが起動される。Q3で、ユーザがトリップ条件(出発地点と終了地点)を入力すると、入力内容が管理装置30へ送信される。管理装置30では、受信した入力条件に合致するトリップルート(走行経路)を算出して、データベースDB3に格納すると共に、このトリップルートを携帯端末20に送信する。この送信の際、トリップルートについてリスクのある場所およびその分類を示すリスクマップをも合わせて送信される。
【0080】
Q4において、携帯端末20は、トリップルートとリスクマップとをその表示画面に表示する(
図5のような表示)。Q5において、ユーザがトリップルートを確定させる処理を行うことによって、その情報が管理装置30に送信されて、R2において、車両1に対してトリップルートおよびリスクマップを送信する。車両1においては、P1において、送信されてきたトリップルートとリスクマップとを取得して保存する。
【0081】
車両1側では、P1の後、携帯端末20との間で認証が行われて、ユーザIDと携帯端末20の端末IDと車両のシリアル番号とが紐付けされる。この後、P2においてイグニッションスイッチがオンされると、ハッピーモードが自動的にオンされる(経路案内の場合はハッピーモードであること前提としている)。なお、手動操作によってハッピーモードをオンするようにしてもよい。
【0082】
P3では、ナビゲーション装置の表示画面にトリップルートとリスクマップとが表示される。この後、P4において、リスクのある場所として広域エリアが存在する場合に、広域エリアでのリスクに関する情報とこれに対するアドバイスとがユーザに対して報知される。これにより、ユーザは、事前に、広域エリアに存在するリスクおよび注意すべき事項をあらかじめ認識した上で、走行を開始することができる。そして、P5において、トリップルートにしたがったナビゲーションが行われる。
【0083】
図7の後、
図8のP6において、走行ログが取得されて、取得された走行ログが常時管理装置30のR3で蓄積される。P6の後、P7において、局所エリアに対して所定距離手前となった時点で、当該局所エリアに存在するリスクおよび注意すべき事項がユーザに報知される。
【0084】
P8において、トリップ終了時点でイグニッションスイッチがオフされると、このオフ信号が管理装置30に送信される。管理装置30では、R4において、各データから今回のトリップにおけるデータが抽出される。この後、R5において、各区間のリスク(局所リスク)を評価して、評価結果をデータベースDB3に格納する。次いで、R6において、広域エリアのリスク(広域リスク)を評価して、評価結果をデータベースDB3に格納する。このR5、R6は、多くの車両を利用した集合知によって、リスクのある場所とその分類とを新たに設定する処理となる。
【0085】
上記R6の後、携帯端末20においては、Q6において管理装置30にログインすることにより、Q7において、運転振り返りサービスという名称のアプリケーションが起動される。この起動の情報が管理装置30へ送信されると、管理装置30は、R7において、自身(自車両)が行った互助行動と他の交通参加者が行った互助行動とを携帯端末20に送信する。携帯端末20では、Q8において、送信されてきた互助行動を表示画面に表示する(例えば
図4に示すような表示)。
【0086】
図9は、
図7の変形例となるものである。本例では、トリップルートによるナビゲーションまでを、実質的に車両1側で行うようにして、携帯端末20は、ユーザ認証のみに使用するものとなっている。
【0087】
まず、P21おいて、イグニッションスイッチがオンされると、P22においてナビゲーション画面が起動される。このナビゲーション画面を利用して、P23においてトリップ条件が入力されて、入力結果が管理装置30へ送信される。管理装置30では、R21において、トリップルートの算出およびリスクマップの算出が行われて(
図7のR1)、算出結果がデータベースDB3に格納されるとと共に車両1へ送信される。
【0088】
車両1では、P24において、受信したトリップルートおよびリスクマップを表示画面に表示する。この後、P25において、ユーザが表示画面上のリスクのある場所をタッチすることによってトリップルート上に存在するリスクの詳細を確認することができる。
【0089】
P26において、トリップルートの確定処理が行われると、トリップルートが確定されたことが管理装置30に送信される。この後、P27において、広域エリアに存在するリスクおよび注意すべき事項がユーザに報知される。この後、P28において、トリップルートにしたがってナビゲーションが行われる。以下は、
図8に示す処理が行われる。
(5)フローチャートについて。
【0090】
図10は、管理装置30での制御内容のうち、リスクフラグに対応してリスクのある場所の設定を行う処理内容に着目した制御例を示す。なお、以下の説明でTはステップを示す。なお、リスクフラグの受信は、他車両からのものも含むものである。
【0091】
図10のT1において、リスクフラグを受信したか否かが判別される。T1の判別でYESのときは、T2において、リスクが発生した場所がその分類と共に記憶される。T2の後、T3において、T2でのリスク発生場所とその分類とが同じものが所定割合以上存在するか否かが判別される。T3の判別でYESのときは、T4においてリスク発生場所がその分類と共に新たに設定(追加)される。すなわち、前述したように、同一のリスクの分類について、同じ区間を通過した本システムのサービスを受ける所定台数以上の全車両数に対して、リスクフラグを送信した車両数が所定割合以上のとき、当該区間をリスクのある場所(区間)として上記リスクの分類と共に新たに記憶(追加)する。
【0092】
T4の後、T1の判別でNOのとき、あるいはT3の判別でNOのときは、T5において、イグニッションスイッチがオフされたか否かが判別される。T5の判別でNOのときはT1に戻る。T5の判別でYESのときは、終了される。
【0093】
なお、T3の判別条件を、所定期間内(例えば1~2ヶ月)に、所定台数以上の車両からリスクフラグを受信したか否か、という条件に変更することもできる。
【0094】
以上実施形態について説明したが、本発明は、実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載された範囲において適宜の変更が可能である。携帯端末20の機能の一部または全部を車両1側に持たせるようにしてもよい。逆に、車両1の機能の一部を携帯端末20側に持たせるようにしてもよい。運転者によって操作されや易い位置に「リスクボタン」を別途設けて、この「リスクボタン」が操作されたときにリスクフラグを発生させるようにしてもよい。リスクの分類は、例えば車両の挙動、車両の操作状況、およびカメラで取得された映像を用いて行うことができる。
【0095】
広域リスクに関するアドバイスを、広域リスクに到達する直前の位置、例えば所定距離(200~300m手前)でもって行うようにしてもよい。また、局所リスクに関するアドバイスを、走行経路の走行開始前に行うようにしてもよい。特に、リスクに関するアドバイスは、ユーザが選択したリスクのみに限定してもよい。
【0096】
運転振り返り用の情報は、車両1と携帯端末20とのいずれか一方または両方に対して提示することができる。また、リスクのある場所やそれに対する注意喚起の情報は、車両1と携帯端末20とのいずれか一方または両方に対して提示することができる。
【0097】
走行経路の設定は、車両1あるいは携帯端末20で行うようにしてもよい。この場合、管理装置30は、車両1あるいは携帯端末20から送信されてくる走行経路についてリスクのある場所とそれに対する注意喚起情報と共に設定して、車両1あるいは携帯端末20へ送信すればよい。ユーザに対してリスクのある場所やそれに対する注意喚起の情報の提示を行わないようにすることもでき、この場合、実行された互助行動のみが走行後にユーザに提示されることになる。管理装置30の機能は、機能名に手段の名称を付したものとして表現することができる。勿論、本発明の目的は、明記されたものに限らず、実質的に好ましいあるいは利点として表現されたものを提供することをも暗黙的に含むものである。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、ナビゲーション装置をより有効に利用する上で好ましいものとなる。
【符号の説明】
【0099】
1:車両
20:携帯端末:
30:管理装置
40:インターネット(通信回線)
DB1~DB3:データベース