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  • 特許-腸内環境改善剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】腸内環境改善剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/48 20060101AFI20241024BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20241024BHJP
   A61P 1/14 20060101ALI20241024BHJP
   A61K 129/00 20060101ALN20241024BHJP
【FI】
A61K36/48
A23L33/105
A61P1/14
A61K129:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019183809
(22)【出願日】2019-10-04
(65)【公開番号】P2021059508
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2021-05-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507103020
【氏名又は名称】株式会社アカシアの樹
(73)【特許権者】
【識別番号】505232346
【氏名又は名称】学校法人星薬科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】片岡 武司
(72)【発明者】
【氏名】河地 泰臣
(72)【発明者】
【氏名】小川 壮介
(72)【発明者】
【氏名】小林 知樹
(72)【発明者】
【氏名】杉山 清
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 信智
【合議体】
【審判長】冨永 みどり
【審判官】齋藤 恵
【審判官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-120508(JP,A)
【文献】特開2013-249276(JP,A)
【文献】特開2002-003388(JP,A)
【文献】特開2009-161502(JP,A)
【文献】薬理と治療 (2017) vol.45, no.12, p.1927-1934
【文献】J. Met. Vet. Sci. (1995) vol.57, no.1, p.45-49
【文献】Food Funct. (2016) vol.7, issue 4, p.1775-1787
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36
A23L 33
PubMed
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カシアの樹皮の熱水抽出物を含む、腸内細菌改善剤であって、
前記腸内細菌改善が、腸内の善玉菌の増加である、腸内細菌改善剤
【請求項2】
前記善玉菌が、乳酸菌及び/又はビフィズス菌である、請求項に記載の腸内細菌改善剤。
【請求項3】
前記善玉菌が、ラクトバチルス(Lactbacillus)属の菌及び/又はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の菌である、請求項に記載の腸内細菌改善剤。
【請求項4】
前記アカシアが、Acacia mearnsii De Wild.である、請求項1~のいずれか一項に記載の腸内細菌改善剤。
【請求項5】
食品である、請求項1~のいずれか一項に記載の腸内細菌改善剤。
【請求項6】
医薬品又は医薬部外品である、請求項1~のいずれか一項に記載の腸内細菌改善剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腸内環境改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
人の腸内には約3万種類、100兆個もの腸内細菌が生息しているといわれており、腸内細菌は大きく分けて3つのグループ(善玉菌、悪玉菌、及び日和見菌)から構成されている。これらの菌は互いに密接な関係を持ち、複雑にバランスをとっている。腸内細菌の中で最も数が多い菌は日和見菌であり、次に善玉菌であり、最も数が少ないのが悪玉菌である。一般的に、これらの菌の理想的な割合は、日和見菌7:善玉菌2:悪玉菌1といわれている。腸内に占める善玉菌の割合を増やすことが健康上重要であるといわれている。反対に、悪玉菌が増えると、悪玉菌が作り出す有害物質が増え、様々な悪影響が体に表れる。そのため、最近では、健康に有用な作用をもたらす善玉菌である「プロバイオティクス」や、腸内の善玉菌を増やす作用を有する成分である「プレバイオティクス」等が注目を集めており、様々な健康効果が明らかになりつつある。また、これらに着目した健康食品や嗜好品の販売も増えてきている。
【0003】
善玉菌としては、乳酸菌、ビフィズス菌等が知られている。悪玉菌としては、ウェルシュ菌、ブドウ球菌、大腸菌(有毒株)等が知られている。日和見菌としては、バクテロイデス、大腸菌(無毒株)等が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、腸内環境改善剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等が鋭意検討した結果、アカシアの樹皮の抽出物が腸内環境を改善することを見出した。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、腸内環境改善剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】アカシアの樹皮の抽出物の投与と腸内の善玉菌の量との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態は、有効成分としてアカシアの樹皮の抽出物(以下「アカシア樹皮抽出物」という。)を含む、腸内環境改善剤に関する。
【0009】
本明細書において、「アカシア」とは、アカシア(Acacia)属に属する樹木を意味する。アカシアとしては、例えば、Acacia mearnsii De Wild.、Acacia mangium Willd.、Acacia dealbata Link、Acacia decurrens Willd.、Acacia pycnantha Benth. 等が挙げられる。特に限定するものではないが、アカシアは、好ましくはAcacia mearnsii De Wild.又はAcacia mangium Willd.であり、より好ましくはAcacia mearnsii De Wild.である。
【0010】
アカシアの樹皮の調製方法、及び樹皮からの抽出方法は特に限定されず、公知の方法を使用することができる。例えば、特開2011-51992号公報、特開2010-105923号公報、特開2009-203209号公報等に記載の方法等を使用することができる。
【0011】
抽出溶媒としては、特に限定されないが、水、有機溶媒等が挙げられる。水は熱水であることが好ましい。有機溶媒は、好ましくはアルコールであり、より好ましくは炭素数1~4のアルコールであり、特に好ましくはエタノールである。抽出溶媒は、1種の溶媒を単独で使用してもよいし、2種以上の溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
特に限定するものではないが、アカシアの樹皮から熱水で抽出を行い、得られた抽出物から更に有機溶媒で抽出を行うことが好ましい。
【0013】
アカシア樹皮抽出物は、所定の方法で抽出した抽出物を精製したものでもよい。
【0014】
アカシア樹皮抽出物は、複数の成分を含んでいてもよいし、単一の成分のみを含んでいてもよい。アカシア樹皮抽出物の成分としては、例えば、プロフィセチニジン、プロロビネチニジン、プロシアニジン、プロデルフィニジン、ロビネチニドール、フィセチニドール、シリング酸、タキシフォリン、ブチン、スクロース、ピニトール等が挙げられる。
【0015】
腸内環境改善剤は、例えば、食品、医薬品、医薬部外品、動物用飼料等として使用することができる。食品としては、例えば、一般食品、保険機能食品(例えば、特定保健用食品、機能性表示食品、及び栄養機能食品)等が挙げられる。
【0016】
腸内環境改善剤の具体的な用途としては、例えば、腸内の善玉菌を増加させることが挙げられる。善玉菌としては、例えば、乳酸菌、ビフィズス菌等が挙げられ、具体的には、ラクトバチルス(Lactbacillus)属の菌、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属の菌等が挙げられる。
【実施例
【0017】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0018】
<抽出物の調製>
アカシア(Acacia mearnsii De Wild.)の樹皮を粉砕し、100℃の熱水で抽出した。得られた溶液をスプレードライヤーで噴霧乾燥し、熱水抽出物を得た。
【0019】
<腸内環境改善試験>
(実験動物)
雌性BALB/cマウスを、コントロール群(n=8)、及び投与群(n=8)に分けた。22日間、コントロール群には普通飼料を経口投与し、投与群にはアカシア樹皮抽出物3%含有飼料を経口投与した。22日目に各群のマウスの糞を採取した。
なお、マウスは温度24±1℃、湿度55±5%の施設において飼育し、明暗条件は8:00点灯、20:00消灯とした。
【0020】
(腸内細菌解析)
1.DNAの抽出・調整方法
糞からの細菌DNAの抽出はQIAamp DNA stool mini kit (Qiagen, Inc)を用いて行った。抽出方法はQIAamp DNA stool mini kit付属のプロトコールに従った。得られた溶液を、微量分光光度計にて260nm及び280nmの吸光度を測定することで、純度の確認及びDNA濃度(ng/μL)の算出を行った。
【0021】
2.細菌の定量方法
各種プライマーを作成し、リアルタイムPCRにより、ビフィドバクテリウム属の菌、及びラクトバチルス属の菌を検出した。PCRプレートの各ウェルへSsoAdvanced Universal SYBR Green Supermix 5μL、目的遺伝子のforward primer(5pmol/μL) 0.6μL、reverse primer(5pmol/μL) 0.6μL、DNA溶液 2μL、RNase free water 2.8μLを加えた。PCR条件は、denaturation温度として95℃で30sec、annealing温度として58℃で30sec、elongation温度として72℃で60secとした。増幅過程の蛍光強度をCFX Connect Real-Time System(Bio-Rad Laboratories)によりモニタリングした。発現量は、16SrRNAを用いてノーマライズした。
【0022】
3.結果
結果を図1に示す。糞中のビフィドバクテリウム属の菌の量が、投与群では、コントロール群と比較して、約3倍に増加していた。また、糞中のラクトバチルス属の菌の量が、投与群では、コントロール群と比較して、約2倍に増加していた。
図1