(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-10-23
(45)【発行日】2024-10-31
(54)【発明の名称】コンクリート斫り装置及びコンクリート斫り方法
(51)【国際特許分類】
E01D 22/00 20060101AFI20241024BHJP
B26F 3/00 20060101ALI20241024BHJP
E04G 23/02 20060101ALI20241024BHJP
【FI】
E01D22/00 A
B26F3/00 P
E04G23/02 A
(21)【出願番号】P 2020179109
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-08-01
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518004185
【氏名又は名称】株式会社サーフェステクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】510181909
【氏名又は名称】株式会社久野製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】増田 健康
(72)【発明者】
【氏名】森 清
(72)【発明者】
【氏名】増田 浩晃
(72)【発明者】
【氏名】久野 浩二
(72)【発明者】
【氏名】武藤 寿也
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 一広
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-106212(JP,A)
【文献】特開平05-171821(JP,A)
【文献】特開平09-235895(JP,A)
【文献】特開2000-002002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00-24/00
B26F 3/00
E04G 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な車両と、
前記車両に支持されるカバー部材と、
前記カバー部材の上部に支持され、斫り対象物に向けて高圧水を噴射するウォータージェット装置と、
前記カバー部材に負圧ホースを介して接続され、前記カバー部材と前記斫り対象物とで形成される空間を負圧にする負圧装置と、
前記カバー部材の内空に通じ、排水及びコンクリートの斫り片を吸引する少なくとも一つの吸引手段とを備え
、
前記吸引手段とは別に前記負圧装置が備えられていることを特徴とするコンクリート斫り装置。
【請求項2】
前記吸引手段の吸入口は、前記斫り対象物の表面よりも高い位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート斫り装置。
【請求項3】
前記負圧装置により吸引されたミスト及び粉塵を前記吸引手段に送る排水返送管を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のコンクリート斫り装置。
【請求項4】
コンクリートの斫り片を均す平らな板状のプレートを備えることを特徴とする
請求項1に記載のコンクリート斫り装置。
【請求項5】
前記ウォータージェット装置は、前記カバー部材に支持されたレールと、前記レールに沿って往復移動するノズルと、前記ノズルの折り返し位置を規定するリターン装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載のコンクリート斫り装置。
【請求項6】
前記プレートは、
前記プレートの前部に取り付けられる前部止水部材と、
前記プレートの両側部にそれぞれ取り付けられる側部止水部材と、を備えることを特徴とする請求項4に記載のコンクリート斫り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート斫り装置及びコンクリート斫り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路橋などの補修工事では、コンクリート床版の劣化した部分を撤去して新たなコンクリートを打設する方法が行われている。また、例えば、床版のジョイント部を補修(交換)する場合は、ジョイントの周囲のコンクリート硬化体を破砕した後、新たなコンクリートを打設している。
【0003】
コンクリート構造物の劣化部分を撤去する方法としては、例えば、ブレーカー等を使用してコンクリートに打撃を与えて粉砕する方法がある。しかし、この方法では、コンクリートの打撃音(掘削音)等の騒音が発生する。また、打撃により、損傷部以外の箇所に影響を及ぼす虞もある。そのため、近年では、コンクリート構造物の劣化部分を撤去する方法として、超高圧水を使用するウォータージェット工法が利用されている。
【0004】
このようなウォータージェットを利用するものとして、例えば特許文献1には、車輪や履帯等の走行機構を備えた走行車両にウォータージェットノズルを設け、走行しながらウォータージェットを噴射させるウォータージェット装置が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1の発明では、コンクリート床版の斫り作業に伴って生じる排水が作業区画外へ漏れ出さないよう、排水を回収する必要がある。排水を回収する方法としては、土嚢等により排水が作業区画外に流出することを防止した上で、作業工区内の排水を吸引回収する方法がある。しかし、この方法では補修範囲が変わる度に土嚢を設置し直さなければならず、作業時間もかかってしまうといった問題がある。
【0007】
このような観点から、本発明は、排水が発生するコンクリートの斫り作業において、排水を効率的に処理することができるコンクリート斫り装置及びコンクリート斫り方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明のコンクリート斫り装置は、移動可能な車両と、前記車両に支持されるカバー部材と、前記カバー部材の上部に支持され、斫り対象物に向けて高圧水を噴射するウォータージェット装置と、前記カバー部材に負圧ホースを介して接続され、前記カバー部材と前記斫り対象物とで形成される空間を負圧にする負圧装置と、前記カバー部材の内空に通じ、排水及びコンクリートの斫り片を吸引する少なくとも一つの吸引手段とを備え、前記吸引手段とは別に前記負圧装置が備えられていることを特徴とする。
【0009】
かかるコンクリート斫り装置によれば、カバー部材と斫り対象物とで形成される空間を負圧装置によって負圧に保つことができる。つまり、本発明のコンクリート斫り装置によれば、ウォータージェット装置から斫り対象物に向けて噴射された水の多くが前記空間内に留まるので、排水を効率的に処理することができる。また、車両の移動に伴って、カバー部材とウォータージェット装置が同時に移動するため、作業区画が広範囲である場合で
も、効率的に作業を行うことができる。また、コンクリートの斫り作業を行いながら、排水及び斫り片をカバー部材の外部へ排出することができるため、効率的に作業を行うことができる。
【0012】
また、前記吸引手段の吸入口は、前記斫り対象物の表面よりも高い位置に配置されていることが好ましい。
【0013】
かかるコンクリート斫り装置によれば、コンクリートを斫った際に形成される凹部から溢れ出した排水のみを吸引することができるため、凹部に排水を貯留した状態でコンクリートを斫ることができる。そのため、コンクリートを斫る際に発生する音を効果的に消音することができる。
【0014】
また、前記コンクリート斫り装置は、前記負圧装置により吸引されたミスト及び粉塵を前記吸引手段に送る排水返送管を備えることが好ましい。
【0015】
かかるコンクリート斫り装置によれば、負圧装置によって吸引したミスト及び粉塵を排水返送管を通じて吸引手段へ送ることができるため、負圧装置内に溜まった排水の回収作業を省略あるいは簡略化することができる。
【0016】
また、前記コンクリート斫り装置は、コンクリートの斫り片を均す平らな板状のプレートを備えることが好ましい。また、前記プレートは、前記プレートの前部に取り付けられる前部止水部材と、前記プレートの両側部にそれぞれ取り付けられる側部止水部材と、を備えることが好ましい。
【0017】
かかるコンクリート斫り装置によれば、コンクリートの斫り片を平坦に均すことができるので、コンクリートの斫り片が山状に堆積することでカバー部材が傾き、カバー部材と斫り対象物との隙間ができてしまうのを防ぐことができる。
【0018】
また、前記ウォータージェット装置は、前記カバー部材に支持されたレールと、前記レールに沿って往復移動するノズルと、前記ノズルの折り返し位置を規定するリターン装置とを備えることが好ましい。
【0019】
かかるコンクリート斫り装置によれば、斫り範囲を調整することができるため、斫り対象物の形状に合わせて効率的に斫ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係るコンクリート斫り装置及びコンクリート斫り方法によれば、排水が生じるコンクリート斫り作業において、排水を効率的に処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の第一実施形態係るコンクリート斫り装置を示す概略平面図である。
【
図2】第一実施形態係るコンクリート斫り装置を示す概略側面図である。
【
図3】第一実施形態係るコンクリート斫り装置を示す概略正面図である。
【
図4】第一実施形態係るコンクリート斫り装置のノズル構成例を示す図である。
【
図5】第一実施形態係るコンクリート斫り装置がコンクリートを斫る際の断面図である。
【
図6】本発明の第二実施形態係るコンクリート斫り装置を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<第一実施形態>
まず、本実施形態のコンクリート斫り装置1について
図1から
図3を参照しながら説明する。
図1に示すように、コンクリート斫り装置1は、移動可能な車両10と、車両10に支持されるカバー部材20と、カバー部材20の上部に支持されるウォータージェット装置30と、車両10の後方に載置される負圧装置40と、を備えている。
【0024】
コンクリート斫り装置1は、コンクリート床版上を移動して、修復が必要な部位に対してウォータージェット装置30による斫り作業を行う装置である。ウォータージェット装置30によるコンクリート斫り作業は、カバー部材20と斫り対象物とで形成される空間を負圧装置40により負圧にした状態で行う。こうすることで、ウォータージェット装置30によって噴射された水の多くがカバー部材20の内側に留まるので、排水を効率的に処理することができる。
【0025】
(車両10)
図2に示すように本実施形態の車両10は、車両本体11と、載置台12と、補助車輪13とを備えて構成されている。車両本体11は、モータやエンジンなどの駆動源、履帯や車輪などの走行手段などを備えており、自走可能である。載置台12は、負圧装置40を載置するための台座であり、車両本体11の後方に突出するように形成されている。また、載置台12の端部には、補助車輪13が備えられている。なお、載置台12及び補助車輪13は、車両本体11に牽引されるものでもよい。また、負圧装置40を車両本体11に直接搭載し、載置台12を省略してもよい。なお、車両10は操縦者が乗車することで移動できるようにしてもよいし、遠隔で操作できるようにしてもよい。
【0026】
(カバー部材20)
図1に戻って、カバー部材20について説明する。カバー部材20は、周壁20aと、トップカバー20bとを備えており、平面視長円形を呈する。カバー部材20の底面は開放されている。
図2および
図3に示すように、周壁20aの下端には、ゴム等のからなる止水板20cが取り付けられている。カバー部材20の下端(止水板20c)をコンクリートの斫り対象物に密着させることにより、カバー部材20と斫り対象物とで密閉空間を作ることができる。そのため、コンクリートに対して噴射した高圧水が周囲に飛散することを防止できる。なお、カバー部材は消音の観点から消音性の高い鉄板等で構成されることが好ましい。さらにカバー部材20は、負圧ホース21と、吸引手段22と、スリット23と、車輪24と、残土排出口25と、支持フレーム26と、止水部材27と、を備えて構成される。
【0027】
負圧ホース21は、カバー部材20と、負圧装置40とを接続する配管やダクト等である。負圧装置40の吸引により、カバー部材20の内空の空気は、負圧ホース21を介して吸引される。その際に空気以外にも、ミストや粉塵等が負圧ホース21を通って、負圧装置40へと吸引される。本実施形態では、負圧ホース21は1本であるが、負圧ホース21は2本でもよく、例えば車両本体11の反対側にもう一本設けてもよい。負圧ホース21の本数が増えることで、さらに強力にカバー部材20の内部を吸引することができる。
【0028】
吸引手段22は、本実施形態ではトップカバー20bに取り付けられている。吸引手段22は、斫り作業に伴って生じる排水や、コンクリートの斫り片等を吸引可能な管材であり、カバー部材20の内部に通じている。吸引手段22は、例えば柔軟性の高いフレキシブル配管からなる。本実施形態では、横長のカバー部材20に合わせて左右一対の吸引手段22,22が配置されている。2本の吸引手段22,22は、カバー部材20の中央部において回収管50に接続されている。回収管50は、バキューム車(不図示)等から延設されており、吸引手段22,22に接続されている。なお、回収管50は、排水の吸引に使用する装置(給水ポンプや吸引ブロア等)に接続されていればよく、必ずしもバキューム車に接続されている必要はない。
【0029】
また、吸引手段22の吸引口は、斫り対象物の表面よりも高い位置に設定するとよい。具体的には、吸引手段22の吸引口は、コンクリートの破砕に伴って形成された凹部W(
図5参照)から溢れた出た排水のみを吸引できるような位置に設定することが好ましい。本実施形態では、止水板20cと同じ高さ(より具体的には、止水板20cの下端と上端の間)に吸引手段22の吸引口を配置している。このような高さ位置に吸引手段22の吸引口を設定すると、斫り対象物を斫ったときに形成される凹部Wから溢れた排水のみを吸引できるようになるので、凹部Wに排水を貯めた状態で、斫り作業を行うことができる。こうすることでコンクリートを斫る際に発生する騒音を効果的に軽減することができる。
【0030】
トップカバー20bには、左右方向に延在する長円形のスリット23が形成されている。スリット23は、後述するノズル31(
図2、
図3参照)がカバー部材20の内部に挿入できる大きさに形成されている。また、スリット23の周縁部には、スリット23を覆うゴム部材23aが取り付けられている。ゴム部材23aは、エチレンプロピレンゴム等で形成されており、カバー部材20内の密閉性を保ちつつノズル31(
図2、
図3参照)が左右に移動できるように構成される。ゴム部材23aは、ゴムに限定されず、カバー部材20内の密閉性を確保できるものであればよい。また、カバー部材20の側面には、支持フレーム26が配置されている。支持フレーム26は、カバー部材20の上部でウォータージェット装置30を支持する。
【0031】
また、本実施形態のカバー部材20の左右それぞれに、車輪24が二つずつ取り付けられているため、車両10の移動に伴ってカバー部材20もスムーズに移動する。また、複数の車輪24を備えることで、斫り対象物の表面に不陸があったとしてもカバー部材20を安定して載置することができる。本実施形態では、車輪24は4本の構成を採用したが、これに限定されるものではない。車輪24は2本であってもよいし、車輪24を省略してもよい。
【0032】
図2に示すように、カバー部材20は、残土排出口25を備えている。残土排出口25は、二つの吸引手段22の合流地点に設けるとことが好ましい。二つの吸引手段22の合流地点は、コンクリートの斫り片等の細かい粉塵が蓄積しやすく、合流地点に粉塵が蓄積してしまうと、吸引手段22による吸引能力が低下してしまう。そこで、二つの吸引手段22の合流地点に残土排出口25を設けることで効率よく細かい粉塵等を取り除くことができるため、メンテンナス性を向上することができる。そのため、回収管50によって接続されているバキューム車等による吸引能力を落とすことなく斫り作業を行うことができる。
【0033】
図2に示すように止水部材27は、カバー部材20の前面に取り付けられる。止水部材27の幅は、斫り対象物よりも広く設定され、斫った部位を覆うことができる。カバー部材20が後退すると、徐々に斫った部位がカバー部材20の前面から露出する。止水部材27を設けることで、止水部材27が露出した部位を覆い、排水が漏れ出すのを防止できる。
【0034】
(ウォータージェット装置30)
ウォータージェット装置30は、
図3に示すように、ノズル31と、スイベルユニット32と、トラバースモーター33と、レール34と、リターン装置35と、を備えて構成される。ウォータージェット装置30は、高圧水を噴射することでコンクリートを斫る装置であり、支持フレーム26に支持される。
【0035】
本実施形態のノズル31は、後述する二股型(
図4参照)を用いて斫り作業を行うが、ウォータージェット工法により斫り作業が可能なノズルであれば、どのようなノズルであってもよい。スイベルユニット32は、ノズル31に接続され、水流を回転運動に変換する部材である。スイベルユニット32を介してノズル31へと水が供給されることで、高圧水が噴射可能となっている。
【0036】
図3に示すように、レール34は、左右の支持フレーム26,26に支持されている。すなわち、レール34は、カバー部材20に支持されている。ノズル31とスイベルユニット32は、トラバースモーター33によりレール34に沿って水平方向に往復移動可能となっている。
【0037】
リターン装置35は、斫り幅を任意の位置で設定するための部材である。レール34に沿って水平方向に往復運動するノズル31およびスイベルユニット32は、リターン装置35の位置で停止して、反対方向へと移動する。すなわち、リターン装置35は、ノズル31およびスイベルユニット32の折り返し位置を規定する。そのため、リターン装置35を任意の位置に調整することで、水平方向の斫り幅を自在に調節することができる。そのため、ウォータージェット装置30は、レール34の固定範囲にとらわれず所望の範囲を斫ることができる。
【0038】
(負圧装置40)
図2に示すように負圧装置40は、吸引機41と、分離槽42と、排水返送管43と、負圧エアー掃き出し口44と、を備える。負圧装置40は、車両10の後方に伸びる載置台12に載置され、カバー部材20の内部の空気を吸引することで、カバー部材20の内空を負圧の状態にする。吸引機41によってカバー部材20から吸引された空気は、負圧ホース21を通って、負圧エアー掃き出し口44から排出される。
【0039】
本実施形態の吸引機41は、サイクロン式吸引機である。吸引機41は、吸引した空気とミストや粉塵等を回転させることで空気とその他のものとに分離することができる。分離された空気は、負圧エアー掃き出し口44から排出される。その他のミストや粉塵等は分離槽42に集積される。
なお、カバー部材20の内空を負圧の状態にする手段は、吸引機41に限定されるものではない。カバー部材20の内部の気圧を調整するその他の手段を用いてカバー部材20の内空を負圧の状態にしてもよい。
【0040】
分離槽42は、吸引機41によって吸引されたミストや粉塵等を一時保管することができる部位である。本実施形態の分離槽42は、ドラム缶を利用した容器である。なお、分離槽42は、ドラム缶に限らずどのような容器であってもよい。分離槽42の下部には、分離槽42に溜まった排水を吸引手段22へ送る排水返送管43が備えられている。排水返送管43へは分離槽42内に備えられたフロート式水中ポンプにより逐次圧送されるシステムとなっている。このようにすると、分離槽42から排水を回収する必要がなく、カバー部材20内の排水や斫り片を回収する回収管50一つのみで排水の回収を済ませることができるため、負圧装置40内に溜まった排水の回収作業を省略あるいは簡略化することができる。
なお、分離槽42に溜まった斫り片は、作業終了後に分離槽42から回収すればよいので容易に回収することができる。
【0041】
負圧エアー掃き出し口44は、主に吸引した空気を排出するスパイラルダクト等のダクトや配管である。また、負圧エアー掃き出し口44は、吸引した空気以外にも蒸気を排出することができる。吸引機41は高温となるため、吸引した一部のミストは蒸発する。そのため、負圧エアー掃き出し口44から蒸気も排出することが好ましい。蒸気を排出する際には、負圧エアー掃き出し口44の内部にチャンバ(不図示)等を設けるとよい。チャンバ(不図示)を設けることで、ミストを回収でき、且つ、吸引機41の音を消音することができる。
【0042】
(ノズルの構成)
ウォータージェット装置30は
図4に示すように、衝突型ツインノズル方式のノズル31Aを備えている。ノズル31Aは、回転しながら下方に向けて高圧水を噴射する。ノズル31Aは、2本のノズルヘッド31a,31bを備えている。ノズルヘッド31a,31bから噴射された高圧水を斫り対象物の表面下の所定深さで衝突させると、高圧水の勢いを弱めることができるので、それ以深のコンクリートや鉄筋に影響が及び難くなる。
【0043】
なお、深さの調整が必要ない場合、ノズル31は、シングルノズル方式でもよい。シングルノズル方式であれば、深さ方向の斫り能力が高く細かい部分の斫り等に用いることもできる。また、シングルと衝突型のツインノズルを両方採用する構成としてもよい。
【0044】
(コンクリート斫り方法)
図5に示すように、斫り対象物Sを斫る際には、斫り対象物Sの表面とカバー部材20とで囲まれた空間を前述の負圧装置40により負圧にした状態で斫り作業を行う。こうすることで、カバー部材20内は負圧状態となり、斫り作業で発生した排水を外部に漏れ出さない状態で斫り作業を行うことができる。
【0045】
ウォータージェット装置30は、ノズル31から高圧水を噴射しながらレール34に沿って左右方向に移動する。ノズル31から高圧水を噴射すると、斫り対象物Sのコンクリートが砕かれて、凹部Wが形成される。つまり、ノズル31の移動に伴って、凹部Wが左右方向に広がる。斫る範囲を後方に広げる場合には、車両10を後退(
図1後方向)させた後、再び左右方向にノズル31を移動させる。
【0046】
カバー部材20内の作業空間は負圧に保たれているものの、凹部Wから排水が大量に溢れ出してしまうと、カバー部材20の外部へ水が漏れてしまう恐れがある。しかし、本実施形態では、斫り作業と同時に、吸引手段22を通じて排水や斫り片を吸引回収するので、カバー部材20の外部に水が漏れ出ることを抑制することができる。一方で、吸引手段22の吸引口は、上述のとおり、斫り対象物Sの表面よりも僅かに高い位置に設けられているため、凹部Wに排水が溜まった状態で斫り作業が行われることになる。凹部Wに常に水を貯めながら斫り作業を行うことにより、コンクリートを破砕するときの騒音を軽減することができる。
【0047】
なお、吸引手段22は、コンクリートの斫り作業に伴って生じる全ての斫り片を吸引回収してもよいが、作業時間が増加してしまうため一部の斫り片を吸引するようにすることが好ましい。吸引回収しない斫り片は、排水と同様に凹部Wに溜めておき、斫り作業終了後にまとめて回収する。
【0048】
<第二実施形態>
次に本願発明の第二実施形態に係る斫り装置について説明する。本実施形態では、カバー部材20にプレート60を備える点で第一実施形態と相違する。本実施形態では、第一実施形態と相違する部分について説明する。
【0049】
図6に示すように、プレート60は、カバー部材20の下端に取り付けられている。プレート60は、例えば鉄板等の平らな板状の部材である。プレート60は、カバー部材20の前方へ張り出しているため、ウォータージェット装置30による斫り作業が行われた領域の上部を通過する。そのため、斫ったコンクリートを平坦に均すことができる。斫ったコンクリートを平坦に均すことで、カバー部材20前面等が堆積した斫り片に乗り上げて傾いてしまい隙間が生じることを防止し、ひいては、外部に排水が漏れ出すことが防止される。さらに、コンクリートの斫り片を平坦に均すため、斫り作業中に吸引する斫り片を減らすことができる。つまり、斫り片を吸引する時間が短縮化できるため、作業効率を向上させることができる。平坦に均したコンクリートは、第一実施形態と同様に斫り作業終了後にまとめて回収する。
【0050】
プレート60は、さらに前部止水部材61と側部止水部材62,63とが取り付けられていることが好ましい。このようにすることで、プレート60の三辺を止水することができるため、より確実に排水が凹部W(
図5参照)から溢れることを防ぐことができる。また、プレート60とカバー部材20との接続部分については、前述の止水部材27(
図2参照)が垂れ下がって取り付けられているため、排水が溢れること防ぐことができる。前部止水部材61と側部止水部材62,63は例えばゴム等によって形成される。なお、前部止水部材61と側部止水部材62,63は排水が凹部W(
図5参照)から溢れるのを防ぐことできればよいので、例えば耐水性や柔軟性の高いシート等を用いてもよい。
【0051】
以上、本願発明に係る実施形態について説明した。しかし、本発明は前述の実施形態に限らず各構成要素については本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
例えば車両10は、コンクリート床版を移動できるような構成であればよく特に限定されるものではなく、例えば、履帯を備えた装軌車両のほか、タイヤ車輪を備えた装輪車両を用いてもよい。
また、カバー部材20の形状は、現地の状況に応じて構成を変更してもよい。例えば、カバー部材20の形状を平面視矩形状、もしくはその他形状としてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 コンクリート斫り装置
10 車両
20 カバー部材
21 負圧ホース
22 吸引手段
30 ウォータージェット装置
31 ノズル
35 リターン装置
40 負圧装置
43 排水返送管
60 プレート